もしもドロップシッピング

2009年07月12日

書評185 伊坂幸太郎「モダンタイムス」

先日、某民放のニュース番組に知り合いの家族が出演しました。節約する家族をサポートする怪しげな主婦の知恵を、子育てに奮闘するパパが習得するという内容です。その知り合いはお子さんが4人、そして母親のおなかの中には5人目の赤ちゃんが。。。すごいなあ、5人育てる母親っていうのはハンパじゃなく体力ありますね。もちろん、母親だけでなく父親の役割も重要でしょうが。そのパパさんはもと寿司職人だったので番組中では「和食の達人」などと字幕が出たりしていました。でもなぜか寿司職人とはでなかったあたりが、ニュース番組とはいえちょっとずるいというかせこいというか、おいおい真実を伝えていないんじゃないの?と思うところです。それに、ノーギャラだったそうで。せこいwwwwwテレビ局せこすぎwwwwwwww

内容(講談社HPより)
検索から、監視が始まる。
岡本猛はいきなり現われ脅す。「勇気はあるか?」
五反田正臣は警告する。「見て見ぬふりも勇気だ」
渡辺拓海は言う。「勇気は実家に忘れてきました」
大石倉之助は訝る。「ちょっと異常な気がします」
井坂好太郎は嘯く。「人生は要約できねえんだよ」
渡辺佳代子は怒る。「善悪なんて、見る角度次第」
永嶋丈は語る。「本当の英雄になってみたかった」

曹源寺評価★★★★
本書はあの「魔王」の続編でした。「魔王」は伊坂作品のなかでは個人的に高い評価を与えてはいませんので、もんでいる途中でそれを知ってから、ちょっと萎えてしまいました。
いや、楽しいですよこれは。前半はやや展開が遅めですが、中盤は結構いいテンポで話が進んでいきます。後半はイマイチです。テーマはいいのに、なんだか消化しきれていないような、そんな感じを受けました。
「人は分からないことに直面したときにどうするか」この答えは「検索する」です。その、検索というのは、すでに商売が成立していて、いわゆるアフィリエイト広告というのは検索した人の属性、つまり、男性か女性か、既婚か未婚か、30代なのか40代なのか、持ち家なのか賃貸なのか、こうした個人情報が筒抜けになっているわけで、これを逆に使えば検索した人を(つまり調べようとした人を)特定して排除することも可能であると、そんな近未来を描いた作品なわけです。中国なんかこうしたことをしてもおかしくないですね。なんて、こんなことを書いた人も排除され・・・おや、こんな時間に誰か来たようだ。

すんません、2ちゃんネタです。戻りましょう。
あの「ゴールデンスランバー」で見せた伏線に次ぐ伏線も、本書ではなんだか消化し切れていないような。。。これって続・続編みたいなのが出るんですかね。そんな微妙な読後感を与えてくれる本です。
伊坂作品では「ゴールデンスランバー」と「アヒルと鴨のコインロッカー」が個人的には大好きですが、「魔王」や「オーデュポンの祈り」などはあまり好きではないですね。あとは「砂漠」とかいいですね。本書は「魔王」の続編だが「ゴールデンスランバー」の兄弟でもあるということです。そう考えると評価も中間かな。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif


posted by 曹源寺 at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月06日

書評184 高嶋哲夫「ジェミニの方舟」

2009年も半分が経過しましたね。あっという間です。あまり進化していない自分を振り返るのがちょっと虚しいですが、結構楽天家の自分はなんだか今が幸せです。子供二人とリビングで相撲を取ったり、家の前の道路(こえがかなり狭いのでクルマが走ってこないんですわ、いいですよ〜)でサッカーしたり、絵本を読んで聞かせたり。。。

でも、こういうときこそ、非常時に備えておきたいものです。どうやら、大地震もくるという話が出ております。
http://www.e-pisco.jp/r_ion/attention/090623.html
気をつけましょう。備えあれば憂いなし。


内容(集英社HPより)
空前の双子台風が東京を直撃。大洪水に備えろ!
大型の台風23号と24号が合体、巨大台風ジェミニが東京を襲う! 愛する家族は、都民は、首都水没の危機を乗り越えられるのか!? 最新研究を元にリアルに描く『M8』を凌ぐ災害パニック大作。

曹源寺評価★★★★
本書の副題は「東京大洪水」でして、二つの大型台風が合体して首都圏を襲うというクライシス小説です。毎度おなじみの高嶋センセですが、「地震」「津波」「テロ」など危機管理をテーマにした作品で定評のある高嶋氏の、「台風」をテーマにした作品です。そもそもの前提として、首都圏は荒川が増水して氾濫したら中央区や千代田区、江東区などはかなり壊滅的な被害を受けるというシミュレーションがあります。これはどうやら本当のようですが、これに二つの台風が合体して巨大化して首都圏に北上したらどうなるか、というシミュレーションを小説で実践したものである、とも読める内容です。つまり、それだけリアリティがアル作品なわけです。高嶋氏の作品は年々、文章がこなれてきて読みやすくなっています。最初のほうはあまりとっつきやすい文章文体ではなかったのですが、最近はだいぶ良いですね。作品にスピード感も出てきましたので、ところどころ手のひらに汗が出てくるような、そんなスリリングな(というかマジこわい)展開が待っています。首都圏に限らず、最近はゲリラ豪雨やら停滞する前線やらで大雨が頻繁にありますので、本書の示す教訓を大事にするべきだなあと感じます。教訓のひとつは「地下鉄や地下街にとどまるな」です。渋谷や赤坂は本当に標高が低いので注意が必要ですね。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif


posted by 曹源寺 at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | た行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月01日

書評183 大門剛明「雪冤」

政治のほうがだいぶキナ臭くなってきましたね。それにあわせてテレビのほうもだいぶ胡散臭くなってきましたね。変態だの捏造だのやっている新聞もひどいですが、テレビはもっとひどいということが今回の民主党党首による虚偽記載事件です。これ、犯罪ですよね。どう考えても。東京地検特捜部が動き出さないと盛り上がらないのかもしれませんが、これはある意味小沢一郎よりひどいかもしれないのに、なぜ大きく取り扱わないのでしょうか。不思議でなりません。


内容(角川書店HPより)
「あなたの息子は無実です」
時効直前、死刑が確定した男の父親にかかってきた一本の電話。
それは真犯人を名乗る人物からだった――。
15年前の殺人事件は冤罪だったのか、それとも……?
横溝正史ミステリ大賞から超新星ついに現る!

曹源寺評価★★★★
えー、これまたタイムリーな本です。なぜタイムリーかといいますと、例の足利事件で再審が決定となりましたが、本書もこの冤罪がテーマとなっているからです。読みましたお。
本書の下敷きにはあの「走れメロス」がありまして、メロスと暴君ディオニス、それにセリヌンティウスになぞらえた人が登場してきます。メロスの役割を担ったのは誰か。そして、ディオニスを名乗る真犯人は誰なのか。非常に読みやすく、プロットも良く出来ているほうだと思います。この横溝正史ミステリ大賞受賞作は結構良質の作品が多い(と個人的には思うわけですが)ので好きです。最近は江戸川乱歩賞がイマイチですので、こっちに期待しています。本書も途中までは実に良く出来ていると思います。しかしですね、最後のほうになるとちょっと無駄な展開が目に付きます。こんなんいらねえじゃん、みたいな無理に読者を別の視点にそらせようとする意図が見え見えの展開があったりして、わざわざ複雑にすることもあるまいに、とも思ったりします。
ただですね、筆者の情熱みたいなものがやはり伝わってきますよ。折しも巻末で馳星周氏が書評として書いていたとおり、小説を書きたくて夢中になって書いた作品である、と。そんな本は読者にもその思いが伝わりますね。馳氏は小説家になりたい人ではなく、小説を書きたい人の作品を読みたいと書いていました。いいコトバですね、真面目でしっかりとした書き口といいますか、筆者の作品に対する真摯な姿勢みたいなものを感じましたので、この次にも期待したいと思います。



あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | た行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月24日

書評182 古川琢也+週刊金曜日取材班「セブンーイレブンの正体」

ちょうど読み終えた本が本日紹介するやつですが、タイミングよく事件がありました。
株式会社セブンーイレブン・ジャパンに対する排除措置命令について
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/09.june/09062201.pdf
(公取委の文書)ということで多くの報道がなされました。
taspo効果で特需に沸いたコンビニ業界も、これでだいぶ冷やされるかもしれません。大衆薬の販売解禁もあまり売っている店を見かけないので、その効果は薄いのではないかという見方がなされてきました。コンビニ業界の行く末には非常に興味がありますが、am/pmも伊藤忠商事が食指を伸ばし始めていますのでファミマとの統合が視野に入ってきました。業界の覇者セブンも驕れる者久しからずになるかもしれません。

内容(金曜日HPより)
出版業界最大のタブー企業の闇を暴く。年間2兆4000億円を売り上げる世界最大のコンビニチェーン。その高収益の「裏側」はタブーで塗り固められ、メディアで取りあげられることはない。消費者の知らない“流通の覇者”の暗部をえぐる!

曹源寺評価★★★★★
まあ、実に良いタイミングで読了したわけですが、「タブーに挑戦する」金曜日としてはまあまあの出来かもしれません。個人的には金曜日という出版社は大嫌いですが、同社のラインアップには「巨大企業の正体」シリーズなるものがありまして、企業の暗部をさらけ出すメディアとしてはなかなか面白いものがあります。
本書では請求書の明細を出さないとか、弁当の廃棄が店側の全額負担だとか、休みを取ろうとしても代役を立ててくれない本部だとか、さまざまなネタがちりばめられていますので、これを読んだ直後は間違いなくセブンーイレブンに行きたくなくなるでしょう。
ただし、本書を読んで思うのは、このFCオーナーの声が果たして大多数のオーナーの声を代弁しているのか、という点が疑問だということです。まあそれなりに訴訟を抱えてはいるようですし、取材に対して真摯に答えようとしていない点だけとってもセブンのアキレス腱になっていることは明白ですが、作者の側も取材が一方的だったりするとあまり説得力がなくなるわけでして、その辺が曖昧なのが気がかりです。もしオーナーの大半が隷属的立場で搾取されまくっていて、爆発寸前まで追い込まれているとしたらコンビにビジネスなど成立しなくなっているのではないかとも思えるわけです。その点において、作者が恣意的に読者を誘導している可能性はなくはありません。なにせ、あの本多勝一を持ち上げている出版社ですから。
まあ、世の中のFCビジネスの大半が搾取で成り立っているというのはもう周知の事実みたいになってきていますので、いまさらそれほど驚きはしませんが、やはりコンビニのオーナーなどなるべきではないですね。セブンよりもっとひどいといわれているのがヤ○○キだったりするわけですが、先日もうちの近所の○マザ○は閉店しました。やっぱりと言うかなんと言うか。。。


すげー、Amazonで668位だってー!

あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月14日

書評181 楡周平「骨の記憶」

ラジオの仕事は終わったけれど、新書の仕事が詰まっているので気が休まらない。もう少し楽になりたいなあ。
先日、その新書の資料のために、東京・日本橋周辺の歴史を紐解く作業をしてみました。中央区は「中央区史」という書物を刊行していましたので、図書館で閲覧してみました。
面白いです、中央区史。日本橋はさすがに商業の要衝だったことが良く分かります。馬喰町が宿場町で、横山町が問屋街。明治になってからは東京駅の発達で宿場町がさびれ、問屋街だけが幅を利かすようになった、なんてちょっとしたドラマですな。こういうのを学ぶことができるいまの職場は、ある意味ラッキーです。

内容(文藝春秋HPより)
後ろ暗い過去を持つ東北の貧農の少年が集団就職で上京。下宿先の火事を転機に、金を掴み成り上っていく。人生の光と影を描いた傑作
東北の没落した旧家で末期癌の夫に尽くす妻、清枝のもとに51年前に失踪した父親の頭蓋骨が送りつけられた。送り主は火事で死んだ同級生。父親の失踪の理由と最期の様子、さらには最愛の夫が失踪事件の当事者だったという驚愕の事実が……。少年期に罪の記憶を抱え、集団就職で上京した東北の貧農の少年が、下宿先の火事を機に、他人になりかわる。金を掴(つか)み、起業して成り上っていくが、同時にかけがえのないものも失う。集団就職から昭和をとらえつつ、人生の光と影をリアルに描いた重厚な傑作エンターテインメント。

曹源寺評価★★★★★
本書の帯には「楡氏の最高傑作」という文言があり、読んでなるほど、と思うところもありました。重いです。話の中身がむちゃむちゃ重いんです。東北の片田舎に育ち、中学を出て集団就職で東京に出てきた一郎少年が、ふとしたきっかけから成り上がっていくお話が中心ですが、そこには数多くの悲劇とドラマと数奇な運命が待ち受けているわけです。なんだか、一郎の人生はあまりにもドラマチックで、金持ちになったはいいけれど自分だったらこんな人生嫌だなあ、と思ってしまいます。
高度成長期のジャパニーズ・ドリームというのはこういうものもあったのではないか、と本当に思えるような内容です。たとえば、横浜市の青葉区や都築区などは東急田園都市線が延伸されなければ本当にタダの田舎なわけですが、ここに土地を持っていた地主さんは相当儲けたのではないかと昔から思っていました。もし自分がタイムマシンに乗って過去にいけるのなら、間違いなくこの周辺の田畑を買収しまくっていたに違いないでしょう。
自分の父親は地方都市出身ですが、別に貧しくはなかったんでしょう。兄弟5人全員が大学まで進学していましたし、伯父というのが身長2メートルあるような大男だったので、食生活も不足なかったのではと思います。ですから、貧農の小作人というシチュエーション(これはちょうど先日も読んだ「オリンピックの身代金」にも出てくる場面ですが)はどうにも想像つかないし、昭和30年代までこんな貧しい生活を余儀なくされていた人々というのがあまりにも自分の過去と結びつかなくて想像できないのです。
いや、自分は裕福に育ったかというとそうでもないんですが、昭和40年代生まれになりますともう彼らとはだいぶ違う生活様式でしょう。ちょっとだけ世代格差を感じます。
ただ、あの集団就職とは一体なんだったのかというのは本書を読んでよく理解できました。彼らは本当に金の卵だったのですね。一郎のように一攫千金できた人物もいたかもしれません。職場から逃げ出して、田舎にも帰ることが出来ず、怪しげな手配師につかまった人もいたかもしれません。勉強して大学に通いながら一流会社にもぐりこんだ人もいたかもしれません。当時、集団就職した人々の多くが定年を迎えるようになりました。彼らの半生を追うこともまた、日本の歴史を紡ぐに必要な題材なのかもしれません。

おおっと、Amazonのレビューにはつい先日急逝したプロレスラーの三沢光晴氏が書き込みをされているではありませんか!(って、これ本人ですかね?)



あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif



posted by 曹源寺 at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月08日

書評180 佐々木譲「暴雪圏」

「頭蓋骨骨折」と聞くと、イコール「死亡」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。自分もその一人でした。
でした、というのは、それは誤った見方だったということを痛感したからです。最近、近所で交通事故やら病気やら、なにかと不幸が続くんですが、その中に「トラックにはねられて頭蓋骨骨折」というニュースが飛び込んできたんです。よく知っている子だったので、えっ、あの子が?という感じでしたが、一応意識はあって命に別状はないそうで、ホントに良かったです。
いや、マジで事故が多い。病気も多い。ひとつの小学校でこんなにあったらヤバイでしょう。自分の小学校時代を振り返れば、交通事故なんて6年間に1回あったかどうか、まあ田舎だったからというのもありますが、ちょっと不幸が多いのでお祓いしてもらいたい気分です。

内容(新潮社HPより)
猛り狂う雪嵐、臨界点を越えた狂気――超弩級の警察小説!
次々と麻痺する交通網。十勝平野で十年ぶりの猛吹雪が吹く夕刻、町は氷点下の密室と化した。暴力団組長宅襲撃犯、不倫の清算を決めた人妻、職場の金を持ち出す中年男。偶然足止めされたペンションで、男女の剥き出しの欲望が交錯する。ついに暴走する殺人犯――恐怖の夜が明けた時、川久保巡査部長はたった一人で現場に向かった!

曹源寺評価★★★★★
あの「制服捜査」で登場した川久保巡査部長の再登板ということで、待ちわびていた本をようやく読むことが出来ました。でも、ちょっとがっかりです。前作は短編集でひとつひとつがコンパクトでありながら北海道警察の実態をリアルに捉えていて、それでいてドラマチックな展開が続いていたので面白かったのですが、本書は長編です。長編にしたらなんとなく冗長な感じです。さまざまな人物が登場してきて、途中から入り乱れてきますので最初にきちんと登場人物を捉えておく必要があります。まあ、その辺は佐々木氏のうまさで読む人に何の苦痛を与えるものではありませんが、複雑な人間関係が少しずつ解きほぐされていくのはとっても楽しいです。そして、本土の人間には到底想像もつかない北海道の冬の厳しさ。これがひしひしと伝わってきます。何といっても、猛吹雪の日にはクルマがちょっと轍を踏み外しただけで横転し、そのまま誰も助けに来てくれなければ凍死を待つばかりの身となってしまうあたりは、そうか、そうなんだな、自分もいつか転勤になるかもしれないけれど、日本にはこういう場所がたくさんあるんだなぁ、としみじみ感じてしまいました。
しかし、ストーリーは途中で先が見えてきます。ラストもなんだか拍子抜けです。二時間ドラマには良いかもしれませんが、小説はイマイチという感じですね。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif


posted by 曹源寺 at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月02日

書評179 黒川博行「煙霞」

先週は怒涛の一週間だったので、乗り切った今はちょっと腑抜け状態です。あんなに原稿を書きまくったのは本当に久しぶりでした。
おまけにRadioの仕事も入って定期刊行誌と新書の3本同時に仕事をすると、もうぐちゃぐちゃですわ。
Radioは生放送に15分だけお邪魔してきました。なんだかこう書くと売れっ子の作家みたいですね。全然そんなんじゃありませんが。。。
Radioの生放送は本当に緊張します。おかげでしどろもどろ極まりない、かなりひどい醜態を晒してしまいました。もう二度とやりたくないっす。

【文藝春秋HPより】
高校講師の熊谷は、学校を私物化する理事長から金を奪う計画に巻き込まれるが…。計画の首謀者は誰なのか、奪った金塊の行方は?
大阪の私立晴峰女子高校では、理事長の酒井が学校法人を私物化していた。美術講師の熊谷と音楽教諭の菜穂子は、同僚から、酒井を拉致して不正の証拠を突きつけ、理事長退任を迫る計画に誘われる。酒井と愛人を拘束し、交渉は成功したかに思えたが、その後酒井たちが失踪。じつは“教育・学校ブローカー”の箕輪に誘拐されていた。結局、熊谷と菜穂子も箕輪に捕まり、酒井から金塊を奪う計画を手伝わされるが、成功しかけたところで酒井の愛人が金塊を持ち逃げする。さらに、金塊を積んだはずの車が途中で入れ替わり、金塊の行方も分からない。はたして誰と誰がグルでこの計画を立てたのか、金塊の行方は――。
軽妙な大阪弁は変わらず快調。騙し騙され、コン・ゲームの要素が加わった痛快ミステリーです。(YB)

曹源寺評価★★★★
大阪を舞台に教師が主人公といえば、黒川博行氏の得意中の得意なジャンルということになりましょうか。軽妙な会話とスリリングな展開に、読者は惹き込まれること間違いなしな小説に仕上がっています。本書紹介にあるとおり、誰と誰がつながっていて、誰が裏切り者なのか、そして金塊のゆくえはどこなのか、最後までノンストップなストーリーに「こんなんで最後お話がまとまるんかいな」と残りのページ数を気にしながら読むような、そんなワクワク感があります。
黒川氏は近著「悪果」で直木賞候補になりましたが、ぜひまた頑張っていただきたいものです。



あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月25日

書評178 奥田英朗「オリンピックの身代金」

自分の住んでいる街は大きな公園もあるし、駅前にはデパートもあるし、商店街も古くから活気もあって住むには最高です。
そんな街にも不況の影がチラチラと、ということで某デパートが閉店を決めました。残念です。売り場は確かにイマイチでしたが、店の雰囲気は嫌いではありません。休憩するにはもってこいの場所(失礼!)なだけに惜しいと思っています。
次のテナントは未定ということですが、個人的には東急ハンズかメガスポーツあたりをお願いしたいところです。もう百貨店はいいです。かといって量販店(GM)はいりません。大型の専門店がいいなあ。ホームセンターでもいいなあ。でもホームセンターだと車の渋滞がひどくなりそうでいやだなあ。

そういえば、小さい時には地元の百貨店の8Fにある食堂に良く連れて行ってもらいました。そこのお子様ランチは最高でした。本当にあの旗が丸くかたどられたチキンライスの上に刺さっていたなあ。あの百貨店もかなり経営が厳しいらしく、一族の不動産管理会社もモメているらしいという情報もあったなあ。。。


内容(角川書店HPより)
「おめ、アカなんだってな。おめは東大行くぐらい頭さいいんだがら、世の中を変えてけれ。おらたち日雇い人夫が人柱にされない社会にしてけれ」
・・・人柱という言葉に、国男は打ちのめされた。以前マルクスを引き合いに出し、苛烈な搾取構造の中でも屈託のない飯場の労働者について、不思議でならないとの感想を自分は抱いた。しかしそれは過ちだった。彼らはちゃんと現状を認識している。戦う術を知らないだけなのだ。・・・ (本文より)

昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、東京は世界に冠たる大都市に変貌しようとしている。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていないような風潮だった。そんななか、東京で相次いで爆発事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた。 警視庁の刑事たちが事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ……。
――「昭和」を舞台に、テロリストと刑事たちの戦いを描く、著者渾身のサスペンス大作!!

曹源寺評価★★★★★
昭和39年を舞台にした、身代金犯罪を描いています。昭和39年といえば東京オリンピック。まだ代々木体育館も国立競技場も作りかけで、高度成長に突入する直前ということで、なんだかとっても時代を感じさせてくれます。自分が生まれたのはこの後ですが、たいして離れていないにもかかわらずものすごく古く感じてしまうのはなぜでしょうか。おそらく、自分は東京出身ではないために近代化が身近でなかったことが大きいのでしょう。次々と建造されていく大型構造物と、その陰で馬車馬のように働かされてきた作業員(本書では人夫と表記しています)たち。
本書は謎解きではないので、前半ですぐに犯人の見当がついてしまいますが、それでも読む人をグイグイと引きつけるのは、この時代背景に忠実な描写と、犯人の心情を細かく描ききったことにあるのではないかと思います。さりげなくビートルズや爆弾魔の草加次郎、ニューラテンクオーターや東声会の町井会長(当時の大親分)などが随所にちりばめられていて説明調なところがないのが良いですね。これが某大御所の女性小説家だとこうはいきません。奥田センセはうまいなあ、と感心しきりです。
そして、奥田作品はいつも、犯人がどんどんどんどん犯行をエスカレートさせていくところが面白いのですが(「邪魔」や「サウスバウンド」などが代表的ですね)、本書も落ちるところまで落ちていく(というほどではないにせよ)犯人の行動から目が離せなくなります。読ませる作家の、会心作といって良いでしょう。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 22:58| Comment(1) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月15日

書評177 海堂尊「イノセント・ゲリラの祝祭」

GW過ぎから仕事がパンパンで文字通りてんてこ舞いの日々です。ところで、てんてこ舞いって、どんな踊りですか?
そんなことはまあいいのですが、雑誌と新書の執筆・編集が同時並行で、そのうえにラジオの仕事が入ってきてどうしたらいいの?って感じです。ブログなんぞ更新している暇はない、と思いながらまたこうやって更新しています。なんだかんだいって楽しいんでしょうね。我が家ではもうあまりテレビを見ないようになりました。地デジになったらテレビ買わないでそのままなしでも良いかなあ、なんて思ったりしています。


内容(宝島社HPより)
田口・白鳥シリーズ最新刊!
厚生労働省をブッつぶせ!
医療事故を裁くのはいったい誰なのか?
東城大学医学部付属病院不定愁訴外来の責任者で、万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長からの呼び出しを受けていた。高階病院長の“ささやかな”お願いは、厚生労働省主催の会議出席。依頼主は、厚生労働省役人にてロジカル・モンスター、白鳥圭輔。名指しで指名を受けた田口は嫌々ながら、東京に上京することを了承した。行き先は白鳥の本丸・医療事故調査委員会。さまざまな思惑が飛び交う会議に出席した田口は、グズグズの医療行政の現実を知ることに・・・・・・。

曹源寺評価★★★★
本書はミステリとは言い難いのですが、読むと引き込まれるテクニックはさすが海堂氏といったところでしょうか。医療事故調査委員会を舞台にした丁々発止のやりとりはものすごい臨場感で迫力を感じます。木っ端役人という単語がありますが、「ミスター厚労省」と呼ばれるガチガチの官僚と、その彼をやり込めるもう一人の論客が、非常に良い味を出しています。本書の元となっている事件は、恐らく本当にあったのではないかと思われますし、解剖至上主義者のような病理医や法医学者もたぶん実在するのだろうと思います。ガチガチの権威主義者である大学教授や、第三者委員会を開催することを免罪符としながら天下り先の確保と予算消化だけにまい進する官僚というのも、ステレオタイプではありますがたぶんいるんだろうなあ、と感じずにはいられない仕上がりです。医療現場がどれだけ無駄の固まりになっているか、とか、医療先進国といいながら解剖率2%とはどういうことだ、と憤らずにはいられない読後感ですが、医療の明日を考えるうえでは本書は欠かせない材料となる(もちろん、素人レベルの話ですが)のは間違いないでしょう。




あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif




posted by 曹源寺 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月11日

書評176 北尾トロ「裁判長!これで執行猶予は甘くないすか」

忌野清志郎が天に召されました。
人は死んだときに評価されるものだ、ということを良く聞きますが、彼は死んでから評価された人かもしれません。名曲「雨上がりの夜空に」はもちろんのこと、「パパの歌」や「サラリーマン」はいまこの年になって改めて聴くと、中学生の頃に聴いた時よりもさらに感慨深いものがあります。個人的にはカバー曲が好きです。「イマジン」の日本語カバーは完全にジョン・レノンのそれではなく、彼の曲になっています。「サン・トワ・マミー」は越路吹雪さんのシャンソンではなく、真性のロックになって私達のハートを鷲づかみにしています。本当に惜しい人を亡くしました。
合掌。

内容(文藝春秋HPより)
一度傍聴したら、もうやめられない! 通いはじめて早四年、窃盗、詐欺から連続殺人まで。法廷はいつでもドラマに満ちている
裁判を傍聴するなんて、自分には一生縁がないと思ってはいませんか。
ところが、ひとたび本書を読むと、法廷がワイドショーや映画も顔負けの人生劇場に早がわり、つい傍聴してみたくなるはずです。窃盗、詐欺、強制わいせつ、殺人……。法廷で追い詰められた被告人たちはどんな言動をとるのか。その顔つきから、服装、話し方、しぐさ、思わず笑ってしまう弁明まで、独特のイラストとともに描く北尾さんの観察眼が冴えわたります。
好奇心から覗いてこそはじめてみえる人間の本性とは――。裁判員制度導入が決まったいまこそ、必読の傍聴記です。

曹源寺評価★★★★★
もうすぐ裁判員制度の開始ということで、裁判ネタの本を少しかじってみようかと思い読んでみたのが本書です。北尾氏には本書の前に「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」というのがありますが、本書はその続編といった位置づけでしょうか。被告がなぜこの事件を起こして起訴されたのか、裁判でどのようなやりとりがなされているのか、検察側はこうした事件にどんなスタンスで望んでいるのか、弁護側はこの救いようのない被告をどうやってかばうのか、といったことが事件ごとにつづられていくわけですが、これがとてもドラマチックで面白い。事実は小説より奇なりとは、本当に的を射た表現だということがわかります。
裁判傍聴マニアというのはかなりいらっしゃるようで、そうした方々との交流というのは自分では考えられませんが、阿蘇山大噴火氏や霞っ子クラブという常連さんとのお話も少し盛り込まれています。
北尾氏も本書で述べておられますが、その事件の真実を追い求めて傍聴を続けるというスタンスではなく、傍聴マニアの多くが裁判の経過を純粋に楽しんでいるというか、裁判の場でどんな発言があり、どんな発言を元に判決が構成されていくのか、といった部分に興味を示しておられる方が多いということらしいのです。ハマる人はハマるということでしょうか。ミステリ小説ファンは真実を追い求める性格の人が多いでしょう。たぶん、傍聴そのものを楽しむことができる人は自分とは違う人種なのだろうと思いました。






あなたの一票がブログ更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

banner2[1].gif



posted by 曹源寺 at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする