ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2016年05月31日

書評716 長谷川煕「崩壊 朝日新聞」

こんにちは、曹源寺です。

個人的な話になりますが、我が父母は数十年前、朝日新聞を購読しておりました。また、自分が小学生の時には「朝日小学生新聞」なるものを読まされておりました。「ジャンケンポン」という4コマ漫画が楽しみだった記憶があります。
おまけに、自分の育った街には米軍基地と海上自衛隊がありました。そんな環境で育てば、否が応にもリベラル思想にならざるを得ません。反動保守になったのは社会人になってからであります。
反動保守という人種がいますが、まさしく自分がそうです。ある日、突然180度変わるのです。なぜ変わるのかというと、自分の中にリベラルでは納得できない矛盾のようなものが蓄積されてきて、それがある日、保守の思想に触れてすべてに納得してしまうからです。「腑に落ちる」という言葉がありますが、まさにそれです。
まあ、父母も朝日読者でありながら中身は全然洗脳されていませんでしたので、それが良かったのかもしれませんが。
父「お前もようやく選挙権を持ったな」
俺「まあな」
父「公明党と共産党にだけは投票するなよ」
俺「ファ?」
父「問答無用な」
俺「(よく分からんけど)ラジャ」
みたいな会話があったのを思い出しましたわ。

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内容(WAC出版HPより)
(帯の文章)
慰安婦問題、なぜ開き直り続けたのか。
朝日新聞はこの時、崩壊した。
この本を書くために、私は「朝日」の記者を辞めました。
(著者)
長谷川煕(はせがわ・ひろし)
ジャーナリスト。1933年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学専攻卒。1961年に朝日新聞社入社。88年初めまで経済部など新聞の部門で取材、執筆し、次いで、創刊の週刊誌『AERA』に異動。93年に定年退社したが、その後もフリーの社外筆者などとして『AERA』で取材、執筆を2014年8月まで続ける。
1990年前後に、歴史的な転換をしつつあった東西ドイツなど中東欧諸国、旧ソ連内の各地、また北朝鮮に接する中国の延辺朝鮮族自治州などを取材した。
著書に『コメ国家黒書』『松岡利勝と「美しい日本」』『アメリカに問う大東亜戦争の責任』(以上、朝日新聞社)、『新幹線に乗れない』(築地書館)などがある。
※「ひろし」の本来の表記は「臣」+「己」+「灬」ですが、文字が使用できないので代替で「煕」を使用させて戴いております。


曹源寺評価★★★★★
朝日新聞といえば、最近は部数の落ち込みが最も激しく一部のネット民からは「捏造」「売国」のレッテルを貼られて蛇蝎のごとく忌み嫌われている新聞社であります。なにより決定的だったのは、従軍慰安婦問題で過去の報道が捏造であったことを認めた2014年8月の記事がリリースされたことで、植村隆のような元記者の主張が文字通り「崩壊」したにもかかわらず、依然としてその検証や訂正が積極的になされずに放置され、そればかりか「戦時中の人権侵害」とかいうわけの分からん問題にすり替えられていることでありましょう。
本書はこうした朝日新聞社の体質の根本に迫っていくノンフィクションであります。朝日新聞社に根強く残っている「マルクス主義」はまだしも、「感覚的に正しいと思ったら裏付けを取らない」とか「いち記者が書いた妄想的な記事を上司がスルーしまくって紙面に載る」とか、おいおい本当にお前ら新聞社なのか?と疑ってしまうレベルの悪しき体質が赤裸々に綴られています。
筆者は慶応大学から朝日新聞社に入社し、経済部やAERA編集部などを経て93年に定年、2014年に退職というご経歴です。つまり、朝日がこれまで捏造を続けてきた「靖国戦犯問題」や「従軍慰安婦問題」などが紙面を賑わせていた時代の真っ只中で社内にいた関係者でもあります。御年83歳、単行本を執筆される体力と筆力には頭が下がります。
筆者が本書で主張されていることの要点は、だいたいこんな感じです。

朝日新聞社はマルクス主義にまみれていて、それは今も昔も変わっていない
朝日新聞社は戦前から戦中にかけて、中国共産党やソ連を支援するために中国国民党との戦争継続をけしかけた
朝日新聞社は尾崎秀実のようなスパイを身内に抱えてソ連を支援していた
植村隆や松井やよりのような売国奴を生んだのもこうした社風の表れ

広岡知男や田中慎次郎、緒方竹虎といった歴代の経営陣についても触れていますが、筆者自身の回想もそれほど多くはなく、文献も断片的ですのであまり参考にはならないですね。むしろ、箱島信一とか渡辺誠毅とか一柳東一郎とかあるいは若宮啓文などもう少し現代に近い経営層の功罪について触れていただいたほうがよっぽどためになったのかもしれません。現在の朝日の社風がいかにして形成されたか、という点では欠かせない部分なのかもしれませんが、如何せん、古すぎです。
そう、本書の読後の一番大きな感想は

なんだか全部古いね

というものでした。書くのが遅すぎたのではないかと思うくらい古いですわ。90歳になる老人をつかまえてインタビューしようとしたり、故人のあら捜しをしたり、なんだかなー。本書の執筆のきっかけにしても、吉田清治の嘘に限らず慰安婦報道のおかしな点はいくつも語られてきましたし、慰安婦だけでなく南京事件の捏造に加担した本多勝一にしてもさまざまな媒体で嘘が暴かれてきた経緯があります。こうした他社報道に関して、朝日に籍を置いてきた人たちは何を思うのか。告発するならもっと早くやるべきではなかったか。冥土の土産にするだけなのであれば、それはあまりにも身勝手であるといわざるを得ません。
まあ、もちろん筆者に何らかの責任があるわけではありません。悪いのは植村隆であり、松井やよりであり、本多勝一であり、それ以上に歴代の経営陣が(作為の有無は別にしても)責任を負うべき話であります。一兵卒に責任を負わせるつもりはもとよりありません。

ところで、朝日新聞社の経営とか内実とかを糾弾した本はいくつも世に出回っていますが、元身内という人からの内部告発は少ないです。「朝日新聞 日本型組織の崩壊」(文春新書)は現役の記者が中心となって匿名で著していますが、内容は一般企業にはびこる大企業病のようなイメージで原因分析していますので、朝日特有の病巣に手を突っ込んでいるわけではありません。その他、
「『朝日新聞』問題」(集英社新書)
「虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造」(日新報道)
「朝日新聞と私の40年戦争」(PHP研究所)
「朝日新聞「大崩壊」の真相 なぜ「クオリティペーパー」は虚報に奔ったのか」(イースト・プレス)

などなど、分析本はたっくさん出ているのですが、これらは外部からの客観的な分析が中心です。

それにしてもすごいな。。。

ですから、本書は長年朝日新聞社に勤務したお人ならではの視点が盛り込まれていて、それはそれで貴重なものではないかと思うのです。
しかし、筆者の取材は読者をうならせるレベルであったかと問われると、必ずしもYes!とは言えないのではないかとも思うのです。社内にはびこるマルクス主義者をあぶりだした点は評価できますが、なぜ朝日は「正義を建前にして妄想記事、捏造記事を垂れ流しているのか」という、個人的な疑問については答えていないなあという印象です。それに、前述の「日本型組織の崩壊」では、朝日社内のイデオロギー病はそれほどでもなく、むしろマルキストなど少数派であると論じていましたので、果たしてどちらが本当なのでしょうか。





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