ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2016年02月23日

書評690 柚月裕子「孤狼の血」

こんにちは、曹源寺です。

先日、少しニュースになったのが「プロ野球16球団構想」というやつです。産経が採り上げたのが、静岡市において地域活性化を目的に数千万円の予算を計上し誘致活動を支援するというニュースでした。これを踏まえて、新潟や静岡、愛媛、沖縄あたりが声を上げるのではないかという機運が高まったのですが、大手新聞社はこれを全く報じていません。J-CASTニュースがこの黙殺状態を報じてちょっと話題になっています。
政府は消費者庁を徳島に、JAXAを相模原から秋田へ移転させようとしたりして地域活性に力を入れようとしていますので、政府の思惑とも合致しそうな案件だと思います。しかし、新聞各社はファン層が分散することで自社お抱えの野球チームが衰退(売り上げ減少)する懸念をぬぐえないからだと思いますが、各社とも相当に反発するのではないかと噂されています。

この思想、本来は逆であるべきなのですが、既得権益を死守しようとする愚かな上層部が閉鎖的なマーケットに固執して自爆するという未来が見えてきそうです。
一時的には新設したそれぞれの地域にファンが分散するでしょうから、たとえば静岡にいる読売巨人軍ファンが静岡にできた新しい球団に鞍替えすることはあると思います。
しかし、野球人口の増加、地元への経済貢献、野球市場全体の底上げ、など副次的な効果は大きいでしょうから、長期的に見ればプラスになることのほうが大きいのではないかと思います。実際、南海からダイエーに移って福岡を拠点にした現ソフトバンクホークスや、仙台に移転した楽天イーグルスは地域に多大な貢献をしています。いまやパ・リーグのほうが強いし人気もありますね。

某新聞社のドンがかつて球団買収阻止で暗躍した歴史がありますから、新リーグ構想にはアレルギーがあるのかもしれません。都合の悪いことは報道しない、相変わらずの新聞各社でありました。

内容(KADOKAWA HPより)
わしは捜査のためなら、悪魔にでも魂を売り渡す男じゃ。
昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。飢えた狼のごとく強引に違法行為を繰り返す大上のやり方に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが……。
正義とは何か、信じられるのは誰か。日岡は本当の試練に立ち向かっていく―−。


曹源寺評価★★★★★
2015年発表の「このミス」3位、「文春ミステリ」14位に食い込んだのが本書であります。このミスと文春でこんなに差がついたのは、作者の柚月センセーがこのミス出身者であるということと無関係ではないのかもしれません(笑
という色眼鏡はさておき、本書は昭和63年の広島を舞台にしたマル暴刑事の活躍を描いた力作です。ちょっと前までは893の本場といえば広島、という感じでしたが、いまは福岡北九州のほうがメジャーになっていますね。まあ広島は菅原文太オヤジが広島弁で「おどれも吐いた唾、飲まんとけよ」ほか数々の名言を言い放ったおかげもあるのかもしれませんが。
そんな広島の、呉原市という(おそらくは呉市がモデルの)所轄に配属となった日岡刑事を語り部として、捜査二課班長の大上刑事のハチャメチャぶりをハードボイルドチックに書き上げています。悪徳刑事といえば悪徳なのですが、筋の通った悪徳刑事ですからいわゆるダーティー・ハリーです。個人的に印象深い悪徳刑事は逢坂剛センセーの「ハゲタカ」シリーズで登場する禿富鷹秋刑事ですが、本書の大上はちょっと違う印象ですね。
そんな大上の活躍と違法捜査の数々が後半で大きな転機を迎えることになります。
そんじょそこらの警察小説とは異なるこの大きな展開、このあと一体どうなってしまうのだろうという読者の焦燥感を手玉に取った作者の思惑に、自分もすっぽりとはまってしまいましたよ。
そして、最後の最後に読者は本書のタイトルの意味を知ることになります。あぁ、

これは凄絶なる師弟の絆の物語でありました

と。正義を守ることの意味とその手段の天秤は組織に埋没していては果たすことができないのだと。それこそが「孤狼」の真の姿であると。
最後のやっつけ感は多少残念に思うかもしれませんが、むしろこれで正解だったのではないかと納得できるところもあります。それ以上に読後、タイトルの真の意味を知ってグッとくるのですよ。つまり、ヤクザの抗争は

単なる味付けでしかなかった

ということですわ。すごい。ある意味これは斬新というか、真の意味での警察小説です。恐れ入りました。





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posted by 曹源寺 at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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