ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2017年04月28日

書評799 大沢在昌「夜明けまで眠らない」

こんにちは、曹源寺です。

マスゴミがよく定期的に記事にしているニュースってありますよね。そういうのはまともなニュースのなかにプロパガンダが混ざっていたりするなので注意が必要です。
なかでも注意したいのが「国の借金」と「報道の自由度ランキング」でしょうか。
国の借金とは財務省が定期的に発表しているやつですが、よく「国民一人当たりの借金は800万円もある!」「孫子の代までこの借金を背負わせてはいけない」とかいうおまけのコメントがついてきます。
これは明らかに間違いなので気をつけなければいけません。バランスシートで考えれば分かる話ですが、借金=負債であるならば、バランスシートの反対側にある資産はどうなんだということですね。借金が増えていてもそれ以上に資産があれば問題ないですし、そもそも国民の借金ではなくて「政府の借金」ですから、国民は関係ありません。というか、政府は国債を発行して国民に買ってもらっているのが実情ですから、国民はいわば「金を貸している」方になるわけです。それを財務省(とマスゴミ)はなぜか「国民一人当たりの借金」という表現を使って、さも日本はヤバイ!とか借金大国だ!とか騒いでいるわけですね。まったくおかしな話です。

もうひとつの「報道の自由度ランキング」ですが、最新の調査では日本は先進国中最下位の72位だそうです。
アサヒが記事にしていました。
報道の自由度ランク、日本は72位 G7最下位に(4/26朝日新聞)
国際NGOの国境なき記者団(本部・パリ)は26日、2017年の「報道の自由度ランキング」を発表した。調査対象の180カ国・地域のうち、日本は前年と同じ72位だが、イタリア(52位)に抜かれて主要国7カ国(G7)では最下位だった。
ランキングは各地で働く記者や専門家へのアンケートをもとに作成。北欧諸国が上位で、中東シリアや北朝鮮が下位に並ぶ傾向は変わっていないが、世界各地で「民主主義が後退し、ジャーナリズムの力が弱まっている」と警告している。
日本は10年の11位から順位の低下が続く。安倍政権への辛口キャスターらの降板なども踏まえ、「メディア内に自己規制が増えている」「政権側がメディア敵視を隠そうとしなくなっている」などと問題視。特定秘密保護法については、国連の特別報告者から疑問が呈されたにもかかわらず「政権は議論を拒み続けている」とした。
43位だった米国については「トランプ大統領がメディアを民衆の敵だと位置付け、いくつかのメディアのホワイトハウスへのアクセス制限を試みた」と警戒感を示した。(パリ=青田秀樹)

■報道の自由度ランキング(カッコ内は前年との比較)
1 ノルウェー(3)
2 スウェーデン(8)
3 フィンランド(1)
4 デンマーク(4)
5 オランダ(2)
16 ドイツ(16)
22 カナダ(18)
39 フランス(45)
40 英国(38)
43 米国(41)
52 イタリア(77)
72 日本(72)
148 ロシア(148)
176 中国(176)
177 シリア(177)
178 トルクメニスタン(178)
179エリトリア(180)
180 北朝鮮(179)


同じ報道をネットニュースの「J-CASTニュース」が取り上げています。
「報道の自由度」日本は変わらず72位 英米はランク落とす(4/27J-CAST)
国際NGO「国境なき記者団」は2017年4月26日、17年の「報道の自由度ランキング」を発表した。日本は評価対象の全180か国・地域のうち、72位にランクインし、16年と同じ順位となった。16年は77位だったイタリアが52位に順位を上げたため、日本は先進7か国(G7)では最下位になった。
調査では日本の報道について、大手メディアの自主規制や記者クラブ制度によって、ジャーナリストが権力監視の役割を果たせていないことや特定秘密保護法について国連から疑問視されたにも関わらず「政権は議論を拒み続けている」などと指摘している。
また、米国はトランプ政権によるメディア批判の影響で43位と16年より2つ順位を下げたほか、英国についても「国家安全のためとしてメディアに高圧的になっている」と指摘し、16年より2つ下の40位とした。一方で、17年もトップ3はノルウェー、スウェーデン、フィンランドと北欧諸国が占め、最下位は北朝鮮だった。


はい、比較していただくと一目瞭然ですね。アサヒが書いていないキーワードがあります。「記者クラブ制度」ですね。自分たちの作った制度が批判されているのに、そのことには全く触れないで、まるですべて政府が悪いみたいな書き方をしているのがアサヒです。

そもそも、このランキングが何を基準にしているのか良くわからない時点でクソなわけですよ。定量的な評価軸があれば堂々と公表すれば良いのです。たぶんないんでしょうが。こんな「自由度」なんてものは主観的な評価しかできないでしょう。なんにもありがたがる必要はないですし、ランキングが低いのも自業自得な部分があるのは前述の通りです。これをもって「我々報道機関は政府によって弾圧されているのだ〜」とでも言いたいのならば、まったくのお門違いであると言えるでしょう。

この2つの報道は、すでに多くの識者によって化けの皮が剥がされているわけですが、マスゴミはこれに懲りずに同じ報道を繰り返しています。だから情弱はどちらも少なからず信じていたりするわけで、「嘘も百回言えば本当になる」を地で行っているのが本当に恐ろしいです。

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内容(双葉社HPより)
タクシー運転手の久我は、血の匂いのする男性客を乗せた。かつてアフリカの小国で傭兵として戦っていた久我の同僚らしい。客は車内に携帯電話を残して姿を消した。その携帯を奪おうとする極道の手が迫り、久我は縁を切ったはずの激しい戦いの中に再び呑まれていく――みなぎる疾走感がたまらない大沢ハードボイルドの新たな傑作!


曹源寺評価★★★★
タイトルから想像したのは「お、久しぶりにサラリーマン坂田勇吉シリーズ出たんかいな」という印象だったのですが、共通しているのは「夜明け」というキーワードだけでした。坂田勇吉シリーズは「走らなあかん、夜明けまで」「涙は拭くな、凍るまで」と「語り続けろ、届くまで」という3つの作品がありまして、ただのサラリーマンがなぜかあちこちでヤクザの方々の抗争に巻き込まれるというお話です。
でも全然違いました。
今回の主人公は元傭兵でタクシードライバーの久我晋。タイトルのとおり、夜が明けないと眠れないという体質になってしまっているという設定です。その久我の乗客として現れた謎の男。その男が落としたのか置いていったのか、スマートフォンが座席に残されていた。それを欲しがったのはなぜかヤクザのフロント企業であった。謎の男は何者で、なぜ久我に接触しようと思ったのか。大きな陰謀の渦に巻き込まれていく久我が足を洗ったはずの傭兵の世界に再び足を踏み入れていく。
うーん、いいなあ。やっぱり大沢センセーのハードボイルド系作品はしみじみいいなあと思います。久々に新しいハードボイルドヒーローが登場しまして、うれしいです。
大沢作品にありがちな、本筋の方々と国内で勢力を伸ばそうとする外国の勢力、そして警察と孤立した主人公という設定ですが、

もうこれでいいじゃないですか。

いつもどおりの大沢作品の王道を行く設定であっても、それは逆に読者に大いなる安心感を与えてくれるわけですよ。そのくせに、相変わらずの疾走感と全体に漂うハードボイルドな香り。最後まで気の抜けないスリル溢れる展開に、我々読者は大沢センセーの力量を改めて感じざるを得ません。





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2017年04月25日

書評798 今野敏「サーベル警視庁」

こんにちは、曹源寺です。

今日にも北朝鮮からミサイルが飛んでくるのではないかと、ネットでは戦々恐々とされている人が多いみたいですが、どうやら米国と中国は経済圧力を強めて金正恩を亡命させ、正男の息子を使って傀儡政権を樹立させたいようですね。
でもその前に軍部がクーデターを起こす可能性も残っているとは思いますので、警戒だけは怠らないほうが良いのではないかと思います。

さて、こうした有事に対しては、かつて朝日新聞が「一発だけなら誤射かもしれない」と記事に書いて猛烈に炎上した過去がありますが、これに関して政治部次長の高橋純子氏が紙面「政治断簡」のコーナーでこんな記事を書いてきました。

作家の百田尚樹氏は「もし北朝鮮のミサイルで私の家族が死に、私が生き残れば、私はテロ組織を作って、日本国内の敵を潰していく」「昔、朝日新聞は、『北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない』と書いた。信じられないかもしれないが、これは本当だ。今回、もし日本に北朝鮮のミサイルが落ちた時、『誤射かもしれない』と書いたら社長を半殺しにしてやるつもりだ」とツイッターに投稿した。あらタイヘン。そんな記事本当に書いたのかしら。「北朝鮮」「一発だけ」「誤射」でデータベース検索したが、結果は0件。永遠のゼロ件。百田氏の過去のインタビューなどから類推すると、おそらく2002年4月20日付朝刊「『武力攻撃事態』って何」のことだと思われる。
Q ミサイルが飛んできたら。
A 武力攻撃事態ということになるだろうけど、1発だけなら、誤射かもしれない。
北朝鮮を含め具体的な国や地域名は出てこない。一般論として、武力攻撃事態の線引きは難しいということをQ&Aで解説する記事だった。


作家の百田尚樹センセーはツイッターでこれに反論しています。

百田尚樹?
@hyakutanaoki
私を名指しで非難しつつ、「一発だけなら誤射かもしれないという記事は一般論」とごまかしているが、02年4月の記事は、北朝鮮のミサイルを念頭に置いた「ハーグ規範」が採択された直後のもの。
つまり誰が読んでも、北朝鮮のミサイルが日本に着弾したことを想定した記事。
朝日さん、汚いよ。


百田センセーの正論は当時の記事をみればわかりますが、補足しますとこのQ&Aの次にあるのは「不審船」のQ&Aです。誰がどう読んでも北朝鮮のミサイルであると理解するはずです。

朝日新聞の悪行はとどまるところを知りませんが、特にこの高橋純子なる政治部次長は過去にもいろいろとやらかしているので、あえて個人名で批判してみました。
たとえば、週刊ダイヤモンドがこんな記事を載せたことがあります。

政治コラム「だまってトイレをつまらせろ」でわかる朝日新聞の落日(2016/3/12DIAMOND ONLINE)
朝日新聞社には、高橋純子さんという政治部の次長サンがいる。りんりんリーチの高橋純子さんではない(※こちらは女性プロ雀士です。麻雀ゲーム『極』では、リーチをかけるとき、りんりんリーチと叫びます)。
朝日のほうの高橋純子次長サンだが、この方がお書きになる記事は毎度毎度、実に難解で、朝日の編集局や校閲はよくこんな原稿を通したなあ、と思ってしまう内容ばかりなのである。次長サンのスタンスは「アンチ安倍政権」で凝り固まっているが、はっきり言って、何が言いたいかわからない文章をお書きになる。
先月28日、高橋次長サンは『だまってトイレをつまらせろ』なるタイトルのコラムを書いた(顔写真入り)。
〈(前略)ある工場のトイレが水洗化され、経営者がケチってチリ紙を完備しないとする。労働者諸君、さあどうする。
 @代表団を結成し、会社側と交渉する。
 A闘争委員会を結成し、実力闘争をやる。
まあ、この二つは、普通に思いつくだろう(中略)ところが、船本洲治という1960年代から70年代初頭にかけて、山谷や釜ケ崎で名をはせた活動家は、第三の道を指し示したという。
 B新聞紙等でお尻を拭いて、トイレをつまらせる(中略)。
わたしは、「だまってトイレをつまらせろ」から、きらめくなにかを感受してしまった。
 生かされるな、生きろ。
 わたしたちは自由だ〉
この「生かされるな、生きろ」ってセンテンスは、いったいどこから出てきたのか不明なのだが、船本洲治氏が残した言葉なのかしら? ちなみに、高橋次長サンは記さなかったけど、船本洲治という「活動家」は山谷、釜ケ崎の労務者問題に取り組んでいますが、地域センターを爆破した疑いで指名手配されています。テロリストじゃないですか。彼は逃走中の1975年、皇太子殿下(当時)の訪沖に反対し、嘉手納基地の前で焼身自殺を遂げます。船本氏は29歳でした。
(以下は長いのでリンク先でどうぞ)

政治的にはややリベラルな姿勢のダイヤモンドですら、アサヒの政治部次長にこんな人がいるなんて、と驚きを隠せないという記事です。しかもこれ1年前の記事ですから、この高橋次長は政治部にずっと居座っているわけですよ。元々支離滅裂な文章を書くので有名な人なようですが、こういう人でも昇進できるというか、こんな記事を書く人でないとアサヒでは昇進できないのではないかと思わせてくれますね。実際、出版部門が分社化されていますが、あちらにいる人のほうがこと文章においては優秀な人が多いような気もします。

まあ、ミサイルが本当に飛んできたときのアサヒの言い訳が今から楽しみです(その時に自分が生きていればの話ですが)。

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内容(角川春樹事務所HPより)
明治38年7月。国民たちは日露戦争の行方を見守っていた。そんなある日、警視庁第一部第一課の岡崎孝夫巡査が、警察署から上がってきた書類をまとめていると壁の電話のベルが鳴った。不忍池に死体が浮かんでいるという。鳥居部長、葦名警部とともに現場へ向った。私立探偵・西小路臨三郎もどこからともなく現れ捜査に加わることに――。殺された帝国大学講師・高島は急進派で日本古来の文化の排斥論者だという……。そして、間もなく陸軍大佐・本庄も高島と同じく、鋭い刃物で一突きに殺されているとの知らせが――。元新撰組三番隊組長で警視庁にも在籍していた斎藤一改め、藤田五郎も加わり捜査を進めていくが、事件の背景に陸軍省におけるドイツ派とフランス派の対立が見え始め――。今野敏が初めて挑んだ、明治時代を舞台に描く傑作警察小説の登場!


曹源寺評価★★★★
今野敏センセーは人気絶頂なのにチャレンジングなことをしてくれるので好きですわ。今度は明治時代の警視庁を舞台にした警察小説です。明治38年といえば1905年。日露戦争の真っ只中であります。
時代考証すれば、3月に奉天会戦、5月に日本海海戦、9月にポーツマス条約という年です。戦勝に沸きながらも講和条約で揉めて政府批判が沸き起こる年でもあります。
そんな時代の殺人事件を警察小説として描いたのが本書です。なぜか元新撰組の斉藤一が登場してきますが、それ以外にも小泉八雲とか「黒猫先生」(最後まで実名が出ませんがたぶんあの大作家)などが名前だけですが登場してきます。
明治中盤は江戸や瓦解(維新)をひきずりつつも脱亜入欧を進めている最中ですから、いわゆる急進派と穏健派(保守派)が対立していたり、自由民権運動と社会主義が生まれていたりと、思想的な対立があちこちで始まっていたわけですね。
当時の警察は内務省の管轄にあって旧薩摩藩の流れを汲んでいるのは警察小説ファンなら当たり前の知識ですが、まだ思想弾圧などは行われていなかったのかもしれないですね。ただ、本書の主人公(語り部)である岡崎巡査は米沢の出身、べらんめえ口調の親分肌で上司の鳥居部長も薩長出身ではありません。いわゆる反主流派なのかもしれません。ほかにも理論派の葦名警部、目立たない服部課長、角袖(カクソデ→デソクカ→デカの語源ですね)の荒木、さらには伯爵の孫にして私立探偵の西小路臨三郎などなど。このメンバーのキャラクター造型がなかなかに楽しくて、本書だけでは書ききれないほどの造型ですから、

絶対に続編を狙っている

のが良くわかります。
続編、大歓迎です。もしかしたら、隠蔽捜査シリーズのように人気シリーズに化けるかもしれませんね。





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2017年04月21日

書評797 京極夏彦「書楼弔堂 破暁」

こんにちは、曹源寺です。

麻生副総理兼財務大臣が米国で増税に触れた発言をしたということで読売新聞が記事にしています。

麻生氏「上げやすい景気状況に」消費増税に意欲(4/20YOMIURI ONLINE)
【ニューヨーク=有光裕】麻生副総理兼財務相は19日、ニューヨーク市内で講演し、2019年10月に予定される消費税率の10%への引き上げについて、「上げやすい景気状況になりつつあることは確かだ」と語った。
10%への引き上げは2度延期されており、「三度目の正直」での実現に意欲を示した。
麻生氏は「今までとは状況が全然違う。少しずつ消費が伸びており、今年の後半には、そうした姿が出てくると思う」と語った。
一方、麻生氏は環太平洋経済連携協定(TPP)について「米国なしで11か国でTPPをやろうという話は、5月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で出る」と述べた。米国はTPPからの離脱を通知しており、日本として米国を除く11か国での発効を目指す方針を示したものだ。


財務省は消費税率10%の実現に執念を燃やしていることが良くわかる記事です。
もういい加減、プライマリーバランスとか言って欲しくないですし、この情勢で増税しようなどと考えるのはおばかとしか言い様がないのですが、いま政府がやるべきことは、
・法人税率を引き下げたのだからその分をしっかり給与所得などに振り分けるよう企業の活動を促すこと
・東京の一極集中を避けて地方にも投資拡大を推進させること
・子育て環境を整備して雇用と人口増加を旗振りすること
ではなかろうかと思いますが、そうした施策がどうにも置き去りにされているようでなりません。

財務省は増税したあとに税収が増えていないことを知っていて、それでも増税をしようとする勢力です。それに乗っかっている麻生大臣もクソと言えますが、経済を知り尽くしているはずの経済学者もこれに乗っかろうとしているのはなおさら許せません。
ちょっと消費が伸びたくらいで増税とか言い出されたら、余計に消費が伸び悩むのではないかとも思ってしまいます。政府自民党の失言が多いと話題になっていますが、これもまた失言といわざるを得ないでしょう。

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内容(集英社HPより)
扠、あなた様はどのようなご本をご所望ですか─。
立ち止まって眺めるに、慥かに奇妙な建物である。櫓と云うか何と云うか、為三も云っていたが、最近では見掛けなくなった街燈台に似ている。ただ、燈台よりもっと大きい。本屋はこれに違いあるまい。他にそれらしい建物は見当たらないし、そもそも三階建てなど然う然うあるものではない。しかし到底、本屋には見えない。それ以前に、店舗とは思えない。板戸はきっちりと閉じられており、軒には簾が下がっている。その簾には半紙が一枚貼られている。近寄れば一文字、弔――。と、墨痕鮮やかに記されていた。


曹源寺評価★★★★★
京極作品は「死ねばいいのに」以来、本当に久しぶりでした。センセーは1963年生まれですから自分と世代的にはあまり変わりません。なのに、なぜこのような文体が書けるのか。こんな文章、他の誰にもマネはできません。文壇界に衝撃的なデビューを飾ったのも分かるような気がしますね。紛れもなく天才です。
さて、本書は明治20年代の東京を舞台に、元旗本にして潰れた煙草製造業に従事していた高遠彬を語り部として、都内のはずれ(これがどこなのか)に棟を構える書店、弔堂(とむらいどう)にまつわる短編を集めた作品です。初版は2013年11月、文庫化が2016年12月です。
連作短編の形式でつごう6話が収録されています。
弔堂は当時の日本橋丸善にも引けを取らないほどの棚を持つ大型書店という設定ですが、一見しただけでは書店と分からない3階建ての塔のような外観から、ふらっと立ち寄るような書店ではありません。中も薄暗くて、目が慣れるまでは書庫のラインナップが分かりにくいですが、初めて棚を見た人は総じて驚くような圧倒的な品揃え。元僧侶の主人と美形の小僧さんがもてなしてくれます。
明治中期は新聞にようやく輪転機が入ってきたような時代ですから、まだ本は貴重品で大量生産されてはおりません。貴重であるがゆえに、貸本屋のほうが主流な時代に主は売ることを選んでいます。それはなぜなのか。
主人曰く、誰かに所有してもらうことが本の供養になるという。うーん、これだけでも深いなあ。本は読まれてこそその役割を全うするものであって、棚に飾られているだけでは死んでいるも同然だと喝破しているのです。
本書の底流にあるテーマは「本とは何か」というものでしょうか。本と“いんふぉめーしょん”の違いは何か、とか、人生を大きく変える本とは、とか、本を「供養」するとはどういうことなのか、とか、いろいろと考えさせてくれます。
それは、現代の粗製乱造される本への(あるいは版元への)警鐘にも聞こえ、また、本を粗末に扱うことへの戒めにも見えます。
つまり、現代を生きる我々にも

本に対してどのように向き合っていくべきなのか

を問いかけてくれているのだと思います。
続編が出ていますので、そちらも読んでみようと思います。





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2017年04月14日

書評796 今野敏「継続捜査ゼミ」

こんにちは、曹源寺です。

以前、強制加入団体である日弁連が政治的活動をするのはどうなんでしょう?という疑問を書き込んだことがあるのですが、ちょうど産経新聞が連載記事でこの疑問を追及していました。4月4日の朝刊にはどーんと1面で掲載されました。

【弁護士会第1部(1)】
政治集団化する日弁連「安倍政権、声を大にして糾弾」…反安保で振り回した「赤い旗」
(4/7産経WEST)

これ、(1)〜(4)までつながっていますので、興味のある方はご覧ください。具体的な事例を挙げて日弁連の政治介入を批判しています。産経、やりおるのう。

日弁連を批判した書籍はあまり見かけないんですよ。地元の図書館で探しても、司法試験制度を批判する本はあっても日弁連の政治活動について批判する本はありませんでした。
実際、京都の弁護士センセーが日弁連の意見表明を批判してホームページからの削除を求めた裁判は棄却されました。上記記事からの引用ですが、
同地裁は今年2月27日の判決で、強制加入団体の性格を踏まえ「政治的中立性を損なうような活動をしたりすることがあってはならない」と判示。その上で一連の意見表明が「法理論上の見地」から出たとする日弁連の主張を認め、南出の請求をいずれも退けた。
ということで、法理論が正しければ政治的主張が認められるとも言えそうな判決が出ています。
この産経の記事に対してはある弁護士センセーがツイッターで「我々は憲法を護り、人権を護るために活動しているのだからこの程度の主張は認められる」という趣旨のつぶやきを書き込んでいました。

えーっと、何言っているのか良くわからないんですが。
弁護士の活動というのは原告、被告のいずれにもありえるわけで、どちらかが正しくてどちらかが間違っていたとしても、その両方に被弁活動というのが発生するわけですよね。しかも、最高裁判決によって事例確定されたものでもない事件や事案については、どちらかに肩入れするようなことがあってはいけないのではないかと普通に思うのですがどうなんでしょう。
上のツイートについても、「強制加入団体なのに政治的発言はおかしい」と言っていることに対する反論にはなっていません。論点を微妙にすりかえるのは弁護士の常套手段でしょうかね。

まあ、いずれにしても、産経新聞が半ばタブー視されていた日弁連をおおっぴらに批判し始めたということで、マスゴミもたまにはやるじゃねえかと思った次第。

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内容(講談社HPより)
史上もっとも美しい捜査チーム誕生!
かつてない新感覚・警察小説!!
元ノンキャリ刑事の大学教授と少数精鋭のイマドキ女子大生が挑むのは、継続捜査案件、つまり「未解決事件(コールドケース)」。キャンパスで起こる様々な事件は、やがて、ある大事件に結びつき……。


曹源寺評価★★★★
刑事畑を長く勤め、警察学校の校長を歴任した小早川一郎。知人の伝手で三宿女子大学の准教授として再就職し、晴れて教授に昇進した小早川は、「継続捜査ゼミ」を開講した。そこに集まった5人の学生はいずれもさまざまな分野に精通する切れ者であった。継続捜査、すなわち未解決事件をゼミの題材として討論を重ねてもらおうとしたら、意外にも彼女たちは優れた才能を発揮し、、、
とまあ、女子大を舞台にしてゼミを通じて事件を解決していこうとする、これまでにないお話が今野センセーという大御所から生まれたのであります。
これを警察小説と呼んで良いのか分かりませんが、まあそのカテゴリに入れるのは良いのかもしれません。そう考えると

これは新しい警察小説や!

と言えなくもないですね。女子大生がゼミの一環で事件を解決する。なんだか面白いですね。
でも、内容はというと、今野センセーにありがちなご都合主義が随所に見られますのでちょっとそりゃいくらなんでもないんじゃないですかねぇ〜、というシーンのオンパレードではあります。
これ書いていくとネタバレが激しすぎるのでやめますが、ここまで酷いと

警察を馬鹿にするレベル

になってしまいませんかね。未解決事件がこんなにあっさりと解決してしまってはいけないのではないかと小一時間説教かましたいです。
同じ継続捜査モノでは佐々木譲センセーが「地層捜査」シリーズ(これと「代官山コールドケース」)を出しておられますが、こちらのほうがシリアスでリアルです。なにせ、何の手がかりもない未解決事件を手探りで追い始めるところからスタートして、少しずつ前に進んでいくのがたまらないんですわ。
本書は軽く読むには良いと思いますが、警察の本格捜査とかを期待してはいけないでしょう。





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2017年04月11日

書評795 深町秋生「探偵は女手ひとつ」

こんにちは、曹源寺です。

報道では「いわゆる共謀罪について〜」といった表現を使っているテレビ朝日などが、決して「組織的犯罪処罰法の改正」と正式に言わないんですが、もうこうしたレッテル貼りはやめませんかね。

統合リゾート法→カジノ法
平和安全法制→戦争法
組織的犯罪処罰法→共謀罪
日本食認定制度→すしポリス

これ全部どこかの政党かマスゴミが言い換えたんですよ。ほかにもレッテル貼って一般大衆を誤認させているのがありそうですので、今度まとめて調べてみようと思います。
特にこの組織的犯罪処罰法については、批准していない国が先進国では日本だけ、世界でも極めて小数になっているというのに、いろいろな理屈を捻じ曲げては反対している政党、団体、マスゴミが目に付きますね。
「表現の自由が侵害される」とか言いますが、ではスパイ防止法とかテロ対策法を批准している国は表現の自由がないのでしょうか?
否、まったくそんなことはないですね。欧州各国はほとんど批准していますので、これはまったく矛盾しています。もう屁理屈をこねても一般大衆は分かっていますので、いい加減にくだらない反対運動はやめて欲しいものです。

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内容(光文社HPより)
椎名留美は娘とふたり暮らし、山形市で探偵をしている――とはいうものの、仕事のほとんどは便利屋の範疇だ。パチンコ店の並び代行、農家の手伝い、買い物難民と化した高齢者のおつかい、デリヘルの女の子の送迎などなど。シーズンを迎え、連日さくらんぼ農家の手伝いをする留美に、元の上司である警察署長から、さくらんぼ窃盗犯を突き止めて欲しいという、久し振りの探偵らしい依頼が入ったのだが……。


曹源寺評価★★★★
深町センセーの最新作は連作短編の探偵モノでしたが、これがまたすごかったです。何がすごいって、舞台が山形市でちょっと仙台市内まで足を運ぶことがあっても基本は山形。元警察官にして夫とは死別している一児の母、椎名留美が主人公です。探偵事務所を開いているものの、依頼の大半は便利屋で、農作物の収穫の手伝いとかパチンコ屋の行列の代行とかデリヘルの送迎とか雪掻きとか、田舎ならではのさまざまな仕事に従事している。そんな留美が探偵らしい仕事をすると、いろいろと事件に巻き込まれていく。。。
地方の農村地帯を舞台にした探偵モノ、というジャンルは横溝正史のようなおどろおどろしいやつは別にして、あまりお見かけしたことがありませんでした。なんだか

コッテコテの山形弁が一周廻っていい感じ

に、ほんわかしています。
ストーリーは全然ほんわかではないのですが、留美の相棒役となっているのは地元の伝説の元ヤンだし、一番最初のお話は山形名物さくらんぼの窃盗事件ですwww
ちょっと悲惨な事件もありますが、全体を覆っているなんとも長閑で素朴な雰囲気は紛れもなく山形のそれでありました。
留美の武器はGPS発信器とスタンガンです。これもまたステキ。今度はこれで長編でも書いていただければ最高です。





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2017年04月07日

書評794 東野圭吾「危険なビーナス」

こんにちは、曹源寺です。

米国がシリアにミサイル攻撃を行ったということで、本格的に世界大戦が来そうな勢いです。米国は戦争が景気対策になっていますので、定期的にどこかを敵に回さないと経済が持たないのではないかと思っていますが、当たらずとも遠からずでしょう。
このミサイル攻撃は北朝鮮にもメッセージとして伝わっていることと思います。
「次はお前の番だ」と。
その意味でこの攻撃は一石二鳥なのでしょう。
ロシアは自分の隣接する国をコントロールできる状態にしておきたい、という願望があります。実際、そうしています。その取りこぼしがチェチェンなのかもしれません。
米国は自分の国にミサイルを向ける、あるいは射程範囲に入れることを絶対に許さない国です。おそらく、北朝鮮はミサイル開発を進めて米国を大陸間弾道ミサイルの射程に入れてしまったのではないか。だから米国がブチ切れた。
米国は怒り、金正男を傀儡にして中国の管理下に置こうとしたら、それを察知した北朝鮮が金正男を暗殺。やれるものならやってみろと言わんばかりの強硬姿勢に、いよいよ米国が動きだした、というのが真相ではなかろうかと。
自衛隊が南スーダンから撤退すると決めたのも、自民党が敵基地攻撃能力を保有しようと提言したのも、横田基地に無人偵察機グローバルホークが配備されたのも、麻生財務相が「日本の新聞が書いているより事態は深刻」と発言したのも、長嶺駐韓大使が帰任したのも、思い返せばすべては一本の線となって北朝鮮に向かっているということが分かりますね。

この手のニュースは非常に断片的ではありますが、つなげてみるとこうした結論になったりするわけです。穿ちすぎかもしれませんが、逆につなげてみようともしないマスゴミ、あるいは知っているくせにきちんと報道しないマスゴミには腹が立つのを通り越しています。
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内容(講談社HPより)
弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である弟の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てば経つほど、彼女に惹かれていく。


曹源寺評価★★★★
安定の東野圭吾センセーですが、今回はタイトルとその内容が微妙にずれているところ以外は面白かった作品の紹介です。
主人公の手嶋伯朗は動物病院に勤務する獣医である。母の禎子の再婚相手である矢神とは養子縁組をせず旧姓を名乗っている。矢神には一人息子の明雄がおり、米国から妻を連れて帰国してきた。しかし明雄はその後失踪。妻の楓が夫の失踪の原因を探るため、矢神家に接近する。縁を切ったはずの伯朗は楓に振り回されながらも矢神家にまつわるさまざまな確執を探り、過去の秘密に迫っていく。。。
この義弟の妻である楓が「危険なビーナス」ということでしょうか。うーん、

そんなに危険なのかなぁ

という感想がよぎっては消え、読み進めていくうちに違和感を覚えてしまったわけです。
危険なのは矢神家のほうだよなぁこれ、って感じなので、

絶対にタイトルがおかしい

と終始違和感でした。
ストーリーはなるほど、最近の東野作品にもありがちな「脳科学」とか「未知の医学的テーマ」、それに味付けする「数学的テーマ」が盛り込まれていますので、「ガリレオ」シリーズよろしく理系人間ならではの描写にとても惹かれてしまいます。実際、「後天性サヴァン症候群」は症例として認められているようですが、これを人工的に作り出そうとする動きはさすがになさそうです。
ラストもちょっとした驚きをもって迎えてくれますので、納得の一冊といえるでしょう。





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posted by 曹源寺 at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月04日

書評793 五十嵐貴久「逸脱捜査 キャリア警部道定聡」

こんにちは、曹源寺です。

駐韓国大使を帰任させるというニュースでようやく理解しましたが、おそらく北朝鮮周辺は相当緊迫しているのだと思います。
なぜかTVの報道では「邦人保護の観点から〜」という岸田外務大臣の発言をすっ飛ばしていますが、金正恩が党委員長に就任してからの断片的な報道をつなぎ合わせれば、政治的な駆け引きが水面下で行われてきていて、今はそれが少しずつ浮かび上がっているような状況ではないかと思います。
そろそろ来るべき災害とは別の趣旨で備蓄を始めたほうがよさそうです。

さて、この前の日曜日の毎日新聞に掲載されたコラムが個人的には痛いなあと思っているので取り上げてみます。長いですが、全文です。
時代の風 森友問題の本質=中島京子・作家(4/2毎日新聞朝刊)
イデオロギー教育の危険
話題になっている森友学園問題で、いちばん私が恐ろしいと思っているのは、安倍晋三首相の妻昭恵氏が100万円渡したかとか、10万円もらったかとかいうことでは、ない。9億円が1億円になった経緯を知りたいのはもちろんだが、恐ろしいと思っているのは、そこでもない。
究極に怖いと感じているのは、事件が発覚して最初のころに流れた、塚本幼稚園の動画だ。
子どもたちが「教育勅語」を唱和する姿は、まさに「洗脳」という言葉を思わせて背筋が凍った。臣民(天皇に支配される民)として、天皇の統治する国に緊急事態(戦争)があったら、自ら志願して死ねと教える戦時中の勅語を、無邪気な声がそらんじてみせるのは、異様だった。
さらに、衝撃だったのは、園児たちが運動会の宣誓で唱えた「日本を悪者として扱っている、中国、韓国が、心改め、歴史教科書でうそを教えないよう、お願いいたします」というフレーズだ。なんてことを子どもに言わせているのだろうか。この子どもたちは大きくなって、中国や韓国の人とどう接するのか。
事件に関連して名前の挙がった人たちは、みなこの塚本幼稚園の教育を知っていたし、賛同していたという。たとえば、昭恵氏は、塚本幼稚園での講演で、この幼稚園で培われた芯が、公立の小学校へ行って損なわれてしまう危険がある、だから「瑞穂の国記念小学院」が必要だという旨の発言をしていた。首相の妻が、日本の公教育を否定する発言をしているわけで、私は、100万円寄付するより深刻だと思っている。
従来積極的に日韓交流行事に参加し、「韓国はだいじな国」と発言してきた昭恵氏なのだから、ヘイトスピーチまがいの教育はだめだと、はっきり言うべきだった。そのほうがどれだけ首相の妻らしいふるまいだったか。
森友学園=塚本幼稚園を支えてきたのが、戦時中の思想に帰ろうとする政治運動であることは、いまやもう誰も否定しないだろう。団体名も出た。「日本会議」だ。現閣僚のほとんどが参加している政治団体だということだ。
もう一つ、戦時中よく使われた言葉を紹介したい。「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」というもので、「暴れる支那を懲らしめる」という意味だ。日本が戦争を始める理由として使ったのがこの言葉だった。塚本幼稚園の園児宣誓と似ている。
私が恐ろしいのは、戦時中の思想に帰ろうとする政治運動に賛同している人たちが、日本の教育を変えようとしている事実、そのものだ。関与が取りざたされた政治家の誰一人として、「教育勅語」を否定しなかった。それどころか擁護発言が相次いだ。園児たちのヘイトスピーチを批判する発言も、なかった。籠池泰典氏がしつこいとかうそつきとかいう話は出たし、森友学園の経営や設置認可をめぐる強引さにも批判が集中したが、教育方針を批判した発言は、渦中の政治家からは出なかった。
政権の中枢にある政治家、官僚、民間企業(学校法人)が、ある偏ったイデオロギーに染まり、国民の共有財産の使い方を勝手に決めて、「彼ら」の信奉するイデオロギー教育を実践する施設を作ろうとしていた。そういう事件に私には見える。かつて、「教育勅語」を掲げ、「暴支膺懲」を叫び、戦争に突き進んだ過去を持つこの国で。
いま、「彼ら」の心はもう森友学園とは離れた。いまやもう、あの小学校設置の件は、籠池という変な男が引き起こした変な事件だということで、「彼ら」と切り離そうと必死だ。
一方、「彼ら」、国家主義的な思想を持つ人々の悲願「道徳の教科化」が成り、検定教科書にイデオロギーを盛り込むことができるようになった。さらに、先月末、政府は「『教育勅語』を教材として使用することを否定しない」と閣議決定した。「憲法に反しない形で」と但書(ただしがき)がつくが、戦後、違憲だから衆参両院で排除・失効されたのではないか。なぜ今、と驚愕(きょうがく)する。
私たちが「昭恵氏は私人か公人か」などというさまつなことにとらわれているうちに、気がつくと日本国中が森友学園みたいな学校だらけになっているのではないかと想像して、私は怖い。森友問題が重要なのは、その危険を私たちに教える事件だったからなのだ。

(以上)

中島京子センセーはけっこう反戦的なコラムをあちこちで書かれていますので、いまさら驚きはしませんが、上記のコラムを要約するとこんな感じになってしまうのです。
・森友学園問題で最も重視するべき問題は(認可とか財務ではなく)思想教育の点である
・塚本幼稚園では教育勅語を使って洗脳していておぞましく、異様だ
・戦時中の思想に帰ろうとする動きが教育界にあって、極めて危険である
・道徳の教育化によりイデオロギーを植えつけることができるようになっていて怖い

えーっと、どこから突っ込んで良いものやら。
なるほど、思想教育はダメなんですね。同じコトを補助金寄越せと騒いでいるかの国の教育機関にも言ってください。そして、すべての私立学校に「宗教を持ち込むな」と言ってほしいものです。仏教もキリスト教も新興宗教も全部NGですね。学校内の敷地に礼拝堂を設置するなどもってのほかですね。
日教組にも共産党のポスターを貼るなと徹底させないといけません。すべての教育機関から思想を排除しなければいけません。

でも、思想と道徳の境界線はどこにあるんでしょうか。教育勅語に書かれていることはほとんど道徳です。親を大切にしろとか、そういうやつです。それに、教育勅語の公布は明治23年です。戦前も戦前、日露戦争よりも前の話です。「戦時中の悪い思想」というレッテルを貼るのはいかがなものかと。

そもそも、この文章の中から滲み出てくるもののひとつに、「戦前の思想はすべてが悪」というレッテル貼りがなされているというのがあります。中島センセーの直木賞作品「小さいおうち」では戦前の日本の家庭をリアルに描写しています。それはごく普通の家庭であり、当時の人々の日常です。悪の思想に染まった国民が戦争に突き進んだといったような描写は一切ありません。なのに中島センセーはこのコラムで戦前の教育がまるで悪の権化であるかのように指摘するのです。

当たり前ですが、戦争に突き進んだのは思想教育のせいではなくて、軍部の暴走と外交の失敗のせいです。大多数の国民はこれっぽっちも悪くありません。ましてや、教育のせいでもないはずです。
戦前の教育に染まっていた我らがご先祖様は悪なのですかね?

そして最後に、中島センセーは「森友学園のような学校だらけになっているのではないかと想像して、私は怖い」とまで書いてしまっています。森友学園の卒業生がこの記事を見たら悲しむでしょうね。中島センセーは森友学園の教育を否定しました。これはイコール、森友学園で学んだ人たちの精神性をも否定したと同じことです。しかも200万部を超える新聞紙上で堂々と否定したのです。「森友学園の教育は間違っているから、そこで学んだお前という人間も間違っている」と言っているに等しいのです。

このコラムに賛同する人が結構いて、ツイッターでリプライしているのを目にしたのですが、自分としてはこの方が怖いです。反戦的に振る舞う人のほうが実は差別的で好戦的なのではないかと思ってしまいますわ。

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内容(KADOKAWA HPより)
現場経験はゼロ、相方は一匹狼な美人刑事
若きエリートが、5つの完全犯罪に挑む!
『リカ』『リターン』の俊英による痛快ミステリ
東大卒キャリアとして出世街道を歩んでいた道定聡警部は、部下の不祥事により突如、経験のない捜査現場の前線に配属された。美人だがガサツな山口ヒカルとコンビを組まされ、新宿OLの高層マンション飛び降り、新興宗教の教祖殺人など、解決不可能と思われた難解奇妙な事件の担当になる。常にやる気のないヒカルだが、時に天才的な直観を発揮して事態を集束に導いていき――。 “迷”コンビの活躍を描く、爽快な連作短編集。


曹源寺評価★★★★
本書は2013年12月に単行本化されていた「キャリア警部 道定聡の苦悩」が2016年9月に文庫になったものです。単行本のときは知りませんでした。
五十嵐センセーの軽いノリで読める探偵小説とか警察小説はどれも非常に読みやすいし、きちんとオチもつけてくれるし、キャラクター造型もしっかりしているので楽しく読めます。
本書では東大卒のキャリア警察官である道定警部と、警視庁捜査一課の美人刑事山口ヒカルの迷コンビが活躍します。道定は20代だが160センチ未満の抜け毛に悩むデブ、ヒカルは抜群のプロポーションで美人のくせに大食漢でエロDVD鑑賞が趣味というものすごい設定です。
あれ、なんだかデジャブを感じるんですが、、、、
つい先日読了した矢月秀作センセーの「サイドキック」はチビデブのおっさん刑事と彼を慕う美人刑事のコンビでした。なんだか

流行ってんのか?

というくらいにたような設定ですね笑
あちらは中年のおっさんですが、こちらはキャリアで若手なのにおっさんくさい童貞(!?)警部という設定。女性刑事もあちらは美人で優秀、こちらは美人だがとてつもない変人ですから、微妙に異なりますね。
設定はまあこんなもんでしょうか。警察小説は設定よりも内容重視でいきたいですね。本書は軽く読める連作短編ですが、いずれもちょっとした謎解きが用意されていますので、それなりに楽しめます。このへんの造りこみのうまさは五十嵐センセーならではといったところでしょうか。読んで損はない作品といえるでしょう。





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