ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2016年08月30日

書評738 今野敏「防諜捜査」

こんにちは、曹源寺です。

先日、テロとの戦い(というかテロへの予防)が戦争よりもはるかに重要になっているという主旨のコメントを書き殴りましたが、昨日はちょうど朝日新聞と毎日新聞が社説で共謀罪の成立に疑問符を投げかけています。

テロ準備罪 本当に必要性はあるか(8/30毎日新聞社説)
「テロ等組織犯罪準備罪」の新設を政府が検討している。国会で3度廃案になった「共謀罪」の内容を、成立要件を絞って盛り込むものだ。9月召集の臨時国会で、組織犯罪処罰法改正案を提出予定という。
(中略)
一方、日本の刑法では、一定の重大犯罪について、予備罪や準備罪などで、未遂より前の段階で処罰ができる規定が既にある。法律家の中には、テロに絡む犯罪でも既存の法の枠内で摘発ができ、条約締結は可能だとの意見がある。共謀罪の必要性は、改めて議論する際の重要な論点だ。
政府は今回、適用対象を絞り込む方針だ。また、合議に加え、犯罪の準備行為が行われることも要件に加えるとみられる。
だが、定義の仕方によっては、幅広い解釈が可能になる。廃案になった法案と同様、対象罪種は600を超えるとみられる。既遂の処罰を原則とする刑法の原則は大きく変わる。テロをめぐる環境変化を踏まえても副作用は大きい。


「共謀罪」法案 政権の手法が問われる(8/30朝日新聞社説)
またぞろ、というべきか。
安倍内閣が、人々の強い反対でこれまでに3度廃案になった「共謀罪」法案を、「テロ等組織犯罪準備罪」法案に仕立てなおして、国会に提出することを検討しているという。
(中略)
実際に行動に移さなくても、何人かで犯罪をおこす合意をするだけで処罰する。それが共謀罪だ。マフィアなどの国際犯罪組織を取り締まる条約を結ぶために、日本にも創設することがかねて議論されてきた。
(中略)
東京五輪をひかえ、テロ対策や国際協力の看板をかければ、多少の懸念があっても大方の理解は得られると、政権が踏んでいるのは容易に想像できる。
もちろんテロの抑止は社会の願いだ。だからこそ権力をもつ側はよくよく自制し、人権の擁護と治安というふたつの要請の均衡に意を砕かねばならない。


いずれも共謀罪から進展させた「テロ等組織犯罪準備罪」の法案成立に牽制球を投げる内容となっています。自分はテロへの予防という意味においては、この新法こそが重要だと思っています。犯罪を企てている連中を指をくわえてみているわけにはいかなくなっているのが現代です。そもそも、80年代後半の冷戦終結時にさえ、「テロのネットワーク化」という単語は存在していました@パイナップルアーミーってすげえ〜
両社説はかなりオブラートにくるんだ表現で「副作用」だの「意を砕かねば」だのといった曖昧さで終えていますが、ニュアンスとしては「反対」の立場に読めます。
ちなみに政党では社民党が明確に反対しています。

この「テロ等組織犯罪準備罪」と「スパイ防止法」のセットでまずは「テロの予防」に注力すべしと思っていますが、こうした反対勢力の声も日増しに大きくなりそうですから道のりは遠いのかもしれません。
しかし、重ねて主張したいのはやはり「戦争よりもテロに気をつけよう」という時代の流れこそをしっかりと国民共通の認識として持つべきである、ということであります。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(文藝春秋HPより)
国益とプライドをかけた防諜戦争の行方は…?
ロシア人ホステスの轢死事件が発生。事件はロシア人の殺し屋による暗殺だという証言者が現れた。倉島警部補シリーズ、待望の最新刊!


曹源寺評価★★★★
凍土の密約」「アクティブメジャーズ」などで展開する「倉島警部補シリーズ」の最新刊であります。

ホントこのセンセーは何作シリーズを持っていらっしゃるのか、、、

今野センセーにしては数少ない公安モノというジャンルですので、所轄署の刑事モノとは毛色が異なります。警視庁の外事一課に所属する倉島警部補は公安を背負って立つ次期エースの呼び声高く、ついに「作業班」メンバーとして招集される。作業班とは公安の中でも自ら仕事をつくり、領収書の要らない金を使って事件を未然に防いだり解決に導いたりする役割を担うメンバーを指す。倉島は「ゼロ」の研修を受けて晴れて作業班の一員となったが、そこにロシア人が電車にはねられ死亡したというニュースが飛び込んだ。不審な匂いを感じ取った倉島は早速作業に取り掛かる。。。
ちなみに、「ゼロ」とは「サクラ」あるいは「チヨダ」とも呼ばれる公安捜査のための実践的訓練を積む特殊学級を指す隠語です。一番リアルかつ詳しく書かれた作品は麻生幾センセーの「ZERO」だと思います。名作です。
この倉島が公安のエースとして成長していく様子を中心にストーリーが展開していくのが本書シリーズのキモでありますが、いよいよ作業班となった倉島はチームを組織してそのリーダーとして采配を振るう立場になります。最初は慣れないチーム運営も、伊藤や片桐といった優秀な部下を引き抜き、また自称ライバルの西本もチームに加わるなどしていよいよ事件の全貌解明に注力していきます。
いつものようにどんでん返しがあるわけでもなく事件のからくりもそれほど大げさではありませんので、ストーリーはそれほどでもありません。このシリーズのよさは今野センセーの描く公安モノという希少性と、倉島の実直たる捜査の顛末を楽しむのが目的だと思います。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
最近の記事
カテゴリ
過去ログ
検索
 
最近のコメント
書評802 呉勝浩「白い衝動」 by 本が好き!運営担当 (05/17)
書評785 東野圭吾「人魚の眠る家」 by 藍色 (04/05)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 曹源寺 (02/01)
書評777 垣根涼介「室町無頼」 by 本が好き!運営担当 (02/01)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 佐藤弘幸 (11/17)
タグクラウド
<< 2017年10月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
リンク集