ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年02月10日

書評780 前川裕「イアリー」

こんにちは、曹源寺です。

昨日ニュースになった「信長読本」騒動ですが、なんかもうすごいですね。
「信長読本」ミスだらけ 岐阜市は三重県?(2/9岐阜新聞Web)
岐阜市が編集に協力した歴史雑誌「岐阜信長 歴史読本」に地図の表記や年号の間違い、誤字脱字など約30カ所もの不備があることが8日、分かった。市は「これほどたくさんの間違いがあるのは遺憾」として、発行元の出版社「KADOKAWA」に対応を求めている。
史跡・観光スポットを紹介する地図で、岐阜市が三重県、羽島郡岐南町と笠松町が愛知県と記載されていた。ホテル名の間違いや「廃グレードホテル」との記述もあった。「美濃人物伝」では人物名と紹介文が入れ違い、金華山のコーナーでは昭和4年が1828年と記してあった。
岐阜市教育委員会は校正補助をしたが、確認時とは違う状態で印刷された箇所もあった。KADOKAWAに対し「十分な確認を怠っており大変残念」とコメント。図書館や学校向けに購入した240冊は「この状態での配布は考えられない」としている。
同社の担当者は取材に「連絡いただいた人には正誤表を送る。現段階での回収は考えておらず、重版となれば直すべき所は直したい」と答えた。
雑誌は先月30日に発売。全国の書店で販売されており、すでに2千部近くを売り上げるほどの好評ぶり。


この後、KADOKAWAは刷り直しを表明しています。さすがに30ヵ所のミスは洒落にならなかったわけで。
それにしても酷いですね。出版社がネットの掲示板レベルに落っこちているという現実を目の当たりにしました。「廃グレードホテル」なんて書かれた方はたまったもんじゃありませんし、「三重県岐阜市」とか日本の出版社じゃ考えられないレベルの事故です。校正、校閲が機能していない出版社など無用の長物でしかないと思います。

でも、この手の本は編集プロダクションに丸投げしているケースが大半だろうなぁ。編プロが校閲費用ケチったのかもしれないなぁ。ケチったおかげで契約切られたりしたら可哀相だなぁ。数百万円の損害は間違いないもんなぁ。
など、いろいろと思うところはありますが、KADOKAWAしょうがねえなあという気持ちと、編プロさんがどうか無事でありますようにと願う気持ちが交錯しています。

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内容(KADOKAWA HPより)
大学教授の私が妻の葬儀を終えた夜、自宅のインターホンが鳴った。「奥様はご在宅ですか?」。モニターに映っていた女の姿は、私が外に出たときには消えていた。それから、私の周囲では不審な出来事が続き――。


曹源寺評価★★★★
前川センセーの最新刊はまたしても大学教授が主人公のホラー系小説でありました。ホント好きですね、この設定。ちなみにこれまでの著作のうち、英語のタイトルを整理しておきましょう。
クリーピー:creepy:ぞっとするさま、ぞくぞくするさま
アトロシティー:atrocity:極悪非道、残忍性、残虐行為
ハーシュ:harsh:耳障りな、不快な、ざらざらした
アパリション:apparition:幻影、幽霊、(突然現れる)おばけ
インザダーク:in the dark:暗闇の中
クリーピー スクリーチ:creepy screech:(スクリーチ)恐怖・苦痛などのために)聞き苦しい鋭い叫び声をあげる、キーキー鳴く、
そして本書のイアリー:eerie:不気味な、ぞっとするような
です。英語の勉強になりますね。
今回は前川センセー恒例の「ご近所サイコパス」に加えて、同時進行で大学内の総長選挙に暗躍する黒幕という不気味な存在がクローズアップされてきます。
恒星学院大学教授の広川は妻に先立たれて間もなかったが、ご近所でごみ収集所に男性の遺体が捨てられるという事件が発生する。また、主人が自殺したとされる近所の家にはその妻と思しき女性がいたが、広川は奇妙な違和感を覚える。
広川の勤める大学では総長選挙が控えており、文学部から総長を輩出したい教授たちが策謀を練るが、広川は乗り気がしない。ひとつ違いの石田教授が策略を練るが、広川はどんどんと巻き込まれていくことに。
この総長選挙に暗躍する石田とのやりとりがなんとなくサイコパスっぽくていいですね。小説全体から滲み出るこの薄暗さ、不気味さがなんともいえません。
勤務先で起こっている出来事と、ご近所で起こっている不思議な事件が後半からラストにかけて収束していくのですが、「クリーピー」から読破している自分としてはこのあたりのまとめ方が作品を重ねていくうちに研ぎ澄まされていくのがよく分かります。なんといっても、

ラストの意外性はいままでの作品とは趣を異にしている

ところがいいですね。
本書全体に漂う陰鬱な設定、主人公にしてみれば職場でも家でも安息の場がないという絶望、悪意の渦に巻き込まれていくやるせなさ、そして事件が解決したのに実は何一つ解決していないのではないかと思わせるサイコな人物像。そしてなにより

怖えぇ、という感想で閉じられる読後感。

前川センセーの作品がどんどん面白くなってきました。今後にも大いに期待しましょう。





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posted by 曹源寺 at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ま行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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