ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2017年01月27日

書評777 垣根涼介「室町無頼」

こんにちは、曹源寺です。

先日は昭和の名優、松方弘樹氏がお亡くなりになりました。「遠山の金さん」はそれほどではありませんでしたが、「元気が出るテレビ」の松方さんは好きでした。ご冥福。

小さい頃にテレビという箱の中で強烈な印象を放っていた俳優さんといえば、個人的には丹波哲郎さんだったと思います。いま思い返してもかっこいいです。目力が他の俳優さんとは圧倒的に違いましたね。
あの目力を継承している俳優さんって誰かいるのかなあと思ったら、V6の岡田准一さんがこれに近いですね。「海賊とよばれた男」では20代から90代までの主人公を演じたということで話題になりましたが、終戦の1945年に60歳という主人公、國岡鐡造を演じる岡田の眼は丹波哲郎のそれであります。岡田准一さんがシブい中年になったとき、どんな演技を見せてくれるのか楽しみです。

さて、そんなテレビ界ですが自分はあまりテレビを観ません。それでもちょっと話題になったりしたドラマはTverとかでチェックしたりもします。近年は時代劇が廃れてしまったわけですが、大河ドラマやちょっと話題になった小説からの映像化作品はあるわけです。先日は映画になった「超高速!参勤交代」を観ましたが、軽くてテンポの良いストーリーがとても面白かったです。今日の書評に置いた「室町無頼」も読み物としては最高に楽しい本でした。さすが直木賞の候補に挙がるだけのことはあります。本書は戦国時代突入の前、幕府の力が弱まり飢饉も重なって各地で土一揆が発生する時代を背景に、棒術で世間を渡り歩いた青年が主人公です。動乱の時代を生き抜くため、あるいは強大な敵を前にして、「修行して強くなる」というストーリーはドラゴンボールのそれですが、自分の少年時代は香港映画がそれに当たります。そうです、ジャッキー・チェンです。いまのアラフィフ男子なら「酔拳」のマネをしなかった人はいないのではないかと思います。この「修行して強くなる」という成長物語は恋愛ドラマと同じくらい普遍性の高いテーマだと思うのですが、あまり連続ドラマなどで取り上げられることはありませんね。恋愛や人間関係を通して成長する話はあっても、修行を重ねてライバルを打ち破る話は漫画とアニメの専門領域になっています。
いまこそ、時代劇を通じて「修行して強くなる」主人公の成長物語をドラマ化するチャンスではないかと思うのですが、いかがでしょう。

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内容(新潮社HPより)
応仁の乱前夜、富める者の勝手し放題でかつてなく飢える者に溢れ返った京の都。ならず者の頭目ながら骨皮道賢(ほねかわどうけん)は権力側に食い込んで市中警護役を任され、浮浪の徒・蓮田兵衛(はすだひょうえ)は、ひとり生き残った用心棒を兵法者に仕立てようとし、近江の古老に預けた。兵衛は飢民を糾合し、日本史に悪名を刻む企てを画策していた……。史実に基づく歴史巨篇。


曹源寺評価★★★★★
2016年の直木賞候補にもなった本作は、「光秀の定理」で時代小説デビューされた垣根涼介センセーの新作であります。あぁ、ついに垣根センセーも時代小説のほうに行ってしまわれたのですねぇ。。
でも、垣根センセーの本質的なところというのは、やはりアウトローを描くという点にあるのではないかと思います。「ヒートアイランド」「ワイルド・ソウル」などでみせてくれたアウトローには本当しびれました。しかし、アウトローを描くなら時代小説のほうがよい、とセンセーが考えておられてもそれは当然の帰結であるといわざるを得ません。なんといっても刀一本で世間を渡り歩くことができる時代ですから。
そんなアウトローでも、垣根センセーの描くアウトローはこれまたちょっと違うわけですよ。本書では武家の出身だが取り潰しに遭い流民となった才蔵を主軸に据え、彼の生き様を描いていきます。修行に明け暮れて、いつの間にか無敵になる棒術の達人、実にいいですね。まるで、

ドラゴンボールにおける孫悟空の修行時代

を彷彿とさせてくれます。
また才蔵のほか、歴史に残っている実在の人物として骨皮道賢、蓮田兵衛を置いて後に乱世となる室町時代後期の世相を浮かび上がらせてくれています。
この道賢と兵衛がまたいい味を出してくれます。まるで、

北斗の拳のラオウとトキ

のように、生まれてくる時代と場所を間違えなければひとかどの人物になったであろう二人です。
ドラゴンボールに北斗の拳なんて、ジャンプ世代を意識したわけではないでしょうに。あ、垣根センセーご自身がジャンプ世代ですね。こんなの面白くないわけがありません。

しかも、ただ強くなるだけではありません。強くなる=無敵の構図は普遍的であり本書もまた然り、ですが、本書では「際(きわ)」という単語が出てきます。
(以下、多少ネタバレ)
際とはつまるところ、人間としての限界と言い換えることができるものでしょうか。たとえば、どんなに一流のプロ野球選手であっても、シーズン打率で4割を残すのは無理です。でも、3割30本というひとつの指標はありまして、ここに到達することができる選手は1年に一人か二人です。剣術や棒術も然りで、極めるところにあるものは完璧超人ではなくて人間としてできうるギリギリの線に届いたところ、それこそが「際」であるというのでしょう。

本作は映像化するなら映画ではなくて民放の連続ドラマでやってほしいですが、こうした「際」の話みたいなサイドストーリーをうまく取り込めないと面白さは半減してしまいそうです。





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posted by 曹源寺 at 16:59| Comment(1) | TrackBack(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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