ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2018年01月19日

書評865 深町秋生「死は望むところ」

こんにちは、曹源寺です。

自由党の森ゆうこ参議院議員と東京新聞の望月衣塑子記者が「追及力」などという本を共著で刊行されたらしいです(紹介したくないのでリンクなし)。
追及力とは笑わせてくれます。案の定ネットでは「いちゃもん力とか難癖力とかのほうがしっくりくるのでは」などといった書き込みにあふれていますが、問題はそこではありません。何も読んでいないうちに批判をするのはフェアではないと言われても仕方ありませんが、自分としては次の2点において疑問があるのです。

ひとつめは、マスコミの一般的なスタンスである「権力の監視」という視点からです。大新聞さまは常日頃から国家権力を監視するのがマスコミの役割の一つであると盛んに喧伝しておられましたが、監視どころか結託しているではありませんか。相手はたとえ野党の議員とはいえ、権力者であることに変わりはありません。しかも現役ですから、森議員も監視される側の人間であることに論を待ちません。そんな人と新聞記者は共著を出すという。それは果たして許されることなのでしょうか。

ふたつめは、マスコミのいう「不偏不党」という視点からです。望月記者はフリージャーナリストではなく、東京新聞の記者です。本を出すからには会社の許可を得ているはずですから、これは新聞社と政党がある特定の思惑で結びついているということの証左でもあります。全然不偏不党ではないわけです。
いっそのこと不偏不党などという空疎なスローガンなど捨ててしまえばいいのですが、新聞社はそれをしません。なぜなのかというと、大っぴらにそれをやると読者の支持が減るのではないかと恐れているからではないかと思います。
自分は新聞社については「いやなら読むな」で済む話だろうと思っていますので、別に不偏不党でなくてもいいのではないかと考えます。特定の政党をひいきにしてもいいですよ、とみんなが認めればいいのだと思います。
ですが、それには条件があって、「テレビ局とのクロスオーナーシップを解消しろ」というのがそれです。テレビ朝日に朝日新聞の論説委員とか政治部記者が出まくって自説を垂れ流すのだけはやめてもらいたいですね。電波は国民のものですから。テレビこそ不偏不党でなければならないのですから。

結局、不偏不党というスローガンを捨てきれないならこうした現役議員との共著など問題であると考えなければならないはずですし、不偏不党をやめるのであれば何を書いてもいいけれどテレビとの癒着は許されないわけで、いずれにしても現状では矛盾極まりないと言わざるを得ないですね。

と、ここまで書いて記事を漁ったら、アゴラに自分の主張とほとんど同じ記事がリリースされていて失笑です。自分を同じことを考えている人がいたことにちょっと安堵しますが、アゴラさんの方が圧倒的に良い記事ですね。
東京新聞は、望月記者が現職議員と共著を出すのをよく認めたね(1/16アゴラ)

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内容(実業之日本社HPより)
あいつらは飢えた狼だ――
この世を地獄に変える
凶悪軍団vs復讐を期す刑事
目をそむけたくなる冷酷な連射……。
神奈川県南足柄市の山中で、敏腕女刑事らが殲滅された。
急襲したのは「最後の天才極道」率いる武装犯罪組織「栄グループ」。
既成暴力団幹部らも抹殺し、警察にも内通者を抱えていた。
警視庁特捜隊は彼らを追うが、仲間を殺戮され、復讐を期す。
死をも恐れぬ者どもの闘いの果て。
類例なき警察小説の神髄。
血まみれの暗黒警察小説!
いきなり文庫!


曹源寺評価★★★★
深町センセーの著作は最近、面白いのが増えてきたように思っています。タイトルに惹かれてさっそく読みましたが、版元の紹介文をお読みのとおり、暗黒警察小説という名に恥じぬどす黒さで埋め尽くされていました。
ヤクザも顔負けの非合法犯罪組織「栄グループ」の外道っぷりは半端じゃありませんでした。端的に言えば「自分たちの目的のためなら街中でマシンガンをぶっ放す連中」という感じでしょうか、なかなかにエグいなあと思います。しかも、その組織に対して警視庁の組織犯罪対策部が特別チームを組むというのは分かるのですが、ちょっと小規模過ぎやしませんかね。冒頭から神奈川県警の精鋭がライフルでぶっ飛ばされているのに、何を悠長なことしているのか、と。
そうしたツッコミどころは読めば読むほど湧いて出てくるのですが、それをやってしまうと本書の面白味は半減してしまいますのでこれ以上は止めておきます。
しかし、これだけは書いておきたい。(ネタバレになりますのでご注意)
自分はこれまで数多くの警察小説を読んできましたが、

これほどまでに先の読めない展開ははじめて

です。
死闘に次ぐ死闘。復讐の連鎖。死して屍拾う者なし。
いつだれが命を落とすのか、予測不能の展開に唖然茫然です。登場人物の突然の死に「えっ、えっ?」と反応してしまうシーンは数知れません。バイオレンス満載の警察小説がお好きな方はぜひお読みいただきたいですが、そうしたジャンルが苦手な方は読まない方が無難です。お好きな方はおそらく、ページをめくる手が止まらなくなると思います。冒頭からラストまで銃撃戦と乱闘のオンパレードですので、お気をつけてどうぞ。





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2018年01月16日

書評864 横関大「仮面の君に告ぐ」

こんにちは、曹源寺です。

2017年のノーベル平和賞を受賞した「ICAN」という団体がありまして、正式名称は「核兵器廃絶国際キャンペーン」というそうです。
そのICANの事務局長が来日して、首相に会わせろと迫ったらしいのですが、あいにく首相は外遊中でありました。こんな記事です。

<ICAN事務局長来日>安倍首相、なぜ会わぬ(1/16毎日新聞)
◇菅官房長官「日程上、難しい」 被爆者「逃げ回っている」
昨年のノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)事務局長で来日中のベアトリス・フィン氏(35)が、安倍晋三首相との面会を政府に求めたが、日程を理由に断られた。ICANの尽力で実現した核兵器禁止条約に日本は参加していない。それでも、唯一の戦争被爆国トップとして会って話をすべきでは、との声が上がっている。
(以下、読んでも無意味なので省略)

なぜ無意味なのかというと、首相の外遊は当の昔に決まっていて1月12日から17日までは東欧に行っています。エストニアなど日本の首相として初めての来訪となる国も多く、積極的に外交を重ねている安倍首相の姿勢は評価されこそすれ、批判されるいわれはどこにもないはずです。
その留守中にアポなしで押しかけて「会わせろ」とか「いないのはおかしい」とか、まったく意味が分かりません。会いたければ事前にアポイントメントを取るべきです。一国の首相を前にして、的外れもいいところですが、そんな批判が新聞記事になるというのも、そしてそれを読んで「安倍首相が会わないのは逃げているのか」と首相批判につなげるのも、まったくもってけしからん話です。
つまり、これは何かというと「単なるパフォーマンス」でしかないわけですね。批判したいがための押しかけパフォーマンスです。芝居です。ヤラセです。
そんでもって、これを材料にした派生記事も出てくるわけです。

共産・小池氏「ICANと面会しない首相、恥ずかしい」(1/15朝日新聞)
■小池晃・共産党書記局長(発言録)
(「核兵器廃絶国際キャンペーン〈ICAN〉」事務局長が求めていた安倍晋三首相との面会を政府が断ったことについて)本当に恥ずかしいと言わざるをえない。(事務局長は日本に)18日までいる。安倍首相は17日に(外遊から)帰国する。会えるじゃないですか。なぜ会わないのか。
被爆者の運動がこれだけ国際的にも評価され、ノーベル平和賞を受賞した。日本の首相であれば、心から喜ばなければいけないことだ。被爆者もみんな涙を流して喜んでいる。そういう時に我が国の首相が、会ってほしいと相手方が言っているにもかかわらず、会わないとはなんたることだと。本当に恥ずかしい。
(以下、略)

恥ずかしいのは小池氏(赤いほうの)ですね。案の定、ツイッターではICAN批判と小池批判で埋め尽くされておりました。
核兵器を廃絶したいなら、核保有国に行くべきではないかと思うのは自分だけではないはずです。ICANは今すぐ北朝鮮に行って核廃絶を訴えるべきでしょう。

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内容(講談社HPより)
そんな、嘘でしょ……。
目を覚ませば、身体は別人。
しかも“私”は一年前に殺されていた?!
犯人への復讐に燃える恋人を前に、果たして何ができるのか。
涌井和沙は、目を覚ますと病院のベッドにいた。戸惑っているうちに、「モリさん、目覚めたんですね」と看護師から声をかけられる。沸き起こる違和感に鏡をのぞいた和沙は驚愕する。そこに映っていたのは赤の他人――森千鶴だった。意識はそのまま、身体は他人になってしまったことにパニックになった和沙は、恋人の慎介を頼ろうとするも、慎介は自分に気づいてくれない……。胸が潰れそうになる中、追い打ちをかけるように新たな事実が判明する。一年前、涌井和沙は何者かに殺害されたというのだ。千鶴の弟・潤の力を借り、少しずつ事態を把握していく和沙だったが、なにやら慎介が不穏な動きを見せ始め……。
一組のカップルに訪れた、奇跡の十日間。
そのラストに思わず“震える”再読必至のミステリー!


曹源寺評価★★★★
シリーズものとして書くことを潔しとしないのか、横関センセーはいつも様々な仕掛けとともに単発のストーリーを書き下ろしてこられます。最近の傾向は「最後にちょっとだけ物語をひっくり返す」という仕掛けが施されているという点にあるかと思います。
本書もまた、そのような仕掛けがありまして、
事件発生→登場人物の誰かが怪しい→あれ、でもこいつじゃないよな→なんだよこの最後に取ってつけたような登場の仕方は
と思っているところに最後のどんでんがありますのでいつも「またやられた」と思ってしまうところが横関センセーのうまさなんだろうなと思います。
本書のタイトルは(以下、ネタバレと呼ばれてもしょうがない)ストーリー展開とずいぶんかけ離れているように思うのですが、

読み終わって初めて納得する

わけですよ。「あぁ、なるほどね」と。
読了後に初めてタイトルの意味を知る、というのはその昔どこかであったようにも思います。あぁ、そうでした、歌野晶午センセーの「葉桜の季節に君を想うということ」がそうでしたね。本書もまさにこんな感じです。
ただ、ラストの展開はいつもの横関センセーのようにスカッとするものではありませぬ。ちょっともやもやするのはまあしょうがないですわね。
それでも、抜群のリーダビリティと続きが気になるような仕掛けによって、またしても一気読みでした。冒頭の「なーんだ、魂が乗り移ってタイムリミットってどんだけ使い古されたネタだよこれ」というところであきらめることなく、そのまま読み進めてください。一気に惹き込まれますから。





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2018年01月12日

書評863 柴田哲孝「Dの遺言」

こんにちは、曹源寺です。

出版業界の動向に関して、ある記事を読みましたが、2017年の傾向として顕著だったのは「雑誌の発行部数がピーク時の3分の1にまで落ち込んだため、物流網が維持できなくなっている」というものでした。
しかも、「書籍は雑誌流通にくっついて便乗してきたので、雑誌流通が滞ると書籍にも影響してくる」というじゃありませんか。
こうなると、ただでさえ値上げ傾向が強い雑誌はますます値上げに拍車がかかり、書籍もコストアップ間違いなしとなれば今年は値上げラッシュが続く可能性が高そうです。
書籍はともかく、雑誌は本当に買わなくなってしまったなぁ。
おまけに、Amazonが取次店経由でなく、出版社との直接契約に切り替える動きもあるそうですので、そうなると取次会社はますます苦境に陥りそうです。
そんなことを書いていたら、東京商工リサーチがこんな記事を。
「岩波書店、テナントビルを小学館に売却」(1/12)
2017年12月1日、岩波書店(TSR企業コード:290016118、東京都千代田区)は所有していた千代田区一ツ橋2-4-4の「岩波書店一ツ橋別館」を(株)小学館(TSR企業コード:290077451、東京都千代田区)に売却した。
 不動産登記によると、岩波書店は1956年4月に同所の不動産を取得。土地は532.19平米、建物は地下2階付8階建で床面積は延2628.55平米となっている。
(以下、略)

岩波書店は信用調査会社に対して業績を公開していないようですね。この記事を読む限りでは、官報の貸借対照表だけが公開データになっていると思って良いかと思います。
記事によると、
岩波書店の2017年3月期決算は、売上高非公開、当期純利益は4025万円、純資産額55億7061万円、総資産134億1220万円。
とありますので、自己資本比率が41.5%ですから、まだ経営体力はありそうです。この純資産のうち固定資産の簿価数十億円がキャッシュに変わったのであれば、当面の資金繰りは問題ないのかもしれないですね。

一方、スポーツ雑誌系の老舗であるスキージャーナルは、昨年末で休刊を決定したそうです。ホームページにはお詫びが出ていますが、主力雑誌の休刊だけでなく、いろいろと事業をストップさせているようですので、ちょっと心配です。第二会社方式でも存続できないものですかね。

なんだか2018年の出版業界は新年早々からいろいろと動きがありそうな気がします。

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内容(祥伝社HPより)
戦後、日銀の金庫から消えた20万カラットのダイヤを追え!
昭和史最大の謎を解明した『下山事件 最後の証言』の著者が放つ、痛快エンターテインメント!
政府通達〈十九機第二三五一号〉――
“ダイヤモンド買い上げ実施に関する件”
戦時中、軍需省の要請により立法化され、それに基づき皇室からも供出されたダイヤモンドがあった。その量、32万カラット。戦後は日銀に保管されていたが、その内20万カラットが占領のどさくさの中に消失。GHQのアメリカ軍将校が盗み出したとも、日本の政権運用資金に使われたとも言われていた。東大教授にして歴史作家・浅野迦羅守(あさのがらむ)は、戦後の特務機関・亜細亜(アジア)産業に勤めていた曽祖父たちから、消えたダイヤの在(あ)り処(か)を示す暗号文の遺言書を託された。しかし、捜索を開始するや何者かからの脅迫を受け、やがて敵の襲撃が……。


曹源寺評価★★★★★
Mの暗号」という作品がありまして、戦後のドサクサ時に消えてしまったお宝を暗号文の解読によって探し出すというお話なんですが、これがいつの間にか「歴史作家・浅野迦羅守シリーズ」として始まっていたわけであります。
本書はこの第2弾ということで、今度は日銀の金庫にあったダイヤモンドが当時のG2(GHQの参謀第2部)によって奪われてしまった事件(これは本当にあった事件)から時を経ること70年、亜細亜産業(これも本当にあった企業)の関係者が国内のどこかに秘匿していたのを発見しようとさまざまな関係者が暗号解読に挑むというストーリーです。登場人物は前作と同じく、東大の特任教授である浅野迦羅守、弁護士の小笠原伊万里、元CIAにして内閣情報調査室(?)の南部正宗、元IT企業社長にして「ギャンブラー」の異名を持つ武田菊千代、の以上4名であります。
暗号の謎解きは前作同様、ちょっとした仕掛けがあってワクワクしますね。清和源氏の流れを汲むというところから古典にも触れているので、近現代史だけでなく日本史全体としても興味深い内容です。
ただ、それほどミステリではなくて、どちらかというとエンタメです。敵との戦いのシーンも(前作同様)相手がショボイのがちょっと残念ですが。
ただ、史実を組み合わせたストーリー展開にはとても興味を惹かれます。ブラウザ片手に本書を読むというスタイルで、近現代史に登場した実在の人物を調べながら読むのがとても楽しかったです。
柴田センセーご自身は亜細亜産業関係者の末裔でもあります(これは「下山事件最後の証言」をぜひご一読いただきたい)ので、もうM資金とか下山事件とか戦後の疑獄関連とかこの辺のミステリについてはお手の物であります。

というか、もうライフワークになっていますね

お宝だけでなく、戦中・戦後のミステリと呼ばれるものをこのシリーズで取り上げていただき、謎解きとして仮説でも立ててくれたらこのシリーズももっと楽しくなるのではないかと思ったりもします。





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posted by 曹源寺 at 17:21| Comment(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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