ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年02月03日

書評778 本城雅人「紙の城」

こんにちは、曹源寺です。

米国はトランプ大統領が就任からわずか2週間で公約どおりの大胆な政策を行動に移していて、「まさか本当にやるなんて」と世界各国を驚かせています。
この調子だと本当にメキシコとの間に巨大な壁を作ることになりそうです。

マスゴミは連日、トランプ大統領のこうした行動を否定的に報道していて、日本への影響も広がりそうだと懸念しています。影響というか、悪影響ですね。
でも、暗殺でもされない限り、こうした動きは止まることはないわけですから、日本は日本で国益を追求していけば良いだけの話です。いまさらビビッてもしょうがないのです。
米国がグローバリズムを捨てて国益に走るなら、日本だって搾取されないように強力なリーダーシップを発揮できる政治家を後押ししていけば良いのです。同盟国をないがしろにすることは却って国益を損ねることになる、ということをトランプ大統領が学ぶにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、粘り強く交渉を重ねていくことで相互理解を深めていくことが重要でしょう。

テレビのコメンテーターならこんな感じのコメントで終わるのでしょうが、そこにはなんの具体策も方法論もありません。トランプがこんなことをした、あんなことを言った、と報道するだけでは国民が感情的になるだけです。トランプやるなあとか、トランプ頭がおかしいとか、そんな感想を持たせるためだけの報道ならしないほうがましです。視聴者も観ないほうがましです。
そろそろこうした報道だけではなく、本質的な政策議論を中心とした「いま日本がなすべき施策」について提言を重ねていく時期にきていると思います。

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内容(講談社HPより)
新聞社が消滅する――。
東洋新聞はIT企業から買収宣告を受けた。経営権が移れば、宅配数の少ない営業所は閉鎖、ニュースはウェブファーストに移行し、海外特派員制度もなくなる。しかし日刊新聞法に守られた新聞社は世論を味方につけられない。
東洋新聞社会部デスクの安芸は、昔ながらの記者だ。パソコン音痴で、飲み会の店も足で探す。IT企業を裏から操るのは、かつて東洋新聞の記者だった権藤だ。
時代の流れは止められないのか。旧いものは悪なのか? 安芸とともに働く者達の、記者魂を懸けた攻防戦が始まる。
発売後、続々重版出来! 「産経新聞」「日経ビジネスオンライン」「サンデー毎日」「週刊朝日」「アサヒ芸能」「J-novel」ほか新聞25紙で紹介された話題沸騰の話題作!!


曹源寺評価★★★★
先日「ミッドナイト・ジャーナル」が初読でした本城雅人センセーの最新刊は、やはり新聞社を舞台としたリアルシミュレーション小説でありました。
東洋新聞社の社会部ベテラン記者である安芸稔彦を主人公に据え、東洋新聞社の買収に動き出したITベンチャー企業との攻防戦を描き出しています。
新聞業界の暗部というか、ガチな現状を浮かび上がらせているという小説は珍しいです。本書に出てくる新聞業界の課題や問題点を列挙してみましょうか。

日刊新聞法という名の既得権益
記者クラブとかいう閉鎖集団
テレビ局の傘下にある(あるいはその逆)という海外では禁止されている系列制度(クロスオーナーシップ)
速報性という意味で時代遅れになってしまった紙媒体と宅配制度
ゴシップは週刊誌に流して高みの見物という報道貴族主義
調査報道が廃れ単なる政府発表の御用聞きになった社会の木鐸


こんなのが山盛りですよ。新聞業界のドロッとした部分がこれでもかというほど出てきますので、

業界研究にはもってこいですね爆

さらにすごいのは、IT企業に買収されまいとした現場の記者集団がIT企業の社長周辺を嗅ぎまわり、過去の犯罪を暴きたてようと躍起になるというストーリー展開であります。

すごいなあ、こんな書き方しちゃって平気ですかぁ?

比喩的にみれば、これってまさにホリエモンの事件と同じじゃないの?と感じてしまうのですがいかがでしょう。マスコミを買収しようとすると総力を挙げて潰しにかかる構図がそこにはあるということがよく分かります笑
まあ、そんな思い切った作品ではありますが、いろいろと考えさせてくれる内容ではあります。たとえば、もし新聞社が90年代後半からインターネット戦略を掲げていたら、いまごろポータルサイトの2つや3つは新聞社の系列下にあったのではないかという推測はあながち間違いではないと思います。また、右開き縦書きから左開き横書きに新聞のレイアウトが変わったらどうなるか、とか、タブレットを無料で配る戦略とか、海外の新聞社とのボーダーレスな関係のあり方とか、業界が生き残っていくためにはどんな変化が必要なのだろうと考えるのはそれなりに楽しいです。
ダーウィンの有名な言葉を思い出します。「強い者、頭の良い者が生き残るのではない。変化するものが生き残るのだ」という言葉です。新聞業界はすでに進化の袋小路にはまっているのはないかと感じることができる一冊でありました。
そう考えると、本書は単にIT企業=悪、新聞記者=正義といった単純な構図ではないことが理解できます。この単純な構図の裏に仕掛けられているのは、すでにネットに負けている紙媒体の未来を嘆きつつ、現場の記者が足で稼いだ記事には一定の評価を与え、そのくせ己の保身のためには休日返上で個人のプライバシーを漁る恐るべき悪の集団という位置づけであり、表面的な結末だけに目を奪われてはいけないのだぞという本城センセーのメッセージを感じてしまうのであります。ちょっと穿ちすぎかなとも思いますが、

古巣の新聞社をこれだけ間接的にけなしている

わけですから、あながち間違いでもないのかもしれません。
ラストはちょっとがっかりな終わり方でしたのが少々残念です。





(以下、ネタバレ)
親会社のテレビ局から新聞社の株式を譲り受けるチャンスをみすみす逃した黒幕の真意が読み取れませんでした。

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posted by 曹源寺 at 16:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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