ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2016年01月29日

書評683 富樫倫太郎「スカーフェイス 警視庁特別捜査第三係 淵神律子」

こんにちは、曹源寺です。

先日、2015年度の公務員給与を引き上げる改正給与法が可決・成立しました。一般職の月給を平均0.36%、 ボーナス(期末、勤勉手当)を0.1カ月分引き上げる内容です。

WHY JAPANESE PEOPLE?
ふだん、国の借金ガー、とか国民一人当たりのうんたらとか言われている割りには、公務員の待遇はさほど変わってはいませんし、いやむしろ何の改革も行われていませんね。赤字会社だったら普通は給料上がりませんし、むしろリストラされてもおかしくはないです。
個人的な感想ですが、霞ヶ関の官僚は激務ですからむしろ引き上げても良いのではないかと思うくらいな一方で、給食のオバちゃんとかヒマそうな水道局員とか市営バスの運転手とか民間と比較した時に著しく優遇されている職種はやはり見直すべきだと思います。つまり、地方公務員ですな。

三橋貴明センセーのような超有名ブロガー経済評論家は公務員給与の引き下げがデフレを生むから反対とか書いておられますが、官民格差の拡大という論点から逃げているように思えてなりません。
そもそも、公務員給与は財政圧迫の一要因であるならば、財務省はこれを放置してはならないはずですが、財務省からこうした動きが顕著に見えることはありません。やはり、「国民の敵は財務省」ではないかと思う今日この頃であります。

内容(幻冬舎HPより)
連続殺人鬼の手がかりは、私に刻まれたこの傷だけーー。
犯人逮捕の為なら一切手段を選ばない、酒と暴力に溺れた女刑事、登場!
ベストセラー『SRO』シリーズの著者が描く、新たな警察小説。


曹源寺評価★★★★★
「SROシリーズ」で警察小説の新たな旗手になりつつある富樫倫太郎センセーですが、食わず嫌いであまり読んだことがありませんでした。手持ち無沙汰でやむなく手に取りましたが、あらまあ、普通に面白いじゃありませんか。
本書は警視庁捜査一課に所属し、アル中で暴力的、個人プレーお構いなしの腕利き女刑事という設定の主人公です。
うわぁ、なかなかにすごい描写ですね。こんな設定は大いに疑問符ですが、もう警察小説はありきたりな設定では食指が伸びない御仁も多いですから、まあそこは許容しましょう。
アル中の主人公という設定で思い出すのは、今は亡き藤原伊織大先生の「テロリストのパラソル」が印象的でした。本書の描写はあのレベルには到達していませんし、警察官のような公務員なら普通に健康診断で引っかかるレベルですから、やはりありえないと言っておきましょう。
その女刑事、淵神律子は連続殺人鬼「VEGA」によって顔を切りつけられた過去があり、いまもその傷が残っています。度重なる暴力沙汰でついに「第三係」なる書類整理専門の部署に飛ばされるのですが、それが逆に「VEGA」を追い詰めるための源泉になってしまい、ついには犯人と対峙することになります。
この第三係に飛ばされるまでが異常に長く、なんだかよく分からんのですが、終盤になるとその意味が分かってきます。つまり、伏線ですね。何気ない文章とかエピソードが後で伏線になっているというのが、やはりミステリ系小説の醍醐味でありますね。
しかし、このラストはなんだろう。モヤモヤ感が抜けない。続編をにおわせつつ終わるのは結構だが、ちょっと露骨すぎです。
読了して思ったのですが、富樫センセーの文章は

映像を意識しすぎではないかと

思うのであります。





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2016年01月26日

書評682 五十嵐貴久「魅入られた瞳 南青山骨董通り探偵社U」

こんにちは、曹源寺です。

なんだか経済がおかしくなっているようですが、株もやっていない庶民にはあまりピンと来ない状況ですね。
景気を測る指数というのがありまして、「先行指数」「一致指数」「遅行指数」という3種類に分類されるのですが、このうち景気に先行して動き出すのが先行指数です。
先行指数には以下のようなものがあります。

新設住宅着工床面積
東証株価指数
実質機械受注

また、世界では
バルチック海運指数

というのが先行指数として有名です。
このバルチック海運指数は世界の原材料を運んでいる外航船の運賃が指数化されているもので、ロンドンにあるバルチック海運取引所が毎日更新しています。
この指数が高ければ、世界の海運需要=モノの動きが活発であることを示すことになるわけです。ブルームバーグのサイトから見ることができます。

本日(日本時間2016年1月26日現在)の指数は354.0。グラフを見れば一目瞭然、ダダ下がりであります。ピーク時はリーマンショック前の11,793ですから、なんと30分の1です。
世界経済は死んでいますね。
あまり報道されていませんが、ロシアの通貨ルーブルは昨年末から大きく下落しているほか、イタリアでは銀行株が5日連続で値を下げたことから取り付け騒ぎが起きているとの情報もあります。
世界的に株価が下げ基調にあり、中国だけでなく欧州各国でも20%以上の下落です。その中国は米国債を売りまくっているらしく、実はすでに経済戦争の真っ只中にいるのではないかという話もあります。

BRICSなど二昔前の話になってしまいました。世界経済を牽引できる主役が不在のなか、悲観的な見方だけが広まれば世界恐慌もありえそうな勢いです。自衛しましょう。

内容(光文社HPより)
正式に探偵社に入社した井上雅也。だが、地味な仕事続きで不満気味。そんな折、社長の金城から任されたのは、商社マンの美しき妻・志津恵をクリニックへ送迎することだった。渋々引き受けた雅也だったが、一目で彼女に魅了される。着々と仕事を進める中、送迎車の消失や謎の男からの暴行など予期せぬ事態が起こる。探偵社の面々を待つ驚愕の真実とは!? シリーズ待望の第二弾!


曹源寺評価★★★★★
サラリーマンから転身した新米探偵の井上雅也が主人公の「南青山骨董通り探偵社」シリーズ第2弾です。恐ろしく頭が切れ、人脈が広く、警察からの信頼も厚い金城所長をはじめ、「うすら禿げ」の立木、「キャバ嬢」の真由美、「冷徹」な玲子、「格闘家」の美紀など、探偵社の個性溢れる面々が、何の変哲もない雅也と対比的にストーリーを盛り立ててくれています。
今回は、依頼人からの謎の多い要請を請けて雅也が美人妻の送迎役となりますが、その謎が明らかになった途端、雅也たちがピンチに立たされるというストーリーです。
まあ、軽く読み流せる内容ですが、ストーリーに破綻はありませんし、キャラクター構成が良いのでぐいぐいと読めます(呑めます、みたいですね)。
あまりキャラが立ちすぎると現実感がスポイルされてしまい、ファンタジーのようなお話になってしまうことがあります。探偵モノというのはどうしても現実と小説の乖離が激しいので(実際、探偵が刑事事件を追うということはほとんどないわけで)、このへんの折り合いをどうつけていくのかというのは著者のさじ加減ひとつにかかってくるわけです。こうした観点から考えると、

本書の立ち位置は結構ぎりぎりかなと

思います。これ以上派手なストーリーにしてしまうとテレビドラマ以上のファンタジーになってしまいそうです。

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2016年01月22日

書評681 竹内真「マルトク 特別協力者 警視庁公安部外事二課 ソトニ」

こんにちは、曹源寺です。

「センテンススプリング!」
言ってみたかっただけです。すみません。

さて、5人組のアイドルグループがどうなろうと知ったことではありませんが、この事件(あえて事件と言おう)は芸能界のみならず、マスゴミ界の闇をも浮き彫りにしたと言っても過言ではないですね。
アイドル=派遣社員または委託先個人企業
芸能プロダクション=派遣会社
テレビ局=発注元
であるわけですが、派遣会社の内紛がそもそもの原因であるにもかかわらず、その委託先である個人が謝罪に追い込まれるという事態、さらには、その派遣会社のほうが発注元よりも力関係では上にあるということ、さらに言うと、派遣会社と結託しているのが(広告)代理店(=ブローカー)で、そのブローカーが「視聴率」を武器にして(脅し文句にして)発注元に圧力をかけているという構図(いまだに独自の機械でごく少数のサンプリングで視聴率を調査している前時代的な手法に加え、その運営会社はブローカーが大株主)ですから、一般の企業の取引と比較した場合、「異常」という言葉以外には表現のしようがないのではないかと思います。
派遣会社のブラックな掟(移籍や独立は許されない、など)は多くの人が異常だと思っているわけですが、それと同等に異常だと思うのが、「使う側」がいつの間にか「使われてる側」になっているという状況だと思います。真っ当なタレントが正論を吐こうとすると発注元からそれを封じられるってどういうことよ。発注元が派遣会社に気を使ってどうするのよ。
現代の置き屋、女郎部屋の実態が少し垣間見えた事件ということで、これを機会に多少なりとも浄化されて欲しいと思う今日この頃です。

追記
「ラスボス」こと小林幸子のように、事務所とすったもんだしてもネットの活用で見事に復活を遂げたタレントが今後も出てきますように。

内容(講談社HPより)
戦後70年の節目に、諜報ミステリーの新星が放つ渾身作。東京で元警察庁長官が狙撃される。一方、ニューヨークでは、日本総領事館に亡命を求めやってきた北朝鮮外交官が暗殺される。一連の事件の背後には、終戦時、日本に見捨てられ、彼の地に取り残された母子の、壮絶な運命が垣間見える――。
戦後日本の官僚組織に打ち捨てられた人々の苦悩。そして北朝鮮の「体制崩壊後」を睨み、利権を狙う政財官。国民の命をかえりみない無情な奴らに、はぐれ者の元公安スパイハンターが挑む。
あの戦争の悲劇を思い、今後の日朝関係をも暗示する、必読の書。


曹源寺評価★★★★
背乗り」で一躍注目されるようになった現役TBSキャスターの竹内センセーが、小説第2弾として放ったのはやはり諜報モノでありました。
背乗りなんて単語、結構タブーに近いんじゃないかと思っていましたが、公安モノなら普通に許されるんですね。
その公安・諜報モノですが、個人的には麻生幾センセーの「ZERO」の衝撃が強すぎて、アレを超える作品はなかなかお眼にかかれないのです。ただ、竹内センセーの作品は総じて読みやすいし、複雑な糸を少しずつ解きほぐしていくような書き味はなかなかのリーダビリティだと思います。間違いなく文章力は大幅にアップしていますね。
本書は第1弾「背乗り」で登場したスパイハンターの筒見慶太郎が再び登場します。世田谷区の小学校で運動会を観覧していた元警察庁長官が銃撃され死亡。一方、ニューヨークでは北朝鮮の外交官が日本への亡命を希望しつつもその直後に暗殺。事件を追う外事二課の朝倉と島本の二人に対し、筒見もこれを追うという展開です。
事件は複雑ですが、絡み合っている糸をほぐしていくと根っこはつながっていましたよ、と。その根っこが何とも非現実的ではありますが、その背景は理解できなくもありません。
本書のキモは「北朝鮮が崩壊したら大変だから、独裁から集団指導体制へソフトランディングさせよう」とする周辺各国の思惑が、もしかしたら本当に本書のようなストーリーとして現実化するのではないか、というリアルな感想が持てる、という点にあるのかもしれません。
それと、戦後の半島の情勢(朝鮮引き揚げの件など)についても触れられていますが、この辺について公安モノで触れている小説にはあまり出会ったことがありませんので、ちょっと新鮮でした。
こうしたいくつかの点において、竹内センセーの作品は

遠まわしですがタブーに斬り込んでいるのではないか

という印象を持ちます。
もっとやってほしいですね。次回作にも期待します。





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2016年01月19日

書評680 大倉崇裕「ペンギンを愛した容疑者」

こんにちは、曹源寺です。

テニスの全豪オープンが始まりました!当然のことながら、錦織選手には大いに期待しています。全米と全豪はハードコートですので、彼の修行の場であった米国に多いサーフェスです。全英や全仏はサーフェスが異なりますので、勝ち続けるためにはあと一工夫が必要ではないかと言われています。今年はこのまま勝ち進めば準々決勝でジョコビッチとぶつかりますので、あまり良いドローではありませんが、どの道どこかでぶつかりますので余力のあるうちに撃破してほしいものです。

最近は日本女子選手の影が薄いのですが、そんななかでも「大坂なおみ」選手に注目が集まりそうですね。大坂選手は本日、予選から這い上がって本戦の1回戦をストレート勝ちで突破しました。身長180センチから繰り出す200キロのサービスが武器です。こんな日本選手はいままでいませんでした。見た目も日本人ぽくありませんが、ハイチ人の父親と日本人の母親の間に生まれたハーフです。「和製セリーナ」の呼び声もありますが、ダイナミックなテニスで観客を沸かせてほしいと思います。

ハーフの快進撃は野球、陸上、ラグビーときてついにテニスにまで及んできましたよ。この先が本当に楽しみです。

内容(講談社HPより)
ペンギン屋敷の溺死体!秘められた「殺意の証拠」をアニマル推理で解き明かせ!
強面の窓際警部補・須藤友三と、動物係で天然系の巡査・薄圭子の警視庁「いきものがかり」の名(迷)コンビが大活躍!
さらに「ヤギ」「サル」「ヨウム」も出てきます。コミカル・アニマル・ミステリー傑作集!


曹源寺評価★★★★
「警視庁総務部動植物管理係」シリーズの第3弾です。このシリーズ、大倉センセーの作品群のなかでもけっこう面白くてはまっています。
犯罪被害者や加害者が飼育していたペットの世話を目的に設置された部署に、元警視庁捜査一課のベテラン刑事と、さまざまな動物に詳しい(詳しすぎる)巡査のコンビが事件を解決するという、なんだかテレビドラマのような設定ですが、なによりもこの二人のボケツッコミがくだらなさ過ぎて笑えます。
本シリーズは薄巡査がボケ、須藤警部補がツッコミです。ボケの破壊力が凄まじく、

時にはストーリーが頭からすっ飛ぶ勢い

ですので注意が必要です。
ただ、事件の推理についてはそれなりに的確で的を射ているため、読んで納得できますから論理が飛躍してはてなマークがいっぱいつくようなどこぞのくだらないミステリよりは面白く読めると思います。
本書シリーズは前作のような長編ではなく、連作短編のほうが面白く読めますね。あっさりしていますが、キャラクターが活きるし、スピード感が出ます。
大倉センセーはこうしたちょっと特徴ある方々を主人公に据えた連作短編が、もっともそのポテンシャルを発揮できているように思えます。福家警部補シリーズしかり、本シリーズしかり、ですね。





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2016年01月15日

書評679 深町秋生「猫に知られるなかれ」

こんにちは、曹源寺です。

本日で2016年の「24分の1」が終了ですwww
でも、世間を駆け巡るニュースがとんでもなく多いですね。
北朝鮮の水爆実験
スタバで福袋買い占め騒動
サウジとイランが国交断絶
ベッキーがゲスの極み川谷と不倫
長野のホテルで財布が170人分盗まれる
DAIGOと北川景子が結婚発表
トルコで爆弾テロ
竹田圭吾さん死去
マエケンのドジャース入団
ラガー甲子園追放
デビッド・ボウイさん死去
東証株価6日連続で下落
SMAP解散騒ぎ
軽井沢でバス転落事故14人死亡 ←NEW



今年、すごすぎですわ。
バスの事故は良く通る道で発生したのでショックです。。。軽井沢から東京への帰りは碓氷軽井沢IC行かないで松井田妙義ICまで碓氷峠行ったほうが速かったりするんですよ。お土産も横川にある「おぎのや」で買えるし。西武バスで池袋から軽井沢まで行ったこともあるし(激安です)。ご冥福。


内容(角川春樹事務所HPより)
オキュパイド・ジャパン――GHQ占領時代。それは絶大な権力を持つ米兵たちや「サードナショナルズ」のヤクザ組織、ソ蓮からの工作員や旧軍のテロリストらの暗躍が、日本を食らいつくそうとする暗躍の時代だった。そんな中、元陸軍中野学校のスパイ・藤江忠吾と、香港憲兵隊で「泥蜂」の名を持つスパイハンター・永倉一馬の二人は、緒方機関、通称〈CAT〉と呼ばれる秘密機関にスカウトされる。焼け跡となった廃墟の中、復興のために奮闘する日本人たちのため、一度は敗北した男たちの新たなる闘いが始まろうとしていた。その闘いの先に見える光とは?数々のベストセラーを創りだした深町秋生が贈る、新たなるスパイ冒険小説!


曹源寺評価★★★★
「果てしなき渇き」以来すっかりご無沙汰していた深町センセーですが、意外にも結構ご活躍されていましたのでちょっとびっくりです。「このミス大賞」出身者ってあまり大成していない印象がありましたが、そうでもないんですね。
さて、本書は戦後間もない昭和22年を舞台としたスパイ小説であります。香港の憲兵隊に所属していた永倉一馬と、陸軍中野学校出身の藤江忠吾が、緒方竹虎の組織する新しい秘密機関「CAT」にスカウトされ、復興途上の日本で暗躍するというストーリーです。
日本の復興を邪魔する者を排除するという役割を与えられた二人ですが、その敵とは?当時の社会情勢を緻密に書き上げていて、GHQとGS、G2の関係とか、共産党の躍進とか、大陸の方も国民党と共産党の内戦とかソ連の間諜とか、いろいろ取り乱れていて複雑怪奇なわけですが、このへんをうまく分かりやすく書き上げるのはけっこうなテクニックではないかと思います。
明治の黎明期とか昭和の戦後間もない時期などは日本の歴史においても重要な転換期となっているわけですが、個人的にはこうした混乱の時代を丁寧に描いた作品を好む傾向がますます強まりました。ただ、本書はややのっぺりしているような気がします。あまり読後に強烈な印象を与えるものではありませんので、この手の小説にありがちな読後感「あぁ、なんだか壮大なドラマだったなぁ」みたいな感覚が露ともありません。

あっさりしすぎていてグッとこないんですよ

何がいけないのだろうと小一時間考えてしまいました。結論は、、、
どんでんのひとつも欲しかったのかなぁ、というところでしょうか。同じスパイモノの連作短編でも柳センセーの「ジョーカー・ゲーム」のような衝撃はひとつもなかったですし、じゃあ長編にしたほうが良かったのかと問われればそれもどうかと思うし。
これをもっと端的に表現できないと評論としてはいかがなものかと思いますが、自分の語彙力のなさに落ち込みました。





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2016年01月12日

書評678 横関大「ルパンの娘」

こんにちは、曹源寺です。

本日で東証平均株価は年初から6日連続の下落となりました。中国株式市場もズタボロなうえ、原油価格も下げ止まらない、アフリカのランドという通貨が大暴落という有様です。
今日の朝は都心の通勤電車が軒並み遅延、運転見合わせとなりましたが、こうした経済情勢が続けば毎日のように電車が遅延するような日常にもなりかねません。
デフレを脱却し、もう少しで経済成長への転換を果たそうかという時に増税などやらかしやがって財務省め〜と思っていたら、今度は中国の死亡フラグですよ。今年はやっぱり波乱の年となりそうですね。


内容(講談社HPより)
三雲華(みくも・はな)は恋人の桜庭和馬(さくらば・かずま)の家に挨拶に行くこととなった。緊張する華にたいして、和馬は優しく話しかける。ついに桜庭家に到着した華は、玄関に飾られていた桜庭家の家族写真を見て唖然とした。全員が警察の制服らしき服装に身を包み、それぞれ敬礼のポーズをしていたからだ。
最悪だった。華が育った三雲家は、代々泥棒を生業としており、一家全員が盗人だったからだ。
果たして華と和馬の恋はうまくいくのか――。
その後のある日、荒川の河川敷で男の焼死体が見つかり、和馬は現場に急行した。
その被害者は華の祖父、三雲巌(いわお)だった。
超一流の泥棒であった祖父を殺した犯人とは――。
読み進めるほどに出てくる衝撃の展開と新たな謎。1ページも目が離せない、気鋭乱歩賞作家の勝負作!


曹源寺評価★★★★★
代々警察官の家系である桜庭家、一方は代々泥棒を家業とする三雲家、この両家のカップルが巻き起こす騒動をコメディタッチながらもミステリで仕上げるという何とも粋な作品を仕上げてくれたのが、乱歩賞作家の横関大センセーであります。
横関センセーはこうした軽めのタッチが身上でありますが、その内実はなかなかに手間のかかった作品が多く、前作の「スマイルメイカー」でも最後にちょっと意外などんでん(というか「してやられた」感満載)もあったりして、いかに読者を楽しませようかと凝りに凝った作りこみをされています。
本書もまた、ドタバタ劇でありながら実はきちんとしたミステリになっていて、ラストのスリリングな展開はストーリーテラーとしての実力を存分に発揮しておられる、なかなかに読み応えある作品に仕上がっています。
殺人事件を追うも、なぜか不可解な出来事で翻弄される和馬、祖父を殺した犯人を捜そうにも祖父の正体がばれるとやばい華とその家族、相手の一家が警察揃いということを知らずに結婚話を進める三雲家、泥棒一家であることを知らずに縁談に乗り気な桜庭家、、、なんだかアンジャッシュのコントを観ているかのようなちぐはぐっぷりに続きを早く読みたくなってしまいます。現実感のない設定でこれだけ読ませるのですから、

横関センセーを見る目がこの最新2作で相当変わりました。

乱歩賞作家では池井戸センセーが「泣かせる」企業小説の大家になったように、横関センセーもまた、もしかしたら「笑わせて、ジーンとさせる」コメディミステリ作家として大成するのではないかと、ちょっとだけ期待してみます。





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2016年01月08日

書評677 中村文則「あなたが消えた夜に」

こんにちは、曹源寺です。

FRBが利上げしたり、上海市場がサーキットブレーカーを発動したりと、新年早々から世界経済が大きく動き出そうとしています。東証株価も5日連続で下落という、よく考えると非常にヤバイ状況なわけですが、国内の一番の話題は「ベッキー、やっちまったな」というやつですから、日本という国はいかに呑気な国なのか本当によくわかりません。

さて、昨年から憤りを隠せない、新聞の軽減税率適用ですが、週刊ポストの記事が秀逸だったので勝手にリンク。
新聞の軽減税率 「水や電気はなぜ入らない」発言議員に拍手(週刊ポスト1/15、22号)
2017年4月に消費税が10%へと引き上げられる際、「新聞」にかけられる税率が8%に据え置かれる方針が決まった。12月15日の自民党税調小委員会では、新聞への軽減税率適用に強い異論が出た。時事通信、日経新聞で9年間の記者経験を持つ山下雄平参院議員が次のような発言をしている。
「これまで食料品の議論をしてきたのに、(新聞への適用は)あまりに突然で論理の飛躍があります。
新聞の購読料が低所得者にとって相対的により重い負担になるという説明が財務省からありましたが、それならばなぜ電気・ガス・水道の料金は入っていないのか。それを言い出してはキリがないから食料品に限定するという政治判断だったはず。
食品のドタバタに隠れて『新聞が政治力を使ってゴリ押しした』と国民に映れば、現場の記者たちが後ろ指を指されかねない。活字を対象にするというならば、食品と同じように議論して国民に理解を得てからでも遅くはないはずです」
この発言に賛同した議員は多かった。山下議員は本誌取材に、「私の発言後に、『よく言ってくれた』と拍手が起きましたし、握手を求めてきた議員もいた」と答えている。
当然ながら各紙の記者はこの小委員会を取材している。〈15日の小委員会(総会)には、当事者であるはずの野田毅最高顧問ら3人が欠席〉(毎日新聞、16日付)などの記事があることからもわかる。しかし、山下議員の発言を報じた新聞は皆無だった。
権力を監視する役割を担うジャーナリズムの立場で軽減税率の恩恵を享受する以上、異論も含めて掘り下げ、自ら検証する姿勢が求められる。それを無視したことに、「自分たちだけ減税されてよかった」という本音が透けて見えるのだ。


新聞の傲慢さをうまく表現しておられる記事だと思います。


内容(毎日新聞出版HPより)
著者初の警察小説。"コートの男"連続通り魔事件、戦慄すべき真相。 人間存在を根底から揺さぶるクライムノベル。狂気のミステリー!
ある町で発生した連続通り魔殺人事件。
所轄の刑事・中島と捜査一課の女刑事・小橋は目撃証言による"コートの男"を追う。
しかし事件は、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。
"コートの男"とは何者か。誰が、何のために人を殺すのか。
翻弄される男女の運命。神にも愛にも見捨てられた人間を、人は救うことができるのか。
いま世界が注目する人気作家。
デビューから13年、著者が初めて挑む警察小説。
人間存在を揺さぶる驚愕のミステリー!


曹源寺評価★★★★
芥川賞作家の中村文則センセーの著作は今まで読んだことがありませんでした。著者初の警察小説と言うことで、非常に興味を持ちましたので。
3部構成になっておりまして、第1部、第2部は登場人物がどんどん出てきて収拾がつかなくなりますが、それもそのはず、捜査はあっちへ行ったりこっちへ行ったりと迷走を続けます。所轄の中島と捜査一課の小橋がペアを組み、独自の捜査を展開していきますが、途中で別の班との内紛があったり、序列の壁に阻まれたり、とゴタゴタしているうちに別の事件が発生するという厄介な展開になります。
そんで第3部なんですが、なぜかいきなり独白から始まるのであります。この辺はさすがに芥川賞作家、人間の内面にずばずばと切り込んでいきます。登場人物が揃いも揃って不幸塗れで壊れかけているのですが、この独白でもつれた糸がようやくほぐれていきますので第3部で事件の真相が分かるという仕掛けになっています。
でも、頭の悪い自分にはやや難解でありました。もう一回読み直せば理解できるのかなあと思いますが、結局しないんですよね。。。
しかし、本書を読了してみて改めて考えたことがあります。それは
「警察小説とは何か」という命題です。
ただ単に、警察官が主人公なのが警察小説である、とするならば、本書もまたずばり警察小説と言えるでしょう。
しかしながら、本書は(以下、ネタバレにつき注意!

警察官が事件を解決しているようで、実はしていないという状況なわけです。いや、解決はしているのか。推理して行動して解決するというプロセスではない、と言うべきでしょう。第2部までの謎が、たとえば何かのきっかけで主人公がひらめいたり、解決の端緒をつかまえたりするのであれば分かるのですが、そんな解決の仕方ではないわけです。

本書は警察小説と呼びにくいですわぃ

これはあくまでも純文学の世界に位置すべきものであり、自分を罰して欲しい人たちが奇跡的に集まった事件の内面を鮮やかに抉り取ったゾクゾクする物語である、と思います。





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2016年01月05日

書評676 大山誠一郎「赤い博物館」

あけましておめでとうございます、曹源寺です。
本年も定期的にブログ更新して参りたいと思います。よろしくお願い致します。

さて、新年早々胸糞悪いニュースがありました。
【炎上】スタバの福袋限定108個を先頭の人が全部買い占めてオークション転売
スターバックスが1/1から売りだした福袋について、二子玉川の店舗で先頭客が全てを買い占めてしまい、2番目以降に並んでいた客が一人も買えなかったというハプニングが起きた。その後、オークションに大量に出品されているのが見つかり、問題視されている。
一体現場で何があったのか。Twitterで報告されている情報をまとめてみた。

▼スタバの福袋は毎年大変な人気で一年に一度しかないチャンスとあって、朝5時から並んでいる人もいた。しかし、先頭の客が大中それぞれ60個、48個全てお買い上げ。しかもちゃんと列に並んでいるわけではなく、椅子を置いて側の車で待機しているだけだった。(以下、略)


えー、いろいろとツッコミどころが多くて大変なんですが、
●他の行列客 → 店に文句言って良いレベルでしょう(どうやらこのあと大変だったそうですが)。でも、その前に買ったヤツを取り囲んでフクロにしても良かったのではないかと思います。
●店 → 個数制限しなかったのはクソ呼ばわりされても仕方のない落ち度ですね。
●買ったヤツ → 後ろに並んでいる多くの人を尻目に全部買い占めるメンタリティがすでに日本人ではないですね。

まあ、一番悪いのは店ですわ。このオークション転売厨が雨後の筍のように湧いているさなか、個数制限しなかったのは買った客との癒着を疑われても仕方がありません。

そもそも、福袋というのは店が客を呼び込むための手段の一つに過ぎず、評判を落としてしまったらやる意味がないというかそれ以上に逆効果でしょう。
そこで、正月の福袋は「整理券による抽選方式」にすべきと提案します。メリットはいっぱいあります。
●買う側が並ばなくて良い
●でも絶対来店してくれる
●買い占めがなくなる
●抽選をイベントにできる

今年の教訓を糧に、来年はまともな福袋商戦が繰り広げられますように。


内容(文藝春秋HPより)

『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を射止めた著者がミステリ人生のすべてを賭けて贈る渾身作。
キャリアながら《警視庁付属犯罪資料館》の館長に甘んじる謎多き美女と、一刻も早く汚名を返上し捜査一課に戻りたい巡査部長。図らずも「迷宮入り、絶対阻止」に向けて共闘することになった二人が挑む難事件とは――。予測不能の神業トリックが冴え渡る、著者初の本格警察小説!


曹源寺評価★★★★
タイトルから内容を想像できる人はおそらくいないだろうという作品が本書です。警察小説なのに「赤い」「博物館」ですからね。特に「赤い」って言ったら、警察の仇敵、日本共産党の色ですよ。普通、警察の建物とか組織とかに「赤い」などとはつけないですね。その辺のタブーにも踏み込んだと言えば聞こえは良いかもしれませんが、警察関係者から見たらザケンなコラ!といった感じでしょうか。
「博物館」とは「犯罪資料館」の別称ですが、この架空の建物が三鷹にあり、そこの館長である緋色冴子警視と、捜査一課から飛ばされて不遇を嘆く寺田聡巡査部長のコンビが活躍するという内容です。
連作短編のスタイルで、五つの作品が収められています。
資料館なので、時効が成立した事件に関する当時の資料や物証などが次々と運び込まれてきます。緋色冴子はキャリア警察官でありながら閑職に飛ばされている設定ですが、独特の観察力と推理力を発揮して、迷宮入りになっている事件を解き明かしていきます。要するに安楽椅子探偵モノのようなものですね。
ほんのちょっとした齟齬というか、周囲の誰もが見落としていたようなわずかな不整合性から、事件の本質に迫っていくストーリーは、警察小説でありながら本格探偵小説のような味わいを見せてくれています。
基本的な流れは、状況証拠を集める→様々な可能性を考慮しつつも、論理的整合性を検証してひとつひとつ潰していく→最後に残った推論を補強するための証拠を集める→証拠が見つかる→事件解決ンゴ
という感じです。
五つの作品はレベルの高低がありますので、すべて面白いかと言えばそうでもないかなあと思います。論理的な整合性があれば良いのですが、

ちょっと飛躍してね?という印象も

なきにしもあらずな作品がありますので、その辺を差し引く必要はありそうです。





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posted by 曹源寺 at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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