ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2015年12月29日

書評675 池井戸潤「下町ロケット2 ガウディ計画」

こんにちは、曹源寺です。

産経の記事です。長いですが引用。
出版物販売落ち込み最大 今年1.6兆円割れ 雑誌離れ響く」(2015/12/29)
今年1年間に国内で出版された書籍と雑誌の販売額が、前年より約5%減の1兆5200億円程度にとどまり、過去最大の落ち込みとなる見通しであることが28日、出版科学研究所(東京)の調べで分かった。お笑い芸人、又吉直樹さんの芥川賞受賞作「火花」などの大ベストセラーもあり、書籍は健闘したものの、雑誌の落ち込みが激しかった。少子化やスマートフォンの普及なども要因とみられ、出版不況の根深さが改めて浮き彫りになった格好だ。
出版物の販売額が1兆6千億円を割り込むのは32年ぶりで、減少率は昨年の4・5%減を上回り、昭和25年の統計開始以来、最大となる見通し。市場規模はピークだった平成8年の2兆6563億円の6割を下回る水準になる。
このうち、書籍の推定販売額は前年比約1・9%減の7400億円前後となる見通し。累計240万部を超えた「火花」の大ヒットもあり、減少率は前年(4%減)より縮小した。ただ、書籍販売の約3割を占める文庫の不振が消費増税以降続いており、マイナス基調を抜け出せなかった。一方、雑誌の推定販売額は前年比約8・2%減の7800億円前後とみられ、減少率は過去最大となる。
同研究所の担当者は「週刊誌の販売が大きく落ち込むなど高齢層にも“雑誌離れ”の傾向がうかがえる。スマホの普及で情報への接し方や時間の使い方が変わる中、どう読者を取り込むかが引き続き、問われる」と分析する。


出版科学研究所は公益社団法人全国出版協会の一セクションですが、同所はトーハンのビルの中に間借りしています。出版流通を支える大手二社を中心として統計調査を行っているわけです。
ここの分析はかなりマニアックで、「出版月報」は業界人の間では必読書になっています。個人で定期購読したいくらい面白いです。

で、出版市場ですが、2008年に2兆円あった市場が2015年に1兆5,000億円となる見通しということです。7年間で5,000億円の減少は業界にとって本当にキツイでしょう。このペース、つまり年率マイナス4%程度で試算すると、2020年には1兆2,000億円程度に落ち込む計算です。
書籍と雑誌の推移を個別に見ると、書籍よりも雑誌のほうが落ち込みが激しいわけですが、雑誌は部数の減少に反比例して平均価格が大きく伸びています。2014年の雑誌(月刊誌・週刊誌合計)の平均価格は532円です。2004年は452円でしたから、10年で80円値上げしたかたちです。
週刊誌で80円値上げしていたら、そりゃ買わなくなりますね。もっとも、業界の人から言わせれば「みんなが買わないから値上げしたのであって、原因と結果が逆だ」と言われそうですが。
書籍は2009〜2011年に価格が引き下げられていますので、雑誌ほど上昇してはいません。ですが、書籍はハードカバーが減って並製が増えていますので、一番苦しいのは印刷・製本業界かもしれないですね。
つまり、書籍は製本の形態を簡易にしたりすることで価格の上昇を抑えている一方、雑誌は価格に転嫁せざるをえない状況が続いている、ということになっているわけです。
雑誌は悪循環が続きそうですね。すなわち、買わない→売れないから採算厳しい→やむなく値上げする→高いからやっぱり買わない、というやつです。でもこれ、着地点が見えないと相当ヤバイ話です。


内容(小学館HPより)
直木賞受賞作に待望の続編登場!
その部品があるから救われる命がある。
ロケットから人体へ――。佃製作所の新たな挑戦!
ロケットエンジンのバルブシステムの開発により、倒産の危機を切り抜けてから数年――。大田区の町工場・佃製作所は、またしてもピンチに陥っていた。
量産を約束したはずの取引は試作品段階で打ち切られ、ロケットエンジンの開発では、NASA出身の社長が率いるライバル企業とのコンペの話が持ち上がる。
そんな時、社長・佃航平の元にかつての部下から、ある医療機器の開発依頼が持ち込まれた。「ガウディ」と呼ばれるその医療機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるという。しかし、実用化まで長い時間と多大なコストを要する医療機器の開発は、中小企業である佃製作所にとってあまりにもリスクが大きい。苦悩の末に佃が出した決断は・・・・・・。
医療界に蔓延る様々な問題点や、地位や名誉に群がる者たちの妨害が立ち塞がるなか、佃製作所の新たな挑戦が始まった。
日本中に夢と希望と勇気をもたらし、直木賞も受賞した前作から5年。
遂に待望の続編登場!



曹源寺評価★★★★
もはや言わずもがなのベストセラーでありますので、ありきたりな論評は無意味かと思います。したがいまして、自分としては以下の2点に絞り込んで論評したいと思います。

一つ目は、前作との比較です。
前作「下町ロケット」と比べると、「下町」っぽさがややスポイルされた印象があります。下町=人情と置き換えるとしっくりしますが、人間臭さみたいなものは前作のほうがあったように思います。職人のハートに響くセリフも前作のほうがストレートだったし、品質や職人技を追求する姿勢が文章からずしりと伝わってきて、それが読者の涙を誘っていたのかなあと思います。
本作は善悪がよりはっきりしているために、時代劇のようなスカッとさわやか感が増している一方で、お涙頂戴的な場面はやや無理やり感が否めません。もしかしたら、グッとくるセリフは先にドラマで観てしまったからなのかもしれませんが。

二つ目はドラマとの比較です。
ここでは本作を「原作」と呼ぶことにします。(以下、壮絶にネタバレなのでご注意!)
原作では娘の就職活動のシーンはありません。ドラマでは最終回の最後の最後に椎名が登場しますが、原作ではそんな場面はありませんし、そもそもロケットをもう一回飛ばすシーンがありません。原作では貴船教授は最後に左遷され、憑き物が取れたかのように穏やかになりますが、ドラマでは中途半端な幕切れでした。サヤマ製作所に転職した中里は原作でサヤマに残ると言いますが、ドラマではサヤマ製作所自体がどうなったかまで言及していません。最後の椎名の登場の仕方は何ともビミョーですね。
総じてドラマでは、悪役との競演シーンがより演出されているのが特徴的です。特に第6話から最終回まではまるで「半沢直樹」のようであります。Pmeaとの面談の場面も、ドラマで使われていた密会写真や録音といった小道具は原作で登場しませんので、こうした細かな演出は映像作品ならではの配慮と言えるのかもしれません。

こうしてみると、ほぼドラマと並行して売り出した本作は、

ドラマのほうが出来が良かったようにも思えます。

ドラマの脚本も然りですが、配役もまたズバリ的中していますので、立川談春の殿村部長役や安田顕の山崎部長役、帝国重工の財前部長役を演じた吉川晃司などはインパクトがありました。芸人枠(バカリズムや今田耕司など)は賛否両論でしょうが、ミュージカル枠(佃製作所の間野役、山崎育三郎や帝国重工の石坂部長役、石井一孝など)はずっぽりハマっていました。顔芸とも言える「どアップ」に耐えられるだけの表情作りができるかどうかが問われたのかもしれません。小泉孝太郎と阿部寛のどアップを何度観たことか。あれはあれでより善悪の区別がはっきりする演出として評価できましょう。

ん、なんだか書評ではなく、テレビ評論になってしまったわぃ。





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2015年12月25日

書評674 今野敏「マインド」

こんにちは、曹源寺です。

新聞をスムーズに解約する方法」というサイトがありましたので勝手にリンク。

新聞への軽減税率適用については、あの池上彰センセーも朝日に執筆しておられるようです。
新聞への軽減税率適用 重み増した報道の責任
リンク先は有料会員のみのページらしいので普通の人は読めません。あしからず。どうせ新聞に掲載されている記事ですから、たいしたことは書いていないと思って良いでしょう。

かつては、新聞業界を象徴する二つの言葉が記者の矜持として刻み込まれていたはずです。
それは「社会の木鐸」と「不偏不党」です。
「社会の木鐸」を辞典で訳すると、「社会の人々をめざめさせ,教え導く人。 」(三省堂「大辞林」)と出てきます。軽減税率適用に関するこれまでの記事を読む限りでは、新聞社の主張はこんな感じです。
「財政規律の建て直しは急務だから消費税の増税は仕方ない。しかし、新聞は知識の源泉だから食品と同じように軽減税率の適用をすべきである」
これを過激に訳すとこうなります。
「オレたち新聞業界は財政の建て直しには協力しない。電気やガス、水道よりも真っ先に軽減税率を適用しないと、政府よ、分かっているだろうな」

これが社会の木鐸とはまったく恐れ入りますわ。
「李下に冠を正さず」という故事がありますが、社会を教え導く立場にあると思っているならば、政府との密約・裏取引が噂されるような行動は厳に慎むべきでしょうし、人々を扇動しながら自分たちは国の危機に対して行動しないという、世論のリーダーとは思えない行動にも疑問符がつきます。
つまり、今回の新聞業界の行動は二重の意味で酷いと言わざるを得ません。これで部数を維持しようなどとは笑止千万。逆に購読者が減るのではと本当に危惧します。
軽減税率を適用しない場合、おそらく100円の値上げになると思われますが、たかが100円の値上げにケチをつけたがために売り上げを大きく減らすことになったら、笑い話として後世まで語り継がれること間違いなしですね。

あ、「不偏不党」の方はもはや言わずもがなですね。


内容(中央公論新社HPより)
知力を駆使して、同時多発事件の謎を解け!殺人、自殺、性犯罪......。ゴールデンウィーク最後の夜に起こった七件の事件を繋ぐ意外な糸とは? 前々作『エチュード』の藤森紗英も再登場!大人気「警視庁捜査一課・碓氷弘一」シリーズ第6弾。


曹源寺評価★★★★★
碓氷弘一シリーズもあっという間に第6弾でありました。このシリーズはまあまあ好きです。隠蔽捜査シリーズ、安積班シリーズ、任侠シリーズ、STシリーズ、、、今野センセーはシリーズものがいっぱいありすぎて追いかけるのが大変ですわ。
今回は同じ時間に発生した2件の殺人事件と2件の自殺から、一見すると何の関連性もない別々の事件が実は一本の線でつながっていたという展開です。本書はストーリーが序盤でだいたい分かってしまうので、ミステリとしては弱すぎるなあと思いますが、キモはそこではないということが読み進めていくうちに分かります。
本書の読みどころは警察と参考人あるいは被疑者の駆け引き、すなわち心理戦です。事情聴取から始まるやりとりは序盤から白熱します。
会話が多いのでサクサク読めます。読みやすさだけではなく、お互いの心の内側を探るような緊迫したやりとりが面白いですね。

でも、それだけです。

碓氷弘一という主人公を活かしきれていないので、物足りない印象です。相方の藤森紗英をクローズアップさせても良かったのかもしれません。まあ、おヒマなかたはどうぞ。





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2015年12月22日

書評673 土橋章宏「超高速!参勤交代 老中の逆襲」

こんにちは、曹源寺です。

消費税の軽減税率適用には本当に腹が立っているので、しつこく書くことにします。

読売新聞は20日にこんな記事を掲載していました。長いですが引用します。
軽減税率 3党合意にも違反していない
2017年4月の消費税率引き上げに合わせた軽減税率導入に対し、民主党が反発している。
政府・与党は、適切に反論するとともに、丁寧な説明に努めねばならない。
民主党の岡田代表は、約1兆円の財源を要することについて「財政再建の旗を降ろすのか。1兆円のバラマキで参院選を乗り切ろうということだ」と決めつけた。
やや性急で、近視眼的な批判だ。医療などの自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の見送りで4000億円の財源は既に確保された。残りについても、たばこ増税案などが浮上している。
将来の社会保障費の増大を考慮すれば、消費税の再増税は不可避だ。これにも備える軽減税率の導入は財政再建に逆行するまい。
民主党は、消費増税の低所得者対策として「給付付き税額控除」の導入を主張している。所得税の課税対象者に減税し、免除者には給付金を支給する制度だ。
しかし、軽減税率に比べて分かりにくく、消費者の痛税感も緩和されないのではないか。
給付付き税額控除は、所得を正確に捕捉できなければ、不正受給の恐れがある。対象の線引きが政治裁量となり、大盤振る舞いになる可能性も指摘される。政権担当時に「子ども手当」などが頓挫した経験を思い起こすべきだ。
枝野幹事長が総合合算制度の見送りについて、消費増税を決めた12年6月の民主、自民、公明の3党合意の「明確な違反だ」と批判しているのも疑問である。
3党合意に基づく社会保障・税一体改革関連法は、総合合算制度や給付付き税額控除を検討するとしているだけで、3党が導入に合意したわけではない。関連法には、軽減税率の検討も盛り込まれている。批判は当たらない。
枝野氏は「3党合意は破棄された」と断じ、10%への引き上げに反対する可能性も示唆した。
民主党と統一会派を組む維新の党も、民主党と歩調を合わせる構えだ。おおさか維新の会、共産党なども反対している。
仮に増税が予定通り実施できなければ、それこそ財政再建が一層遠のいてしまう。民主党はそんな無責任な対応は避けるべきだ。
見過ごせないのは、枝野氏が新聞への軽減税率適用に関して、「新聞よりも水道や電気が必需品だ」と発言していることだ。
民主主義や活字文化を支える重要な公共財である新聞や出版物に対する理解を欠いていると言わざるを得ない。


見過ごせないのは、枝野氏が新聞への軽減税率適用に関して、「新聞よりも水道や電気が必需品だ」と発言していることだ。
民主主義や活字文化を支える重要な公共財である新聞や出版物に対する理解を欠いていると言わざるを得ない。


すごい論説ですね。読売はついに気が触れたのかと思いました。
読売は「水道や電気よりも新聞のほうが大事だ」と言っているわけですよ。枝野氏は嫌いですが、この件に関しては枝野氏のほうが正論です。
新聞は取っていないが水道は引いている、という世帯のほうが圧倒的に多いはずですし、新聞を読まなくても死にませんが水を飲まなかったら確実に死にます。どちらがより生活に密着してるかは明らかです。明らか過ぎてわざわざ書くことでもないレベルです。

欧州で導入が進んでいる軽減税率に関して言えば、水道は適用されています。電気も多くの国で適用されています。あとは医薬品と食品が多いですね。医薬品は無税という国もあります。ですから、新聞だけに適用されるのはいかがなものかという枝野氏の指摘は当たり前といえば当たり前です。

それに、財政再建の観点から言えば、新聞こそ率先して財政再建に協力すべきではないのかと突っ込みたくなりますね。こんな記事を真顔で書いている記者(論説委員?)は恥ずかしくないんでしょうか。

内容(講談社HPより)
「5日以内に江戸へ参勤せよ!」
1万5000石の磐城湯長谷藩に突きつけられた難題はほんのプロローグにすぎなかった。
ついに牙を剥く巨悪。幕府要人たちの連続死。天下転覆の陰謀が姿をあらわし、新たな命(めい)が下った。
「江戸城天守を再建せよ!」
再び存亡の危機に陥る貧乏藩。老中の真の狙いは何か? いったい誰と結んでいるのか!? 農民一揆、御用商人、江戸南町奉行、大目付、謎の刺客と尾張柳生七本槍……。男たちは再び走りはじめる。
いざ決戦! 幕府&奥州連合1万2000人 VS.7人のサムライ!!


曹源寺評価★★★★
超高速!参勤交代」の続編が出ました。続編を望む声が大きかったようで、行きが「参勤」で帰りが「交代」なら交代のほうを書けば良いということですね。
前作にも増して話のテンポが良く、一気読みでした。
今回も悪役は松平祝信で、一旦は失脚したものの金の力で再び返り咲きます。湯長谷藩を潰すことに執念を燃やし、様々な仕掛けで帰りの「交代」を阻止しようとします。
一行は最大のピンチを迎えますが、最後は、、、という展開です。
ストーリーは面白いですし、まあラストは途中から大体想像がつくのですが時代がかぶる時代劇のヒーローも登場してなかなかに読ませてくれましたし、ラストはスッキリとさせてもらいましたのであまり細かなことを言ってもしょうがないですが、

もうちょっと文章に推敲を重ねて欲しいレベル

の、稚拙というか勢いだけで書いてしまったような箇所が随所に見受けられたのは残念です。まあ、勢いのほうを大事にしたらこうなるのかなあと思いますし、これこそが土橋センセーの真骨頂なのだとしたら読者こそこれを受け入れなければいけないのだろうとも思います。
でも、自分にはもうちょっと、もうワンフレーズくらい入っている文章表現のほうが受け入れやすいですね。
たとえば、「斬った」だけでは良く分からないですが、「肩口を斬った」なら分かります。でも、自分としては「眼にも止まらぬ速さで肩口を縦に斬り裂いた」だったらうれしいなあと思います。特にクライマックスならなおさらです。





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2015年12月15日

書評672 川瀬七緒「メビウスの守護者」

こんにちは、曹源寺です。

消費増税の軽減税率適用について、政府は新聞もその対象とする方向で調整していることが明らかになりました。
新聞も軽減対象=定期購読の日刊・隔日刊―政府・与党(12/15 時事通信)
政府・与党は15日、消費税の税率を低く抑える軽減税率の対象品目に、定期購読の契約を結んだ日刊、隔日刊の新聞を含む方針を固めた。
宅配は8%で、駅売りなどは10%となる見通しだ。16日にも決定する与党税制改正大綱に盛り込む。
政府・与党は新聞や書籍について、生活必需品かどうかを精査。新聞は日常生活における情報媒体として幅広い層に読まれているが、購読料が低所得者に相対的に重い負担になっていることに配慮した。一方、書籍は比較的所得に応じて購入されているほか、有害図書を排除する仕組みを検討する必要があるため、今回は対象とせず引き続き協議することにした。 


軽減税率の適用の主旨は、生活必需品に関して税負担を軽減することで低所得者層に対する逆進性を緩和するのが目的であります。つまり、所得の低い人たちほど消費税の負担は大きくなるがゆえに、食品などの生活必需品は税率を下げてその負担を減らそうというわけです。

この主旨に沿うならば、まずは食品ということに関して異議はないですね。次にくるのは電力やガス、水道などのライフラインではないかと思いますが、この辺に関してはまったく話題になっていませんね。本当に不思議です。

そのライフラインを差し置いて新聞が対象となるとの報道に、違和感を禁じえない人は多かろうと思います。新聞の業界団体である日本新聞協会はホームページで軽減税率の適用に関する意義を謳っておりますが、その内容は「ニュースや知識を得るための負担を減らすため」と明言しています。ならば、ニュースや知識を得るための手段はすべて公平に扱うべきでありましょう。ネットも雑誌も書籍も同一の扱いであるべきです。

そもそも新聞を定期購読している世帯は、比較的高所得者の層ではないかと思いますがこれに関しては正確なデータがありませんので何とも言えませんが、もしそうであれば、逆進性を緩和するための手段としてふさわしいとは言えず、新聞への適用は優先順位が低いので見送られるべきという結論になります。

そもそもが続きますが、根源的な問いとして、消費税の増税は低所得者層への負担増大が明白であり、デフレから完全脱却できておらず労働世帯の所得も増えていない中では、消費抑制への傾向がさらに強まることが懸念されるわけです。増税したいならば着手すべきは外形標準課税の拡大と、パチンコ税の導入、広告税の導入、宗教法人への課税、などではないかと思います。
でも、こういうことを口にすると政治の世界ではあっという間に干されたり抹殺されたりするんでしょうね。本来の議論から離れてしまい、プライオリティを無視した議論が交わされる。正論を吐いてもそれが通らないのが政治、特に国政である、というのが良く分かる事例です。

内容(講談社HPより)
山奥で見つかったバラバラ死体。「虫の知らせ」がおかしい!
7月初旬、東京都西多摩で、男性のバラバラ死体が発見される。岩楯は、山岳救助隊員の牛久とペアを組み、捜査に加わった。捜査会議で、司法解剖医が出した死亡推定月日に赤堀が異を唱えるが、否定される。他方、岩楯と牛久は仙谷村での聞き込みを始め、村で孤立する二つの世帯があることがわかる。──死後経過の謎と、村の怪しい住人たち。遺体の部位はいったいどこに!


曹源寺評価★★★★
川瀬センセーの「法医昆虫学捜査官」シリーズがなにげに人気シリーズとなっておりまして、ファンの一人としてはうれしい限りです。川瀬センセーはうまいこと金脈を掘り当てましたね。
本シリーズも第4弾ということで、円熟味を増してきました。主人公で破天荒なキャラクターの持ち主、赤堀涼子とそれを支える岩楯警部補のコンビが今回も大活躍です。
ストーリーはいつものとおり、腐乱死体から始まって、死亡推定時刻を虫が教えてくれる→司法解剖と食い違う見解→新たな仮設が生まれる→赤堀すげえ、という展開です。もはや定番化してしまったこの展開ですが、それでもなお輝きを失っていないのは、本シリーズが法医昆虫学という極めて特殊な分野に焦点を当てていて、それがかなり細部に亘って専門的かつ具体的で、さらにはそこにきちんとしたストーリーを当てはめているからでありましょう。さらには、死体に湧くウジ虫の強烈な描写(!)。このオリジナリティこそが本シリーズの比類なき強みであります。
今回の舞台は東京の奥多摩にある四日市(五日市のオマージュやねぇ)という村でありまして、そこの山岳救助隊に所属する牛久が腐乱死体を発見します。死体はなぜそこに放置されていたのか、死体は誰なのか、死亡推定時刻はいつなのか、そして犯人は誰なのか。深まる謎を解決するのはやはりこの人、赤堀涼子であります。いつもの通り虫が大好きで、学者らしくとことん突き詰める性格でフィールドワークはお手のもの、最後のほうはちょっと出番が少なめでしたが、その分、岩楯警部補が活躍してくれました。
安定のシリーズで本当に面白いのですが、読後に強く思ったことは

グロな描写に慣れてしまった自分がいたという事実です。

腐臭やウジ虫に対する抵抗が少なくなってしまい、本書を読みながらでもコメが食えるようになってしまった自分は果たして正常なのかどうか、ちょっと自信がなくなってきました。





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2015年12月11日

書評671 佐々木譲「砂の街路図」

こんにちは、曹源寺です。

靖国神社爆破事件はテレビ新聞報道で「靖国神社爆発音事件」という何だか良くわからない名称になっていて、本当に意味不明です。何だよ、爆発「音」って。スピーカーで爆発音を流したとでも言うのか?この事件は立派な殺人未遂事件ですし、たまたま失敗しただけの「テロ」なんですが。こういうわけの分からんバイアスをかけても、みんなあっという間に知れ渡るからマスゴミは嫌われているのだということをいい加減理解して欲しいですね。

こんな記事もありました。
報道・出版への「偏ってる」批判の背景は 識者に聞いた(12/2朝日新聞)
報道や出版などの表現の「偏り」を批判したり、「公平」「中立」を求めたりする事例が相次いでいる。大手書店は「選書が偏っている」との批判を受けて、民主主義を考えるフェアを一時中止。テレビ番組の政治報道を「偏っているから違法だ」と主張する市民団体も発足した。背景や是非について識者に聞いた。
「記事が偏っているという批判が寄せられる。それには、『ええ、偏っています』と答えるほかない」
10月15日付の神奈川新聞に、安保法制への抗議行動などを取り上げる同紙の連載「時代の正体」への批判に答えた記事が掲載された。ツイッターやフェイスブックで1万回以上転載、言及されるなど、大きな反響を呼んだ。
記事の終盤では「私が偏っていることが結果的に、あなたが誰かを偏っていると批判する権利を守ることになる」と記した。
執筆した論説委員の石橋学さんは「無難な記事を求める社内外の自粛的な雰囲気と、それを受けて閉塞(へいそく)感を覚えている自分自身に向けて書いた」。反響については「10年前なら『何をいまさら』と言われたことを、わざわざ言わないといけない時代だということの裏返し」と語る。


神奈川新聞の「時代の正体」は前にも採り上げたと思いますが、自己正当化が激しくてとても最後まで読む気になれませんでした。
朝日もこれに乗っかろうとしているようですが、「偏向」と「捏造」はまったくの別物でありますので注意が必要です。
それに、朝日自身は自分で「偏向」とは一言も言っていません。朝日は時に自分達の主張を他人に言わせるという手法を駆使します。お家芸です(本田勝一がこの前これやっていましたが酷いものでした)。

>>記事の終盤では「私が偏っていることが結果的に、あなたが誰かを偏っていると批判する権利を守ることになる」と記した。

ちょっと何言っているか分かりません。
「偏向している」とネットを中心に批判が相次いでいることの本質からは、かなりハズレた内容ですね。新聞が主張すること自体に対して批判しているのではないのですよ。本質は国民の知る権利を阻害してまで自分達に有利な報道をする、あるいは時に報道しない、というやり方で世論を誘導したり国民を洗脳しようとしたりするのが許せないということなのです。

消費税の軽減税率適用の議論にしても、新聞への適用をこそこそやろうとしていて表の記事にはあまり書かれていません。
でも、みんな知っていますから。日本人はそういうのすごく嫌うから、適用された瞬間に逆に部数が大きく落ち込むのではないかと思っています。

内容(小学館HPより)
まったく新しい「家族ミステリー」が誕生!
知られたくない、でも忘れられない過去がある――。
直木賞作家・佐々木譲が放つ会心の野心作にして、まったく新しい「家族ミステリー」が誕生しました。
なぜ父は幼い自分を捨てて失踪し、死んでしまったのか――。母の四十九日を終えた岩崎俊也は、両親が青春時代を過ごした北海道の運河町へと旅立つ。
二十年前、父はこの運河町で溺死してしまった。遺品となった1枚の古いモノクロ写真には、家族に決して見せたことのない笑顔が写っていた。
事故の直前まで飲んでいた硝子町酒房の店主によれば、同じ法科大学漕艇部員だった彼の妻の密葬に参加するために滞在していたという。
さらに父の後輩からは、昭和44年に漕艇部内で起きたある事件を機に、陽気だった父の人柄が激変してしまったことを知る。
父は事件に関係していたのだろうか? 
家族にさえ隠し続けていた苦悩とは?
「知らないほうがいいこともある」・・・・・・死の真相に近づくにつれ、胸の内に膨らむ想い。
果たして、父の過去を暴く権利が、ぼくにあるのだろうか……。
ぬぐいきれない恥辱と罪悪感。
嘘よりも哀しい、沈黙の真相とは!?
――家族は、ミステリーに満ちている。


曹源寺評価★★★★
父親の死の原因(とかもろもろ)の謎に息子が迫っていくという家族ミステリ(!?)であります。佐々木譲センセーといえば冒険小説と警察小説でおなじみですが、こんなジャンルもありなんですね。
主人公の岩崎俊也は母の死をきっかけに、20年前に亡くなった父の死の真相に迫るため、ひとり北海道の運河町に出かけていきます。
誰にも行く先を告げずに一週間も家を空け、運河で水死体となって発見された父は泥酔して川に落ちたという事故死で片付けられていたが、なぜ父は北海道に一人で出かけ、酒は大して飲めないのに泥酔してしまったのか、当時の関係者を訪ねていくも皆一様に口が重い。あちこちを訪ね歩く俊也はついに、、、というストーリーです。
さすがに天下の佐々木譲センセー、半端なきリーダビリティにページをめくる手が止まりません。読ませるテクニックはさすがであります。しかし、ラストまで引っ張った割りには、衝撃的でもない終点でありました。たとえるなら、通勤電車で普通に目的地に下車しただけのような感じとでも言いましょうか。もう一捻りあっても良かったのではないかと思いました。
とはいえ、普通に面白いのであちこちを訪ね歩く主人公に自分を重ねることで

北海道旅行に行った気分にさせられること請け合いです。

小樽と函館と札幌を足して3で割ったような架空の街が舞台ですが、巻頭にこの街の地図が貼られていますので、これを見ながら読み進めると非常に楽しいです。運河と、古い街並みと、市電と、法科大学と、露人街と、幽霊船。観光気分に浸りながらミステリを味わえるというなかなかに稀有な作品と言えましょう。





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2015年12月08日

書評670 麻見和史「特捜7−銃弾−」

こんにちは、曹源寺です。

2015年のCOTY(Car Of The Year:カーオブザイヤー)にマツダ・ロードスターが選ばれました。マツダは昨年もデミオで受賞しており、2年連続となります。
COTY自体がすでにオワコンですが、それはまあ置いといて、いまのマツダデザインは良いですね。デザインに関しては日産とHONDAがどうにも不評ですが、一昔前のマツダもそりゃもうヒドイものでした。ユーノスブランドで拡大を目論んだ時期はデザインだけでなく機能が酷すぎで、下取り価格が絶望的な「マツダ地獄」などと呼ばれておりました(まあ他にも理由はありましたが)。なにせ、セダンの後部ドアに助手席のシートベルトの収納口があったくらい酷い。つまり、後部ドアを開けると助手席の人の首が絞まるというトンデモ設計だったわけです。ありえへんわぁ。
そんなマツダもこの10年くらいは素晴らしくよみがえりましたね。欧州受けするデザインと機能美がありますし、設計思想に一貫性がありますから日産のようにモデルチェンジしてダメダメになるということがありません。あと10年くらいしたら日本の自動車メーカーで生き残っているのはトヨタとマツダとスバル、それにスズキくらいじゃないかと思います。トヨタ以外はニッチメーカーかもしれませんが。
日産はどうなんでしょう、どのジャンルもパッとしないし積極的に買いたい車種が見つからないですね。高級車のブランディングにも失敗して、出すクルマはだいたいトヨタの二番煎じとなればこの先生きのこるのは難しいんじゃないですかね。
ホンダも先日、フィットの在庫がすごすぎてヤバイというニュースがありました。ホンダはいっそのこと、フォルクスワーゲンからランボルギーニを買収してみたらどうかと思います。スーパーカーで生き残りをかけるメーカーになって、あとは小型ジェット機で成長を見込んでは。速さなら負けないメーカーとして特化できそうです。
え、三菱ですか?あれは自衛隊のクルマでも作っていればよろしい。親会社の自動車製造部門として官公庁の特殊車両でも作っていれば良いと思います。

内容(新潮社HPより)
警官殺しと両腕のない死体。一課のエースと変わり者の女性刑事が謎を追う!
ベテラン警官が殺害され、拳銃が奪われた。連続する射殺事件と遺体損壊事件を追い、特捜チームの岬怜司は、妙な特技を連発する所轄署の里中宏美とコンビを組む。緻密な推理から浮上する過去の未解決事件、その闇に消えた男。二人が封印された真実に迫った時、犯人は予想外の姿で現れる! 巧みな伏線が冴える本格捜査ミステリー。


曹源寺評価★★★★
「警視庁殺人分析班」などのシリーズがある麻見センセーの警察小説は意外に読みやすく、内容も充実していることを発見してしまいました。
本書は葛西臨海公園で発見された両腕のない警察官の死体からスタートし、奪われた拳銃で次の殺人が起きるという展開です。
ただ単に犯人を追うだけではなく、死体に隠された謎などがなかなかに解かりにくく、ミステリとしてもそれなりに凝った作りこみをされていることがわかります。伏線も張っているし、刑事達キャラクター作りもしっかりしているし、ストーリーをぐいぐい引っ張る力は一級品であると言えましょう。(以下、ネタバレでもない)

最初の死体が警察官で、なぜかレインウェアを着せられ、両腕が肩からなくなっていた。もうこの時点で2つの謎が発生しているわけです。さらに、同じような死体が発見されたり、また、ただ単に別の警察官が撃たれて大怪我をしたりと、もうここで事件の連続性を見出すのがものすごく大変です。
これらはいずれも最後に解き明かされるのですが、まあお見事ですよ。解からなかった自分が情けないというか、

うまいことミスリードされてしまいましたわぃ

と作者を褒めざるを得ません。
ちょっと麻見センセーの著作を漁ってくることにしました。





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2015年12月04日

書評669 石持浅海「凪の司祭」

こんにちは、曹源寺です。

今週は性的な問題を端緒とした差別的な発言などが話題になりました。

同性愛は異常」 神奈川・海老名市議がツイッターで差別発言(神奈川新聞11/29)

海老名市の鶴指真澄市議(71)=無所属=が、「同性愛は異常」「生物の根底を変える異常動物だ」などと同性愛者を差別する発言をツイッター上に投稿していたことが29日、分かった。
 鶴指市議は同日未明、自らのツイッター上で「同性愛は異常なのだ。異常人間の行動を正当化した報道はするな」「異常人間が多くなれば人類の破滅、まじめな人間をほめる方法を考えろ、異常なことをすることを取り上げる必要はない」などと発言した。
 これに対して、ツイッター上では、「差別であり、人権侵害」「謝ったり、文章を削除したくらいでは許される話ではない」「公職を即刻辞すべきだ」などと批判の声が相次いだ。
 鶴指市議は、投稿から約10時間後の29日午前11時過ぎ、再び自身のツイッターに「不適切な表現であったことを深くお詫び申し上げます」とする謝罪を投稿した。(以下、略)


県職員「同性愛は異常でしょ」と投稿…処分検討(読売新聞12/2)

岐阜県技術検査課の30歳代の男性職員が、ツイッターに「同性愛は異常」などと投稿していたことが1日、わかった。
職員は同日、県の聞き取り調査に対して事実関係を認め、投稿を削除し、謝罪文を書き込んだ。県は職員の処分を検討する。
同県人事課やツイッターによると、職員は先月29日、神奈川県海老名市の市議がツイッターに同性愛者に対する差別的な書き込みをしたことを受け、「同性愛は異常でしょ。だいたい、何で同性愛者とかは自分の変態的異常性を公表したがるんだ?」などと投稿した。職員は同日、休みだった。
職員がプロフィル欄に「某県庁職員」などと記載していたことなどから、投稿後、県に複数の情報が寄せられ、発覚した。同課は「県職員として不適切な発言で、極めて遺憾」とし、処分を検討している


一方、美濃加茂市ではスタンプラリーの企画で張り出したポスターが「セクハラ」だとして撤去を余儀なくされる騒ぎとなりました。

美濃加茂市、アニメ「のうりん」コラボポスター撤去 ネット上の「セクハラ」「不適切」批判受け(ITmediaニュース12/1)

このほど美濃加茂市10+ 件観光協会(岐阜県)は、アニメ「のうりん」とコラボしたスタンプラリー企画のポスターについて、ネット上で「セクハラ」「不愉快」などの指摘を受け、JR美濃太田駅から撤去した。担当者は「意見を真摯に受け止め、今後の対応を検討する」としている。
「のうりん」は県立加茂農林高校をモデルに、農業に青春をかける高校生たちを描いた作品。コラボ観光施策「みのかもまるっとスタンプラリー」を告知するポスターには、同作品に登場するキャラクターの1人・良田胡蝶が描かれていた。11月7日のイベントスタートに向け、同協会が4日にTwitter上で画像を公開していたが、胸元を強調したデザインに「女性を差別的に扱っている」「観光PRとして不適切」などの批難の声が28日頃から寄せられ始めたという。(以下、略)


同性愛を批判するとバッシングされ、女性の胸を強調するとバッシングされる、そんな世の中にいつの間にかなっていたということにちょっと愕然としてしまいました。
個人的には同性愛の人たちが公共の場所であからさまに手をつないでいる姿と、胸を強調した服を着ている女性と、どちらが見たいかというとそりゃ後者でしょう、という気持ちですが、世の中はそう簡単なものでもないのかもしれません。

別に、マイノリティを差別するとかそういう気持ちはありませんし、マツコやクリス松村、KABAちゃんなどは嫌いでもないしおそらくしゃべったら面白い人たちばかりなんだとは思います。それに、男色なぞ日本には安土桃山時代から(あるいはもっと昔から)ありますので、この手の話は好みの問題と割り切ってしまえば良いのです。
個人の感情は別として、社会的にこうした人たちの処遇というか対応というか、そうしたものについては曖昧なまま残されているわけですが、こればかりはしょうがないのかなあとも思います。ただ、最近は「差別ダー」と声高に叫ぶことで世間的に対等以上の立場を作ろうとする動きがあることも事実で、そこにはそこはかとなく利権の臭いがするんですけどね。
マイノリティがマジョリティになってしまった時、世の中はすでにひっくり返っていると考えなければならないということでしょう。


内容(ブックサービスHPより)

暑さが残る初秋の、とある土曜。コーヒー専門店店員・篠崎百代は、一人で汐留のショッピングモールへと向かった。できるだけ多くの人間を殺害するために。一方、百代の協力者・藤間護らは、仲間の木下が死亡しているのを発見する。計画の中止を告げるため、百代を追う藤間たちだったが…。緻密な設定と息もつかせぬ展開で、一気読み必至の傑作大長編!


曹源寺評価★★★★
なんだかんだで発刊すれば必ず読んでしまう石持作品でありますが、おぉ、本書は久々に面白かったですばい。
ある女の殺人計画とその実行について、というのがストーリーの中心ですが、これをテロとは呼ばずに「殺人」と呼ぶところがまたすごいわけでして、なにしろビルを爆破するとか人質を持って立て篭もるとかそういうのではなく(以下どうしてもネタバレ)

「二千回の殺人」を実行するという女のお話ということであります。
ですから、殺人シーンが多いので注意が必要です。もっとも、その手口は大胆かつ緻密である一方、ここまで冷静に殺人できる神経はすでに人として完全に壊れているねぇ、と思わずにはいられません。
殺人の動機についてはわかったようでやはり分かりませんでした(笑
いつもは「なんでこんな動機で人殺すかね」と動機の弱さにあれこれ酷評してしまう石持作品ですが、今回もまた

命の天秤を考えたらやはり理解不能

でありました。なぜこの大きなビルで2千人を殺さなければならなかったのか、その動機はあまりにも大胆かつ衝撃的なものでありました。ヒントは「9.11」かな。
それでも、本書の緻密な殺人作戦(!?)と、あの「悪の経典」を髣髴とさせる冷酷な殺戮シーン、なぜか発生した別の殺人事件、大規模商業ビルの裏側と現場の行き詰る攻防戦など、様々な視点から連続殺人のストーリーが語られるところは石持作品にしては結構シリアスかつスピーディでありました。
なかなかにすごい展開なので、このストーリーをどうやって終わらせるのか、という点が気になり、最後のほうは一気読みでした。
先日、フランスのパリで無差別テロ事件がありましたので、関連付けて考えてしまうと非常に胸糞悪いのですが、こんなテロをリアルに描いた作品が(しかも日本の警察ならこんな失態は十分にありえるだろうなという展開が)読める日本という国もすごいなあと素直に思ったりもします。
石持センセーの「怪作」と呼べる一作になりましょう。





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2015年12月01日

書評668 東川篤哉「ライオンの歌が聞こえる 平塚おんな探偵の事件簿2」

こんにちは、曹源寺です。

もう12月です。今年もあと1ヵ月ということで本当に月日は百代の過客であります。
昨日は水木しげる先生が妖怪の世界に取材旅行に出かけられました。我々の世代は妖怪といえば、子泣き爺であり砂かけばばあであり一反木綿でありまして、いずれもセンセーのイラストが思い浮かぶわけですが、すなわちそれは、妖怪のスタイルというかテンプレートを水木センセーによって確立されてしまわれたということと同義であります。完全にすり込まれています。センセーの影響力といったら手塚治虫センセーも真っ青なレベルですね。ご冥福というか、あちらの世界で妖怪達とお戯れくださいませ。

今年も有名人が数多く旅立たれましたのでまとめておきましょう(敬称略)。
1月 宮尾登美子(作家)、平井和正(作家)、大塚周夫(声優 石川五右衛門など)齊藤仁(柔道)、陳舜臣(作家)
2月 シーナ(歌手)、10代目坂東三津五郎(歌舞伎俳優)、松谷みよ子(作家)
3月 桂米朝(落語家)、浅井信雄(政治学者)、西沢信孝(アニメーター)
4月 羽柴秀吉(会社社長)、愛川欽也(俳優、司会者)、加瀬邦彦(歌手)、萩原流行(俳優)、白川道(作家)、小島功(漫画家)
5月 今いくよ(漫才)、今井雅之(俳優)柳生真吾(園芸家)
6月 町村信孝(政治家)、たてかべ和也(声優、ジャイアンほか)、貴ノ浪貞博(元大関)
7月 岩田聡(会社社長)、南部陽一郎(物理学者、ノーベル賞受賞)、川崎敬三(俳優、司会者)
8月 阿川弘之(作家)、香川俊介(前財務次官)
9月 原節子(女優)、小林陽太郎(実業家)、塩川正十郎(政治家)、川島なお美(女優)、
10月 橘家圓蔵(落語家)、佐木隆三(作家)
11月 阿藤快(俳優)、北の湖敏満(第55代横綱)、白川澄子(声優 サザエさんの中島ほか)、水木しげる(漫画家)


ご冥福をお祈り致します。

内容(祥伝社HPより)
湘南の片隅に、見た目も実力もNo.1の名探偵がいる──
舞い込むのは風変わりな依頼ばかり。「生野エルザ探偵事務所」本日も、来る者拒まず営業中!
“ライオン探偵”エルザと天然ボケの助手・美伽が挑む厄介な事件──
「家出した亀の探索中に殺された銀行員が靴下を奪われた理由とは」
「老婦人を轢いた犯人はなぜ珈琲をかけて逃げた?」
「元カレと永遠の愛を誓って湘南平に取り付けた南京錠を外して」
「深夜のビーチで正面衝突したフィアットはどこへ消えた?」
すべては依頼人のために。最強タッグが真相を追う!


曹源寺評価★★★★★
安定のライトミステリ東川センセーの作品を久しぶりに読みました。本書は「ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1」の続編であります。湘南の西、七夕祭りで有名な神奈川県平塚市を舞台に、ひとりで探偵事務所を開設した生野エルザと、地元に戻ってきた地味な元同級生、川島美伽が助手となって事件を解決するというお話です。
東川センセーのヒット作「謎解きはディナーのあとに」シリーズと同じく、連作短編集でありまして、4作が収録されています。この2作品で連ドラ1クールできますね。
じつは、このシリーズは「ライオンの棲む街」ですでに「1」と銘打っていたという珍しい作りでして、とりあえず「2」が出てきてほっとしています(作者が一番ほっとしているでしょう)。
作者の思惑とは別にして、「ライトミステリ」とか「ユーモアミステリ」と呼ばれてしまうセンセーのシリーズものですが、たまに本格ミステリ(とまではいかないものの)のような謎に出くわすことがあります。本書の場合は「亀とライオン」あたりがなかなかにミステリアスでありましょうか。逃げた亀の行方を捜して欲しいと探偵事務所に要請してきた銀行マンが河川敷で死体となって発見されるが、死体にはなぜか靴と靴下がなかったという謎です。
謎解きそのものがドタバタ劇なので

ユーモアミステリと呼ばれてもしょうがない

と思いますが、解けてしまえば後は意外とあっさりというところも相まって、本当に軽く読めますね。





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posted by 曹源寺 at 14:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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