ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2016年03月28日

書評699 大倉崇裕「GEESKSTER 秋葉原署捜査一係 九重祐子」

こんにちは、曹源寺です。

舛添、リコールしたいなあ。
猪瀬のときはあれだけ騒いだのに、なぜ舛添はメディアが総叩きしないのかなぁ。
市ヶ谷商業高校跡地の問題だけじゃないんだけどなぁ。
なんで都知事なのに外交やっているんだろうなぁ。
保育園問題は国の施策ではなくて地方自治体の所管なのに、なんで安倍首相が叩かれて都知事が叩かれないのかなぁ。
待機児童ナンバーワンの世田谷区長なんてもっと叩かれてもいいはずなんだけどなぁ。
おかしいよなぁ。

振り返ると、バブル崩壊以降の日本は女性の社会進出が進み、共働きも増えて、核家族化も進展しているという社会構造の変化があったはずなのに、この構造変化に対応しきれていない分野や業界、自治体、教育システムなどが相当数あって、あちこちで歪みを起こしているというのが実態なのではないかと思います。
自分が社会人成り立てのときは、おそらくその2年くらい前に初めて、総合商社が女性の総合職を採用した!なんてニュースがあったように記憶しています。今じゃ当たり前ですもんね。

女性の社会進出が進むと、男性の受け入れが進まなくなり(女性のほうが勉強は優秀だったりしますね)、男性の非正規雇用やニートが増え、将来の生活設計ができない人が増え、人生に悲観的になり、治安は悪化します。
女性の社会進出が進むと、晩婚化が進み、出産率が低下し、人口が減少するため、地方の過疎化が進んだり経済が停滞したりするようになります。

言っておきますが、これは差別的発言ではなく、「何も手を打たなければ」こうなりますよ、というシミュレーションです。だから、こうした社会構造の変化に対して何らかの手を打つべきである、という建設的意見の前提条件としてこうした現実を認識しなければなりません。

働き方を見直すとか、育児の方法が多様化されるとか、出産後も社会復帰がスムーズに行えるようにするとか、やらなければならないことがたくさんありそうです。20年前のシステムを動かしているような古い構造にメスを入れ、変えるべきところをしっかりと見直していく動きが社会全体に求められているはずです。その優先順位(プライオリティ)が分かっていない政治家には早々にご退場いただきましょう。

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内容(KADOKAWA HPより)
秋葉原署捜査一係に着任した九重祐子は連続傷害事件を捜査中、秋葉原で悪事を働く者に制裁を下す闇のヒーロー〈ギークスター〉と出遭う。悪党から街を守るのは警察か、それともダークヒーローか!?


曹源寺評価★★★★
秋葉原を舞台にした警察小説は珍しいと思いますが、なぜ秋葉原なのかという謎は大倉センセーの趣味というか志向にマッチしているのが理由である、ということが本書を読むと良くわかります。
大倉センセーは自ら怪獣大好きを明言されていまして、先般は未知の怪獣と戦う小説「BLOODARM」を上梓されたばかりです。そんな大倉センセーが秋葉原を舞台に小説を描いたら、まあそりゃこうなりますわな、という作品です。
交通課から捜査一係に異動したものの仕事をさせてもらえず、署にやってくるオタクたちの相手をしている毎日だった九重祐子。しかし、街に流れる噂を収集するうちに「GEEKSTER」の話を聞くようになり、放火事件や乱闘事件などの真相に迫っていきます。GEEKSTERの正体を知った九重は、彼が待ちの治安維持を目的にしていないことを見抜き、彼と共闘するもののどこかに一線を画すようになります。GEEKSTERの最後の敵との対決、決着は、、、
スピード感溢れる展開と無駄を省いたストーリーテリングで一気に読ませてくれますが、警察内部の話とか12年間の展開などを相当すっ飛ばしていますので

端折りすぎやん

と突っ込みたくなる場面もなきにしもあらずです。
大倉センセーといえば山岳小説のほか「福家警部補シリーズ」でみせる倒叙モノだったり、「容疑者シリーズ」のような動物系警察小説だったりが有名ですが、センセーの本質はもしかしたらこうしたオタク系ディープ小説なのではないかと勘ぐっています。しかし、それは嫌いではありません。

むしろ、好きです

怪獣モノとかヒーローモノとか大倉センセーに原作を書いて欲しいくらいですわ。本書に登場する怪獣は「透明バルバドン」です(といっても別に怪獣と戦うわけではありませんが)。ぜひ再登場させていただきたいですね。





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2016年03月25日

書評699 雫井脩介「犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼」

こんにちは、曹源寺です。

桜が咲き始めたり、プロ野球が開幕したり、子どもが終業式だったりと、春を感じさせる行事が続きますね。来週後半からは気温も上がるそうですので、いよいよ春本番です!

さて、ちょっと興味深いニュースが。
人工知能がヒトラー礼賛 マイクロソフト実験中止(共同通信3/25)
【ニューヨーク共同】米IT大手マイクロソフトは24日、インターネット上で一般人らと会話をしながら発達する人工知能(AI)の実験を中止したと明らかにした。不適切な受け答えを教え込まれたため「ヒトラーは間違っていない」といった発言をするようになったという。
IT大手は端末の音声検索機能などを向上させるため、利用者とのやりとりから学ぶAIの開発を競い合っている。ただ、不当な思想や差別発言を倫理的に判別するには至っていないようだ。
マイクロソフトが開発したAIは「Tay(テイ)」と名付けられ、短文投稿サイトのツイッターに23日、テイのアカウントで登場した。


マジか!?
これが本当ならば、人工知能に関しては「インプットされる情報次第では暴走する可能性がある」ということがでしょうか。
リアルなターミネーターの世界ですわ。ちょうど息子にターミネーターの1と2を観せていたので、『スカイネット計画』を想起させてくれるこのニュースにちょっとビビりましたよ。デデンデンデデン
別の観点からは「子どもにネットでの会話をさせてはいけない」という結論にもなりはしませんかね。『うそはうそであると見抜けない人は(掲示板を使うのは難しい)』という名言を残したひろゆきの言葉の正しさが証明されたのかもしれませんね。

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内容(双葉社HPより)
神奈川県警が劇場型捜査を展開した「バッドマン事件」から半年。巻島史彦警視は、誘拐事件の捜査を任された。和菓子メーカーの社長と息子が拉致監禁され、後日社長のみが解放される。社長と協力して捜査態勢を敷く巻島だったが、裏では犯人側の真の計画が進行していた――。知恵の回る犯人との緊迫の攻防! 単行本文庫合わせて135万部突破の大ヒット作、待望の続編!!


曹源寺評価★★★★
単発だと思っていた作品が続編として帰ってきたときのうれしさはハンパないですね。2004年発刊の『犯人に告ぐ』はミリオンセラーにして文春1位、このミス8位、大藪春彦賞受賞、豊川悦史主演で映画化という華麗な経歴で文壇の話題を掻っ攫った作品です。あれから12年、巻島が帰ってきたということで大興奮しながら読みました。
振り込め詐欺事件で警察の摘発を間一髪免れた兄弟とそのリーダー淡野。一線を越えてしまった兄弟たちが次に計画したのは誘拐でありました。和菓子メーカー社長とその子息を誘拐して、身代金を奪取する驚くべき計画。「大日本誘拐団」を名乗り、日本の誘拐ビジネスを定着させようとするその驚くべき内容。
一方、巻島警視は前作の「バッドマン事件」以降、神奈川県警に復帰して刑事特別捜査隊を率いる立場にいる。刑事特別捜査隊とは捜査一課の事案も二課の事案も必要に応じて何でも捜査に加わるいわば遊軍だが、実績を積み重ねることによって現場からも本部長からも信頼が厚い。
この兄弟+淡野と巻島が対決するわけですが、最初の描写が犯人側から始まっていて、しかもこいつの境遇には少し同情してしまうものですから、犯罪者側に肩入れしてしまう自分がいるわけですよ。それを思いとどまらせるのはリーダー淡野の非人間性です。これは読んでのお楽しみということで。
しかし、誘拐というのはそれだけで鬼畜の所業であるというのが日本の社会通念でありまして、誘拐モノの小説も大抵は胸糞悪い展開が多いのですが、本書はこれまでの誘拐事件の不完全性を巧みに突いていて、通信手段の多様化や監視カメラの網羅性、科学捜査の進化などを屁とも思わない新たな犯罪可能性を示唆しているという点において、非常に画期的であると言わざるを得ません。(以下、ほんのりネタバレ)


ストックホルム症候群と振り込め詐欺を足すと誘拐はビジネスになる、という何とも画期的な犯罪。もしかしたらすでにこの手の犯罪は横行しているのかもしれません。
余談ですが、グリ・森事件でグリコの江崎社長が誘拐されました。社長は監禁場所から自力で脱出したという何とも不可解な経緯がありましたので、江崎社長は裏取引に応じたのではないかというまことしやかな噂も流れました。真相は結局藪の中、であります。

雫井センセーの作品のなかでは本書シリーズが一番好きです(といってもシリーズモノを書かないお人でありますが)。ラストは

第3弾があるぞと匂わせているというか明言している

に等しい終わらせ方でありまして、次回作にも大いに期待しましょう。





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posted by 曹源寺 at 17:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月22日

書評698 遠藤武文「狙撃手のオリンピック」

こんにちは、曹源寺です。

先日、タブレットが壊れたので新しいやつに代えましたが、やはりガラケー+タブレットが最強だなあと改めて思いました。

ヨメと娘は庭のiPHONEですが2年縛りが解けるためにショップに行ったら犬に代えろとうるさいわけですよ。見積もりを取ると確かに安い。おまけに家の回線も犬の光にしたらもっと安くなると言うのです。
そんで、庭のサービスに電話してMNPの番号だかなんかを取得しようとしたら、電話で引き止めにかかってきました。これにはちょっとびっくりですよ。犬のお店で契約する寸前でしたから、何をいまさらと。
だったら、なんで最初から割安のプランを提示しないの?
2年経過したら割高になるように仕向けておいて、2年経ったら「安くしますから」とは一体なんでしょうね?
この2年縛りとかいうわけわからん制度、何とかしてや。みんな庭→犬→庭→犬ってやっているんですかね。茸の立場も考えて(ry

あ、それとちょっと衝撃的だったのが、娘は電話もメールもほとんど使っていなくて、友達とのコミュニケーションはほとんどLINEとFacebookとツイッターでした。
しかも、月々5ギガのプランだったのですが、たまに5ギガを超える月があるそうで。おまえ、どんだけ動画観てんの?
これだったら、WiFiルーター買ってタブレットかSIMフリーのスマホでいいんじゃね?と思いましたが、果たして電話そのものを持たないとなると、社会人になったときに何か言われそうですね。


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内容(光文社HPより)
長野オリンピックから18年。今こそ語ろう。あの開会式で何があったのか。
ライフル射撃のオリンピック特別訓練員としてモスクワ五輪をめざしていた長野県警所属の神稲貴之。テルアビブ空港乱射事件の被疑者として逮捕され、釈放後、地元の自動車整備工場に勤め、逼塞した生活を送っている荻窪克己。ふたりの運命は、戦後の混乱期の謎をめぐって、奇妙に交錯し始める──。
平和の象徴オリンピックが始まる日、昭和の闇のひとつが、清算されようとしていた。


曹源寺評価★★★★★
1980年のモスクワオリンピックボイコット事件からはじまり、1998年の長野冬季オリンピックまでの18年を2人の男の視点から描いたミステリです。
一人は長野県警の警察官、神稲貴之。射撃の腕前を買われてライフル射撃のオリンピック候補となるも、モスクワへのボイコットが決まり訓練員から銃器対策部隊へと異動する。
もう一人は学生時代の左翼活動から公安に目をつけられるようになった荻窪克己。公安の監視を常時受けつつも自動車整備工場でつつましく働く日々。それぞれの日常が交錯するようになり、ついに、、、
なんだか分かりやすそうで分かりにくい、でもよく読んでみると興味深い。そんなストーリーです。わかりにくさの一つは時代が少し前後してしまうところと、昭和のあの時代を知らない人にはハードルが高いのかなあと思わせる描写でしょうか。自分は作者と同年代に近いですから、1980年あたりも記憶に刻まれています。
神稲は元警察官の父を持ち、反発しつつもおなじ警察官の道を進んで特別訓練員となりますが、射撃時の偏頭痛が酷くなり、父親への反発もあって部署異動を願い出ます。
一方の荻窪は学生時代に左翼活動でイスラエルのテルアビブに行ってしまったり、過激なグループとのつながりもあって帰国後も公安の監視が付きまとっていました。
この二人の接点となる80年の出来事が、後の長野オリンピックで意外な結末として現れてくるというのが本書のキモであります。二つの異なるストーリーが交錯したとき、何かが、、、って結構ありがちなパターンですね。本書はその接点とか具体的事実とかが

結構あいまいに書かれていますので読み飛ばさないように

しないといけません。
まあ、時代を切り取ることの難しさは承知していますので、本書のような切り口はまた大いに勉強にもなります。そういえば、1960年の東京オリンピックを題材にした『オリンピックの身代金』という奥田英朗センセーの作品もありますが、あちらのほうがノスタルジックな描写が多いので合わせて読んでおきたいですね。





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2016年03月18日

書評697 中山七里「総理にされた男」

こんにちは、曹源寺です。

報道ステーションという怪しい番組に出演していたショーン・マクアードル・川上とかいう怪しいコメンテーターが、経歴から企業業績まですべてを嘘で塗り固めた輩だったことが判明し、番組降板の憂き目に遭いました。
誠にご愁傷様です。
これもまた週刊文春の砲弾ということですから、本当に恐れ入りました。

それにしても、嘘がハンパないレベルだったことに驚きを隠せません。堂々とテレビに出てしまうあたりも理解不能です。
彼の嘘をまとめたものがこちらです。
×アメリカ合衆国出身  ○日本国出身
×11歳の時に日本に渡り、高校卒業まで過ごす ○高校まで日本、米には行っていない
×米テンプル大学卒業    ○高卒
×米ハーバード大学院にてMBA習得 ○オープンコースを3日
×仏パリ大学留学      ○オープンキャンパスで聴講
△経営コンサルタント     ○売れない声優・ナレーター
×米国人親から生まれたハーフ  ○日本人の両親から生まれた日本人
×ショーン・マクアドル     ○川上伸一郎
×世界7ヶ所にコンサル会社   ○渋谷に月3万円でペーパーカンパニー
×ほりの深い異国人顔      ○田吾作面が整形で顔面偽造
×共同経営者にジョン・G氏   ○無関係の別人の写真を流用して存在を偽造

全部嘘ってすごすぎですね。

これが芸人だったらこれほど叩かれることはなかったと思います(叶姉妹みたいな謎の経歴の人がわんさかいますからね)。問題なのは報道番組のコメンテーターという立場だったことにあると思うのです(この際、報道ステーションが『報道番組』かどうかという問題は置いておきましょう)。学歴も職歴も嘘だったということであれば、ニュースに対するコメントもまた嘘ではなかったか、という問題に直面するからです。
ニュースというものはおそらく多面性があって、
ニュースそのものの具体的な解説
ニュースが意味する本質
ニュースの背景にあるもの
ニュースが及ぼす今後の影響
 など
視聴者はこうしたものを知りたいからこそ、報道番組を観るわけです。コメンテーターにもこれらのことを話してほしいのです。
政治、経済、社会、スポーツなどさまざまなジャンルがありますから、すべてを精通している人などいませんし視聴者も求めてはいません。しかし、コメンテーターのほとんどがこれらのジャンルのひとつでも通じていて、その道のプロとしての解説に期待するからこそ、その番組を受け入れているのではないかと思います。
ですから、このショーンKについてはコメンテーターの資格がないのに顔と声だけでその席に居座っていたということになります。叩かれて当然です。

でも、そのうちほとぼりが冷めたらサンデージャポンに出てくると思います。芸人枠として。
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内容(NHK出版HPより)
人気作家・中山七里が描く ポリティカル・エンターテインメント小説!
売れない舞台役者・加納慎策は、内閣総理大臣・真垣統一郎に瓜二つの容姿とそ精緻なものまね芸で、ファンの間やネット上で密かに話題を集めていた。ある日、官房長官・樽見正純から秘密裏に呼び出された慎策は「国家の大事」を告げられ、 総理の“替え玉”の密命を受ける 。慎策は得意のものまね芸で欺きつつ、 役者の才能を発揮して演説で周囲を圧倒・魅了する 。だが、直面する現実は、政治や経済の重要課題とは別次元で繰り広げられる派閥抗争や野党との駆け引き、官僚との軋轢ばかり。政治に無関心だった慎策も、 国民の切実な願いを置き去りにした不条理な状況にショックを受ける。義憤に駆られた慎策はその純粋で実直な思いを形にするため、国民の声を代弁すべく、演説で政治家たちの心を動かそうと挑み始める。そして襲いかる最悪の未曽有の事態に、慎策の声は皆の心に響くのか――。
予測不能な圧巻の展開と、読後の爽快感がたまらない、魅力満載の一冊。


曹源寺評価★★★★★
さまざまなジャンルで活躍中の中山七里センセーですが、今度は政治の世界にも挑戦されました。総理大臣が入れ替わるという設定では、先日ドラマ化された池井戸潤センセーの「民王(たみおう)」が記憶に新しいところではありますが、あれは総理親子の中身が入れ替わるといういささかオカルト的なお話です。本書は売れない役者と入れ替わるという設定ですからリアリティが違います(ホントか?)。
しかし、それ以上に本書は現実社会と向き合ってリアリティを追求しているような側面が数多く見受けられます。与党、国民党と野党の民生党という構図だけでなく、3年前まで民生党が与党であったこと、その3年間がいかに杜撰な政治であったか、について訥々と述べられていること、内閣人事局の設置に関する政治家と官僚との駆け引き、テロリストとの戦いで自衛隊を向かわせることの賛否、政治決断の際にはしっかりと法的な根拠を加筆して読者にわかりやすく説明していること、などなど、よく取材してよく勉強しているからこそここまで書けるのだなあと感心しきりです。
役者ならではの演技力をもって総理大臣の替え玉を演じきる主人公の加納慎策は、目の前にある課題をしっかりとこなすタイプとして書かれていますが、そんなに優秀な役者なら

もっと売れていてもおかしくはないですなぁ。


慎策は総理のものまねで少し売れ出したところ半ば拉致されるかたちで首相の代役を勤める、という設定なんですが、それだけならまだしも知り合いに大学の准教授がいたり、政治のことはまったく素人というわりにはアドリブで出てくるセリフがとても政治家チックだったりするのはご都合主義ご愛嬌ですね。
内容的にはスピーディかつシンプルで疾走感溢れる読み物に仕上がっていて非常に面白かったです。リアルな日本の政治と比較するともっと面白いですね。青臭い情熱を吐き出しながらも弁舌巧みな首相とそれを支えるキレ者の官房長官、腹黒くも情に篤い最大派閥の長、想定の範囲を超えない野党党首の質問の愚、批判することこそが自分たちの使命と勘違いしているマスコミ、などなど、

もしかしたら中山センセーはネトウヨなんじゃないのか

と思わせるような記述もたくさんあって、ちょっと笑えました。





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2016年03月15日

書評696 木内一裕「不愉快犯」

こんにちは、曹源寺です。

週刊文春の度重なるスクープで、多くの屍があちこちに転がる惨状となっております。今月は読売巨人軍というこれまた大物が賭博事件がらみで大賑わいですね。
系列の日本テレビではこの巨人軍の報道がかなり控えめですが、他局はそこそこ報じています。こうなりゃ読売vs産経で大いに戦っていただきたいと思います。
それにしてもクロスメディアの弊害、本当にひどいものです。欧米では禁止されているこのマスメディアのグループ化は、日本でもきちんと法制化して強制的に解体してしまったほうが国益に適うと思います。

その日本テレビは一昨日の報道で、安倍首相の発言を捻じ曲げたとして多くのクレームが寄せられることとなりました。

安倍晋三首相の発言に関する字幕に誤り 日本テレビが謝罪(3/14 Livedoor NEWS)

13日、「GOing! Sports&News」 (日本テレビ系)で、同日放送の「NNNストレイトニュース」内において安倍晋三首相の発言に誤った字幕スーパーをつけたとして謝罪した
「NNNストレイトニュース」では、この日開催された第83回自由民主党大会の模様が、現地からのレポートも交えて伝えられた。VTRでの安倍首相の発言は、「選挙のためだったら何でもする!誰とでも組む! こんな無責任な勢力にわたしたちは負けるわけにはいかないんです!」というものだった。
続けて安倍首相は「今年の戦いは政治に国民に、責任を持つ。自民党・公明党連立政権対、こうした民主党・共産党、民共との勢力との戦いになります」とも述べており、先の発言は「選挙のためだったら誰とでも組む政党」を批判したものとみられる。
ところがこのとき、画面右上のテロップでは「安倍首相“選挙のためだったら何でもする”」と表示され、あたかも安倍首相が「選挙のためだったら何でもする」と意思表示したかのようにとれる内容となっていた。

(以下、略)

これって普通に捏造です。かつてはTBSにおいても石原慎太郎東京都知事(当時)の韓国併合に関する発言が捻じ曲げられた過去があります(石原発言捏造テロップ事件)。TBSではプロデューサーが訴えられ、後に和解が成立していますが、12年前と全く変わっていない、自浄作用が働いていないことが示されたことになります。
高市総務相の「停波発言」に反発したジャーナリスト諸君は、この件についてもきちんとコメントするべきですね。

内容(講談社HPより)
著名なミステリー作家、成宮彰一郎の妻、瑠璃子が行方不明となった。事件性が高いと見た三鷹警察署の新米刑事ノボルは、先輩刑事の佐藤とともに、捜査を開始。次々に容疑者候補が浮かぶが、その過程で警視庁本部の組対四課や捜査一課も事件に関与してくる。
「どうせなら死んじゃっててくんないかなぁ……」
不愉快な言動を繰り返す夫・成宮の真意は――。
完全犯罪を「完全」に描いた、前代未聞の傑作ミステリー。


曹源寺評価★★★★
「藁の盾」でデビューした木内センセーですが、実は初読です。センセーはもともと「きうちかずひろ」として漫画原作者、映画監督なと幅広くご活躍で、小説デビューは2004年だそうです。あの「ビーバップハイスクール」の原作者としてのほうが著名ですね。
そんな木内センセーの警察小説です。警察小説ですが、ある意味倒叙型小説でもあり、ミステリでもあります。
裁判の「一事不再理」の原則を逆手に取った犯罪。ミステリ作家の成宮彰一郎の「不愉快」な言動の意味するところは一体何か。タイトルの通り、非常に不愉快な容疑者が登場します。警察に挑戦状を叩きつけ、検察と裁判所にも高笑いする容疑者を新人刑事が追い詰めていくという、なかなかにドラマな展開を見せてくれます。
一事不再理とは、一度裁判にて判決を確定させた事件については、再び裁判を行ってはいけないという原理原則でありまして、これを逆手に取ると、一度ロジックが破綻してしまえば同じ事件で刑事裁判をやり直すことができなくなるわけで、裁判中に新たな証拠が見つかったり、検察の論理構成に綻びが見られたりすると、大抵は不起訴か公訴自体棄却となるわけです。本書では容疑者が(以下、多少のネタバレ)



公訴棄却ではなく、あえて無罪判決を欲して審理続行したうえで正式に無罪となります。なるほど、

これにて完全犯罪の成立、です。

一度無罪になってしまえば、それはそれで完全犯罪ということになります。理屈としてはその通り、よくできていますね。この不愉快な容疑者(本当にむかつきます)を最後は警察が追い詰めていくわけですが、ラストの展開はやや強引かなと思いつつ、実は見事はロジックを組み立てていることがわかります。これをていねいに組み立てた木内センセーの筆力には頭が下がります。

本書はセリフ回しが多く、すらすら読めてしまうのですが、個人的にはもうちょと骨太な内容でも良かったのではないかと思いました。
あの大御所、横山秀夫センセーは時効の壁に挑んだ「第三の時効」という隠れたヒット作品を世に出しておられます。一事不再理の壁を破る本書も、書き様によっては名作となったのではないかと思ってしまうのですが、どうなんでしょう。





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2016年03月11日

書評695 梶永正史「警視庁捜査二課・郷間彩香 ガバナンスの死角」

こんにちは、曹源寺です。

5年前のあの日もこんな天気でしたね。東京は曇り空。東北は少し雪がちらついていました。
東京は交通機関がマヒし、やむなく徒歩で2時間半かけて帰りました。あとで周囲からは2時間半なんて早いほうだと言われました。娘は卒業遠足と称して鼠の国にいたので、帰りが明け方になりました。
5年て早いですね。あれからケータイをスマホに代えて、SNSでコミュニケーションを増やしました(いまはスマホからタブレットに進化)。通勤カバンはリュックタイプにして、革靴はアシックス製の歩きやすいものにして、電池と充電器、サバイバルキットを持ち歩くようになりました。オフィスの机にはチョコレートを常備しています。



東京に住む人間としては、映像の中だけでしか体験していない人のほうが圧倒的に多いわけですが、それでも強烈な体験だったと思います。人によっては人生観を変えたきっかけになったのかもしれません。自分もあの流れていく家と車を見て、なんという諸行無常だろうと思いました。1,000万円の車だってあっという間に流されて鉄クズになるという無力感というか価値観の転換みたいなものが何となく芽生えたわけです。もしかしたら、いま流行のミニマリストって、大自然の脅威を前になす術もなくなった人たちから生まれた思想だったりするんですかね。余計なものは持たなくても生活できるし、持ってもいつかは失うのだと悟ってしまったのかもしれません。
シンプルに生活することは良いと思います。さて、少し家の中を片付けますかね。
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内容(宝島社HPより)
アラサー女性刑事“電卓女”が追うのは、十万円の横領事件――だったはずが!?
33歳、独身、彼氏なし。金の流れを追い、捜査対象を数字で追いつめる
捜査二課の女性刑事――親の敵のように電卓を叩きまくる“電卓女”こと郷間彩香が、思いもよらぬ形で大型贈収賄事件に迫っていく!
『このミステリーがすごい!』大賞受賞作「郷間彩香」シリーズ、待望の続編が登場!捜査二課特殊知能犯罪係主任を拝命した彩香だったが、班員をまとめきれずに空回り気味。二課では課をあげて、業界大手の商社・亜秀商事の贈収賄事件を追っているが、新設されたばかりの郷間班は担当させてもらえない。「事件に大きいも小さいもない」と息巻く彩香は、亜秀商事の役員・峯の十数万円の横領容疑を追いはじめるが、峯と関係していた新田という男が何者かに殺され、大型贈収賄事件の末端をつかんでいくことになる――。


曹源寺評価★★★★
紹介文にもあるとおり、このミス大賞受賞作「真相を暴くための面倒な手続き」が書籍化された時点で「捜査二課 郷間彩香」となり、本書をもってシリーズ化されました。警視庁の捜査二課を舞台に、電卓を叩きまくる女刑事が主人公となって経済事件を解決していくというなかなかに異色な作品ですが、主人公と脇役のベテラン刑事のやりとりが面白く、郷間の心の声が女の本心をコミカルにえぐっています。このあたりは誉田哲也センセーの「姫川玲子シリーズ」初期作品に似ていなくもありません。
大手商社の贈収賄事件の横で、たった十数万円の横領を追う郷間班。実は事件の本丸に迫る重大な事実を掴むことになるというストーリーですが、なんともドラマティックですね。
捜査二課という地味な部署を長編で書くというのはかなり大変で、大抵は経済事件にとどまらなくなって殺人やら公安ネタやらに飛び火してしまいがちです。本書も同様に殺人事件が勃発しますので「またか」との思いもありました。しかし、本筋を見失うことなく捜査二課としての仕事を全うしていく展開は

ようがんばったでぇ

と思います。そのうえで、警視庁と神奈川県警の確執や、捜査二課と東京地検特捜部の縄張り争いといった定番の味付けも忘れてはいません。
警察小説としての出来栄えはまずまずと言って良いだろうと思います。
でも、タイトルは最初のほうが良いですね。なんでもかんでも警察の部署名を入れれば読者は食いつくだろうと思ったら大間違いです

といいながら食いついたのは自分ですorz





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2016年03月08日

書評694 八木圭一「警察庁最重要案件指定 靖國爆破を阻止せよ−」

こんにちは、曹源寺です。

プロ野球では先日、平成の三冠王こと松中信彦選手が現役引退を発表しました。現役続行をアピールしたものの、どこからもオファーはなく、かといってトライアウトを受けるわけでもなく、どこにも行き場がなくて止む無く引退という何とも見苦しい最後となってしまいました。今後は指導者を目指すとのことですが、現役時代の高飛車な態度や大事な日本シリーズで監督に逆らった態度などが厳しく糾弾されているため、国内球団からコーチのオファーが来る可能性は低そうですね。
一方、サッカー女子「なでしこ」日本代表ですが、リオ五輪出場をのがしてしまったため佐々木監督の進退が問われています。選手と監督の間には少し前から溝が生じていたとの報道もありますので、おそらくは選手の中心にいた澤選手が引退したことで人間関係にも何らかのひびが生じていたのではないかと思います。
一世を風靡した監督や選手が「勇退」というかたちで一線を退くことはなかなかに難しいことであると考えさせられますね。「男は引き際が肝腎」などと言いますが、ではその引き際とはいつなのか。広島の黒田投手は引退したほうが良いのか(まったくそうは思いませんが)。清原はどこでタイミングを失ったのか。答えは簡単には出せませんが、スポーツの世界だけではなく会社経営についても同じことが言えそうです。
シャー○と○芝の経営陣だけではなく、東京○力、ソ○ー、フジ○レビ、などなど、ピーク時からの業績下降が著しい企業の中においても権力にしがみついている人たちがいっぱいいるわけです。そうした企業はもはや「死に体」と呼んでも差し支えないでしょう。スポーツ選手は自身の評価を下げるだけで自業自得なわけですが、経営陣となるとそうはいきません。従業員の生活がかかっていますから、本当ならとっとと追い出したい人たちもいっぱいいるのではないかと思います。たまに株主総会などで社長解任動議を提案する個人株主がいたりしますが、そんな時も従業員はスムーズな議事進行に協力しなければならない立場から(株主でもないので)経営陣を守る側に立たざるを得ないわけです。なんか、たまにはちょっとしたクーデターみたいな社長引きずり降ろしの現場でも見てみたいものです。不謹慎ですかね。


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内容(宝島社HPより)
要求を呑まなければ本殿を爆破する―――
靖國神社に届いた爆破予告。
この国を守るため公安警察は爆破を阻止しようと奔走する。
靖國神社にドローンが落ちた。犯行声明に記された犯人の要求は〈A級戦犯の分祀〉〈竹島と尖閣諸島の領有権の放棄〉〈慰安婦と徴用工への賠償金の支払い〉の三つで、日本政府が応じなければ靖國の本殿を爆破するという。犯行は反日団体の手によるものか。未曾有の事態に世情は混乱、ネットは炎上し、日韓関係は一触即発の危機に。公安警察は犯行グループへの関与が疑われる重要参考人として、対馬出身の大学生・清水に目をつけるが――。国の在り方、個の在り方を問う傑作サスペンス!


曹源寺評価★★★★★
このミス出身者で売れっ子作家になった人といえば、真っ先に思い浮かぶのが「チーム・バチスタ」シリーズで有名になった海堂尊センセーですが、そのほかにも先日紹介した「孤狼の血」の柚月裕子センセー、「岬洋介シリーズ」「御子柴礼司シリーズ」など著作発表が相次ぐ中山七里センセーなどが有名です。
本書の八木圭一センセーもまたこのミス出身者ですが、デビュー作の「一千兆円の身代金」がTVドラマ化されるなど注目を浴びている一人であります。
時流に乗ったテーマを採り上げては警察小説に仕立て上げるという手法で話題をさらうわけですが、これは毀誉褒貶ありそうですね。特にポリティカルな話題だと賛否両論入り乱れそうです。
個人的にはこれはアリだと思います。靖國神社爆破なんて物騒なテーマでしかないのですが、ストーリーはまあ無難な落としどころに納めた印象です(これだけでもう半分ネタバレですね)。
純朴な大学生がテロリストの仕掛けた罠に陥ってしまうあたりはかなりのリアリティをもって描写されていますので、

おバカな大学生はこれを読んで勉強して欲しいくらいです(笑

この手の経験の浅い作家センセーにありがちな、「読ませる箇所とだらける箇所の混在」は致し方ないとしても、人物描写はもう少し気を配っていただけるとなお読みやすいのではないかと思います。公安警察はどうしてもハードボイルドになってしまいますが、逆にハードに書けない場合は刑事警察風味になってしまいがちです。本書もまたこの辺の書き分けが難しいところですが、公安モノとしてはやはり物足りなさが残ってしまいました。





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2016年03月04日

書評693 若竹七海「さよならの手口」

こんにちは、曹源寺です。

タブレット端末が壊れて3週間、不便な日々が続きましたが、ようやくリカバリーしました。LTEカードの再発行と端末の買い替えで対応したので思わぬ出費です。
でも、MVNOの格安LTEでタブレットを動かして、電話はガラケーのまま、というスタイルはもしかしたら最強なのではないかと思っています。
両方合計しても月々5,000円かかりませんし、MNPではないのでキャリアのメアドを変更する必要もありません。スマホの小さな画面でインターネットを駆使しても見づらいだけで、タブレットのほうが老眼の自分には良く見えます。
ゲーム動画をバンバン見るわけではないので通信速度も気になりません。もうこのスタイルからは戻れなさそうです。

ただ、今回のタブレットは8インチなので前回の7インチよりもちょっとだけ持ちにくいです。

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内容(文藝春秋HPより)
仕事はできるが運の悪い女探偵・葉村晶が帰ってきた!
探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優に二十年前に家出した娘探しを依頼される。当時娘を調査した探偵は失踪していた――。


曹源寺評価★★★★
探偵葉村晶シリーズの最新刊ということで待ち望んでいた人が多かったみたいです。それにしても「悪いうさぎ」以来13年ぶりというのはある意味読者を裏切っていると言っても良いのではないかと思いますが、シリーズが10年くらい空くのはもう当たり前の時代になっているんですかね。それにしても13年ぶりの書き下ろしが文庫だなんて、

文春もえげつないことしますわ

さて本書は、一度は探偵を辞めて書店アルバイトとして働く最中に、ひょんなことから探偵を引き受ける羽目になった主人公葉村のドタバタと活躍を描いた作品です。とひとくちに言っても、単なる失踪人探しではなく、20年前の失踪人であり、当時の探偵も失踪していたことから話は大きく振れ始めます。さらに、シェアハウスに同居することになった相手を警察が監視していたこと、その警察から監視の協力を依頼されること、失踪の鍵を握る人物が見つかってからのゴタゴタ、、、

もうなんだか盛りだくさんでおなかいっぱいです

よくもまあこんなに詰め込んでストーリーが破綻しないなあ、と素直に感心します。全部回収していますからね、これ。サブストーリーだけでも別に一本くらい書けそうです。
それに、前作を読んでいなくてもついていけないことはありません。主人公の運のよさ(というか悪さ)にも楽しめるし、強いわけでも超能力があるわけでもないのにズバリ核心に突き進んでいく行動力と、物事の真理を見極める頭のよさを感じることができる台詞回しなどは若竹センセーならではの味なのかもしれません。
ですから、よくよく考えると本書はすごくよくできているなあと思います。





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posted by 曹源寺 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月01日

書評692 今野敏「寮生 −一九七一年、函館。−」

こんにちは、曹源寺です。

昨日は民放キャスターが集まって記者会見を開いたという記事がありました。
電波停止発言「驚きと怒り」=民放キャスターが会見(時事通信2/29)
民放テレビキャスターの鳥越俊太郎氏、岸井成格氏らが29日、東京都内で記者会見し、放送局への停波命令の可能性に触れた高市早苗総務相の発言について「表現の自由を保障する憲法や放送法の精神に反する。私たちは驚き、怒っている」と非難する声明を発表した。
鳥越氏は「安倍政権のメディアに対する姿勢が現れた。ある種のどう喝だ」と懸念を示した。停波の根拠とされた放送法の「政治的に公平であること」との条文について、岸井氏は「ジャーナリズムは権力の暴走を止めなければならない。それが政治的公平・公正だ」と訴えた。(2016/02/29-18:14)


高市発言は今も尾を引いています、というよりなんとか火種にしたくてしょうがないマスゴミの動きが露骨、と言ったほうが良いかもしれません。でもツッコミどころが多すぎるので少し整理したいと思います。
・そもそも高市総務相は法律の条文どおりに運用するという趣旨の発言をしただけ
・民主党政権時代も総務副大臣が同じ答弁をしている
・ある民主党議員は「電波止めるぞ」という恫喝発言を過去にしているがマスゴミはスルー
・放送法の精神に反するというが、放送法が倫理規範であるとするのはマスゴミの勝手な解釈
・放送法の精神に反するというが、条文自体が放送法の精神に反していることになり自己矛盾
・そもそも電波は国民のものである←これはその通り。だからマスゴミの勝手にはできない
・電波利用に関しては完全な参入規制を(総務省とタッグして)設けておいて何言ってんの
・国民の代表である議員が電波を管理できるという理屈に関してはコメントできていない
・政治的に公平であること、に関しても独自の解釈すぎて意味不明ナンジャコリャ
・電波云々言うなら、電波オークションとかクロスメディアの廃止とか主張されても文句言うな


すげえ、ここまで身勝手な理屈を振りかざして平気な面をしている人たちってすげえ。

閑話休題
さて、これもマスゴミ関連ですが、先週22日のことです。AP通信の女性記者がツイートした内容が波紋を呼びました。
「私たち記者は正義。がんばる」というツイートがそれなんですが、記者=正義という構図が全く理解できないというリツイートで溢れかえってしまいました。
正義の反対は別の正義、というのが昨今の常識でありまして、この世の中には悪というものは存在しない。したがって、絶対正義というものも存在しないわけです。ですから、この記者はスタート地点から間違っているんですね。
しかし、もしかしたらですが、記者という職業の多くはこれと同じような思想を持っているのではないかと思ってしまいました。自分たちのやっていることは常に正しいという思想。客観的な報道を心がけましょうと表では言いながら、その裏では「正義は俺たちにある」とする態度。これを世間では選民思想と言います。選民思想が生み出すものは差別でしかありません。新聞や通信社が自己を客観的に見つめることができなくなっている人たちで溢れかえる業界だとしたら、これほど恐ろしいことはありませんね。裏を返せば、「自分たちは正義→おまえらは悪」と言っているのと同義ですから。
ジャーナリズムに正義はいらないんですよ。必要なのは事実と正確性、それと最近では速報性といったところでしょうか。そのニュースをどう受け止めるかは個人の裁量に任せてもらえませんかね。
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内容(集英社HPより)
舞台は1971年、函館。有名進学男子校の寮で起きた上級生の転落死事件。事故か自殺か殺人か…1年生探偵団が謎を解く! 70年代、寮生活、恋愛、音楽…今野敏が初めて挑む、青春学園ミステリー!


曹源寺評価★★★★★
今野敏センセーがはじめてチャレンジした青春小説!ということで、興味深く読ませていただきました。
函館の高校を舞台にした作品です。今野センセーは函館ラ・サール高校から上智大学へ進学されていますので、本書は間違いなく自身の体験を元に創作された作品でしょう。といっても、函館ラ・サールという名前が出てくるわけではありません。なぜか遺愛女子高校は実名で出てきますが(笑
高校に入学し学生寮に入寮した主人公は入ったその4月に2年生が寮の屋上から落ちて死亡するという事故が発生する。警察は1ヵ月かけて自殺と断定するが、納得のいかない1年生4人が事件の謎に挑み、、、というストーリーです。
青春ミステリと銘打ってはいますが、あまりミステリ色はなくて青春小説の色合いが強いですね。1971年4月って、自分はまだ幼稚園にも行っていませんが、本編にも出てくる尾崎紀世彦の「また逢う日まで」や南沙織の「17才」は余裕で知っています。携帯電話もインターネットもない時代の学生生活、受験、恋愛などなど今野敏センセーと同世代の方は、そして特に北海道出身の方はおそらくグッとくるものがあるのではないかと思います。
ただ、ストーリーは陳腐です。大きなピンチを迎えるわけでもどんでん返しがあるわけでもありません。普通の人でも2時間かからずに読みきってしまうのではないかと思います。

ただただあの時代の空気を感じたい

という人向けの本でしょう。





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posted by 曹源寺 at 13:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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