ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2012年04月25日

書評381 相場英雄「震える牛」

平日は毎朝4時40分くらいに起床して、夜11時くらいに就寝。仕事もストレス溜まりっぱなしで時間に終われる毎日。土日も起床時間が同じで、テニス漬けにより肉体をいじめ抜き夜も遅い。こんな生活が3週間も続くと、蓄積した疲労がいつまで〜も抜けないですね。眼の焦点が合わないときがあるんですが、ヤバイかしらん。GWまではガマンの日々だな〜。


内容(小学館HPより)
平成版『砂の器』誕生!
警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち未解決となっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。初動捜査では、その手口から犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んでいた。田川は事件現場周辺の目撃証言を徹底的に洗い直し、犯人が逃走する際ベンツに乗車したことを掴む。ベンツに乗れるような人間が、金ほしさにチェーンの居酒屋を襲うだろうか。同時に殺害されたのは、互いに面識のない仙台在住の獣医師と東京・大久保在住の産廃業者。田川は二人の繋がりを探るうち大手ショッピングセンターの地方進出、それに伴う地元商店街の苦境など、日本の構造変化が事件に大きく関連していることに気付く。
これは、本当にフィクションなのか?
日本の病巣、日本のタブーに斬り込んだ、衝撃のエンターテイメント大作!






曹源寺評価★★★★★
この相場英雄という方は元々、時事通信社の記者をやっていらした方で、ダイヤモンド社の「経済小説大賞」を受賞した経歴がおありだそうです。受賞作の「デフォルト(債務不履行)」は読んだ記憶があります。
それ以来ということになりますので、7年ぶりですね。本書は新聞の5段ぶち抜きで広告が掲載されていたのでインパクトが強かったのを覚えています。
タブーに挑戦した内容だという触れ込みでしたので、業界の裏話が中心になるのかなあと思っていましたが、内容は捜査一課の田川刑事を中心としたミステリで、これに元新聞記者でWebニュースサイト記者に転身した鶴田真純のストーリーが交錯しながら、事件の真相に迫るという展開になっています。
ただの警察小説ではなく、むしろ奥深いテーマが見え隠れします。それは「巨大SCの繁栄と商店街の没落」であったり、「食肉業界の深い闇」であったり、「地方都市の衰退」であったり、ということで、なるほど、郊外の幹線道路沿いは確かに大手小売チェーンの巨大店舗ばかりになり、地方出張しても金太郎飴のような同じ光景が眼前に広がります。巨大なショッピングセンターがオープンするとなれば、一応地元の企業や店舗にも声がかかりますが、割高なテナント料から出店もままならず、結局安さに惹かれた客がSCに流れ込んで地元の商店街がどんどん衰退していき、シャッター通りになります。しかし、ちょっとでも売り上げが落ちればテナントも撤退するでしょうし、目玉のテナントがいなくなればSC自体の集客力も落ちるでしょう。SC全体では成長を見込むことが出来なくなり、結局SC自体が撤退となれば、残された住民は買い物難民になるわけです。つぶされた商店街もたやすく復活は出来ないでしょう。おそらく、SCには「社会インフラ」としての自覚などなく、まるで焼き畑農業のように市場を荒らして去っていくだけの存在なのかもしれません(本書はこのような「悪」としてのSCを強調しています)。商店街は地方都市より、むしろ東京のほうが頑張っているのかもしれないですね。本書では中野区の商店街を人情味溢れる街として描いていますし、自分の住む街も南北と東西の2本の商店街モールがあって元気です。本書を読むと、商店街のよさを再認識させられます。
食肉業界のほうは、その昔にTV番組でミー○ホープ事件を再現したVTRを流していたのを食い入るように観てしまったために、非常に印象に残っています。あの事件は本当に胸糞悪かったです。挽き肉に古いパンを入れていたとか、水を足して重量をごまかしていたとか、いまでも信じられないようなことを平気でやっていたんです。うちの息子は小麦アレルギーですから、そんな挽き肉食べようものならアナフィラキシー起こして救急車もんですよ。そんなあくどい業者も、本書には登場します。
あと、「食品の裏側〜みんな大好きな食品添加物」という本がベストセラーになりましたが、「古い肉」と「混ぜ物」と「添加物」でできた成型肉は本書でも登場します。本書を読むだけで、安いだけのレストランとかスーパーで買い物できなくなります。この本とミートホー○事件を反面教師として、我が家は未だに野菜は無農薬野菜のお店で、肉は信頼の置ける肉屋か生協だけでしか買いません。
本に戻りましょう。難しいことを専門用語を交えて書いているわけではありません。むしろ、難しい表現や経済用語などを避けて平易に書かれていますので読みにくくはないし、展開が速いからどんどん読み進めることができます。どことなくミート○ープやイ○ンを髣髴とさせる設定で、現実と照らし合わせながらイメージすることもできます。
ただね、「平成の砂の器」とかオビに入れるのやめましょうよ。本作は砂の器とは似て非なるものですよ。地道な捜査の積み重ねによって犯人像をとことんまで絞り込んでいく展開はお見事ですが、砂の器はまたちょっと違うテーマが内包されていますし、本作は警察小説と経済小説の高次元での融合と呼べる、新たな頂点に立つ作品ではないかと思います。社会派ミステリという言い方でも通じるかもしれませんが、このくくりに入れるのはちょっと憚られるような感じがします。
あと、最後がちょっと後味悪いなあ。警察の闇まで加わって、著者は

とことんタブーに挑戦しているなあ

と感じた次第(あと、新聞業界の闇も書かれているかもしれません)。








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posted by 曹源寺 at 14:23| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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