ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年05月23日

書評804 佐藤究「QJKJQ」

こんにちは、曹源寺です。

ここ20年くらいで大きく変化した世の中の風潮のなかに、嫌煙権があります。どこでもタバコが吸えた時代はとうの昔に終わっており、受動喫煙対策も本格化しつつありますので愛煙家にとっては窮屈極まりない時代になりました。
自分も新入社員の時代にはオフィスのデスクで吸えたものでしたが、いまは全館禁煙です。オフィス街ではタバコが吸える建物のほうが少なくなっているかもしれませんね。

さて、自民党内における受動喫煙対策の会合で大西英男衆議院議員が「(がん患者は)働かなければいいんだよ」と発言したことが騒動に発展しました。自民党議員の舌禍事件として取り沙汰されています。
大西議員は陳謝したものの「働かなくていいのではないかというのは、ごくごく少数の喫煙可能の店でのことについてだ。がん患者が働かなくてもいいという趣旨ではない」として発言は撤回しない考えです。

これ、舌禍事件ですかね?
発言の趣旨は「喫煙可能な店で肺がん患者が働く必要はない」であって、「小麦アレルギーの人がパン屋で働く必要はない」と言っているのと同じだと思うのですが。
「お酒を飲めない人がバーテンダーをやる必要はない」
「ヘルニア持ちの人が引っ越しの仕事をする必要はない」
「花粉症の人が林業をやる必要はない」
「泳げない人がライフセーバーの仕事をする必要はない」
これらは仕事をすることによってその人の体調を壊し、あるいは症状を悪化させ、場合によっては他人にも迷惑をかけることになる事例です。職業選択の自由とか言う以前に、やったらダメでしょうという話です。
大西議員は言葉足らずだったとは思います(ヤジとしても品がないです)が、これをもって議員辞職せよとか撤回するまで許さないとかいうのは言葉狩りでしかないのではと思います。

受動喫煙対策も、小規模事業者にとっては客が減る可能性が指摘されていますので、自民党としてもどこかで抜け道がないと支持層からそっぽを向かれそうですね。個人的には、タバコを吸えるお店の名称に必ず「シガーバー」とつけなければいけないとか、そういうルールでも定めてはどうかと思います。「シガーバー和民赤坂店」とか「シガーバー塚田農場渋谷店」とか「シガーバーすしざんまい築地店」とか。
嫌煙家は絶対に来なくなると思います。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(講談社HPより)
市野亜李亜(いちのありあ)は十七歳の女子高生。猟奇殺人鬼の一家で育ち、彼女自身もスタッグナイフで人を刺し殺す。猟奇殺人の秘密を共有しながら一家はひっそりと暮らしていたが、ある日、亜李亜は部屋で惨殺された兄を発見する。その直後、母の姿も消える。亜李亜は残った父に疑いの目を向けるが、一家には更なる秘密があった。
「平成のドグラ・マグラ」
「ものすごい衝撃を受けた」
選考委員たちにそう言わしめた、第62回江戸川乱歩賞受賞作。


曹源寺評価★★★★
2016年の江戸川乱歩賞受賞作品です。
90年以降の乱歩賞受賞作品はすべて読了してきましたが、その歴代の受賞作のなかでも本書はある意味衝撃的でありました。
父、母、兄、そして自分の一家4人がすべて猟奇殺人鬼という設定。
ここからしてもう異端です。
地上3階地下1階の我が家には処刑部屋があり、各々殺したいときにその部屋に連れ込んで惨殺する。なんともおどろおどろしい設定です。あぁ、なんだかとっても乱歩的ですね。
こういう奇抜な設定で思い出すのは2000年の受賞作「脳男」でしょうか。ロボットも顔負けのmm単位で精密な動きを行うことができる主人公の「脳男」。ある評者は「この設定だけでもう勝ちだ」と絶賛していたのを思い出しました。
そんな一家にある日、兄が部屋で惨殺され、母も失踪するという事件が起こります。そこからはストーリーが二転三転し、この一家の秘密が明らかになっていきます。
リアリティには欠けますが、それは初期設定のせいだけではありません。真実が明らかになったと思ったら新たな真実が浮かび上がる。普通ならひっくり返さないところをひっくり返す。登場人物の言動や行動にも仕掛けがあったりして、最後まで気の抜けない展開でありました。

幻想と現実の境界線で揺れ動く主人公。

読者もまたその揺れ動く姿に幻惑されます。

この手の作風が好きな方にはたまらない作品になっているのではないかと思います。
佐藤センセーは1977年生まれ。「佐藤憲胤」の名でデビューしていましたが、乱歩賞受賞で改めて佐藤究(きわむ)としてデビューという経歴です。
本書はあの新潮社の中瀬ゆかり氏が「久しぶりに天才現る」と大絶賛しただけでなく、乱歩賞審査委員会の面々のうち有栖川有栖センセーが「平成のドグラ・マグラ」と評したほか、今野敏、池井戸潤、辻村深月の各センセーが褒めていました。
なるほど、こういう世界観でほかの作品も読んでみたいと思わせるような新人の登場かもしれません。次回作にも期待してみたいと思います。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
最近の記事
カテゴリ
過去ログ
検索
 
最近のコメント
書評802 呉勝浩「白い衝動」 by 本が好き!運営担当 (05/17)
書評785 東野圭吾「人魚の眠る家」 by 藍色 (04/05)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 曹源寺 (02/01)
書評777 垣根涼介「室町無頼」 by 本が好き!運営担当 (02/01)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 佐藤弘幸 (11/17)
タグクラウド
<< 2017年10月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
リンク集