ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年12月12日

書評857 歌野晶午「ディレクターズ・カット」

こんにちは、曹源寺です。

本日発表された「今年の漢字」は「北」だそうです。なんやねん北って。北朝鮮のほかに何があるんや?と思ったら、キタサンブラックだってwwwなんだかな〜
どうせなら「禿」にしてほしかったwww
年末の風物詩である流行語大賞と今年の漢字はもう、完全にオワコンですね。

それと、年末は「このミステリーがすごい」と「文春ミステリ」が発表されますね。こちらはまだまだ熱いかと思います。
自分はこのブログが「ミステリ読みまくり」と言っておいてなんですが、本格ミステリの分野がそれほど好きではありません。なぜかと聞かれると答えに窮するのですが、おそらくは現実離れしすぎた設定とか凝りすぎたトリックとかが好きではないのだろうと思います。
ですから、エンタメ的な作品ならまだ読むのですが、特定の作家センセーには見向きもしないことがあります。上記のランキングにも常連のように上がってくるセンセーがいらっしゃいますが、自分はまったく読んでいない方も少なからずいらっしゃいますのでそこはご容赦ください。
ただ、今年の顔ぶれを見ますと、月村了衛センセーとか柚月裕子センセー、それに太田愛センセーといったエンタメ指向の方々がランクインされていてうれしかったです。
特に太田愛センセーは小説デビューからかなり意欲的な作品が多いので、応援したいなあと思っています。

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内容(幻冬舎HPより)
大ベストセラー『葉桜の季節に君を想うということ』で読者の度肝を抜いた、本格ミステリの名手が仕掛ける驚愕の傑作クライムサスペンス! テレビのワイド情報番組の人気コーナー「明日なき暴走」で紹介された、若者たちが繰り返す無軌道、無分別な言動・行動が、じつは下請け番組制作会社の有能な突撃ディレクター仕込みのやらせだとわかったとき、無口で不器用かつネクラな若い美容師が殺人鬼へと変貌する。さらに視聴率アップを狙うディレクター自身が加速度的暴走を開始。静かなる殺人鬼は凶行を重ねる。警察の裏をかいて事件を収拾し、しかもそれを映像に収めようとするディレクターの思惑どおり生中継の現場に連続殺人鬼は現れるのか!? ラスト大大大どんでん返しの真実と、人間の業に、読者は慄然とし衝撃に言葉を失う!


曹源寺評価★★★★
歌野センセーの作品久しぶりでした。最近はどんでん返しがあちこちの作品で披露されていて、歌野センセーの出番が少ないなぁと思っていたところでした。
あれ、でも本書の紹介には「クライムサスペンス」とありますね。ミステリではないのですかね。
などと思いながら読みました。
なるほど、ミステリ色はそれほど強くありませんが、やはりラストにかけてはどんでん返しだらけで読み返す場面があちこちにありました。読者の裏をかくというセンセーのテクニックは相変わらずでありました。
番組制作を請け負うテレビ局の下請け会社に勤務する長谷見潤也が主人公です。長谷見は自分の「手下」にやらせを仕込ませて、バラエティや報道などでさもあったかのような事実に仕立て上げて視聴者の歓心を買うという、ある意味「やり手」のディレクター。ある日、手下の一人である楠木虎太郎がファミレス帰りに鋏で襲われる。落としていった名刺から川嶋輪生という名前が浮上し、長谷見は犯人捜しを行うようになる。
その川嶋は川崎・溝の口の美容室で働く無口で不器用な、まだ鋏を持たせてもらえない立場。父母は離婚し、友人もおらず、ツイッターのフォロワーも事実上のゼロという孤独な青年であった。この川嶋が殺人鬼に変貌したのはなぜなのか。そして、長谷見は映像の力で川嶋を探し出すことができるのか。
長谷見の歪んだ倫理観とテレビ業界の闇、楠木の若者らしい非常識さ、川嶋の抑圧される日常、などなど、

登場人物がクソだらけのなかに救われるものが何もない

という展開はある意味、読むほうも鬱な気分にさせられること請け合いではありますが、それでも話の先を読みたくてページをめくる手が止まらないのは歌野センセーの筆力のなせる技であろうかと思います。
歌野センセー、50台も半ばにして若者同士の会話とかツイッター上のやり取りなどの表現がリアルすぎです。
ラストまで気の抜けない展開とそれなりのどんでん返しはさすがですが、最後に思うのはやはり、テレビ業界の、小説なのにリアルな業界事情を垣間見ることができてやっぱりテレビ業界は人として終わっているんだなあという感想でありました。





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2017年12月05日

書評856 竹内明「スリーパー 浸透工作員 警視庁公安部外事二課 ソトニ」

こんにちは、曹源寺です。

先週、流行語大賞2017が発表されました。2017年は「忖度」と「インスタ映え」だそうです。昨年の「日本死ね」あたりからネット民の反発がすごくて、「ユーキャン○ね」まで発展してきましたが、今年もまた「忖度」で政治ネタを持ってきましたね。
さらに、トップ10には「フェイクニュース」がランキングされてより一層の物議をかもしています。
デイリー新潮の記事がありました。

流行語大賞「フェイクニュース」の説明もまたフェイクだった(2017/12/5)
毎年大きな話題となる「ユーキャン 新語・流行語大賞」。2017年の大賞は「忖度」「インスタ映え」で、それに続くトップテンの中には「フェイクニュース」が選ばれた。
この言葉が選ばれること自体には異論を挟む人は少ないだろう。なにせ大統領が頻繁に使っていたくらいである。
が、問題はその説明。同賞のホームページでは、「フェイクニュース」について、以下のような説明が掲載されている。
「ネット上でいかにもニュース然として流布される嘘やでっち上げ。2016年のアメリカ大統領選挙では『ローマ法王がトランプ候補の支持を表明』『クリントン候補がテロ組織に資金を渡した』など、いかにも報道サイトっぽい雰囲気のウェブサイトに掲載され、それがあたかも事実のように拡散した」

この説明を読んで、違和感を持つ人も多いのではないか。フェイクニュースは、ネット上で流布するもの限定の概念だったっけ? と。たしかトランプ大統領は、CNNなど既存メディアに対して「フェイクニュースだ!」と言っていたはず……。

その名も『フェイクニュースの見分け方』(烏賀陽弘道・著)には、「言葉の定義を明確にすることは、論点を明確にすることでもある」とある。つまり、何かを調べる際に、まず言葉の定義をきちんとしておくことが大切だというのだ。また、同書では「公開情報にあたることが大切だ」ともアドバイスしている。

そこで誰でもすぐにアクセスできる英語版のウィキペディアで「fake news」を見てみよう。
すると、最初に次のように書いてある。
「フェイクニュースとは、従来型の印刷物や放送、またはネットを介して伝えられる、意図的な誤情報、悪質な情報で、イエロージャーナリズムやプロパガンダの一種である」
少なくとも、「本家」アメリカでは「ネット上」の情報に限定していないことは明らかだろう。ところが、「流行語大賞」に限らず、日本では「フェイクニュース」というと「ネット」と結びつける論調が見られるのも確かだ。
もちろん、ネット上には怪情報が溢れていることは事実であるが、一方で新聞など大手メディアの誤報をいち早くネットユーザーが指摘することも珍しくない。『フェイクニュースの見分け方』の中で、著者は次のように述べている。
「よく『どの新聞なら信用できますか』という質問を受ける。あるいは『どのテレビ局なら』『どの雑誌なら』『どの番組なら』と聞かれる。そういう時、私はこう答えることにしている。『情報は料理です。媒体は料理を運ぶ器です。みなさんが食べるのは料理であって器ではありません』
ある料理を『美味しい』と気に入ったとき、覚えておくべきは料理を作った板前・シェフであって、皿を焼いた陶工ではない。
信用できる発信者を見つけたなら、その人がどんな媒体に移ろうと、発信する情報を追いかければ良い。
発信する情報が事実である精度が高ければ、別に報道記者でなくてもいい。研究者や弁護士など『高リテラシー職業』の人でなくてもいい。普通の市井の人でいい。肩書や職業はあまり関係がない。インターネット時代は、そういう人も事実を公に発信できる」
多くの場合、「フェイクニュース」と「ネット」を結び付けたがるのは、新聞などオールドメディア出身者である。してみると、「新語・流行語大賞」の説明で「フェイクニュース」=ネット上の情報、となっていたのは、そういう人たちへの「忖度」ゆえなのだろうか。


ユーキャンの説明に違和感を覚えた方は多かったと思いますが、怖いのは違和感を覚えずに「フェイクニュースとはネットに流布されているウソの情報である」という定義づけがいつの間にかなされていて、それを鵜呑みにしてしまっている人がそれなりにいるのではないかという点にあります。

違うんですね。
フェイクニュースを垂れ流しているのはマスゴミのほうであるということをしっかりと広めていく必要があるなあと痛感します。本当にひどいわ。


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内容(講談社HPより)
母上様、あなたはどうして日本を捨て、北にやってきたのですか――。
報道記者としても活躍する著者が放つ、リアル諜報ミステリ。
東京で、就活中の大学院生として、ごく普通の生活を送る青年・倉本龍哉。だが、彼の名前や戸籍、経歴は、すべてある国家によって用意され、与えられたものだった。
豊かで平穏な日本での日常と、家族の暮らす祖国のギャップ。エリート工作員としての誇り。周囲には決して悟られぬよう、日本社会に「浸透」(チムツ)する緊張……。
だが母親から、「日本でしてほしい」と頼まれた、ある願いが龍哉の運命を変えていく。
一方、「公安警察の狂犬」として外国スパイに恐れられながら、日本の上層部に巣食う潜入者=モグラの影に切り込み、警察組織を追われた外事二課のエース・筒見慶太郎は、指令を受けて訪れたバングラデシュ・ダッカのスラムで罠にかかり、殺人の嫌疑をかけられる。
交錯する筒見と龍哉の運命。日本と北朝鮮、対立する国家の狭間で引き裂かれた人々の思い。激闘の果てに、ふたりが辿り着いた驚愕の真実とは。
「目を醒ませ。本当のお前は、誰なのか――」


曹源寺評価★★★★
「外事二課」通称ソトニ。ソトニシリーズというのでしょうか、現役のTBS記者である竹内センセーが出したシリーズ第1弾の「背乗り」は、北朝鮮のスパイが日本人の戸籍を乗っ取って日本人に成りすましているという設定でその工作っぷりを暴露して話題となりました。本書は「背乗り」「マルトク」に続く第3弾ということになります。
竹内センセーの著作は悪の巣窟北朝鮮!というテーマで一貫されています。本書もまた公安vs北朝鮮という構図は変わりませんが、北の工作員の活動っぷりがあまりにもリアルなので驚かされること請け合いです。
ストーリー紹介は上記に譲りますが、あちこちで事件が起こり、一見バラバラのように動いて見えるピースが、実は一本の糸でつながっているということが中盤以降徐々にわかってきます。バングラディシュの殺人事件、国内で活動する背乗りの工作員、警察庁理事官の妻の不貞、筒見の元部下の裏工作、等々。中盤からラストにかけては怒涛の一気読みでありました。
ただ、事件というか工作そのものに重きを置かれていますので、何故にそういうことになったの?という疑問符が浮かぶ場面が少なくありません。

ディテールがイマイチなのに面白い

のは、やはりあちこちに仕掛けられているちょっとしたどんでん返しが良いスパイスになっているのでしょうか。
事件の構図はやや複雑ですが、ひも解いてみるとよくできているなあという感想です。だからこそ細かなところまでは書ききれなかったのでしょう。場面もあちこち飛ぶので頭の中を整理しながら読む必要があります。
衝撃的なラストも含めて、本書はシリーズ中でも最高の出来ではないかと思います。





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posted by 曹源寺 at 18:39| Comment(0) | た行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月01日

書評855 伊坂幸太郎「AX」

こんにちは、曹源寺です。

北朝鮮籍の漁船が相次いで漂着している件の真相は、どうやらこういうことらしいですね。
・北朝鮮は近海の漁業権を中国に売り払ってしまったので日本のEEZまで来るしかなくなっている
・それで母船がいくつものオンボロ船を(文字通り)率いて大和堆まで漁に来るようになった
・大和堆は荒れやすい海域なので、オンボロ船は母船から切り離される
・オンボロ船は燃料もそんなに積んでいないので自力で帰還できない
・運が良ければ日本のどこかに漂着するが、大抵は沈む
・乗組員はほとんどが軍人で漁の素人である

だから装備もわずかだし、一度切り離されれば大量に難破船が生まれるわけですね。なぜ軍人が漁をしているかと言うと、偉大な首領様が軍に栄養のある魚を食べさせるように指示したとかしないとか。おまけに軍人なら給料の範囲でこき使えるからだとか。

ですから、青山繁晴議員が国会で「天然痘ウイルスをばらまきにやってきたら防げないぞ」と実に怖いことをおっしゃいましたが、ちょっと大げさだったかもしれません。しかし、武装難民のシミュレーションと考えれば実践的でよかったのかもしれませんね。

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内容(KADOKAWA HPより)
最強の殺し屋は――恐妻家。 殺し屋シリーズ最新作!
【伊坂幸太郎史上最強のエンタメ小説<殺し屋シリーズ>、『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる、待望の最新作!】
最強の殺し屋は――恐妻家。
物騒な奴がまた現れた!
新たなエンタメの可能性を切り開く、娯楽小説の最高峰!
「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。
一人息子の克巳もあきれるほどだ。
兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。
引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。
こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。
書き下ろし2篇を加えた計5篇。シリーズ初の連作集!


曹源寺評価★★★★
伊坂幸太郎センセーの殺し屋シリーズ最新刊です。殺し屋シリーズは人気が高く、自分も大好きです!
「グラスホッパー」では「蝉」や「鯨」、「マリアビートル」では「檸檬」や「蜜柑」といった個性的な殺し屋さんたちが騒動を巻き起こしてくれます。
本書では「兜」が主人公です。ふだんは文房具の営業マンだが、超一流の殺し屋である。そして、恐妻家でもある。日ごろから妻の言動に注意し、また自分の言動も妻の逆鱗に触れぬよう注意深く振る舞う。高校生の息子を持つ父でもある。つまり、殺し屋であり、サラリーマンであり、夫であり、父である。それぞれの立場をしっかりと見極め、そして演じている。殺し屋稼業もおさらばしたいが、連絡役(仲介役)の医師がそれを許さない。抜けるには違約金がいるらしい。その違約金をねん出するために今日も兜は殺し屋に精を出す。
5作を収録した連作短編の形式ですが、最後の2作が書下ろしとなっていて、短編のようで実は長編だったみたいな感じに仕上がっています。この書下ろし2作が全体のストーリーを大きく補強していますので、いつもの伊坂作品、つまり

絶妙な伏線の回収と骨太なラストのコンビネーション

につながっています。
また、他の2作より登場人物が多くないので、シンプルでわかりやすいと思います。
なによりワクワクするのは、章割りの冒頭に押してある印鑑です!殺し屋シリーズだけのオリジナル(死神シリーズもそうだっけ?)ですが、自分はこれ見ると非常にグッとくるんですよ。さあ読むぞ!という気分にさせてくれます。

koroshiya.jpg

本書だけでも十分面白いのですが、過去の殺し屋さんも名前だけ出てくることがありますのでこのシリーズをご存じない方はぜひ「グラスホッパー」からお読みください。どっぷりと浸れますよ。





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posted by 曹源寺 at 18:10| Comment(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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