ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2018年05月22日

書評898 真保裕一「オリンピックへ行こう!」

こんにちは、曹源寺です。

日大アメフト部の悪質タックル事件(という名称が増えてきましたね)は大学側の誠意なき対応が尾を引いて、今週もまた炎上中でありました。
本日(5/22)は加害者の選手が記者会見を開き、内田(前)監督と井上奨コーチの実名が飛び出て次なるターゲット(というか真の黒幕)が浮かびあがったわけですが、ここまでのあまりにも酷い日大広報の対応はもしかしたら彼らを更迭させたいがために仕組んだのではないかと、逆に疑ってしまうレベルでありました。
日大広報
「うーん、内田かぁ。こんな人物が常務理事などやっていては、ましてや次の理事長候補とまで言われているようでは、今後の日大の名に傷がつく。だからこの不祥事を機にとっとと追放してしまおう!そのためにはまず、広報がコイツをかばえばいいんだな。そんで、真実をは逆のことを言わせてまずは逃げよう。どうせこれだけネットが浸透していたら、いずれ真実は明らかになるに違いない。そうなった時にコイツは間違いなく窮地に立たされる。よし、この戦法で行こう!」

もし広報がこんなことを考えて行動していたのだとしたら、危機管理としては逆に及第点ではないかとも思います。一時的に日大の名は落ちるでしょうが、なんというか、「肉を切らせて骨を断つ」くらいの戦法でありましょう。危機管理の題材としては非常に面白いものを残してくれそうです。つーか、ミステリとして一本書けそうなネタですな。

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内容(講談社HPより)
大学卓球チーム内の軋轢や友情、競歩ランナーの孤独、サッカー選手の挫折と希望、各種目で日本代表を目指すアスリートを描く応援小説


曹源寺評価★★★★★
真保裕一センセーの「行こう」シリーズも第4弾に突入であります。勢いがあって良いですなー。
本書は「卓球」「競歩」「ブラインドサッカー」の3作品が収録されています。タイトルはそのまんま、内容もズバリオリンピックを目指す卓球と競歩とブラインドサッカーの選手の物語です。
本書の半分を占める「卓球」は、オリンピックを目指す大学生、成元雄貴を主人公にして、全日本選手権や大学対抗戦などにおけるヒリヒリしたゲームシーンを中心にその心理戦や仲間との友情などを描いています。しかしながら、主人公の実力はオリンピックには程遠く、日本代表どころか強化選手にもなれていない状況ですので、ちょっと拍子抜けです。ただ、卓球の試合のシーン、ラリーの応酬のシーンはまるで実写をスローで観ているかのような息詰まる描写です。これはもう、さすがのベテラン作家としか言いようのないうまさだと思います。
「競歩」は実業団チームに所属するベテランランナー白岡拓馬の人生を賭けた戦いをオリンピックへの切符を賭けた50キロ競歩のシーンを中心に描いています。記録アップのためなら義理も人情もかなぐり捨ててきた男の、プライドをかけた戦いです。あぁ、そういえばこういう人物って真保センセーの得意技ではないですか。人生の様々な選択場面において、周囲の期待やしがらみ、場合によっては愛情さえも裏切ってきた男。一途といえば一途だが、不器用でバカともいえるし、回り回って自業自得な部分も露呈している、そんな男を書かせたら真保センセーの右に出る者はいないでしょう。ラストは煮え切らないですが、なんだか

真保センセーの真骨頂を見た思い

がしました。
最後の「ブラインドサッカー」は元Jリーガーの山森幹雄が知人の秋山圭一郎の活動に巻き込まれてブラインドサッカーのチームにコーチとして世話を焼くようになるストーリーです。ページ数が少なくて、こちらもちょっと煮え切らないですね。明日のパラリンピックを目指すのはいいのですが、本書の他の2作品と比較してしまうと内容が浅すぎてもったいないイメージです。もっと長編っぽく書いたら面白かったのかもしれないと思うと残念でなりません。
個人的にはヒリヒリした人間関係がとても切れ味鋭い、真保センセーらしさ全開の「競歩」が好きです。





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posted by 曹源寺 at 16:40| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月18日

書評897 矢月秀作「刑事学校」

こんにちは、曹源寺です。

こういう法律が成立したのですが。

候補者男女均等法が成立 女性議員増加、政党に努力促す(5/16朝日新聞)
選挙で男女の候補者数をできる限り「均等」にするよう政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が16日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。女性の議員を増やすことを促す日本で初めての法律だ。
この法では、政策の立案や決定に多様な国民の意見を的確に反映するため、国会と地方議会の選挙で「男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指す」と規定。政党に対し、女性候補を増やす努力を求める。超党派で2015年に立ち上げた議員連盟(会長=中川正春・元文部科学相)が主導した。
法に合わせ、総務省に対して地方議会で女性を含め幅広い層が議員として参画しやすい環境整備について検討することや、内閣府に対して女性の政治参画支援についての情報提供をすることなどを求める決議もした。


世界各国を見渡せば、議員の数を男女半々にしなければならないとかわけのわからん法律が制定されている国もありますので、少しは世界標準(笑)に近づいたのかもしれないですが、よく考えてみるとこんな法律に意味はあるのだろうかと思ってしまうのは自分だけではないはずです。

そもそもこの法律は努力目標であって義務ではないのであります。つまり、パフォーマンスだけの代物です。
「○○党はこの法律に基づいて候補者の男女比率を1対1にしました。すごいでしょ!だから○○党に投票して!」と言われたらみなさんはどう思いますか?
自分は逆に引いてしまいそうです。

国会議員とは国民の代表です。その代表とするべき物差しは1にも2にも「能力」でしょう。「実務遂行能力」かもしれないし、「外交能力」「法律策定能力」かもしれません。でもそれらに性別は関係ないはずです。能力8の男と能力9の女だったら、これは普通に能力9の女性を選びますよね。その逆も然りです。しかしこの法律では、候補者を10名選出しなければならない時に能力8の男が6人いたら、そのうち一人はもしかしたら能力7の女にその立候補席を譲らなければいけないのかもしれないわけですよ。
こういうのを世間では悪平等と言います。

自民党の小野田紀美参議院議員がツイッターで正論を吐きまくっていますので、気になる人はぜひお読みいただきたいと思います。「国民の生命と財産を守るのに男も女もない」という書き込みにはまったくもってその通り!と思いました。


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内容(文藝春秋HPより)
文春文庫初登場! 新感覚警察アクション
大分県警刑事研修所・通称刑事学校の教官である畑中圭介が生徒たちと共にカジノリゾート構想の闇に立ち向かう。痛快警察アクション。


曹源寺評価★★★★★
タイトルと表紙に惹かれて読みました。久しぶりの矢月センセーでした。
舞台は大分県警、畑中圭介警部補が刑事研修所の教官として新人刑事を教育しながら実践、すなわちOJTとしても捜査に携わらせて部下の成長を促していくというストーリーです。
とはいえ、読み進めていくとタイトル、紹介文との相違にだんだん違和感を覚えていきます。
事件は地元のチンピラが射殺体で発見される殺人事件の捜査ですが、被害者と主人公の畑中は幼馴染であり、捜査の中心を被害者の途切れた経歴を追うことに据えていくものの、事件関係者として挙がってくるのは中学高校時代の同級生ですので、必然的に畑中が捜査を進めていくことになります。そして、中盤から事件はさらに動き出していくわけですが、

これ、刑事学校が全然関係なくね?

と思うくらい生徒である新人刑事が機能していないんですよ。前半にきちんとキャラクター設定しておいて、中盤は全然出てこないという不思議な展開。(ネタバレ)彼らの活躍は全体から見れば微々たるもので、もっと登場させても良かったんじゃねぇのこれ?と思わざるを得ません。
タイトルとキャラクターとストーリーがこれほどまでにずれている作品は珍しいのではないかと思うレベルです。新人刑事を活躍させるための展開なんていくらでも思いつきそうですが、どうなんでしょう。たとえば、畑中がピンチに陥って、それを生徒たちが協力して救い出すとか、暴走した新人刑事がいて、そいつの窮地をみんなで助け合って乗り切るとか、なんかできそうな気がするんですが。
ただ、ストーリーのテンポは良くてすらすら読み進めることができますので、暇つぶしにはもってこいの作品ではあります。





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posted by 曹源寺 at 17:25| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月15日

書評896 深木章子「消えた断章」

こんにちは、曹源寺です。

「権力は腐敗する」という名言は英国の歴史家ジョン・アクトンが残したものですが、これは古今東西普遍の原理なのでありましょう。
ロッキード事件や金屏風事件(リクルート事件はビミョー)など、自民党の不祥事が昭和の終わりに続いたのは時代の必然だったのかもしれません。いまは自民党ではなくて第四の権力であるマスゴミのほうが腐敗しているように思います。野党やマスゴミが1年以上かけてモリカケを追及してきたにもかかわらず、具体的な証拠が一切出てこないこの状況を考えると、安倍首相というのは逆に相当クリーンなのではないかとも思えます。
そして、ネットが新たな権力となり、マスゴミの腐敗を暴いているような状況ですね。

マスゴミだけでなく、長年続いた権力という意味ではスポーツの任意団体も然りでしょうか。日本相撲協会は言うに及ばず、バスケットボール(分裂)やレスリング(パワハラ)あたりはごく最近になって危機管理や企業統治が機能していないことが暴露されました。少し前にはスケート連盟も叩かれていましたね。
プロ野球は老害が跋扈していて巨人軍ありきの論理がいまだにまかり通っているならヤバイでしょう。
まともというか頑張っているのはサッカー、テニス、バレーボール、卓球、ラグビーあたりでしょうか。サッカーはマイナースポーツをここまでメジャーに押し上げたのですからその功績は認められるべきでしょう。これから腐敗しなければの話ですが。ラグビーは一時期日本代表が盛り上がったのに、その後の戦略が雑だったから萎んでしまいましたね。もしかしたら無能なのかもしれません。

そんななかで、アメフトのタックル事件が話題になっていますね。日大アメフト部が相手QB潰しに走り、おそらくは監督の指示であろうと思われるこの行為も当の監督が逃げ回っている状況ですから推して知るべしです。あんなラフプレーを容認していたら、アメフト全体のモラルが問われるわけですから、ここで自浄作用を発揮できるか否かで協会(連盟?)の健全さが周知されるということだと思います。
でも、このタックル事件が広まったのはツイッターのおかげなんですよね。ツイッター、恐るべし。


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内容(光文社HPより)
君原樹来は推理作家を目指す法学部の4年生。あるとき、同じ大学に通う妹・麻亜知の友人、葛木夕夏があるトラブルを抱えているといい、元C県警捜査一課の刑事であった樹来の祖父に相談しに行くことに。
夕夏は10年前、実の叔父に誘拐されたことがあった。ただ、記憶を失った時間があっただけで被害はなく、当時は身内のトラブルと片づけられたのだが、最近になって警視庁が再捜査に乗り出しているという。同じ10年前、同じく誘拐された男児の白骨遺体が最近発見されたことが関係しているようだ。
当の叔父は行方不明になり、裕福な創業者一家だった葛木家は、その後みるみるうちに崩壊していったのだが――


曹源寺評価★★★★★
元弁護士センセーで遅咲きのデビューを果たし、そこからは怒涛の執筆でミステリ界に新風を呼び込んでいる深木センセーの最新刊であります。
「交換殺人はいかが?」という作品があったのですが、その続編というか、主人公である君原樹来が大学生になって再び登場するというファンにはたまらない設定の作品ということです。しかしながら前作を自分は未読でありますのでその辺は割愛させてください笑
この樹来と元C県警刑事だった祖父、それに樹来の妹である麻亜知が推理を働かせながら身近に発生した事件を解決していくというストーリーです。その身近な事件というのが、麻亜知の友人である葛木夕夏が関わった10年前の誘拐事件だったということで、なぜか10年が経過した現在に警視庁捜査一課が再捜査に乗り出している。その理由は何なのか。そして新たに見つかった白骨死体は何を語るのか。
序章でいきなりの衝撃的な展開にビビるのですが、そこから先は読み進めていくうちに少しずつ事件の色彩が変わっていくのでちょっと不思議な感じがします。事件の断片だけで構造を理解しようとすると、その後に追加されてくる新たな事実がその構造を破壊し、再構築を余儀なくされるんですね。そしてまた新たなピースを埋めようとすると事件の構造がガラッと変わってくるのです。この辺のトリッキーな記述を楽しむことができれば本書は非常に面白く読めるのではないかと思いますが、いかんせん事件の構造は複雑ですので、しっかりと読み進めていく必要があります。
深木センセーは文章がお上手です。しかし上手過ぎるというのもあまり面白味がないのでしょうか、それともキャラクターのインパクトが薄いからでしょうか、最近のミステリ読者は贅沢だというのもあると思いますが、

本当は複雑なのにさらっと読めてしまい、それがかえって仇になる

という良く分からない作風になってしまっているわけです。面白いのに読後感が薄い。これは編集者が悪いな。





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posted by 曹源寺 at 16:47| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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