ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2015年10月30日

書評659 土橋章宏「超高速!参勤交代」

こんにちは、曹源寺です。

最近話題になった、図書館を巡るニュースがふたつありまして。

TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由(東洋経済オンライン)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と公共図書館の共同運営に取り組んでいた図書館流通センター(TRC、東京・文京区)が、CCCとの協業を見直す方針を明らかにした。すでにCCCに対し、既存の協業関係を解消し、将来的にも協業しない意向を伝えたという。(以下、略)

CCCはいわゆる指定業者として公共図書館の運営受託を開始しましたが、今までにない開放感のある空間作りで話題をさらった一方で、独自の分類コードを使用したことで利用者が混乱したり、古本が混在した選書で私腹を肥やした疑惑が取りざたされたりしていました。ここへきて、同じく指定業者として参入している図書館流通センター(TRC)が協業を見直す方針を打ち出したことで、図書館運営でCCCが孤立するのではないかとみられています。
まあ、日本には昔から日本十進分類法(NDC)というのがありまして、なんで独自のコードなんぞで運用するのか理解に苦しみます。利用者から見ればCCCザマアとしか言いようがないのですが、うちの会社の近くの図書館はTRCが運営していてすごく良くなりましたのでTRCガンバレ!と言っておきます。

本が売れぬのは図書館のせい? 新刊貸し出し「待った」(朝日新聞デジタル)
公立図書館の貸し出しにより本が売れなくなっているとして、大手出版社や作家らが、発売から一定期間、新刊本の貸し出しをやめるよう求める動きがある。背景には、深刻化する出版不況に、図書館の増加、サービス拡充もある。本を売る者と貸す者、相反する利害のはざまで、出版文化のあり方が問われている。(以下、略)

この問題提起は猪瀬直樹センセーが都知事になる前から指摘されておられた話で、いまさら感が満載ですが、ヘビーな利用者からすればフザケンナーな話でもあります。こちとら、ン万円も住民税取られているので、本で少しでも元を取ろうとガンガン読み漁っていますので。
なにより驚いたのは、いま国内の図書館が3,200館を超えているという事実でした。2,800館じゃなかったゎ。5年くらいで400以上も増えているじゃないの。利用者がそれだけ増えているというのなら、活字離れとは一体何だったのかという別の命題も沸き起こりそうです。

内容(講談社HPより)
ときは享保20年(1735)初夏、改革の嵐吹き荒ぶ8代将軍吉宗の時代。わずか1万5000石の磐城湯長谷藩に隠し金山の嫌疑がかかり、幕府老中から「5日以内に参勤せねば、藩を取り潰す」と難題をふっかけられた。若殿様以下7名は東国一の忍びの力を借りつつ、陸前浜街道、水戸街道、さらには山野を踏み越え江戸城本丸へ急ぐ。軽量化のため竹光しか持たない一行を阻む公儀御庭番と百人番所の精鋭。湯長谷藩の運命や如何!?


曹源寺評価★★★★★
2014年に映画化されたことで有名になった本書ですが、痛快アクション時代劇というカテゴリがあったら絶対に不動の一位だろうなあというくらい面白い、日本人向けの作品でありました。
映画界では城戸賞という有名なコンクールがありますが、時代劇では2003年の直木賞候補にもなった「のぼうの城」が城戸賞を受賞されていますね。あれも本当に面白かったです。
タイトルが良いですね、「超高速!」で「参勤交代」ですよ。このタイトルだけで中身が想像できます。このネーミングセンスはぜひ見習いたいものです。
時は徳川吉宗公の時代、磐城地方の1万5千石あまりの小国である湯長谷藩を舞台に、その藩主である内藤政醇が幕府老中から5日以内で上京せよという無理難題をふっかけられつつも知恵を絞って江戸城登城までの活躍を、軽やかなタッチで描いた作品であります。
面白かったです。
この手の時代作品にある、面白い要素というのが「実は相当の手練だった主人公」とか「伝説の使い手だった脇役」とか「変わった特技で窮地を凌ぐ」とか「徹底した悪役が最後に倒される」とか、いろいろありますが、本書は

これらの要素を全部盛り込んでいました

これで面白くないわけがありません。逆に言えば「媚びている」とか「こすっからい」とか言われてもおかしくないレベルですが、個人的には面白ければそれでいいじゃん!と思うので全然気にしません。もしろ、時代劇は普遍だなあという思いも強くなる作品でありました。
続編に期待!と思っていたらちょうど続編が出たようです。早速読みますわ。





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2015年10月27日

書評658 伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい?」

こんにちは、曹源寺です。

先日のジュンク堂書店がしでかしたキャンペーン+ツイッター騒動ですが、個人的な感想を少し補足することにします。
たとえば、書店が「○○特集」と銘打って、勉強のためになるからこれを読め!と棚を作ったとしても、それだけで偏向だの政治的だの差別だのと批判するのはたぶん違うのだろうと思います。ですから、別に「日本共産党特集」といった棚があっても良いのではないかと(もちろん、自分は買いませんし勉強もしませんが、それを学問とする人もいるかもしれません)。

しかし、そこにツイッターで現政権批判とデモ参加の呼びかけ、さらにはそれを批判した人に逆ギレ、とまでくれば、それはもう「偏向」と謗られても致し方ないのではないかと思いますよ。

我々が気をつけなければならないのは、書店がたとえ嫌韓・嫌中本を並べても、あるいは逆にSEALDsとしばき隊の本を並べたとしても、ただ単純にそれを「偏向だ」と批判してはいけないのだということです。なぜなら、それをやってしまうとただの「焚書」と変わらないわけで、自分たちの意にそぐわないものは徹底的に排除するという最も危険な思想につながってしまうからです。

ジュンク堂の書店員が批判されたのは、ただ単に本を並べたからではなく、そこに一方的でポリティカルな思想をもってアジテーションを加えたからであると理解すべきです。


内容(光文社HPより)
あの、正義って何でしょう。
住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる――身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが……。今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。こんな暴挙が許されるのか?そのとき! 全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!


曹源寺評価★★★★★
伊坂幸太郎センセーの作品テーマのなかに「公権力の暴走」というのがありますね。「モダンタイムス」や「魔王」、それに「ゴールデンスランバー」もある意味近いものがあると思います。
本書もこの流れを汲む作品であります。
例によって伊坂センセーの地元である仙台が舞台です(食傷気味)。平和警察という新しい部署が現代の魔女狩りを行います。疑わしい人は現代的な尋問(拷問)にかけられて、自分をテロリスト(あるいはその予備軍)と認めればギロチンが待っているというなかなかにありえない設定ですが、そこは小説、ありえなくもないのかと思わせるところが氏の真骨頂でありましょう。
いつものように読者をミスリードさせる手法、伏線をばら撒いてそれでもしっかり回収するテクニック(こんなエピソードも伏線かよっ!というレベル)、文中に挟み込まれる何の気もなさそうな薀蓄が意外な効力を発揮する、そして最後はやっぱりどんでん返しだった、などなど、相変わらずの伊坂ワールドには本当に脱帽です。
でもちょっと考えさせられるところもあります。正義とは何か、正義と偽善の境目はどこにあるのか、密告社会に住む人間はどういう行動を取るのか、大衆とは愚かな存在なのか、などなど。ただ、それも軽い文章の前では

砂漠に撒いた水のように

さーっと逃げていきます。軽く読んで深く考えない、伊坂作品はこうして消費されていくのでありました。





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2015年10月23日

書評657 大門剛明「JUSTICE」

こんにちは、曹源寺です。

産経が記事にしているのが、不動産流通経営協会という社団法人がYahoo!に不動産情報の提供を中止することを決めたというニュースです。

ヤフーへ不動産情報提供しません 業界が取りやめ決定、ソニー不動産との提携に反発
大手不動産情報サイトを運営するヤフーが、中古物件流通促進に向けてソニー不動産と業務・資本提携したことが不動産業界に波紋を広げている。大手業界団体が「不動産情報サイトの中立性を損ねる」として反発。12月にヤフーへの情報提供を取りやめることを決めた。ヤフーは、ソニー不動産と提携して個人所有の中古物件情報を紹介するサイトを立ち上げる一方で、従来の情報サイトも並行して運営する方針だが、曲折も予想される。(以下、省略)

ポータルサイトは中立性がなければいけない、特定の業者と連携すれば他の業者に不利益が生じる可能性がある、だから情報提供は取りやめる。
なるほど、正論と言えるかもしれません。

同じような事件がこちら。
「ジュンク堂渋谷非公式」のツイート、丸善ジュンク堂が「公式見解ではない」と表明 一部から“偏り”指摘
MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(東京・渋谷)を名乗る非公式Twitterアカウントの投稿について、一部から「特定の思想・信条に偏っており、書店名を掲げるには不適切では」などと指摘されたのを受け、丸善ジュンク堂の公式式アカウントが10月20日、「公式な意思・見解ではございません」と表明した。非公式アカウントは削除されている。(以下、省略)

ちょっと前は書泉グランデがいわゆる「嫌韓本」を店頭に並べていたことが非難の対象になっていました。今回のジュンク堂はその逆パターンです。
書店は本のポータルであると考えれば、Yahoo!と同様に思想的には中立でなければならないということになりましょうか。書店員としては「グルメ本を並べれば食いつくだろう」というのと同じレベルで軽く考えてブースを作ったのかもしれませんが、書泉グランデの件を知らなかったとは言わせません。他山の石という単語を知らない書店員がいるとは驚きです。

経済的な背景と政治思想的な背景という異なるケースではありますが、ネット上のポータルもリアルな書店もかのように「中立性」が求められているのが現実だというのが実に良くわかるニュースです。
翻って報道はどうでしょうか。本来ならばポータルサイトよりも書店よりもさらに一段上の中立性が求められるのが報道ではなかろうかと思うのですが、世の中には報道の名を借りたバラエティが跋扈しているのが現状です。我々は特に報道と報道バラエティの区別をしっかりと認識しておく必要があると思います。そのうえで、報道の名を借りたただのバラエティ番組に対しては話八百嘘半分、正しい知識をしっかりと仕入れていくことが大事だなあと改めて思いました。

内容(KADOKAWA HPより)
”正義”の根幹を揺さぶる、著者渾身の社会派ミステリ。
巨大法律事務所に招聘された弁護士の鷹野は、己の実力を示すため、死刑を求刑されている弁護事案に挑む。居眠り運転で死傷者を出した被告人を弁護すべく動き出すが、やがて周到な計画犯罪が浮かび上がり――。


曹源寺評価★★★★
大門センセーはやはりリーガルサスペンスの切れ味が違います。
巨大ローファーム「師団坂法律事務所」に所属する弁護士面々が活躍する連作短編です。師団坂を作った凄腕弁護士を父に持つ佐伯芽依、ニューヨーク帰りの元外科医という変り種にして超切れ者の鷹野和也、東大卒にして元最高裁判事の桐生雪彦、元刑事で引退間近の老弁護士梅津清十郎、元ニートで一念発起して弁護士資格を取った杉村徹平、と、なんだかとてもユニークなメンツをそろえ、それぞれが短編の主人公になっています。

これだけでもうTVドラマが半年分くらい

できそうですね。
弁護士センセーのお話ですから、ストーリーは必然的に被告人の利益になるべく働く弁護士の動きということになるのですが、事件の真相を探る弁護士がときに「正義とは何か」について悩んでしまうような真相に出くわす場面もあります。表面を撫でるだけでは分からない事件の深層にして真相が明らかになったとき、なんだかとてもドキッとさせられます。地球がひっくり返るくらい仰天する真相もあったりしますので、リーガルサスペンスとしては一級品ではないかとも思います。
サクッと読めるわりに、よく練りこまれた内容だと思います。ぜひ続編を!





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2015年10月20日

書評656 香納諒一「約束 K・S・Pアナザー」

こんにちは、曹源寺です。

この数日で急に増えだしたニュースのひとつに、「スズメバチの外来種」というのがあります。ツマアカスズメバチという大陸のスズメバチが対馬や北九州に上陸してきていて、日本の在来種であるミツバチに大きな被害がもたらされているというのです。
テレビ東京は「全国・駆除の達人」なんて番組を制作していましたが、それだけでなくNHKの報道でも採り上げられるようになって急速に広まっていますね。調べてみたら、9月に環境省が発表したことで話題になったみたいです。
外来種というのは生態系を大きく狂わせることから、本来ならば厳重な管理が必要とされるのですが、さすがに虫のレベルでは無理でしょう。一度入ってしまったものはとにかく徹底的に駆除するしか道はなさそうです。
ツマアカスズメバチがやばいのは、養蜂産業だけでなく自然環境にも多大な功績を残しているミツバチを脅かしているからであります。かのアインシュタインは「"If the bee disappeared off the surface of the globe then man would only have four years of life left."もしミツバチが地球上からいなくなったら人類は4年しか生きられないだろう」と予言しましたが、こんなスズメバチに貴重なミツバチを食い荒らされたのでは溜まりませんね。
外来種ももしかしたら、少しずつ繁殖してその地の生態系を壊さずにゆっくりと繁殖していけば、共存することができるのかもしれませんが、虫は繁殖力が半端ないですし、捕食する優位な立場にあるなら共存は無理だと思います。

さて、翻って人間社会の話ですが、いまドイツではハンガリー経由で難民の受け入れが急速に増加してしまったことで半分パニックな状況だそうで。北緯50度ですから、もう夜の気温は一桁か氷点下ではないかと思います。そんななかテントで暮らす人たちが急激に増えて、これからどうやって冬を越そうかと考えている人たちが略奪や暴動に走ったらドイツは治安がヤバイんじゃないですかね。外来種が急速に増えると大きな混乱になる、という点では虫の世界も人間も変わらないのかもしれません。


内容(祥伝社HPより)
すべてを失った男
どん底で夢を見る少年
崖っぷちの悪徳刑事
3つの火種が新宿の夜に炸裂する
著者人気シリーズ特別長編!
激情で人を殺め、服役中に消息を絶った婚約者と息子を探す秀夫。だが、伝手となるオジの慈郎は凶刃に倒れる。さらに現場から、故郷の街で起きたNPO横領事件の内幕を記すノートと大金の入った鞄が、少年康昊(ガンホ)に持ち逃げされた。回収のため悪徳刑事天明谷を遣う殺人者の一味や、匂いを嗅ぎつけた冷酷な金貸し智勲(ジフン)の追跡が激しさを増す中、危機を救った秀夫に、少年は山分けを主張する。新宿の闇に、欲と野望の火花が炸裂したとき、秀夫と康昊の絆が呼ぶ結末は?
著者の人気警察小説シリーズ、特別長編!


曹源寺評価★★★★★
香納センセーのK・S・Pシリーズが大好きで全刊読破しておりますが、本書は「K・S・Pアナザー」ということでシリーズ初のスピンオフ作品となっております。
しかし、いつものK・S・Pメンバーはほとんど登場していません。

これをスピンオフと言ってよいものかどうか

迷いますね。売らんがためのタイトルなら、勘弁してください。
そもそも天明谷刑事の役柄がK・S・Pメンバーである必然性がよく分からない作品です。
それを除けば、いつもの香納作品らしい濃密な警察小説です。5,000万円の入ったカバンと横領事件の証拠となるノートをめぐって、元殺人犯の秀夫、在日の少年康昊(ガンホ)+母、在日グループ、日本のヤクザ(!?)+悪徳刑事が三つ巴、四つ巴の争奪戦を繰り広げていきます。
街中の銃撃戦、リンチ、殺人、なんでもあります。新宿が舞台で在日を絡めたバイオレンス作品となれば、馳星周センセーチックなイメージが先行してしまいますが、そのとおり、かなり近いものを感じます。
登場人物もクソなヤツが多く、救いとなるのは東北からNPO法人の汚職を追って上京した藤代刑事だけですね。なので多少のモヤッと感は否めません。しかし、疾走感に満ち溢れた香納センセーのスリリングな書き味に痺れたい方は必読でありましょう。





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2015年10月16日

書評655 前川裕「死屍累々の夜」

こんにちは、曹源寺です。

今週はかつてないほどの膝痛で、いよいよ老人の仲間入りかと思いました。最初に整形外科を尋ねたときは「変形性膝関節症」と診断されましたが、セカンドオピニオンを聞きに別の整形外科に行ったら「鵞足炎(がそくえん)」と診断されました。一体どっちやねん?と思ったら、痛み方がこっちだろうということで鵞足炎に落ち着きました。このビョーキ、痛いときは膝に釘を打たれたかのような痛みが走ります。でも、テニスコートに立つとあまり痛くないんですよ。おかしいな。
治すにはストレッチと休息が必要だそうなので、少なくともストレッチは始めようかと思います。あと、シューズのインナーソールをいいやつに代えるのも効果ありということなので、いろいろと投資しようかと思います。

内容(光文社HPより)
1984年7月4日。
本駒込の老舗旅館「はぎのや」を木裏健三がはじめて訪れた。
悪夢はそこから始まり、醒めることはなかった。
30年を経て、なお多くの謎に包まれたままの「木裏事件」。命を落とした者は20人に迫り、信用に足る証言は少ない。事件に関連して叔父を亡くしたジャーナリストは、渦中にいながら今もなお生きながらえているひとりの女性の行方を突き止める。彼女の口から語られた、事件の意外な真相とは──。


曹源寺評価★★★★
前川センセー今のところ全部読破していますが、本書はちょっと重過ぎましたね。元々ホラーまでいかないけれどかなりキツめの事件(とそのシリアルキラー)を題材とするセンセーではありますが、本書の(もちろん架空ですが)木裏事件はかなりキツめで正直胸糞悪いです。
「ある取材記者のノンフィクション」という体裁で書かれているのですが、事件の全容はだいたい途中で分かります。木裏健三という高学歴にして悪徳の極みに到達したような男のしでかした事件を半分小説、半分ルポ的に書いたような内容です。この胸糞の悪さがどこに起因するかというと、前半の旅館乗っ取りの場面にありましょう。無辜な市民が毒牙にかかるところからタイトルの通り死屍累々です。
金を貸す→返せと迫る→返せなければ権利証よこせ→監禁する→暴力に及ぶ→ここまでやっちまったら殺さないわけにはいかない→殺す→埋める→権利証はどこだ→親戚も拉致→監禁する→ここまでやっちま(ry

ガクブルですわ。

この前半の描写がかなり強烈ですので、木裏の放つ悪のオーラにムナクソ指数MAXとなります。ここをガマンして中盤に進むと、そこからは一気読みでした。後半の展開はかなりスピーディで、先手先手を打つ木裏を少しずつ追い詰める警視庁の伊吹刑事が活躍します。
ラストはどんでんがあるわけではないですが、それほどもやっとはしないですね。ただ、よくよく考えてみると(以下、ちょいとネタバレ)

あれほど頭脳的で冷静沈着な木裏がボロを出しては逃亡せざるを得なくなるという展開だけはちょっともやっとするかなぁ。あとは田辺のじいさんがどうにもクソすぎてもやもやですな。
前川作品にありがちですが、ラストは悪党が裁きにかけられずに死んでいくという展開がよく目に付きます。シリアルキラーの最期なんてそんなものかもしれませんが、同じシリアルキラーとして著名な作品である「悪の経典」のように最期警察に捕まったからこそ恐怖が残る、というような展開よりは安心なのかもしれないですね。





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2015年10月13日

書評654 五十嵐貴久「贖い」

こんにちは、曹源寺です。

広島カープがCS進出を逃し、錦織圭選手が楽天ジャパンオープンで決勝進出を逃し、ラグビーW杯で日本チームが8強入りを逃し、なんだかとてもすっきりしない気分です。
昨日の出雲駅伝に至っては母校が出場すらしていません。このもやもや感を払拭する楽しい話題が欲しいところです。

さて、お隣の中国ではスパイ容疑で拘束された人が続出し、ユネスコの世界記憶遺産とかいう謎の認定遺産に外国人旅行者が記録したとされる南京大虐殺の文書が認定されるという、なんとも許しがたい不届きな現象が立て続けに起きました。
これはもう日本国民、怒りをあらわにして良いのではないかと思いますよ。スパイのほうは百歩譲って公安調査庁や外務省が飼っていてもおかしくありませんから真実ならしょうがありませんが、南京は違います。ありもしない事件を史実と偽ることの罪は重大です。たとえて言うなら、「お前のひいじいちゃんはオレのひいじいちゃんから借りた金を返さぬまま死んだからお前が返せ」などと真顔で言われても「そんなの知らんがな」です。「ここに証文がある」と言って出されたのがカラー写真だったみたいなオチです。ユネスコはそのカラー写真をもって「お前のひいじいちゃんは確かに金を借りたな」と言っているに等しいわけです。

これを東京新聞がこんな風に記事にしていました。
南京事件 記憶遺産に 政府、中国に抗議(2015/10/11朝刊)
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は十日、旧日本軍による「南京事件」の資料を、世界記憶遺産に登録したと発表した。中国が申請していた。(中略)
ただ、記憶遺産の審査基準は資料保全の必要性だけが検討対象で、歴史的に正しいかどうかは判断材料にならない。国際条約に基づいた世界文化遺産とは異なり、ユネスコの一事業のため、加盟各国は認定の是非に関与もできない。


世界記憶遺産とは「歴史的に正しいかどうかは判断材料にならない」そうです。これ本当ですかね。本当ならユネスコの存在意義が問われるレベルですね。嘘なら東京新聞ざけんなという話ですわ。


内容(双葉社HPより)
7月1日東京・杉並。小学校の校門に男児の切断された頭部が置かれていた。2日埼玉・和光。林で、中学生の少女の刺殺死体が発見された。3日愛知・名古屋。ス−パーで幼児が行方不明になる。これらの事件を追う捜査員の姿を丹念に描き、事件の背景、犯人の動機を重層的に炙り出す五十嵐ミステリーの新たな金字塔。ベストセラー『誘拐』から7年。星野警部が再び難事件に挑む!


曹源寺評価★★★★★
ものすごい勢いで新刊を増殖させているのが五十嵐センセーであります。このハイペース、いつまで続くのだろうか。。。
本書はそんな中で本年の6月に発行されました。468ページ上下二段組みというボリュームの、濃密な警察小説です。
主人公はかつて「誘拐」で交渉人の役回りを担った星野警部です、と言っても覚えていないわ、、、
警視庁のSITに所属し、立て篭もり犯と交渉を重ねた実績がありましたが、そこで発生したある事件によって干されたのが星野警部でした。その星野警部が携わったのが、杉並区で発生した小学生殺害事件です。校門の前に小学生男児の切断された首が置かれたという猟奇的な事件からストーリーは始まります。さらにそれだけでなく、事件は埼玉県和光市、愛知県名古屋市で立て続けに発生し、3つの事件が同時並行して展開していきます。
ですので、最初の100ページくらいはかなり慌しく展開するため、一気読みしたほうが良いかと思います。途中で時間が空いてしまうと登場人物がごちゃごちゃになること請け合いです。
杉並区の事件は星野警部と警視庁捜査一課強行犯三係の鶴田里奈が担当、和光市では中学生の少女が雑木林の中で心臓を一突きにされて殺害されています。この事件は埼玉県警捜査一課強行犯係の神崎俊郎が追います。さらに、名古屋市ではスーパーで買い物をしてほんの10分足らず車から離れた隙に1歳の男児が連れ去られ、のちに駅のコインロッカーから死体が見つかる事件が発生します。この事件は元警視庁刑事で愛知県警栄新町署刑事課の坪川直之が担当します。
彼らは地道に少しずつ、本当に少しずつですが事件の核心に迫っていくのですが、その様子を丹念に書き上げておられます。状況証拠は次々と出てきますが、肝腎の証拠は見つかりません。星野警部は地道な捜査から一転、目星をつけた人物に直撃していきます。その様子はさながら

刑事コロンボを彷彿とさせるようなしつこさです。

普通の人なら「また来たのか、アンタ」と言わしめるレベルで再訪し、いつか相手がぼろを出さないかと必死に食らいついていきます。すっとぼけな会話の中に、鋭い突っ込みを入れてくるこの見事な追求は読む人を惹きつけますね。中盤からは一気読みでした。
本書は犯人らしき人物がいきなり登場してきますので、ある意味倒叙型のクライムノベルといえなくもないのですが、犯人の側に立った心理的な記述はラストにしかないことに加え、この3つの事件のつながりが途中まで本当に読めないのでかなりミステリ的でもあります。このつながりが分かった時、本書のタイトルである「贖い(あがない)」の意味が初めて理解できます。奥深いですね。重いですね。
最終的には星野警部の独壇場となりますので神崎も坪川も脇役どまりではありますが、サイドストーリーとして本書の味付けには十分すぎる働きをしているのも面白いところです。警察組織におけるある種の不条理みたいな描写、これがなければただの古畑任三郎ですが、警察小説としての深みを増している人間ドラマが垣間見えます。
本書は自分的には今年のベストの一冊候補でありました。満足です。映画化してほしいです。





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2015年10月09日

書評653 今野敏「豹変」

こんにちは、曹源寺です。

ノーベル医学・生理学賞を受賞された大村智センセーの偉業は、聞けば聞くほどものすごいですね。絶対に野口英世より人類を救っていますわ。野口英世みたいな人格破綻者でもありませんし、しかも、人類だけでなく犬の寿命まで延ばしてくれました。
つまり、将来の千円札肖像(一万円でも良いくらい)間違いなしということで、我々は彼の功績と名前を長く記憶にとどめておく必要がありそうです。

さて、第3次安倍改造内閣が発足しました。「1億総活躍相」などというよく分からない大臣がいたりして、具体的に何をしていくのか想像がつかない状況ですが、スポーツ庁は期待できてもこの1億総活躍って縦割りから独立して何かできるんですかね。あまり期待できそうにありませんが、ここは生暖かく見守っていきましょう。
それにしても、マスゴミの論調が相変わらず「お友達内閣」とか意味不明なレベルで笑えます。河野太郎を国家公安委員長に据えたのがお友達?ハァ?バカも休み休み言いなさい。河野太郎がお友達なわけないでしょ。バリバリのリベラルで反原発派で父親がChinaの手先ですがな。こんな人を閣僚に入れる安倍首相の策略はすごいなあと思います(懐の深さとは言わない)。
かつての自民党は保守もリベラルもごちゃ混ぜで、かつては古賀誠や野中広務(現在も二階俊博や野田聖子、塩崎恭久などがいますね)の左派もそれなりに活躍する幅広い層を取り込んだ巨大政党でありました。
しかし、90年代後半以降は米国のような二大政党制を望む声が高まり、烏合の衆で選挙互助会になった民主党が旧社会党の受け皿となり、躍進を遂げました。政権交代で国民は痛い目に遭いましたが、民主党は本来であればリベラルの担い手として機能しなければならなかったのです。結局、政権担当能力があまりにも欠如していたため、本当のリベラルから見放されたのが現在の体たらくな民主党です。自民党は保守本流を貫く政党にならなければいけなかったのですが、民主党があまりにも酷すぎたのでリベラルの行き場がなくなってしまい、結局は内部に抱え込まざるを得なくなっているというのが現状でしょう。
そうした経緯を踏まえれば、自民党の中に対立軸が残っていること自体がおかしいとか言うなら分かりますが、お友達内閣だの仲良しごっこだの言うのはちゃんちゃらおかしいわけです。

内容(KADOKAWA HPより)
少年、少女たちが突如、人を襲い始めた。 事件の背後に一体何が?
世田谷の中学校で、三年生の佐田が同級性の石村を刺す事件が起きた。だが、取り調べで佐田は何かに取り憑かれたような言動と行動で警察署から忽然と消えてしまった──。刑事と祓師が、不可解な事件を追う、長篇小説


曹源寺評価★★★★
安定の今野敏センセーですが、ちょっとオカルトチックな警察小説を出してこられたので読んでみましたよ。
調べてみたら「鬼龍光一シリーズ」というのがありまして、過去には「鬼龍」「陰陽祓い」「憑物祓い」という3作品がシリーズ化されていました。本書は第4弾ということになるのでしょうか。
警視庁生活安全部少年課の富野刑事が担当したのは、都内の中学校で同級生がナイフを持ち出し刺すという事件で、加害者だけでなく被害者もまた狐に取り憑かれていたようだった。祓い師の鬼龍が除霊(!?)するも、同様の事件が立て続けに発生したことで原因の究明により出す、という展開です。
オカルトチックですが警察小説的でもあります。このシリーズ未読なもので申し訳ありませんが、側聞する限りでは、前作までは鬼龍が主人公で富野が脇役という設定だったそうですが、本書は富野が主導権を握って立ち回ります。
そして、事件は意外な展開を迎えていきます。オカルトというよりは自然科学的な色彩を強めていきますので、どこかのラノベのようなストーリーではありません。

祓い師+刑事という組み合わせの妙


が本書の最大の特徴だと思いますが、これが結構嵌っていて期待以上の面白さがありました。







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2015年10月06日

書評652 下村敦史「生還者」

こんにちは、曹源寺です。

昨日は大山智教授のノーベル医学・生理学賞の受賞で日本中が沸きました。おめでとうございます!
と言っているさなかで、TPP交渉が大筋妥結したというニュースも飛び込んできました。
やっちまったか、TPP。。。
報道を読んでも、農産物や工業製品の大半が関税撤廃か大幅な引き下げになるという点しか論じされていないので、全体像がよく分かりません。
いずれ明らかになるのでしょうが、そもそもTPP交渉自体が秘密交渉であったという点ですでに胡散臭さ満載ですよね。明らかにできない=疚しい、というのは古今東西不滅の原理であります。国民にとって不利益になることが多ければ、これ政府倒されますよ。
牛肉や豚肉、乳製品などは関税に守られていましたが、これは段階的に引き下げられますので多くの国民には利益となるかもしれません。もちろん、畜産農家は打撃を受けること間違いなしでしょう。政府は補助金で救済するんですかね(与党叩きの絶好の材料ですね)。
一番気になるのはどこかと言いますと、保険の分野とISD条項の詳細だと思っていますが、ここを詳細に報じている記事が見当たりませんので早く知りたいです。
こと経済施策に関しては、自民党も相当のクソだということが明らかになるかもしれないですね。

内容(講談社HPより)
ヒマラヤ山脈東部、世界第3位の標高を誇るカンチェンジュンガで大規模な雪崩が発生、日本人登山者7名が巻き込まれる惨事となった。4年前に登山をやめたはずの兄が、なぜかその雪崩に巻き込まれ、34歳の若さで命を落とした。同じ山岳部出身の増田直志は、兄の遺品のザイルが何者かによって切断されていたことに気付く。兄は事故死ではなく何者かによって殺されたのか――?
生存者は絶望視されていたが、高瀬という男性が奇跡の生還を果たす。単独行だった高瀬は、猛吹雪のなか兄たち登山隊に出会い助けを求めたが冷たくあしらわれ、登山隊の加賀谷だけが残って自分を助けてくれたという。行方不明の加賀谷が英雄としてマスコミを賑わせる中、今度は東という男が救助された。東は高瀬が嘘をついていて、加賀谷こそが卑怯者だと証言するのだった。
二人の生還者はどちらが真実を語っているのか? 兄の死の真相を突き止めるため、増田は女性記者の八木澤とともに高峰に隠された謎に挑む!


曹源寺評価★★★★★
下村センセーの第3作目は山岳ミステリでありました。近年の乱歩賞受賞作家センセーのなかでも注目株なのがこの下村センセーではなかろうか、と思っています。読みやすいし、伏線はバッチリ張るし、安心感のある作家の一人になりつつあるのではないでしょうか。
本書は主人公の増田直志が、登山をやめたはずの兄、増田謙一がヒマラヤのカンチェンジュンガで遭難したことを受け、さまざまな疑問や疑惑を解いていくというストーリーです。
ストーリーもさることながら、ひとつひとつの疑惑が素人にはなかなかつながらなくて推理が難しいのか、それとも作者のミスリードがうまいのか、最後まで謎解きとして楽しめる作りこみになっています。それでいて、実は読者には少なからずヒントを与えられているということが後になってわかります。最初はさらっと読み流していたのですが、

ページを見返してみたら「あら、本当だ」

となるわけで、この細かな作りこみが、作者の力量を物語っていると言っても良いかと思います。
ですから、ヒントをつなぎ合わせたときに分かる真実がすっきりと懐に収まる感じと、ラストの納得感・爽快感が「あぁ、これ読んでよかったわぁ〜」と感じさせてくれること請け合いです。
いわゆる本格推理モノではなく、ややエンタメ的ではありますが、十分な読み応えに満たされる作品でありました。





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2015年10月02日

書評651 河合莞爾「救済のゲーム」

こんにちは、曹源寺です。

ドイツのVWが不正をやらかした事件が尾を引いています。世界中の経済が減速してもおかしくないくらいのインパクトを世に与えてしまったこの事件は、もしかしたら本当に今後の何かの大きなトリガーになるのではないかと心配しています。過去を振り返れば、第一次世界大戦も第二次世界大戦も欧州の火種はいつもいつもドイツでした。今度は難民問題とVW問題で何らかのアクションが引き起こされかねないのではないかと思うのです。
ただ、同時に日本企業スッゲエなあという感想ももたらしてくれたのも事実です。トヨタのHV技術に負けたVWはディーゼルで勝負を賭けましたが、日本企業締め出しのために作った欧州独自の排ガス規制に真っ向から挑んだマツダが見事にクリアして、その陰でVWは技術の捏造で逃げようとしました。マツダはさらに厳しい米国基準では脱硫できていない軽油では無理と判断して米国でのディーゼル展開を行いませんでした。一方、スズキは技術提携したVWに環境技術の公開を再三迫り、逃げ回るVWに愛想を着かして提携を解消しました。VWとしては軽の技術をシェアを奪おうと乗り込んだはいいけれど、逆に真正面から斬られそうになって慌てて逃げたような格好になってしまいました。
トヨタはVWがヤバイと過去にも指摘していましたし、VWの不正を暴いたのは堀場製作所の排ガス検査装置でありました。
こうやって書いてみると、VWがクソだなあと思うと同時に、日本企業は極めてフェアだなあと。徳にマツダとスズキはスゲエなあとも素直に思います。自分はゴルフとパサートを乗り継いだことがあるのでドイツ車に対する憧れはなかなか簡単に切れるものではありませんが、今回の事件の衝撃は大きすぎて業界を見る目が相当変わったのも事実です。マジメなクルマづくりを続けてきたマツダ(90年代初頭は暗黒ですが)やスバルは自分の中で評価がうなぎのぼりですわい。

内容(新潮社HPより)
世にも美しい場所で、世にも陰惨な殺人は起きた! 奇想と感動のミステリー。
全米オープンの18番ホールで、ピンフラッグに串刺しとなった死体が発見された。その姿は、インディアン虐殺にまつわる不吉な伝承「神の木の祟り」そっくりだった。痕跡を残さず消えた犯人、連続する串刺し事件……。天才プロゴルファーが、ついに辿りついた切なすぎる真相とは。ゴルファーたちの名誉と誇りが輝きを放つ傑作。


曹源寺評価★★★★
河合センセーの第5作目はゴルフ場で起きたミステリを天才プロゴルファーが解き明かすという、なかなかお目にかかれない設定で書き上げていただきました。
340ページ、上下二段組みというなかなかのボリュームですが、非常に読みやすくテンポが良いので結構惹きこまれます。
それにしても

河合センセーは串刺し死体がお好き

ですね。前々作「ダンデライオン」でも、サイロの真ん中で百舌の早煮えのように串刺しになった死体の謎を解くテーマがありました。凄惨な死体とその謎、という書き味が島田荘司センセーをオマージュしていることは疑いないと言われていますが、本書もまた、同じくらいありえない死体の謎を解くという展開になっています。
主人公のジャック・アキラ・グリーンフィールドはデビュー間もない新人ゴルファーですが、型破りでフリーダムを地で行くタイプ。全米オープンの選考会を逆転で勝ち取り、本戦出場を果たしますが、その本番直前にゴルフ場で殺人死体が発見されます。
ゴルファーですが別の顔を持ち、捜査協力させられるはめになるというのもなかなかに凝った設定です。ジャックの相棒のキャディやその他のトッププロ、警察、容疑者、などなど脇役のキャラクター造型もさることながら、読者をミスリードするその書き味もなかなかに見事です。
リーダビリティにも磨きがかかってきた河合センセーは、次代のエンタメ作家としてどこかでブレイクすると思っています。絶対ブレイクする。たぶんすると思う。するんじゃないかな。まぁちょっと覚悟はしておけ(古
ブレイクしてほしいなあ。





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posted by 曹源寺 at 16:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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