ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2015年10月27日

書評658 伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい?」

こんにちは、曹源寺です。

先日のジュンク堂書店がしでかしたキャンペーン+ツイッター騒動ですが、個人的な感想を少し補足することにします。
たとえば、書店が「○○特集」と銘打って、勉強のためになるからこれを読め!と棚を作ったとしても、それだけで偏向だの政治的だの差別だのと批判するのはたぶん違うのだろうと思います。ですから、別に「日本共産党特集」といった棚があっても良いのではないかと(もちろん、自分は買いませんし勉強もしませんが、それを学問とする人もいるかもしれません)。

しかし、そこにツイッターで現政権批判とデモ参加の呼びかけ、さらにはそれを批判した人に逆ギレ、とまでくれば、それはもう「偏向」と謗られても致し方ないのではないかと思いますよ。

我々が気をつけなければならないのは、書店がたとえ嫌韓・嫌中本を並べても、あるいは逆にSEALDsとしばき隊の本を並べたとしても、ただ単純にそれを「偏向だ」と批判してはいけないのだということです。なぜなら、それをやってしまうとただの「焚書」と変わらないわけで、自分たちの意にそぐわないものは徹底的に排除するという最も危険な思想につながってしまうからです。

ジュンク堂の書店員が批判されたのは、ただ単に本を並べたからではなく、そこに一方的でポリティカルな思想をもってアジテーションを加えたからであると理解すべきです。


内容(光文社HPより)
あの、正義って何でしょう。
住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる――身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが……。今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。こんな暴挙が許されるのか?そのとき! 全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!


曹源寺評価★★★★★
伊坂幸太郎センセーの作品テーマのなかに「公権力の暴走」というのがありますね。「モダンタイムス」や「魔王」、それに「ゴールデンスランバー」もある意味近いものがあると思います。
本書もこの流れを汲む作品であります。
例によって伊坂センセーの地元である仙台が舞台です(食傷気味)。平和警察という新しい部署が現代の魔女狩りを行います。疑わしい人は現代的な尋問(拷問)にかけられて、自分をテロリスト(あるいはその予備軍)と認めればギロチンが待っているというなかなかにありえない設定ですが、そこは小説、ありえなくもないのかと思わせるところが氏の真骨頂でありましょう。
いつものように読者をミスリードさせる手法、伏線をばら撒いてそれでもしっかり回収するテクニック(こんなエピソードも伏線かよっ!というレベル)、文中に挟み込まれる何の気もなさそうな薀蓄が意外な効力を発揮する、そして最後はやっぱりどんでん返しだった、などなど、相変わらずの伊坂ワールドには本当に脱帽です。
でもちょっと考えさせられるところもあります。正義とは何か、正義と偽善の境目はどこにあるのか、密告社会に住む人間はどういう行動を取るのか、大衆とは愚かな存在なのか、などなど。ただ、それも軽い文章の前では

砂漠に撒いた水のように

さーっと逃げていきます。軽く読んで深く考えない、伊坂作品はこうして消費されていくのでありました。





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posted by 曹源寺 at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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