ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2015年05月19日

書評614 今野敏「マル暴甘糟」

こんにちは、曹源寺です。

大阪市のいわゆる「都構想」にかかる住民投票はわずか10,741票という僅差で否決となりました。賛成票を投じた方は残念だったと思いますが、これも民主主義であります。
久しぶりに「民主主義らしい」投票ではなかったかと思います。高い投票率、深い関心、世代間別賛否の差(70代が反対多数でもそれ以外の世代は賛成多数→最終的に否決)など、選挙・投票とは何か?を深く考えることになったのではないかと。特に若い世代は「オレが一票投じたところで何かが変わるわけないじゃん」と思っている無理解なヤツが多いですが、けっしてそんなことはないということが理解できたのではないでしょうか。
ネットでは高齢層の反対理由が「交通機関の無料パスが廃止になるかもしれないから」など、老害とも言える既得権益の維持が主流となっていて、そのことに憤慨している若年層からの意見が多数出回っています。
しかし、その理由が事実かどうかは別として、維新の党はデメリットに勝るメリットを提示していなかったこともまた事実であります。二重行政の解消といったお題目は野党から追求を重ねられては縮小し、2,200億円とも目された合理化効果は最終的に1億円しか見積もることができず、しかも、初期投資のほうが膨大になってしまうというのではお話になりません。公務員の数が多すぎるとか、年収1,000万円の交通誘導監視員が400メートルおきにいるとか、そういう話は都構想とは切り離してメスを入れれば良いだけのことではなかったのかと思います
そもそも、維新の党はこうした公務員の合理化などを目的にした新自由主義的イデオロギーの集団であったはずですので、その目的のための手段として都構想を提示したということです。今回は構想自体が甘かった。所詮は素人の思いつき、単なる画餅であったということではないかと総括してみます。

それにしても、投票翌日の橋下市長の晴れやかな顔ったらなかったですね。退路を断つという政治家としての行動はそれなりに評価しても良いのではないかと思いますが、彼自身は弁護士に戻ったほうが稼げますし、この潔さは今後の様々な活動においてもプラスに働くでしょうから、今回の住民投票はどちらに転んでも橋下市長の一人勝ちであったような気がします。むしろ退路を断たれたのは江田、松井、松野の各氏でしょう。彼らは貧乏くじ引いたなと思いました。





内容(実業之日本社HPより)

「事件発生?嫌だな…」史上最弱(?)の刑事登場!
撲殺事件の裏にあるのは暴力団の抗争か、半グレの怨恨か――
弱気な刑事の活躍ぶりに笑って泣ける、著者会心作!
甘糟達夫は、35歳の巡査部長。北綾瀬署刑事組織犯罪対策課に所属しているマル暴刑事だ。ある日多嘉原連合の構成員、東山源一が撲殺されたという知らせが入る。現場の防犯カメラに映っていた不審な車の持ち主とされる男は、行方がわからない。署内には20数名からなる捜査本部が立ち上がり、甘糟と、コワモテの先輩・郡原虎蔵も加わることになった。捜査本部には、警視庁本部から派遣された捜査一課の捜査員も加わるが、捜査は思いがけない方向に……。


曹源寺評価★★★★★
今野センセーの近年の作品は大別すると警察小説と任侠小説、それに空手小説ということになりましょうか(かなり大雑把)。任侠小説はほとんど未読のままですが、「任侠学園」とか「任侠病院」といった作品があります。
本書はその任侠シリーズに脇役で登場していた甘糟達夫刑事が主人公となった初の作品であります。名前や本書のタイトルからするとなんだかコワモテのいかにもなマル暴刑事の登場という感じがしますが、実はまったくの逆で、甘糟は三流私大から安定を求めて公務員になったようなヤツ。強行班は忙しそうだなあとか、捜査一課はすごいなあとか、やる気も野心も大して持ち合わせていない刑事であります。
そのくせ、というか、だから逆に、普通のマル暴刑事にはありえない安心感を与えるキャラが相手からも信頼を得ることができ、情報も集まる、という良い循環を生み出すことに成功しています。この辺のキャラ作りは今野センセーならではの持ち味といえそうですね。
本書はテンポ良すぎて2時間かからずに一気読みでありましたが、同じマル暴刑事の「みなとみらい署」シリーズとはちょっと毛色が異なり、怖いヤクザと、もっと怖い上司に挟まれながらも、事件解決に奔走する甘糟の活躍が光る内容となっております。
本書の一番のキモは、甘糟と多嘉原連合のヤクザであるアキラとの会話ではないかと思います。アキラの相手を言いくるめていくテクニック、いちゃもんをつけつつ自分のペースに持ち込み相手を追い込んでいく様子は、なるほど、素人だったら完全にやられますね。
どういう手口かと言いますと、
「てめえ、ふざけんな。くぁwせdrftgyふじこlp」
「わかりました、わかりましたから」
「なにがどうわかったってんだ。ちゃんと説明しろ」
言葉の端々をつかまえては言質を取りにいき、言ったからには約束を守らせる。「もしやらなかったらどうなるかわかっているな」という脅しを最後に込めて相手を完膚なきまでに論破するという手法です。
こうした相手には謝ってはいけないし、分かりましたとも言ってはいけない。

なるほどこれはいい勉強になります

本書は何気に読み応えありますね。ぜひ今後もシリーズとして出し続けていただきたいと思いました。





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posted by 曹源寺 at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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