ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年07月18日

書評820 楡周平「ぷろぼの」

こんにちは、曹源寺です。

今日は東京でもゲリラ豪雨になり、ところによっては雹が降ったみたいですね。梅雨明け前のゲリラ豪雨はもはや定番、恒例行事になってきました。逆に言えばもうすぐ梅雨明けでもあります。本格的な夏の前に、体力を蓄えておきたいところです。

さて、最近は本当にマスゴミがおかしなことをしていると思うのですが、これに同調する動きも多くなってきているようです。

確たる証拠もないのに疑惑と持ち上げて、悪魔の証明を迫るマスゴミ
疑惑などないと説明をしても説明が足りないと言って繰り返し疑惑と報じるマスゴミ
さも疑惑が真実であるかのように振る舞うマスゴミ
疑惑が真実であるという前提で話を進めるテレビのコメンテーター
記者会見で同じ質問を何度も何度も繰り返す新聞記者

見ていて本当に気持ち悪いです。
上記のような行動が目に余るので、ネットの反応がどんどん辛辣になっています。いずれ本格的なマスゴミバッシングが始まるのではないかと思います。マスゴミに対する不満や批判が頂点に達した時、どのような動きが始まるのか、非常に興味深いです。

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内容(文藝春秋HPより)
業界大手のパシフィック電器は、人事部労務担当部長の江間を中心に大規模なリストラを進めていた。実務を担う大岡の担当リストラ対象社員が、ある日首吊り自殺をしてしまう。大岡は心身ともに疲弊しきって、三国が代表を務めるNPOで「プロボノ」として社会貢献活動をすることに救いを求める。ひょんなことから三国に江間の社内での悪辣な行状を打ち明けたところ、義憤にかられた三国は、江間を「嵌める」べく罠をしかける……。
「ぷろぼの」とは、「公共の利益のために(pro bono publico プロボノ プーブリコ)」という意味のラテン語。大企業のえげつないリストラと、それに立ち向かうNPOのボランティアたちを、軽妙かつコミカルに活写する。


曹源寺評価★★★★
久々の楡センセーであります。
最近の楡センセーの作品には「シリアス一辺倒の企業小説」と「業務改善したら面白い業界小説」、それに「ちょっと軽めのビジネス小説」といったジャンルがあります。昔は「朝倉恭介シリーズ」とかのハードサスペンスがありましたが、今はそれもかなわぬことです(でも2016年に「スリーパー」という本が出ていまして、朝倉恭介が出てくるんですよね。これにはちょっと驚きでした)。
さて、本書はどうかというと「ちょっと軽めのビジネス小説」かなと思ったのですが、それほど軽くはないかなと思います。なにせ、大企業のリストラ場面が悲惨過ぎて重いんです。大手電機メーカーのパシフィック電器というのが本書の舞台ですが、モデルはパナソニックなのかソニーなのか、はたまたシャープや東芝なのか。部門ごと撤退するという大掛かりなリストラを行うわけですが、そうなると配置転換もスムーズにいくことはなく、結局は割り増し退職金を支払ってでも整理に踏み切らざるを得ないという苦渋の決断を企業は迫られることになります。ここまではしょうがないでしょう。問題は退職勧告に応じない人たちの整理をどうするか、ということになります。パシフィックの江間部長はいわゆる「追い出し部屋」以上の酷いやり方を編み出し、それを本当に実行します。
どんなエグイやり方なのかは本書を読んでいただきたいと思いますが、江間の部下である大岡さえも嫌がるエグさ、そしてこの江間を何とかしないと自分もパシフィックも持たないと思い始める大岡。そして大岡がよりどころにしたのは、NPO法人のプロボノだった。。。
まあ、リストラをここまでやるか?というところでは確かにすごい話ではありますが、その後の解決にNPOが乗り出すという展開もまた、尋常ではない話です。
楡センセーがNPOに目を付けたのはさすがです。多様な人材が集まるNPOだからこそ、江間を懲らしめるためのストーリーができたということでしょうから。
それにしても、いまこのタイミングで発刊されたのが何とも惜しいなあと思うのです。昨年からは東芝の話題で電機業界は持ち切りですが、大手電機がこぞって業績が落ち込んだのはリーマン・ショックを過ぎた2009年度あたりからです。リストラが激化したのもその頃からですので、

ちょっと旬を過ぎてしまった

感が無きにしも非ずでしょう。返す返すも惜しいなあと思います。





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2017年07月14日

書評819 前川裕「アンタッチャブル:不可触領域」

こんにちは、曹源寺です。

先日はマスゴミの政治部というセクションについて、政局ばかり記事にして政策を書かない自称エリート集団とこき下ろしましたが、本当に今の報道姿勢はヤバ過ぎて怖いレベルにあります。
日本は戦後、離合集散を経て自由民主党政権で安定してきた経緯がありましたが、それは自民党の内部で右派と左派に分かれてお互いをけん制しあってきたため、野党の付け入る隙がなかったという経緯があるのです。それが、80年台後半から90年台前半にかけて発生したリクルート事件や佐川急便事件などで求心力を失い、自民党が分裂しだしたことで野党勢力が息を吹き返したのであります。自社さ連立政権はその象徴的な出来事でありました。
その後、自公連立→民主党→自公連立と政権は代わっていくのですが、こうした変遷により、かつての大所帯である自民党はすでになくなってしまいました。これはつまり、逆説的に言うと「自民党はすでに一枚岩になっている」のです。かつての派閥もそれほど党内勢力の争いのようになっていません。もちろん、たまに石破茂のように後ろから撃つタイプの政治家がいるにはいるのですが。
こうなると、マスゴミとしては自民党の対抗勢力が欲しいんですね。いま「安倍一強をなんとかしたい」とか言っているのは安倍=自民党であるのが許せない(=かつての大所帯自民党のように内部の敵対勢力がいないのが許せない)人たちなんでしょう。
しかし、安倍を引きずり下ろそうとして、ありもしない疑惑を連日持ち上げては世論調査を繰り返すといった技を展開すると、確かに政権支持率も自民党の支持率も下落しました。が、他の政党支持率もまったく上がらないというお粗末な結果になっています。

安倍内閣支持29.9%に急落=2次以降最低、不支持48.6%−時事世論調査(7/14)
時事通信が7〜10日に実施した7月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比15.2ポイント減の29.9%となった。2012年12月の第2次安倍政権発足以降、最大の下げ幅で、初めて3割を切った。不支持率も同14.7ポイント増の48.6%で最高となった。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題が響いた。東京都議選で稲田朋美防衛相が、自衛隊を政治利用したと受け取られかねない失言をしたことなども影響したとみられる。(以下、略)

安倍を引きずり下ろそうとして、小池を持ち上げるマスゴミ。小池のほうが安倍よりかなり右に寄っているんですが、それはいいんですかね。印象操作で安倍を下すんじゃなくて、安倍のやっている施策に代わる代案を提示するとか、そういうまじめな議論をしてこなかったからこうなるんだと思うのですが、マスゴミ、特に政治部の連中はそういった自覚がないのでしょうか。民主党政権に移行する前、マスゴミは失われた年金をはじめとしたネガティブキャンペーンをガンガン進めました。国民の多くが「一度、政権交代するのもいいかもしれない」と思い、そして実際に政権は交代しました。
民主党の3年9か月は暗黒時代になりました。
自公連立政権に戻りましたが、国民の多くは「もう民主党はこりごり」と思っています。だから支持率は一向に伸びません。自民がダメなら民進だーとはいかないんですね。つまり、対抗勢力は印象操作ではもうできなくなっているのかもしれません。国民もそれほどバカではないということですね。
マスゴミも、我々も、このへんをよーく考えておく必要がありそうです。

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内容(新潮社HPより)
「凡戦の帝王」と呼ばれた元プロボクサー。落魄した往年の人気俳優のマネージャー。二人が邂逅した時、その足元で暗黒の底が抜けた。ラーメン屋主人夫婦の不自然な失踪、八王子で福生で床下から次々に見つかる死体、美少女を取り巻く得体の知れない男たち。世界は二転三転、酷薄な様相を顕にする。衝撃のノワール・ミステリー。


曹源寺評価★★★★
ここんところ、猟奇的な殺人事件を扱わせたらこのセンセーの右に出る人はいないのではないかと思うくらい、エグイ作品を出しまくっておられます前川センセーですが、本書もまたある意味猟奇的でどこかホラーチックな印象を残す作品に仕上げてこられました。
デビュー当時と比較するとやはり大学教授らしい堅い文章からだいぶこなれてきたような気がしますので、読みやすいです。内容はともかくとして。
人気ヒーローもので時の人となったものの、その後落ちぶれた俳優、北森重三は認知症も患っていた。北森のマネージャーだった保住忠文は、何の血縁関係もないのに北森の世話を続けていたが、ある日、ついに一線を超えることになる。徘徊癖のある北森を失踪に見せかけて置き去りにしようとするのである。
同じ頃、元プロボクサーの瀬尾健一は中華料理店でアルバイトをしながら世話になったボクシングジムでトレーナーをしていた。瀬尾は妻の里穂と別居中で、離婚を持ち掛けられていたが瀬尾はこれを拒否していた。ある日、ジムの会長である戸田が里穂と密会していることを知り、現場に乗り込んだ。そこで瀬尾は一線を超えることになる。
二人の男が正常と狂気の境目で揺らぎ、狂気の淵に足をかけてしまうことから世界が暗転していくという様子を、とても重苦しく描写してくれています。この辺りの重さに耐えられない人は読み進めるのがつらいかもしれません。
しかし、その淵の先にあったものはさらなる狂気であり、人間の本質なのかあるいは別の何かなのかわからない、非常に昏く底知れない悪意の渦でありました。
保住と瀬尾が中盤から交錯してきますが、この二人はどちらかというと普通の人間でありました。共通する人脈に長崎という男が登場しますが、この男が前川作品によく登場してくるような異常犯罪者の類でありました。
この長崎のような、人を支配して操って殺しをさせて騙していざとなったら逃げる、人間のクズのような男が登場してくると、いつもあの事件を思い出します。胸糞の悪さでは堂々の1位に輝く

北九州監禁殺人事件です。

ワイドショーも事件の詳細を語るのに躊躇し、結局自粛したというくらい凄まじい事件でありますが、首謀者の松永太死刑囚を想起させるような猟奇的な人間を登場させるのが本当にうまいんですよ前川センセーは。
本書は最後の最後まで目が離せない、というか結末がどうなるのか気になってしょうがない、そんな展開になるのですが、ラストは果たしてこれで良かったのか。ほかの選択肢はなかったのか。なんともやるせない結末ですが、余韻を引きずりますので結局は前川センセーに問題を突きつけられたような、そんな気がしています。

最後に、ひとつだけ。
本書では保住のシーンから始まり、瀬尾はその次にくるのですが、なぜか瀬尾のほうの描写が一人称なんですよ。これ逆のほうが良かったのではないかと思うのですが、なぜだったのか。





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posted by 曹源寺 at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ま行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月11日

書評818 佐々木譲「沈黙法廷」

こんにちは、曹源寺です。

加計学園の話題(問題とは言わない)で、地上波がすべて前ナントカさんの応援団になっているらしく、昨日の閉会中審査では7時間もかけて審査が行われたにもかかわらず、報道された内容が各局とも似たり寄ったりという異常な状態がネットで話題になっています。

議事録をしっかりと読み、加戸前愛媛県知事の話を聞き、時系列で事象を追っていけばこの話題は問題ではないことが理解できるはずなのに、事件化したくてしょうがない連中がいるということがよくわかります。

どんな連中かというと、それは「新聞社の政治部」連中です。

ほとんどの新聞社が、政治部をエリート集団と位置づけており、経済部や文化部などを見下している構図になっています(社会部はまた違う毛色ですね)。その政治部連中というのは「政治」ではなく「政局」を語るのが好きなんですね。だから選挙になると色めくし、与党の支持率が下がるとすぐに政局にしたがるわけです。かつての自民党では右派も左派もごちゃまぜで、古くは「角福戦争」だったり「金竹小(こんちくしょう)」だったりと派閥争いを中心に取材していけば面白かったし、国民の関心事でもあったのですが、今は派閥もあまり機能していないのでどうしても「安倍一強」になってしまうわけで、それを快く思っていない連中(記事にならないからつまらない連中)が政局を作り出したくていろいろと仕掛けているのではないかと勘繰ってしまうんですが。でもそのいろいろというのが、「○○大臣が失言したンゴー」とか「支持率が下がったンゴー」とか「国会前でデモガー」とかそういうのしかなくて、最近の報道に不信感を抱いているネット民からすると「また印象操作してるわねー」という感想しか持つことができなくなっています。

政治部は政局ばかり記事にしないで、政治の中身の記事を書いてくれないですかね。

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内容(新潮社HPより)
絞殺死体で発見されたひとり暮らしの初老男性。捜査線上に家事代行業の女性が浮上した。彼女の周辺では他にも複数の男性の不審死が報じられ、ワイドショーは「またも婚活殺人か?」と騒ぐ。公判で無実を訴える彼女は、しかし証言台で突如、黙秘に転じた。彼女は何を守ろうとしたのか。警察小説の雄が挑む新機軸の長編ミステリー。


曹源寺評価★★★★
久しぶりの佐々木譲センセーでしたが、四六判550ページを超える大作でありました。長い長い作品ではありますが、ストーリーは意外にシンプルです。
東京・赤羽で一人暮らしの男性が絞殺死体で発見される。赤羽署の伊室刑事はこの家に出入りしていた人物の洗い出しを行っていたが、そこに浮上したのがフリーの家事代行業、山本美紀であった。事情を聴こうと彼女に自宅に赴くと、そこには埼玉県警の刑事がいた。大宮でも一人暮らしの男性が不審死していたらしく、彼女に事情聴取を試みていたのだ。これは連続殺人なのか、それとも偶然か?功を焦った埼玉県警と警視庁は逮捕、起訴に持ち込もうとするのだが、、、
地方警察が連携できずに犯罪者を追及できないといった事例は現実にも多いそうですが、本書はその辺の難しい事情を見事に描写しています。
警視庁はこの殺人事件について直接的な証拠の確保ができず、状況証拠の積み重ねだけで公判に臨みます。一方で、マスコミは彼女の周辺を徹底リサーチして類似事案を探すとともに、彼女の人物像を固定化しようとします。こうなると、検察も無視できなくなるわけで、公判を維持しようとすれば被告人の自白か直接的な証拠の確保が必須になるのにそれができていない。
この難しい事件を、

前半は警察小説として、後半は法廷小説として

書き上げているところが、佐々木センセーのうまさでしょう。これだけ厚い本になってしまったのは、法廷シーンのリアリティ追求が半端ないレベルにあることはもちろんのこと、事件の謎とそれを解く鍵をしっかり描写しておく必要があったのだろうと思います。
法廷シーンからラストにかけてはある程度納得の展開ではありますが、正直、期待していたほどではなかったかもしれません。なんとなくもやっとしたところが残ります。最後の最後はおそらく、佐々木センセーがもっとも言いたかったことではないかと思いますが、「社会派の法廷サスペンス」を全面に押し出されないと読者としてはちょっと不満です。なんとなく消化不良な読後感なんですが、それは山本美紀あるいは中川綾子に対する疑惑(特に金銭的疑惑)に関する払拭が完全になされていないからなのかもしれませんが、そういうのはすっ飛ばしておいたほうが良いんですかそうですか。






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posted by 曹源寺 at 17:47| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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