ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2008年01月08日

書評31 柴田哲孝「下山事件−最後の証言」

もう正月気分はすっ飛びましたね。仕事もギンギンでたまりません。


内容(祥伝社BOOK.comより)
私の祖父は実行犯なのか?
戦後史最大の謎。半世紀を超えてついに核心に迫る親族の生々しい証言。

「約束しろ。おれが死ぬまで書くな!」
祖父の盟友にして某特務機関の総師は言った。真相を知る祖父の弟、妹、そして彼も没した今、私は当事者から取材したすべてを語ろう。

「あの事件をやったのはね、もしかしたら、兄さんかもしれない・・・・」
祖父のニ三回忌の席で、大叔母が呟いた一言がすべての発端だった。昭和ニ四年(一九四九)七月五日、初代国鉄総裁の下山定則が三越本店で失踪。翌六日未明、足立区五反野の常磐線上で轢死体(れきしたい)となって発見された。戦後史最大のミステリー「下山事件」である。
陸軍の特務機関員だった祖父は、戦中戦後、「亜細亜産業」に在籍していた。かねてからGHQのキャノン機関との関係が噂されていた謎の組織である。
祖父は何者だったのか。そして亜細亜産業とは。親族、さらに組織の総師へのインタビューを通し、初めて明らかになる事件の真相!

曹源寺評価★★★★★
えー、これはノンフィクションですが、日本推理作家協会賞(第59回)と日本冒険小説協会大賞を受賞した本格的な作品です。圧倒されました。これだけの膨大な資料を非常によく分析しているのと、まるでフィクションを読んでいるかのような錯覚を覚えるほどのドラマティックな展開、そしてこの執筆にあたり前後して別の人が同じキーマンに接触しようとしているところも興味深いです。
下山事件は、三鷹事件、松川事件と並んで戦後の3大ミステリと呼ばれていまして、いずれも犯人が捕まっていないか、つかまっても証拠不十分で無罪となっているものです。下山事件は松本清張氏の「日本の黒い霧」を読んでから興味を持ちました。戦後のGHQやキャノン機関と呼ばれる諜報機関、それに児玉誉士夫や横井秀樹、小佐野賢治などの政商と呼ばれる人たちがどのような活動を行ってきたのか、これを知ることが現在の日本を知ることにつながるのだなあと思うようになりまして、最近になって現代史に関する本をいろいろ漁るようになりました。
この本は下山事件に少なからず興味を持っている方にはぜひ、お勧めしたいですね。亜細亜産業に関する記述は清張の比ではありませんし、黒幕とされる矢板玄へのインタビューの場面はもう本当に引き込まれました。
別の人の接触と書きましたが、それはTVジャーナリストで映画監督の森達也氏です。彼は「下山事件(シモヤマ・ケース)」という本を著していまして、自分はこちらから読み始めましたが、こちらはあまり面白くなかったです。過去の検証の焼き直しと、著者自身の行動記録にとどまっているからです。柴田氏はこの本に関して非常に憤慨しています。なぜなら、記事にいくつかの捏造が混じっているからだと。ですから、森氏の著作は読む必要ありませんが、基礎知識としては清張の作品から入ってもよいかもしれません。あとはちょっと古いですが矢田喜美雄氏の「謀殺・下山事件」あたりが良いでしょう。



posted by 曹源寺 at 23:42| Comment(1) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「まるでフィクション」なのか、本当のフィクションなのか。
http://www.geocities.jp/kosako3/shimoyama/nagashima_nengajo.html
Posted by kkos at 2012年03月20日 10:28
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