ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2015年10月13日

書評654 五十嵐貴久「贖い」

こんにちは、曹源寺です。

広島カープがCS進出を逃し、錦織圭選手が楽天ジャパンオープンで決勝進出を逃し、ラグビーW杯で日本チームが8強入りを逃し、なんだかとてもすっきりしない気分です。
昨日の出雲駅伝に至っては母校が出場すらしていません。このもやもや感を払拭する楽しい話題が欲しいところです。

さて、お隣の中国ではスパイ容疑で拘束された人が続出し、ユネスコの世界記憶遺産とかいう謎の認定遺産に外国人旅行者が記録したとされる南京大虐殺の文書が認定されるという、なんとも許しがたい不届きな現象が立て続けに起きました。
これはもう日本国民、怒りをあらわにして良いのではないかと思いますよ。スパイのほうは百歩譲って公安調査庁や外務省が飼っていてもおかしくありませんから真実ならしょうがありませんが、南京は違います。ありもしない事件を史実と偽ることの罪は重大です。たとえて言うなら、「お前のひいじいちゃんはオレのひいじいちゃんから借りた金を返さぬまま死んだからお前が返せ」などと真顔で言われても「そんなの知らんがな」です。「ここに証文がある」と言って出されたのがカラー写真だったみたいなオチです。ユネスコはそのカラー写真をもって「お前のひいじいちゃんは確かに金を借りたな」と言っているに等しいわけです。

これを東京新聞がこんな風に記事にしていました。
南京事件 記憶遺産に 政府、中国に抗議(2015/10/11朝刊)
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は十日、旧日本軍による「南京事件」の資料を、世界記憶遺産に登録したと発表した。中国が申請していた。(中略)
ただ、記憶遺産の審査基準は資料保全の必要性だけが検討対象で、歴史的に正しいかどうかは判断材料にならない。国際条約に基づいた世界文化遺産とは異なり、ユネスコの一事業のため、加盟各国は認定の是非に関与もできない。


世界記憶遺産とは「歴史的に正しいかどうかは判断材料にならない」そうです。これ本当ですかね。本当ならユネスコの存在意義が問われるレベルですね。嘘なら東京新聞ざけんなという話ですわ。


内容(双葉社HPより)
7月1日東京・杉並。小学校の校門に男児の切断された頭部が置かれていた。2日埼玉・和光。林で、中学生の少女の刺殺死体が発見された。3日愛知・名古屋。ス−パーで幼児が行方不明になる。これらの事件を追う捜査員の姿を丹念に描き、事件の背景、犯人の動機を重層的に炙り出す五十嵐ミステリーの新たな金字塔。ベストセラー『誘拐』から7年。星野警部が再び難事件に挑む!


曹源寺評価★★★★★
ものすごい勢いで新刊を増殖させているのが五十嵐センセーであります。このハイペース、いつまで続くのだろうか。。。
本書はそんな中で本年の6月に発行されました。468ページ上下二段組みというボリュームの、濃密な警察小説です。
主人公はかつて「誘拐」で交渉人の役回りを担った星野警部です、と言っても覚えていないわ、、、
警視庁のSITに所属し、立て篭もり犯と交渉を重ねた実績がありましたが、そこで発生したある事件によって干されたのが星野警部でした。その星野警部が携わったのが、杉並区で発生した小学生殺害事件です。校門の前に小学生男児の切断された首が置かれたという猟奇的な事件からストーリーは始まります。さらにそれだけでなく、事件は埼玉県和光市、愛知県名古屋市で立て続けに発生し、3つの事件が同時並行して展開していきます。
ですので、最初の100ページくらいはかなり慌しく展開するため、一気読みしたほうが良いかと思います。途中で時間が空いてしまうと登場人物がごちゃごちゃになること請け合いです。
杉並区の事件は星野警部と警視庁捜査一課強行犯三係の鶴田里奈が担当、和光市では中学生の少女が雑木林の中で心臓を一突きにされて殺害されています。この事件は埼玉県警捜査一課強行犯係の神崎俊郎が追います。さらに、名古屋市ではスーパーで買い物をしてほんの10分足らず車から離れた隙に1歳の男児が連れ去られ、のちに駅のコインロッカーから死体が見つかる事件が発生します。この事件は元警視庁刑事で愛知県警栄新町署刑事課の坪川直之が担当します。
彼らは地道に少しずつ、本当に少しずつですが事件の核心に迫っていくのですが、その様子を丹念に書き上げておられます。状況証拠は次々と出てきますが、肝腎の証拠は見つかりません。星野警部は地道な捜査から一転、目星をつけた人物に直撃していきます。その様子はさながら

刑事コロンボを彷彿とさせるようなしつこさです。

普通の人なら「また来たのか、アンタ」と言わしめるレベルで再訪し、いつか相手がぼろを出さないかと必死に食らいついていきます。すっとぼけな会話の中に、鋭い突っ込みを入れてくるこの見事な追求は読む人を惹きつけますね。中盤からは一気読みでした。
本書は犯人らしき人物がいきなり登場してきますので、ある意味倒叙型のクライムノベルといえなくもないのですが、犯人の側に立った心理的な記述はラストにしかないことに加え、この3つの事件のつながりが途中まで本当に読めないのでかなりミステリ的でもあります。このつながりが分かった時、本書のタイトルである「贖い(あがない)」の意味が初めて理解できます。奥深いですね。重いですね。
最終的には星野警部の独壇場となりますので神崎も坪川も脇役どまりではありますが、サイドストーリーとして本書の味付けには十分すぎる働きをしているのも面白いところです。警察組織におけるある種の不条理みたいな描写、これがなければただの古畑任三郎ですが、警察小説としての深みを増している人間ドラマが垣間見えます。
本書は自分的には今年のベストの一冊候補でありました。満足です。映画化してほしいです。





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posted by 曹源寺 at 18:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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