ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

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2017年08月29日

書評831 中山七里「ネメシスの使者」

こんにちは、曹源寺です。

本日の早朝に北朝鮮がミサイルを発射しました。ミサイルは日本の領土を横切って北海道・襟裳岬の東1,180キロの海に、3つに分裂して落下したとのことです。朝、テレビをつけたらJアラートの画面に凍り付いた人も多かったのではないかと思います。
日本人の多くは戦争などしたくはないと思っているし、国として戦争という外交手段を放棄しているわけですから戦争などありえないと思っているでしょう。自分もそうです。
そして多くのマスコミは「戦争に近づくな」「相手を挑発するな」「こちらから仕掛けるなど言語道断」などと戦争回避に血眼です。
誰だって戦争なんて嫌ですよもちろん。でもですね、「戦争というのはあっちからやってくることもある」という当たり前のことをどこも書かないんですよ。だから今回みたいに不意にミサイル撃ってこられるとあたふたしてしまうわけです。日本人はもう少し危機感を持つべきだと思います。
今回の発射も、もし日本でなかったらとっくに宣戦布告と見なされて戦争になっているくらいの事案です。少なくとも、喧嘩をふっかけられることのないようにしたいところです。例えて言うなら、六本木の繁華街をうろついているチンピラは、体重100キロを優に超えているマッチョな黒人青年に喧嘩を売ることがないわけで、つまりはそういうことです。

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内容(文藝春秋HPより)
ドンデン返しの帝王が「死刑制度」を問う
無期懲役の判決を受けた殺人犯の家族が殺された。遺族による復讐か、現在の司法に対するテロか……渡瀬刑事が追う。社会派ミステリ。


曹源寺評価★★★★★
社会派ミステリ。いいですね、この響き。個人的にはこの社会問題を題材にしたミステリというジャンルが一番好きかもしれません。
中山センセーは「岬洋介シリーズ」や「弁護士・御子柴礼司シリーズ」などを通じて、どんでん返しはもとより法的グレーの世界や法解釈による齟齬などの問題を暗に指摘する作品を出しておられます。本書もまた、「死刑制度」を問う一冊として、非常に考えさせられる内容になっています。
中山作品では欠かせない存在になってきた埼玉県警の渡瀬警部が本書の主軸です。熊谷市の郊外である女性の変死体が見つかったところからストーリーは始まります。その女性は息子が連続殺人犯として逮捕、起訴され、世間の糾弾を浴びてこの土地に移り住みひっそりと暮らしてきたのだった。死体の横には「ネメシス」のメッセージが残されていた。犯人の意図は何なのか。そして、ネメシスは犯罪加害者の家族を再び狙いだすのだった。。。
「ネメシス」は古代ギリシャの「復讐の神」であります。復讐という意味のほかにも「義憤」という意味も込められています。
おや、そういえば中山センセーは「テミスの剣」という作品も出されていますね。テミスは同じく古代ギリシャの法律・掟の神の呼び名であります。本書と「テミスの剣」は一対の端を成す作品ですかね。
本書で指摘されるのは

「改悛の情も更生の見込みもない凶悪な受刑者に温情判決は必要なのか」
「犯行と量刑のバランスを失った判決は加害者、被害者ともに禍根を残すだけではないのか」
「あえて死刑にしないことで加害者家族はいつまでたっても恨まれ続けやしないか」
「死刑にしないことによる死刑以上の罰という考え方は成立するのか」

ほかにも、市民感情に近づけたものの判例重視の壁を一向に破ることができないでいる現行の裁判員制度の問題や、矯正・更生が主旨の刑務所に何らの効果も期待できないでいる現状など、司法制度にまつわるマイナス面をこれでもかと読者にぶつけてくるのです。
まるで、

中山センセーは法曹関係者になんか恨みでもあるんじゃないか

というくらいの投げっぷりです。
そういえば、「作家刑事毒島」では出版業界に思いっきり毒を投げつけていましたが、本作や「テミスの剣」などでは司法に議論をふっかけていますね。中山センセーはあちこちに喧嘩を売って金を取るスタイルを信条としているのかもしれません。面白いのでもっとやってください。





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2017年08月25日

書評830 長岡弘樹「血縁」

こんにちは、曹源寺です。

フェイクニュースの見本が届きましたのでご紹介します。

東京新聞の8月23日付のニュースです。
米軍ヘリ、ベイブリッジに低空接近 市民団体が撮影 真横飛行「危険だ」(2017年8月23日 07時06分)
横浜港で米軍ヘリコプターが低空飛行し、横浜ベイブリッジを支えるケーブル付近まで接近したのを、市民団体「リムピース」の星野潔(きよし)さん(49)が撮影した。航空法では、橋最上部の三百メートル以上を飛ぶことなどが義務付けられているが、米軍には適用されない。今回の飛行目的は不明で、星野さんは「橋のケーブルの真横付近という低空を通過し、危険だ。横浜港は米軍の訓練空域でもなく、許されない」と話している。 (辻渕智之)
星野さんによると、ヘリは三日午後一時ごろ、南側から横浜港に飛来した。米海軍厚木基地(神奈川県)所属の第五一海上攻撃ヘリコプター飛行隊の多用途艦載機MH60Rとみられる。
米軍施設「横浜ノースドック」付近の上空を通過した後、南東に約二キロ離れたベイブリッジ方向に楕円(だえん)軌道を描くように二回飛行し、二回目には橋に低高度で接近。その後、ノースドックに着地し、最終的に南側へ飛び去った。
星野さんが横浜港を望む地点から撮影した画像には、最上部が百七十五メートルのベイブリッジのケーブル付近を飛ぶヘリがとらえられている。また橋までの水平方向の距離について、星野さんは「数十メートルの近さだった」と証言している。
ノースドックで離着陸するヘリやドックに入る艦艇の監視のため、リムピースのメンバーは十年以上前から週三回ほど横浜港に通っている。今回のヘリの高度の低さや橋までの距離の近さは異例だったという。
もし同様の飛行を日本のヘリがすれば、航空法違反の可能性がある。国土交通省によると、港の上空は原則「航空機から半径六百メートル内の最も高い障害物から三百メートル」が最低安全高度とされる。しかし、特例法によって米軍には適用されない。
今回の飛行目的は不明だが、外務省によると、米軍施設間の移動のための飛行は、日米地位協定で認められている。一方、訓練目的の場合、横浜港を含めた首都圏に訓練空域が設けられていないため、原則的には行えない。仮に低空飛行訓練を行うケースでは、航空法と同一の規制を適用して安全性を確保することを日米間で合意している。
米軍厚木基地の広報担当は取材に「運用上の詳細はコメントできない」と回答。防衛省は「移動にかかわる飛行だったとの認識だ」と答えた。
米軍では、新型輸送機オスプレイの墜落など事故が相次ぎ、懸念が高まっている。星野さんは「ヘリが橋に接触すれば、通行中の車を巻き込む惨事にもなりかねない。米軍機が日本各地で勝手に訓練し、市民生活に脅威を与えているのではないか」と訴える。


この記事に東京新聞政治部がツイッターでフォローしているのですが、そこのリツイートを読むとこの記事がいかに胡散臭いものであるのかが、非常によくわかります。

すなわち、この写真は「望遠レンズによる圧縮効果」というのがはたらいていて、実際には数十メートルまで接近しているわけではないだろうというのが事実ではないか、という指摘です。ヘリコプターの大きさと橋を比較して三角関数で距離を計測した方によると、ヘリと橋の実際の距離は930メートルくらいだそうです。

おそらくですが、どこぞの市民団体とやらが東京新聞の懇意にしている記者あたりにこの写真を持っていって記事を書かせたのだろうと推測できます。記者のほうも写真を見ただけで圧縮効果など知りもせずに記事にしてしまった、というあたりが真実ではないかと思います。

事実でないことをさも事実であるかのように記事にして拡散すること、これをフェイクニュースと言わずして何をフェイクと言うのでしょうか。
すでに世の中は「新聞の間違いをネットが正す」という方向になっているのでありました。新聞に自浄作用はありませんので、間違い(この場合はねつ造と言ってもよいでしょう)を間違いであると認識できずにいる方も多数おられます。東京新聞49万部に対してリツイートはせいぜい250です。政治ブログなどで拡散されていますから、ネットでは20万人くらいの目には止まっただろうと思いますが、半分以上の新聞読者は真実を知らされないまま「米軍のヘリは危ないなあ。オスプレイはもっと危ないに違いない」などと思い続けているかと思うと、本当に新聞社によるフェイクニュースは罪深いなあと思います。

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内容(集英社HPより)
出頭という言葉を聞くと、芹沢はあの出来事を思い出す。刑務官が押さなければならない、死刑執行の3つのボタン──「ラストストロー」。家族にまつわる七編の短編を通して、人生の機微をうがつ。


曹源寺評価★★★★★
長岡センセーといえば短編。
簡潔な文章でも情景描写や人物描写は鋭く、きちんと前半に伏線を張っておいて後半に回収することを欠かさないので読みやすく、そして多少の後味の悪さも手伝って麻薬のように手を出してしまう。それがセンセーの持ち味だと思っています。
本書もまた短編集であります。
「文字盤」「苦いカクテル」「オンブタイ」「血縁」「ラストストロー」「32-2」「黄色い風船」の7編が収録されています。
いずれも傑作揃いではないかと思います。個人的に最も気に入ったのはタイトルにもなった「血縁」でしょうか。年の離れた姉に搾取されて育った妹を主人公に、ある事件を通じて複雑な姉妹関係を描いたお話です。
ふだん、短編集というのはさらっと読んですぅっと忘れてしまうことが多いのですが、本書はなぜか心にグッと沁みわたってしまいました。特に、ホラーチックな結末を迎える「オンブタイ」、刑務官の心情を描いた「ラストストロー」「黄色い風船」の2作はなかなかに良かったです。黄色い風船は読後感もさわやかで、本書全体を締め括るに最適な一作だったと思います。

やはり、短編ミステリでは長岡センセーの筆力が冴えわたる

なあと改めて感じさせてくれる、ファンなら必読の書と言えましょう。





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2017年08月22日

書評829 誉田哲也「増山超能力師大戦争」

こんにちは、曹源寺です。

「コンコルド効果」というワードをご存知でしょうか。
日本語では「埋没費用効果」と言いますが、意味は「今までに投資した金銭や時間、人的資源、努力などが無駄になるからと、そのまま続けても損失にしかならないことが分かっていながらやめることができない状態」を指します。
超音速旅客機コンコルドが、赤字続きだったのに運航中止できなかったことになぞらえてこのような呼び名になったそうです。

「やめたくてもやめられない状態」というものが世の中にはゴロゴロありそうですが、単に「伝統だから」「長年続けているから」というだけでやめられないのは「コンコルド効果」とは少し意味合いが違ってくるのかもしれません。しかし、時代にそぐわなくなっているものや存在意義を失っているもの、もういい加減やめたらどうなの?と思えるものは逆に「なんでまだやってんの?」と言いたくなりますね。

その代表格が「夏の甲子園」と「24時間テレビ」ではないかと思うのです。

夏の高校野球(以下、甲子園)は高校生を使った感動ポルノ(感動の押し売り)、24時間テレビは障がい者(障碍者という漢字が嫌いなので百歩譲って)を使った感動ポルノであります。
甲子園はまあ、他のスポーツと同様にインターハイだと思えば良いのですが、インターハイならインターハイとして時代とともに変わっていけば良いのだと思います。坊主頭の強要、炎天下での強行スケジュール、かたくなな一会場制(サッカーなど他のスポーツは複数会場制です)、神聖なイメージの醸成等々、全部大人の都合で維持されている制度です。
24時間テレビも然り。もはや何のために走っているのかさっぱり分からない100キロマラソン、一般人から募金を集め出演者にギャラを支払う謎のシステム(海外のチャリティー番組は文字通りチャリティーで出演者はただ働きですね)、障がい者にアイドルの格好をさせてステージで躍らせるという何の見世物やねん状態、24時間ぶっ続けでやることの意味さえも失われた構成(かつては24時間というスケールにインパクトがありましたが、もはやそれは微塵もないですね)等々、完全に偽善番組のレッテルを貼られて久しいのに何一つ変えようとしないのは完全に「大人の都合」によるものでしょう。

まあ、いずれのコンテンツもテレビ番組としては視聴率を稼いでいるのでしょう。数字が落ちない限りは変わらないのかもしれません。

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内容(文藝春秋HPより)
ドラマもヒット。スピンオフ作品も公開予定
超能力にまつわる機械を開発していた技術者が行方不明に。増山が調査を始めると、所員や家族に魔の手が……。大好評シリーズ第二弾。


曹源寺評価★★★★
テレビドラマ化もされた本書シリーズに、第2弾が登場しました。うれしいですねこういうの。
前作は増山圭太郎率いる超能力師それぞれのメンバーにスポットを当てていて、どちらかというとほんわかした作風でありましたが、本書はだいぶシリアスな展開を迎えます。しかも長編です。
超能力を持つ人間とそうでない人間がいる近未来の世界、という設定でスタートしていて、ものすごく現実的な展開をしていくのが特徴的な本書ですから、超能力を測定したり数値化したりするのは当然の成り行きですね。さらに一歩踏み込んでいけば、超能力を科学の力で再現しようとするのも必然であります。
本書はこうした動きを中心に、産業スパイとか防衛産業とかそんな領域にまで足を踏み入れています。
ただ、「大戦争」というほど超能力対決がビシバシ描かれているかというと、全然そんなことはありません。それに、第1弾を読んでいない人にとっては少しわかりづらいところもあるかもしれません。そもそもの世界観を解説している箇所はほとんどありませんので、やはり第1弾から読むことをお勧めします。
また、ストーリー展開もどうしても説明チックになってしまうので、決してスピード感あふれるようなお話でもないです。
本書の世界観は、

超能力を国家資格にすることで非超能力者との共存を図ろうと模索している超能力師たちの奮闘

というのが根底にあるのだろうと思います。ですから、ある意味非常に社会学的で哲学的なお話なのだろうと。派手なアクションを期待するとあとでがっかりしますので、上記のような社会背景を理解したうえで読むほうが良いだろうと思います。
あと、ドラマはココリコ田中が主人公増山を演じていますが、個人的には谷原章介が脳内再生されてしまいます。あと、増山の師匠格である高鍋リサーチ代表の高鍋逸雄は鹿賀丈史ではなくもっとゴツイ・・・古田新太とかですかね。でも、ドラマの原作再現に対する忠実さは他のドラマにはないくらい高いレベルだと思います。





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2017年08月18日

書評828 今野敏「アンカー」

こんにちは、曹源寺です。

北朝鮮がグアムへのICBM発射を一旦取りやめました。米トランプ大統領は「賢い選択をした」などと褒め称えて(皮肉って)いますが、戦争の危機が去ったわけではなく、かの国が危険な国であることも依然として変わらないのです。
一番怖いのは、腰抜けになった首領など要らぬ!といって北朝鮮の軍部がクーデターを起こすことではないかと思います。もしクーデター発生→金正恩暗殺→軍事政権発足、になったら今度は中国が乗り込んでくるだろうと思います。
北「これからは軍部が政権を運営する。まずは米国にICBM撃っちゃるで」
中「待てやコラ聞いてねえぞ」
米「やれるもんならやってみろ」
北「撃ったで〜」
米「てめえやりやがったな、戦争だ!」
中「待て待て、いま傀儡政権作るから」
米「いや待てぬ、侵攻開始」
中「そういえば正男いないんだった。どうしよう」
米「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
中「あああああああああああああああああ」
北「グエー死んだンゴ。でもその前に核ボタンポチー」

金正恩がパフォーマンス的に威圧しているのはわかりますし、経済的にも武力的にも米国とは比べ物にならないほど弱いのも知っていますが、北が威圧行動をとればとるほど各国からの制裁は厳しくなってくるでしょう。そうなれば、北朝鮮人民の不満が爆発するとか、軍部が腰抜け将軍に辟易して暴走するとか、そういうリスクのほうがどんどん顕在化していくわけで、むしろ危機は深まっているのではないかと危惧してしまいます。
「戦争になんかなるわけない」「戦争戦争と国民をあおるな」「もっと対話しろ」などと脳内お花畑な方々がテレビで発言したりネットで書き込んだりしていますが、我々はさまざまな可能性を考慮して行動すること、つまりリスクヘッジの考え方を持つことを忘れないようにしなければなりません。

戦争とは、こっちから仕掛けなくても向こう側から仕掛けてくることがある、という当たり前の考え方さえ否定するような人の意見には耳を貸す必要はないと考えるべきです。

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内容(集英社HPより)
『ニュースイレブン』名物記者・布施と警視庁の刑事・黒田は、10年前に大学生が刺殺された未解決殺人事件を追う。関西の系列局から来た栃本も加わり、捜査は意外な展開へ! 「スクープ」シリーズ第4弾!


曹源寺評価★★★★
いつの間にか「スクープ」シリーズも第4弾に突入です。「スクープ」「ヘッドライン」「クローズアップ」と続いてきたこのシリーズは、今野センセーの作品群からはちょっとだけ異彩を放っているように思います。それはなんといっても警視庁刑事の黒田とテレビ局報道記者の布施がコンビ(!?)を組むという、なんとも奇妙な取り合わせであり、普段は飄々としながら数々のスクープをぶち上げてきた布施の人間味であり、現場百篇ならぬ「資料百篇」を地で行く粘りが信条の黒田刑事であります。警察と報道という両極端にいる二人が相乗効果を発揮して事件を解決に導くというスタイルは読ませる要素が盛りだくさんです。
今回は10年前に町田市で発生した未解決の殺人事件を、警視庁特命捜査対策室に勤務することになった黒田、谷口の両刑事が担当、そこに布施も独自の嗅覚で迫ろうとするが、東都報道ネットワーク(TBN)の深夜枠報道番組「ニュース11」のデスクである鳩村はそこにニュース性を感じず、番組として取り上げようとはしなかった。ニュース11にはちょうど関西から視聴率回復のために送り込まれた栃本がサブデスクとして就任、鳩村と栃本はそりが合わず、そこにメインキャスターの鳥飼も異を唱えるようになり、、、
スクープを連発する布施が独自の嗅覚でとらえたのは、町田市で10年前に発生した殺人事件。この未解決事件で奔走する黒田・谷口の両刑事の活躍と、ニュース11内でこのニュース(大ごとになる前の話として)を取り上げるべきか否かという報道の在り方についての問題、この2つのストーリーを連動させながら展開していくので、中だるみなし、一気に読ませる勢いで進んでいきます。
未解決事件のほうは最近のトレンドでしょうか、ふとしたきっかけで解決まで到達することがありますが、現実はそう甘くはありません。まあ、こういう解決もあるんだろうなあという程度で流せば良いのかなあと思います。
もうひとつの「報道の在り方」のほうは、いろいろと考えさせてくれますね。前作「クローズアップ」でもそうでしたが、報道と視聴率、報道とバラエティ、客観性と主観性、これらの境界線をどこに引くべきなのかという命題について、鳩村は考えさせられます。

読者も考えさせられます

が、本書で言及されているのは「アメリカでは報道番組とバラエティが区別されている」ものの「報道番組のアンカー(本書のタイトルでもありますが、)が自由に意見を述べている」という現実についてです。
日本もこれをまねて、テレビ朝日では1985年10月に、久米宏がアンカー的な役割で番組を構成した「ニュースステーション」を作りました。TBSでは筑紫哲也がこれに倣って1989年10月、「NEWS23」を開始しました。よく思い返せば、報道番組が独自色を強めていったのはこのあたりからではないでしょうか。アンカーマンの存在が番組の「色」を作り出しているという流れが今は固定されています。しかしそれは同時に、過激な一方通行の報道を生み出したとも言えるのかもしれません。
本書では言及されていませんが、電波は公共のものであって、それはバラエティだろうが報道だろうが関係ないんですね。テレビ局は公共の電波を借りて(しかも極端に安価で)番組を流しているわけで、そこに公正中立が求められるのは当たり前の話なんですよ。
ですから、個人的な感想になりますが、電波オークションが実施されるとか、放送法に厳格な罰則規定が盛り込まれるとか、クロスオーナーシップの禁止とか、放送関連の法整備をもう少し突き詰めていかないと、アメリカのようなアンカーマンによる独自の報道番組構成などは認めるべきではないと思っています。
こんな話は本書のストーリーとは全く関係ないことではありますが、「報道の在り方」に言及する以上は現在ネットなどでも議論されている上記のようなテーマを見過ごされては困るので、とりあえず書いておきました。





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2017年08月15日

書評827 河合莞爾「スノウ・エンジェル」

こんにちは、曹源寺です。

今日8月15日は終戦の日です。なぜか「終戦記念日」と呼ぶ勢力がいますが、記念という単語には「思い出となるように残しておくこと。また、そのもの。」(大辞泉)という意味がありまして、別に思い出として残しておきたくもないんですが、なぜか記念日にしている奴らがいます。さらに言うと、「終戦」ではなくて「敗戦」ですから正確には「敗戦の日」というのが正しい使い方ではないかと思います。

似たような話には、広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれている文章がありますね。
「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」
というやつです。過ちってなんでしょうか。広島市のホームページにはいろいろと説明書きがありますが、こんな文章があります。
戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉である
うーん、本来は原子爆弾という人類が抱えた大きな宿業のことを指していたのではないかと思いますが、いつの間にか戦争そのものにすり替わっていますね。まあ、原爆とした場合、過ったのは米国ということになりますから、どこかの誰かさんにとっては都合の悪い意味合いになってしまうのかもしれません。

ちょっとした言葉遣いの違いで、本来持っているはずの意味が微妙にずれていく

ということが、ここ最近は多いなあと思ってしまうのですが、みなさんもそんな経験ありませんか?
小賢しい。うん、小賢しいという単語がしっくりくるなあ。
悪意を持って大衆を騙そうとしているヤツがいるということを、我々はしっかりと認識しておくべきだと強く思います。

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内容(祥伝社HPより)

やがて世界は白い天使に覆(おお)われる――
蔓延(まんえん)する違法薬物の陰で進む“完全な麻薬(スノウ・エンジェル)”の開発。
犯人5名を“射殺”した元刑事と非合法捜査を厭(いと)わぬ女麻薬取締官が潜入捜査で炙(あぶ)り出す、“依存”の闇と驚愕(きょうがく)のW計画とは?
起こりうる近未来の薬物犯罪を描く、黙示録的警察小説!
我に依存せよ、我に服従せよ。
服従しないものには死を――
「天使様、お助け下さい」――歩行者天国に暴走車を突っ込ませた後、通行人を殺害した男が、謎の呟(つぶや)きを残して百貨店の屋上から飛び降りた。新種の合成ドラッグ〈スノウ・エンジェル〉が原因と睨(にら)む厚生労働省の麻薬取締官・水月笙子(みづきしょうこ)は、その根絶を狙い、ある男に捜査協力を求めた。神西明(じんざいあきら)、元刑事。9年前に相棒を殺され、犯人5人を“射殺”、そのまま逃亡して首謀者・マシューを追い続ける男だった……。


曹源寺評価★★★★
河合センセーの最新刊は元刑事と麻薬取締官のお話でした。
神西明は相棒を殺されて犯人5人を射殺後逃走、偽名を使って日雇い労働者として事件の首謀者を追う日々だった。その神西をスカウトしたのが水月笙子で、新種の合成ドラッグ「スノウ・エンジェル」を突き止めようとしていたのだ。
過去を捨てた神西は囮捜査として最適な人物だった。売人の伊佐と仲良くなり、伊佐の手助けをすることで卸元の白竜に近づけることができると考えた神西は、大きな取引を持ち掛けることで白竜と面会できるようセッティングした。神西はスノウ・エンジェルを根絶することができるか。
河合センセーといえば、島田荘司センセーばりのトリックものや鏑木刑事を主人公とした警察小説が耳目を集めましたが、本書はなんとなく大沢在昌センセーのようなちょっとハードボイルド系の作風に仕上がっています。
でも、なんだかちょっと既視感があるなあと思ったら、「デビル・イン・ヘブン」の前日譚ですってよ。どおりで、「聖洲」という湾岸地域の名称とか、カジノ法案の話とか、首謀者「マシュー」のことだとか、デビル〜の世界観が出ているわけだわ。でも、マシューってなんだっけ?忘れちったわ。
もしかしたら、本書を先に読んで、その後に「デビル・イン・ヘブン」を読んだら面白いのかもしれないですね。
元刑事・神西の活躍はそれこそ大沢作品の

鮫島警部ばりにカッコイイ

のですが、その造形描写はもう少し特徴的なものがあっても良いのかなあと思います。
ラストはちょっと思わせぶりなところもありますが、続編に期待してしまって良いのでしょうか。





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2017年08月08日

書評826 曽根圭介「黒い波紋」

こんにちは、曹源寺です。

昨日は河野太郎外務大臣が、周囲の期待を裏切って仕事をしていると話題になりました。
「お父さんの意見大切に」王外相、河野氏に皮肉(8/7読売新聞)
【マニラ=比嘉清太】河野外相と中国の王毅ワンイー外相が7日、初会談でいきなり火花を散らす一幕があった。
王氏は会談冒頭から「発言を聞いて率直に言って失望した」と河野氏を批判した。会談に先立つ東アジア首脳会議(EAS)外相会議で、河野氏が南シナ海問題への懸念を表明したことに不満を示したかったようだ。「ハト派」として知られた河野氏の父の河野洋平・元衆院議長を「正直な政治家」と持ち上げ、「お父さんの意見を大切にすることを望む」とも皮肉った。
これに対し、河野氏は「中国には大国としての振る舞い方を身に付けていただく必要がある」と反論した。


河野氏のブログを読めばわかりますが、河野氏は実にマメです。自分の仕事には責任を持ち、きちんと正論を吐いてそれを曲げない精神性もお持ちのようです。先日も書きましたが、父親の売国っぷりとは違って、情に流されたりトラップに引っかかったりはしないような感じがします。法律がこうなっているから、とか、条約で締結したのだから、とか、彼の行動規範はこうした法律第一主義的な色合いが強いのだろうと思います。
こういう人は行政のトップに据えるとなかなかぶれませんので、意外と適任なのかもしれません。
ちょうど外務副大臣には「ヒゲの隊長」こと佐藤正久センセーが就任されました。こと外務に関してはこのコンビが活躍するのではないかと期待しています。
あ、一応補足しておきますが、好きではありません。嫌いだけど仕事はきちんとするんだろうなあということです。

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内容(朝日新聞出版HPより)
元刑事の加瀬将造は、孤独死した父親宛てに何者かから毎月30万円の現金が届いていることを知る。さらにアパートを片付けると天井裏から古いVHSのビデオテープが。中身を確かめると、そこに映っていたのは・・・。江戸川乱歩賞・日本ホラー小説大賞受賞作家、渾身作!


曹源寺評価★★★★
後味の悪いホラーチックな作品で個人的には大好きな曽根センセーの最新刊です。本作はホラーではなくてクライムサスペンスのジャンルだと思います。
冒頭は元刑事にして便利屋家業の加瀬将造が、実父・真木盛夫の死去を知らされ現地に赴くところから始まります。両親の離婚後30年も音信不通であった実父なので、哀しみもわかない加瀬。部屋に金目のものがないか探すと、偽名で借りた私書箱の契約書があり、何者かが毎月30万円を父に送金していることを知る。さらに天井裏には古いVHSのビデオテープが隠されていた。離婚して養育費の支払いに追われていた加瀬は、千載一遇のチャンスに賭けようとする。。。
曽根センセーの作品の特徴のひとつに、「登場人物がみんなクソ」というのがあります。クソ野郎ばかりですので感情移入できません。だから嫌い、という人が多いのかもしれませんが、自分は違います。

クソにはクソの末路がちゃんと待ち構えている

のが曽根作品の特徴でもあります。
本書は主人公と思しき加瀬も、その実父の真木盛夫も、そのあとに登場する政治家とその取り巻きも、みーんなクソで悪党です。しかも加瀬はバカでもあります。(以下、ネタバレあり)


加瀬は脅迫の仕方がめちゃめちゃ下手です。現金の受け取りも下手くそ極まりありません。オレだったらもうちょっとうまいことやれそうな気がするなあ、なんて思ったりもしますが、これは読者が思った時点で曽根センセー的には勝ちなのかもしれません。そう、なんだかんだでこの悪党に感情移入しているわけですからね。
登場人物がクソなので、たいていの作品はラストも後味悪いです。本書もまた、微妙なしこりを残す終わり方をしますので、何とも言えぬ気分にさせられます。
でも、それこそが曽根センセーの持ち味だと思っています。本作は伏線をきちんと回収しているし、悪党にふさわしい末路も描かれているし、政治の世界はやはり闇が深いなあと思わせているし、で納得の一冊であるかと思います。





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2017年08月04日

書評825 大倉崇裕「クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係」

こんにちは、曹源寺です。

積水ハウスが8月2日にプレスリリースした「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」という文書が、久々の大型経済事件として話題を集めました。
どんな事件か、すごく簡単に言うと「わが社は不動産取引で詐欺師にまんまと67億円をだまし取られました」という内容です。
本当に久々の大型事件ですが、なぜかあまり続報がないですね。事件の背景とか犯人像とか取引内容の実態とか、いろいろ知りたいことは多いんですが、簡単に追える内容でもなさそうです。
さて、大型経済事件といえば「コスモポリタン事件」「イトマン事件」「石橋産業事件」「雅叙園観光事件」など、90年代の巨額詐欺事件が思いつきますが、2000年以降はあまり目立ったものがない(のか自分が知らないだけなのか)ですね。パナマ文書なんて、本当はめちゃくちゃすごい事件のはずですが、マスゴミが忖度して大手企業の名前を出さなかったものだからあっという間に下火になりました。
この事件をいち早く報じたのはWebニュースを配信する「東京アウトローズWEB速報版」でした。複数の地面師が暗躍しているという内容で、早くからアングラで蠢いている怪しい人脈を追求していたわけです。
たしか、昨年、新橋で大地主の女性が行方不明となった事件(その後、遺体発見)もWebニュースをメインにしている媒体がすっぱ抜いたんじゃなかったかしら。いずれにせよ、大手マスゴミでは絶対にスクープもできないような事件は、なんだか血が騒ぎます。裏社会の実態をすき間から覗き込んだような、見てはいけないものを見てしまったかのような、そんな気にさせられます。
しかし、Webを中心に活動されているジャーナリストの方々も、それこそピンからキリまでありまして、個人的な感想ですがだいたい半分以上は単なる売文屋でしかなく、調査報道をしっかり行っておられるのはほんの一握りでしょう。思想的にヤバイ人もいますが、事件を追求するという姿勢だけ見れば素晴らしいお方もいらっしゃいますので、そんな人は応援したいですね。

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内容(講談社HPより)
2017年7月から連続テレビドラマ化!
大人気「警視庁いきもの係」シリーズ待望の第4弾!
ピラニア、クジャク、ハリネズミが登場する傑作中編3作を収録!
学同院大学で起きた殺人事件の容疑者は、クジャク愛好会の奇人大学生! だが無実を信じる警視庁いきもの係の名(迷)コンビ、窓際警部補・須藤友三と動物オタクの女性巡査・薄圭子はアニマル推理を繰り広げ、事件の裏側に潜むもうひとつの犯罪を探り当てる!? 犯人確定のカギはクジャクの「アレ」!?
警視庁の「いきもの係」というべき、総務部動植物管理係の名コンビ、窓際警部補・須藤友三(すどう・ともぞう)と動物オタクの女性巡査・薄圭子(うすき・けいこ)のアニマル推理が楽しめます!


曹源寺評価★★★★
今タームでテレビドラマ化された「警視庁いきもの係」シリーズの最新刊です。須藤友三警部補が渡部篤郎、薄圭子巡査が橋本環奈という、まったく原作を無視したキャラクター設定には少々頭にくるものがありますが、まあドラマなんてこんなもんでしょう。
さて、本作では「ピラニア」「クジャク」「ハリネズミ」の中編3作を収録してあります。このシリーズは短編よりも、そして長編よりも、中編くらいの作品のほうが読みやすくて面白いなあと思います。短編だとあっさりしすぎていて、長編だと冗長に思えるのかもしれません。
「ピラニア」では、マンションの一室で発見された他殺体、その部屋にはピラニアの飼育施設があり、水槽の中にはある会社の社章があったというストーリー。
「クジャク」では、大学生が他殺体で発見される。手にはクジャクの羽根が。目白にある学同院大学の敷地内にはクジャクとその卵が孵化中であった。
「ハリネズミ」では、ある女性が襲われて大けがを負う。彼女はなぜ襲われたのか。飼っているハリネズミの生態をつぶさに追っていくと、その裏にある陰謀が隠されていた。
最後のハリネズミの章は薄圭子でなければ絶対に解くことができなかった事件として、記憶に残りそうな内容です。我が家もハリネズミを飼っていますので、楽しく読むことができました。
「クジャク」では、作者大倉センセーの母校である学習院大学が学同院大学として描かれています。また、学同院大学はセンセーの「オチケン!」シリーズの舞台でもありますので非常になつかしく、素晴らしい描写になっています。さらに、本書に登場するクジャクの名前「サカタニ」と「スカイレインボーハリケーンゴッドフェニックス」は京都大学クジャク同好会に実在するらしいですね。まんま使っているところに、大倉センセーのクジャクに対する愛情とリスペクトがうかがえます。
これだけでも十分に笑えますが、本書シリーズの楽しさはやはり薄圭子と須藤友三のボケツッコミでありましょう。日本人なのに日本語に不自由している薄圭子の天然ボケに、須藤友三が冷静にツッコミを入れるというこの会話。

回を追うごとにこのシリーズは面白さを増してきました。

ドラマなど関係なく長期で続けていただきたいシリーズです。





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posted by 曹源寺 at 18:20| Comment(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月01日

書評824 黒井卓司「フェイスレス」

こんにちは、曹源寺です。

トランプ米大統領がCNNをはじめとした一部メディアに対して使った「フェイクニュース」という単語がありますが、これは「メディアのねつ造」という意味でつかわれ始めたものであります。

これに対して日本では、メディアのほうが「ネットにおけるデマ、作り話」という意味で使うようになっています。

朝日新聞の記者が先日こんな新書を出したことで、ネットでは笑いものになっています。

平和博「信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体 (朝日新書)」 [新書]


「今年一番のギャグ」「自伝乙」「鏡見ろよ」「正に朝日新聞そのもの」などの書き込みが半端ないです。
本来の意味を勝手に書き換えようとする気マンマンですね。
まあ、ネットに嘘があふれかえっているのはみんな知っています。だからこそ「嘘を嘘と見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という有名な格言ができたわけです。ですから、みんな知っているんですよ。わかっているんですよ。わかってて使っているんですよ。
問題はネットではなくて、既存のメディアがネットを使えない人を対象に意図的にフェイクを混ぜてニュースを流し始めていることなんですよね。こうなるともう自分が直接目にしたものだけを信じるしかないという、末期的な状況になってくるんですね。ネットに限らずテレビも新聞も、信じられない情報ばかりが垂れ流される世界というこの世紀末な状態。こんな状態が長く続くはずはありませんので、いずれ何らかのしっぺ返しがくるのは間違いないでしょう。

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内容(KADOKAWA HPより)
世界が枝分かれし、人類滅亡のカウントダウンが始まる。超弩級サスペンス!
設定の見事さとそれを上回る大興奮の展開。物語も才能も凄まじい。──山田宗樹(『百年法』『代体』)
枝分かれした「もう一つの世界」が生み出した恐るべき生体兵器。人類滅亡までのカウントダウンがはじまる。
「もう一人の自分」に出会ったとき、世界は音をたてて崩壊する……一気読み必至の予測不能サスペンス!
 製薬会社の研究員・透は、同じ研究チームの北岡の婚約者・可奈恵に秘かに想いを寄せていた。だが北岡の車で帰宅中にタイヤがバースト。可奈恵と透は一命を取りとめるが、北岡だけが亡くなってしまう。
 それから9年後。アメリカである実験が行われていた。アリの殺虫剤のテストという名目だったが、そのアリは被験者15名をあっという間に噛み殺してしまう。──実はこの世界は、誰にも気づかれないまま二つに枝分かれしていた。しかしネバダ核実験場にある“チューブ”を通じて、アメリカと「もう一つのアメリカ」は秘密裏に交流していたのだ。そしてチューブを通過したアルゼンチンアリが「向こうの世界」で交配し誕生したのが、この恐るべき殺人アリだった。
 一見、何の関係もない2つの出来事。だがそれが1つの線で結ばれたとき──世界を揺るがす陰謀が透を呑み込み、彼の運命は大きく変わっていく。


曹源寺評価★★★★★
書店で気になったので読んでみました。黒井卓司センセー、初読です。
黒井卓司センセーは1960年生まれ。2011年の日本ホラー小説大賞最終候補作「さよならが君を二度殺す」でデビュー、だそうです。
本作はホラーというよりはSFサスペンス、いやSFファンタジーですね。
「平行世界が完全に分岐しなかったため、こちらの世界とあちらの世界が一か所でつながっている状態」という設定だけで、最近の異世界ブームに乗っているファンにはたまらないお話の予感がプンプンしそうです。そこに、「両方の世界の生物をかけ合わせると瞬間進化する」という、さらに恐ろしい設定がおまけでついてきます。
そんな世界を舞台にして、日本とアメリカで巻き起こる事件がテンポよく進んでいきます。主人公の早川透とその友人である北岡直樹、直樹の婚約者である可奈恵、そしてもう一つの世界から来た「F」。壮大な設定ですが、その割にストーリーは(ネタバレ注意)


ただの三角関係のもつれ

だったりするので、ちょっと拍子抜けです。
うーん、個人的にはアメリカ映画のような大きな展開を期待したのですが、彼らの行動のモチベーションがあまりたいしたことなくてがっかりです。
それと、ラストもイマイチ締まらないなあという印象です。なんだか、少年漫画の最終回みたいなラストです。
もし自分が作者だったらどうするか、なんて妄想がいっぱいできそうな作品です。自分だったらおそらく、絶望感たっぷりのラストにするかもしれません。
だれも救われないような、、、人類が殺人蟻に滅ぼされるような、、、





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posted by 曹源寺 at 16:19| Comment(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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