ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2017年05月19日

書評803 石持浅海「殺し屋、やってます」

こんにちは、曹源寺です。

森友学園に続き、今度は加計学園の疑惑ということで盛り上がっています(別の意味で)が、学校法人というのはある意味一般人にはうかがい知ることのできない闇が広がっていそうで怖いですね。
特に大学誘致や学部誘致に関しては公明正大な手続きなのか、それとも「利権」としてうごめく何かがあるのか、非常に分かりにくい世界のように思えます。
獣医学部が50年もの間、新設されてこなかったという経緯もまた、怖いものを感じてしまうわけですが、では獣医師というのはどんな「業界」なのか、調べてみました。

農林水産省の資料によると、平成26年(2014年)現在の獣医師の届出件数は39,098人だそうです。少なっ!
どの位少ないかというと、弁護士の人数が36,415人(2015年)ですから、だいたい近い数字ですね。文系最難関の国家資格と同等の人数しか活躍していないマーケットということになりますので、獣医師の皆さんはエリートと呼んで差し障りないと思います。

日本獣医師会という団体がありまして、そこが発表している獣医師の需給に関する資料では、毎年1,000人程度の獣医師が誕生して、同じくらいの人数が引退・廃業しているらしいので、現状ではおおむね需給が安定しているという状況だそうです。
しかし、2040年の将来推計では最大で3,500人が不足するといったデータも公表しています。つまり、今は安定しているけれども近い将来は獣医師が不足する可能性があるよ、と言っているわけです。もちろん、逆に1,000人程度が余る可能性もあると指摘しています。

これは、犬や猫などのペットに対する診療回数が増加する、あるいは政府の政策目標に対して家畜に対応できる産業獣医師の需要が増加する、といったことが要因として挙げられていますが、日本獣医師会はこの需要予測に対して否定的なコメントを付け加えています。
つまり、「犬や猫がそんなに増えるわけねえだろ、産業獣医師が必要になる傾向は分からなくもないけど」というニュアンスです。

つまり、獣医師会全体では獣医学部の増設には慎重な姿勢であるという感じです。医師の世界と同様、地域的な偏在も伺えますし、医師免許を取得したにもかかわらず獣医師として活躍していない人も3,500人程度いるみたいですので、こうした問題の解決も迫られているようですね。

たとえば、医学部でも地域偏在という問題がありますが、この問題解決のために国は自治医科大や産業医科大を設置し、学費を無料にする代わりに卒業後は地方医療機関への従事を義務付けているような施策があります。
獣医学部を設置している大学はわずかに16校しかなく、四国だけでなく甲信越や北陸にもありませんし、中部には岐阜大学、近畿には大阪府立大学にしかありません。

こうした獣医師の「業界」をちょっと覗いただけでも、いまの加計学園問題の騒動がいかに本質とずれているのかがよく分かります。免許制の業界はそれなりの待遇を得られる反面、国家への貢献が求められる仕事ではないかと思いますので、現状の問題、課題の解決を優先させてほしいですし、そのための議論を国会で行っていただきたいと思います。


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内容(文藝春秋HPより)
安心・安全のシステムで、殺し屋、やってます。
コンサルティング会社を営む男、富澤允。
彼には裏の仕事があった。
650万円の料金で人殺しを請け負う「殺し屋」だ。
依頼を受けたら引き受けられるかどうかを3日で判断。
引き受けた場合、原則2週間以内に実行する。
ビジネスライクに「仕事」をこなす富澤だが、標的が奇妙な行動が、どうにも気になる。
なぜこの女性は、深夜に公園で水筒の中身を捨てるのか?
独身のはずの男性は、なぜ紙おむつを買って帰るのか?
任務遂行に支障はないが、その謎を放ってはおけない。
殺し屋が解く日常の謎シリーズ、開幕です。


曹源寺評価★★★★
安定の短編ミステリ作家、石持センセーの新刊(でもないですね)は殺し屋が主人公の連作短編でした。
普通に大学を出て普通に仕事をしているけれども、なぜか殺し屋を副業にしている主人公の富澤、連絡係の塚原と伊勢殿を挟み、依頼者とは直接コンタクトをしないことで身の安全と感情移入による失敗を防いでいる。一回の殺人の報酬は650万円で、前金300万円を受け取り実行後に残金を受け取る仕組みだ。なぜ650万円なのかは本書を読んでいただきたい。納得するようなしないような。
そう、石持センセーの作品はだいたいが

読んで納得できそうでできない

という展開が多いのですが、それはだいたいにおいて「殺害の動機がおかしい」というものでありました。今回は違います。なにせ殺し屋に動機は要りませんから。
本格ミステリにおいて、よく殺害の動機よりもそのテクニックに重きを置かれている作品を目にしますが、自分はもっと人間的な、というかドラマ的な、そこにストーリーを見出さないとあまり納得できない性質なものですから、トリック重視のミステリはあまり読みません。
石持センセーもよくトリック重視の作品を出されるのですが、まだ納得できるのは「状況的にこの推理意外ありえない」というところまで理屈で攻めてくる点にあると言えるのではないかと思います。
本書もまた、理屈で攻めてくる推理を分かりやすく展開されているので、「あぁ、そういうことね」と納得させられてしまうのであります。
>>なぜこの女性は、深夜に公園で水筒の中身を捨てるのか?
>>独身のはずの男性は、なぜ紙おむつを買って帰るのか?
紹介文にあるこの謎は、なるほど読めば納得できますが、よくよく考えてみればあくまでも状況証拠でしかない話だったりするので、後になって「もしかしたらセンセーに騙されているのではないか」と疑ったりもします。
ですから、本書の場合(というか石持作品全般そうですが)あまり深く考えずに読むのが正しい読み方ではないかと思います。





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posted by 曹源寺 at 16:01| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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