ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2016年11月25日

書評761 中山七里「作家刑事毒島」

こんにちは、曹源寺です。

米国次期大統領トランプ氏はビデオメッセージで明確にTPP不参加を表明しました。
日本としては米国抜きのTPPに用はないとして、翻意に注力するようですが、TPP反対が公約の一つであったトランプ氏がこれをひっくり返すことはないだろうと見ています。
個人的にはISD条項などがネックになるのでTPPには懐疑的なのですが、米国のいないTPPに対して政府自民党が今後どういう理屈で旗を振っていくのかが楽しみです。

そんななかで、バターの流通量をめぐるホクレン幹部のテレビ番組での発言が波紋を呼んでいました。
バター不足は仕組まれたものだった? 「ガイアの夜明け」放送内容にホクレンが反論「誤解を与える内容」(11/25ねとらぼ)
11月22日に放送されたドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」において、ホクレン関係者が「バターが『なくなるぞ』となったら消費者はとりあえず買う」と笑顔で語り、「バター不足はホクレンのせいだった!?」とネットで炎上中です。ホクレンは編集部の電話取材に対し「放送された内容は意図したものではなく、そもそもインタビューがバター特集用のものであるとも聞いていなかった」と、番組に対する不満を明らかにしました。
話題となっているのは「日経スペシャル ガイアの夜明け 巨大"規制"に挑む!〜明かされる『バター不足』の闇〜」内における、ホクレン農業協同組合連合会の酪農部部長による発言。ホクレンは酪農家と乳業メーカーの仲介を担う指定団体で、国内で流通するバターのほとんどを仲介しています。
番組ではまず、ホクレン職員が酪農家との意見交換会で「山のようにバターがあったら消費者は買わない。どんどんなくなっていくと『またバター不足が起こるのでは』と買い増し行為が出る」と発言したことを紹介。これに対しナレーションで「消費者の買い増しを誘っているかのように聞こえる」とした上で、意見交換会に出席していた同団体の酪農部部長にインタビューを行いました。
同部長は「消費者の心理としては、たくさんあったら焦って買わないですよね。ところが『なくなるぞ』となったら、いるのかいらないのかよく分からないけどとりあえず買っちゃいます」「そういう消費者心理ってありますよね。わかります?」と朗らかな笑顔で発言。品薄を演出して購買欲を煽ろうとするかのような発言に、ネット上では「バター不足はホクレンのせいだったのか」「ホクレンの自爆劇」と炎上しました。
ただし同部長はその後「バターは品薄くらいがちょうどいい?」という念押しの質問に対し、「安定供給が大事だと思うので、そういうことではないと思う」とも発言しており、視聴者からは番組構成の恣意性を指摘する声も上がっていました。また、Twitter上ではホクレン関係者と思しき人物による「当初制作会社からの取材依頼内容はバター不足ではなかった」「休憩なしで3時間に及ぶ尋問のような取材だった」とする発言も見られました(当該アカウントは現在鍵付きとなっています)。
編集部が一連の映像と発言についてホクレンの広報に問い合わせると、担当者は「放送されたものは意図した内容ではなく、誤解を与える番組と認識している。そもそも “バター特集”用のインタビューとも聞いていなかった」「ホクレンでは酪農家から預かったものを乳業メーカーと話し合うだけなので、仕組み的に生産量の調整はできない」と回答。番組に対する今後の対応を「検討中」であるとしました。なお、Twitter上の関係者のものと思しきツイートに関しては把握しておらず、対応については検討するとしています。


ホクレンがいくら言い訳しようとも、酪農部長の発言の内容は何かを切り取っただけのものではないでしょう。それに、現実問題として牛乳やチーズが豊富に流通しているのにバターだけが品薄だという事実は覆い隠せるものではありません。輸入バターには高い関税をかけているのもみんな知っています。ホクレンが生産者と組んで品薄状態に仕向けているのではないかと疑われる客観的な事実は積みあがっているわけです。安定供給が聞いてあきれます。

こういうニュースが飛び交うとTPP推進派や新自由主義者たちが息を吹き返すことになるわけですよ。特に日本人は食いもんの恨みは末代まで続きますからおそらくこのネタもあと10年くらいは言われると思います。
過去にも国内産業を守ろうとして、それが過度な規制とか既得権益の保護とかに走ると余計に外圧がかかるようになるという経緯が、かつてコメとか肉とか半導体とかの業界で見られた光景でありますが、酪農業界はもうちょっと歴史に学ぶべきだと思います。

それに、乳製品全般に言えることだと思いますが、欧米の乳製品に比べて日本のそれが品質的に劣っているとは思っていません。ただ、エシレバターのように特色ある差別化商品はあまりお見かけしないですね(カルピス社のバターは一度食べましたがおいしかったです)。
日本のバターが特色薄いのは、産業を保護しすぎると競争力が働かなくなるという典型的な事例ではないかと思います。ウイスキーは近代からの先人のたゆまぬ努力によって世界的にも認められるようになりました。乳製品だってやればできるはずです。

そういう意味では、競争力を強化するためには関税で保護しないほうが良い、という理論はごもっともなんですよね。この点に関しては認めざるを得ません。でもTPPは別です。TPPじゃなくてFTAでやれば良いと思います。

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内容(幻冬舎HPより)
この男、 前代未聞のトンデモ作家か。 はたまた推理冴え渡る名刑事か! ? 中山史上最毒・出版業界激震必至の本格ミステリ! 殺人事件解決のアドバイスを仰ごうと神保町の書斎を訪れた刑事・明日香を迎えたのは、流行作家の毒島。虫も殺さぬような温和な笑顔の持ち主は、性格の歪んだ皮肉屋だった。捜査過程で浮かび上がってきたのは、巨匠病にかかった新人作家、手段を選ばずヒット作を連発する編集者、ストーカーまがいの熱狂的な読者。ついには毒島本人が容疑者に! ? 新・爆笑小説!


曹源寺評価★★★★★
中山センセーのシリーズもののひとつに「刑事犬養隼人シリーズ」があります。「切り裂きジャックの告白」「ハーメルンの誘拐魔」などがありまして、地味ですが武骨な刑事として人気です。
本書にも犬養刑事が登場しますが、シリアスな刑事モノではありません。読み始めて「お、犬養シリーズのスピンオフかな」と思いましたが、違いますねこれは。主役はタイトルにある毒島真理。刑事にして作家、いや作家にして刑事。

久しぶりにぶっ飛んだキャラクターに出会えました。

名前の通り毒舌を吐きまくり、笑顔で相手を罵倒する。理屈で黙らせてから止めを刺し、相手を完膚なきまでに叩きのめす。。セリフの最後にいつも「うふ、うふふふふ」って書いてあるのがとても地味に刺さってきます。リアルにいたら怖いです。ましてや上司だったりしたら逃げ出したくなります。表紙絵のイメージがとても毒島です。中山センセーもこういう感じですが、本人は毒島とは違う!と名言されています(けど近いものがあるのではないかと思っています)。
連作短編の体裁で5作品が収録されています。いずれのストーリーも出版関係者が殺されていきますが、それを毒島が推理し、容疑者の中からずばり犯人を当てるという解決スタイルになっています。
死んでいくのは明日の作家を目指す新人をボロクソにけなす編集者、新人作家に容赦ないダメ出しをする大御所の重鎮作家、原作の影も形もとどめないほど改変してまったく悪びれることもないテレビプロデューサー、といった一般社会とは隔絶された「業界」の悪習に毒された面々。一方の容疑者も、自分に才能があると信じて疑わないだけでなく、自分が落選するのは自分の才能を認めない審査員側に問題があるとまで言い切る自己中心的人物だったり、新人賞を受賞したことで天狗になりあれやこれやといちゃもんをつけ増長を繰り返す(巨匠病というらしい)ヘタレ作家だったりと、業界に巣食う魑魅魍魎どもが目白押しです。業界に片足突っ込んでいる自分が言うのもなんですが、

出版業界ってなんだかとんでもない人種の集まりですなぁ。

出版業界では当たり前のことが、普通の企業だったらありえないでしょう!という慣習、常識、行動、モラルを、毒島が毒舌とともに論破していく様はなるほど目から鱗な気分にさせてくれると同時に、あぁやっぱり出版業界はクソだわ。。。と思わせてくれるわけでありまして、毒舌も度を過ぎれば毒以上に爆弾だわこれというやるせなさをも味わわせてくれます。
自分のような書評ブロガーについても毒島は毒を吐きまくります。図書館で借りた本のレビューなどで作品を批評しているやつらは「図書館ヤクザ」と言い切り、ネタバレしないと感想がかけない奴は小学生以下!と断じています。容赦ないわぁ〜
あ、でもこれはまさしく自分のことですわ。

そうか〜自分は図書館ヤクザだったのか〜笑

自分も読本の半分以上は図書館です。そもそも図書館でバンバン借りるようになったのは、毎日夜寝るためだけに自宅に帰っているのに住民税が毎月ン万円も取られているのが納得いかなかったからです。単行本を毎日1冊買って読める金額ですよ、ちょっとくらい住民サービスとして還元してもらってもいいでしょ!という気分ですので、何と言われようとこのスタイルを止めるつもりはありません笑
それにしても、同業者のみならず、編集者や別の媒体関係者、さらには読者まで巻き込んで全方位に毒舌を吐きまくった中山センセーは大丈夫なんでしょうか。まあ、自分はこれからも図書ヤクザを続けていきますが。
本書はつまるところ、犯人当てよりも業界の非常識な奴らを切り捨てる毒舌を楽しむものでありました。特に作家志望者と書評ブロガーは必読かもしれませんな。





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posted by 曹源寺 at 17:59| Comment(0) | TrackBack(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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