もしもドロップシッピング

2009年11月12日

書評205 池井戸潤「鉄の骨」

民主党が「事業仕分け」で存在感を出そうとしていますね。政治主導で改革していきますよという姿勢も国民に示すことが出来るから、その効果は抜群かもしれません。
事業仕分けを否定するつもりはありませんが、こんなペースで3兆円もひねり出せるのか少し疑問です。手っ取り早いのは公務員の給与を削減することですが、自治労をバックにした民主党では期待薄ですし、大きな政府に移ろうとしている方針も見え隠れしていますので、なおさら無理かなあと思ってしまいます。そして何より、官僚の逆襲はこれからでしょう。官僚を敵に回して良いことはひとつもありません。政権は長くは持たないかもしれませんね。


次の地下鉄工事、何としても取って来い」
でも談合って犯罪ですよね?
謎の日本的システムの中で奔走する、若きゼネコンマン平太の行末は――。
会社がヤバい。彼女とヤバい。
次に出る大型入札案件は、2000億円規模の地下鉄工事。
この一番札が取れなければ……。
プロの読み手を唸らせた超弩級ドラマ
情と理がせめぎ合う白熱の談合ドラマ。池井戸潤は日本の企業小説を変革する。――香山二三郎氏
背負ってきた旧い体制を捨てて日本が生まれ変わろうとしている今、この本が出版されることに運命を感じる。――杉江松恋氏
驚愕のラストはさすが乱歩賞作家。多様な読み方ができる極上エンターテインメントだ。――西上心太氏
政官業の鉄の三角形に放り込まれた若く純なゼネコンマンの心に、あなたの心を重ねてみて欲しい。――村上貴史氏

曹源寺評価★★★★
「空飛ぶタイヤ」以来の池井戸氏の新刊ということで、いそいそと書店に赴き買い求めました。そして、わずか1.5日で読了してしまいました。読みやすく、それでいてリアルな談合を描いていてドップリはまる、そんな作品に仕上がっています。さすがは直木賞候補だけあって、リーダビリティはさすがというべきでしょうか。そして、談合をテーマにここまで(あまりミステリタッチではないにせよ)描ききった作品もあまりないように思えます。そういう意味では池井戸氏の元銀行マンならではの切り口に拍手を送りたいと思います。
しかし、しかしですね、本書は「空飛ぶタイヤ」には及ばないなあというのが率直な感想です。なぜなら、結末が途中で透けて見えてくること、同時進行する恋愛話が少し陳腐なこと、そして、悪役の描写が少なすぎること(これに関しては、談合こそが真の悪役であるという見方も出来なくはないでしょうが)、この3つが読後の満足感をスポイルしているような気がします。
それでも、良書であることは間違いないでしょう。わが社の社員には読ませたいですね(ってオレは社長じゃねえし)。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif


posted by 曹源寺 at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月08日

書評204 東野圭吾「聖女の救済」

先日、就職相談を受けていた大学4年生の女の子から内定の連絡を受けました。希望していた食品会社が全滅で、エステやソフトウェアなどにも触手を伸ばしていて、結局決まったのがリフォームなどを手がける企業ということでした。会社名を聞いたら、ちょっとブラック会社で有名なところだったので呆然としてしまいました。いまさらやめろとは言えず、とりあえずオメデトウということで終わったのですが、何のために相談に乗ってあげたのか、なんとも虚しい気分です。
まあ、そんだけ厳しいご時世だということですかね。バブル入社のオジサンにしてみればカワイソ過ぎますが。

内容(文藝春秋HPより)
『容疑者Xの献身』から3年。今度のガリレオの敵は、女!
男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。湯川が推理した真相は「虚数解」だという
直木賞を受賞し、年末のミステリーベスト10企画で軒並み1位に輝いた『容疑者Xの献身』は紛れもなく東野さんの代表作ですが、そのシリーズ最新長篇が、満を持して登場します。今回、探偵ガリレオこと湯川が迎えた新たな敵は――女です。 会社社長が自宅で毒殺された。女性刑事・内海薫は離婚を切り出されていた妻を直感で疑うが、妻には鉄壁のアリバイがあった。捜査が難航するなか、湯川が推理した殺害方法は、「虚数解」。女性ならではの非論理的な思考が編み出した驚愕のトリックを、湯川は証明することができるのか。

曹源寺評価★★★★
ガリレオ・シリーズは長編でも短編でも面白いですのですが、長編だといささか冗長な感じに仕上がってしまうことがあるのは致し方ないところでしょうか。犯人があらかじめ分かっているのに、犯罪の動機やトリックが謎のままという状態が続くのがあまり好きではないのかもしれません。容疑者Xのときも同様でしたが、あちらには最後のどんでんがあったのに対し、本書はあれほどのどんでんがなかったのが要因でしょう。トリックは全然思いつきませんでしたし面白いは面白いのですが、何かを期待しすぎると裏切られてしまう、そんな本です。
このトリックについては、浦沢直樹先生のなつかしのマンガ「パイナップルアーミー」のなかのとある作品を思い出しました。「女性ならではの非論理的な」トリックと言えなくもないですが、パイナップルアーミーでは本書のトリック以上の爆弾の仕掛け方というのがありました。決して女性だけにできるトリックとは思えませんが、場所的には女性だけしかできないかもしれません。これ以上はネタバレにつき内緒。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif


posted by 曹源寺 at 14:39| Comment(0) | TrackBack(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月04日

書評203 佐々木譲「廃墟に乞う」

久しぶりにゴルフしたら、肩が筋肉痛になりますた。やはりテニスとは使う筋肉が違う。
最近は自分の悪い癖がある程度分かるようになってきたので、プレー中にその悪癖を修正することができるようになりました。しかーし、修正すると今度は別の悪癖が出るんですわ。もうホントに難しいわ。止まっているボールを打つほうが難しいなんて、普通はありえんなあ。

書評203 佐々木譲「廃墟に乞う」
内容(文藝春秋HPより)
北海道警察捜査一課仙道孝司――現在、休職中
道警の敏腕刑事だった仙道孝司は、ある事件をきっかけに療養中の身。やっと回復してきた仙道に、次々とやっかいな相談事が舞い込む
『警官の血』『笑う警官』(今秋映画公開)など、話題作を次々と発表している佐々木譲さん。待望の新「警察小説」、『廃墟に乞う』が小社から刊行されます。主人公は、北海道警察捜査一課捜査員・仙道孝司。「ある事件」をきっかけに自宅療養をしている仙道は、休職中という自由な立場を生かして、持ち込まれた事件の捜査をします。警察手帳も持たず、拳銃も持てない仙道がどのような捜査をするのか? ニセコ、夕張などを舞台に、北海道が抱える社会的問題を鋭く描く第一級のエンターテインメントです。

曹源寺評価★★★★
いまや警察小説の旗手となってしまった佐々木譲先生ですが、彼の描く警察官は今野敏先生や横山秀夫先生とも異なり、地味だけれども真っ当な、派手さはなく無骨で、正義感に溢れている人物というところに共感を覚えます。恐らく、佐々木先生は北海道警察の実態をあの裏金問題からつぶさに観察してこられたのだと思いますが、その過程において、ほとんどの警察官が真面目で正義感たくましく、悪を許さない気概に燃えている人達だったのではないでしょうかと想像します。現場の警察官を尊敬しなければ描けない、そんな主人公を作り上げていて、これが読む人をグッと惹き付けているのだと思います。
本書の主人公である仙道孝司もその一人です。標題の「廃墟に乞う」はある意味虚しさ溢れる内容ですが、休職中の警察官が働かせる推理にストーリーテラーとしてのうまさを感じずにはいられません。やっぱり氏の作品は良いですね。本書もまた、彼の多くの作品群に新たな一滴を垂らしたと言えましょう。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif


posted by 曹源寺 at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月28日

書評202 郷原信朗「思考停止社会〜遵守に蝕まれる日本」

朝晩がめっきり冷え込んでまいりました。乾燥してのどが痛くなる季節でもあります。風邪などひかぬようご自愛ください。

それにしても眠い。。。


内容(講談社HPより)
日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体
建築不況、食品偽装、市場混乱、メディアスクラム、裁判員制度……。日本停滞の背景には「法令遵守」からさらに進む、なんでも「遵守」の害があった!コンプライアンスの第一人者が問題を鋭く指摘、解決策を示す。

目次
--------------------------------------------------------------------------------
第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
第4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
第5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
第6章 思考停止するマスメディア
第7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
終章 思考停止から脱却して真の法治社会を


曹源寺評価★★★★
尊敬してやまない郷原先生の著書です。コンプライアンスを語らせたら右に出る者はいないとされる郷原先生が今回著したのは、物事の本質を見極めずにあーだこーだとわめき散らす有識者やマスゴミの意地汚さというか、本当に何考えてんの?みたいな思考停止状態を厳しく諌めている内容の新書です。
常日頃、企業のプレスリリースや業界のニュースなどに触れているため、いわゆる「メディア・リテラシー」というものにはかなり敏感になっている自分ではありますが、実に論理的にズバズバと斬る郷原先生の文章には圧倒されます。メディア・リテラシーとは「情報を使いこなす」とか「情報を主体的に読み取る」とか「情報を自ら発信する」とかいろいろな言われようをしていますが、個人的に言わせていただくならば「情報を客観的に見る力」だと思っています。日本人は活字になっているものをありがたがる性質があり、活字になっているものはすべて正しいと思い込んでしまうところがある――
これではあきまへん。ま、たぶん小学校や中学校で教科書を一所懸命読んだ人などは「教科書に書かれていることはすべて正しい」とでも洗脳されてしまっているのではないかとちょっと危惧します。
情報を客観的に見るというのは、自分も大学生の時に教わりました。本を一冊与えられて「作者の主張を批判しなさい」という宿題が出たことがあって、それ以来、感想文を書くのが非常に苦手になってしまったわけですが、客観的な視点だけは今も残っているのだなあと感じてしまいます。おかげでかなり助かりました。相手のつくうそを一発で見破ったりするためには、情報のソースをまずはしっかり自分のものにしていただければと思います。





あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 23:13| Comment(0) | TrackBack(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月23日

書評201 遠藤武文「プリズン・トリック」

これ面白いね。


私女だけど彼氏の財布がマジックテープ式だった 死にたい。。


     ∧_∧
     ( ゚ω゚ ) 支払いは任せろー
 バリバリC□ l丶l丶
     /  (    ) やめて!
     (ノ ̄と、   i
            しーJ

そういえば、中学生のときはマジックテープがついていたような気がする。さすがに、今は周りを見渡してもいないわね。いたら絶対コーヒー吹く自信があるわ。


内容(講談社HPより)
交通刑務所で発見された変死体。
「前へ倣え」姿の死体のそばには、「石塚、死すべし。宮崎」と書かれた紙があり、宮崎春雄が行方不明になっていた。
刑務所内での密室殺人の裏に隠された、恐るべき計画と真実とは――。

曹源寺評価★★★★
本年度乱歩賞受賞作品です。今回は帯に「乱歩賞史上最高のトリックだ」と東野圭吾氏のコメントをでっかく入れていたものですから、速攻で買いに走ってしまいました。
で、あっという間に読んだわけですが、確かにトリックとしてはなるほどなわけです。トリックに関しては言うことないですね。良くできています。
でも、審査員諸氏が指摘しているように、不要な文章はあるし、表現が粗雑な箇所もあるし、なによりラストはちょっと反則でしょうみたいな感じですし、いただけないところは目に付きますね。
でも、交通刑務所の実態がよく分かったのは収穫です。長期間に亘って復讐心を持続させている人々も多くいることは分かっていますので、こういうストーリーはありだと思います。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月19日

書評200 東野圭吾「ガリレオの苦悩」

うー、ブログ更新が滞ってしまいました。すんごい忙しかったわけではなく、疲労が蓄積していたのだと思います。読んだ本が溜まりましたので少しペースを上げていきたいと思います。


内容(文藝春秋HPより)
ガリレオ・シリーズ久々の短篇集、長篇と同時刊行!
「悪魔の手」と名乗る者から、警察と湯川に挑戦状が届く。事故に見せかけて殺人を犯しているという彼に、天才科学者・湯川が立ち向かう。
福山雅治が物理学者・湯川を演じて映像化され、空前の大ベストセラーとなったガリレオシリーズ。長篇だけでなく、その新作が今回はなんと2冊同時刊行されます。 こちらは『探偵ガリレオ』『予知夢』と同じ、短篇集です。長篇では脇に回りがちな湯川が、短篇では堂々の主役。必ずしも積極的に警察に協力し、喜んで謎を解いているわけではない湯川の“苦悩”が描かれ、彼の人間性が窺えます。 読者のためにと、著者の意向で書き下ろしも加えた贅沢な1冊になりました。

曹源寺評価★★★★
久しぶりのガリレオですが、なんだかテレビドラマ化されてからのガリレオはとてもテレビ脚本を意識したようなう作りこみになっているような気がするのは自分だけでしょうか。湯川に敵愾心を持つ犯人との対決なんてとっても映像向きの内容ですね。読者に少しこびているように感じてしまったので、その分減点となります。
でも、内容はやはり東野センセーならではの理系トリックが炸裂していますので、よくもまあこんなトリックを思いついたりするねえといつもながらに感心させられます。





あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 22:30| Comment(0) | TrackBack(1) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月06日

書評199 高嶋哲夫「追跡 警視庁鉄道警察隊」

久しぶりに甲府まで出張してきました。JR中央線も高尾を過ぎると景色が一変して、のどかな田園風景になります。今日は天気が悪かったですが、逆に雲がとても低い位置で流れていましたので、少し新鮮でした。
山梨学院大学に行ったのですが、甲府のひとつ手前にある酒折という駅はもう、山梨学院駅というくらい駅前からドーンと施設が林立していますよ。聞けば、幼稚園から小中高、大学、短大、大学院、法科大学院まであるとのこと。カネ持ってるわー。


内容(角川春樹事務所HPより)
東京都内を運行する列車内で、スリと切り裂き事件が相次いで発生した。『多国籍スリ集団』と呼ばれる犯人たちは、お年寄りや、女性を狙い、乗客を集団で取り囲み、連携して犯行に及ぶ。一方、『切り裂き魔』と呼ばれる犯人は、女性のバッグを狙い、ゲリラ的に切りつける犯行を繰り返していた。警視庁鉄道警察隊新宿分駐所の小松原たちは、犯人グループを追い、警乗に追われていた。日々拡大する被害、エスカレートする犯行。鉄道隊の威信を賭けて辿り着いた犯人像とは!? 凶悪な列車内での犯罪に立ち向かう鉄道警察の姿を描く、著者渾身の書き下ろし長篇小説。


曹源寺評価★★★★★
鉄道警察隊を舞台にした小説というのは少なからずあるようですが、自分としてはこれが初めての作品でありました。警察のなかでも皇宮警察と同じくらい地味な存在ですかね。あまり興味はありませんでしたが、警察小説好きとしてはやはり読んでおかなくはと思い、手に取りました。本作はうーん、鉄道警察隊の内情とかですね、読んでしまうと「なんだ、こんなもんか」くらいの感想しか思い浮かばないんですね。もっと詳細なプロットを期待していたのですが、ちょっと肩透かしを食らいました。警察ものはどうにもイマイチ感が漂うんです。犯人もすぐ分かってしまうし、主人公の立ち位置が良く分からず、感情移入できません。キャラクターがイマイチなのかもしれないですね。地味すぎるというか、リアルすぎるというか。やはりこの人は災害危機をテーマにしたほうが良い作品が書けますね。でも災害ものは台風、洪水、地震、津波、原発事故、都庁爆破。。。もうネタ切れですか?




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | た行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月01日

書評198 歌野晶午「絶望ノート」

民主党政権に代わってから、まだ一度も通常国会が開かれないうちにダム問題、為替問題、天下り問題と次から次へと噴出しているわけで、それでもテレビのトーンは民主党擁護でなんだか気持ち悪いですね。
故人献金も続報が入っている新聞に比べ、テレビの扱いは異常なまでに少ないし、何より法務大臣の千葉景子はもうド左翼であることが露呈されているにもかかわらず、これっぽっちも報道されないと言うのは、もうね、なんだか、日本ヤバスって感じですね。
かつて、杉浦なんたらという奴が法務大臣やっている時に、死刑執行の判子を一回も押さなかったことで「怠慢」とか「法相失格」とかさんざっぱら叩かれましたが、千葉景子が死刑執行のサインをするとは到底思えず、しかも「不法滞在者に寛大な姿勢を」みたいな発言してかなり顰蹙を買っている現状において、すでに法相失格なわけですが、これも全然報じられていない。自民政権だったら即罷免ものですが、一体この国はどうしちゃったんだい?

内容(幻冬舎HPより)
日々いじめられる中学2年の太刀川照音は苦しみを日記帳に書き連ねた。ある日「神様、是永を殺してください」と書くと、是永は屋上から転落死した。以降、次々に死ぬ級友と教師たち――。

曹源寺評価★★★★
あぁ、またしても歌野センセーにやられてしまいました。いつもいつも最後の最後にドンデン返しが待っている歌野作品は、どんどん読みやすくなってきています。ですから、すらすら読めて物語がどんどん進んでいくところに、ドカンと仕掛けがあったりして「えっ、何?」みたいな感じでやられてしまうわけです。
本書は壮絶ないじめにあった(!?)中学生が書き綴った「絶望ノート」をめぐって巻き起こる騒動を描いていますが、なかなか人間の本質を突くコトバと言いますか、行動原理といいますか、心理学みたいななるほど感が織り込まれていて、この人はやっぱりすごいなあと改めて感じる次第です。それが何かを書いてしまうと、ネタバレになってしまいますのでやめておきます。この作品はネタバレしてはいけないでしょう。
ぐうたらでジョン・レノンの格好をしている奇妙なキャラクターの父親、二度目の結婚でそんな夫と別れるに分かれられない母親、自己陶酔に終始する担任教師、そして典型的だが最もばれにくいいじめを仕掛ける同級生たち。こんな設定ですが、やはり歌野センセーはキャラクターの設定で読ませる人ではなく、ストーリーテリングで読ませる人ですね、他の人にはまねできない上手さを感じました。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月26日

書評197 翔田寛「祖国なき忠誠」

あの逗子のデニーズが閉店になるそうで。ちょっと悲しいす。
海育ちなもので、最近湘南とか行っていないなあと思うと、ものすごく行きたくなります。マイホームを買うときも、本気で湘南に住もうかと思ったくらいマリンサイドが好きですが、江ノ電とかで通勤したい!と今でも思ってしまう自分は、じゃあこの街が嫌いかというと全然そんなことはなく、結構気に入っています。平和な街ですわ。
会社の隣の席の女の子は寮の強制退去が近づいていますので、どの街にしようかといろいろ物件情報やら公園情報(公園の近くがターゲットらしい)などを探しています。東京も意外と平坦ではなく、六本木や赤坂なぞはゲリラ豪雨で何度も水没しかかっていますし、渋谷のあの低さといったらマジで怖いくらいだし。だれか東京高低差マップみたいなものを作ってくれませんかね。。。

内容(講談社HPより)
信ずるべきは「血」か「国家」か。
昭和20年夏、焦土ニッポン。容赦ないGHQの戦犯狩り。その尖兵として送り込まれた日系人軍曹、マイク・ミヤタケ。彼の最後の標的――それはかつての「同胞」だった。
江戸川乱歩賞受賞作『誘拐児』から1年、戦後闇市の混沌から新たなドラマが生まれた。
アメリカで生まれ育った若き日系2世。1人はアメリカを「祖国」として選び、1人は日本へ「帰化」をした。戦勝国と敗戦国に引き裂かれた8月15日、2人の悪夢は、その日から始まった――。
国を喪い、闇市の中を追い追われる者達に魂の救済はあるか?

曹源寺評価★★★★
またしても、と言うべきでしょうか。戦後間もない混乱期を舞台にした作品に巡り合ってしまいました。「栄光なき凱旋」「デッドライン」「銀座ブルース」など、同時代を舞台とした作品はこのところ立て続けに読んでいます。これは何かの縁ですね。
戦後間もない時というのは、小さいときに祖父祖母に聞かされたこともない時代であるだけに、恐らく多くの人々は闇市でものを買い、買い出し列車に乗って着物や貴金属と食料を交換したわけで、ある人は戦後のどさくさにまぎれて別人に成りすまし、ある人は己の矜持を貫いて餓死し、ある人は軍の物資を横流しして大儲けした時代。ミステリ小説を通じてこんなに多くの知識を仕入れることが出来たというのはちょっと意外でした。
本書に戻りますと、日系2世が日系2世を追うという展開で、関西を舞台に追う者と追われる者の物語を通じて悲しいストーリーが展開されるわけですが、これがなかなか良く出来ています。なぜ彼は追うのか。そしてなぜ彼は逃げ出さなければならなかったのか。日系2世の悲劇は米国にいた人達ばかりではなく、日本にいた人達にも悲しい影を落としていたわけであります。ちょっとシンプルな感じで「デッドライン」のような緊迫感や「栄光なき凱旋」のようなヒューマンタッチでもないので多少の物足りなさは否めませんが、それでもこの時代の一断面として読んでおくのは良いかもしれません。



あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月21日

書評196 大倉嵩裕「福家警部補の再訪」

マスコミが一切報道しないニュースのひとつが「記者クラブの解放」問題です。ネット住民ならみんな知っているこの問題はなぜか一切テレビや新聞では報道されません。
民主党はマニフェストに記載しておきながら、結局、首相就任報道の時だけ雑誌社に許可を与えましたが、その後は開放すらしていません。文春記者の上杉よ、今週号では絶対に書けよな。というか、編集部よ、上杉に書かせろよな。でなきゃ20年の購読をこれにて打ち切るぞ。文春の最近のリベラルっぷりはなんだかちょっとひどいね。政権が代わってからはまた少しマシになってきたけれど。

ところで、記者クラブは解散しなくても良いから、他の報道関係者に記者会見などの席を開放させるべきでしょう。いい加減。
民主党も結局、こうやって別の権力にはおもねっていくのかと思うと、先が思いやられます。



内容(東京創元社HPより)
鑑識不在の状況下、警備会社社長に真っ向勝負を挑む「マックス号事件」、売れっ子脚本家が拉致監禁犯を射殺し生還するという自作自演のシナリオを書く「失われた灯」、斜陽の漫才コンビ解消、片翼飛行計画に待ったをかける「相棒」、フィギュア作りに絡む虚虚実実の駆け引きを制する「プロジェクトブルー」――以上4編を収録。『福家警部補の挨拶』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第2集。

曹源寺評価★★★★
本書はいわゆる「倒叙もの」というやつでして、最初から犯人が分かっていて、警察がどれだけ真実に迫れるかを読んでいくものです。本書の前に「福家警部補の挨拶」というのがありまして、これがなかなか良いできばえです。本書も負けず劣らず良い作品でしょう。この手の作品で有名なのが「刑事コロンボ」ですが、日本では「古畑任三郎」がありますね。本書の主人公である福家警部補は女性で、しかも一見すると警察官には絶対に見えない風貌という設定です。しかも、いつも警察手帳(バッジ)をどこにしまったか忘れてしまうので「あんた、本当に刑事さん?」と必ず聞き込みで問われるシーンが出てきます。これが定番なんですが、いい味を出しています。うーん、いいなあ。こういう「いつものシーン」というのは結構好きです。こっちは「ああ、またやっているなあ」なんですが、このおとぼけの裏にある、彼女の執念深い捜査が必ず実を結ぶわけでして、なんだかとってもホッとさせられます。
ただ、この手の小説にも弱点があります。設定がどうしても限られてしまうという弱点です。シリーズ2作目にして、ほぼ全編、共通しているのが「犯人はやむにやまれず人を殺し」「なんとか隠ぺい工作を謀る」が「ささいなミスから犯行が発覚し」「見事福家警部補が事件を解決する」というパターンです。しかも、加害者はそのほとんどがなんらかの社会的地位にいる人間であるというオマケまであります。このパターン以外の作品が登場したとき、私は作者に拍手喝さいを浴びせたいと思います。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 22:14| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする