ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2017年01月27日

書評777 垣根涼介「室町無頼」

こんにちは、曹源寺です。

先日は昭和の名優、松方弘樹氏がお亡くなりになりました。「遠山の金さん」はそれほどではありませんでしたが、「元気が出るテレビ」の松方さんは好きでした。ご冥福。

小さい頃にテレビという箱の中で強烈な印象を放っていた俳優さんといえば、個人的には丹波哲郎さんだったと思います。いま思い返してもかっこいいです。目力が他の俳優さんとは圧倒的に違いましたね。
あの目力を継承している俳優さんって誰かいるのかなあと思ったら、V6の岡田准一さんがこれに近いですね。「海賊とよばれた男」では20代から90代までの主人公を演じたということで話題になりましたが、終戦の1945年に60歳という主人公、國岡鐡造を演じる岡田の眼は丹波哲郎のそれであります。岡田准一さんがシブい中年になったとき、どんな演技を見せてくれるのか楽しみです。

さて、そんなテレビ界ですが自分はあまりテレビを観ません。それでもちょっと話題になったりしたドラマはTverとかでチェックしたりもします。近年は時代劇が廃れてしまったわけですが、大河ドラマやちょっと話題になった小説からの映像化作品はあるわけです。先日は映画になった「超高速!参勤交代」を観ましたが、軽くてテンポの良いストーリーがとても面白かったです。今日の書評に置いた「室町無頼」も読み物としては最高に楽しい本でした。さすが直木賞の候補に挙がるだけのことはあります。本書は戦国時代突入の前、幕府の力が弱まり飢饉も重なって各地で土一揆が発生する時代を背景に、棒術で世間を渡り歩いた青年が主人公です。動乱の時代を生き抜くため、あるいは強大な敵を前にして、「修行して強くなる」というストーリーはドラゴンボールのそれですが、自分の少年時代は香港映画がそれに当たります。そうです、ジャッキー・チェンです。いまのアラフィフ男子なら「酔拳」のマネをしなかった人はいないのではないかと思います。この「修行して強くなる」という成長物語は恋愛ドラマと同じくらい普遍性の高いテーマだと思うのですが、あまり連続ドラマなどで取り上げられることはありませんね。恋愛や人間関係を通して成長する話はあっても、修行を重ねてライバルを打ち破る話は漫画とアニメの専門領域になっています。
いまこそ、時代劇を通じて「修行して強くなる」主人公の成長物語をドラマ化するチャンスではないかと思うのですが、いかがでしょう。

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内容(新潮社HPより)
応仁の乱前夜、富める者の勝手し放題でかつてなく飢える者に溢れ返った京の都。ならず者の頭目ながら骨皮道賢(ほねかわどうけん)は権力側に食い込んで市中警護役を任され、浮浪の徒・蓮田兵衛(はすだひょうえ)は、ひとり生き残った用心棒を兵法者に仕立てようとし、近江の古老に預けた。兵衛は飢民を糾合し、日本史に悪名を刻む企てを画策していた……。史実に基づく歴史巨篇。


曹源寺評価★★★★★
2016年の直木賞候補にもなった本作は、「光秀の定理」で時代小説デビューされた垣根涼介センセーの新作であります。あぁ、ついに垣根センセーも時代小説のほうに行ってしまわれたのですねぇ。。
でも、垣根センセーの本質的なところというのは、やはりアウトローを描くという点にあるのではないかと思います。「ヒートアイランド」「ワイルド・ソウル」などでみせてくれたアウトローには本当しびれました。しかし、アウトローを描くなら時代小説のほうがよい、とセンセーが考えておられてもそれは当然の帰結であるといわざるを得ません。なんといっても刀一本で世間を渡り歩くことができる時代ですから。
そんなアウトローでも、垣根センセーの描くアウトローはこれまたちょっと違うわけですよ。本書では武家の出身だが取り潰しに遭い流民となった才蔵を主軸に据え、彼の生き様を描いていきます。修行に明け暮れて、いつの間にか無敵になる棒術の達人、実にいいですね。まるで、

ドラゴンボールにおける孫悟空の修行時代

を彷彿とさせてくれます。
また才蔵のほか、歴史に残っている実在の人物として骨皮道賢、蓮田兵衛を置いて後に乱世となる室町時代後期の世相を浮かび上がらせてくれています。
この道賢と兵衛がまたいい味を出してくれます。まるで、

北斗の拳のラオウとトキ

のように、生まれてくる時代と場所を間違えなければひとかどの人物になったであろう二人です。
ドラゴンボールに北斗の拳なんて、ジャンプ世代を意識したわけではないでしょうに。あ、垣根センセーご自身がジャンプ世代ですね。こんなの面白くないわけがありません。

しかも、ただ強くなるだけではありません。強くなる=無敵の構図は普遍的であり本書もまた然り、ですが、本書では「際(きわ)」という単語が出てきます。
(以下、多少ネタバレ)
際とはつまるところ、人間としての限界と言い換えることができるものでしょうか。たとえば、どんなに一流のプロ野球選手であっても、シーズン打率で4割を残すのは無理です。でも、3割30本というひとつの指標はありまして、ここに到達することができる選手は1年に一人か二人です。剣術や棒術も然りで、極めるところにあるものは完璧超人ではなくて人間としてできうるギリギリの線に届いたところ、それこそが「際」であるというのでしょう。

本作は映像化するなら映画ではなくて民放の連続ドラマでやってほしいですが、こうした「際」の話みたいなサイドストーリーをうまく取り込めないと面白さは半減してしまいそうです。





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2017年01月24日

書評776 柴田哲孝「クラッシュマン」

こんにちは、曹源寺です。

そういえば、文部科学省から早稲田大学の教授職に天下りした元高等教育局長の吉田大輔という人物がいましたが、先日来大きく報道されたのが影響し、辞職ということになりました。
個人的には霞ヶ関の官僚がその高い能力を生かして天下りすること自体には反対したくないのですが、そこに癒着の構造が見て取れる天下りは許したくないですね。
すでに天下り規制に関しては「官民人材交流センター」なる組織がこれをコントロールしているかたちになっているわけですが、この文部科学省の天下り問題の追及になぜかものすごい熱心な毎日変態新聞さんがいろいろと追っかけ記事を出しています。

<文科省>再就職紹介、利用ゼロ…独自ルートで天下り(1/22毎日新聞)
国家公務員の再就職を支援する政府の「官民人材交流センター」を利用した文部科学省の職員が、2008年のセンター発足以降、一人もいないことが関係者への取材で分かった。
文科省の天下りには人事課中心の「現職ルート」と人事課OBによる「OBルート」の2系統があったことが政府の再就職等監視委員会の調査で判明しており、センターを使わず省内で再就職をあっせんしていたとみられる。
(以下、省略)

文科省は天下り規制も顧みず自分たちで天下り先を作ってはそこにもぐりこんでいたわけです。とんでもない話です。では彼らはどこに行っていたのか。
もしかしたらですが、彼らは今回の早稲田大学のように全国の私立大学の教授や准教授、あるいは事務方のトップランク(つまり企業なら経営陣クラス)に天下っていたのではないかという疑惑になるわけです。

大学全入時代などとあおって、90年代からFラン大学が雨後の筍のように乱立してきました。地元の人しか知らないような大学って結構あるんですよね。そんな大学に入って君は一体何を学ぶつもりかね?という大学。アルファベットから英語を学ぶ大学。アジア各国からの留学生が8割を占める大学。少子化の時代になぜかこういった大学は減ってもいません。
医学部の設置には日本医師会という強力なロビー団体がありますから一定の歯止めがかかっていますが、それ以外の大学、特にFランが乱立してきた原因が天下りであったとなれば、文科省の罪はめちゃくちゃ大きいでしょう。
この問題はもっともっと多くの報道が望まれましょう。ただ、大学への天下りという点においてはマスゴミも同じムジナみたいなところがありますから、他紙がこの報道に乗っかってくることはあまりないのかもしれません。よくあるのは@大手新聞社の解説委員→A系列のテレビコメンテーター→Bいつの間にかFラン大学の特任教授みたいなパターンですね。これ一体何の癒着だろうと思うレベルです(AとBが逆の場合もありそうです)。

個人的には大学進学率はだいたい4割くらいにとどめておき、高等専門学校を充実させるかあるいはもう少し低いランクで職人(マイスター)を目指せるような専門教育の機関を設置して、就業に結びつけるべきではないかと思います。

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内容(双葉社HPより)
過剰防衛による殺人の裁判で「無罪」となり、警察庁警備局公安課特別捜査室サクラ≠ノ復帰した田臥を、新たな任務が待ち受けていた。東京駅発博多駅行きののぞみ167号≠フ車内ごみ箱でTNT爆弾が発見されたのだ。さらには、イスラム国の対日本専門のテロリストクラッシュマン≠ェ入国したという情報がICPOのリヨン事務総局からもたらされる。田臥は、部下の室井智、矢野アサルとともに深く静かに捜査を開始する。


曹源寺評価★★★★
2014年に刊行された「デッドエンド」の続編というわけではないですが、デッドエンドの登場人物が再びお出ましとなりました。
デッドエンドではIQ172の天才、笠原と警視庁公安部の田臥のチェイスに警察の暗部が入り乱れてノンストップなサスペンスを繰り広げていますが、本書でも田臥と笠原が邂逅します(笠原親子はチョイ役どまりなのがとても残念ですが)。
今回の主役は田臥で、相棒の室井と新たに加わったエジプシャンの矢野アサルがこれを補佐します。舞台は東京のみならず、2016年に外交首脳が訪れたサミットの舞台である伊勢志摩、それに米国大統領として初の公式訪問となった広島です。各国の首脳が実名で、しかもタイムリーなネタでありますので、あの国家的行事の裏でギリギリの緊張と血みどろの死闘が繰り広げられていたかと思うと(笑

臨場感のハンパなさは尋常ではありません

クラッシュマンと田臥の対決はラストのお楽しみですが、スナイパー同士の嗅覚とか引き寄せとかそういった野性のナントカをちょっとばかり期待していた部分はもうちょっと描写が欲しかったなあと思います。
本書では田臥の心情として対テロに関する日本の無防備さや、警護する側としての不条理さみたいなものがあちこちで吐露されています。彼のセリフからは警察手帳を碌に見もしない警備体制、ドローンへの対抗措置、空港警備の危うさ、国内に300人しかいないSAT、などテロ対策としてはまだまだ不十分な点が多いということがよく理解できます。一方で、公務に携わるものとしてはやや不謹慎な、パフォーマンスのためだけに国民の血税を使う政府への憤慨のほか、警察庁と外務省の連携不足に対する不満など、リアルに捉えればきりがないほどの現状への不安と嘆きが散りばめられています。まあ、対テロという面におきましては早いところ共謀罪改め「テロ等準備罪」の整備を進めて欲しいなあと思ってしまいます。
あと、本作ではかなりイカレたISの敵が登場しますのでかなりむかつく内容になっていますが、ISはイスラムのなかでも狂信者の集団であり、原理主義の究極のような行動様式ですから、普通のイスラムの方々とは切り離して対処すべきであることは論を待ちません。





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2017年01月20日

書評775 高嶋哲夫「日本核武装」

こんにちは、曹源寺です。

先日、LINEアカウントが乗っ取られまして、多くの知人に詐欺まがいのメールが届いてしまうというハプニングがありました。多くの方にご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。
詐欺メールの内容は懲りもせずに、コンビニで電子マネーを買ってきてくれというものでありました。まだいるんですね。この手の詐欺グループは外国人が主体と聞いています。まあ、電子マネー買ってきてくれという依頼そのものが陳腐でありますから、引っかかってはいないのですが。
もう不逞外国人はどんどん本国に送還してやってほしいですね。

備忘録として書いておきますと、LINEアカウントが乗っ取られて制御できなくなったら

最初に登録した電話番号で新たなアカウントを作成する

でとりあえずは回避できます。

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内容(幻冬舎HPより)

戦争阻止にはこれしかない。 中国の尖閣支配、北朝鮮の核配備、形骸化する日米安保――。 最大の禁忌(タブー)に踏み込む、超リアルサスペンス巨編。 尖閣諸島を巡って海上自衛隊と中国の艦船の睨み合いが続く中、国内では日本の核武装に向けた詳細な計画書が見つかった。表沙汰になることを恐れた政府は、防衛省の真名瀬に秘密裏に全容解明するよう指示。真名瀬は計画に携わる大手企業や元自衛隊幹部、政界重鎮を突き止め、核爆弾完成が間近に迫っている事実をつかんだ。そのとき、東シナ海では日中の艦船が衝突。北朝鮮は核実験を実施し、弾道ミサイルが日本上空を通過する……。『M8』『TSUNAMI』の著者、構想15年、戦慄の予言小説!


曹源寺評価★★★★
災害シミュレーション小説の旗手として名高い高嶋センセーですが、本来は原子力の研究をされていたバリバリの理系です。そんな高嶋センセーがリアルシミュレーションとして選んだのが核武装の話でした。
タイトルがものものしいのでこれを見るだけでは「高嶋センセーって結構タカ派だったのね」と思わせる勢いですが、果たしてどうなんでしょうか。
主人公の真名瀬純は防衛省防衛政策局の官僚。ハーバード大に留学していた時に友人となったデビッドとシューリンの2人とは米国、中国と国は違えど友情を交わした仲である。
帰国した真名瀬に降りかかったのは、交通事故で意識を失っている防衛技官のクルマから見つかった設計図面。そこには核兵器の製造方法が記されていた。
核兵器を日本で製造しようとしているのは誰なのか。そしてその目的は何なのか。
同じ頃、東シナ海では日本と中国の艦船がにらみ合っていた。一触即発のなか、真名瀬も尖閣諸島沖に繰り出していく。緊迫する東シナ海。中国軍の暴走を止めるためには何が必要なのか。そして、真名瀬の決断は。。。
ふむふむ、なるほど。日本国内で核兵器を製造するためにはどんな仕組みやプロセスが必要なのかよく分かります。相当にハードルの高い話だと思っていたら、実際にはそうでもなさそうです。もちろん、核物質の入手が一番難しいでしょう。核兵器の設計図と核物質を巡る作戦と同時進行する東シナ海での日中衝突。リアルシミュレーションとして読むにはかなり緊迫感のある描写です。

高嶋センセー、文章うまくなってる

と思います。最近の作品のほうがすごく読みやすいです。
ひとつ残念なのは、どの場面においても必ず主人公がいる(! というストーリーテリングなところでしょうか。そうでないのがあったとしてもほんの少しなんですよ。これだけ長編になると、主人公以外の人に焦点を当てたシーンがいくつかあっても良いのではないかと思います。
そういえば、核燃料リサイクル施設の「もんじゅ」は廃炉が決まりました。夢の核燃料リサイクルともてはやされましたが、科学技術の限界なのでしょうか。リサイクルが不可能と結論付けられると、日本は大変なことになります。
まず、各電力会社が保有している核廃棄物が、リサイクルを前提とした「資産」であったものを「負債」にしなければなりません。各社はこれだけで一気に債務超過に転落ですか?
これ、逆に考えると、もんじゅがこれまでだらだらと運転(という名の検査)を続けてきたのは、電力会社の財務を健全に保つためではなかったのかと邪推したくなりますね。
リサイクルができないとなると、あとは核ミサイルです。兵器としての核利用ということで名目が立てば、負債勘定にはならないでしょう。ただ、核ミサイルにするにはウラン235とウラン238の分離が不可欠です。技術的にはカバーできそうですが、これの保管管理は大変ですね。
さて、話がそれましたが、本書は核兵器モノのリアルサスペンスとしてはそれなりに読みやすく、ちょっと冗長なきらいはあるにしても現実世界っぽい展開が読む人をぐいぐい引き込んでくれますので、タイトルはともかく(笑 読んで損はないかなと思います。





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2017年01月17日

書評774 矢月秀作「サイドキック」

こんにちは、曹源寺です。

今年最大級の寒波が日本を襲っていて、寒い日が続いています。我が家のハリネズミは24℃以下になるとよろしくないので、リビングはこのところ床暖房をつけっぱなしです。たぶん、今月のガス代は半端ないだろうなぁと思うと気が滅入ります。

さて、今週末はトランプ氏が米国新大統領に正式就任となります。どのような演説を刷るのか非常に楽しみですが、CNNやニューヨーク・タイムズなどが選挙前も今も攻撃の手を緩めていませんので、米政府vs米マスゴミという構図がとても気になるところです。
個人的には日本も米国も新聞という媒体においては、主義主張を明確にして意見を戦わせることにあまり異議はありません(もちろん報道しない自由というやつはNGですが)。そのうえで読者が離れようと、会社が潰れようとそれは自由です。
しかし、電波はいけません。電波は国民のものですから、ラジオやテレビはあくまでも公正中立であるべきだと思います。
米国はテレビと新聞の資本が切り分けられていますから、CNNは独自の政治的意図を持ってトランプ氏を攻撃しているのだと思います。
日本の場合はテレビと新聞の資本がコングロマリット化されていて非常によろしくない状況なわけで、まずはここが切り離されなければならないと思います。そのうえで、新聞媒体は社説で何を書こうが好きにすれば良いのです。


(2017/1/17)
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内容(角川春樹事務所HPより)
警視庁青山中央署の刑事課には、二人の名物刑事がいる。一人はチョビ髭で、頭部も薄い中年刑事・三木本鶴麿。もう一人は長身でスレンダーだが、キレたら恐ろしい最強美人刑事・御前静香。鶴麿はどこからどう見ても冴えないただのおっさんだが、いつもミラクルを起こし事件を解決に導く。そんな鶴麿に静香はぞっこんで、二人の関係は、青山中央署の七不思議のひとつだ。そんな中、青山の宝石店で強盗殺人事件が発生し、名物凸凹コンビが捜査に乗り出した――。傑作エンタテインメント警察小説。


曹源寺評価★★★★★
矢月秀作センセーは初読です。文庫の警察小説を中心に結構な数を発刊されていらっしゃいますが、文庫のコーナーにあまり顔を出さない主義のため、チェックが行き届いておりません。同じような対応になってしまっている作家センセーに、濱嘉之センセーや末浦広海センセーなどがいらっしゃいます。いきなり文庫は本当にいやです。
さて、本書ですが、だいぶコメディタッチな警察小説でありまして、チビデブハゲの三拍子揃ったちょび髭の中年刑事、三本木鶴麿が主人公です。重要な脇役には美人で格闘技の達人、御前静香を配置して事件を解決に導きます。しかし、鶴麿の性格はやや意地悪く、手柄を欲して止まないただのオッサンであります。そんな鶴麿に静香は心底惚れてしまっています。なぜかは書かれていません笑
そんな鶴麿はいつもミラクルな運で重要な手がかりを見つけたり犯人を捕まえたりしています。
鶴麿が勉強不足だったり記憶違いだったりしたことに起因したミスも、周りの勘違いで手柄になったりします。そんな鶴麿の性格がひどく悪いところに本書のキモがあるのかもしれませんが、

たぶん読者は共感できていません

どうせなら、性格がよくてひ弱で人情派なキャラにミラクルなラッキーをかぶせたら共感を得られたのではないかと邪推してみます。
そうしたら

土曜9時の日テレでドラマ化していたのではないかと思います。

タイトルは「ラッキー刑事」、主人公はムロツヨシか小日向文世、あるいは竹中直人あたりで。
本書はそんなドタバタ系のお話ですが、ラスト周辺はあまり盛り上がりません。いや、盛り上がるのですがいろいろ回収不足なところが気になって読者として盛り上がれませんでした。
コメディであっても警察小説としての骨格みたいなところがしっかりしていないと、中途半端なイメージになってしまうということが本書を読むとよく分かります。





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2017年01月13日

書評773 鳴海章「悪玉」

こんにちは、曹源寺です。

サンデー毎日のコラムが胸糞悪かったので晒すことにします。
「日本スゴイ」なんて自己陶酔する「この国」はアホの限界(サンデー毎日2017年1月22日号)
牧太郎の青い空白い雲 603
 新年、柄にもなく神仏に「国家の安寧」を祈った。おのれの健康より、国家が大事!なんて思ったのは初めてのことだ。
 昨年6月、国民投票でイギリスのEU離脱が決まった。11月のアメリカ大統領選はトランプ氏が予想を覆し勝利した。グローバル経済の下で「困難な立場」に追いやられた人々が、「既存の価値観」に異議を申し立て"思わぬ結果"を招いた。
 とはいっても、グローバル化の波は避けられない。これも時代の流れだ。その結果、あちこちで保護主義(=愛国第一主義)派と市場開放派の「戦い」が始まる。「価値観分断の時代」の到来である。
 せめて日本国だけでも「限られた人間の限られた幸せ」ではなく、誰もがイライラすることなく、精神が安定する日々を過ごせるように! そう祈った。
 電通の女性社員が長時間労働などに耐えられず自殺、イライラが高じて佐川急便の社員が配達の荷物を地面に叩(たた)きつけたりするようなことがないように!神仏に頼んだ。ともかく、日本は「アホの限界」に瀕(ひん)している。
 長いことアメリカに「属国扱い」されているのに、今さら歴史的真珠湾訪問!と大々的に喧伝(けんでん)し、「仲直り」を演出する安倍さん。はっきり言わせてもらえば「アホの限界」である。大多数の国民がイライラしているのに、安倍さんはコレに気づかない。批判精神旺盛なはずのメディアは「アホの限界」に知らん顔。神仏に頼るしかない。不安な新年である。
    ×  ×  ×
 今年も「安倍晋三首相」でいいのか?
 昨年5月16日の国会審議。安倍さんは「議会の運営について、少し勉強していただいたほうがいい。議会については、私は立法府の長」と答弁した。念のため、立法府の長は(形式的ではあるが)、衆参両院議長である。安倍さんは小学生でも知っていることすら知らない。無知だ。「言い間違えだ」と彼に味方する人もいるが、翌日も「立法府の長」と言い続けた。誰かが教えてやらないと、裸の王様は「無知」に気づかない。
 安倍さんは「下品」でもある。その12日後の国会で「早く質問しろよ!」。ヤクザのようだった。
 安倍さんは「嘘(うそ)つき」だ。
 これは数え切れない。その代表格が「フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。状況は統御されています」。例の五輪招致プレゼンテーションでの発言。これは真っ赤な嘘だ!と世界は知っている。
「デフレではないという状況を作りだすことはできたが、デフレ脱却というところまではきていないのも事実」と言い続ける。何を言いたいのか、さっぱりわからない。要するに、真っ赤な嘘の連続。地獄の閻魔(えんま)様もビックリだ。
「思い上がり」でもある。「(憲法解釈の)最高責任者は内閣法制局長官ではなく私だ」と言い放つ。
 それでも「安倍首相」を権力の座から引きずり降ろそうとしないのは、悪知恵に長(た)ける「限られた人々」が、「利用価値」を知っているからだ。首相をおだてれば「利権」を独り占めすることができる。この構図は、大統領スキャンダルで瀕死の韓国と同じではないのか?
    ×  ×  ×
 年末年始、テレビ各局は「日本スゴイ」特集を流した。
 12月29日の「世界!ニッポン行きたい人応援団」(テレビ東京)は3時間も、外国人が「日本大好き!」と称賛する番組だった。1月3日は日本の良さを再確認する「和風総本家」(テレビ大阪)......日本って、伝統文化もハイテクも全部スゴイ!を連発する。年末年始、テレビは日本礼賛のオンパレードだった。書店にも「日本スゴイ」本が並ぶ。『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社)といった調子である。
 誰かが「日本スゴイ」ブームを作っているのか。 安倍さんの「アホ支配」を続けようとする向きが、カネを使って「世論操作」をしているのではあるまいか?
(少数派だ!と思いたいが)アホな日本人が「日本スゴイ」ブームに自己陶酔している。
    ×  ×  ×
 戦時下の自己陶酔に似ている。
 満州事変をキッカケに、国際社会から孤立した日本は天皇中心の国家統治を前面に打ち出し「神の国、日本はスゴイ」を喧伝した。日本民族は優秀だ!と信じた日本人はやがて破局を迎えた。
 あの時と同じではないか?
 2017年、日本は「スゴイ」どころか、「アホの限界」を迎えているのに。
 あえて言う。今年も「安倍首相」でいいのか?


日本を貶めることが仕事になっている変態毎日新聞にとっては、日本を持ち上げられることがなにより腹の立つことのようです。

テレビはほとんど観ませんが、和風総本家(テレビ東京)のような番組が伝統的な日本の産業を特集していることは知っています。伝統的な文化に学ぶべきことは多いでしょうし、子どもにもみせたいですね。そこには日本アゲのような意識はあまりなくて、それでも京都の竹細工や金沢の漆細工などが見れば「スゲエ」と唸ってしまう技がそこにありますね。職人や伝統芸を大事にする風土、こればかりは完全に土着の文化・風土であって、誰がいちゃもんをつけようが日本には根付いているわけであります。
そうです、日本にはまだまだ残すべき伝統的な産業がいっぱいあるはずです。日本酒の杜氏や箱根の寄木細工、秋田の曲げわっぱ、刀工による日本刀、などなど。文部科学省はこうした産業を承継するべく職人を養成するための人材確保に力を入れるべきでしょう。大学進学率を上げて天下り先を確保するだけが仕事ではないはずです。

話がそれましたが、日本の価値を見直す動きを「アホ支配」と言って切り捨てている牧太郎は、このコラムで和風総本家などの視聴者を馬鹿にしていることが明らかになりましたので、いずれ反発を食らうことになるのは間違いないでしょう。
視聴者だけではないな、テレ東・日経グループはこれ怒っていい案件ですね。

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内容(KADOKAWA HPより)
正義は、そこにあるか。鳴海章の圧倒的な筆致で描く長篇警察小説
お前は、警官の背中に何を見る──。
住田航は温海警察署の刑事課の組織暴力担当の刑事。署のある静岡県温海市は観光地で近年、準暴力団の特殊詐欺グループの進出が噂されている。そこに県警本部から住田の相勤者として國貞智宏が異動してきた。國貞は本部の対暴力団のエースであり、その容姿は県警の警官募集のポスターに採用されるほど。なぜ國貞の相方に住田が選ばれたのか。國貞にはなにか密命があるのか。謎の多い國貞に不審を抱きながらも、彼の情報を元に老人介護施設を隠れ蓑にして運営されているとう闇カジノの捜査に乗り出すが……。


曹源寺評価★★★★★
鳴海章センセーなんて、いったい何年ぶりだろう。もしかしたら乱歩賞受賞作の「ナイト・ダンサー」以来かもしれないほどご無沙汰してしまいました。鳴海センセーは航空サスペンス系というイメージが強くて、あまり馴染みのない感じでしたが、意外と警察小説なども書いていました。
本書は静岡県熱海市ならぬ温海市という町を舞台にした警察小説です。古くからの温泉街であるが、東京からの近さが仇となって寂れてきた街、温海市。架空の街とはいえ、もろにまんま熱海市です。温海市はカジノ導入で復活を目論むが一方で利権争いも生まれ、非合法組織が暗躍するようになり、一触即発の状況です。そこに特命を受けて捜査に乗り込んだマル暴のエース國貞と所轄の若手である住田がコンビを組み、謎の多い殺人事件に挑みます。
と、ここまでは良いですね。なんだか普通の警察小説です。
しかし、200ページを過ぎた辺りから様相は大きく変わっていきます。
悪の組織はとんでもない奴を飼っていました。ここから一気に猟奇殺人、しかも相当にグロい話になっていくのです。最初のややハードボイルドな展開は何だったのか。あの誉田哲也センセーでさえもここまで唐突にはやらかしませんわ。

予告なしのグロは身体に悪いです。

前半にグロ色が微塵もないところから中盤で急に登場、というサプライズ。心の準備ができていないところにエグイ描写。鳴海センセー勘弁してください。
本書は別にグロである必要はないのでは、と思うのですが、果たしてどうでしょうか。
このグロい部分を除けば、ラストにかけてのヒリヒリしたギャンブル場面、アクションシーン、その後のドロっとした結末まで、一気に読ませてくれます。なぜ?の部分がそれなりにありますが、余韻の残るラストと言って良いでしょう。それだけにグロ場面が不要に思えるのです。





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2017年01月10日

書評772 石持浅海「パレードの明暗 座間味君の推理」

こんにちは、曹源寺です。

冬休みが終わり、学生たちは3学期に突入しました。センター試験は目の前です。今週は寒い日が続く見込みですが、風邪などひかないよう気をつけて過ごしてくださいね。

さて、我が家ではこの正月に新たな家族を迎え入れました。
ハリネズミです。

かわいいです。

娘と息子がお年玉を出し合って買ってきました。

最初は反対しました。人に懐きにくい、夜行性である、針が痛い、寒いと冬眠してしまう、というのが反対理由です。

でも、小さい頃から飼えば多少は懐く、昼もちょくちょく起きる、針は警戒させなければ逆立つことはない、25℃前後に保てばOK、ということからとりあえず理解しましたので断固反対とまではいきませんでした。

家に来ました。繰り返しますが、かわいいです。
懐くのはこれからですが、家長として懐いてもらおうと思っています。

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内容(光文社HPより)
警視庁の女性特別機動隊に所属し、羽田空港の保安検査場に勤務する南谷結月は、日々の仕事に不満を感じていた。身体を張って国民を護るのが、警察官として最も崇高な使命だ。なのに――。そんな不満と視野の狭さに気付いた上官から、結月はある飲み会に同席するように言われる。行ってみた先に待っていたのは、雲の上の人である大迫警視長と、その友人の民間人・座間味くんだった。


曹源寺評価★★★★★
「月の扉」に始まり、「心臓と左手」「玩具店の英雄」と続く「座間味君シリーズ」の第4弾であります。いつの間にか「呑み屋探偵」というあだ名がついているようですが、要するに座間味君が警察幹部と食事をしながら事件の真相を明らかにしていくというストーリーなんですね。安楽椅子探偵の呑み屋バージョン、それもかなりあっさりした短編です。
本書のパターンは、警視庁の大物警視長である大迫と、女性特別機動隊所属の南谷結月巡査、これに座間味君が加わった3名で新宿駅東口近くにある大型書店で待ち合わせ、居酒屋や焼肉、そば店などに入って談義をするというところから話は始まります。
大迫が「こんな事件があってね〜」とちょっとした話題を振り、それを結月が「教訓になります」とかしこまったところに座間味君が意外な一言を言います。
静まり返る場。一瞬言葉に詰まる二人。座間味君はしれっと続けます。「どうもこうも」と。そして明かされる真相。事件を裏返してみてみたら、実はこういうことも考えられますね〜という真相。でも正論でもあったりする。ややこじつけでもあるけれど、なるほどこの見方は正しいのだろうと。
事件の概要を聞いただけで真相に辿り着くという恐るべき離れ業を駆使する座間味君。実在したらどんな感じなのでしょうか。小説の中では子煩悩でおとなしい、しかも礼儀をしっかりわきまえている背筋の伸びた青年という描き方をされています。でも、こんな会話をリアルに聞かされたら

ちょっと嫌味な奴に見えなくもなさそうです。

あと、本書のシチュエーションとして警察の大物幹部と下っ端が飲み会を開き、そこに一般青年が加わるという極めて不可解な、現実にはありえそうにない設定が笑いのポイント(?)なのかもしれません。警視庁の警視長なら役職は方面本部長か主要参事官クラスですからやはり大物です。そんな大物がたかが巡査に声かけして何度も食事に行ったりはしないでしょう。
座間味君も座間味君としか扱われていませんが、座間味君は本名ではなかったような。





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2017年01月06日

書評771 深緑野分「戦場のコックたち」

あけましておめでとうございます、曹源寺です。

今年の正月はのんびりと親戚参りしただけでしたので、こりゃヤバイ!と思って約5kmのランニングをしましたら思いっきり筋肉痛になりましたorz
たった5kmで、、、しかも首回りまで痛い、、、
鍛えなおそうと決心した正月でした。

さて、最近は統計がいろいろとおかしいというニュースがあちこちで出回るようになりました。特に、統計の表示がおかしいという声は大事です。なぜかというと、見た目で騙されないようになってきているという国民のリテラシーが高まっているのがよく分かるからです。
しかし、一次ソースそのものが誤っていたとなると話は簡単ではありません。

沖縄県の県民所得、低く計算 計算方式変更で最下位維持…「基地問題が経済的足かせになっていることを示したいのでは」(1/5 産経新聞)
都道府県ごとの経済力を示す指標である沖縄県の1人当たり県民所得が、他県の例よりも所得が低くなる方式で計算されていることが4日、分かった。沖縄県は平成21年度の1人当たり県民所得が高知県を抜き、戦後初めて最下位を脱出した翌年度に計算方式を変更し、22年度以降も最下位を維持している。政府関係者は、基地問題が経済的な足かせになっていることを県内外にアピールする狙いがあると指摘する。
(以下、省略)

県民所得は内閣府のホームページから見ることが多かったので、てっきり内閣府が計算しているのかと思っていましたが、各都道府県が算出していたみたいですね。しかもその計算式は公開されておらず、果たして全国で統一された計算方式によって推計されているのか、もしかしたらかなりのズレが生じているのではないか、そんな疑念も湧いてしまいそうです。

「自分で分析したかったら一次ソースを見に行け」とさんざん教え込まれた自分としては、そもそも一次ソースが違っていたらどうしたらよいのかさっぱり分かりません。
最近は政府統計もアラが目立つようになりました。先日も書きましたが、厚生労働省と農林水産省の統計データは公表タイミングが遅すぎてタイムリーに市場を把握することができません。国土交通省と経済産業省は比較的早いのですが、経済産業省はものによっては補正が入りまくっていて使うのにものすごく苦労します。県民経済計算は恣意的な加工が可能となるような集計方式がまかり通っているならば、内閣府がデータだけ収集して統一したやり方で集中的に推計するべきでしょう。


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内容(東京創元社HPより)
1944年、合衆国軍のコック兵となった19歳のティム。彼と仲間たちが戦場で遭遇したささやかだが不可思議な謎とは――戦いと料理と〈日常の謎〉を連作形式で描く、著者渾身の初長編!


曹源寺評価★★★★
2015年の「このミス」2位、「文春ミステリ」3位、そして直木賞候補作にもなったのが本書です。
2段組み345ページの連作短編という名の長編(笑 で、しかも舞台は第2次大戦中の合衆国軍ですから、読むのはそれなりに大変です。
主人公のティモシー(ティム)・コールは南部出身の若者。祖母の料理好きが遺伝して、コック兵に志願します。ティムは周囲からキッドというあだ名をつけられます。そのティムの周囲で(特に戦場で)起こるさまざまな謎を相棒のメガネ君とともに解き明かしていきます。
時間的な舞台としては、1944年6月のノルマンディー上陸作戦から1945年4月のドイツ軍降伏までがこれに当たります。したがいまして、戦争も末期、フランス、オランダ、ベルギー、ドイツ、オーストリアあたりは国際法も関係ないほどドロドロの地上戦が行われた場所という凄惨な舞台であります。そのなかでは気楽なコック兵というわけにもいかず、必要に応じて最前線に送り込まれて補給部隊が来るのをまだかまだかと待ち続ける地獄の戦線に置かれます。
そんなときに呑気に謎解きなどやっている場合か!と思いきや、この謎を解かなければ先へは進めないような、場合によっては戦況がひっくり返ってしまうかのような謎もあったりします(大げさかな)。
まさに殺し合いの場面でさえも筆致が淡々としている一方で、かえってその方が戦場にリアルさを見せ付けてくれるようで読者を精神的に追い込んでいきます。これは生半可なミステリとして読んではいけないのだぞ、と。

つーか、これは戦争小説だよね

と心の中で念じながら読まないといけないでしょう。
仲間が次々と死に、あるいは精神的に病んで、前線復帰できないほどの傷を負い、いつの間にか古参兵となっていく主人公。残った仲間にもある嫌疑がかけられたりします。
ここに主人公の心情を書き連ねてあったら、詠むのが本当に大変だったと思いますが、主人公はかなり淡々としていて、あぁ、これはやはりミステリなんだな、と再認識させてくれます(読後ですが)。

読むのが大変だが、なぜか惹かれる小説

という意味では、京極夏彦センセー以来の何かを感じてしまった次第。





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posted by 曹源寺 at 15:49| Comment(0) | TrackBack(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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