ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2016年06月10日

書評719 宮下奈都「羊と鋼の森」

こんにちは、曹源寺です。

参院選の季節が近づいてまいりました。
民進党(旧民主党)の新しい選挙ポスターができたそうです。
「2/3をとらせない」 民進党、参院選ポスター発表(6/9 FNNニュース)
民進党は9日、参議院選挙のポスター3枚を発表した。
うち1枚は、「まず、2/3をとらせないこと。」と大きく書かれ、参議院で憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を、「改憲勢力」に確保させないよう訴えた。
民進党の岡田代表は「憲法9条改正を、安倍首相は当然考えている。そういう状況を作り出さないことが、最低限」と述べた。(以下、略)


なんともネガティブな目標ですな。
民進党(旧民主党)はこんなことも発表しています。
2016参院選 民進が「マニフェスト」やめます!(6/8産経新聞)
民進党は8日、参院選公約について、従来の「マニフェスト(政権公約)」の表現を使わず「重点政策・国民との約束」との標題にすることを決めた。
党幹部は「政権選択選挙ではないので『政権公約』の表現はなじまない」と説明するが、看板倒れに終わった旧民主党政権のマニフェストのイメージを払(ふっ)拭(しょく)する狙いがありそうだ。岡田克也代表らが15日に記者会見して発表する。
参院選ポスターのキャッチコピーは、改憲勢力による3分の2以上の議席獲得阻止を訴える「まず、3分の2をとらせない」などを軸に最終調整する。


まあ、できないことをできると言って国民を騙すよりはよほどマシかもしれませんが、この2つの記事を読む限りでは、政策的に後退している印象は拭えませんね。そもそも「こども手当ての拡充」とか「保育士の給与アップ」とか「最低賃金1,000円」とか、言っていることはだいたい労働政策や福祉政策であって、経済政策や外交政策がほとんどありません。ないのが民進党(旧民主党)なのでしょう。
みなさんも民進党(旧民主党)の候補者に出会ったら、「経済政策は何ですか?」と聞いてみましょう。おそらくまともな回答は得られないと思います。もし「えーっと、最低賃金を〜」とか言い出したら、「いやいや、最低賃金は労働政策でしょう。聞いているのは経済政策ですよ」と切り替えしてあげましょう。
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内容(文藝春秋HPより)
ゆるされている。世界と調和している。
それがどんなに素晴らしいことか。
言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。
「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」
ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。


曹源寺評価★★★★★
2016年の「本屋大賞」を見事に受賞したのが本書であります。本屋大賞の受賞作は人生を豊かにさせてくれる作品が選出されることが多いですね。本書もまたそんな一冊でありました(全然ミステリではありませんがご容赦を)。
高校時代に体育館のピアノを調律する調律師の姿に魅かれて卒業後、専門学校に通い、晴れて調律師となった青年、外村。彼の成長する姿を通じて、読者にさまざまなものを問いかけてくれる内容に仕上がっています。
調律との出会い、調律師になるとの決意、ピアノと向き合うこと、お客の要望とそれを実現する腕前、コミュニケーション、目指すべき場所、調律師にとって大切なこと、などなど。
特に、

音を言葉で表現することの、何と言う難しさよ

確かにそうですわ。「もうちょっとすっきりとした音で」とか「やわらかめで」とか言われても、それをどう調律するのか。ラーメンじゃねえんだよ、と。
まさにタイトルのとおり、羊のフェルトとピアノ線の鋼でできた森の中に彷徨いかけてしまいそうになる主人公。いやあ、調律の世界は奥が深すぎますわ。

で、本書はところどころにグッとくるセリフとか表現があったりします。175ページに素晴らしい描写がありましたので、引用します。

「ピアノで食べていこうなんて思ってない」
和音は言った。
「ピアノを食べて生きていくんだよ」


うーん、と唸る自分がいましたよ。
このセリフにグッときてしまいました。高校生の女の子が言えるセリフではありません。いや、逆に高校生だから言えるのかもしれません。「ピアノ」のところを「(自分の趣味)」に置き換えれば、誰にだって当てはまるというか、誰がしゃべってもかっこいいセリフになりそうです。さしずめ、自分の場合はこうなりますな。
「テニスで食べていこうなんて思ってない」
曹源寺は言った。
「テニスを食べて生きていくんだよ」

つあぁぁ。かっこええ。
ちなみに、和音というのは物語に登場するふたごの長女のことです。彼女がピアニストを目指すとはっきり決めた場面でのセリフです。

情景描写もさることながら、こうしたピアノや音楽、調律に絡んだ表現力が素晴らしくて、読み終えるのがもったいないくらいでした。

(以下、多少ネタバレ)ストーリー自体はなんてことはなくて、事件が起きるわけでも、誰かが死ぬわけでもない(婆ちゃんが死にますが)。裏切りも憎しみもありません。あるのは少しの後悔と反省、そして気付きという名の成長と大いなる決意、新たな出会いと一歩前へ踏み出す勇気であります。老若男女を問わず、ピアノを知らなくても楽しく読める素晴らしい作品でありました。





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posted by 曹源寺 at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ま行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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