ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2012年10月09日

書評417 有川浩「3匹のおっさん ふたたび」

2012年10月3日付けの信濃毎日新聞のコラム「斜面」にこんな記事がありました。ちと長いが引用させていただきます。

言葉尻を捉えて人を批判するようなことはやりたくない。だが安倍晋三さんのこの言葉は見過ごしにするわけにいかない。自民党総裁に選ばれた後、京都市で開いた講演会での発言だ
   ◆
「たった3分の1を超える国会議員の反対で発議できないのはおかしい。そういう横柄な議員には退場してもらう選挙を行うべきだ」。憲法を改正するには、(1)衆参両院の3分の2以上の賛成による発議(2)国民投票―のハードルがある。安倍さんの発言の趣旨は(1)のハードルが高すぎるということだろう
   ◆
憲法とはそもそも何か。憲法は「個人の権利・自由を確保するために国家権力を制限することを目的とする」。憲法学の泰斗、芦部信喜さんは書いている。国民が生まれながらにして持つ権利が国家権力によって侵害されないよう守るのが憲法、というのだ
   ◆
憲法99条は、この憲法を尊重する義務を負う人を列挙している。「天皇または摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」である。国民はその中に含まれていない。憲法が国民を守るためのものである以上当然のことだろう
   ◆
そう考えてくると、安倍さんの発言のどこがおかしいか分かる。政治家の行為を縛る憲法の制約を政治家自らが外そうとしていることだ。安倍さんはこと憲法となると前のめりではらはらする。国民がいま政治に何を求めているか、まずは耳を澄ませてほしい。


なるほど、「憲法は国民の権利を国家によって侵害されないように守るために存在するのだ〜!」ということですね。これは分かります。
しかし、だからといって国会議員は憲法改正をしてはならぬ!という論拠にはならないでしょう。そんなコト言ったら代議員制や立法府の存在そのものを否定することになります。
それに、民主党が推し進めようとしている「人権保護法案」に関してはいいのか?ということもあります。これは、哲学者の宮崎哲哉氏がコラムで指摘されていましたが、「人権は国家が国民に対してそれを蹂躙してはならぬ、というのが基本的人権の尊重であり、民が民に対して行うものを基本的人権の尊重として組みこむのは筋が通らない」という主旨だったと記憶しています。
人権もまた、憲法と同様に国家(とそこに従事する人間)が国民を保護しなければならないというのが基本原則であるわけですから、憲法を改正するのがNGならば、人権保護もまた「国家が国家による監視機関を作る」といった行為がNGであるはずです。
このへんの矛盾をどう考えたらよいのか。護憲派と人権擁護派はかなり重なっていると思いますが、どうなんでしょう。


内容(文藝春秋HPより
ご近所の悪を斬る還暦三匹が帰ってきた!武闘派のキヨとシゲ、頭脳派のノリ。“三匹のおっさん”が万引き、不法投棄など地域の問題に立ち上がる! 痛快活劇小説第2弾
剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械をいじらせたら右に出る者なしのノリ。「還暦くらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!」と、ご近所の悪を斬るあの3人が帰ってきた! 書店万引き、不法投棄、お祭りの資金繰りなど、日本中に転がっている、身近だからこそ厄介な問題に、今回も三匹が立ち上がります。ノリのお見合い話や、息子世代の活躍、キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗の初々しいラブ要素も見逃せません。漫画家・須藤真澄さんとの最強タッグももちろん健在。カバーからおまけカットまでお楽しみ満載の1冊です。






曹源寺評価★★★★
元剣道の道場主・キヨこと清田清一、柔道の達人で居酒屋経営のシゲこと立花重雄、いつもポケットに怪しげな機械を忍ばせる電気工事士のノリこと有村則夫。この3人ならぬ3匹が繰り広げるご近所活劇がこの「3匹のおっさん」シリーズであります。
第2弾が待ち遠しいなあと思っていたら、すかさず出してこられたところがさすがに有川浩センセーでありましょう。このシリーズは人情モノでもあり、活劇でもあり、家族の物語でもあり、そしてラブストーリーでもあります(ミステリではないなぁ汗)。
この表紙の絵が完全にイメージどおりというか、あまりにもマッチしすぎていてスゴイです。本書ではおまけのカットというか漫画みたいな挿入絵もあって2倍楽しめます。
ただ、前作に比較してアクションは少なくなり、よりホームドラマ化してきました。個人的にはホームドラマ、渡る世間に〜ではなく、

時代劇みたいなほうがいいね〜

と思います。この辺がやや物足りなさを感じさせなくもありませんが、パートの話、ゴミの不法投棄の話、万引きの話、お見合いの話、お祭りの話、そして放火の話。どれもこれも日常を切り取りながら、そこにはびこる不条理や屁理屈を浮き彫りにして、還暦ジジイ達がこれを一刀両断するというストーリーで、もやもやを吹き飛ばす痛快さがあります。
有川作品ではもっとも大衆受けしやすい作品だと思います。思うが故に、映像化も視野に入っているんだろうなぁと勘ぐってしまいます。ただ、第3弾があるのかどうか、なんとも言えないような終わり方ですね。









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posted by 曹源寺 at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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