ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2017年07月28日

書評823 笹本稜平「危険領域 所轄魂」

こんにちは、曹源寺です。

R4こと村田民進党代表が辞任を表明しました。自民党では稲田防衛相が辞任しました。個別にみればいろいろな背景がありますが、最近は物議をかもす女性議員が多いのが印象的です。

嫌われる議員が多いのでしょうか。嫌われるとしたら、何がいけないのか。このあたり、女性蔑視にならないレベルで実証したら面白そうな気がします。

議員、それも大臣や党の幹部となれば人望がなければいけません。でも人望って何でしょうね。人望イコール人を惹きつけるもの、ということだと思いますが、じゃあその正体は何よ、という話になります。逆に、人が離れていく要素って何でしょうね。R4議員が記者会見で放った「遠心力」という単語には、なんだかすごく深いものを感じてしまいます。
個人的な感想ですが、遠心力のある人ってこんな感じでしょうか。
・責任を取らない
・言い訳ばかりして謝らない
・人のせいにする
・自分で汗をかかない
・常に上から目線
・攻撃的すぎて何にでも噛みつく
・落としどころを知らない
うーん、ほかにもいっぱいありそうだ。いずれちゃんとまとめたいですね。

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内容(徳間書店HPより)
マンションで転落死と思われる男性の死体が発見された。死亡した男は、大物政治家が絡む贈収賄事件の重要参考人であるという。さらには政治家の公設第一秘書、私設秘書も変死。自殺として処理するように圧力がかかる中、葛木が極秘裏に捜査を開始すると、とある黒幕が浮かび上がってきて……。政治が真実を闇に葬ろうとするとき、葛木父子は警察の矜持を保つことができるのか!大人気警察小説シリーズ第四弾。


曹源寺評価★★★★★
「所轄魂」シリーズも4作目に突入です。根っからの刑事である葛木邦彦と、その父を見ながらキャリア警察官として一気に父を追い抜いた息子の葛木俊史親子が奮闘する警察小説として、笹本作品のなかでは「越境捜査」シリーズとともに定着したシリーズです。父親よりも出世した息子だが、実力(=捜査能力)では父親のほうが一歩も二歩も上であり、それを息子も十分に承知しているから軋轢も生じない。逆に見事な連係プレーを見せてくれるという、いつもながらなんともうらやましい展開になるのが常ですが、まあそこは微笑ましい父子愛ということで我々読者は暖かく見守ってやりましょう。
今回はとある政治家の公設第一秘書と私設秘書が相次いで死体で見つかるというところからスタートします。捜査第二課の理事官として就任している息子の俊史は、贈収賄事件として立件したいところに重要参考人が死んでしまった格好だ。一方の父・邦彦は変死体を前に殺人事件として捜査したいが、事を荒立てるのは良くないと判断した上層部と軋轢が生じ始めます。
国家を揺るがす大規模な贈収賄事件と殺人事件、どちらを優先的に扱うのかで揉めるのですが、そうこうしているうちに捜査は後手後手に回ってしまいます。捜査一課と捜査二課の領分で揉めると同時に、警視庁と福井県警でも軋轢が生じたり、地元の有力者に気を遣う県警のなかにも気骨ある刑事がいて上層部と現場でも意見の相違が表面化したりして、なんだかいろんなところで齟齬をきたしている警察組織というところに最後はやっぱり「所轄魂」で締め括るというお決まりの展開でありました。
それにしても、笹本警察小説というのはいっつも同じ感想しか思い浮かびません。本シリーズのみならず、「越境捜査」シリーズにも共通して言えることですが、思いつくだけでこんなにありました(以下、だいたひかる風にお読みください)。
序盤から中盤にかけて事件がまったく進展しないというダラダラ感。
刑事同士の会話だけで事件が進んでいくという臨場感ゼロの荒技。
しかもその会話がものすごく堅苦しいので読んでも頭に入らないという哲学の授業状態。
事件の詳細が分からないまま進んでいくから読後しばらくするとどんな内容だったのか思い出せなくなるという記憶喪失。


どーでもいーですよ

と歌いたくなってしまいそうになるレベルです。
これに、ラストの事件解決した感がまったくないというモヤモヤ感。というのもありますが、本書はまだ事件解決している方かなあと思いますので、まあここは割愛で良いでしょう。
あと、笹本センセーの意識の根底にあるだろうと思われるのが、反権力思想でしょう。越境捜査にしても所轄魂にしても、犯人像が大抵与党の大物政治家だったり警察上層部だったりしてちょいと食傷気味です。笹本センセーの世代(1951年生まれ)はほぼ団塊の世代です。おそらく最も反権力思想の持ち主が多い世代ではないかと思いますので、これはしょうがないかなあとも思います。55年体制による弊害が多かったというのもありますし、疑獄事件もいっぱいありましたからね。
しかし、それより後の世代は団塊の世代のことを見下していますよ。共産党なんてテロリストだと思っていますし、中核派だの革マル派だのといった単語にはまったくピンときていません。本書に出てくるロッキード事件も解説がなければ理解できないでしょう。
いまはマスゴミが政権与党に対する攻撃を強めていますから、政治家の汚職なんて簡単にできません。やっていることは不倫とか政治活動費のポッケナイナイとか本当にせせこましいことばっかりです。政治家よりも官僚のほうがドス黒いでしょうから、中央官庁の腐った役人あたりにターゲットを絞ってみてはいかがでしょう。財務省、外務省、文部科学省あたりはネタの宝庫かもしれませんね。





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2017年07月25日

書評822 中山七里「秋山善吉工務店」

こんにちは、曹源寺です。

国会の閉会中審査の動画を見ると、本当に、本当にくだらない質疑が続いていることがわかります。
なにせ、「知っていたのですか?」とか「いつ知りましたか?」とか「言ったのですか、それとも言わなかったのですか?」とか記録ではなくて記憶をたどる質問ばっかりなんです。
言った言わないの世界は証明ができません。
証明ができないことを質問して、納得ができないふりをして「これで疑惑はますます深まった」とか感想を言えば、質問する側はいかにも自分が正義の味方であるというふりをすることができますね。

ネット民はそんなことにごまかされはしませんが、テレビ、しかもワイドショーばっかり見ているような人たちは繰り返し映されている映像を見て洗脳されてしまいますわ。
これら一連の報道(いまは「報道犯罪」という単語が出来上がっています)にうんざりを通り越して腹が立っている人たちも多いと思いますが、リテラシーに乏しい人たちにはしっかりと再教育してあげてほしいですね。そうです、自分たちの親なんてそうですよ。どちらが正しいとかを指摘するのではなくて、いかにこれが茶番なのかということだったり、なにかを証明しようとするならエビデンスを持ってこいという至極当たり前のことができていないで真実を追求しようとしている愚かな姿とか、理屈で考えれば絶対におかしい手続き上の問題とかを教えてあげると良いと思います。


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内容(光文社HPより)
この爺ちゃん、ただものではない!?
ゲーム会社を辞め、引き籠っていた史親の部屋からの出火で家と主を失った秋山家。残された妻の景子、中学生の雅彦、小学生の太一の三人は、史親の実家「秋山善吉工務店」に世話になることに。慣れない祖父母との新生活は、それぞれの身に降りかかるトラブルで災難続きの日々。
一方、警視庁捜査一課の宮藤は、秋山家の火災は放火だったのではないか、と調べ始める――
大工の善吉爺ちゃん、大立ち回り!!昭和の香り漂うホームドラマミステリー。


曹源寺評価★★★★
近年の作品でジジイが活躍するものと言えば有川浩センセーの「3匹のおっさん」あたりが有名ですね。本書はあれに負けず劣らず、齢80を過ぎた大工の棟梁である秋山善吉が暴れまわる連作短編の家族小説であります。実家の失火により一家の大黒柱を失い、残された3人の家族が祖父宅に世話になります。そこで巻き起こる兄弟と母のそれぞれのストーリーに善吉爺さんが活躍しますが、その暴れっぷりは寺内貫太郎も真っ青の恐ろしさであります。
子供のケンカ(いじめですが)には口を挟まず、しかし相手がやくざともなれば体を張って立ち向かい、警察の自白強要にもまったく怯むことなく、むしろあしらってしまう善吉爺さん。昭和の香りが漂いますが、せりふのひとつひとつにしびれてしまうのは自分だけではないと思います。こんな素晴らしいキャラクターをたったの一作で終わらせてしまった中山センセーですが、

ミステリにしないでシリーズ化して欲しかった

という声が多数ネットで上がっています。個人的には「謎解きがあるからこその疾走感」ではなかったかとも思います。この疾走感は前作「翼がなくても」に通底するものを感じました。おそらくですが、中山センセーはこうした「ミステリとヒューマンドラマの融合」みたいな視点で作品を仕上げてきている傾向にあるのではないかと思います。
ですから、本書の場合はミステリとの融合を図るべきだったのか、あるいはもっとドラマに徹してジジイの活躍っぷりをシリーズ化するべきだったのか、で意見が分かれるところであったのわけですが、個人的な感想ではやはり後者にならざるを得ないですね。善吉ジジイのスカッとする活躍をもっと読みたかったというのが本音です。





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2017年07月21日

書評821 馳星周「暗手」

こんにちは、曹源寺です。

河野太郎という衆議院議員がいます。神奈川15区です。ご尊父はあの「紅の傭兵」と言われて久しい河野洋平氏であります。衆議院議員を14期も務めた重鎮ですが、途中、新自由クラブを作って自民党に反旗を翻した経緯もあります(まあ、新自由クラブはクソがつくほどまじめな田川誠一氏とか犯罪者山口敏夫とかごった煮の状態でしたが)。
父親はともかく、息子の太郎氏は「ごまめの歯ぎしり」というブログを開設していまして、自分もマメに目を通していますが、これが結構面白いんですよ。
特に話題を集めたのは2016年11月から不定期に投稿された「研究者の皆様へ」というタイトルのシリーズです。基礎研究費の削減によって官公庁および国家機関で働く研究者の方々の効率的な費用の使い方などに言及されていて、それがかなり具体的で細かいということで話題になりました。河野議員の現場主義が非常にわかる内容になっています。
自分はこの議員、それほど好きではありませんが、いやむしろ嫌いな方かもしれませんが、このブログだけは読みます。そして信じます。なぜかというと、あえて敵を作ってまで正論をぶちかましているところが気に入っているからです。時には霞が関の官僚さえ敵に回しています。文章はそれほど難解ではありませんし、提起される諸問題もかなり的を射ている内容が多いです。

そんな河野議員の最新の投稿がこれです。
南スーダンの日報問題(7/20)
自衛隊の南スーダン派遣施設隊の日報に関して、私には意見を言うちょっとした権利があると思う。
ということで、一言。
一昨日からの南スーダンの日報に関する報道を見ていると、ちょっとピント外れなものが多い。
自衛隊の南スーダンの派遣施設隊の日報は、二月六日にはその存在が明らかになっており、機密部分が黒塗りになっているもののすべて公開されている。

繰り返すと、「二月六日には日報はすべて公開されている。」

だから二月十五日に、防衛省で開かれた会議で、日報を隠蔽することはできないし、公開するかどうかを決めることはできない。
このニュースの中で、NHKにしろ、民放にしろ、二月六日に日報がすべて公表されているということに触れていないのは、視聴者に誤解を与える。
二月十五日の防衛省の会議で問題になることがあるとすれば、陸自で見つかった日報は、個人のものなのか、行政文書なのかという判断だ。
もし、日報がそれまでに見つかっていなかったら、行政文書だろうが、個人のものであろうが、陸自で見つかった文書は干天の慈雨のようなものであり、日報が見つかった、よかった、ということになっただろう。
ただし、もしそれが個人の文書だったら、それが改ざんされていないかということが問題になるだろうが。
しかし、それまでに日報が見つかって公表もされているのだから、問題は陸自で見つかった文書が個人の文書なのか、(その場合、特に問題はない)、行政文書なのか、(この場合、最初に開示請求をされたときに、探し方が足りなかった)ということになる。
個人の文書ならば、それが見つかったことを公表する必要もないだろうが、行政文書ならば、当初の探し方が足らなかったことが明らかになったことを公表する必要がある。
防衛省は、見つかった日報が個人の文書だと考え、特に発表の必要がないと考えた。
しかし、日報に関してはそれまでいろいろとあったわけだから、自分たちで判断するだけではなく、内閣府の公文書課や国立公文書館に、きちんとした判断を仰ぐべきだった。それがこの騒動の本質ではないか。
こうした説明もなく、あたかも日報を隠蔽する決定が行われたかのような報道は、間違っていないか。


ストレートのド正論でありました。
河野議員はブログで正論かますだけなら超一流であることがわかります。これを援護射撃する動きが自民党内から上がれば面白いかなとは思います。

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内容(KADOKAWA HPより)
生きるために堕ち続ける
『不夜城』『夜光虫』の衝撃から20年
究極のクライムノベル誕生!
台湾のプロ野球で八百長に手を染め、罪から逃れるために次々と殺しを重ねた加倉昭彦。居場所を失い、顔も名前も変えて過去を抹消、逃れ着いたのはサッカーの地イタリアだった――。イタリアの黒社会では、殺し以外の仕事なら何でも請け負い、いつしか「暗手」――暗闇から伸びてくる手――と呼ばれるようになっていた。そんなある日、サッカー賭博の帝王・王天から、ロッコに所属する日本人ゴールキーパー・大森怜央に八百長をさせろとの依頼が舞い込む。計画実行に向けて着実に準備を進めていく加倉だったが、大森の姉の写真を目にしてから過去の記憶がよみがえり、計画の歯車が狂い始める……。


曹源寺評価★★★★★
馳星周センセーの傑作のひとつに「夜光虫」という作品がありまして、1998年の初版ですからもうかれこれ19年も経つわけですが、その続編が本作であります。
主人公の「暗手」ことヴィト・ルーは日本人、加倉昭彦としてかつては台湾のプロ野球選手であったが、八百長に手を染め、逃亡し、逃亡のために何人も殺めてきた過去を持つ。このヴィト・ルーが今度はイタリアを舞台にして、サッカーの八百長試合を仕掛けていきます。
一度でも八百長に加担したら二度、三度と引き返せなくなり、最後は身の破滅となる泥沼行為であるが、嵌められたと思った時にはもう遅い。これまで何人もの選手を地獄に導いてきたヴィトは日本人、高中雅人として地元のクラブでゴールキーパーを務める大森怜央に近づき、親切なタニマチとして振る舞いながら裏では八百長にかかわらざるを得なくする工作を仕掛けていく。
一方、イタリアの黒社会でサッカー賭博の帝王となっていた王天は暗手のほかに殺し屋の馬兵を雇っていた。馬兵と暗手が交錯したとき、大いなる深淵が口を開けて待ち構えていたのだった。。。
賭博が絡んだ黒社会ともなれば、大きな金が動けば一触即発、血の雨が降ること間違いなしの展開です。しかも台湾マフィアです。
馳センセーの真骨頂のような作品に読む手が止まりません。
前作「夜光虫」はもうほとんど記憶の彼方に飛んで行ってしまっておりましたが、読み進めるうちになんとなく思い出しました。でも

前作を読んでいなくてもすんなり入っていける

懐の深さがありますね。450ページを超える大作ですが、あっという間に読み終えること間違いなし。スピード感あふれる展開と壮絶なラスト。主人公は生きながら死んでいる「悪霊」であります。業の深い男という自覚があり、誰かが自分を殺してくれる日を待っている。だから死の際でも平然としていられる。しかし本書では一度は愛した女に呪詛の言葉を投げられます。それは(以下ネタバレ)


「くたばれ」という言葉です。くたばれとはイコール「死ね」ではないんですね。表現としては「地獄の底でいつまでも苦しめ」、つまり簡単に死んでもらっては困るレベルということです。
多くの人の恨みを買い、簡単に死んでは自分の魂は救われないだろうという壮絶な生き様。ここまで自己否定を重ねる主人公のノワールはついぞお目にかかったことがありません。これぞ馳星周。さすがです。





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2017年07月18日

書評820 楡周平「ぷろぼの」

こんにちは、曹源寺です。

今日は東京でもゲリラ豪雨になり、ところによっては雹が降ったみたいですね。梅雨明け前のゲリラ豪雨はもはや定番、恒例行事になってきました。逆に言えばもうすぐ梅雨明けでもあります。本格的な夏の前に、体力を蓄えておきたいところです。

さて、最近は本当にマスゴミがおかしなことをしていると思うのですが、これに同調する動きも多くなってきているようです。

確たる証拠もないのに疑惑と持ち上げて、悪魔の証明を迫るマスゴミ
疑惑などないと説明をしても説明が足りないと言って繰り返し疑惑と報じるマスゴミ
さも疑惑が真実であるかのように振る舞うマスゴミ
疑惑が真実であるという前提で話を進めるテレビのコメンテーター
記者会見で同じ質問を何度も何度も繰り返す新聞記者

見ていて本当に気持ち悪いです。
上記のような行動が目に余るので、ネットの反応がどんどん辛辣になっています。いずれ本格的なマスゴミバッシングが始まるのではないかと思います。マスゴミに対する不満や批判が頂点に達した時、どのような動きが始まるのか、非常に興味深いです。

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内容(文藝春秋HPより)
業界大手のパシフィック電器は、人事部労務担当部長の江間を中心に大規模なリストラを進めていた。実務を担う大岡の担当リストラ対象社員が、ある日首吊り自殺をしてしまう。大岡は心身ともに疲弊しきって、三国が代表を務めるNPOで「プロボノ」として社会貢献活動をすることに救いを求める。ひょんなことから三国に江間の社内での悪辣な行状を打ち明けたところ、義憤にかられた三国は、江間を「嵌める」べく罠をしかける……。
「ぷろぼの」とは、「公共の利益のために(pro bono publico プロボノ プーブリコ)」という意味のラテン語。大企業のえげつないリストラと、それに立ち向かうNPOのボランティアたちを、軽妙かつコミカルに活写する。


曹源寺評価★★★★
久々の楡センセーであります。
最近の楡センセーの作品には「シリアス一辺倒の企業小説」と「業務改善したら面白い業界小説」、それに「ちょっと軽めのビジネス小説」といったジャンルがあります。昔は「朝倉恭介シリーズ」とかのハードサスペンスがありましたが、今はそれもかなわぬことです(でも2016年に「スリーパー」という本が出ていまして、朝倉恭介が出てくるんですよね。これにはちょっと驚きでした)。
さて、本書はどうかというと「ちょっと軽めのビジネス小説」かなと思ったのですが、それほど軽くはないかなと思います。なにせ、大企業のリストラ場面が悲惨過ぎて重いんです。大手電機メーカーのパシフィック電器というのが本書の舞台ですが、モデルはパナソニックなのかソニーなのか、はたまたシャープや東芝なのか。部門ごと撤退するという大掛かりなリストラを行うわけですが、そうなると配置転換もスムーズにいくことはなく、結局は割り増し退職金を支払ってでも整理に踏み切らざるを得ないという苦渋の決断を企業は迫られることになります。ここまではしょうがないでしょう。問題は退職勧告に応じない人たちの整理をどうするか、ということになります。パシフィックの江間部長はいわゆる「追い出し部屋」以上の酷いやり方を編み出し、それを本当に実行します。
どんなエグイやり方なのかは本書を読んでいただきたいと思いますが、江間の部下である大岡さえも嫌がるエグさ、そしてこの江間を何とかしないと自分もパシフィックも持たないと思い始める大岡。そして大岡がよりどころにしたのは、NPO法人のプロボノだった。。。
まあ、リストラをここまでやるか?というところでは確かにすごい話ではありますが、その後の解決にNPOが乗り出すという展開もまた、尋常ではない話です。
楡センセーがNPOに目を付けたのはさすがです。多様な人材が集まるNPOだからこそ、江間を懲らしめるためのストーリーができたということでしょうから。
それにしても、いまこのタイミングで発刊されたのが何とも惜しいなあと思うのです。昨年からは東芝の話題で電機業界は持ち切りですが、大手電機がこぞって業績が落ち込んだのはリーマン・ショックを過ぎた2009年度あたりからです。リストラが激化したのもその頃からですので、

ちょっと旬を過ぎてしまった

感が無きにしも非ずでしょう。返す返すも惜しいなあと思います。





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2017年07月14日

書評819 前川裕「アンタッチャブル:不可触領域」

こんにちは、曹源寺です。

先日はマスゴミの政治部というセクションについて、政局ばかり記事にして政策を書かない自称エリート集団とこき下ろしましたが、本当に今の報道姿勢はヤバ過ぎて怖いレベルにあります。
日本は戦後、離合集散を経て自由民主党政権で安定してきた経緯がありましたが、それは自民党の内部で右派と左派に分かれてお互いをけん制しあってきたため、野党の付け入る隙がなかったという経緯があるのです。それが、80年台後半から90年台前半にかけて発生したリクルート事件や佐川急便事件などで求心力を失い、自民党が分裂しだしたことで野党勢力が息を吹き返したのであります。自社さ連立政権はその象徴的な出来事でありました。
その後、自公連立→民主党→自公連立と政権は代わっていくのですが、こうした変遷により、かつての大所帯である自民党はすでになくなってしまいました。これはつまり、逆説的に言うと「自民党はすでに一枚岩になっている」のです。かつての派閥もそれほど党内勢力の争いのようになっていません。もちろん、たまに石破茂のように後ろから撃つタイプの政治家がいるにはいるのですが。
こうなると、マスゴミとしては自民党の対抗勢力が欲しいんですね。いま「安倍一強をなんとかしたい」とか言っているのは安倍=自民党であるのが許せない(=かつての大所帯自民党のように内部の敵対勢力がいないのが許せない)人たちなんでしょう。
しかし、安倍を引きずり下ろそうとして、ありもしない疑惑を連日持ち上げては世論調査を繰り返すといった技を展開すると、確かに政権支持率も自民党の支持率も下落しました。が、他の政党支持率もまったく上がらないというお粗末な結果になっています。

安倍内閣支持29.9%に急落=2次以降最低、不支持48.6%−時事世論調査(7/14)
時事通信が7〜10日に実施した7月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比15.2ポイント減の29.9%となった。2012年12月の第2次安倍政権発足以降、最大の下げ幅で、初めて3割を切った。不支持率も同14.7ポイント増の48.6%で最高となった。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題が響いた。東京都議選で稲田朋美防衛相が、自衛隊を政治利用したと受け取られかねない失言をしたことなども影響したとみられる。(以下、略)

安倍を引きずり下ろそうとして、小池を持ち上げるマスゴミ。小池のほうが安倍よりかなり右に寄っているんですが、それはいいんですかね。印象操作で安倍を下すんじゃなくて、安倍のやっている施策に代わる代案を提示するとか、そういうまじめな議論をしてこなかったからこうなるんだと思うのですが、マスゴミ、特に政治部の連中はそういった自覚がないのでしょうか。民主党政権に移行する前、マスゴミは失われた年金をはじめとしたネガティブキャンペーンをガンガン進めました。国民の多くが「一度、政権交代するのもいいかもしれない」と思い、そして実際に政権は交代しました。
民主党の3年9か月は暗黒時代になりました。
自公連立政権に戻りましたが、国民の多くは「もう民主党はこりごり」と思っています。だから支持率は一向に伸びません。自民がダメなら民進だーとはいかないんですね。つまり、対抗勢力は印象操作ではもうできなくなっているのかもしれません。国民もそれほどバカではないということですね。
マスゴミも、我々も、このへんをよーく考えておく必要がありそうです。

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内容(新潮社HPより)
「凡戦の帝王」と呼ばれた元プロボクサー。落魄した往年の人気俳優のマネージャー。二人が邂逅した時、その足元で暗黒の底が抜けた。ラーメン屋主人夫婦の不自然な失踪、八王子で福生で床下から次々に見つかる死体、美少女を取り巻く得体の知れない男たち。世界は二転三転、酷薄な様相を顕にする。衝撃のノワール・ミステリー。


曹源寺評価★★★★
ここんところ、猟奇的な殺人事件を扱わせたらこのセンセーの右に出る人はいないのではないかと思うくらい、エグイ作品を出しまくっておられます前川センセーですが、本書もまたある意味猟奇的でどこかホラーチックな印象を残す作品に仕上げてこられました。
デビュー当時と比較するとやはり大学教授らしい堅い文章からだいぶこなれてきたような気がしますので、読みやすいです。内容はともかくとして。
人気ヒーローもので時の人となったものの、その後落ちぶれた俳優、北森重三は認知症も患っていた。北森のマネージャーだった保住忠文は、何の血縁関係もないのに北森の世話を続けていたが、ある日、ついに一線を超えることになる。徘徊癖のある北森を失踪に見せかけて置き去りにしようとするのである。
同じ頃、元プロボクサーの瀬尾健一は中華料理店でアルバイトをしながら世話になったボクシングジムでトレーナーをしていた。瀬尾は妻の里穂と別居中で、離婚を持ち掛けられていたが瀬尾はこれを拒否していた。ある日、ジムの会長である戸田が里穂と密会していることを知り、現場に乗り込んだ。そこで瀬尾は一線を超えることになる。
二人の男が正常と狂気の境目で揺らぎ、狂気の淵に足をかけてしまうことから世界が暗転していくという様子を、とても重苦しく描写してくれています。この辺りの重さに耐えられない人は読み進めるのがつらいかもしれません。
しかし、その淵の先にあったものはさらなる狂気であり、人間の本質なのかあるいは別の何かなのかわからない、非常に昏く底知れない悪意の渦でありました。
保住と瀬尾が中盤から交錯してきますが、この二人はどちらかというと普通の人間でありました。共通する人脈に長崎という男が登場しますが、この男が前川作品によく登場してくるような異常犯罪者の類でありました。
この長崎のような、人を支配して操って殺しをさせて騙していざとなったら逃げる、人間のクズのような男が登場してくると、いつもあの事件を思い出します。胸糞の悪さでは堂々の1位に輝く

北九州監禁殺人事件です。

ワイドショーも事件の詳細を語るのに躊躇し、結局自粛したというくらい凄まじい事件でありますが、首謀者の松永太死刑囚を想起させるような猟奇的な人間を登場させるのが本当にうまいんですよ前川センセーは。
本書は最後の最後まで目が離せない、というか結末がどうなるのか気になってしょうがない、そんな展開になるのですが、ラストは果たしてこれで良かったのか。ほかの選択肢はなかったのか。なんともやるせない結末ですが、余韻を引きずりますので結局は前川センセーに問題を突きつけられたような、そんな気がしています。

最後に、ひとつだけ。
本書では保住のシーンから始まり、瀬尾はその次にくるのですが、なぜか瀬尾のほうの描写が一人称なんですよ。これ逆のほうが良かったのではないかと思うのですが、なぜだったのか。





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2017年07月11日

書評818 佐々木譲「沈黙法廷」

こんにちは、曹源寺です。

加計学園の話題(問題とは言わない)で、地上波がすべて前ナントカさんの応援団になっているらしく、昨日の閉会中審査では7時間もかけて審査が行われたにもかかわらず、報道された内容が各局とも似たり寄ったりという異常な状態がネットで話題になっています。

議事録をしっかりと読み、加戸前愛媛県知事の話を聞き、時系列で事象を追っていけばこの話題は問題ではないことが理解できるはずなのに、事件化したくてしょうがない連中がいるということがよくわかります。

どんな連中かというと、それは「新聞社の政治部」連中です。

ほとんどの新聞社が、政治部をエリート集団と位置づけており、経済部や文化部などを見下している構図になっています(社会部はまた違う毛色ですね)。その政治部連中というのは「政治」ではなく「政局」を語るのが好きなんですね。だから選挙になると色めくし、与党の支持率が下がるとすぐに政局にしたがるわけです。かつての自民党では右派も左派もごちゃまぜで、古くは「角福戦争」だったり「金竹小(こんちくしょう)」だったりと派閥争いを中心に取材していけば面白かったし、国民の関心事でもあったのですが、今は派閥もあまり機能していないのでどうしても「安倍一強」になってしまうわけで、それを快く思っていない連中(記事にならないからつまらない連中)が政局を作り出したくていろいろと仕掛けているのではないかと勘繰ってしまうんですが。でもそのいろいろというのが、「○○大臣が失言したンゴー」とか「支持率が下がったンゴー」とか「国会前でデモガー」とかそういうのしかなくて、最近の報道に不信感を抱いているネット民からすると「また印象操作してるわねー」という感想しか持つことができなくなっています。

政治部は政局ばかり記事にしないで、政治の中身の記事を書いてくれないですかね。

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内容(新潮社HPより)
絞殺死体で発見されたひとり暮らしの初老男性。捜査線上に家事代行業の女性が浮上した。彼女の周辺では他にも複数の男性の不審死が報じられ、ワイドショーは「またも婚活殺人か?」と騒ぐ。公判で無実を訴える彼女は、しかし証言台で突如、黙秘に転じた。彼女は何を守ろうとしたのか。警察小説の雄が挑む新機軸の長編ミステリー。


曹源寺評価★★★★
久しぶりの佐々木譲センセーでしたが、四六判550ページを超える大作でありました。長い長い作品ではありますが、ストーリーは意外にシンプルです。
東京・赤羽で一人暮らしの男性が絞殺死体で発見される。赤羽署の伊室刑事はこの家に出入りしていた人物の洗い出しを行っていたが、そこに浮上したのがフリーの家事代行業、山本美紀であった。事情を聴こうと彼女に自宅に赴くと、そこには埼玉県警の刑事がいた。大宮でも一人暮らしの男性が不審死していたらしく、彼女に事情聴取を試みていたのだ。これは連続殺人なのか、それとも偶然か?功を焦った埼玉県警と警視庁は逮捕、起訴に持ち込もうとするのだが、、、
地方警察が連携できずに犯罪者を追及できないといった事例は現実にも多いそうですが、本書はその辺の難しい事情を見事に描写しています。
警視庁はこの殺人事件について直接的な証拠の確保ができず、状況証拠の積み重ねだけで公判に臨みます。一方で、マスコミは彼女の周辺を徹底リサーチして類似事案を探すとともに、彼女の人物像を固定化しようとします。こうなると、検察も無視できなくなるわけで、公判を維持しようとすれば被告人の自白か直接的な証拠の確保が必須になるのにそれができていない。
この難しい事件を、

前半は警察小説として、後半は法廷小説として

書き上げているところが、佐々木センセーのうまさでしょう。これだけ厚い本になってしまったのは、法廷シーンのリアリティ追求が半端ないレベルにあることはもちろんのこと、事件の謎とそれを解く鍵をしっかり描写しておく必要があったのだろうと思います。
法廷シーンからラストにかけてはある程度納得の展開ではありますが、正直、期待していたほどではなかったかもしれません。なんとなくもやっとしたところが残ります。最後の最後はおそらく、佐々木センセーがもっとも言いたかったことではないかと思いますが、「社会派の法廷サスペンス」を全面に押し出されないと読者としてはちょっと不満です。なんとなく消化不良な読後感なんですが、それは山本美紀あるいは中川綾子に対する疑惑(特に金銭的疑惑)に関する払拭が完全になされていないからなのかもしれませんが、そういうのはすっ飛ばしておいたほうが良いんですかそうですか。






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2017年07月07日

書評817 呉勝浩「ライオン・ブルー」

こんにちは、曹源寺です。

Yahoo!ニュースが刺激的なタイトルをつけてニュースにした記事がありました。

メディアは主観的であれ−−オランダから世界をめざす、ジャーナリズムの新たなかたち(7/6Yahoo!ニュース)
オランダに、世界のメディア関係者が注目するネットメディアがある。2013年に創設された「デ・コレスポンデント」だ。広告を一切入れず、読者からの購読料のみで運営。人口1700万の小国オランダで、月額6ユーロ(約770円)の有料購読者数は5万人を超えた。なぜ、彼らはこれほどの支持を集めることができたのか。創設期からのメンバーで、デ・コレスポンデントの記事を初めて書籍化し、20カ国でベストセラーとなっている『隷属なき道』(文藝春秋)の著者、ルトガー・ブレグマン氏に聞いた。

以下はリンク先で読んでいただければと思いますが、この記事の主旨は、客観的な報道を捨てろと言っているわけではなくて、そこに問題があればきちんと調査報道するべきである、という極めて正しいことを言っているにすぎません。

近い将来問題になる可能性がある事象や、すでに起こっている小さな問題などをしっかりと記事にしているメディアは経済誌が先行しているように思いますがこれは自分だけでしょうか。ヒアリのように、記事化されることで全国に問題意識が波及することは良くありますし、それこそが報道の使命だと思いますが、そうした記事はおまけのようになってしまっているのが現代のメディアではないかと思います。

いつもこのブログで主張していることですが、別に会員制とか有料配信とかで記事を書く分には「主観的」であっても全く問題はないと思います。要するに、読みたい人がそれを買って読めば良いだけの話です。
しかし、テレビ=電波だけはダメです。電波に乗せるということは国民の財産を利用するということにほかなりません。国民の財産である以上は、一方的な垂れ流しをすることは特定の個人や団体に利する場合があるため、その取り扱いに十分な配慮がなされるべきであると考えます。

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内容(KADOKAWA HPより)
乱歩賞作家が放つ、衝撃の交番警察ミステリ!
関西某県の田舎町・獅子追の交番に異動した澤登耀司、30歳。過疎化が進む人口わずか4万人の町から、耀司の同期で交番勤務していた長原信介が姿を消した。県警本部が捜査に乗り出すも、長原の行方は見つからなかった。突然の失踪。長原は事件に巻き込まれたのか。耀司は先輩警官・晃光に振り回されながら長原失踪の真相を探っていく。やがて、町のゴミ屋敷の住人だった毛利宅が放火され、家主・淳一郎の遺体が見つかった。耀司は、長原が失踪直前に毛利淳一郎に会いに行っていたことを掴むが……。

曹源寺評価★★★★★
地方の過疎の町にある交番を舞台にしたミステリであります。交番のお巡りさんを主人公にした作品は数あれど、ここまで全体的に重苦しい作品は希少ではないかと思います。だいたい交番の巡査となれば地域課所属ですから、殺人事件とか謀略とかは無縁というのが前提で、町のちょっとしたトラブルとか人と人のふれあいとか人情とか、そういったものがテーマになることが多いわけですが、本作は田舎の闇みたいなものがテーマになっております。
冒頭もいきなり業火に焼き尽くされる住宅火災のシーンから始まり、さらに、一人の巡査が行方不明になり、小さな町のしがらみとか人間模様とかがいびつなかたちで揺れ動いていたり、町の有力者とか田舎やくざとかもいっぱい出てきたりして

過疎の町の悪いところを凝縮したような

ストーリー展開に、なんとも重苦しい気分になります。
田舎町で警察が力を持っている理由というのが本書を読むとよく分かったりもします。事件そのものをもみ消すことができる警察はやはり、人の口に戸は立てられない田舎とはいえ、味方にしておけば心強いわけです。地元の有力者とやくざと警察が組めば、おそらく最強の取り合わせになること請け合いでしょう。そんな田舎の町で発生した殺人事件など、あっという間にお宮入りですね(笑えない
ミステリというよりは犯罪小説であり、それ以上に暗黒小説のようでもあります。ラストもエグイです。読後感も重いです。
さわやかさゼロの警察小説として(読みたい人は)読んでほしいです。
ちなみに、ライオン・ブルーとは警察官の制服の色だそうです。そして、ブルー・ライオンはフランスの自転車自動車メーカー、プジョーのことであります。





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2017年07月04日

書評816 横関大「ピエロがいる街」

こんにちは、曹源寺です。

今回の東京都議会議員選挙では自民党が大敗、都民ファーストの会が大躍進、と言われています。確かにそうですね。自民党は国政の影響というより、都議会自民党がクソであったことのほうが影響としては大きかったと個人的には思うのですが、なにせ公示が迫ったころからフェイクニュースが混ざった与党攻撃が半端なかったわけで、マスゴミが勝手に疑惑と持ち上げてはネガティブキャンペーンを張りまくったことが拍車をかけたのではないかと思います。
その反自民の受け皿が都民ファーストだったというのが皮肉でもありますが。
稲田防衛相の発言→OUT
豊田真由子の録音→OUT
この2つはまあダメですね。批判されてもしょうがないレベルです。
しかし、
金子恵美議員の公用車→SAFE
下村文科相の献金→グレーだけど法的にはSAFE
ですね。特に金子議員の件は働くママをサポートしようなどと常日頃言っているマスゴミ自身が批判してどうすんのよ。反自民だけで突っ走るから二重基準に陥ってしまうのですが、その自覚がないままに批判している輩のなんと多いことか。まともに正論吐いているリベラル層は駒崎弘樹氏だけしかいないという有様ですわ。
こういう倒閣運動みたいなことをするから二重基準になってしまうわけで、この動きに乗っかってきた民進党は結局、議席数を伸ばすことができなかったんです。有権者が反自民の受け皿として民進党を選ばなかったのは、あちこちでブレにブレまくってきた二重基準のツケではなかろうかと思います。

最近では、文部科学省の天下り問題でさんざん批判されてきた前川前事務次官が、加計学園で話題になったら急に持ち上げるようになりました。同じくこの話題(問題とは言わない)で省内の文書がリークされたら「勇気ある告発」と持ち上げておいて、かつて尖閣諸島問題沖で発生した中国漁船衝突事件で映像をリークした人には国民の反応とは別にマスゴミの反応は酷いものでした。「安倍首相のお友達が恣意的に選ばれているのはおかしい」と言っているのに、そのお友達は民進党の江田五月前議員のほうがもっとお友達なのにそれは一切報道しなかったりします。やっていることは同じでも、自らの主義主張に相通じるかどうかでその反応を変えるから二重基準と言われるのに、最近はこうした記事が富に目立ちますね。

おそらく、都民ファーストの会に関する記事もこれから手のひらを返すかのように批判や醜聞がどんどん出てくると思います。

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内容(講談社HPより)
兜市役所の秘書課に勤務する比南子は困っていた。スローガンに「開かれた市政、会いに行ける市長」を掲げる宍戸市長は、時間さえ空いていればどんな来客でも応対する。兜市は製薬会社が工場を国外移転することが決まり、かつてない財政難に陥っていた。市議会では大荒れが予想される中、今日も市民は市長に会いにくる。
ところ代わって兜市の駅前。就職活動がうまくいかない立花稜がベンチに座って悩んでいると、顔に白粉を塗り、真っ赤な口紅を塗ったピエロに話しかけられた。「願いごとを一つ、言ってみろ」立ち去らないピエロに仕方なく就職したいと話すと、稜はピエロに雇われることになる。ピエロは毎晩困った市民を助けるために活動しており、稜はそれを手伝うが……。
兜市が抱える難題に次々と直面する市長とピエロ。ピエロの正体が判明したとき、物語は鮮やかに反転する!


曹源寺評価★★★★★
軽〜く読めてハッピーエンドな結末が多い横関センセーの作品は楽しいので、乱歩賞受賞以降すべて読了しています。「スマイルメイカー」のようにちょっとしたどんでん返しがあったりするのも良いですね。
さて、本書は静岡県兜市(もちろん架空です)を舞台にしたミステリっぽい作品です。主人公は大学4年生にして就職活動中の立花稜で、彼を語り部としてストーリーが展開していきます。
市長の宍戸は就任から2年が経過し、その間、地場の有力製薬会社工場が閉鎖されて職と人口が奪われてしまった。立て直しに奔走する市長だが、そこに後援会会長が殺されるという事件が発生する。
一方、立花稜は町中でピエロの格好をした中年男性に声をかけられ、ピエロの手伝いをすることになった。ピエロの活動は市民が陳情する内容を実現するための活動に見えるが、、、
読者は謎のピエロの登場と、殺人事件の発生によって一気にドキドキわくわくが募ります。さらに、ピエロの正体はいったい誰なんだろうと思いながらその整合性をストーリー展開に求めていくことになるわけですが、これは

なんというミスリード

でしょうか。「ピエロの正体が判明したとき、物語は鮮やかに反転する!」というキャッチは伊達じゃありません。正確にいうと、「市長の正体が判明したとき、」でもありますが、完全にやられてしまいました。このラスト、自分はまったく見破れませんでした。あぁ、またしてもやられた!読み直し必至のラストに、ちょっとほっこりするエピローグがくっついて、読後感がなんともさわやかなのがこの横関作品だなあと改めて感じた次第。





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posted by 曹源寺 at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | や行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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