ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年07月21日

書評821 馳星周「暗手」

こんにちは、曹源寺です。

河野太郎という衆議院議員がいます。神奈川15区です。ご尊父はあの「紅の傭兵」と言われて久しい河野洋平氏であります。衆議院議員を14期も務めた重鎮ですが、途中、新自由クラブを作って自民党に反旗を翻した経緯もあります(まあ、新自由クラブはクソがつくほどまじめな田川誠一氏とか犯罪者山口敏夫とかごった煮の状態でしたが)。
父親はともかく、息子の太郎氏は「ごまめの歯ぎしり」というブログを開設していまして、自分もマメに目を通していますが、これが結構面白いんですよ。
特に話題を集めたのは2016年11月から不定期に投稿された「研究者の皆様へ」というタイトルのシリーズです。基礎研究費の削減によって官公庁および国家機関で働く研究者の方々の効率的な費用の使い方などに言及されていて、それがかなり具体的で細かいということで話題になりました。河野議員の現場主義が非常にわかる内容になっています。
自分はこの議員、それほど好きではありませんが、いやむしろ嫌いな方かもしれませんが、このブログだけは読みます。そして信じます。なぜかというと、あえて敵を作ってまで正論をぶちかましているところが気に入っているからです。時には霞が関の官僚さえ敵に回しています。文章はそれほど難解ではありませんし、提起される諸問題もかなり的を射ている内容が多いです。

そんな河野議員の最新の投稿がこれです。
南スーダンの日報問題(7/20)
自衛隊の南スーダン派遣施設隊の日報に関して、私には意見を言うちょっとした権利があると思う。
ということで、一言。
一昨日からの南スーダンの日報に関する報道を見ていると、ちょっとピント外れなものが多い。
自衛隊の南スーダンの派遣施設隊の日報は、二月六日にはその存在が明らかになっており、機密部分が黒塗りになっているもののすべて公開されている。

繰り返すと、「二月六日には日報はすべて公開されている。」

だから二月十五日に、防衛省で開かれた会議で、日報を隠蔽することはできないし、公開するかどうかを決めることはできない。
このニュースの中で、NHKにしろ、民放にしろ、二月六日に日報がすべて公表されているということに触れていないのは、視聴者に誤解を与える。
二月十五日の防衛省の会議で問題になることがあるとすれば、陸自で見つかった日報は、個人のものなのか、行政文書なのかという判断だ。
もし、日報がそれまでに見つかっていなかったら、行政文書だろうが、個人のものであろうが、陸自で見つかった文書は干天の慈雨のようなものであり、日報が見つかった、よかった、ということになっただろう。
ただし、もしそれが個人の文書だったら、それが改ざんされていないかということが問題になるだろうが。
しかし、それまでに日報が見つかって公表もされているのだから、問題は陸自で見つかった文書が個人の文書なのか、(その場合、特に問題はない)、行政文書なのか、(この場合、最初に開示請求をされたときに、探し方が足りなかった)ということになる。
個人の文書ならば、それが見つかったことを公表する必要もないだろうが、行政文書ならば、当初の探し方が足らなかったことが明らかになったことを公表する必要がある。
防衛省は、見つかった日報が個人の文書だと考え、特に発表の必要がないと考えた。
しかし、日報に関してはそれまでいろいろとあったわけだから、自分たちで判断するだけではなく、内閣府の公文書課や国立公文書館に、きちんとした判断を仰ぐべきだった。それがこの騒動の本質ではないか。
こうした説明もなく、あたかも日報を隠蔽する決定が行われたかのような報道は、間違っていないか。


ストレートのド正論でありました。
河野議員はブログで正論かますだけなら超一流であることがわかります。これを援護射撃する動きが自民党内から上がれば面白いかなとは思います。

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内容(KADOKAWA HPより)
生きるために堕ち続ける
『不夜城』『夜光虫』の衝撃から20年
究極のクライムノベル誕生!
台湾のプロ野球で八百長に手を染め、罪から逃れるために次々と殺しを重ねた加倉昭彦。居場所を失い、顔も名前も変えて過去を抹消、逃れ着いたのはサッカーの地イタリアだった――。イタリアの黒社会では、殺し以外の仕事なら何でも請け負い、いつしか「暗手」――暗闇から伸びてくる手――と呼ばれるようになっていた。そんなある日、サッカー賭博の帝王・王天から、ロッコに所属する日本人ゴールキーパー・大森怜央に八百長をさせろとの依頼が舞い込む。計画実行に向けて着実に準備を進めていく加倉だったが、大森の姉の写真を目にしてから過去の記憶がよみがえり、計画の歯車が狂い始める……。


曹源寺評価★★★★★
馳星周センセーの傑作のひとつに「夜光虫」という作品がありまして、1998年の初版ですからもうかれこれ19年も経つわけですが、その続編が本作であります。
主人公の「暗手」ことヴィト・ルーは日本人、加倉昭彦としてかつては台湾のプロ野球選手であったが、八百長に手を染め、逃亡し、逃亡のために何人も殺めてきた過去を持つ。このヴィト・ルーが今度はイタリアを舞台にして、サッカーの八百長試合を仕掛けていきます。
一度でも八百長に加担したら二度、三度と引き返せなくなり、最後は身の破滅となる泥沼行為であるが、嵌められたと思った時にはもう遅い。これまで何人もの選手を地獄に導いてきたヴィトは日本人、高中雅人として地元のクラブでゴールキーパーを務める大森怜央に近づき、親切なタニマチとして振る舞いながら裏では八百長にかかわらざるを得なくする工作を仕掛けていく。
一方、イタリアの黒社会でサッカー賭博の帝王となっていた王天は暗手のほかに殺し屋の馬兵を雇っていた。馬兵と暗手が交錯したとき、大いなる深淵が口を開けて待ち構えていたのだった。。。
賭博が絡んだ黒社会ともなれば、大きな金が動けば一触即発、血の雨が降ること間違いなしの展開です。しかも台湾マフィアです。
馳センセーの真骨頂のような作品に読む手が止まりません。
前作「夜光虫」はもうほとんど記憶の彼方に飛んで行ってしまっておりましたが、読み進めるうちになんとなく思い出しました。でも

前作を読んでいなくてもすんなり入っていける

懐の深さがありますね。450ページを超える大作ですが、あっという間に読み終えること間違いなし。スピード感あふれる展開と壮絶なラスト。主人公は生きながら死んでいる「悪霊」であります。業の深い男という自覚があり、誰かが自分を殺してくれる日を待っている。だから死の際でも平然としていられる。しかし本書では一度は愛した女に呪詛の言葉を投げられます。それは(以下ネタバレ)


「くたばれ」という言葉です。くたばれとはイコール「死ね」ではないんですね。表現としては「地獄の底でいつまでも苦しめ」、つまり簡単に死んでもらっては困るレベルということです。
多くの人の恨みを買い、簡単に死んでは自分の魂は救われないだろうという壮絶な生き様。ここまで自己否定を重ねる主人公のノワールはついぞお目にかかったことがありません。これぞ馳星周。さすがです。





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posted by 曹源寺 at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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