ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年09月19日

書評837 真保裕一「暗闇のアリア」

こんにちは、曹源寺です。

安倍首相が衆議院解散に言及するというニュースが入り、政局がにぎわっています。
日本共産党はいつも「安倍やめろ!」とか「今すぐ解散しろ!」とか言っていますが、いざ本当に解散となると「党利党略だ」とか「権力の私物化はやめろ!」とか言い出していて、いったいどっちなん?と思ってしまいます。でも彼らの思考の中では全然矛盾していないみたいなんですね。なぜかというと、「政府自民党の言うことにはことごとく反対することが党是である」というのが優先されているからだと思います。

さて、その解散総選挙ですが、野党は「大義がない」とか言っているので自民党も「消費税増税の使い道」などを争点にしようとしているみたいです。
個人的には「消費税増税反対」の立場なので、そうなると入れる政党がなくなってしまいます。消費税増税は天下の愚策でしかありませんので、また盛り返しつつある景気に水を差すことになりやしないか心配です。

どうせなら、憲法改正(9条とは言わない)と電波オークション導入、それに移民政策の是非(個人的には高等教育を受けた金持ちだけ移民を認めるか、グリーンカードのような施策として)を問うような大義を持ってきてほしいなあと思います。
電波オークションを選挙公約にしたら、果たしてマスゴミはニュースにするのでしょうか?ぜひ見てみたいものです。

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内容(KADOKAWA HPより)
夫は断じて自殺ではない。現代の闇をえぐる渾身のサスペンス・ミステリ!
相次ぐ自殺の謎
警察庁に作られた特命捜査班
夫は何をしていたのか……
真相はどこにある? 一気読み間違いなしのノンストップ・エンターテインメント
夫は自殺ではない、殺されたのだ。
警察から連絡を受けて、富川真佐子は呆然となる。自殺の状況は完璧にそろっていた。でも、絶対に違う。夫は死を選べるような人ではない。この自殺の背後には、きっと何かある――。真相を探る孤独な闘いが始まった。
警察庁では、真佐子から相談を受けた元刑事の井岡が、内密に過去の事件を調査していく。次々と明らかになる不可解な自殺……。もし、自殺大国と言われる日本で、多くの「偽装された死」があるとしたら?
ついに二人は謎の鍵を握る男の存在にたどりつく。が、彼はすでに異国の地で死んでいた!?
闇にうごめく暗殺者は、なぜ生まれたのか?
国際的スケールで展開する極上エンターテインメント!


曹源寺評価★★★★★
真保センセーのサスペンスは、どうしても複雑なストーリーになってしまっているので「読みづらい」とか「ごちゃごちゃし過ぎ」とか言われます。外交官シリーズなんて典型的ですね。
本書もまた然り。夫の自殺に疑問を感じた富川真佐子が、警視庁に勤務する元刑事の井岡とその真相に迫っていくストーリーですが、なにせ事件の背景が経産省の汚職なのかODAなのかアフリカの紛争なのか、みたいな大きなところから入っていって、そこからなぜか栃木県のほうに行ったりして、事件そのものがどんどん複雑になっていくのであります。
登場人物の数も半端ないので、読み進めていくだけではだれがキーパーソンなのかわかりません。事件の方向性が見えてくるのが中盤以降なので、そこまでは我慢が必要になります。
そこからラストにかけては緊迫の度合いが増していくのですが、エンディングはどうにモヤモヤ感がぬぐえません。

広がりすぎた風呂敷を畳もうとしたら丸まってしまった

というのが正直な感想です。

(以下、ネタバレ注意)
遺書の偽造方法とか、自殺に見せかけた殺人の手段とか、事故死に見せかけた手口の詳細とか、米露の思惑とか、日本の重工業メーカーのうんたらとか、なんだかスルーしてしまったものが多くてどうにも落ち着きがないですわ。
もっとシンプルに国内だけの事件にしてしまったほうが読みやすかったのではないかと思います。せっかく「年間3万人の自殺者に紛れ込ませるテクニック」といった点に着目されたので、そこだけに焦点を絞り込んでもよかったのではないかと、ちょっと悔やまれる内容でした。





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2017年09月15日

書評836 倉知淳「星降り山荘の殺人」

こんにちは、曹源寺です。

前回、ダブスタの話を書きましたが、ダブスタが差別であり、ダブスタをする人ほど自分の中で正義と悪が区別されているのではないか、そしてそれこそが人間の醜い姿ではないか、といったことを主張しました。
そうしたら、ちょうと良いタイミングでこんなツイートを発見してしまいました。
作家の瀬川深という人(太宰治賞獲った人らしいがその手のジャンルは読まないので知らない)のツイートです。

他の人は知らんが、少なくとも俺は中立であるつもりなどないし、実力行使を否定するつもりもないし、おのれが偏見も知恵足らずも大いに自覚した上で、力の及ぶ限り正義や公正というものが実現するための一助となりたいと思うていますよ。暴走するような正義がこの地上のどこにあったって言うんだよ。

まとめサイトにも取り上げられています。
案の定、最後の一行についてはツッコミ満載なのですが、我々はここから何を学ぶべきかというと、次の2点に集約されるのではないかと思います。
1.正義の反対は別の正義である
2.正義は時に暴走する

1.は要するに「絶対正義」は幻想であり、同時に「絶対悪」もないということだと思います。北朝鮮の話をすると長くなるのでここでは控えますが、対立する組織はどちらも自分たちを悪と思っていませんので、それだけで証明できそうな話です。
よく勘違いするのは、「戦争は絶対悪である」とか、「死刑は絶対悪である」といった論調ですね。逆に言うと「憲法9条は絶対正義である」「死刑反対運動は絶対正義である」と言っているようなもんです。殺人ひとつとっても、安楽死させるのは殺人なのか善なのかという命題にぶち当たりますので、極めて哲学的ではありますが簡単な話ではないはずです。

2.は歴史を学べばいくらでもその事例に事欠かないのですが、このセンセーは十字軍もスターリンもポル・ポトもご存じないのでしょうか。
ポル・ポトは近現代で最も正義の名の下に殺りくを繰り返したうちの一人だと思います(数で言えば毛沢東かもしれませんが)。彼は私欲を満たすために粛清を繰り返したのではなく、理想郷を作り上げるために行動した結果、200万人とも300万人ともいわれるカンボジア国民が命を落としたのです。
有名なコピペがありますが貼るのはやめます。
こういう過去の歴史を客観的にみれば、正義の名の下に行動したつもりが時に狂信的になり、結果として暴走したと受け止められる事例がわんさとあることが分かります。
心理学の有名な実験に「ミルグラム実験」(アイヒマン実験ともいう)というのがあります。どんな実験かというと、被験者が教師役となって、生徒役の別の被験者が答えを間違えると電流を流すというやつです。この実験では、閉鎖的な空間であればあるほど権威者の命令に従うようになる(強い電流でも容赦なく罰として与えるようになる)という結果が得られています。
ミルグラム実験は「正義の暴走」の象徴として考えても良いのではないかと思います。人はそれが正しいと思い込めば、容赦なく人を傷つけることができるのです。
ですから、「自分を正義の人だと思っている人」や「自分(ら)を正義の使者だと信じて疑わない人」「自分の主張には一点の曇りもないと思っている人」「多くの人に成り代わって行動していると自認している人」などには注意が必要なのではないかと思います。

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内容(講談社HPより)
雪に閉ざされた山荘。そこは当然、交通が遮断され、電気も電話も通じていない世界。集まるのはUFO研究家など一癖も二癖もある人物達。突如、発生する殺人事件。そして、「スターウォッチャー」星園詩郎の華麗なる推理。あくまでもフェアに、真正面から「本格」に挑んだ本作、読者は犯人を指摘する事が出来るか。


曹源寺評価★★★★
1996年初版発行、1999年文庫化、そして2017年に文庫新装という作品です。古い作品が新装でよみがえるケースはそれほど多くはありませんが、逆に言えば新装しても売れる見込みがあるからこうして金をかけて本屋に並べるのであるということでしょう。

それだけで名作の香りがしますね。

文庫新装モノは狙い目のジャンルかもしれません。未読の作品は要チェックです。
ミステリ好きとはいえ、もともと本格推理ものというジャンルにはなんとなく食指が伸びてはいなかったのですが、倉知センセーは「片桐大三郎とXYZの悲劇」でファンになったので読んでみようかと思ったのであります。
本書はいわゆる「クローズドサークル」ものであります。電話も通じない、外部からの侵入も厳しい、そして誰も脱出できない、そんな環境に置かれたなかで発生する殺人事件。日本国内を見渡しても現実ではなかなかお目にかかれないシチュエーションになってしまいましたね笑

登場人物は、秩父の山中に残されたコテージを居抜きで購入した不動産会社社長の岩岸豪造と経理部次長の財野政高ほか、コテージに同行したのはスターウォッチャーを自称する星園詩郎とその付き人である杉下久夫、UFO研究家の嵯峨野一輝、小説家の草吹あかねとその秘書である早沢麻子、社長の知り合いで一般人代表という名目でやってきた美樹子とユミの計9名であります。
語り部は杉下です。上司を殴ったことで広告代理店から芸能プロに出向させられてしまい、最近売れっ子になりつつある星園の付き人をさせられます。ある日、不動産会社社長からリゾート物件の売り出しに協力してほしいという名目で秩父の山中にあるコテージに他の面々とともに集められます。
そのリゾートで殺人事件が発生。閉ざされた空間で誰が犯人なのかを当てていくストーリーです。
面白いのは、場面が切り替わるごとに著者からまるで場面設定のような説明書きが添えられるところです。この説明がヒントにもなっているし、読者を騙していることにもなっています。
いや、騙してはいないな。なぜなら間違ってはいないから。
ところどころに読者をミスリードする仕掛けが施されているので、これは騙されますわ。騙してはいないけど、騙されるという仕掛け。ラストのほうで世界が反転するという最近のトレンドのなかでも、本書の展開は「あぁくそ、倉知センセーにやられたわ」という感想になること請け合いです。





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posted by 曹源寺 at 17:47| Comment(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月12日

書評835 佐々木譲「真夏の雷管」

こんにちは、曹源寺です。

山尾議員の不倫問題でさまざまな方がマスコミ等でコメントしているなかで、いわゆる「ダブルスタンダード」な方々がたくさん湧いて出てきたという話題がありました。
曰く、
「宮崎謙介議員はダメだが、山尾志桜里議員は優秀だから大目に見ろ」
「中川俊直議員は復帰しなくて良いけど、山尾志桜里議員には立ち直ってほしい」
みたいなやつです。
ダブルスタンダードという英語はないそうなので、最近では日本語にして「二重基準」などという言い方をされる人が増えてきました。個人的には和製英語など掃いて捨てるほどありますのでダブスタで良いかと思いますが。
そのダブスタですが、要するに「あの人がやるのは良いけどこの人がやるのはダメ」と言っているに等しいわけですよ。

それって差別なんですよね。

ダブスタな発言をされている人ほど、差別している意識がないのではと思います。知らず知らずのうちに差別をしている。こういうのが一番怖いですね。自分は正義で相手は悪。自分の発言は正しいから相手の言っていることは間違い。間違っているから正してあげないといけない。間違っているから糾弾しても構わない。間違っているからその腐った性根をたたき込んであげるのが正義だ。

こうなってしまうと相手の発言をすべて頭ごなしに否定するようになります。末期症状ですね。行きつく先はポル・ポトのような粛清、虐殺ですわ。もしかしたらですが、人間として一番行ってはいけない方向というのがこうした人間性なのではないかと思ったりします。

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内容(角川春樹事務所HPより)

精密工具の万引き、硝安の窃盗事件、消えた電気雷管。三つの事件がつながったとき、急浮上する真夏の爆破計画。誰が、いつ、どの瞬間に?札幌大通署・刑事課の佐伯は、生活安全課の小島百合、機動捜査隊の津久井らと共に、警官の覚悟を見せる。息もつかせぬ緊迫のクライマックス。刻限に向けて、チーム佐伯が走る!待望の書き下ろし長篇。


曹源寺評価★★★★
佐々木譲センセーの北海道警シリーズ最新刊です。このシリーズはシリアスなストーリーのなかに、登場人物のサイドストーリーを織り交ぜていて非常にヒューマンなドラマになっているという印象があります。
しかももうシリーズ8作目に突入です。シリーズ当初は北海道警が釧路本部長による裏金作りの実態暴露で大揺れに揺れた時期に、まさにその裏金問題をテーマに佐々木センセーが書いてしまったものですから大いに反響を呼んだというスタートでした。そこから、佐伯、小島、津久井、立正寺らのレギュラーメンバーがほぼほぼ固定で登場してはそれぞれが主人公的に事件を解決してきたのであります。
本書は園芸センターから硝酸アンモニウム(硝安)が盗難されたところから文字通りきな臭い事件のにおいがするようになります。
この事件を佐伯らが追う一方、小島百合は狸小路にある閉店セール中の模型店(これもろに中川ライター店がモデルですね)で万引き犯の少年を捕まえるが、ちょっとしたことで逃げられてしまう。この少年が盗んだものが精密工具だった。複数の事件が交錯するなかで、浮上する一人の男。徐々に追い詰めていく警察だが、自暴自棄になったらそれこそテロを起こしかねないとして慎重な捜査が求められるように。犯人を追う手がかりはどこにあるのか。そしてテロを起こそうとしているのはどのタイミングなのか。

ラストの緊迫感はシリーズ最強

ではないでしょうか。札幌駅のホームで繰り広げられる攻防は一読の価値ありです。
佐々木センセーの警察小説は他のセンセーよりも比較的ロジックの構成が巧みで、多少の緊迫した場面はあってもバイオレンス臭がバリバリといったシーンは少ない印象です。しかし本書はタイトルの通り雷管→爆弾、しかも手作り爆弾ですのでとってもカオスな、そしてとってもサスペンスな展開が待ち受けています。読むほうも非常にスリリングです。

(以下、少しネタバレ)
今回はJR北海道や札幌駅助役といった実在する組織や人物が登場してきますが、佐々木センセーは容赦なく斬り込んでいます。JRは東日本もそうですが、北海道などまさに「アカの巣窟」と言われて久しいですが(知らない方は西岡研介センセーの「マングローブ」などお読みください)、それゆえに再就職が難しかったりしているわけで、赤字路線のオンパレードなJR北海道がこの先生きのこるためにはこうした赤化体質の改善なども欠かせないのではないか、といったメッセージがもしかしたら本書には込められているのではないかと勘繰ったりもします。







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posted by 曹源寺 at 18:37| Comment(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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