ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年01月24日

書評776 柴田哲孝「クラッシュマン」

こんにちは、曹源寺です。

そういえば、文部科学省から早稲田大学の教授職に天下りした元高等教育局長の吉田大輔という人物がいましたが、先日来大きく報道されたのが影響し、辞職ということになりました。
個人的には霞ヶ関の官僚がその高い能力を生かして天下りすること自体には反対したくないのですが、そこに癒着の構造が見て取れる天下りは許したくないですね。
すでに天下り規制に関しては「官民人材交流センター」なる組織がこれをコントロールしているかたちになっているわけですが、この文部科学省の天下り問題の追及になぜかものすごい熱心な毎日変態新聞さんがいろいろと追っかけ記事を出しています。

<文科省>再就職紹介、利用ゼロ…独自ルートで天下り(1/22毎日新聞)
国家公務員の再就職を支援する政府の「官民人材交流センター」を利用した文部科学省の職員が、2008年のセンター発足以降、一人もいないことが関係者への取材で分かった。
文科省の天下りには人事課中心の「現職ルート」と人事課OBによる「OBルート」の2系統があったことが政府の再就職等監視委員会の調査で判明しており、センターを使わず省内で再就職をあっせんしていたとみられる。
(以下、省略)

文科省は天下り規制も顧みず自分たちで天下り先を作ってはそこにもぐりこんでいたわけです。とんでもない話です。では彼らはどこに行っていたのか。
もしかしたらですが、彼らは今回の早稲田大学のように全国の私立大学の教授や准教授、あるいは事務方のトップランク(つまり企業なら経営陣クラス)に天下っていたのではないかという疑惑になるわけです。

大学全入時代などとあおって、90年代からFラン大学が雨後の筍のように乱立してきました。地元の人しか知らないような大学って結構あるんですよね。そんな大学に入って君は一体何を学ぶつもりかね?という大学。アルファベットから英語を学ぶ大学。アジア各国からの留学生が8割を占める大学。少子化の時代になぜかこういった大学は減ってもいません。
医学部の設置には日本医師会という強力なロビー団体がありますから一定の歯止めがかかっていますが、それ以外の大学、特にFランが乱立してきた原因が天下りであったとなれば、文科省の罪はめちゃくちゃ大きいでしょう。
この問題はもっともっと多くの報道が望まれましょう。ただ、大学への天下りという点においてはマスゴミも同じムジナみたいなところがありますから、他紙がこの報道に乗っかってくることはあまりないのかもしれません。よくあるのは@大手新聞社の解説委員→A系列のテレビコメンテーター→Bいつの間にかFラン大学の特任教授みたいなパターンですね。これ一体何の癒着だろうと思うレベルです(AとBが逆の場合もありそうです)。

個人的には大学進学率はだいたい4割くらいにとどめておき、高等専門学校を充実させるかあるいはもう少し低いランクで職人(マイスター)を目指せるような専門教育の機関を設置して、就業に結びつけるべきではないかと思います。

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内容(双葉社HPより)
過剰防衛による殺人の裁判で「無罪」となり、警察庁警備局公安課特別捜査室サクラ≠ノ復帰した田臥を、新たな任務が待ち受けていた。東京駅発博多駅行きののぞみ167号≠フ車内ごみ箱でTNT爆弾が発見されたのだ。さらには、イスラム国の対日本専門のテロリストクラッシュマン≠ェ入国したという情報がICPOのリヨン事務総局からもたらされる。田臥は、部下の室井智、矢野アサルとともに深く静かに捜査を開始する。


曹源寺評価★★★★
2014年に刊行された「デッドエンド」の続編というわけではないですが、デッドエンドの登場人物が再びお出ましとなりました。
デッドエンドではIQ172の天才、笠原と警視庁公安部の田臥のチェイスに警察の暗部が入り乱れてノンストップなサスペンスを繰り広げていますが、本書でも田臥と笠原が邂逅します(笠原親子はチョイ役どまりなのがとても残念ですが)。
今回の主役は田臥で、相棒の室井と新たに加わったエジプシャンの矢野アサルがこれを補佐します。舞台は東京のみならず、2016年に外交首脳が訪れたサミットの舞台である伊勢志摩、それに米国大統領として初の公式訪問となった広島です。各国の首脳が実名で、しかもタイムリーなネタでありますので、あの国家的行事の裏でギリギリの緊張と血みどろの死闘が繰り広げられていたかと思うと(笑

臨場感のハンパなさは尋常ではありません

クラッシュマンと田臥の対決はラストのお楽しみですが、スナイパー同士の嗅覚とか引き寄せとかそういった野性のナントカをちょっとばかり期待していた部分はもうちょっと描写が欲しかったなあと思います。
本書では田臥の心情として対テロに関する日本の無防備さや、警護する側としての不条理さみたいなものがあちこちで吐露されています。彼のセリフからは警察手帳を碌に見もしない警備体制、ドローンへの対抗措置、空港警備の危うさ、国内に300人しかいないSAT、などテロ対策としてはまだまだ不十分な点が多いということがよく理解できます。一方で、公務に携わるものとしてはやや不謹慎な、パフォーマンスのためだけに国民の血税を使う政府への憤慨のほか、警察庁と外務省の連携不足に対する不満など、リアルに捉えればきりがないほどの現状への不安と嘆きが散りばめられています。まあ、対テロという面におきましては早いところ共謀罪改め「テロ等準備罪」の整備を進めて欲しいなあと思ってしまいます。
あと、本作ではかなりイカレたISの敵が登場しますのでかなりむかつく内容になっていますが、ISはイスラムのなかでも狂信者の集団であり、原理主義の究極のような行動様式ですから、普通のイスラムの方々とは切り離して対処すべきであることは論を待ちません。





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posted by 曹源寺 at 18:11| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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