ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年06月20日

書評812 緒川怜「誘拐捜査」

こんにちは、曹源寺です。

JX通信社という会社の代表の方がYahoo!ニュースに寄稿された(のかはわかりませんが)記事が、なかなかに考えさせられる内容だったので。

東京新聞読者の安倍政権支持率は「5%」、対する産経新聞読者では「86%」― 都内世論調査番外編(6/20)

報道系ベンチャーのJX通信社では、6月17・18日の両日に実施した東京都内での世論調査の中で、各新聞の読者ごとに安倍政権、小池百合子東京都知事の支持率をそれぞれ調査した。調査の概要や実施方法は、本調査の詳報記事(リンク先)の通りだ。
この結果、安倍政権の支持率は各新聞毎にはっきりと分かれる傾向が見えた。
各新聞読者層別の安倍政権支持率・不支持率

特徴的なのは産経新聞と東京新聞だ。産経新聞読者のなかでの政権支持率は86%に達した一方で、東京新聞読者ではわずか5%と極端な差が表れている。不支持率は産経新聞読者が6%なのに対して、東京新聞読者は77%と、そのまま支持率を裏返した結果となった。
朝日新聞、毎日新聞の読者も政権支持率はそれぞれ14%と9%にとどまり、かなり低い。
安倍首相が国会答弁で「熟読」を求めたことで話題になった読売新聞の読者層では、政権支持率は43%と、不支持率29%を上回っている。
また、唯一の経済紙である日本経済新聞では、支持率が41%なのに対して不支持率は38%と拮抗した。
全体の傾向として、各社の社説や右・左といった報道姿勢の「立ち位置」と、政権支持率の傾向とがかなり一致していると言える。
各新聞読者層別の小池百合子東京都知事支持率・不支持率
対照的なのが小池知事の支持動向だ。産経新聞を除く全ての社の読者層で、支持が不支持を上回った。継続的に公開してきた都内世論調査でも、各政党支持層から幅広く支持を得てきた傾向を指摘しているが、「新聞読者層」という切り口でも同様の傾向が見える。 (以上)

図表などはリンク先を参照いただくとして、安倍政権の支持率、数字としては以下の通りになります。
        支持する  どちらとも言えない  支持しない
産経新聞    86     8          5
読売新聞    43     28         29
日本経済新聞  41     21         38
朝日新聞    14     16         70
毎日新聞    9     31          59
東京新聞    5     18          77
その他・答えない 30    29         48

この調査結果、サンプル数が少ないので統計的な意味はあまりないのかもしれませんが、少なくとも購読する新聞の種類によって支持層がこれだけ違うということは、新聞媒体とは少なくとも「公正・中立」ではないだろうということだと思います。
卵が先か、鶏が先か、という議論になるのも嫌ですが、「イデオロギー的に右だから産経新聞」なのか「産経新聞を読んでいるからイデオロギーが右に傾いている」のかは分からないです。ただ、少なくとも「産経新聞を読み続けていると右の思想がより強化される傾向にある」という仮説は成り立つのかもしれません。
朝日新聞や東京新聞はその逆ということになります。

もうどっちに傾いてもいいんですが、新聞媒体は「公正・中立」の看板を下ろすべきでしょう。そして、公益に資する媒体ではないということも国民全員が周知する必要がありましょう。ましてや新聞以上に公正・中立であるべきテレビ=電波媒体は新聞の影響を受けるべきではないということも言えると思います。

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内容(光文社HPより)
八王子での少女誘拐事件が発生。犯人を名乗るメールが届くが、そこには十四年目の誘拐事件の「真相」の告白が!? 二十年前の姪の行方不明事件で心に傷を負う刑事・楢橋は、強引に捜査に加わが孤立、姪の妹で通信社記者の文の協力を得ながら事件解決に奔走する。過去の事件の情報は錯綜し、浮かび上がる容疑者に翻弄される捜査本部。さらに、誘拐犯の「告白」には社会に衝撃を与えるたくらみが仕掛けられていた。ちりばめられた謎解きの妙。過去と現在を幾重にも交錯させた巧みな構成。そして明らかになる犯人の巧緻な罠と驚愕の真相。楢橋は少女を救えるのか!?


曹源寺評価★★★★★
それほど好きな作家センセーではありませんが、新作が出ると一応はチェックしています。デビュー作の「霧のソレア」はそれなりに楽しかった印象があるというのが理由ですが、近年の作品はどれもあまり高い評価をつけることができないでいます。
なぜなのか。本書を読んでちょっと分かったような気がします。
本書のおさらいから書いておきましょう。
警視庁捜査一課の楢橋邦洋は、20年前に姪の桜子が行方不明になった事件で責任を大きく感じていた。そこに八王子で少女が誘拐されるという事件が発生。犯人からのメールには14年前に発生した少女殺害事件の真相を綴った内容が書かれており、逮捕・起訴したはずの死刑囚である矢部俊夫が冤罪である可能性が浮上した。犯人の狙いは何か。楢橋はもう一人の姪である通信社勤務の文(あや)と事件解決に挑む。
これだけ読むと、なんとなく普通の警察小説っぽいですね。あまり謎解きというほど難解ではありませんが、事件の展開を追う分にはすらすらと読みやすくグイグイいけます。
ですが、緒川センセーの書き味は独特です。何が独特かといいますと、

エピソードが詳しすぎぃ!

なんですわ。新たな登場人物が出てくるたびに、主人公とのエピソードが詳細に語られます。これが微に入り細を穿ってやたらと引き込まれるような書き込みをされるので、本筋のストーリーを忘れてしまいそうになるのであります。
それが事件解決の伏線になるなら良いのですが、そうでないエピソードも結構ありますので、読者にしてみれば「このエピソードいらねえだろー」と思ってしまうこともしばしばです。
この辺をさりげなく盛り込ませることができているのが東野圭吾センセーだったり大沢在昌センセーだったりするのですが、いちいち仰々しいエピソードは作品に深みをもたらすようで実は違うのではないかと思うのです。
そのエピソードの挟み込みも、まるで取ってつけたかのようなやり方だったり、あるいはエピソードのなかにさらに回想シーンがあったりしてもう訳分かりません、という感じだったりするんです。このへんがもう少し整理されたうえで、20年前の事件なのか、14年前の事件なのか、それとも現在進行形の事件なのか、分かりやすくしないと読者がついていけなくなると思います。そのうえで、現在進行形の未解決事件については警察小説っぽく「伏線を張っている」という描写になればいいのではないかと思います。
もうひとつだけ突っ込んでおくと、緒川センセーは「冤罪死刑」でも書かれていましたが、本書でも死刑とか冤罪といったテーマを盛り込んでおられます。冤罪の可能性が少しでも存在する死刑判決や、本人あるいは支援団体が再審請求しているような判決においては、すんなりと死刑執行されていないのが実情です。執行待ちが100人を超えている現状において、そんな難しい案件を優先的に執行するなどありえないという物理的な事情もありましょうが、いずれにしても、「死刑は冤罪となったときに取り返しがつかないから反対」という死刑反対意見については運用の実態を鑑みればあまり意味を持っていないのかもしれません。





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posted by 曹源寺 at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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