ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2015年08月28日

書評642 笹本稜平「偽装 越境捜査」

こんにちは、曹源寺です。

先日のニュースでこんなものがありましたので
<県主催交流会>「共同参画」なのに参加費に男女差? 鳥取(8/21)
男女共同参画推進のため鳥取県が今年1月23日に鳥取市内のホテルのレストランで主催した「中国地方輝く女性活躍フォーラムinとっとり」で、交流会の参加費に男女で差があり、県内の男性から県に苦情があった。レストランの料金設定に従ったためだったが、県の外部機関の男女共同参画推進員はこのほど、「女性と男性が合理的な理由なく異なる扱いを受けている印象を持たれないよう、全職員が常に問題意識と緊張感をもって業務に取り組むよう努めるべきだ」とする県への意見書を公表した。
 意見書などによると、飲食を伴う交流会の参加費は男性4200円、女性3600円で、チラシを見た男性が1月22日、「違和感を覚えた」と指摘。「県は違和感を持たなかったのか」「担当者が違和感や表記への配慮の必要性を感じないこと自体が問題」としていた。(以下省略)


男女平等を目指す集会で男女差別というなんとも阿呆な出来事でした。

同じ毎日新聞でこんな記事もありました。
自衛隊職場体験:中学に中止要望 小浜の婦人団体 /福井(8/22)
新日本婦人の会福井県本部小浜支部は21日、小浜市立小浜第二中に対し、自衛隊での生徒の職場体験を中止するよう申し入れた。これに対し、中学側は「(体験先の)選択権は生徒にあり、再考するつもりはない」と申し入れを拒否した。
申し入れ書では、参院で審議中の安保法制に触れつつ「自衛隊は日本の外に戦争に行くことになるかもしれない。学校が生徒に自衛隊を紹介するとは、あまりにも無神経」と主張した。一方、中学側は「自衛隊は国民のために働いている。安保法制と(職場体験の)直接的な関連はない」との考えを示した。
中学によると、かつて生徒が荒れていた時期があり、校内に落ち着きを取り戻すために職場体験を始めた。自衛隊もその一つとして5年前から取り入れているという。


これは明らかな職業差別ですね。児童の学ぶ権利も侵害しています。「13歳のハローワーク」ではありませんが、多感な時期に職業体験をさせるというのは素晴らしいことではないかと思います。自分は小学生の頃に体験した自衛隊学校の宿泊体験が忘れられません(たしか、少年海洋学校という名称で3泊くらいしました)。手旗信号とかサバイバル術とか炊き出しとかいろいろやりました。もしかしたら小学校時代の学習体験で一番面白かったかもしれません。あれは絶対みんなやるべきだと今でも思っています。
この要望を出した新日本婦人の会という団体のホームページを見に行くと、「平和とジェンダー平等へ」というキャッチコピーが大きく出ておりました。
自分はジェンダーも嫌いですが、平等という言葉もまた嫌いです。ジェンダー連呼している人は「相席屋」に行ってデモ行進でもしていてください。
そもそもみんな生まれた瞬間から平等ではなく、性差も個体差も個人差もあるのが当たり前です。そうしたナチュラルなあり様を受け入れられない人が平等平等と叫んでいるのではないかと思っています。

言ったそばから矛盾した行動をとる人とか、一行で矛盾したことを言っている人とか、なんだか最近はやたらに目に付きますね。「憲法九条を守るために戦う」とか、「バカって言ったほうがバカなんだよ、バカ」とか。自分の言動と行動もたまにチェックしていかないと、時にちぐはぐなことになっていやしないかと思うので、そうした残念な人たちを他山の石としてわが身を振り返っていこうかと思います。
ジェンダー運動している人たちは(屁理屈をこねずに)女性専用車両にもぜひ反対してください。
死刑反対運動をしている人たちは麻原死刑囚の死刑にもぜひ反対してください。
原発反対している人たちは韓国の原発(いまものすごい数になっていますよ)にも反対してください。
ヘイトスピーチ法案の導入を目指す人たちは「米軍出て行け」という人たちを是非糾弾してください。
憲法九条死守とか言っている人たちは、北朝鮮とシリアとソマリアとイスラム国に行って憲法九条の良さを広めてやってください。日本にはすでに導入されていますので。





内容(双葉社HPより)
三年前に新宿で起きた傷害致死事件の容疑で内偵を進めていた男がマンションの一室で死体となって発見された。男は、大手金属加工機メーカーの跡取りと目されていた木崎乙彦。容疑者を失ったかたちとなった警視庁特命捜査対策室の鷺沼と井上に、神奈川県警のはぐれ刑事、宮野から電話が入る。神奈川に自宅を持つ木崎は、以前からよくない噂のある人物だったのだ。――狡猾な企業経営者の壁を打ち破れるか。鷺沼と宮野の絶妙コンビが悪を挫く好評シリーズ第五弾!


曹源寺評価★★★★
この「越境捜査」シリーズの第1弾が発表されたのは2007年8月で、その後「挑発」「破断」「逆流」ときて本書が第5弾ということになります。笹本センセーの警察小説のシリーズではまあまあ好きですが、ドラマ化もしており固定ファンも多そうですね。個人的には「駐在刑事」シリーズが好きです。
本書はいつものとおり、主人公が警視庁の鷺沼で相棒が神奈川県警の宮野、それにベテランの○○と若手の井上、そして彩香。代わり映えしない顔ぶれですね。そして今回も神奈川県警が容疑者と癒着している疑惑からの警視庁特命捜査対策室の出番という定番すぎる展開に、

たまには県警ガンガレ

と思ってしまいます。
いつも思うのですが、本書シリーズの特徴として挙げることができるのが「いつも宮野の手料理を食いながら、作戦会議ばっかりしている」というやつです。みんな現場には行くのですが、その場でのやり取りは少なくて、帰ってきてからの報告会で進捗が明らかになっていくわけです。主人公・鷺沼の部屋が安楽椅子探偵さながらの推理合戦になるのですが、前の作品では(どれだか忘れたけど)全体の半分くらいが作戦会議だったような記憶があります。まあ今回は疑惑の社長との丁々発止のやりとりや、香港での追跡劇などがありますので、そこは非常にコンゲーム的であったりアクション的であったりして楽しいのですが。
そして、ラストがいつもショボイなあと思っていたのですが、本書はだいぶ溜飲を下げることができました。巨悪をばっさり斬ると言っておきながら最後は見逃したり手打ちにしたりした作品もあったように記憶しておりますので、今回は許そうかと思います。





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2015年08月25日

書評641 中山七里「ヒポクラテスの誓い」

こんにちは、曹源寺です。

先日書評した「天地明察」の原作者である沖方丁センセーが逮捕されたと報じられました。妻へのDVで傷害容疑だそうで。まあ、作家センセーというのは昔から病んでいる人とかクズな性格の人とかが多いので全然違和感ありません。

さて、中国・天津で爆発事故がありましたが、日本でも24日には在日米軍施設で爆発、同日は日鉄住金鋼管の川崎工場で火災、ということでまったく他人事ではなくなってきました。一体何が始まっているんです?と誰かに聞いてみたいレベルですね。この火災が発生した川崎製造所の建屋は解体中だったそうですから死人が出なくて何よりですが、逆になぜ解体中に火災なのか?という疑問が湧きますね。

その中国では上海総合指数が続落です。日本の東証平均株価も2万円を割り込み、NYダウも下落ということで世界的な恐慌へまっしぐらであります。現状は
中国の景況感悪化→米国でも利上げ観測→株式市場から資金逃げる→安全な円に逃避→円高リスクで日本株下落、ってなもんですね。今回は大元が明確でリカバリが困難な局面ですので、いよいよヤバイことになるのかなあという不安でいっぱいです。9月危機が現実味を帯びてまいりました。電車の遅延にはくれぐれも気をつけましょう。





内容(祥伝社HPより)
遺体が語る真実を見逃すな
「あなた、死体は好き──?」
凍死、事故死、病死……何の事件性もない遺体から偏屈な老法医学者と若き女性研修医が導き出した真相とは?死者の声なき声を聞く迫真の法医学ミステリー、堂々登場!
栂野真琴(つがのまこと)は浦和医大の研修医。単位不足のため、法医学教室に入ることになった。真琴を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎(みつざきとうじろう)教授と「死体好き」な外国人准(じゅん)教授キャシー。傲岸不遜な光崎だが、解剖の腕と死因を突き止めることにかけては超一流。光崎の信念に触れた真琴は次第に法医学にのめりこんでいく。彼が関心を抱く遺体には敗血症や気管支炎、肺炎といった既往症が必ずあった。「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」という。なぜ光崎はそこにこだわるのか──。
解剖医の矜持と新人研修医の情熱が、隠された真実を導き出す──。

曹源寺評価★★★★
絶好調の中山センセーが解剖モノを出してきたということで、興味が湧きまして。
法医学というジャンルは基本グロなのでそれほど好きではありませんが、たまに読む程度なら十分楽しめますね。記憶に新しいのは(時代背景などかなり異なりますが)皆川博子センセーの「開かせていただき光栄です」がかなり強烈でしたが、本書もまた、相当なグロ注意でありました。
のっけからリアルな死体解剖が解説されますので、お食事中の方は本当にお気をつけくださいね。
で、本書ですが、主人公の真琴が単位不足でやむなく法医学教室に入ることになったところから始まります。そこにいたのは名物教授の光崎と外国人のキャシー准教授という組み合わせ。お二人とも非常にキャラクターが立っていますので主人公は脇に追いやられてしまいます。さらに埼玉県警捜査一課の古手川も加わり、とんでもないほどのキャラクター祭りになります。
まずはその会話の妙というか、個性のぶつかり合いを楽しんでいただくのが良いかと思います。本作は長編のようでいて、連作短編の体裁でもあります。それぞれが一応自己完結していますが、あらすじにあるような「謎」が残されたまま進んでいきますのでぐいぐいと引き込まれていくという展開になっています。
(以下、ややネタバレ)ただ、読み進めるうちにその謎はなんとなく見えてくるのでそれほど難解なミステリ仕立てにはなっていないですね。光崎教授がなぜ同じ大学内の既往症患者の解剖にこだわったのか、そのからくりは解けても、光崎がそこに至った理由はあまり触れられていなかったように思います。ここがやや中途半端な印象だったのと、あとは埼玉県警の古手川の上司である渡瀬警部が最後まで名前だけで終わってしまった点もなんだか置き去りにされたようでもったいないですね。

前段で散々煽っておいてこの始末


どうしてくれましょう。
とは言っても、こうした点を除けばぐいぐいと惹きこまれるストーリーに手放しで賞賛できます。





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2015年08月21日

書評640 沖方丁「天地明察」

こんにちは、曹源寺です。

先日の中国・天津で発生した爆発事故は動画を見れば見るほどその凄まじさがよく分かるようになってきました。あの爆発で死者が二桁はありえないでしょう。2,000人くらい死んでいてもおかしくはないですね。巻き込まれた日本人も多数いらっしゃいますので、まずはご冥福。
あの事故で思ったのは、化学品の貯蔵やら保管やら、あるいはその延長で揮発油だったりその他の劇物だったりといった、日常生活とは切り離しておいたほうが無難なものというのはやはり厳重な管理が必要であって、少なくとも住宅街の近くに保管するとかありえないなあということです。
よく規制緩和とか言いますが、何でもかんでも緩和すればいいってもんじゃないですね。こうしたものは規制に規制を重ねたほうが良くて、日本の法律はその点、精緻に組まれているのだろうなあと思うのです。というか、中国がザルなだけかもしれませんが。

先日、政府が発表した2015年4〜6月期のGDP伸び率がマイナス1.6%と3四半期ぶりに再びマイナスになったというニュースがありました。そのくせ甘利経済財政・再生相は「景気は回復傾向にある」などと抜かしやがりました。まったくふざけた話です。天候要因などたいしたことはないでしょう。個人消費が伸び悩んでいるわけで、その圧倒的な要因は所得が増えないまま物価だけが上昇しているからです。ここで所得が増えなければ個人消費はますます減少し、GDPの落ち込みを加速させるのではないかと思います。





内容(Web KADOKAWA より)
天命こそ、最高の勝負。
江戸、四代将軍家綱の御代。ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること――日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!!


曹源寺評価★★★★★
これ未読だったんですよぉ。第31回吉川栄治文学新人賞、第7回本屋大賞、第7回北東文芸賞、第4回船橋聖一文学賞、第4回大学読書人大賞という5つの賞を総なめにした時代小説のベストセラーなのに、発刊当初から話題になっていたのに、いままですみませんでしたぁ。
沖方センセーの著作歴からしても、SFとかライトノベル中心であったのに初の時代小説で爆発的ヒットという、異色作でもあります。それにしても沖方センセー、とんでもない御仁であります。
そんな作品について、いまさら書評も何もあったもんじゃありませんが一応は書いておこうかと。
主人公の安井算哲こと渋川春海は幕府の囲碁方にして算術家であります。時は関が原の戦いから50年以上が経過し、4代目将軍家綱の時代にあって、武家の時代から民衆の時代へ移り変わろうかという世相。長らく使用されてきた暦、宣明暦も800年に2日のズレを指摘される誤謬があり、改暦の機運が高まっている。春海は全国各地の測量を行う命を受けた後に、改暦作業を任命されます。実に三度の請願を経て春海の考案した大和暦が採用されるまでのストーリーが本書であります。
保科正之や本因坊道策、関孝和など同時代を生きた人々とともに春海の生き様をリアル(フィクションですが)に描いた作品として、本当に素晴らしい作品だなあと感心しました。
時代小説なのに勧善懲悪でもなく、合戦でもない。殺人も逃亡も謀略もないのに、スリリングで、わくわくする展開。ただただ学問に生きた人が主人公なのに、この面白さは一体なんだ?と小一時間考えてしまいました。

そうか、本書は春海の成長物語なのだ、と。

成功もあれば失敗もある。しかし、最後は己の信じる道をただひたすらに歩んでいき、そして本懐を遂げる。だから共感もするし、尊敬もする。様々な人と出会い、刺激を受け、自己研鑽を積む。恵まれた才能と環境を最大限に生かし、目標を定め、中途半端な立場から脱却する。多くの先達に感謝し、彼らと共有した希望を背負いながら夢に向かって走り続ける。こうした春海の生き様が胸を打つのであります。
的確な時代考証とすぐれたキャラクター造型がストーリーを支えています。本当に素晴らしい。面白い時代小説は時に、とんでもなくはまってしまいますなぁ。





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2015年08月18日

書評639 逢坂剛「断裂回廊」

こんにちは、曹源寺です。

エンブレム佐野というあだ名からトレース佐野というありがたくない名前に変わりつつある佐野研二郎教授ですが、サントリーのトートバッグ模倣事件を巡ってはだいぶネット以外の媒体でも取り上げられるようになりました。このまま朽ち果ててくれるだけでなく、エンブレムも再考していただければうれしいことですね。
それにしてもネット民の恐ろしさよ。よくもまあ調べ上げるなあと思いますね。天網恢恢疎にして漏らさず。デザイン界の癒着というかズブズブの関係も明らかになったりして、すごいことになっています。まだまだこの祭りは続きそうですね。
sano.jpg
さて、今年は戦後70周年ということでテレビなんぞはいろいろな番組を特集して戦争の悲惨さを訴えておりました。齢90歳を超える爺婆をかつての戦地に行かせては当時のことを思い出させるという、なんとも酷いことをしていましたが、まあ、出演する方も合意の上ですからそのへんはあまり文句を言っても仕様がありません。ただ、その爺婆の話を聞く若者(その多くが俳優)たちの態度が何とも傲岸不遜で気持ち悪かったですね。だって、悲しい話をしている横で笑っているんですもの。掘○とか○坂とか。
昭和4年生まれの義父は学徒動員で飛行機工場に行かされて、そこで終戦を迎えました。その義父は行ったこともないのに沖縄だけは行きたくないと主張していたと聞いています。地上戦が激しかった場所ですから、特に当時はその辺の報道も多かったのでしょう、あちこちに死体が転がっているような映像ばかり見せられたら、そりゃ行きたくないですわ。ましてや、当事者たるや、ですよ。
なんだか、どの番組も「戦争は悲惨だ」「戦争は究極の地獄だ」などとしきりに煽っているだけに感じたのは自分だけではないでしょう。なぜ「戦争が起こったプロセス」や「戦争を回避するために必要だったこと」といった、原因にスポットを当てて特集した番組を作らないのでしょうか。原因の探求と、今後への対処がなければ、物事はいくらでも再発します。戦争を本気で防止したいのならば、戦争=悪とか戦争=悲惨といったセンシティブな報道だけでなく、戦前の動き(第一次大戦後あたり)から真珠湾攻撃までの時間にタイムスリップした報道こそが重要になるのではないかと思います。





内容(徳間書店HPより)
北朝鮮不正送金の疑い、スポーツジム襲撃事件など、不審な行動が目立つ宗教団体クルパジャ。公安調査庁は団体規制法を視野に入れ、調査を始めた。公安調査官の殿村三春は、教団と関係が深いと見られる在日朝鮮人二世の兼松一成を尾行。その最中に、兼松は何者かに刺されてしまう。「クズワに渡してくれ」という言葉とともに三春に託されたUSBメモリ。そこには一体何が。陰謀が張り巡らされた傑作長篇ミステリー!


曹源寺評価★★★★★
逢坂センセー、超がつくほど久しぶりでした。百舌シリーズがドラマ化で爆売れしたようですが、個人的にはハゲタカシリーズが好きです。いつかそのうちドラマ化してくれないかなあと思っていますが、あんな悪徳警官、ドラマ化はできないでしょうね。
その逢坂センセーの久々の作品が公安モノということで、ちょっとワクワクしました。公安モノといっても警視庁公安部ではなくて公安調査庁であります。公安調査庁って過激な左翼やオウム真理教のような団体を監視し、必要があれば警察や検察と連携してその活動の抑止に努めるというのが本来の趣旨であろうかと思いますが、その対象となる団体があまりおおっぴらに活動していないから話題にならないし、予算も縮小されているみたいですね。
というのが前提です(キャー 何だかネタバレ)
本書の主人公は公安調査庁の殿村三春調査官。新興宗教のクルパジャを見張る(名前が三春なのはダジャレなのか?)のが仕事。ある日、パチンコ店の団体理事である兼松を尾行していたら兼松が何者かによって刺され、殿村は兼松からUSBメモリを渡されるが、なぜか刺されたはずの兼松が消えていた。このUSBメモリを巡る策謀が繰り広げられるわけですが、逢坂作品の妙はこうしたストーリーにおいてかなりの確率でいろいろとひっくり返してくれるところではないかと思います。
本書もまた、細かいところで

「あれは○○だった」

とひっくり返してくれますので、

一体どれが本当のストーリーやねん

と錯覚させてくれること請け合いです。
陰謀、策謀、自作自演、、、多少の無理やり感がないわけではないですが、最後はきっちり回収していますね。
ただ、後味は悪いです。ある意味、ハゲタカシリーズより後味悪いです。ここを落としどころにした逢坂センセーの意図はなんだろう?と思うレベルです。





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2015年08月14日

書評639 直原冬明「十二月八日の幻影」

こんにちは、曹源寺です。

夏はインターハイのシーズンであります。野球のインターハイが甲子園ですね、ハイ。野球以外にも陸上とか水泳とか様々なスポーツが開催されていますが、野球だけはなぜか特別扱いです。まあ、これは朝日新聞社が全面的にバックアップしてきたおかげです本当にあr

個人的にはテニスのインターハイは気になるところです。知り合いの娘さんは代表選手ですが控えでした。近くの有名なテニススクールのヘッドコーチの娘さんはレギュラーで、個人戦でも大活躍でした。
テニスはそれなりにお金をかければ(=時間をかければ)ある程度のところまでは到達しますが、そこから先は本人の努力次第ですね。あ、これはほかのスポーツでも同じか。
全国を見渡すと、かつて野球で甲子園を目指すことによって知名度を上げようとした私立高校があったように、テニスの団体戦を強化することで知名度を上げてきている高校もいくつか見受けられます。地方のほうがテニスコートを確保しやすいし、高校によっては全寮制を敷いているところもありますね。そりゃ強くなるわけです。
あとはそこからプロ選手をガンガン輩出していただけるとうれしいですね。特に世界に通用するレベルで、できれば女子で。
なぜ女子プロが衰退してきたのか、については調べていないので分かりませんが、よくあるのが「燃え尽き症候群」ですね。小さいときに激しい練習をしすぎると、大人になってから肉体的にも精神的にも耐えられなくなってしまうというものです。まあ、野球でも甲子園に出場できる約1,000人の高校生のうち、実際に大学、社会人、プロまで野球で進めるのはまあ半分以下でしょう。プロだけなら毎年150人がいいところでしょう。テニスはもっと門が狭いので大変かと思いますが、せめて燃え尽きないようにメンタルもフィジカルもきちんとサポートしてあげてほしいものです。テニスは生涯スポーツですから、若いうちだけやるのはもったいないですから。

余談ですが、今年の軽井沢トーナメント(テニス界では結構メジャーな大会)の一般男子ダブルスの部で優勝したのはアラフィフのお二人です。元全日本3位の人などを差し置いて、元大学同好会の人間が優勝したというので仲間内では結構お祭り騒ぎでした。
そういえば、自分の父親もインカレには進めなかった人ですが、57歳くらいで全日本のトーナメント(もちろん年齢別です)で優勝しました。若いときには勝てなかった人に勝って優勝したので、本当にうれしそうだったのを覚えています。テニスにはこういうのがあるわけで、自分も続けていきたいですし、自分の息子にも長く続けてほしいと思っています。





内容(光文社HPより)
第18回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作
奇襲作戦の秘密が漏れている! 裏切り者(スパイ)は誰だ? 太平洋戦争前夜の帝都・東京を舞台に、帝国海軍軍令部特別班と米英露の諜報員たちの知略と謀略が火花を散らす!
ミステリーとスパイ・サスペンスの見事な融合。知的で痛快なエンターテインメントの傑作が誕生した!


曹源寺評価★★★★
本書はたまたま見つけた作品ですが、この手の表紙にはどうにも惹かれてしまいます。調べてみたら、「加藤木麻莉」さんという御方でした。すでに多くの作品の表紙を手がけていらっしゃいますね。
この人と「井筒啓之」さんという方も人気のようですね。なぜ人気なのでしょうかね?ついつい手にとってしまうこのデザイン、不思議です。
さて本書ですが、タイトルのとおり真珠湾攻撃の奇襲に絡んだ太平洋戦争直前を舞台にしたスパイ・ミステリであります。「太平洋戦争」と「スパイ」、この時代背景と設定ではどうしてもあの名作「D機関シリーズ」と比較せざるを得ないですね。柳広司センセーの出世作と本書のようなデビュー作を比較してしまうのはどちらにも大変失礼な話ではありますが、戦争突入直前という時代を舞台にしたスパイ小説を堂々と出してこられたわけですから、こればかりはしょうがないといえばしょうがないですね。
海軍のなかにあって異端の部署に配属された若き少尉、潮田三郎は軍令部ではなく現場の艦艇に乗り込みたくてしょうがないが、その上司である渡海少佐の謎めいた人物像に徐々に心酔していき、軍部の中にいる間諜を探し出すというストーリーです。タイトルの通り、真珠湾攻撃の指令を巡る動きが中心ですが、米国大使館への通信傍受よりもスパイの炙り出しや騙し合いといった内容のほうが中心ですので、スパイを特定する→泳がせる→偽の情報で混乱させる→

どこまで嘘やねん!

といったコン・ゲーム的な展開がかなり良いテンポで進んでいきますので、人物描写がイマイチなところをストーリー展開でしっかり補っているなあという感想です。
時代考証がしっかりしているところや、情報伝達の方法がリアルにスゲエと思わせるところなどはなかなかに読ませてくれます。
自分はもともと明治初期から戦後間もない頃までを舞台としたミステリが好きだということを最近になって富に自覚しています。本書もまたズバリこの時代のお話ということでズッポリとハマってしまいました。






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2015年08月11日

書評638 阿部和重×伊坂幸太郎「キャプテンサンダーボルト」

こんにちは、曹源寺です。

お盆です。
電車はいつもより少し空いています。隣のビルは大手自動車メーカーさんですが、お休みモードでうらやましいです。

さて、昨今の話題といえば「東京オリンピックのエンブレム」問題でしょうか。パクリ疑惑が昨日から今日にかけて大盛り上がりですね。
サントリーのトートバッグで見つかったパクリはこれ完全にアウトです。言い逃れできないレベルです。それにしてもよく見つけましたね。最近のネット民は敵に回すと本当に怖ろしいです。
でもこれ、地上波で報道しているんですかね。もうネットではすでに「今年の佐村河内」か「今年の小保方」レベルの盛り上がりですが、例によって「報道しない自由」でも行使するのでしょうか。
報道しないといえば、今年の広島平和記念式典には中国と韓国が出席しなかったというニュースもほとんど報道されていませんね。安倍総理が非核三原則の文言を入れなかったことに文句を言うなら、中国と韓国に文句を言うのがスジではないかと思います。まあ、中国は台湾を正式に呼んだから欠席でもしょうがないんですがね。







内容(文藝春秋HPより)

人生に大逆転はあるのか?
小学生のとき、同じ野球チームだった2人の男。
20代後半で再会し、一攫千金のチャンスにめぐり合った彼らは、それぞれの人生を賭けて、世界を揺るがす危険な謎に迫っていく。
東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29と、公開中止になった幻の映画。そして、迫りくる冷酷非情な破壊者。
すべての謎に答えが出たとき、動き始めたものとは――
現代を代表する人気作家2人が、自らの持てる着想、技術をすべて詰め込んだエンターテイメント大作。


曹源寺評価★★★★
伊坂幸太郎&阿部和重というトンでもない合作で話題を呼んだ作品がこれであります。とは言っても、自分は芥川賞作家の阿部センセーの作品未読でありまして、この合作の結果が本当に最良のものであるのかどうかは分かりません。判定不能です。
人によっては「中和」という表現を使っていたり、「1+1=3」という表現で誉めそやしていたりしますので、おそらくはマイナスではないと思います。ただ、自分にとって本書は

やっぱり伊坂作品や〜

としか言いようのない伊坂ワールドでありました。
終戦直前の1945年3月、東京大空襲の日になぜか東北地方を目指したB29の編隊。村上病という謎の病気とワクチン。日本刀を振り回す銀髪の怪人。公開中止になった戦隊ヒーロー映画。こんなキーワードを羅列しただけでは何のお話なのかさっぱり分かりませんね。でもこれらがすべて一つの線でつながるというのがまさに伊坂ワールドではないかと思うのです。
スピーディーな展開や伏線の回収、国家権力との対峙といった場面は「ゴールデンスランバー」を彷彿とさせますが、ゴールデンスランバーが伏線の回収でスッキリだったのに比べて、本書はエンタメ的に爽やかであります。すなわち、正義は報われた!という締めくくりで、東北楽天イーグルスの試合が行われている場面で邂逅する4人がこれまたハッピーエンドで良かったです。





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2015年08月07日

書評637 福井晴敏「人類資金Z」

こんにちは、曹源寺です。

8月は原爆とか終戦とかJAL123便とかいろいろと追悼行事が多いので、平和を噛み締める月になっているわけですが、平和の反対語が戦争であるならば、なんとか戦争しない国であり続けたいと思いますね。
しかし、戦争をしない=戦争という外交手段を放棄する、ということであれば、戦争に代わる外交手段を持つべきであるというのがスジではないかと思うのですが、そこに言及する政治家は皆無ですね。
日本は戦後、自衛隊を発足させる前に竹島を盗られ、北方領土は盗られっぱなしで入植者を増やそうとしています。近年は尖閣諸島に土足で上がりこもうとする輩がいて、領海内にある天然ガス資源を横から盗もうとしている輩もいるわけです。「話し合いで」とか抜かしているヤツは現実を知らなさすぎるお花畑としか言いようがありません。
そこで、戦争に代わる外交手段として「超露骨な経済制裁」というのはいかがかと思いまして。
超露骨というのは、もし仮に尖閣諸島に一歩でも上陸しようものなら、もう高らかに「資金を引き揚げっぞゴルァ」と宣言して、ODAから国債から国連分担金から民間債権まで資金も人も何もかも引き揚げてしまう、というやつです。こういうのを一回やってみて欲しいと思います。隣国など一気に株価が暴落して国民生活が成り立たなくなってしまうレベルになること間違いなしです。内戦も勃発することでしょう。
ただし、隣国からは「そんなことしたらミサイルぶっ放すぞゴルァ!」と言われること間違いないでしょう。実際にぶっ放してくる可能性は高いですね。でも、戦争を放棄しているからには、そこは甘んじて受け入れるしかないですね。どこかの地方都市一個くらいの犠牲はやむを得ません。何十万人かはミサイルで死ぬでしょう。でもそれ以上の成果を経済制裁で挙げられるならしょうがないです。なにせ、戦争は放棄しているのですから。





内容(講談社HPより)
たいへん長らくお待たせいたしました。 福井晴敏さん著『人類資金』最終巻の『人類資金7』は、2015年7月15日に刊行いたしました。
総ページ数704ページに及ぶ超大作となりました。巻頭に、既刊の詳細なあらすじも収録しております。
最終巻ラストで描かれる、『人類資金』がもたらした10年後の世界像は、暗く閉塞した時代に風穴が開いたかのような爽快感があります。詐欺師・真舟、笹倉暢人とその腹心・石優樹、そして高遠美由紀らが命がけで掴み取った未来の姿を、ぜひご一読ください。
限定版も同時刊行中です。
福井晴敏さんが『人類資金』執筆に先立って作成したプロット(あらすじ)を、完全無修正で全文収録。著者自身による、66項目に及ぶテキストコメンタリーも必読です。こちらもどうぞよろしくお願い申し上げます。


曹源寺評価★★★★★

ようやく、本当にようやく

最終巻が刊行されました。福井ファンとしましては本当に長かった。一年前の春あたりには出る出る詐欺のように「もう少しお待ちください」という講談社の繰り返す言葉にいい加減ブチ切れそうになりましたが、ガマンにガマンを重ねて、福井センセーを信じて、待ちましたよ。
6巻から7巻の間が1年5ヵ月も空いてしまったので、内容もだいぶ忘れてしまいました。そんで出てきたと思ったら最終巻は700ページを超える文庫でした(笑 
物語が一気に加速する展開になっていて、でもやっぱり福井作品なだけあって凝った作りこみでありました。
なので、本項では第7巻のみならず、全巻を通じて読破した感想をそこはかとなく書き連ねていこうかと思います(長文になってしまいましたorz)。

本書のタイトルである「人類資金」とはつまり、今ある資本主義の「ルール」(この言葉がやたら使われています)である弱肉強食というか収奪のためのシステムであるのに対し、発展途上国などに集中的に資本投下することによって新たな富を生み出し、地球上のすべての国・民族が幸福に暮らすことができるようになる新たな「ルール」を作ることにある、という経済システムであり、そのための「資金の使い方」のお話でありました。
では、はたしてそのようなことが実際には可能なのか?かなり根源的な問いかけのように思えます。自分は経済学部出身ではありませんので、いわゆる基本的な経済理論さえサルレベルであります。ただ、文化人類学的というか、歴史学的というか、これまでの人類の進歩と調和(万博かっ!?)を考えれば、こればっかりは「無理じゃね?」と思わざるを得ません。
なぜか?
自分が思うに、貨幣流通制度なんて実質的に5,000年くらいの歴史しかないわけですが、人類はそれ以前に何万年も続いています。熱帯雨林気候では働かなくても作物が実り、服を着なくても寒くなく、水も豊富です。
一方、砂漠では作物が育たず、極地では服を着て住宅を建てなければ凍死が待っています。人類はそのように生活してきましたので、一般的には温暖な気候に恵まれた民族が栄えたり文明が発達したりした一方で、厳しい環境におかれた民族は狩りの技術や船・住宅などの技術が進歩したりしました。民族や居住地の違いによって「よく働く民族」もいれば「のんびりした民族」もいます。収奪を得意とする海賊の子孫もいれば、職人を大事にする民族もいます。
この日本はというと、自然災害がとんでもなく多い島国で2,000年以上も(北と南に融合した国があるとはいえ)同じ国家であり続けてきた結果、農耕を主体とした、穏やかで、自然崇拝的で、創意工夫が得意な民族になっていました。
宗教的な相違点だけでなく、こうした自然発生的な民族性の違いというものは確実にあると思います。だからこそ、文明の差が生じているのだと思いますし、それを資本の集中投下だけで経済格差が縮まるかといえば、決してそんなことはないのではないか、と思ってしまうのです。仮に、大規模な資本投下により経済格差が一気に縮まったとしても、その経済を動かすのはその国の国民であるわけで、継続的に資本を買い回収する=儲けを生み出すという経済活動がしっかりできなかったら、たちまちにしてもとの貧乏国に戻ってしまうのではないかと思うのです。たとえば、大きな橋をODAのようなかたちで建てても、橋の維持管理ができなければせいぜい30年くらいで橋は倒壊するでしょう。橋のメンテナンスにかかる費用はもとより、技術的なサポートがなければ保守は困難です。つまりは、本書のカペラ共和国のように、それこそ30年とか50年スパンで国民教育しながらインフラと経済を整えていくという気の遠くなる作業を覚悟して「人類資金」を投下するという試みでなければならない、というわけで、そんなことが「財団」でできるかというとやはりやや非現実的ではないかという結論になってしまうわけです。

と、全部読まないうちにつらつら書きなぐっていたら、なんと福井センセーはこうした自分の否定的な感想を持つ読者もすべて包含してくれていましたよ。
最後はこの新たな「ルール」=資本共生主義の行く末を、それほど簡単な道のりではないという現実感を踏まえながらも、力強く踏み込んでいく主人公たちの活躍で締めくくってくれました。折しも、この作品と前後して、経済学の分野ではトマ・ピケティ氏による資本主義の限界を示唆するような「ピケティ理論」が世に問われていたわけですが、この新たな「資本共生主義」は歪んだ世界を共生により矯正してくれるという(オヤジギャグ的な)希望を残してくれています。世界を変えるのは簡単ではないし、10年やそこらで変わるのはクーデターみたいな激変でしかありえなくて、それはそれで後世に禍根を残すわけですから決して幸せな未来が待っているわけではない。こうしたことも、

福井センセーは見抜いておられました

だからこそ、カペラ共和国の王族の末裔に国連という場所をしてその新たなルールの監視場所を担わせたのでありましょう。

福井エンタメはやっぱりサイコー!

だと再認識させてくれる一作でありました。





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2015年08月04日

書評636 薬丸岳「誓約」

こんにちは、曹源寺です。

先日、調布空港から飛び立った小型機が近隣住宅に墜落した事件がありました。あの近くは知人がよくテニスコートを取ってくれていて、自分の家からは自転車を必死で漕いで30分以上かかるので大変なのですが、最近は良く行くエリアでもあります。
息子が小さい頃は飛行機を見に行こうなどと言って、滑走路の真横にある「プロペラ・カフェ」にも行ったりしていました(残念なことに今回の事故を受けて休業中)。ただ、京王線と中央線の狭間でどちらからもバス圏になるので我が家では家を探すときの対象にはならなかったです。都心に通勤する人から見ると新宿勤務くらいの人ならば1時間もかからずにオフィスに行けそうですが。あの辺は公園や川がすごくきれいに整備されていますのでいい環境ですけどね。
そもそも、空港の近くに住むということは飛行機が落ちてくるという可能性を考慮したうえで結論づけなければいけないということだ、と改めて思いました。河川の近くなら洪水の可能性があり、海岸の近くなら津波の可能性がある。崖の近くなら崩落の可能性があって、鉄道の近くなら騒音と脱線の可能性があり、国道沿いなら暴走族の騒音が響き渡る可能性がある、というリスクを考えなければなりません。
そういえば、奥田英朗の「最悪」という小説(ちょっと古いです)では、主人公のひとりである工場の主が、近隣に分譲された住宅に入居してきた人からしつこいほどに騒音の苦情を言われて工場が潰れかけてしまうというお話がありました。もう理不尽以外のなにものでもないのですが、こうしたお話は小説の中だけではないようです。今回の事故を受けて調布空港の閉鎖を求めるような動きがあるという噂を聞いて、リアルにガクブルしてしまいました。そういえば、沖縄のほうでも、、、おっと誰か来たようだ。







内容(幻冬舎HPより)

一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。罪とは何か、償いとは何かを問いかける究極の長編ミステリー。
捨てたはずの過去から届いた一通の手紙が、
封印した私の記憶を甦らせるーー。十五年前、アルバイト先の客だった落合に誘われ、レストランバーの共同経営者となった向井。信用できる相棒と築き上げた自分の城。愛する妻と娘との、つつましくも穏やかな生活。だが、一通の手紙が、かつて封印した記憶を甦らせようとしていた。「あの男たちは刑務所から出ています」。便箋には、それだけが書かれていた。
一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。究極の問いを突きつける長編ミステリー。


曹源寺評価★★★★
薬丸センセーの徹底したポリシーが「前科者は許されるのか」というテーマでとにかく書き倒すということでありまして、本書もまたこのポリシーが貫かれております。ここまでくると本当に清々しいですね。
ただ、本書がこれまでの作品と微妙に異なるのは、主人公が昔クズ→逃亡、整形して別人になりすます→過去を捨てたらいま幸せ、という微妙な立ち位置にいるところでありましょうか。この主人公はある意味、過去の清算を済ませていませんので、そんなヤツに同情する(つまり、主人公に味方するンかいな、と)ことが果たして良いことなのでしょうか、という

根源的な問いかけを読者に強いる

わけであります。
そんな逡巡をしているうちに、ストーリーは薬丸作品史上最速で進んでいきます。主人公の向井聡は死んでいるはずの女性から、彼女の恨みを晴らすべく復讐に加担しろと電話で脅迫されます。加担しないと自分の娘が酷いことになると脅されるのです。その死んでいるはずの女性と向井の間にあった過去の出来事とは何か。向井は脅迫に屈しながらも、自分を追い詰めている者に迫っていきます。脅迫者は――
読んでいくうちにだいたいの想像はついていきますが、最後の展開はなかなかに予想外で、読みきれる読者は少ないのではないでしょうか。ただ、それなりに張られた伏線もしっかりと回収しつつ、手堅くまとめましたので読後スッキリとはいかなくても、なかなかに読ませてくれた作品ではあると思います。
主人公が元犯罪者で、元被害者から恨まれているけれど、、、という設定はかつての高野和明センセーの名作「13階段」を彷彿とさせます。あそこまで捻られているわけではないのですが、疾走感は同じくらいありますね。






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posted by 曹源寺 at 15:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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