ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

過去ログページ

2016年12月30日

書評770 柴田哲孝「Mの暗号」

こんにちは、曹源寺です。

今年の更新はこれが最後です。
来年もよろしくお願いいたします。

今年一年を振り返れば、あっという間に過ぎてしまったのはいつものことですが、
       iイ彡 _=三三三f           ヽ
        !イ 彡彡´_ -_=={    二三三ニニニニヽ
       fイ 彡彡ィ 彡イ/    ィ_‐- 、   ̄ ̄ ヽ     し  ま
       f彡イ彡彡ィ/     f _ ̄ ヾユ  fヱ‐ォ     て  る
       f/ミヽ======<|-'いシ lr=〈fラ/ !フ    い  で
       イイレ、´彡f        ヽ 二 _rソ  弋_ { .リ    な  成
       fノ /) 彡!               ィ     ノ ̄l      .い   長
       トヾ__ら 'イf     u    /_ヽ,,テtt,仏  !     :
       |l|ヽ ー  '/          rfイf〃イ川トリ /      .:
       r!lト、{'ー‐    ヽ      ´    ヾミ、  /       :
      / \ゞ    ヽ   ヽ               ヽ /
      ./    \    \   ヽ          /
   /〈     \                 ノ
-‐ ´ ヽ ヽ       \\     \        人
成長しなかったなあ、という感想しかありません。

来年はもうちょっと進歩したいです。具体的なことはこれから考えるとして。

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内容(祥伝社HPより)
戦中戦後に消えた莫大な資産。
遺(のこ)された暗号。
闇に蠢(うごめ)くのは、GHQ、日銀、日本金銀運営会、亜細亜(アジア)産業、そしてフリーメイソン――
30兆円の金塊。
『下山事件 最後の証言』で読書界の度肝(どぎも)を抜いた著者が放つ興奮の痛快ミステリー!!
解読せよ。真実はそこにある――
東京大学で特任教授を務める歴史作家・浅野迦羅守(あさのがらむ)を訪ねてきた美女・小笠原伊万里(おがさわらいまり)。何者かに殺害された彼女の父が、祖父から預かっていた謎の地図と暗号文を解読してほしいと言う。彼女の祖父が戦後史の闇に君臨した亜細亜(アジア)産業とGHQ、そしてフリーメイソンに繋(つな)がる人物だったことが判明した時、戦時中“金属類回収令”によって集められ、消えた膨大な金塊の存在が浮上した! 迦羅守は数学の天才“ギャンブラー”と元CIAのエージェント南部正宗(なんぶまさむね)の協力を得て、その行方を追うが……。

曹源寺評価★★★★
柴田センセーのノンフィクションとフィクションの混じった小説としては、「GEQ」や「下山事件 暗殺者たちの夏」などがあります。いわゆる謀略もの系の作品がこれに当たります。何と言っても「下山事件 最後の証言」がノンフィクションとしては圧倒的なインパクトを持っていますので、これに倣った作品は読者からしてみれば

「あぁ、これはノンフィクションとして書くにはあまりにもヤバすぎるからこうやって小説仕立てにしたのだろう」

と推察してしまうレベルで認識されてしまっているわけです。
本書は戦後の詐欺事件の舞台としてあまりにも有名である「M資金」について、今もどこかで眠り続けている埋蔵金を探り当てていくというミステリであります。
主人公の浅野迦羅守が暗号を解読していくさまはなかなかにスリルある展開ですが、解読するとそこからは一直線ですので話の展開もまたストレートであります。ここに殺人事件と警察(武蔵野署の舟木警部)が加わり、事件を追う者、追われる者、捜査する者という構図ができあがっていきますので、単純なストーリーではないというのがGOODです。
さらに、下山事件とか亜細亜産業とかライカビルといったセンセーお得意のジャンルも散りばめられていますので、ファンにはたまらない作品でしょう。逆に言うと、亜細亜産業って何?というレベルの方にはお勧めできませんが(そういう方は「下山事件 最後の証言」を読んでいただくしかないでしょう)。
それにしても、こんだけ面白いのに最後の方はやや辻褄あわせのようになってしまったのは残念です。何かを置き去りにしているようにも思います(あぁ、小笠原伊万里とアレックス・マエダのつながりが言及されていないねえ!)。そして、それ以上に(ネタバレ)

敵がショボい

というのは果たしてどうなんでしょうか。あれだけ不気味な前フリをしておいて、ラストではどうにも自業自得な姿。。。まあ、敵との戦いが本筋ではないのでいいんですけどね。
そして最後の最後に続編があるように示唆しておく、、、これもまたありがちですが、このテーマでやりますか!?まあ、それぞれのキャラクターが際立っているので続編出たら絶対に読みますけどね。

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2016年12月27日

書評769 深木章子「猫には推理がよく似合う」

こんにちは、曹源寺です。

先日のブログでは、あの池上彰(呼び捨て)がグラフの印象操作をして視聴者を騙したと書きましたが、今度は経済産業省の統計そのものが改ざんされていたとして記事になりました。

経産省、繊維統計を改ざん 請負業者が告発 回答数を水増し、年内に廃止へ (2016/12/26 日経)

経済産業省は26日、繊維製品の在庫量などを調べる「繊維流通統計調査」で長年、実態と異なる数値を記載していたと発表した。40超の品目ほぼ全てで改ざんがみられ、10年以上前の数値がそのまま記載され続け、実際の数値と最大で10倍程度の差が生じた例もある。11月に経産省から業務を請け負う業者の告発があり、不正が発覚した。
同統計は1953年から実施しているが、同省は不正発覚を受け年内で廃止する。政府は統計の精度を高める取り組みを進めているが、同省の対応はあまりにずさん。経産省によると、繊維業の所管部署が調査の回答企業数を水増しし、2016年9月分は有効回答数258社に対し、調査票を配った733社の95%以上が回答したことにしていた。
各項目の数値も調査票が十分回収できていた当時の数値を“横置き”してそのまま使い続けていた。不正開始時期は不明だが、経産省が発足した01年当時の数値のままだった項目もある。
13年4月には、回答が全く得られない項目などで6年かけて数値をゼロに減らすと担当部署で決定。事実を公表せずに修正をしようとしたことになる。同日会見した風木淳参事官は「事態を深刻に受け止めている。事実確認を徹底し、内規に従い早急に関係者を処分する」とした。

(以上)

これを受けて、経済産業省も当該のページで改ざんがあったことを認めています(リンク)。

繊維流通統計は繊維卸の企業に対して繊維製品の在庫量などを調査しているもので、これとは別に製造業者に調査を行っている「生産動態統計」がありますので、比較してみると面白そうですね。どれだけ改ざんがあったのかが分かるかもしれません。

それにしても、政府統計がこんな具合だと、我々は何を根拠にして比較分析すれば良いのかが分からなくなってしまいます。政府統計の改ざんは世に与える影響がでか過ぎますので、当事者は厳罰に処して欲しいと思います。
また、これとは別に、もう調査してもあまり意味のない統計なども見受けられますので、そんなのはとっとと廃止して欲しいです。それと、厚生労働省、農林水産省の統計は発表が遅すぎです。こんだけITが発達しているのになんでこんなに遅いの?というくらい遅いです。普通の人なら役人ってバカなの?と思うレベルです。

先日来、河野太郎議員が自身のブログでさまざまな団体に向けて興味深い感想を述べておられます。河野議員は個人的に好きな方ではありませんが、このメッセージは共感できるというか、ちょっと驚くレベルです。
たとえば、12月23日の「いろいろイロハな皆様へ」というタイトルの書き込みでは、日本年金機構の運営する年金事務所において、ペーパーのファイル管理がアイウエオ順ではなくイロハ順であるところが全体の半分以上あるという衝撃的な暴露がなされています。

役人体質の本領を垣間見た気がしますが、同時に、本当に頭の良い人が公務員になることによる“損失”は計り知れないなあとも思います。自分は公務員にならなくて本当に良かったと今でも思っていますが、世の中的には安定の職場として公務員がもてはやされているのも事実です。
自分はこんなイロハ順のファイル管理を後生大事に続けているような職場は真っ平ごめんですし、これに盲目的に従っている本来なら頭の良い人たちがバカな運用を続けていることにもちょっと憤慨したりします。

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内容(KADOKAWA HPより)
“しゃべる猫”との妄想推理合戦がなぜか現実に!? 猫×本格ミステリ!


曹源寺評価★★★★
2016年の「このミス」で20位に食い込んだのが本書であります。
それにしてもWADOKAWAの紹介が相変わらず雑すぎて草生えるwwwこれだけかよw
深木センセーは現役の弁護士センセーでいらっしゃいますので、かなりリアルな被弁活動の現場を描写していただける貴重な作品が多いです。ただ、それだけにドロドロとした作品が多いのも事実であります。
本書はご多聞に漏れず弁護士事務所が舞台ですが、いきなり猫がしゃべりだすのでこれまでの路線とはかなり異なる内容かと期待させてくれます。
田沼清吉法律事務所に勤務する椿花織は田沼の愛猫であるひょう吉とともに、日中を事務所の中で過ごしている。法律事務所に相談に訪れる人は多種多様で、離婚相談、遺産相続、傷害事件と示談、横領事件、などなどで、半ば隠居状態のおじいちゃん弁護士であってもそれなりに多忙な日々である。このひょう吉が花織と人間の言語で会話します。花織はひょう吉と呼ばずにスコティーという名前をつけます。スコティーはミステリを書く(!)わけですが、その構成にあたって花織と論争していくのが前半のストーリーです。

なんだか話が進んでいるのか進んでいないのか

よくわからんところに突発的に事件は発生します。
後半はこのよくわからん前半部分を解き明かしていく展開になっていて、少しずつですが霧が晴れていくのがとても楽しいです。
こういう仕立て方があるのか、とちょっと驚いたわけですが、前半と後半でがらりとその展開を変えていく手法は本格ミステリの世界ではしばしば見受けられますね。自分は専らジャンルが先鋭化してしまいましたので、なんだかとても久しぶりでした。
読後感も良いですし、猫が好きならなおさら読むべし! ですね。





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2016年12月20日

書評768 川瀬七緒「潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官」

こんにちは、曹源寺です。

先日フジテレビで放送された「池上彰緊急スペシャル」において、露骨な印象操作が行われたとしてネットで炎上している話題がありました。
画像】 池上彰が「日本の格差の深刻さ」で使用したグラフが酷すぎる話題に(痛いニュースより)
ikegami.jpg
「縦軸がね…」
「目盛り壊れちゃう〜」
「こんなことしだしたら終わりやね 」
「目盛りがガバガバじゃねぇかお前んグラフゥ! 」
「縦軸合わせたら日本もちょっと下がってるくらいやんけ」
「こんなことして恥ずかしくないのか池上」
「これ流石にやばない? 」
「これBPOやろ」
「ガイジグラフかな」
「ひどいな、こんなひどい内容でドヤってんのかこいつ」
「アメリカの格差に比べたら日本の格差なんてカワイイもんやな」

(以下略)

縦軸と横軸を見比べれば一目瞭然ですが、このグラフ、以前から指摘しているとおりのやり方ですね。これ、捏造と言って良いのか、あるいは印象操作という言い方しかできないのか、良く考えてみたいところです。

ただ、ひとつ言えるのは、池上彰(もう呼び捨て)が言うところの「アメリカが横ばいで、日本はアメリカよりひどい」というのは間違いなく嘘であるということですね。つまり、嘘をつきたくて印象操作しましたよ、と言っているに等しいわけです。
この番組を観た人のうち、何割の人が騙されて、何割の人がこの嘘を見抜いたのか。ぜひとも知りたいところです。でも、おそらくはまだ「あの池上彰が印象操作などするはずがない!」と思っている人も多いのではないでしょうか。もう、彼のことは色眼鏡でしか見ることができませんね。

しかも、このデータ2010年までしかないし。一体、6年前のデータに何を語らせようとしているのか。使えないデータで嘘を吐く。こういうことをしているからテレビが信用できなくなっているわけなんですが、当事者はまだそのことを理解していないということが良くわかる事例でした。

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内容(講談社HPより)
伊豆諸島の「神の出島」でミイラ化した女性の遺体が発見され、警視庁から岩楯警部補が派遣された。首吊りの痕跡から、解剖医は自殺と断定。死亡推定月日は3ヵ月以上前とされた。第一発見者によれば、島のハスキー犬がミイラを引きずってきたらしい。遅れて島に入った法医昆虫学者・赤堀涼子が、事前に解析した微物と、現場周辺を調べて出した結論は……。


曹源寺評価★★★★★
法医昆虫学捜査官シリーズ、待ちに待った第5弾の発刊です。
このシリーズ、大好きなんですよね〜
見た目がお子様で愛嬌たっぷりの大学准教授、赤堀涼子。堅物だけど赤堀の理解者になってしまった相棒の捜査一課岩楯警部補。このコンビが難事件に挑むこのシリーズは、最初に読んだとき「かなりグロいわ〜でも面白え〜」という感想でしたが、新作を重ねるたびにキャラクター造型と相まって独特の難事件が目白押しとなり、読者にスリルと興奮を与えてくれるようになりました。
死体の蛆虫から死亡推定時刻を割り出し、蛆虫の繁殖具合から事件発生場所を特定する。虫は嘘をつかないという厳然たる事実から科学的に捜査を進めていく。しかもその捜査官が天衣無縫で常人には計り知れないほど怖いもの知らずというこのギャップ。まあ、グロいだけだと読者がドン引きするでしょうから、ちょうど良い味付けになっているのかもしれません。
さて、第5弾となった本書では、東京都の離島である新島のさらに離島である神ノ出島(架空?)を舞台にした事件です。犬がくわえてきた首吊り自殺の死体、他殺とは思いにくいその死体はなぜかミイラ化していた。一体どこで死んだのか、そしてなぜ短時間でミイラ化したのか。赤堀が発見した現場は、、、なんと、、、
ギャーッ!!
今回はウジではなくてアカカミアリでした。ウジじゃなくて安心、でもちょっと物足りない?ヤバイな、

完全に毒されていますわ。

いつもの謎かけから、ストーリーはどんどん発展していきます。話がでかくなっていくいつものパターンではありますが、磨きがかかるグロい死体(変な表現ですが)と、きちんと回収するストーリーと、いつものキャラクターがそれぞれいい味を出しながら活躍していく様は、もう素晴らしいの一言ですね。

もはや「新宿鮫」シリーズくらいの安定っぷりです。

このシリーズにファンが相当数いらっしゃるのもうれしい限りです。映像化なんぞに期待はしておりません(というか誰もできないでしょうこの赤堀役は)ので、コアなファン層がじわじわと広がっていけばそれだけで十分満足です。





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2016年12月16日

書評767 今野敏「真贋」

こんにちは、曹源寺です。

統合型リゾート施設整備推進法案が15日の未明に衆議院を通過しました。この法案、通称名はIR推進法というのですが、IRというとどうしてもインベスターリレーションのほうを想起してしまうので困ったものです。だからといって、カジノ法というのも何なのかなあと思います。カジノ法とか言っている奴は先の「戦争法」と何の変わりもありません。法案を偏狭なレッテル貼りで呼び捨てにするのはいい加減にやめましょうね。

で、この法案審議の際、ギャンブル依存症の話が出ては消え、という感じでしたが、とにかくパチンコ依存症のことを議員も新聞もテレビも全然報道しませんでした。新たにカジノができるようにするのは、ギャンブル依存症を助長させるだけであるから反対!という意見は読売新聞社説(12/16)など複数の媒体が社説等で論じていますが、ギャンブル依存症がそんなにたくさんいるなら、なぜパチンコを規制しようとしないのか、競馬や競輪などの公営ギャンブルだって規制対象にすればいいじゃないか、と思うのですが、そうした議論は一切ありません。

国会では唯一、山本太郎議員が参議院で「パチンコ・スロット規制もやらず他のバクチを合法化ってないだろ、誰の為にやってる?セガサミーか?ダイナムか?外資か?」と叫び、喝采を浴びています。山本議員と初めて意見が合いました♪
でもこのこともまた新聞やテレビでは報じられていません。あぁ、本当にこの分野は闇が深そうですね。

個人的には
パチンコ→ギャンブル依存よりも北の国への送金疑惑があるから禁止の方向で
カジノ→世界中から金持ちが集まらないと経営が成り立たないので小口の客なぞ相手にされないから問題なし
その他の公営ギャンブル→オートレースから潰れていくかもね

くらいの意見しかありません。公営ギャンブルは変に規制して893さんの収入源になったり地下化したりするくらいなら、お上が運営していたほうがマシかなあとも思いますが。


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内容(双葉社HPより)
盗犯を担当する警視庁捜査三課のベテラン刑事・萩尾と、その部下の女性刑事・秋穂。テレビドラマ化もされた話題作『確証』で活躍した刑事達が帰ってきた! 窃盗事件の報に臨場する萩尾と秋穂。その手口を見て、常習窃盗犯・ダケ松の仕業だと見抜く。やがて、ダケ松が逮捕される。面会した萩尾は、その供述に疑問を持つ。どうやらダケ松には弟子がいるらしい……。国宝が展示される陶磁器展が絡み、二転三転する捜査。果たして真犯人は? その手口は? 錬達の警察小説。


曹源寺評価★★★★★
確証」で登場した警視庁捜査第三課の萩尾秀一警部補とその部下、武田秋穂のコンビが本書で再び登場しました。
捜査第三課は空き巣や万引き、スリなど窃盗事件全般を取り扱うセクションです。「泥棒」事件を追うので刑事警察の基本中の基本を体現していますが、その一方で、殺人や放火などを追う捜査第一課と比べるとどうしても地味なセクションに見られます。
このベテラン刑事萩尾は現場を見れば犯人が分かるくらいの職人刑事であります。そして、その部下である秋穂も実に優秀です。
今回は百貨店の催事会場で展示された国宝、曜変天目をめぐる捜査のお話です。世田谷区内で窃盗事件が発生、金目のものの場所を長年の勘で見破る手口から、窃盗の常習犯である「ダケ松」こと松井栄太郎が逮捕される。ダケ松の供述に不審を抱いた萩尾は彼の口から出た百貨店の催事情報に興味を示し、調査に当たると、、、
捜査第三課の名コンビは相変わらずですが、今回は捜査第二課の舎人警部補が登場し、その特異なキャラクターでストーリーに一味ヒネリを加えていただいてます。学芸員の資格を持ち、焼き物に関しては真贋の鑑定もできる有能ですが、周囲の捜査員とはなかなか打ち解けない変わり者。そんな彼はいつも単独行動をしています。
窃盗犯にありそうな師弟関係、窃盗犯と密接につながる故買屋、国宝級の美術品を巡る動き、など捜査第三課という地味(失礼!)なセクションにおいてちょっと変わった捜査内容をネタに仕込んできたこの作品は、意外性だけではなく捜査の新たな視点をも提示していると言う点において

なかなかに稀有な作品であると言えましょう。

ただ、展開は相変わらずの今野節であります。内容の半分はセリフでできていますので、まあ読みやすいったらないですね。暇つぶしにはもってこいなんですが、いかんせんあっという間に読み終わりますので場合によっては暇つぶしにもならないですわ。





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2016年12月13日

書評766 新野剛志「優しい街」

こんにちは、曹源寺です。

2016年の「今年の漢字」は「金」に決まりました。4年前も「金」でした。もしかしたら今後は4年ごとに金の字が選ばれるかもしれないですね笑
まあ、「今年の漢字」は個人による人気投票ですから、同じ年末恒例でも「流行語大賞」よりよほど公正です。流行語大賞は選考委員の俵万智氏が「日本死ね」についてツイッターで政治的思惑を明らかにしていました。つまり、流行した言葉ではなく、流行させたかった言葉として選んだと言っているわけです。
もうね、ネットの世界は10年前からいろいろな人の嘘を見破ってきました。現在はさらに加速度を増しています。世の中の欺瞞とか作為とか理不尽とかは誰かさんのちょっとした違和感から解明が進んで、あっという間に見破られる時代になっていると言って良いと思います。それが「炎上」までいくか、あるいはいかないか、その程度の差でしかないと思います。ほんのちょっとしたきっかけで炎上まで行き着くケースも増えてきましたので、今後は世界のあちこちでいろいろなことが暴かれていくのだろうと思います。


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内容(双葉社HPより)
探偵の私は、名古屋から上京していた実業家から、娘を捜してほしいとの依頼を受ける。娘、由はツイッターをやっていて、本来のアカウントとは別に、性的な表現が氾濫する裏のアカウント、「裏垢」もやっていた。私は協力者を得て、裏垢から由の足取りを追う。――現代に浮遊する少女や彼女らを取り巻く大人たちの姿を静かに激しく描いたミステリー。


曹源寺評価★★★★
新野センセーの久しぶりの探偵小説です。しかも本格的なハードボイルドに仕上がっています。なんだかこういう雰囲気の作品、久しぶりだなあ。単独で行動する探偵、舞台は渋谷、人が死ぬ、ヤクザもいて、主人公も大ピンチ。実にいいですね。表紙の装丁もいいですね。
主人公の市ノ瀬路美男−ロミオは、ホテルのコンシェルジュ経由で名古屋の政商、黒川から依頼を受ける。内容は家出娘を探し出し連れ戻すこと。ツイッターの裏アカウント――裏垢から追跡し、彼女を発見するが、親元に引き渡す直前に殺される。市ノ瀬は犯人を捜すが、、、
かっこいいのかどうかはよく分かりませんが、少なくともハードボイルド探偵にありがちなシニカルなセリフはばっちり決まっていますので、読んでいて楽しいですね。
本書はこうした古きよき探偵小説の体裁ではありますが、内容については最新のSNSを駆使した犯人捜しがストーリーの肝になっていますので、裏垢とかリプライとかアカウントとかツイッターやっていないと良く理解できない御仁には難解な小説になっています。
また、この裏垢がイコール別名というより別人格のような扱いにもなっていますので、○○という裏垢は実はAさんのもので、それをリプライしている△△という裏垢はBさんの裏垢、Bさんの本来のアカウントはXXだったとか、もう

誰が誰だかわからんわ

となってしまいそうでした。現実の人間像と裏垢のつぶやきが二重人格すぎて余計に分かりにくいです。ここらへんはしっかりと読みこなさないと絶対に混乱しますわ。
つまり、登場人物を抑えるだけではダメで、仮想空間のやりとりとリンクさせながら話を進めていかないと理解ができないようになっているわけです。
中高年はついていくのが大変ぜよ。





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2016年12月09日

書評765 下村敦史「失踪者」

こんにちは、曹源寺です。

先日はインターネットサービス大手のDeNAがキュレーションサイト「WELQ」において、剽窃や無断盗用のみならず、医療的観点から放置できないほど非科学的で無知でいい加減な捏造記事が垂れ流されていたとして、同サイトの閉鎖を決めました。
実際にはWELQだけでなく、iemoやFindTravelなど合わせて9サイトを閉鎖していますので、DeNAのキュレーションサイトがいかに杜撰で悪質であったのかがわかります。

ちょうどロイターが面白い記事を発信していました。
ローマ法王がメディアに強い警告、「偽りの情報拡散は罪」(2016/12/8ロイター)
[バチカン市 7日 ロイター] - ローマ法王フランシスコは、政治家の評判を落とすためにスキャンダルに焦点を合わせたり偽りの情報を発信することは「罪」だと述べ、メディアに対して強い警告を発した。
ベルギーのカトリック週刊紙テルティオとのインタビューに応じた。
法王は、誤った情報を拡散することは「メディアができうる最大の加害行為」であり、電波通信をそのような行為に利用することは罪といえると述べた。
法王は、「メディアは、明確、透明であるべきだ。たとえ真実であっても、常にスキャンダルなどを報じたがるといった、汚い物を病的に嗜好するような病に陥ってはならない」と語った。また、政敵を中傷する目的でメディアを利用することの危険に言及。「そのようなことをする権利は誰にもない。それは罪であり、傷つく行為だ」と述べた。
米国では、インターネット上の誤った情報によって、有権者がトランプ氏への投票になびいたのではないかとの議論が広がっている。


えー、なんだかトランプ次期大統領への批判記事になっていますが笑
ちょうど日本では上記の問題が起こっていただけに、タイムリーな記事と言えるでしょう。WELQ問題ではこの事業の仕掛け人とされる村田マリなる執行役員が記者会見に出てこなかったためにネット上で吊るし上げをくらっていますが、まあ自分で立ち上げて50億円でDeNAに売り飛ばして自分は碌に税金も払わずシンガポールに高飛びですから、そりゃ吊るされてもしょうがないですなぁ。

しかし、DeNAは会社として謝罪していますのでまだマシですわ。それにこのキュレーションサイトの事業はSEO対策などで支出が先行しているため大赤字のはずですから自業自得です。

ネットであろうと紙であろうと事実と異なる記事を大量に生産して、それを恥じない企業はほかにもたくさんありますから、ローマ法王に直接叱っていただきたいものです。
「偽りの情報拡散は罪」!ですよ。

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内容(講談社HPより)
ありえない、そんなはずはない。
10年前、あいつは死んだはずだった――
極寒の氷雪峰に置き去りにされ、“時”とともに氷漬けになったはずの友。
しかし、対面した遺体は明らかに歳をとっていた……
2016年、ペルーはブランカ山群。山岳カメラマンの真山道弘は単身シウラ・グランデ峰を登っていた。10年前、クレバスに置き去りにしてしまった親友・樋口友一を迎えにきたのだ。ずいぶん待たせて悪かったな――クレバスの底に降り立ち、樋口を見つけ出した真山だったが、遺体の顔を覆う氷雪を落として驚愕する。極寒のクレバスに閉じ込められた遺体は、歳を取ることなく凍りついてしまうはず。しかし、樋口の顔は明らかに10年前より老いていたのだ。なぜだ、ありえない。まさか、樋口はあの時生還していたのか?ならばなぜ連絡をよこさなかった?そしてなぜ同じ場所で命を落としている?樋口、お前は一体何をしていたんだ?
親友が過ごした、謎に包まれし“歳月”。
真相にたどり着いたとき、あなたはきっと胸を熱くする。
注目の乱歩賞作家が仕掛ける、哀しき罪と罰。
『生還者』につぐ感涙必至の山岳ミステリー!


曹源寺評価★★★★
下村センセーの山岳ミステリ「生還者」に次ぐ山岳モノ第2弾ということであります。生還者の次が失踪者ではなにやら続編のようなタイトル付けですが、二つの作品に関連性はありません。
主人公の真山道弘は南米のシウラ・グランデを攻略中に事故で親友の樋口友一を失った。10年後に迎えに行ったものの、そこにいたのは10年前より老いた友人の遺体だった。なぜ彼は死んだはずなのに年老いたのか?
冒頭から謎を突きつけるミステリですが、ストーリーのテンポが良くて山岳シロウトの自分でもぐいぐいと読み進められます。
謎が途中で明らかになっても、今度は別の謎が読者に突きつけられますので最後まで一気読みでした。このへんの作りこみが2014年の乱歩賞受賞者とは思えないレベルなんですよ。6作目とも思えません。
山岳ミステリといえば、古くは森村誠一、最近だと笹本稜平や樋口明雄、大倉崇裕の各センセーなどがこのジャンルに精力的に取り組んでおられます。しかし、自分はそれほど山岳モノが好きではありません。なぜだろうと自問自答していますが、あいにく答えが出ておりません。単なる食わず嫌いなのかもしれませんので、足を一歩踏み出してみようかとは思います。
でも、山岳小説を読みこなすためにはひとつ重要な要件がありました。それは、

専門用語をしっかりと理解しておく

ということです。アイスアックスとかアイススクリューって何?というレベルではストーリーを理解するのに大変ですわ。山の名前も知らなさ過ぎな自分は、読みながら山の名前をGoogleさんに教えてもらっています。あぁ、シウラ・グランデってこういう山なのね〜(棒 とか。
まあ、書くほうにしてみれば山岳モノというのは閉ざされた空間であり、命の危険と隣り合わせであるというミステリの舞台としてはこれ以上ないほどの好立地でありますから、あとはちょっとした工夫でストーリーを仕立てられそうな気がします(もっとも自分には知識がなくて書けませんが)。
しかし下村センセーはそこに男同士のアツい友情や死と隣り合わせの8,000メートル級の山々といった、謎解きとは別次元の物語性にも深い描写がありますので、なんだかとても安定感のある作家センセーになったなぁという感想です。





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2016年12月06日

書評764 月村了衛「黒涙」

こんにちは、曹源寺です。

ちょっとびっくりしたニュースがありましたので(ニュースというか話題というか)。
【なんて時代だ】除夜の鐘を禁止させられるお寺が続出中
年越しに鳴り響く『除夜の鐘』。聞くと「一年が終わり、また新しい年が始まるんだなぁ」と思わされる
日本の風物詩です。
しかし最近では、この除夜の鐘が「うるさい」との近隣住民の苦情を受け、昼間や夕方に鳴らすお寺が増えているのだとか。
静岡県にある大澤寺(だいたくじ)もその一つ。大澤寺のwebサイトには除夜の鐘が一時中止になり、再開したものの昼間に除夜の鐘をつくことになった経緯が記されています。
『夜間衝く鐘の音に対する波津地区のどなたからのクレームの電話があったことから父の代で終了した除夜の鐘。それを昨年から時間を大幅に繰り上げて再開したというものです。』
「除夜の鐘がうるさい」とのクレーム。日本の風物詩として楽しみにしている身としては信じられない気持ちですが、多くの方はどのように感じているのでしょうか。
「こわい」という声を受けてなまはげが優しくなったり、「子どもを歩かせるのか」という声を受けて二宮金次郎像が座ったり、伝統より苦情の声が大きくなりつつある日本。
一つのクレームで、多くの方が楽しみにしている伝統が無くなってしまうのは悲しいですね。改めて、大切にすべきものは何かを考えていきたいものです。
(grapeの記事より)

ほんの少しのクレームで自粛を余儀なくされる時代とはいえ、ここまでいくと時代がおかしいのではないかと思ってしまうレベルです。
そういえば、先日も日本人が麺類をすする音が不快であるとする「ヌードルハラスメント」略してヌーハラなる言葉を編み出したどこかのマスゴミTV局がありましたが、あっという間に沈静化しましたね。
これらに共通するのは、どちらも日本人の感覚としては当たり前なのに(おそらく)外国人からは奇異に映るものが時に不快であること、という点にあると思います。

しかし、ここは日本です。日本国内で日本人がはるか昔から営んできた慣習や風習について、外国人からいちゃもんをつけられる筋合いはありません。そもそもこんなこと(特にヌーハラ)が記事になること自体がアホなことです。これ、逆に言えば他国の文化に異邦人が余計な口出しをしているだけではないかと思うのですが。
たとえば、中国人は賓客をもてなすときは食べきれないほどの料理を出すのが風習です。だから客の側も食べ残すのがマナーになっています。これを食べ物がもったいないと怒るのは筋違いです。
また、欧州では皿に残った肉料理のソースをパンですくって食べるのは普通のことですが、日本ではあまりなじまないマナーだったと思います(今はそうでもないですが、おそらく30年前ははしたないことだったと思います)。
自国の文化を基準にして他国の批判をすることほど無知蒙昧なことはありません。こういうのは徹底的に無視するのが一番だと思います。

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内容(朝日新聞出版HPより)
警視庁組織対策部2課の警部補・沢渡は、実は黒社会とつながる警察内部の〈黒色分子〉だ。中国語が堪能な沢渡は、対中国防諜作戦を目的とする公安部の特別捜査チームに出向となる。沢渡と義兄弟の契りを結ぶ黒社会「義水盟」の大幹部である沈は、インドネシアの青年実業家ラウタンも巻き込んで、沢渡らの中国諜報機関摘発に協力することなった。やがて三人の前にシンシア・ユンと名乗る謎の美女が現れるが……。
まさに“黒の中の黒”――
黒色警察小説の新たな傑作誕生!


曹源寺評価★★★★★
月村センセーの警察小説「黒警」の続編が出ました。雑誌連載中は「黒警PARTU」というタイトルだったのに、単行本化したら改題されました。それでもこのタイトルで「あぁ、黒警の続編だな」と理解できた方は多かったのではないでしょうか。「黒警」は警視庁の組織犯罪対策部に所属する刑事、沢渡を主人公とする警察小説ですが、かなりノワールな作品であります。なにしろ中国の黒社会集団である「義水盟」に所属しているという設定で、いわゆる「義賊」のような集団ですがやっていることは違法行為だらけです。
今回その沢渡は中国語が堪能であることから公安部の特別捜査チームに加わることになり、中国のスパイ活動を炙り出す役割を命じられます。義賊とはいえ、自分も半分はスパイみたいな立場にいる沢渡は、身分がばれないように対中国の防諜活動をしなければならなくなります。そのへんの(身分バレの緊張感を味わう)スリリングなやりとりはあまりありませんが、月村センセーならではのスペクタクルな展開は相変わらず冴え渡っております。
特捜チームは今回の中国のロビー活動を贈収賄で立件できるかという命題に対し、地道な捜査活動だけでは突破口が開けないとして、インドネシアの実業家であるラウタン氏の協力を仰ぐ。ラウタンはさわやかな青年実業家で、人を惹きつける魅力を持っているが、中国側のハニートラップも真正面から受けて立つほど自信過剰な側面もあり、この男女の駆け引きも読みどころではあります。
しかし、物語は中盤から後半にかけて一変していきます。さすが黒警。ノワール感満載です。特に後半〜ラストにかけては黒も黒、真っ黒になった沢渡の本領発揮で、なんだか

怪談を読んでいる気分になりましたよ。マジホラーですわ

それにしても、月村センセーの作品はラストにかけての描写が震え上がるレベルになってきました。特に、いざ決着をつけようという場面においては読む手が震えるほどガクブルものです。まあ、ホラーといっても後味悪いものではなく、真っ当な悪党の末路を見せつけてくれるものですから納得のいくラストであります。
警察小説でもあり、犯罪小説でもあり、またまたミステリでもある。印象深い一冊でありました。





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posted by 曹源寺 at 16:09| Comment(0) | TrackBack(0) | た行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月02日

書評763 薬丸岳「ラストナイト」

こんにちは、曹源寺です。

昨日発表された「2016年新語・流行語大賞」は「神ってる」が選ばれました。今年はカープの年だったからまあよろしいのではないかと思います。だいぶ形骸化はしていますが。
それにしてもトップテンのなかに「保育園落ちた日本死ね」が入るとは。そしてそれを国会議員が受賞するとは。
「日本死ね」と叫ぶ国会議員がいるこの日本という国。相当根が深い問題です。

国会議員だけではありません。先日はこんな記事もありました。
不法残留の強制退去処分取り消し 反人道的と名古屋高裁(11/30東京新聞)
在留期間を過ぎて不法残留となった三重県に住むブラジル国籍の男性(37)が、強制退去を命じた国の処分を取り消すよう求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁(藤山雅行裁判長)は30日、「一家離散を招きかねず、人道に著しく反する」として処分を取り消した。
裁判長は判決で「処分は社会通念に照らして妥当性を欠き、裁量権逸脱で違法」と認定。ひき逃げ事故を起こし警察への出頭をためらっている間に在留期間が過ぎたとし「意図的に不法残留したわけではなかった」と指摘。
2013年9月12日に無免許でひき逃げ事故を起こした。逮捕されたが、その間に在留期間を過ぎ、不法残留となった。(共同)


え・・・
なにこの判決。。。

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『無免許、不法滞在、ひき逃げのトリプルコンボ
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ         だと思っていたらいつのまにか無罪になっていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人      な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ       おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \     催眠術だとか超スピードだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ  そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...     イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

この記事を読んでサンドイッチマンの富沢(「ちょっと何言ってるか分からない」ってやつ)かジョジョのポルナレフにならない人がいたらお目にかかりたいです。
よりによって高等裁判所の判事がこんな判決を出すかぁ?地裁ならまだ分かる(というのも変な話です)が、高裁判決ですから二重に驚きました。日本はいつから人治主義の国になったのでしょうか。こんなおかしな裁判官がいるのが今の日本の法曹界ですよ。
この名古屋高裁の藤山雅行裁判長というお方は、お名前で検索かけるとなんともまあ香ばしい実績をお持ちでいらっしゃいます。気になる方はぜひお調べください。国を相手に訴訟を起こしてこの人が裁判長なら間違いなく勝てる。そんなお人です。

裁判官が法に拠らない判決を連発する。そしてこういう裁判官を誰も罷免できない。地裁や高裁は野放しです(最高裁だけ国民審査の対象になります)。そして自浄作用もない。こういう組織はだいたいにして腐りかけています。藤山判事が最高裁の判事になるのを待って国民審査で落とすというのもひとつの手ではありましょうが、それを待っていたら異様な判決のオンパレードになってしまうこと必然です。

司法も立法もちょっとヤバイレベルになってきたようです。
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内容(実業之日本社HPより)
顔には刺青、左手は義手。
菊池正弘が営む居酒屋「菊屋」に、古い友人で刑務所を出所したばかりの片桐達夫が現れた。
かつてこの店で傷害事件を起こしてから、自身の妻とも離婚し、32年もの間に何度も犯罪に手を染めてきた男だ。
獣のような雰囲気は人を怯えさせ、刺青に隠された表情からは本心が全くつかめない――。
何故、彼は罪を重ねるのか?
吉川英治文学新人賞受賞後第一作! 著者新境地、魂を震わせる衝撃のミステリー。


曹源寺評価★★★★
薬丸センセーの良いところは、テーマが一貫してぶれないというところにありましょうか。デビュー作の「天使のナイフ」から少年犯罪、少年法、贖罪、寛如、許容、といった題材を取り上げて、読者に訴えかける作品がラインナップされるようになりました。時には凶悪な少年犯罪をテーマにして「お前らこれでも少年法でこいつらをかばうつもりか?あぁん?」というくらい読者を焚きつけてくることもありますが、センセー自身は明確に少年法改正を叫んでいるわけでもなさそうなのでこのへんの立ち回りのうまさもすごいなあと素直に感心したりします。
そんなセンセーの最新作はなかなかに凝った作りこみをされていました。
顔一面に豹柄模様の刺青を入れた、左手が義手の59歳。前科五犯。主人公、片桐達夫はものすごい風貌と経歴であります。この片桐が仙台刑務所から出所してきたが、彼を取り巻く複数の人間を語り部として(章立てのタイトルにもなっています)彼の出所後の行動を追う内容となっています。
片桐の兄貴分だった赤羽の飲食店「菊屋」の主人である菊池正弘、片桐の弁護人を務めたことのある中村尚、実の娘である松田あかり、転落の人生を歩む娼婦の森口絢子、そして彼の行動を監視する荒木誠二の5人が、それぞれの視点でストーリーを展開させていきます。この5人はすべてクロスオーバーしているため、ストーリーの4分の1くらいはレビュー的な内容になっていますが、これもまた違う視点からの内容なので

「あぁ、これってこういうことなのね」と後で理解できる

ようになっています。
読み進めるうちに見えてくるのは、片桐が見た目どおりの凶悪な犯罪者なのか、そうでなければ何なのか、という問いかけです。
なぜ彼は犯罪を繰り返しす前科者になったのか。
なぜ彼は左手を事故で失ったのか。
なぜ彼は顔中に刺青を彫ったのか。
なぜ彼は出所後に弁護士にお礼を言いに行ったのか。


すべてがつながったときに、片桐達夫という人間が見えてきます。それはそれは壮大なストーリーなわけですが、壮大(というかあまりにもスゴイ執念)すぎて読者としては声も出ませんわ。
多くの読者が「なぜここまでやるのか」「献身を通り越して自己犠牲」「ここまでいくと理解不能」という感想を持つのではないかと思うレベルですが、これと同じような感想を持った作品といえば東野圭吾センセーの直木賞受賞作品「容疑者Xの献身」あたりが思い浮かびます。
まあ、ここまでやらないとインパクトがないというのであればそうなのかもしれません。でも、この路線がエスカレートすることは小説界にとって良いことではないと思うのです。奇をてらうとか、派手なインパクトを狙うとか、そういう方向だけが話題をさらうのはいかがなものかと思います。
ストーリーやリーダビリティは素晴らしいので、このインパクトを穿って見なければ普通に面白いです。





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posted by 曹源寺 at 17:44| Comment(0) | TrackBack(0) | や行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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