ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2016年12月09日

書評765 下村敦史「失踪者」

こんにちは、曹源寺です。

先日はインターネットサービス大手のDeNAがキュレーションサイト「WELQ」において、剽窃や無断盗用のみならず、医療的観点から放置できないほど非科学的で無知でいい加減な捏造記事が垂れ流されていたとして、同サイトの閉鎖を決めました。
実際にはWELQだけでなく、iemoやFindTravelなど合わせて9サイトを閉鎖していますので、DeNAのキュレーションサイトがいかに杜撰で悪質であったのかがわかります。

ちょうどロイターが面白い記事を発信していました。
ローマ法王がメディアに強い警告、「偽りの情報拡散は罪」(2016/12/8ロイター)
[バチカン市 7日 ロイター] - ローマ法王フランシスコは、政治家の評判を落とすためにスキャンダルに焦点を合わせたり偽りの情報を発信することは「罪」だと述べ、メディアに対して強い警告を発した。
ベルギーのカトリック週刊紙テルティオとのインタビューに応じた。
法王は、誤った情報を拡散することは「メディアができうる最大の加害行為」であり、電波通信をそのような行為に利用することは罪といえると述べた。
法王は、「メディアは、明確、透明であるべきだ。たとえ真実であっても、常にスキャンダルなどを報じたがるといった、汚い物を病的に嗜好するような病に陥ってはならない」と語った。また、政敵を中傷する目的でメディアを利用することの危険に言及。「そのようなことをする権利は誰にもない。それは罪であり、傷つく行為だ」と述べた。
米国では、インターネット上の誤った情報によって、有権者がトランプ氏への投票になびいたのではないかとの議論が広がっている。


えー、なんだかトランプ次期大統領への批判記事になっていますが笑
ちょうど日本では上記の問題が起こっていただけに、タイムリーな記事と言えるでしょう。WELQ問題ではこの事業の仕掛け人とされる村田マリなる執行役員が記者会見に出てこなかったためにネット上で吊るし上げをくらっていますが、まあ自分で立ち上げて50億円でDeNAに売り飛ばして自分は碌に税金も払わずシンガポールに高飛びですから、そりゃ吊るされてもしょうがないですなぁ。

しかし、DeNAは会社として謝罪していますのでまだマシですわ。それにこのキュレーションサイトの事業はSEO対策などで支出が先行しているため大赤字のはずですから自業自得です。

ネットであろうと紙であろうと事実と異なる記事を大量に生産して、それを恥じない企業はほかにもたくさんありますから、ローマ法王に直接叱っていただきたいものです。
「偽りの情報拡散は罪」!ですよ。

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内容(講談社HPより)
ありえない、そんなはずはない。
10年前、あいつは死んだはずだった――
極寒の氷雪峰に置き去りにされ、“時”とともに氷漬けになったはずの友。
しかし、対面した遺体は明らかに歳をとっていた……
2016年、ペルーはブランカ山群。山岳カメラマンの真山道弘は単身シウラ・グランデ峰を登っていた。10年前、クレバスに置き去りにしてしまった親友・樋口友一を迎えにきたのだ。ずいぶん待たせて悪かったな――クレバスの底に降り立ち、樋口を見つけ出した真山だったが、遺体の顔を覆う氷雪を落として驚愕する。極寒のクレバスに閉じ込められた遺体は、歳を取ることなく凍りついてしまうはず。しかし、樋口の顔は明らかに10年前より老いていたのだ。なぜだ、ありえない。まさか、樋口はあの時生還していたのか?ならばなぜ連絡をよこさなかった?そしてなぜ同じ場所で命を落としている?樋口、お前は一体何をしていたんだ?
親友が過ごした、謎に包まれし“歳月”。
真相にたどり着いたとき、あなたはきっと胸を熱くする。
注目の乱歩賞作家が仕掛ける、哀しき罪と罰。
『生還者』につぐ感涙必至の山岳ミステリー!


曹源寺評価★★★★
下村センセーの山岳ミステリ「生還者」に次ぐ山岳モノ第2弾ということであります。生還者の次が失踪者ではなにやら続編のようなタイトル付けですが、二つの作品に関連性はありません。
主人公の真山道弘は南米のシウラ・グランデを攻略中に事故で親友の樋口友一を失った。10年後に迎えに行ったものの、そこにいたのは10年前より老いた友人の遺体だった。なぜ彼は死んだはずなのに年老いたのか?
冒頭から謎を突きつけるミステリですが、ストーリーのテンポが良くて山岳シロウトの自分でもぐいぐいと読み進められます。
謎が途中で明らかになっても、今度は別の謎が読者に突きつけられますので最後まで一気読みでした。このへんの作りこみが2014年の乱歩賞受賞者とは思えないレベルなんですよ。6作目とも思えません。
山岳ミステリといえば、古くは森村誠一、最近だと笹本稜平や樋口明雄、大倉崇裕の各センセーなどがこのジャンルに精力的に取り組んでおられます。しかし、自分はそれほど山岳モノが好きではありません。なぜだろうと自問自答していますが、あいにく答えが出ておりません。単なる食わず嫌いなのかもしれませんので、足を一歩踏み出してみようかとは思います。
でも、山岳小説を読みこなすためにはひとつ重要な要件がありました。それは、

専門用語をしっかりと理解しておく

ということです。アイスアックスとかアイススクリューって何?というレベルではストーリーを理解するのに大変ですわ。山の名前も知らなさ過ぎな自分は、読みながら山の名前をGoogleさんに教えてもらっています。あぁ、シウラ・グランデってこういう山なのね〜(棒 とか。
まあ、書くほうにしてみれば山岳モノというのは閉ざされた空間であり、命の危険と隣り合わせであるというミステリの舞台としてはこれ以上ないほどの好立地でありますから、あとはちょっとした工夫でストーリーを仕立てられそうな気がします(もっとも自分には知識がなくて書けませんが)。
しかし下村センセーはそこに男同士のアツい友情や死と隣り合わせの8,000メートル級の山々といった、謎解きとは別次元の物語性にも深い描写がありますので、なんだかとても安定感のある作家センセーになったなぁという感想です。





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posted by 曹源寺 at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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