ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年02月24日

書評784 永瀬隼介「毟り合い」

こんにちは、曹源寺です。

大阪・豊中市に建設中の小学校を巡る土地取得(払い下げ)で、周辺の地価よりも格安で売却されていたなどの疑惑が浮上しています。

ある程度のまとまった土地が、時に癒着の代償として不透明な取引がなされることは戦後のどさくさの時代から多々あったように思いますが、21世紀になってからというとあまり聞かれません。本当は掘り起こせばかなりの不透明な取引があってもおかしくはないのかもしれないですね。
本来、こうした事件(と呼べるのかは分かりませんが)は警察というよりは検察、しかも東京地検特捜部というエリート集団がその解明に着手するのが慣わしだったように思うのですが、最近はとんと聞きませんね。
検察は2010年の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件によって信用を一気に失墜させた過去がありますが、いまだにこれを引きずっている印象がありますね。また、「特捜部不要論」も槍玉に上がっているようですね。花形部署なのに不要とまで言われるなんて、凋落も甚だしいですわ。
ちょうど週刊ダイヤモンドが2月25日号で「司法エリートの没落」と題して判事、検事、弁護士の苦境を特集しているので買ってみました。面白かったです。


司法の不祥事はさまざまな本が出ています(特に新書に多いですね)ので、そちらのほうが参考になると思いますが、本誌は変わりゆく時代の流れに司法のさまざまな制度がマッチしていないという「業界動向」を丹念に追っているのが特徴的です。特に働き方やキャリアアップなどについては業界内部の人でないと分からない、細かな点にも触れられています。5大弁護士事務所の生態みたいなものもあって、非常にユニークです。これから司法試験を受けようと考えている人には永久保存版かもしれません(かなりネガティブではありますが)。

若干話がそれました。
国有地の払い下げや、不透明な賃貸借契約みたいなものはもっともっと徹底的に追及してほしいなあと思います。おそらくはさまざまな分野に飛び火するのでしょうが、こういうものこそ調査報道がしっかりしているマスコミにやってほしいものです。民進党がここぞとばかりに追及しようとしていますが、なんというか、真実を明らかにしようとかではなくて、安倍首相を引き摺り下ろしたいだけのパフォーマンスにしか見えないんですよね。ブーメランで戻ってきそうですし。
え、朝日新聞も国有地の払い下げで恩恵を受けていたの?あぁ、そうですかぁ、、、ダメだこりゃ(いかりや長介風に)

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内容(講談社HPより)
日本犯罪史上、最高被害額の強奪事件発生! その計画、実行、逃亡、逮捕、判決までを克明に描く! 実際あった事件を基にした、文庫オリジナル書き下ろしクライムノベル。ずさんな管理の警備会社に眠るカネを狙った奴らがいた。襲撃して手にしたカネは、ワルたちも予想もしない大金。六億円――日本犯罪史上最高被害額を巡り、闇世界のワルたちが分け前にありつこうと群がる!


曹源寺評価★★★★
2011年5月に発生した「立川6億円強奪事件」をベースに書き下ろしたクライムノベルであります。国内の犯罪史上最高額の被害を受けたこの事件、昭和43年の3億円事件とは貨幣価値が違いますから本当は3億円事件のほうがすごいといえばすごいのですが、そこはまあ良いでしょう。この強奪事件を克明に描き出してクライムノベルにしたのが本書です。
主人公の小嶋秀之は元極道だが現在は埼玉県のすみっこで便利屋のような仕事の手伝いをしているだけの中年のおっさんであります。すごめばシロウトはちょっとびびるくらいの大きな体躯ですが、基本的には気の良いおっちゃんです。その小嶋は友人の日高などから金を奪えそうな杜撰な警備をしている警備会社(笑)があると聞かされます。金庫に眠る金が2億円はくだらないと聞かされた小嶋は友人らと共に計画を練りますが、自らは実行役を演じることなく、いわば「下請け」に仕事を回していくのでありました。
結局、下請けの下請け(つまり孫受け)が実行犯になるわけですが、こうなると実行犯との面識はなくなりますので、誰が金を持っていて誰がこれを分け与えるのか、分からなくなってきます。

これだけでもうぐちゃぐちゃです。

実際に奪った金も2億円ではなく6億円。実行犯の二人は防犯カメラにもばっちり映るし車の処分も杜撰だし、刑事たちに泳がされた実行犯らは芋づる式にそのつながりがばれてしまい、総勢23名が逮捕されるという大掛かりな捕り物になりました。
要するに、自分で強奪を実行しないヘタレだった連中が勢揃いしたというわけですね。そんでもって、この噂がブラックな人脈に触れてしまい、さまざまな連中から金を寄越せと脅されたり追われたりすることになるのですが、これも警察はすべてお見通しだったというオチまでついて最終的には関わった全員が逮捕されるという結末です。
この最高額を奪った事件にしては

あまりにもしょぼい実態に読んでいてあきれ返ること請け合いです。

こいつら本当にバカだな〜と。
ただ、ラストはなかなかに読ませるし、考えさせられる内容です。実際に6億円のうち、2億4,000万円は行方が分かっていますが、残る3億6,000万円はどうなったのか、あちこちにばら撒いているのが確認できていますが、それでも分かっていない金額が大きすぎるので、このあたりの謎に迫ったところも本書の大きな魅力のひとつではないかと思います。
永瀬センセーは元々ノンフィクションライターから出発されていますので、こうした実話ベースのお話には他の作家センセーより一日の長があります。センセーにはこのジャンル(つまり、アウトローが起こした事件のリアルなやつ)でもガンガン攻め込んでほしいなあと思います。





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posted by 曹源寺 at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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