ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年10月20日

書評845 深町秋生「ドッグ・メーカー 警視庁人事一課監察係 黒滝誠治」

こんにちは、曹源寺です。

本日の日経平均が14連騰ということで過去最長に並んだそうです。
日経平均、14日連続上昇=高度成長期以来、約57年ぶり(10/20時事通信)
20日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比9円12銭高の2万1457円64銭で終わった。高度経済成長期の1960年12月21日〜61年1月11日に記録した過去最長の14営業日連続上昇に56年9カ月ぶりに並んだ。

普通は上がったあと少し下がって、また上がるといった具合に相場は絶えず上下に動いていくものですから、14連騰はちょっと異常といえば異常です。
しかも、我々庶民には景気回復の実感があまり伴っていませんので、一部の富裕層や投資家、金融機関だけが儲かっているような印象を受けてしまいます。トリクルダウンという言葉も実際には発生しないような空疎な単語であったことも分かっています。
では、このアベノミクスの成果を広く還元するためにはどうしたらよいのか。
これはやはり、「賃金を上げて消費税率も凍結かあるいは下げる」という一択です。社会保障費と消費税の上昇で実質賃金は目減りしているわけですから、財布のひもが緩むわけがないのですから。
自民党は企業に(というか財界に)法人税下げるから賃金上げろと主張しています。その一方で消費税率を上げるぞ、とも言っています。これをどう解釈すべきか悩んでいましたが、おそらくは「財務省対策」なのではないかと勘繰っています。
つまり、権限の強い財務省には「消費税率は上げざるを得ないな」と言っておいて、実際には「景気回復の実感が伴っていないから消費税率は上げません」という戦略ではないかと。
真偽のほどは分かりませんが、かの民主党政権時代も結局は財務省にいいように踊らされて消費税率は凍結も引き下げも実行できていません。それだけ財務省は手強いのだろうと思います。

もし、自民党が財務省対策でなく本気で消費税率を上げようとしているならば、それは明確に反対のサインを投げて良いのだろうと思います。

ただ、一方では賃金を上げようと連合に働きかけているのに、その連合は(旧)民進党を応援したりしていてもう本当に訳が分かりません。
野党のほうはこうした賃金政策について、きちんとコメントを出すべきでしょう。あぁ、でも経済対策に関しては全然ダメダメなんだよなぁ。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(新潮社HPより)
黒滝誠治警部補、非合法な手段を辞さず、数々の事件を解決してきた元凄腕刑事。現在は人事一課に所属している。ひと月前、赤坂署の悪徳刑事を内偵中の同僚が何者かに殺害された。黒滝は、希代の“寝業師”白幡警務部長、美しくも苛烈なキャリア相馬美貴の命を受け、捜査を開始する。その行く手は修羅道へと繋がっていた。猛毒を以て巨悪を倒す。最も危険な監察が警察小説の新たな扉を開く。


曹源寺評価★★★★
深町センセーも意外と警察小説を数多く上梓されていて、不勉強にも未読の作品が結構残っています。
本書はその中でも監察官という異色の立ち位置にいる警察官を主人公に据えた作品でしたので、ちょっと興味がわきました。
異色の警察官というジャンルは、かの横山秀夫センセーが開拓したのが始まりと言われていまして、警務部という部署を描いた「陰の季節」から広報官という役職の人物の孤軍奮闘を描いた「64(ロクヨン)」まで本当にさまざまです。
主人公の所属するポジションは警視庁の人事一課というセクションで、主な業務は監察ですから、警察のなかではそれなりに権力を持っている部署だと思います。そんな部署の人物を主人公に据えたにもかかわらず、盗聴、尾行、暴力、脅迫、果ては殺人まで出てくるというとんでもない内容の作品であります。主人公の黒滝誠治は元々組対(組織犯罪対策課、つまりマル暴ですね)にいたやり手の刑事だったが、ある事件の内偵中に子飼いのエス(スパイ)を殺された恨みで情報を漏えいさせた部下を半殺しにしてしまい、交番勤務になったところを人事一課に拾われたという経歴を持ちます。なんだかとんでもない経歴です。ちょっとイカレていますが、どんなイカレっぷりかは本書をぜひお読みください。

監察を主人公にしてここまでやるか?

というくらいド派手な立ち回りを繰り広げてくれます。
尋常ではないこの派手なアクション。警察内部の血で血を洗う抗争は警察版仁義なき戦いと言っても良いくらいディープです。
黒滝の周囲を固める人物もキャラ立ちまくっていますし、ラストは大団円でもありませんので、こうなると必然的に続編を期待してしまいます。期待しましょう。するしかない。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 17:29| Comment(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月17日

書評844 京極夏彦「書楼弔堂 炎昼」

こんにちは、曹源寺です。

選挙も終盤に差し掛かり、様々なニュースが飛び交っていますね。
石原慎太郎が立憲民主党の枝野党首を褒め称え、日本のこころから希望の党に鞍替えした中山成彬が安倍首相をこき下ろす。民主党から希望の党に移籍した小川淳也や階猛は踏み絵を踏んだはずなのに憲法改正は行わないと発言し、民進党の参院議員小川敏夫は選挙後の合流を示唆する。

すげえなあ。もう訳わからんですわ。
でも、いくらなんでもグチャグチャすぎやしませんか。

当選するためにはなりふり構っていられない、という態度が露骨に出ると有権者はかえってその態度を嫌うのではないかと思いますが、本人にはその自覚はないのかもしれません。

選挙が終わった後、どのような構図になるのか、そして選挙後の再々編はあるのか。実に興味深いですね。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(集英社HPより)
時は明治三十年代。移ろいゆく時代の只中で、迷える人々を導く書店「書楼弔堂」。田山花袋、福来友吉、平塚らいてう、乃木希典……彼らは手に取った本の中に何を見出すのか?待望のシリーズ第二弾。


曹源寺評価★★★★★
弔堂シリーズの第2弾はこれまた驚異的な面白さでありました。このシリーズの特徴をおさらいしておきますと、
明治三十年代、東京の四谷(?)界隈にそびえる大型書店「弔堂」が舞台
その大きさは日本橋丸善をも凌ぐが、道行く人にはなぜか素通りされてしまう
弔堂の主人・龍典は元僧侶で年齢不詳、そこに働く丁稚の「しほる」も年齢不詳
弔堂は書物の墓場であり、主人はこれを供養している
弔堂を訪れる迷える有名人が毎回登場し、龍典が彼らに最適な一冊を薦める
有名人が誰なのか、最後に明かされる

これまで、月岡芳年や岡田以蔵、勝海舟などなどびっくりするほどの著名人が登場してきました。本書もまた、驚きの方々が迷いながら登場してきます。
この、迷える人の正体を読みながらあれこれ想像していくのが楽しいんですよ。
本書の場合、最後に明かされる

松岡って誰や?→ファッ!

という驚きがたまらなく癖になり、病みつきになってしまうのです。
一作目と異なるのは、全編を通じて語り部となっているのが元旗本の高遠から元薩摩藩士を祖父に持つ天馬塔子に変わったところでしょうか。彼女自身もまた、時代の移り変わりに翻弄される一人ではありますが、その苦悩を吐露するシーンはやはり明治中期ならではのものでありました。
個人的な話になりますが、自分の祖母は明治33年生まれですのでちょうど本書の時代に生を受けたということになります。とっくに鬼籍に入っているので伝聞でしかないのですが、あの四天王の渡邊綱の血を引いている逓信省の役人の家に生まれた人で、琴と裁縫の先生をやっていた女傑という人だったそうです。
祖父が軍人でしたので奥に引っ込んでいたのだろうと思いますが、時代が時代ならどこかの議員にでもなっていたかもしれないくらいチビシー人だったそうなので、そんな明治中期ってどんな世相だったのだろうかと想像することがあります。本書のとおりなのかはわかりませんが、この時代の空気感みたいなものも結構好きだったりします。平成も30年を迎えようとしていることを考えると、明治30年なんて瓦解からたったの30年です。昭和と平成なんて比べ物にならないくらい、時代の変革は凄まじかったはずですので、そんな時代の荒波を駆け抜けた偉人たちの(創作とはいえ)思想(っぽいもの)に触れるのはなんだかとても楽しかったりするのであります。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 17:35| Comment(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月13日

書評843 翔田寛「冤罪犯」

こんにちは、曹源寺です。

選挙公示がなされると、マスゴミ各社は議席予想を発表しますね。本日(10/13時点)では自民党が圧勝して自公連立で引き続き3分の2以上の議席を獲得する見込みだと報じています。

いつも不思議に思っていたのですが、事前に議席予想を発表することで国民には何らかのバイアスがかかってしまいませんかね?
心理学でいうところの「バンドワゴン効果」や「アンダードッグ効果」というやつです。
バンドワゴン効果とは、
消費者が他人に遅れないよう物を購入する現象。また、選挙などで、優勢と報じられる候補者に対して有権者の支持や票が集まりがちになる現象をいう。(コトバンク)
一方、アンダードッグ効果というのは、
選挙の勝敗予測で劣勢にあると報じられた候補者に対し、同情から多くの票が集まり、逆転勝利へとつながる現象をいう。(コトバンク)

ということで、こうした事前調査の結果というのは非常に集団行動に影響を及ぼすことが科学的にも証明されています。
自民圧勝なら選挙に行かなくてもいいか!
とか
自民が勝つならうちの選挙区の自民候補にも乗っかったほうがいいか!
とか
立憲民主党は劣勢だな、よし選挙行かないつもりだったけど行こう!
とか、個人の行動に様々な影響を与えるようです。
もしかしたらバンドワゴン効果とアンダードッグ効果が相殺されて、結局は調査結果が影響を与えることはないのかもしれませんが、個人的には投票率との関連があるような気がしてなりません。この辺も科学的に証明してみたいテーマではありますね。

公職選挙法には以下の条文があります。
(人気投票の公表の禁止)
第一三八条の三 何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。


罰則規定もあります。
(人気投票の公表の禁止違反)
第二四二条の二 第百三十八条の三の規定に違反して人気投票の経過又は結果を公表した者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。ただし、新聞紙又は雑誌にあつてはその編集を実際に担当した者又はその新聞紙若しくは雑誌の経営を担当した者を、放送にあつては、その編集をした者又は放送をさせた者を罰する。


ダメじゃんこれ!

と思ったら、どうやら判例があって、マスゴミ各社が行っているのは「調査」であって、「人気投票」ではないので法律違反ではないということらしいですね。
でもこれ、条文にも「新聞社」や「放送」ってちゃんと記述があって、マスゴミが行っているリサーチを「人気投票」という単語にしているだけだろうと思いますよね。高裁判決らしいので、最高裁まで行ってほしいなあと思いますが、最高裁で棄却されたら終わりですからどうしたもんでしょうか。
まあ、この条文は法の精神が形骸化されていることは明白で、法律が有名無実化している典型であろうと思います。

こんな現状ですので、我々は議席予想という事前調査には惑わされることなく、ましてや雰囲気や「人気投票」で決めるのは止めにして、経済対策、外交、安全保障、憲法、社会保障、などなど様々な観点から政策を見て判断するべきであろうと思います。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(KADOKAWA HPより)
たとえ悲劇を招こうとも、真実を暴くのが刑事の役目だ。警察捜査小説の極点
平成29年7月、千葉県船橋市の休耕地で、ブルーシートが掛けられた幼女の遺体が発見された。捜査に乗り出した船橋署の香山は、7年前に起きた<田宮事件>と遺体の状況が酷似していることに気づく。<田宮事件>では不可解な経緯から証拠が見つかり、犯人とされた男は冤罪を主張したまま刑務所内で自殺していた。やがて、捜査を進める香山の前で、ふたつの事件をつなぐ新たな証拠が見つかって――。


曹源寺評価★★★★
警察小説にもいろいろありまして、刑事のキャラクターで読ませる作品、法律の抜け穴や齟齬から生じた事件解決への妨げなどを中心にした社会派ともいわれる重厚な作品、事件の謎を解明することに重点を置いた謎解きの作品、警察署内外の人間模様を中心に悲喜こもごものドラマを描いた作品、そして、警察官の地道な捜査をしっかり描いて事件解決までを追う実直な作品。実際にはこれらの要素を織り交ぜながら仕上げていくのが王道なのかもしれません。これだけ方向性が異なっていても警察官が主人公なら「警察小説」となるのですから、やはりこのジャンルは奥が深いですね。
さて本書は、というと、タイトルの通り冤罪の可能性を疑いつつも、事件を追う刑事の視点を中心に地道な地取り、鑑取りを行い犯人を追いつめていく捜査のシーンをしっかりと描いている作品であります。
事件は千葉県の船橋市で発生します。女児の死体遺棄事件ともなれば、必然的に世間の耳目を集めます。その捜査を進める船橋署の香山刑事と三宅、増岡の3名を中心に話は進みます。捜査を進めるうちに事件は7年前に発生した「田宮事件」とその手口が類似していることが判明。だが、その事件はすでに犯人が逮捕され、死刑判決が出された後に受刑者が拘置所内で自殺しているのだった。田宮事件は果たして冤罪だったのか。事件の真相は如何に。
冤罪モノはこのところよく刊行されていて、中山七里センセーの「テミスの剣」や緒川怜センセーの「誘拐捜査」などが冤罪というテーマを内包していたりします。
冤罪を作り出す要因の大半は「警察内部の事情」であるのかもしれませんが、(以下、多少ネタバレ)
本書では地道な捜査の繰り返しによってこの類似事件の謎を解き明かしていきますので、あまりドロドロした内部抗争的な要因はありません。
だからこそ、この捜査の行方をしっかりと読み進めていく責務が読者にはあるでしょう。読みこなしたその先には、

納得のラストが待ち受けている

はずです。
久しぶりに警察捜査の臨場感を味わえる作品に出会えた気分です。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 17:13| Comment(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
最近の記事
カテゴリ
過去ログ
検索
 
最近のコメント
書評802 呉勝浩「白い衝動」 by 本が好き!運営担当 (05/17)
書評785 東野圭吾「人魚の眠る家」 by 藍色 (04/05)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 曹源寺 (02/01)
書評777 垣根涼介「室町無頼」 by 本が好き!運営担当 (02/01)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 佐藤弘幸 (11/17)
タグクラウド
<< 2017年10月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
リンク集