ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:日記

2018年06月22日

書評907 本城雅人「傍流の記者」

こんにちは、曹源寺です。

最近は「保守速報」におけるバナー撤去問題のように、言論に対する圧力を加えようとする動きが目につくようになっていますね。パヨクだけでなく、ネトウヨが朝日新聞の広告クライアントに圧力をかけたのも記憶に新しいところです。どっちもどっちとは言いませんが、少なくとも事実に基づかない報道に対しては厳しい目を向けなければいけないとは思います。
こと出版事業においては、広告収入が損益に直結する雑誌においてその圧力が直接的な打撃になるだけに、版元としてはとても痛いわけです。書籍はどうでしょうか。書籍は不買運動がとても痛いのかもしれないですね。

NHKのニュースにあるのがこんなやつでした。
障害者殺傷事件 被告の手記掲載の本出版へ 抗議の署名提出(6/21NHK WEB)
相模原市の知的障害者施設で46人を殺傷したとして起訴された植松聖被告の手記などを掲載した本が出版される見通しとなり、21日、大学教授らが出版社を訪れ、被告の主張が拡散するおそれがあるとして出版を取りやめるよう署名を提出しました。出版社は「事件を解明し風化を防ぐための議論の材料にしたい」と話しています。
この事件は、おととし7月26日、相模原市の知的障害者施設で、入所していた障害のある人たちが次々に刃物で刺され、19人が殺害され27人が重軽傷を負ったもので、殺人などの罪で起訴された元職員の植松聖被告(28)は「障害者は不幸をつくることしかできない」などと供述しました。
事件から来月で2年となるのにあわせ、東京都内の出版社が書籍化を予定していて、この中では拘置所にいる植松被告との手紙や接見でのやり取りなど、月刊誌で紹介してきた内容や新たに加筆した手記などを、専門家の意見や被害者の家族の声などとともに掲載するということです。
これに対し、21日、静岡県の大学教授や障害がある人の家族会の代表が出版社を訪れ、出版停止を求めるおよそ2000人分の署名を提出しました。
このうち、被告と接見した静岡県立大学短期大学部の佐々木隆志教授は「被告の差別的な思想が本という形で拡散すれば同調する人が増えるおそれがあり危険だ。恐怖を感じる障害のある人や家族のことを考えてほしい」と話しています。
(以下、省略)

あの相模原46人殺傷事件の被告である植松聖が手記を発刊する動きに対して、障がい者差別につながる恐れがあるとして出版反対の動きが加速しているというのがニュースの趣旨です。

さあ、この出版反対の動きをどう見たら良いでしょうか。

個人的には「出版をさせないとする動きは言論弾圧であり、これこそファシズムではないか」と思ってしまいます。
本を出したければ出させればいいのです。そのうえで徹底的に内容を論破すればいいだけの話ではないかと思うのです。

重度の障がい者は確かに意思の疎通も難しい場合がありますね。看護されている方の負担は相当なものでしょう。自分は、2007年に発生した兵庫県立龍野高校テニス部の熱中症事故を思い出します。顧問の教師に水分補給を止められて熱中症になり脳に障がいを残してしまった生徒の話は本当に可哀想で胸が詰まります。この生徒さんは重い障がいが残ってしまいましたが、こういう場合は意思の疎通が難しくなったけれど中身の人間が入れ替わったわけではないので発症前の彼女を知っている人から見たら、どちらも彼女なんですよ。その彼女を殺せばいいなどと思っている人は彼女の周囲に誰一人としていないはずだと確信します。
植松のやったことはもちろん許せないし、植松の主張していることが(まだ出版していないから分からんけど)彼女も殺していいという主張だとしたらやはり許せないですわ(これは極論で、先天的な障がい者なら殺していいという話をしているわけではないですよ、念のため)。
事実に基づいていない主張であれば、そこで堂々と訂正を求めるなりすればよろしい。単なる思い込みの主張であるならば事実に基づいて徹底的に論争すればよろしい。そういうことです。

それにしてもパヨクは言論弾圧が好きですね。ちょっと前には船橋市の図書館で焚書騒ぎがありました。気に入らない本は燃やしてしまえの根性です。マイノリティに配慮するのは結構ですが、配慮の仕方が違うのではないかと。


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内容(新潮社HPより)

優秀な記者ばかりがそろった黄金世代。しかし、社会部長になれるのはひとりだけだった。生き残っているのは得意分野が違う五人の男。部下の転職や妻との関係、苦悩の種に惑いながら出世レースは佳境を迎えるが、会社が倒れかねない大スキャンダルが男たちを襲う。組織を守るか、己を守るか、それとも正義をとるか。勝つのは、誰だ?


曹源寺評価★★★★★
元産経新聞記者、サンケイスポーツ記者の本城雅人センセーの新刊はミステリではなくて、新聞記者の人間模様を描いたドラマでありました。新聞社を舞台にしたビジネス小説とも言えなくはないですね。
東都新聞社の社会部に勤務する植松、図師、城所、南雲、土肥の5人はいずれも同期入社の40代。次のデスクを狙う位置でバリバリに働くミドル層。黄金世代と呼ばれ、誰が次のデスクに一番乗りするのか、周囲も注目していたが、それ以上に彼ら自身が意識していた。スクープを狙わなければ、という意識が働き次第に組織が歪み始め、そんなところに降ってわいた事件が東都新聞社を揺るがした。。。
うーん、リアルだ。企業小説としてはあまりにもリアルすぎて、なんだか内情を暴露しているんじゃないかというくらいに思います。人物もキャラクター造型がとってもありがち(新聞記者にいそうなタイプという意味)でそれがリアルさに拍車をかけていますね。
昔から、新聞記者という仕事は激務で有名です。だから社会的な使命感みたいなものがないと務まらない仕事と言われてきました。そうなると記者もプライドを持っていて正義感が強い人が残りますね。曲がったことが嫌いで、相手を論破してでも意志を貫こうとする人なんて、結構いそうじゃないですか。そういう人って周囲から見れば偏屈であまり関わりあいたくない人だったりしますね。部下にいたらやりにくいでしょうし、有能でもマネジメントできるのか心配ですから昇進させようか迷うのかもしれません。
本書は社会的な事件ではなく、新聞記者の日常と人事という側面をつまびらかにした作品として稀有な作品であると言って良いかと思います。
しかも本書は新聞社の内部事情にも触れていますので、とても勉強になります。初めて知ったこともいくつかありました。
キャップの上のデスク(次長職相当)は競争に勝ち残った者が成れる
デスクになれなかった人のために編集委員、解説委員というポジションがある
脱税などの国税庁ネタは各社に順番でリークが入ってくるので、スクープしても評価が低い


へー

編集委員って上がりのポストなんですね。よくテレビのコメンテーターで出てくる人がいますが、管理職になれなかった人のための肩書きですので、そんなに偉い人ではないということですね。
ラストもなかなかに良くまとまっていますので、面白かったです。
ですが、一番の感想としては、「社会部と政治部の仲が悪いのは昔からだから知っているけど、いまそんなことでいがみ合っている場合じゃねえだろ。新聞ほど地位も売り上げも没落している業界はねえんだから抜いた抜かれたとかやってないで、全社を挙げて部数増加のための施策を打つとかやらないと明日はないよ」という思いが浮かんできます。古い体質を引きずったまま、新聞社はどこへ行こうとしているのか、そんな疑問が残るような小説でありました。





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2018年06月19日

書評906 川瀬七緒「紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官」

こんにちは、曹源寺です。

昨日(6/18)の大阪地震で被害を受けられた方にお見舞い申し上げます。
と言いつつも、明日は我が身かもしれませんので備えだけはしておこうと思います。
まあ、新幹線の中で刃物に刺されることもあるご時世ですから、いつ死んでもおかしくはないわけです。死ぬのは怖くありませんが、無駄死にだけはしたくないなあ。どうせなら保険金だけでなく、家族に慰謝料とかカンパなどが残るような死に方をしたいですね。

さて、その地震関連で話題となっている二つの酷いマスゴミのネタがこちら。
【放送事故】大阪地震で9歳女児死亡のニュースでフジテレビが「無事死亡」と報道しtwitterで話題に (6/19ハムスター速報)

『報道ステーション』の大阪地震報道が大炎上 配慮のないインタビュー、最後は政権批判の材料に…(6/19リアルライブ)

フジテレビはもう停波でいいねこれ。中にいる人があまりにも人としてレベル低いよ。
テレ朝は何が何でも政権批判に結び付けたいだけのコメントに飽き飽きです。人間の中身が相当歪んでいるね。

それにしても震度6弱の地震って本当なら死者が何百人も出るレベルの震災なのに、日本ってすごいね。しかも翌日には仕事も通常営業ですよ。首都圏で震度6弱が発生しても「大阪を見習え」になりゃしないか、ちょっと怖いですわ。


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内容(講談社HPより)
東京都内の古民家で、おびただしい血痕と3本の左手の小指が見つかった。住人の遠山という高齢夫婦とその客人のものと思われたが、発見から1ヵ月経っても死体は見つかっていない。いっこうに捜査が進展しない中で岩楯警部補は、相棒の鰐川と事件現場を訪れ近所の聞き込みを始める。他方、法医昆虫学者の赤堀は科捜研を再編成した「捜査分析支援センター」に配属されていた。法医昆虫学と心理学分野、技術開発部の三つが統合された新組織だ。所属のせいで事件現場には立ち入れなくなったものの、同僚のプロファイラーと組んで難事件に新たな形で挑戦を!


曹源寺評価★★★★★
法医昆虫学捜査官シリーズの第6弾(!)です。もうすっかり大人気シリーズになりましたね。
今回から、赤堀涼子博士は科捜研の組織編成により「捜査分析支援センター」なる部署に配属され、公務員(というか正式に警視庁の捜査員)に転身しています。もちろん、大学の講義も続けています。そのセンターではプロファイラーの広澤春美がおり、法医昆虫学とプロファイリングという二つの武器が警視庁に加わります。もっとも、この二つの武器は古くからの捜査員にとって異物でしかなく、捜査を混乱させるだけの存在として忌み嫌われます。とまあ、ここまではお約束ですね。
今回の事件は、杉並区内で発生した死体なき殺人事件であります。3本の小指と大量の血痕だけが残された異様な事件現場。赤堀は小指に付着する蛆虫から死亡推定時刻を割り出しますが、一本だけ腐敗の進行が遅い指があったのです。学者としてはこの謎を解き明かさなくてはなりません。いつものように、岩楯刑事と鰐川刑事のコンビが加わり、少しずつ謎に迫っていきます。
今回は蛆虫くんの活躍ではなくて、やけど虫(アオバアリガタハネカクシ)くんの活躍が光るのですが、自分は虫がそれほど得意ではありませんのでやけど虫くんの存在も知りませんでした。こんなのに刺されたら嫌ですね。しかも大量発生www怖すぎwww
6作目となりまして、本書シリーズもある程度パターン化してきたように思いますが、これはこれで良いのだろうと思います。だいたい、昆虫相の変化なぞ素人には分からない世界ですし、「虫は嘘をつかない」という大前提が正義ですから、これがひっくり返ることもないでしょう。じゃあマンネリ化するのかと言えば、それはないだろうということです。

常に新鮮なグロさを出してくる、それが本書シリーズ笑

話はちょっと変わりますが、川瀬七緒センセーの作品に流れているある共通項みたいなものを垣間見ることができました。それは「中高年のクソジジ、クソババっぷりを描くのが本当にうまい」というやつです。
桃ノ木坂互助会」や「フォークロアの鍵」「テーラー伊三郎」などの過去作品においてもやたらと老人が出てきます。偏屈だったり意地悪だったり頑固者だったりするのですが、大抵は人間の嫌なところを凝縮させたような人物が登場するのです。よくもまあこんだけクソ老人を描けるものだなあと感心します。川瀬センセーは老人に何か恨みでもあるんじゃないかと思ってしまうレベルです。
本書においても然りで、こんな人が近所にいたらすんごく嫌だなあと思うキャラクターが登場してきます。自分の意に沿わないと泣き落としを使ったり、あるいは急にヒステリックになったり、どうにかしてマウンティングしようとする人。半径1キロ以内の住人が巻き込まれる怖ろしい人です。
もしかしたら川瀬センセーはすごく人間観察が得意で、人間の悪い意味での本質を突くのがうまいんじゃないかと改めて感心した次第。





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2018年06月15日

書評905 倉知淳「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件」

こんにちは、曹源寺です。

大学の改革とかに関するニュースが増えてまいりました。

「国立大の数を適正に」経団連が提言(6/13産経ニュース)
経団連は13日、国立大学の数と規模を適正化し、大学の質の向上や国際競争力を高めるべきとする大学改革に向けた提言をまとめた。中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)などに提出し、検討中の大学改革に反映させたい考え。
 少子化の中で国立大86校、公立大89校、私立大604校が共存し、私大の4割が定員割れする現状を憂慮。省庁横断の組織を設置し、大学関係者や経済界なども参画し、地方のニーズを考慮した形の大学再編を含めた全体像を策定すべきと提言した。
 一つの法人が複数の国立大を傘下にして運営できるよう法改正の必要性を強調。また、経営が悪化する私大の早期合併や撤退を促す対策として、学部、学科単位での事業譲渡を可能にし経営の自由度を高めることも提言した。経済同友会も今月、経営上の問題を抱える私大の再生・再編を促す第三者機関「私立大学再生機構」(仮称)の設立を文部科学省などに求める提言を発表している。


タイトルだけ見ると「国立大学の数を減らせ」というニュアンスに見えますが、そうではないですね。国公立大学は合体させろという感じでしょうか。たとえば、浜松医科大学と静岡大学を統合するとか、新潟大学と新潟県立看護大学をくっつけようとか、そういう趣旨だと思います。企業でいうところの持ち株会社みたいなものを設立して、その下に現在の大学をぶら下げるような仕組みにすることで、まずは人材交流や学部間の調整をしやすくする狙いがあるようです。
私大に関しては、経営が悪化したときに学部単位で切り離して統廃合することができるようにする、なんてのもありますので、赤字経営の私大はこれから戦々恐々かもしれません。

経団連にしてみれば、おバカなFラン大学などでモラトリアム食んでいるより即戦力になりそうな専門学校卒とか高卒のヤツの方が使えるということが分かっていますので、人手不足解消のためにもぜひ進めてほしい事案なのだろうと思います。
レジャーランドと化したFラン大学など不要じゃ!、というのが世の趨勢でありましょう。外国人留学生のための大学になっているところ、定員割れが3年続いているところ、偏差値が40を割り込んでいるところ、いずれも存続の意味はありません。

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内容(実業之日本社HPより)
倉知淳を知るうえで格好の一冊
空前絶後の密室殺人。
真夜中の実験室で起きた世にも奇妙な事件の真相は――!?
ユーモア&本格満載。
猫丸先輩シリーズ最新作収録のミステリ・バラエティ!

戦争末期、帝國陸軍の研究所で、若い兵士が倒れていた。
屍体の周りの床には、なぜか豆腐の欠片が散らばっていた。
どう見ても、兵士は豆腐の角に頭をぶつけて死んだ様にしか見えなかったが――?
驚天動地&前代未聞&空前絶後の密室ミステリの真相は!?
倉知淳を知るうえで格好の一冊。
こういう作品集を読みたかったのだ。
――村上貴史(文芸評論家)


曹源寺評価★★★★

このタイトルに惹かれない人はいないんじゃないか

と思うくらい素晴らしいネーミングですね。
この倉知センセーの最新刊は短編集ではありますが、いずれもなかなかの作品が揃っています。
変奏曲・ABCの殺人
社内偏愛
薬味と甘味の殺人現場
夜を見る猫
豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
猫丸先輩の出張
の6編です。
そうです、あの猫丸先輩が帰ってきました。10年以上の御無沙汰だったのではないかと思いますので、往年の倉知ファンにはたまらないでしょう(と言っても、自分は未読ですが)。
個人的には「社内偏愛」がとてもシニカルでかつ星新一的で好きですが、ラストのオチは逆の方が良かったような気がします(何が逆なのかは読んでのお楽しみ)。
表題作は戦時中の松代大本営にある実験室内で発生した殺人事件ですが、ちょっと予想外の展開で、賛否が分かれそうな感じがします。





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2018年06月12日

書評904 雫井脩介「引き抜き屋 (2)鹿子小穂の帰還」

こんにちは、曹源寺です。

初の米朝首脳会談が行われて、朝鮮半島の完全非核化を含めた4項目の合意で調印にまでこぎつけたというのは、まさに歴史的な一日になったのではないかと思います。
もちろん、北の国がこれを粛々と履行すれば、の話ではありますが。
ここにくるまでの米国の圧力は過去にないほどのレベルでありましたから、やはり圧力というのは必要なんだなぁと思うわけです。トランプが有能だなあと思うのはこういうところです。つまり、「喧嘩は戦う前に決着がついている」ということです。闇雲に突っ走るのはただの蛮勇でしかなく、後さき考えずに突っ走っているだけのヤツは間抜けだということです。
かの孔子も言ってます。
勝兵は先ず勝ちてしかる後に戦いを求め、 敗兵は先ず戦いてしかる後に勝を求む。

まさにこれです。
あとは安倍首相に日朝首脳会談をぜひ実施していただき、拉致被害者の帰国を実現してほしいものです。戦う前に勝っている状態を作りましょう。これを邪魔するヤツは非国民と呼んでやりましょう。


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内容(PHP研究所HPより)
「いい加減で質の悪いヘッドハンターも跋扈(ばっこ)しておりましてね」
父がヘッドハンターの紹介で会社に招き入れた大槻(おおつき)の手によって、会社を追われた鹿子小穂(かのこ・さほ)は、再就職先でヘッドハンターとして働き始めた。各業界の経営者との交流を深め、ヘッドハンターとしての実績を積んでいく小穂の下に、父の会社が経営危機に陥っているとの報せが届く。父との確執を乗り越え、ヘッドハンターとして小穂が打った、父の会社を救う起死回生の一手とは?
ビジネスという戦場で最後に立っているのは――。
予測不能、そして感涙の人間ドラマ。ヘッドハンターは会社を救えるのか!?
仕事と人生に真正面から取り組むすべての人に勇気を与える、一気読み必至のエンターテインメント。


曹源寺評価★★★★★
引き抜き屋(1)鹿子小穂の冒険」に続いて一気に読了しました。
「引き抜き屋の苦心」「引き抜き屋の報復」「引き抜き屋の帰還」の連作短編3作が収録されています。企業小説であり、経済小説であり、そしてなによりもヒューマンドラマであるという印象を強く受けますが、この人間の部分にフォーカスした作り込みがとてもうまく機能したのではないかと思います。特に、ヘッドハンターという職業からの視点が斬新であるし、経営の難しさや経営者の資質、矜持、思い入れ、プライド、信条、といったものが織り込まれているのが良いですね。

「引き抜き屋の苦心」では、創業45年のカバンメーカーが社長の癌疾患により後継者を探すオファーに小穂が奮闘するストーリーですが、これなんて今まさに日本の中小企業が抱えている問題を浮き彫りにしたようなストーリーです。中小企業庁が後継者難の現状をレポートしたことがありますが、社長の平均年齢が60歳を超えているという衝撃的なデータもありますね。特に年商10〜30億円程度の企業だとMBAホルダーの雇われ社長、つまり「プロの経営者」などを呼んでくるのが果たして正解なのかどうか、非常に難しい問題だと改めて認識させられます。

「引き抜き屋の報復」では同じオフィスにいる左右田の案件を手伝うことになった小穂だが、飲食チェーンのオファーに対してメガネチェーンの企業から引き抜こうとする左右田の意図が分からず、、、というストーリーです。左右田の居酒屋で熱弁をふるう姿が笑えます。アイドルグループのコンサート帰りに、そのグループの戦略をポーターのファイブフォース分析を交えて是非を問うこの科白回しが個人的にはツボにはまりました。

そして最後の「引き抜き屋の帰還」です。帰還とありますからには小穂が父の企業である「フォーン」に凱旋するストーリーかと想像できますが、話はそう簡単なものではありませんでした。ただ、苦境に陥ったフォーンを救うために、小穂は奮闘します。そして、(ネタバレ注意)読者のあまり予想しないハッピーエンドを迎えますので、読了した人はそれなりに満足できるのではないかと思います。
多くの人は帰還=小穂が社長にでもなってフォーンを立て直すのでは、という予想をしがちですが、これだとお話が完結してしまいますので、

むしろこうしなかった雫井センセーの意図がどこにあるのか、

ちょっと気になりますね。もしかしたら続編あるのかな。せっかくですからシリーズ化してくれないかなとも思います。





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2018年06月08日

書評903 樋口有介「平凡な革命家の食卓」

こんにちは、曹源寺です。

こんなニュースを観たもんだから。
防衛省の研究助成継続を辞退、北海道大学が大学で初(6/8 TBSニューズ)
防衛省が大学などの研究を助成する制度について、軍事研究につながりかねないとする批判が出るなか、北海道大学がこれまで受けていた助成の継続を辞退していたことがわかりました。大学が助成を取り下げたのは初めてです。
防衛省が防衛装備品につながる研究を助成する制度は3年前に始まり、大学に対する国の交付金が減る傾向にある一方で、予算は毎年増額され、昨年度は110億円に達しています。これまでに9つの大学の研究が選ばれていますが、このうち、北海道大学が、「船が受ける水の抵抗を小さくする研究」についての今年度の助成金の継続を辞退していたことがわかりました。
制度をめぐっては、軍事研究につながりかねないとする批判が相次ぎ、去年、日本学術会議が制度への応募に否定的な声明を出していましたが、助成を受けていた大学が取り下げたのはこれが初めてです。北海道大学は理由について、「学術会議の声明を尊重した」としています。


大学が軍事研究を行わないとする動きがなんだか加速しています。今年の3月に京都大学が軍事研究を行わないと発表したのが記憶に新しいところではありますが、北海道大学でも似たような動きがみられたわけです。北海道大学の場合は、明確に軍事研究を行わないと発表したわけではありませんが。

では問いますが、学術研究と軍事研究の境界線ってどこよ?

何が学術研究で何が軍事研究なのか。こんなの明確な境界線があるわけないんです。明確な定義づけができないものを規則にすることほど怖ろしいことはありません。それはつまり、極めて属人的な判断が、主観的な意見が、思いっきり入り込む余地があるということです。
となると、行きつく先はもう見えています。
「これは軍事研究につながるからダメだ!」
「この学術研究はわかるが、この部分は軍事転用が可能だから研究してはダメだ!」
軍事にヒステリックな反応を示す一部の方々がこうしたシュプレヒコールを投げてくるのは容易に想像できますね。上記の記事にしたって、「船が受ける水の抵抗を小さくする研究」って思いっきり民間転用が見込まれる分野ですよね。これをもって「軍艦に技術転用されるから大学では研究してはいけない」とか言われたら、エンジニアは何を研究したら良いんですかね。

そもそもインターネットだってGPSや人工衛星だって、軍事技術の応用で発展してきたものであります。米国にはNASAという大きな組織が、軍事だろうが民事だろうが関係なくテクノロジーとして実現にこぎつけようとしている研究分野をたくさん持っています。だからこそ、世界の頭脳が集結するのであるし、成果を上げているのであります。
日本の大学ではそのうち、
「原爆の製造技術につながるから原子力の研究は行わない」
「大陸間弾道ミサイルの技術につながるからロケットの研究は行わない」
「部隊の統制・コントロール論につながるから企業の組織の在り方に関する研究は行わない」
「軍隊の糧食の保存技術につながるから食べ物の保存に関する研究は行わない」

とか言い出しそうですね。バカか。
日本大学の事件を持ち出すまでもなく、大学の劣化というものがものすごい勢いで進んでいるのではないかと思う今日この頃です。


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内容(祥伝社HPより)
地味な市議の死。
外傷や嘔吐(おうと)物は一切なし。
医師の診断も心不全。
なんとか殺人に格上げできないものか。
本庁への栄転を目論(もくろ)む卯月枝衣子(うづきえいこ)警部補29歳。
彼女の出来心が、“事件性なし”の孕(はら)む闇を暴く!?
軽妙に、見事に、人間の業(ごう)の深さに迫る
新感覚ミステリー!
「ねえ課長、ついでに一週間だけ、わたしに調べさせてもらえませんか」
東京・国分寺(こくぶんじ)市の閑静(かんせい)な住宅街で、初老の男が死んだ。かつては存在感の薄い中学教師で、先の選挙で急遽(きゅうきょ)担(かつ)がれただけの市会議員。キャッチフレーズは「国分寺から革命を!」。現場に不審な点はなく、しいて言えば座布団(ざぶとん)がきれいに並びすぎていたくらい。医師の診断も急性心不全だった。所轄(しょかつ)での退屈な日々に飽(あ)きていた卯月枝衣子警部補は、あわよくば本庁捜査一課へ栄転の足がかりにと、昼行灯(ひるあんどん)の刑事課長を言いくるめ、強引に単独捜査に乗り出すが……。


曹源寺評価★★★★★
久しぶりに樋口有介センセーの作品を読みました。
登場人物のなかに一人くらい、ひねくれた人がいて、その人の会話のテンポがとても新鮮だわ、という感じの作品が樋口センセーの持ち味なのではないかと思っています。伊坂幸太郎センセーのそれはかなりぶっ飛んでいますが、樋口センセーはそれをだいぶマイルドにした感じと言って良いでしょうか。
今回は、国分寺署の女刑事である卯月枝衣子警部補が、自分の出世(本庁捜査一課希望)のために市会議員の不審死を事件に仕立て上げようとしたところ、なんだかおかしなことになって、、、
という展開です。
といってもドタバタ劇ではなくて、それでいて警察小説を前面に押し出したわけでもなくて、なんだかちょっと不思議な感じがしなくもないです。おそらくそれは、

作品全体に流れるほのぼの感がそうさせている

のかもしれません。
基本的に樋口センセーの作品は会話のテンポが良くて軽いんですが、実は事件の真相はエグい、ものすごくエグくて、そこに横たわっていたのはとてつもなく深い闇だった、みたいな作品がありますね。本書もその類いでありましょうか、ラストのモヤモヤ感はそれなりに読者の心を抉っていきますね。
軽いけれど、深い。さらっと読めるけど、読み終わってから尾を引いている。そんな樋口ワールドがとても好きです。





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2018年06月05日

書評902 大石直紀「ギロチンハウス:課長 榊江梨子の逆襲」

こんにちは、曹源寺です。

以前にとりあげた放送法改正の続き。
放送法4条撤廃見送り=規制改革会議が答申(6/4時事通信)
政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)は4日、首相官邸で会合を開き、放送制度改革を柱とする答申を安倍晋三首相に提出した。放送番組(コンテンツ)の海外展開を促進する方針を打ち出す一方、番組の政治的公平性を定めた放送法4条の撤廃は見送った。
 首相は会合で、放送制度改革に関し、「通信と放送の枠を超えたビジネスモデルの構築など多くの具体的な提言をいただいた。引き続き、総務省を中心に未来を見据えた放送のあるべき姿について、総合的に検討を進めてもらいたい」と述べた。
 放送法4条をめぐっては、政府内で3月、インターネット事業者の放送参入をしやすくすることを名目に撤廃案が浮上。しかし、メディアをけん制する政権の思惑があるとの見方が広がり、放送業界は強く反発。政府・与党内からも懸念の声が出ていたため、今回は盛り込まれなかった。
 答申には、使われなくなった周波数を割り当てて、放送事業へ他業態からの新規参入を促すことも盛り込んだ。NHKのテレビ放送とインターネットの「常時同時配信」の是非については、早期に結論を得るよう求めた。


放送法第4条の撤廃は業界や与党内からの反発があって断念したとのことです。まあ、総務相が野田聖子ですからこうなることは想定内ですね。
そのかわり、新規参入を促すことについては答申に盛り込まれました。地上波であっても新たな割り当てが期待されるのであれば歓迎する声は大きいのかもしれません。

その放送法第4条については、かつて国連の方から来た人が撤廃を求めてきたという事実があり、この法令を理由に「日本は報道の自由が阻害されている」と懸念を表明しているというのも事実であります。

今回の答申にしても、すでに政治的公平性など有名無実になっているテレビ報道に、視聴者が今さら何も求めていないというのに、「自分たちは公平公正に報道しております」と言いたいがためだけにこの条文を残してほしいと言っているに過ぎないのは明白です。

「報道の自由度ランキング」において日本の順位が下がった時、最も大きな理由づけとされなければならない放送法第4条について、マスゴミは一切これを取り上げません。そのくせ、「与党ガー、アベガー」とぬかしやがるのはそれこそ放送法第4条に違反しているはずですが 笑

新規参入について触れたのであれば、「電波オークションの導入」と「クロスオーナーシップの廃止」も盛り込んでほしかったですが、自民党政権ではできないのでしょうか。それとも自公連立政権だからできないのでしょうか。この件については真剣に取り組んでもらえる政党が必要ではないかとつくづく思います。


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内容(小学館HPより)
リストラ社員が会社の闇を暴く痛快ミステリ
精密機器会社・京都クルミ製作所の「セカンドキャリア戦略室」。その実態はリストラ小屋、通称「ギロチンハウス」。突然そこに異動となった経営企画部第二課課長・榊江梨子・42歳、営業一課課長代理・下島裕二・52歳、総務部五係係長・勝見亮・30歳の3人。納得がいかない3人がその直後に起こったある事件を調べていくと、徐々に会社の闇が明らかに。社内不倫、不正経理、派閥争い、盗聴、裏切り・・・。崖っぷち社員たちの人生をかけた闘いが始まった。第69回日本推理作家協会賞短編部門受賞後、著者が初めて書き下ろした痛快リベンジ・ミステリ小説。


曹源寺評価★★★★★
大石センセーは小説よりもドラマの方面で活躍されている御仁ですね。「深夜食堂」や「刑事ゆがみ」などは人気作品となりました。
そんな大石センセーの作品は初読であります。
本書は京都の企業を舞台に、リストラ要員として選ばれた3人が会社内の闇を暴いてリベンジを果たすという小説です。ミステリ仕立てですが、

軽妙軽快、サクサク読めるテンポの良さが光ります。

自分はわずか1時間で読了してしまいました。
リストラ部屋に異動となった3人は、いずれもなぜ自分が異動になったのか分からぬまま過ごすが、野心あふれる榊江梨子は即行動に移る。年上好みの勝見と優柔不断な下島を協力者にして、社内の内部事情を調べていくと、、、
キャラクターの書き込みは最低限、会話のテンポも軽快ですのでストーリー展開がものすごく速いです。(以下、ネタバレあり)
一応、サブストーリーらしきものはありますが、それもおまけ程度のものですし、なんだかなくても良いんじゃないかと思うレベルですね。すぐれた作品の場合、サブストーリーはメインストーリーと交錯することがあります。それも重要な場面で。しかし本書ではそれがはっきりしないし必要だったとも思えない。このへんは非常にもったいないですね。
ただ、メインストーリーは普通に面白いです。あっさり楽しく読みたい人向けと言って良いですね。





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2018年06月01日

書評901 麻生幾「秘録・公安調査庁 アンダーカバー」

こんにちは、曹源寺です。

日経の記事で、こういうやつがありました。

誰も得しなかった ビール官製値上げ1年の無力感(6/1日経新聞)
酒税法改正で酒の安売り規制が強化され、6月1日で1年を迎える。政府はスーパーや量販店などで採算を無視して安く売られるビール系飲料の価格を引き上げ、中小の酒販店を保護するのが目的だった。だが、実際に恩恵を実感する中小酒販店は少なく、規制の影響でビール離れの加速を招いた。今回の官製値上げで得をした者を見つけるのは難しい。(以下は有料につき)

大規模店舗が原価割れ覚悟で安売りを仕掛けるから規制しよう、ということで酒税法が改正されたのが2017年6月1日で、あれから1年が経過しましたが、この法改正で中小店舗の経営が改善されたかというと全然ダメでした。という記事です。
そもそもビール離れが激しくて、発泡酒、第3のビールとメーカーの改善努力が進みましたが、消費者はストロングゼロみたいな安くて簡単に酔える商品にシフトしてしまったわけです。確かに、自分も90円くらいの缶チューハイの消費量が増えたように思います。ビール好きなんですが、糖質制限中の晩御飯のお供にはちょっときついですね。

良かれと思って法改正したのに、何の効力もなかったという皮肉な結果になるのは珍しいことではありませんが、最も考えなければならないのはこうしたデフレ対策ではなくて、国民の実質所得を上げていくプランでありましょう。安売りを規制するのが無駄だとは言いたくありませんし、むしろ値上げして賃上げもして緩やかなインフレ状態を作り出してほしいなあと常に思っています。
ただ、所得が上がらないなかで税金だけは搾り取ろうとしている財務省が許せないですね。そもそも論になりますが、酒は酒税と消費税の二重課税になっていますから悪政の象徴と言っても良いくらいの悪手です。同じことはガソリンにも言えるでしょう。揮発油税に消費税。なんで税金に税金を払わなければならんのよ。
そういえば、先日はトヨタ自動車の豊田社長がこんなことを発信していましたね。

豊田・自工会会長、自動車税「ユーザーは高い税金」(5/18日経新聞)
日本自動車工業会の豊田章男会長は18日、報道各社のインタビューに応じた。2019年秋の消費税率の引き上げに伴い、自動車税制も見直される予定だが「日本の車のユーザーは世界(の主要国)で一番高い税金を払っている」と述べ、政府に国際水準への引き下げを働き掛ける。また日本のものづくりの競争力の維持には、国内生産で1000万台が重要との考えも示した。
自工会によると、自動車の関連税は取得、保有、利用で9種類と多い。豊田会長は「為替がどうなるか分からない中で、(保有コストの引き下げは)経営を支える糧になる」と説明した。一方、自動車税の一部は地方自治体の収入で「地方財源も重要だ。車業界と、地方財源の対立軸で議論されるのは残念」と述べ、税制の抜本的な見直しを求めていくとみられる。
(以下、略)

自家用車は確かに保有コストがバカ高いです。この税制にメスを入れてくれるなら大歓迎です。自動車税、自動車取得税、自動車重量税、ってなんやねんという感想しかないですもんね。横幅1.7メートルを境にしたナンバー制度も一体いつまでやるん?というくらい昔の産物ですが、役人どもはこうした現実の変化には目をつむりっぱなしです。

税金や補助金、分配金などの在り方によってマーケットが歪んでいくという事例はビールや自動車だけではなくて、ホクレンの買い取り価格のせいで慢性的に供給不足のバターとか、駐輪場が駆逐されて壊滅状態のバイクとか、iPS細胞研究よりもどこぞの私大社会学部に多く回っている科研費とか、ものすごくたくさんありそうです。時代の移り変わりについていけてなくて、あちこちで歪んでいる市場。これらを適正で公正な市場に戻していくためには、何よりまずお金の配分にメスを入れるべきであるというのは論を待たないでしょう。

ここまで書いていたらなんだか、中島みゆきの「世情」を思い出してしまいました(歌詞を書くとJASRACが飛んできそうなので割愛)。


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内容(幻冬舎HPより)
「これは…戦争だ! 」 「裏の外交」に暗躍する極秘組織・公安調査庁を舞台に 『ZERO』の麻生幾が放つ、ノンストップ諜報小説! 公安調査庁の分析官・芳野綾は、現場調査官である沼田から、武装した大量の中国漁船が尖閣諸島へ向けて4日後に一斉出港、 6日後の早朝には上陸して実効支配するという報告を受ける。しかし関連省庁はいずれもその情報を否定し、 沼田に情報提供した協力者にしてもダブル(二重スパイ)の疑惑が掛けられる。 綾の必死の分析を嗤うかのように、巧みに仕掛けられた壮大な陰謀がカウントダウンを始めた!


曹源寺評価★★★★★
インテリジェンス小説においては比類なきリアルシミュレーションで世間の話題を集める麻生幾センセーであります。15年以上前に上梓された「ZERO」は今も語り草となっていて、本書の紹介文でも「ZEROの麻生幾」という呼称が使われているくらいです笑
本書では公安調査庁の分析官を主人公にして、協力者からの情報を基に隣国(敵国)の動きを予測し、次善の策を用意するインテリジェンスの世界をリアルに描いてくれています。
しかも、本書では断片的な情報をかき集めながら、その隣国が企図するところはどこなのか?というミステリチックな動きがあり、なかなかに読ませてくれます。
たとえば、どこかの港で大量の食糧を積み始めた漁船が群れを成していたら。たとえば、老朽化し長期間係留していた原子力潜水艦が実はダミーだったとしたら。たとえば、隣国の軍が調達した食料品に大量の携行食が混ざっていたら。分析官はこうしたちっぽけで断片的な情報から事態を予測するわけですが、もしもその分析がまったくの想像であったり、あるいは協力者からの情報がでたらめだったりしたら、その予測もまたでたらめであるわけです。協力者がダブル、つまり二重スパイである可能性も否定できないとしたら、分析官としての力量を問われることにもなります。そういう意味では、彼ら(本書では彼女ら)は命がけの分析と予測を行っていると言っても過言ではないと思います。ましてや、その情報を基に防衛出動(!)の発令の是非を問うような場面にでもなればなおさらでしょう。本書はこうしたヒリヒリの現場を描いてくれています。
麻生幾センセーの著作を読むたびに思うのは、日本においても強力な情報機関の設置が望まれることと、スパイ防止法の早急な制定が必要であろうということです。本書は公安調査庁という秘密のベールに包まれている組織が主体ですが、内閣情報調査室や警察庁の警備局公安総務課とその下部組織、それに自衛隊内部にもある(のかな)調査部門などをひとつにして独立した権限を持たせるようにするべきなのかもしれません。
いずれにしても、

インテリジェンスの専門家をこれだけ緻密に描けるのは麻生センセーしかいない

のは間違いないところです。やや専門用語が飛び交い過ぎるきらいはありますが、この方が麻生センセーらしくていいと割り切って読むことが肝要かもしれません。





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2018年05月29日

書評900 雫井脩介「引き抜き屋 (1)鹿子小穂の冒険」

こんにちは、曹源寺です。

熊本市内で包丁を持った男が暴れ、警察官が駆け付けたところ男は警察官にも切りつけたため、警察官はやむを得ず発砲、男は病院に運ばれたが死亡したという事件がありました。

ニュースのタイトルがこれです。
馬乗りで何回も切りつけ…警官の発砲で死亡(日テレNEWS5/29)

時事通信はこのニュースにこんなタイトルをつけてきました。
警察官発砲、死亡はまれ=暴行陵虐致死などで付審判も―熊本発砲事件(5/28時事通信)

熊本発砲事件?
発砲は事件じゃねえだろうよ。なんだか非常に悪意を感じるタイトルですね。

上記のはYahoo!ニュースのページですが、29日の夕方には時事通信のホームページだけしれっと直していました。
警察官発砲、死亡はまれ=暴行陵虐致死などで付審判も

こういう印象操作をするのは本当に、本当にやめてほしいです。警察官は馬乗りになってきた相手に顔を刺されています。犯人は明確に殺意がありました。下から拳銃をぶっ放しても完全に正当防衛ですよこれ。
そもそも、警察官の拳銃使用について日本は厳しすぎます。こんな時でも県警は「拳銃の使用は適正だった」みたいな発表をしなくてはならないわけですが、それもこれもマスゴミがうるさいからです。警察官の拳銃使用を事件にするなっ!と言いたいです。
日本という国は犯罪者に優しすぎます。諸外国ではホールドアップさせて少しでも動いたら警察官に拳銃で撃たれます。反撃を絶対に許さないからです。いくら死刑が廃止されても犯罪現場では死刑が行われていると言っても良いくらいの状況ですから、死刑のある日本は拳銃を極力使用しない警察官の努力と犠牲の上に成り立っていると言っても過言ではないでしょう。どちらが良いのか?それは国民が決めることですね。大いに議論しましょう。


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内容(PHP研究所HPより)
社長交替の背後にヘッドハンターあり。ビジネス界の「かけひき」や「裏切り」をテーマに一人の女性の奮闘と成長を描くスリリングな物語。
会社を潰すのはヘッドハンターか!?
父が創業したアウトドア用品メーカーに勤める鹿子小穂(かのこ・さほ)は、創業者一族ということもあり、若くして本部長、取締役となった。しかし父がヘッドハンターを介して招聘した大槻(おおつき)と意見が合わず、取締役会での評決を機に、会社を追い出されてしまう。そんな小穂を拾ったのが、奇しくもヘッドハンティング会社の経営者の並木(なみき)で……。新米ヘッドハンターとして新たな一歩を踏み出した小穂は、プロ経営者らに接触し、彼らに次の就職先を斡旋する仕事のなかで、経営とは、仕事とは何か、そして人情の機微を学んでいく――。
かけひき、裏切り、騙し合い――。
『犯人に告ぐ』『検察側の罪人』の著者、渾身の新境地。


曹源寺評価★★★★★
どんどん遅筆になっていく雫井センセーですが、久しぶりにヒット作の予感です。
主人公の鹿子小穂はアウトドアブランド「フォーン」の取締役。父が創業したメーカーに就職したのは兄の突然の死去によるものだが、アパレル部門で力を発揮し周囲から認められる存在になっていた。「フォーン」は後発だが優れたデザイン力で高級路線へのシフトに成功していた。だが、外資系の後塵を拝していたことからM&Aで事業拡大を進め、そのための人材として常務取締役に総合商社出身の大槻を招へいしていた。小穂は大槻と衝突し、結果的に社長から会社を追われることとなる。小穂を救ったのはヘッドハンターの並木だった。
この(1)はヘッドハンターとしての小穂の活躍を描く中編3作で構成されていて、企業小説でありながらヒューマンドラマの色彩を強くしています。ヘッドハンターのお仕事をしっかりと描写していて、彼女たちの仕事ぶりがとても面白く「企業と人をつなぐ仕事」のやりがいと楽しさ、そして苦しさを見事に描き切っています。ヘッドハンターは多くの場合、マネジャーといってもボードに名を連ねる人、すなわち経営陣の候補を引っ張ってくるのが仕事ですので、まずはその企業経営ができる人たちと知己を得る必要があるわけです。小穂を引っ張った並木の場合は、エグゼクティブ向けの経営情報誌の編集長という仕事に就いていた人物という背景があったわけで、小穂は30過ぎにして取締役ではあったものの、横のつながりとしてはまだまだ希薄でありました。見習い的な仕事から始まり、徐々にヘッドハンターとしての面白さ、仕事の醍醐味を覚えていく小穂の成長が描かれていて面白いです。
企業と人のお話といえば、垣根涼介センセーの「俺たちに明日はない」シリーズがありました。あれはリストラ請負人の仕事でしたが、本書は「切る」だけでなく「生かす」仕事でもあるので、本書を読んでヘッドハンターになりたいと思う人は少なくないのではと思います。
そして、企業小説としてはアウトドアメーカーを題材にしたところも興味深いですね。世界的には「コールマン」や「L.L.Bean」などがありますが、日本でも「SNOWPEAK」みたいに高級路線を走るメーカーがありますので、「フォーン」は「SNOWPEAK」をモチーフにしたのかなとも思います。
そして、本書は(2)へと続くわけですが、そちらのタイトルが「鹿子小穂の帰還」となっているので

否が応にも期待が高まりますね。






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2018年05月25日

書評899 中山七里「悪徳の輪舞曲(ロンド)」

こんにちは、曹源寺です。

こんなニュースが出ていましたので。

23区内大学定員抑制 法律成立(5/25 NHK首都圏NEWS WEB)
東京一極集中を是正しようと、東京23区内にある大学は原則として10年間、定員増を認めないことなどを盛り込んだ法律が、参議院本会議で可決され、成立しました。
東京一極集中を是正しようと地方大学の振興や地方での若者の雇用創出を図ることを目的とする法律は、25日の参議院本会議で、自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決され、成立しました。
法律では、東京23区内にある国立、公立、私立の大学では原則として10年間、定員増を認めないとしています。
ただ、高度な専門性を持つ人材の育成を目的に、大学院では定員増を認めるとしているほか、留学生や社会人などは対象から外しています。
一方で、地域活性化のため、地方の大学、自治体、企業の3者が協力して行う産業振興や人材育成の事業については、有識者が評価した上で、国が交付金を重点的に支給するとしています。
政府は、今後、交付金を支給する事業の具体的な選定方法を検討していくことにしています。


定員抑制については昨年の夏あたりに議論が噴出していたのですが、今年の2月に閣議決定され、本日参議院で可決、成立したという経緯です。
大学に限らずあらゆる分野において首都圏というか東京一極集中が進んでいるのは間違いなくて、もう通勤時間帯のラッシュは限界にきているのは東京にお住まいの方なら当たり前なのですが、だからといって昭和のように「国土の均衡ある発展」はもう望めないというのもこれまた明らかであります。
青山学院にせよ法政にせよ、なぜ大学は東京回帰したのか、という根本的な問いに対して、明確な答えが出されているにもかかわらずこういう訳の分からん法律が成立しているのは全く腑に落ちませんが、こうなると「地方にせっかく作ったFラン大学が潰れちゃうから」というまことしやかな憶測もあながち間違いではないのではと勘繰りたくもなります。

本ブログでは何度も書いていますが、「Fラン大学は潰せ」という主張に変わりはありません。まったくもって不要です。文科省とマスゴミの天下り先にかならず、数多くのモラトリアム人間を生み出すだけの施設です。国際教養大学のように、地方でも成功している大学はありますのでこうしたゾンビ延命のための政策はかつての統制法を彷彿とさせるだけであり、長期的な展望からすればデメリットの方が大きいと思われます。
東京一極集中の解消は大学の定員数の凍結ではなくて、テレワークの推進とか法人税率の低減とか別の施策があるはずですので、そちらで議論すればよろしい。大学の在り方はもっとトータルに考えるべきでしょう。
野党はこういう時に存在感を発揮しろよ、、、ホント使えねえわ。


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内容(講談社HPより)
悪徳は輪舞曲のように同じ旋律を繰り返すのか――
14歳で殺人を犯した悪辣弁護士・御子柴礼司を妹・梓が30年ぶりに訪れ、母・郁美の弁護を依頼する。郁美は、再婚した夫を自殺に見せかけて殺害した容疑で逮捕されたという。接見した御子柴に対し、郁美は容疑を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は、肉親とどう向き合うのか、そして母も殺人者なのか?


曹源寺評価★★★★★
贖罪の奏鳴曲』『追憶の夜想曲』『恩讐の鎮魂曲』と続く、御子柴礼司シリーズの最新刊です。御子柴自身は中山センセーの他の著作にもチョコチョコと出ていますので、「あれ、まだ4弾目?」という疑問も浮かんできてしまいますが、中山センセーのシリーズものの中ではおそらく断トツ人気ではないかと思います。元「死体配達人」の異名を取る少年犯罪者にして、医療少年鑑別所時代に司法試験を突破し弁護士になった御子柴礼司という、超異色なキャラクターが難事件の弁護で奇跡のどんでん返しを連発するストーリーですが、今回は実母である郁美の弁護をすることになります。
郁美が逮捕されたのは再婚相手を自殺に見せかけて殺した殺人の容疑です。実母とはいえ、事件後29年を経て再開した親子に普通の愛情などあるはずもなく、御子柴にしても他人以上に理解不能な人物に映っている郁美。本人は「殺っていない」と主張するが、実際のところはどうだったのか。。。
今回はトリッキーではなく、大どんでん返しでもなく、ある程度先の読める展開ではあります。しかし、これまでの御子柴とは異なる、冷徹一辺倒ではないところ、多少なりとも人間っぽさを残しているところ、捨てた(あるいは捨てられた)家族という名の絆が垣間見えるところ、そして過去の己の「死体配達人」としての罪に対して向き合わねばならなくなっているところ、などが突きつけられていくわけです。
しかしそれは御子柴がダーティーヒーローであるがゆえの宿命であり、

もしかしたらですが中山センセーの目論見であるのかもしれないですね。

前作でも御子柴の矯正教官であった恩師の弁護に敗れ、御子柴自身が(いくら捨てたとはいえ)己の過去に向き合わざるを得ない状況が描写されていましたが、本作においてもその傾向がより一層強くなってきました。本作シリーズの趣旨が、数々の事件を通じて御子柴が人間の感情を取り戻していく、というストーリーだとしたら、それはそれですんげえシナリオだと言わざるを得ません。
死体配達人事件はもちろん架空のものですが、リアルでは神戸児童殺傷事件を彷彿とさせるわけでして、ダーティーヒーローとはいえ主人公にまったく感情移入できないというのも本シリーズの特徴であります。そんな主人公にして被害者遺族のみならず、加害者親族への思いとか配慮といったものが本シリーズではあまり表面に出てこなかったのですが、ここへきてその辺のセンシティブな側面にもテーマが及んできているのは、いよいよシリーズの転機に近づいているのではないかとも思います。





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2018年05月22日

書評898 真保裕一「オリンピックへ行こう!」

こんにちは、曹源寺です。

日大アメフト部の悪質タックル事件(という名称が増えてきましたね)は大学側の誠意なき対応が尾を引いて、今週もまた炎上中でありました。
本日(5/22)は加害者の選手が記者会見を開き、内田(前)監督と井上奨コーチの実名が飛び出て次なるターゲット(というか真の黒幕)が浮かびあがったわけですが、ここまでのあまりにも酷い日大広報の対応はもしかしたら彼らを更迭させたいがために仕組んだのではないかと、逆に疑ってしまうレベルでありました。
日大広報
「うーん、内田かぁ。こんな人物が常務理事などやっていては、ましてや次の理事長候補とまで言われているようでは、今後の日大の名に傷がつく。だからこの不祥事を機にとっとと追放してしまおう!そのためにはまず、広報がコイツをかばえばいいんだな。そんで、真実をは逆のことを言わせてまずは逃げよう。どうせこれだけネットが浸透していたら、いずれ真実は明らかになるに違いない。そうなった時にコイツは間違いなく窮地に立たされる。よし、この戦法で行こう!」

もし広報がこんなことを考えて行動していたのだとしたら、危機管理としては逆に及第点ではないかとも思います。一時的に日大の名は落ちるでしょうが、なんというか、「肉を切らせて骨を断つ」くらいの戦法でありましょう。危機管理の題材としては非常に面白いものを残してくれそうです。つーか、ミステリとして一本書けそうなネタですな。

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内容(講談社HPより)
大学卓球チーム内の軋轢や友情、競歩ランナーの孤独、サッカー選手の挫折と希望、各種目で日本代表を目指すアスリートを描く応援小説


曹源寺評価★★★★★
真保裕一センセーの「行こう」シリーズも第4弾に突入であります。勢いがあって良いですなー。
本書は「卓球」「競歩」「ブラインドサッカー」の3作品が収録されています。タイトルはそのまんま、内容もズバリオリンピックを目指す卓球と競歩とブラインドサッカーの選手の物語です。
本書の半分を占める「卓球」は、オリンピックを目指す大学生、成元雄貴を主人公にして、全日本選手権や大学対抗戦などにおけるヒリヒリしたゲームシーンを中心にその心理戦や仲間との友情などを描いています。しかしながら、主人公の実力はオリンピックには程遠く、日本代表どころか強化選手にもなれていない状況ですので、ちょっと拍子抜けです。ただ、卓球の試合のシーン、ラリーの応酬のシーンはまるで実写をスローで観ているかのような息詰まる描写です。これはもう、さすがのベテラン作家としか言いようのないうまさだと思います。
「競歩」は実業団チームに所属するベテランランナー白岡拓馬の人生を賭けた戦いをオリンピックへの切符を賭けた50キロ競歩のシーンを中心に描いています。記録アップのためなら義理も人情もかなぐり捨ててきた男の、プライドをかけた戦いです。あぁ、そういえばこういう人物って真保センセーの得意技ではないですか。人生の様々な選択場面において、周囲の期待やしがらみ、場合によっては愛情さえも裏切ってきた男。一途といえば一途だが、不器用でバカともいえるし、回り回って自業自得な部分も露呈している、そんな男を書かせたら真保センセーの右に出る者はいないでしょう。ラストは煮え切らないですが、なんだか

真保センセーの真骨頂を見た思い

がしました。
最後の「ブラインドサッカー」は元Jリーガーの山森幹雄が知人の秋山圭一郎の活動に巻き込まれてブラインドサッカーのチームにコーチとして世話を焼くようになるストーリーです。ページ数が少なくて、こちらもちょっと煮え切らないですね。明日のパラリンピックを目指すのはいいのですが、本書の他の2作品と比較してしまうと内容が浅すぎてもったいないイメージです。もっと長編っぽく書いたら面白かったのかもしれないと思うと残念でなりません。
個人的にはヒリヒリした人間関係がとても切れ味鋭い、真保センセーらしさ全開の「競歩」が好きです。





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2018年05月18日

書評897 矢月秀作「刑事学校」

こんにちは、曹源寺です。

こういう法律が成立したのですが。

候補者男女均等法が成立 女性議員増加、政党に努力促す(5/16朝日新聞)
選挙で男女の候補者数をできる限り「均等」にするよう政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が16日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。女性の議員を増やすことを促す日本で初めての法律だ。
この法では、政策の立案や決定に多様な国民の意見を的確に反映するため、国会と地方議会の選挙で「男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指す」と規定。政党に対し、女性候補を増やす努力を求める。超党派で2015年に立ち上げた議員連盟(会長=中川正春・元文部科学相)が主導した。
法に合わせ、総務省に対して地方議会で女性を含め幅広い層が議員として参画しやすい環境整備について検討することや、内閣府に対して女性の政治参画支援についての情報提供をすることなどを求める決議もした。


世界各国を見渡せば、議員の数を男女半々にしなければならないとかわけのわからん法律が制定されている国もありますので、少しは世界標準(笑)に近づいたのかもしれないですが、よく考えてみるとこんな法律に意味はあるのだろうかと思ってしまうのは自分だけではないはずです。

そもそもこの法律は努力目標であって義務ではないのであります。つまり、パフォーマンスだけの代物です。
「○○党はこの法律に基づいて候補者の男女比率を1対1にしました。すごいでしょ!だから○○党に投票して!」と言われたらみなさんはどう思いますか?
自分は逆に引いてしまいそうです。

国会議員とは国民の代表です。その代表とするべき物差しは1にも2にも「能力」でしょう。「実務遂行能力」かもしれないし、「外交能力」「法律策定能力」かもしれません。でもそれらに性別は関係ないはずです。能力8の男と能力9の女だったら、これは普通に能力9の女性を選びますよね。その逆も然りです。しかしこの法律では、候補者を10名選出しなければならない時に能力8の男が6人いたら、そのうち一人はもしかしたら能力7の女にその立候補席を譲らなければいけないのかもしれないわけですよ。
こういうのを世間では悪平等と言います。

自民党の小野田紀美参議院議員がツイッターで正論を吐きまくっていますので、気になる人はぜひお読みいただきたいと思います。「国民の生命と財産を守るのに男も女もない」という書き込みにはまったくもってその通り!と思いました。


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内容(文藝春秋HPより)
文春文庫初登場! 新感覚警察アクション
大分県警刑事研修所・通称刑事学校の教官である畑中圭介が生徒たちと共にカジノリゾート構想の闇に立ち向かう。痛快警察アクション。


曹源寺評価★★★★★
タイトルと表紙に惹かれて読みました。久しぶりの矢月センセーでした。
舞台は大分県警、畑中圭介警部補が刑事研修所の教官として新人刑事を教育しながら実践、すなわちOJTとしても捜査に携わらせて部下の成長を促していくというストーリーです。
とはいえ、読み進めていくとタイトル、紹介文との相違にだんだん違和感を覚えていきます。
事件は地元のチンピラが射殺体で発見される殺人事件の捜査ですが、被害者と主人公の畑中は幼馴染であり、捜査の中心を被害者の途切れた経歴を追うことに据えていくものの、事件関係者として挙がってくるのは中学高校時代の同級生ですので、必然的に畑中が捜査を進めていくことになります。そして、中盤から事件はさらに動き出していくわけですが、

これ、刑事学校が全然関係なくね?

と思うくらい生徒である新人刑事が機能していないんですよ。前半にきちんとキャラクター設定しておいて、中盤は全然出てこないという不思議な展開。(ネタバレ)彼らの活躍は全体から見れば微々たるもので、もっと登場させても良かったんじゃねぇのこれ?と思わざるを得ません。
タイトルとキャラクターとストーリーがこれほどまでにずれている作品は珍しいのではないかと思うレベルです。新人刑事を活躍させるための展開なんていくらでも思いつきそうですが、どうなんでしょう。たとえば、畑中がピンチに陥って、それを生徒たちが協力して救い出すとか、暴走した新人刑事がいて、そいつの窮地をみんなで助け合って乗り切るとか、なんかできそうな気がするんですが。
ただ、ストーリーのテンポは良くてすらすら読み進めることができますので、暇つぶしにはもってこいの作品ではあります。





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2018年05月15日

書評896 深木章子「消えた断章」

こんにちは、曹源寺です。

「権力は腐敗する」という名言は英国の歴史家ジョン・アクトンが残したものですが、これは古今東西普遍の原理なのでありましょう。
ロッキード事件や金屏風事件(リクルート事件はビミョー)など、自民党の不祥事が昭和の終わりに続いたのは時代の必然だったのかもしれません。いまは自民党ではなくて第四の権力であるマスゴミのほうが腐敗しているように思います。野党やマスゴミが1年以上かけてモリカケを追及してきたにもかかわらず、具体的な証拠が一切出てこないこの状況を考えると、安倍首相というのは逆に相当クリーンなのではないかとも思えます。
そして、ネットが新たな権力となり、マスゴミの腐敗を暴いているような状況ですね。

マスゴミだけでなく、長年続いた権力という意味ではスポーツの任意団体も然りでしょうか。日本相撲協会は言うに及ばず、バスケットボール(分裂)やレスリング(パワハラ)あたりはごく最近になって危機管理や企業統治が機能していないことが暴露されました。少し前にはスケート連盟も叩かれていましたね。
プロ野球は老害が跋扈していて巨人軍ありきの論理がいまだにまかり通っているならヤバイでしょう。
まともというか頑張っているのはサッカー、テニス、バレーボール、卓球、ラグビーあたりでしょうか。サッカーはマイナースポーツをここまでメジャーに押し上げたのですからその功績は認められるべきでしょう。これから腐敗しなければの話ですが。ラグビーは一時期日本代表が盛り上がったのに、その後の戦略が雑だったから萎んでしまいましたね。もしかしたら無能なのかもしれません。

そんななかで、アメフトのタックル事件が話題になっていますね。日大アメフト部が相手QB潰しに走り、おそらくは監督の指示であろうと思われるこの行為も当の監督が逃げ回っている状況ですから推して知るべしです。あんなラフプレーを容認していたら、アメフト全体のモラルが問われるわけですから、ここで自浄作用を発揮できるか否かで協会(連盟?)の健全さが周知されるということだと思います。
でも、このタックル事件が広まったのはツイッターのおかげなんですよね。ツイッター、恐るべし。


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内容(光文社HPより)
君原樹来は推理作家を目指す法学部の4年生。あるとき、同じ大学に通う妹・麻亜知の友人、葛木夕夏があるトラブルを抱えているといい、元C県警捜査一課の刑事であった樹来の祖父に相談しに行くことに。
夕夏は10年前、実の叔父に誘拐されたことがあった。ただ、記憶を失った時間があっただけで被害はなく、当時は身内のトラブルと片づけられたのだが、最近になって警視庁が再捜査に乗り出しているという。同じ10年前、同じく誘拐された男児の白骨遺体が最近発見されたことが関係しているようだ。
当の叔父は行方不明になり、裕福な創業者一家だった葛木家は、その後みるみるうちに崩壊していったのだが――


曹源寺評価★★★★★
元弁護士センセーで遅咲きのデビューを果たし、そこからは怒涛の執筆でミステリ界に新風を呼び込んでいる深木センセーの最新刊であります。
「交換殺人はいかが?」という作品があったのですが、その続編というか、主人公である君原樹来が大学生になって再び登場するというファンにはたまらない設定の作品ということです。しかしながら前作を自分は未読でありますのでその辺は割愛させてください笑
この樹来と元C県警刑事だった祖父、それに樹来の妹である麻亜知が推理を働かせながら身近に発生した事件を解決していくというストーリーです。その身近な事件というのが、麻亜知の友人である葛木夕夏が関わった10年前の誘拐事件だったということで、なぜか10年が経過した現在に警視庁捜査一課が再捜査に乗り出している。その理由は何なのか。そして新たに見つかった白骨死体は何を語るのか。
序章でいきなりの衝撃的な展開にビビるのですが、そこから先は読み進めていくうちに少しずつ事件の色彩が変わっていくのでちょっと不思議な感じがします。事件の断片だけで構造を理解しようとすると、その後に追加されてくる新たな事実がその構造を破壊し、再構築を余儀なくされるんですね。そしてまた新たなピースを埋めようとすると事件の構造がガラッと変わってくるのです。この辺のトリッキーな記述を楽しむことができれば本書は非常に面白く読めるのではないかと思いますが、いかんせん事件の構造は複雑ですので、しっかりと読み進めていく必要があります。
深木センセーは文章がお上手です。しかし上手過ぎるというのもあまり面白味がないのでしょうか、それともキャラクターのインパクトが薄いからでしょうか、最近のミステリ読者は贅沢だというのもあると思いますが、

本当は複雑なのにさらっと読めてしまい、それがかえって仇になる

という良く分からない作風になってしまっているわけです。面白いのに読後感が薄い。これは編集者が悪いな。





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2018年05月11日

書評895 大沢在昌「俺はエージェント」

こんにちは、曹源寺です。

野党が国会審議に復活したら、すぐにまた野次の応酬となって幼稚園以下の様相であります。
そしてまたモリカケやっていますが、「誰と会った」というくだらないレベルの追及しかなくて、「何をした」の話が一切ないというこれまた幼稚な内容に国民はいい加減にしろと思っています。
野党は結局、政治家ではなくて活動家なのではないかと思います。活動家にはプランがありません。ただただぶち壊すだけの存在です。政府自民党もあちこちに嘘つきがいますのでレベルが低いのは間違いないですが、少なくとも活動家ではないので「少しはマシ」です。でも、民主主義というのは「どっちがマシ」なのかを問う政治形態でありますので、マシどころかまともではない活動家レベルの自称政治家たちに政治を任せようとは思えません。
いっそのこと、自民党が分裂して片方が野党になったほうが健全な国会になるのではないかと思います。二階派と岸田派と小泉進次郎一派は中道左派で、あと新自由主義者どももそっちに移っていただき、保守派と分けましょう。あと、石破派はいらないのでミンスにでも行ってください。


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内容(小学館HPより)

大沢エンタメ史上ぶっちぎりサスペンス巨編
下町の居酒屋にかかってきた1本の電話。それは二十三年ぶりに復活した極秘ミッション「コベナント」の発動だった――。
スパイ小説好きのフリーター青年・村井が馴染みの居酒屋からアパートに戻ると、突然、常連客の白川老人が訪ねてきた。何でも現役エージェントに復帰する秘密指令がバレてしまい、怪しい男たちに命を狙われているという。ここは下町なのに!? オメガの復活を阻止すべく、敵対するアルファ・エージェントの殺し屋たちが次々と村井たちに襲いかかる。
絶体絶命、逃げ道はどこにもない。だが、何かがおかしい。
裏切り者は誰か? 誰が味方で誰が敵なのか、誰にもわからない。そして、裏切られた裏切り者とは・・・・・・!?
フリーター青年と元凄腕エージェントの老人。年齢差四十歳以上の“迷コンビ"が、逃げて、逃げて、巨悪組織の陰謀を追いつめる。
「新宿鮫」とは真逆の、新たなヒーローが誕生!?
予測絶対不可能! 最凶のどんでん返し!! ベストセラー作家・大沢在昌氏が放つ、ぶっちぎりのサスペンス巨編です。


曹源寺評価★★★★
大沢センセーの新刊はコメディサスペンスとでも呼ぶべき、ちょっとコミカルな、だけどシリアスなスパイ小説でありました。
下町の商店街の小さな居酒屋でスタートするこのお話は、いきなりのノンストップな銃撃と殺戮のシーンに切り替わります。そして、CIAとかKGBといった懐かしい単語に警視庁公安部や暴力団、それに新たな国際組織といった様々な団体さんが入り乱れて、もうごちゃごちゃですわ。
勢いがあって良いのですが、自分としては正直それほどまでに入れ込むような内容ではなかったです。何より自分が嫌いなのは「こんなこともあろうかと」というレベルで後出しじゃんけんしてくる追加設定なんですよ。たとえば、主人公が絶体絶命のピンチに陥っている時に隠し玉のように新しい武器が登場してきて「まさかのために持ってきてよかった」みたいな感じで相手を倒すような場面ですよ。ちったあ伏線くらい張れや〜と思ってしまうのです。
まあ、本書はちょっと複雑すぎるくらい関係性がごちゃごちゃしているので、伏線など張っている場合ではなかったのかもしれません。とにかくごちゃごちゃしているんですよ。アルファとかオメガとかキングダムとか

整理しながら読んでいかないと迷子になること間違いなしです。

おまけに、誰が敵で誰が味方かよくわからなくなったりします。文体が軽いので一気に読めますが、関係性だけは整理しながら読まないとその面白味は半減するでしょう。お気を付けください。
ただ、スパイ小説というのは冷戦終結後の世界ではなかなかネタに乏しいでしょうし、そんな中で年老いたエージェント達がGPSとかスマホの位置情報とか現代の機器を使いこなせないという非常に皮肉なタッチで描いているのはかなりシュールではあります。それに、スパイ攻防をリアルに描こうとしたら北朝鮮は無視できないと思うのですが、そこを書くとコメディにならないのでしょう、今回はノータッチでした。
自分はこういう、軽いタッチで人がバンバン死んでいく小説ってーのがあまり好きではないので、こんなの書いていないでとっとと新宿鮫の続編を書いてくれ〜と思ってしまいます。





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2018年05月08日

書評894 笹本稜平「卑劣犯 素行調査官」

こんにちは、曹源寺です。

最近、近所の図書館がリニューアルしたのですが、受付業務がだいぶ自動化されていてちょっとびっくりでした。予約本は専用のブースにストックされていて、予約した人が自分で棚から本を探し出して受付機でチェックするという仕掛けです。これは受付の人、失業間違いなしですわ。

そういえば、先日はYahoo!オークションに出品したら幸運にも落札者が現れたので手続きに入ったんですよ。そうしたら、二次元バーコードを発行してそのコードをヤマト運輸の営業所の端末にかざせというわけですよ。しばらくオークションやらないうちに急速に進歩しているなあと思ったのですが、端末にバーコードをかざすと伝票が自動的に印刷されて出てくるんです。その伝票と現物をヤマトの受付に渡せば終了です。支払いもありませんでした。ヤフオクさんが勝手に決済してくれるみたいです。なんという自動化。何という進歩。

人手不足なんて幻想に違いないですわ。これ絶対、将来的に人が介在しない仕事が増えますね。そうなったとき、仕事をしないでお金をもらう人と、仕事をしてお金をもらう人に分かれるんじゃないですかね。分かれたあとは、、、どうなるんでしょう。ちょっと怖いわ。
もしかしたらですが、「仕事をAIに奪われる人」ではなくて「仕事をAIにやらせる人」こそが真の勝ち組になる可能性もありますね。前者は貧困まっしぐらのイメージですが、後者は時間と金を同時に得ることができる人のイメージです。つい先日は週刊誌などがこうした特集を組んで記事化していましたが、金融業界なんてAIに仕事を奪われるぞー、就職なんてしないほうがいいぞー、と吹聴していました。もしかしたら実は逆で、金融業界はAIが仕事をしてくれるからみんな楽ちんだぞー、仕事しないで金もらえるぞー、という業界になるかもしれないですね。


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内容(光文社HPより)
犯人の目星はついているのに、警察という組織そのものが障害になって取り逃がすんじゃ、あまりに情けないじゃないですか。
警視庁生活安全部少年育成課の国枝警部補が、夜のランニング中に轢き殺された。轢いたのは、上司である生活安全部長の車だが、その車は事件の二日前に盗難に遭っていたという。国枝が死の直前までかかわっていた児童ポルノサイト摘発の妨害が目的か……!? 本郷岳志たち警務部監察係は内部犯を疑い、調査をはじめるが、事件には思わぬウラが……。


曹源寺評価★★★★★
探偵上がりの警察官が監察として警察内部の綱紀粛正に活躍する「素行調査官シリーズ」、「素行調査官」「白日夢」「漏洩」と続いて本作が4作目ということです。
監察とは一般庶民になじみのない部署ですが、警察内部の汚職や犯罪を摘発する警察の中の警察であります。警視庁の首席監察官である入江が、自らの職権で高校時代の同級生にして探偵上がりの本郷を監察官として採用、いつものように警視長や警視監といった大物クラスの身内の犯罪を追っていきます(こう書くと入江が主人公みたいですが、実際は本郷が中心です)。
本シリーズのパターンとしては、警察官が殺害される→その警察官は何かの事件を追っていた→調べてみると警察の上層部が起こした犯罪を追っていたことが分かる→犯人と思しきその上層部の男は証拠隠滅に走る→監察が追う→上層部が出世や左遷をちらつかせて事件のもみ消しを図る→正義に燃える監察はそれを蹴る→証拠隠滅と思われたが別のスジから新たな証拠が見つかる→タイーホ
こんな感じで進んでいきます。
あれ、なんだか既視感あるなぁ。これって

越境捜査シリーズもこんな感じだよね

最近、区別がつきにくくなっていてごっちゃになってきました。笹本センセーは安定感あって好きなんですが、なんだか最近は反権力的な作品が多くなってきていませんかね。まあ、官公庁は組織のタガが緩んできているのは各種のニュースで既知なわけですから、これはこれでいいのかもしれませんが。
それに、本書シリーズはラストが煮え切らないというか尻切れトンボというかなんとなくしっくりとこない終わり方をする傾向にあったのですが、本書ではまあまあのハッピーエンドでありましたので、ちょっとほっとしています。





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2018年05月01日

書評893 吉川英梨「警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 蝶の帰還 (上)(下)」

こんにちは、曹源寺です。

GWまっただ中ですが、首都圏は意外と電車も混んでいますね。もちろん、普段よりはずっと空いているのですが、昔はもっとガラガラだったように思うのは自分だけでしょうか。
結局のところ、GWだーお盆だー年末年始だーといっても、どこに行くにも普段よりバカみたいに渋滞する高速道路を使って普段よりバカ高い金を払ってホテルに泊まるということになるだけですので、なんだか最近はあまり遠出をしなくなりました。まあ、金銭的な余裕もあまりないんですが。
ですから、大型連休になるたびに思うのですよ。もっとみんなバラバラに休もうよ、と。休めるようにしようよ、と。
欧米のバカンスを見習いたいですね。日本は季節を肌で感じることができる国ですから、秋にバカンスとして3週間くらい休みたい人だっているでしょう。9月後半の上高地とか蓼科なんて人も少なくて最高です。2月に河津桜を観に伊豆半島を周遊するなんてプランもいいですね。サラリーマンにはできない芸当ですが、それは法律がそのようにさせているからでありまして、もっと自由に休暇を設定できるようにすれば実現は可能ではないかと思うのです。

政府は国民の祝日を増やす施策に走ってはいけません。逆です。国民の休日など廃止しましょう。その代わり、労働者には法定の有給休暇を与えて個人単位で自由に休める日を作る。そうですね、16日くらいは法律で定めましょう。会社は休ませないと罰金。休日を買い取るのもNG。そうすればみんなの休暇が分散されます。
休暇を個人設計する仕組みにしたほうが、世の中に対するメリットは大きいんじゃないですかね。
・休日料金がなくなる(ハイシーズン料金は季節要因だから残る)
・道路渋滞と鉄道の混雑が緩和される
・キャンピングカーが売れるようになる
・長期滞在型の宿泊施設が売れるようになる
・別荘も売れるようになるかも
・観光地も繁閑の差が縮まり、ご当地企業の経営が安定する

逆にデメリットってありますかね。あまりないようにも思います。いいことづくめだったらやるべきでしょう。

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内容(宝島社HPより)
(上巻)
死体遺棄事件と誘拐事件が同時発生。
事件には、伝説のテロリストの影が――
死体遺棄現場に残されていたメッセージには、八年前に起きた誘拐テロ事件の犯人の署名が!
超法規的措置により国外追放されていた犯人が、日本に帰ってきたのか。
麻希は事件の行方を追うが――。
長女の授業参観に参加していた警視庁捜査一課の広田達也は、下北沢の女性の死体が見つかったとの連絡を受け、急きょ現場へと直行する。そこは以前、広田と原麻希が巻き込まれた殺人事件の現場と同じ場所だった。続けて、広田の娘が何者かに誘拐されてしまう。すべてが八年前と同じ状況――はたしてこれらは、かつての“アゲハ”事件の再来なのか。伝説の犯罪者アゲハが蘇る、大人気シリーズ最新作。
(下巻)
すべての発端は16年前――
事件の裏に隠された警察組織の闇とは!?
娘を誘拐された警視庁捜査一課の広田達也は、“アゲハ”を追ううちに、ある真相にたどり着く。
はたして麻希たち“秘匿捜査本部”元メンバーは、真犯人に迫り、事件を解決できるのか――。
警視庁は広田の娘を誘拐した犯人が“アゲハ”で、再び国外逃亡を図ろうとしていると推測。アゲハがFBI施設へのテロを計画しているという疑いも出てきたため、公開捜査に踏み切る。一方、別ルートで事件を追いかけていた広田と麻希は、ついにアゲハのもとにたどり着くが、そこで意外な事実を告げられ……。はたして麻希たちは真相に迫ることができるのか。事件はクライマックスへ!


曹源寺評価★★★★
吉川センセーの代表作シリーズに「ハラマキ」シリーズがありまして、文庫で展開しているからなんだか一段下げられているような扱いにも思えますが、個人的には嫌いじゃありません。警視庁捜査一課に設置された女性犯罪専門の捜査班という設定で、女刑事だけではなくイケメン上司や元長官の息子などとても強烈なキャラクターをぶち込みまくって作られていますので、吉川センセーお得意のドラスティックな展開と相まってめまぐるしく展開するスペクタクルなストーリーが読者を楽しませてくれます。
本書は「アゲハ」の続編ということで、アゲハを読んでいないとキャラクターの魅力が半減してしまいますが、かと言って

知らなければダメかというとそうでもないです。

下北沢で発見された死体はかつてのアゲハ事件の舞台になった場所だった。国内で大規模テロを仕掛けたアゲハが、日本に舞い戻ってきているのではないか。アゲハ事件をなぞるように派生する数々の事件に捜査班は翻弄される。そして、再び誘拐事件が発生し、アゲハの再来が確実視されるようになったが、、、
吉川センセーは他の作品から入りましたので、自分はハラマキシリーズにそれほど入れ込んでいるわけではありません。しかし本シリーズのファンは結構いらっしゃるようで、主人公の原麻希をはじめとしたチームの、時に巻き起こる不協和音や皮肉などもひっくるめて本当に実在するのではないかと思うほどリアルな展開は読めば読むほどファンになること間違いなしでしょう。本シリーズは早くも10作目ということで、ある意味ひとつの金字塔となっているようにも思います。
なんだろうなぁ、吉川センセーの警察小説ってちょっと独特の何かを感じるんですが、それを言葉にするのはまだ難しいなぁ。もうちょっと読み込んでからその辺は書いていきたいと思います。





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2018年04月27日

書評892 長岡弘樹「にらみ」

こんにちは、曹源寺です。

学校法人の実態を明らかにしていくと、おそらくは闇の部分があるのではないかと常々思っています。モリカケなぞ氷山の一角にもなりはしないレベルではないかと。
こんなリリースを見つけましたので。
私立大学を運営する498法人の経営実態調査(2018/04/26帝国データバンク)
文部科学省によると、私立大学で入学定員充足率が100%以上の大学数の割合は、1996年度には96.2%を占めたが、少子化を背景に2017年度には60.6%へと大きく落ち込んでいる。私立大学では、収入の77%∗を学生納付金が占め、国立大学の12%∗を大きく上回っており、学生数の減少が「収入高」や「損益」へ大きな影響を及ぼす。少子化により厳しい経営環境に置かれている私立大学について経営状況の動向を注視する必要性が高まっている。
帝国データバンクは、私立大学を運営する全国の大学法人544法人∗∗(短期大学法人を除く)のうち、企業概要データベース「COSMOS2」(147万社収録)に収録されている大学法人498法人(短期大学法人を除く)を対象に、2014年度〜2016年度決算の年収入高、損益、地域別の動向などについて分析した。
(以下はリンク先で)

調査によると、2016年度決算で減収となったのは全体の44.6%、赤字だったのは全体の37.2%ということで、もう少子化の影響が出ているのが良く分かる内容です。

聞いたことのない地方のFラン大学、それも外国人留学生を受け入れてかろうじて生き永らえているような学校法人に血税が注ぎ込まれるのはどうにも我慢ならんのですが、だれか政策で訴えてくれませんかね。

専門学校で事足りるような(必ずしも大学卒業を要件としない)資格のための大学とか、町おこしの一環で大学を誘致したはいいけれど結局人集めに苦労して定員割れが続いているような大学はもう潰しましょう。

文部科学省の天下り、マスゴミ報道機関の天下りになっている受け皿機関としての大学も不要です。この部分が報道されませんので、みーんな知らないだけです。財政健全化を言うならこういう無駄な税金投入こそ問題にすべきでしょう。


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内容(光文社HPより)
【にらみ】刑事が公判を傍聴し、被告人が供述を翻したりしないよう、無言で圧力をかけること――。
事務所荒らしで捕まり、懲役5年の判決を受けた窃盗の常習犯・保原尚道は、仮釈放中に保護司を殺害しようとした容疑で逮捕された。取り調べを担当する片平成之は、4年前の保原の裁判で“にらみ”をしていて面識があった。保原は自首しており、目撃者による面通しも終えているのだが、片平は納得していない。保原は人を殺めようとするほどの悪人なのか――。(「にらみ」)
驚き (サプライズ)と情感あふれるミステリー傑作集!


曹源寺評価★★★★★
長岡センセーの最新刊は相変わらずの短編集であります。しかも最新刊と言いながら、収録されているのは2010年6月リリースから2017年5月リリースまでの7編でありました。
表題作の「にらみ」は、殺人で逮捕された男と刑事のつばぜりあいを描いた作品です。タイトルの「にらみ」の意味を知っている人は多くないでしょう。自分も知りませんでした。タイトルの意味がラストの展開を彩るという、本作のようなオチこそが長岡センセーの持ち味であると思います。
収録作は以下の7編です。
「餞別」、「遺品の迷い」、「実況中継」、「白秋の道標」、「雑草」、「にらみ」、「百万に一つの崖」
表題作のほか、個人的には後味の悪い「実況中継」と「雑草」が気に入りました。
長岡センセーの短編のうまさというのは、前半に伏線を張っておいて、ラストに回収するというところにあると思われていますが、それだけではなくて、無駄な説明を書かない潔さとか、ラストに至る手前で後味の悪さが予想されるところとか、それで実際のラストには少しだけ希望が残されていたりするところとか、

読後にくるじわり感が何とも言えない

ところにあったりするのではないかと思っています。
表題作レベルの作品で7作詰まっていたら神だったかもしれませんが、、、
それにしても、表紙が怖いwww





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2018年04月20日

書評891 今野敏「棲月 隠蔽捜査7」

こんにちは、曹源寺です。

モリカケから日報、そして今度はセクハラです。マスゴミの倒閣運動は印象操作で引っ張るだけ引っ張って安倍内閣の支持率低下につなげることに成功しています。だからといって、今後待ち受けるのは解散総選挙でしょうから、野党の支持率からみて政権交代はありえないでしょうに。岸田内閣や石破内閣ができあがればそれで良いのかもしれませんが。

そしてそのセクハラ騒動ですが、まあ、財務省が叩かれる分にはやれやれもっとやれ!と思うのですが、マスゴミのやり口がどうにも汚すぎて辟易としますね。女性記者(進優子?)を1年半専属にさせておいて夜討ち朝駆けで取材させ、記者のほうがセクハラまがいのエロトークに嫌気がさしてきたので相手の許可を得ずに録音を開始し、直属の上司(経済部長の松原文枝?)に訴えたは良いけれど、その上司(女だぜ)は記事にするでも担当を外すわけでもなくそのまま放置したから記者が激怒して新潮社にタレこんだ、というのが一連の経緯であるわけです。なので、事務次官は1年半もの間担当についていた(事務次官の就任は2017年7月ですから主計課長時代からということになります)女性記者になれなれしくエロトークを炸裂させただけですね(これはこれでダメですが、女性記者の反応が分からないとセクハラと断定するには難しいと思います)。むしろ、断罪されるべきは女性記者の上司であり、記者会見に臨んだ報道局長であり、テレ朝の社長であり、ハニトラまがいのことをしてまで情報を得なければいけないマスゴミの体質であり、特権的に記事を占領している記者クラブ制度でありましょう。テレ朝は被害者ぶっていますが、実際には加害者ですね。セクハラを放置する女性上司ってすごいなあ。
テレ朝の自爆ということで結論づけられますが、今回の悪行は以下にまとめておきましょう。
・テレ朝経済部は専任の女性記者を使って長期にわたり高級官僚から情報を得ようとし、時にはパジャマ姿で出勤させている
・テレ朝の女性記者は時に取材相手の了承を得ることなく無断で録音を行っている
・テレ朝の女性記者は業務で取得した情報を同業他社に譲渡する(あるいは売り渡す)ことがある
・テレ朝の女性記者はセクハラで相手を訴える時、自分の声を抹消して異なる場面での声を寄せ集めて編集する
・テレ朝経済部はセクハラの被害を訴える部下を何ら配慮することなく、担当を継続させる
・テレ朝報道局は事務次官の唐突な辞任であせり、自分たちが加害者呼ばわりされることを恐れて急遽記者会見を開催する
・テレ朝報道局は記者会見を開く時、一部の記者クラブだけ参加を認め、週刊誌やフリー記者を締め出す(新潮社の立場がねえな)
・テレ朝の記者は勝手に録音してそれをテレビに流すことがあるとホリエモンから指摘される


こうやって書き連ねるとテレビ朝日って極悪企業ですね笑
さすが椿事件の当事者だけあるわ。

マスゴミにしてみれば、財務省の事務次官と国税庁の長官という2大トップを更迭に追い込んだわけですから、勝ち誇っても良いのかもしれません。しかし、今後のことを考えると官僚からは警戒されて碌な取材ができないでしょうし、もしかしたら毎年のように税務調査が入って追徴課税取られまくるのかもしれませんね。ご愁傷様でした。

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内容(新潮社HPより)
私鉄と銀行のシステムが次々にダウン。不審に思った大森署署長・竜崎は、いち早く署員を向かわせるが、警視庁の生安部長から横槍が入る。さらに、管内で殺人事件が発生。電話で話した同期の伊丹から「異動の噂が出ている」と告げられた竜崎は、これまでになく動揺する自分に戸惑っていた――。大人気警察小説シリーズ、待望の第9作!


曹源寺評価★★★★★
「隠蔽捜査7」だけど9作目です。今野ファンなら理由は知っていますが、これはスピンアウト作品が2作あるからですね。今野センセーのシリーズものの中でも断トツに人気シリーズになっているわけですが、これはやはりキャリア警察官を主人公に据えた数ある作品の中でも「信念を曲げない人」「悪しき慣習など合理性追求の前には何の価値もないこと」という行動理念を100%体現する、何ともユニークなキャラクターを創造したことが理由でしょう。自分も大好きなシリーズです。
本編7作目はついに竜崎署長が人事異動を発表されてしまいます。そうです、

みんなこれを知りたくて読んでいます。

前作で人事異動を匂わせておいて、結局は何もなかったというオチがありましたが、引っ張って引っ張ってようやく本作で異動発表ですからね。焦らしすぎー。
さて、事件のほうですがこれは今野作品にありがちな展開でして、一言で示すと「私鉄や銀行のシステムがハッキングされたら殺人事件が解決された」というものです。
なんだか良く分かりませんが、つまりはそういうことです。
相変わらず、原理原則慣習よりも合理性を徹底的に追求する竜崎署長の姿勢が捜査員の士気向上に役立っていることが良く分かるストーリーでした。そして、意外にも大森署に対する思い入れが熱いという自分の感情に戸惑っていたりするところがおちゃめだったりします。
それにしても、ルナリアン(以下、ややネタバレ)についてはこいつのストーリーを詳細に描いても面白かったのではないかと思います。いじめられてからルナリアンとなって君臨するところまでをルナリアン目線で読ませてくれたなら、彼に対する読者の意識もだいぶ違うのではないかと思うのです。

それにしても、新たな赴任先での活躍がとっても気になる本書シリーズ、ますます楽しみです。






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2018年04月17日

書評890 深町秋生「地獄の犬たち」

こんにちは、曹源寺です。

放送法第4条の改定に関しては、やはりというか案の定というか、テレビジョンでは報道がされないようですね。報道はしないけれども業界団体は声明を発表しています。

せっかくなので全文載せておこうと思います。
規制改革推進会議「通信と放送の融合の下での放送のあり方について」に関する民放連コメント(2018/04/16)

 本日、規制改革推進会議が公表した「通信と放送の融合の下での放送のあり方について」では、これまで新聞報道などで伝えられた、民間放送の公共的役割やビジネスモデルを否定するような文言はありませんが、改革の基本的方向は変わっていないように受け止められます。具体的な検討課題として「通信・放送の融合が進展する下でのビジネスモデル」などを指摘していますが、その方向性によっては民放事業者の経営に重大な影響が及びかねません。民放連は国民・視聴者の視点に立って、引き続き同会議の議論を注視していきます。

 フェイクニュースへの対応が各国共通の課題となるなかで、放送の意義はますます高まっています。産業振興の一面だけで放送のあり方や放送制度の見直しを議論し、国民の知る権利に応える放送の公共的役割をないがしろにするような政策は、決して国民・視聴者の利益になりません。今後の規制改革推進会議における検討では、国民各層、専門家や関係事業者の意見を十分に聴取して精緻な議論を行うよう要望します。

 民間放送事業者はこれまでも、インターネットを活用したビジネスモデルの開発、放送コンテンツの海外展開に精力的に取り組んできました。民間放送事業者は自ら放送の未来像を描き、信頼されるメディアとして、これからも国民視聴者の期待に応えたいと考えています。



読めばわかりますが、要するに「規制緩和されるとビジネスモデルが崩れるからやめてくれ」「現状維持しないと国民のためにならない」と言っているわけです。
規制緩和は獣医学部新設の時に議論をすり替えられましたので、もっとみんな怒っていいはずですね。本来であれば、50年もの間ただのひとつも学部新設が認められなかった獣医学部という根深い闇に、光を当てた「首相案件」は評価されても良いはずです。ガチガチの岩盤規制を突破しようとしているののが政権で、強固に反対しているのが官僚と業界団体という構図は、これまでにはなかったものです。
放送も然りということでしょう。規制緩和が国民のためにならないなどとほざく業界団体はいい加減にしろという感じでしょう。国民のためにならないとか言っているのですが、国民のためになるかどうかは国民が決めることですから、こんな戯言を真に受ける必要はありません。そもそも、放送法第4条は報道の自由を阻害しているとして国連(の方から来た人)が撤廃を要求しているものです。電波行政はもう後戻りできないところに来ているはずですから、ネットとの融合とかオークション導入とかいろいろやればいいと思います。
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内容(KADOKAWA HPより)
切なすぎる外道たちの慟哭
警察官の俺に、人が殺せるのか!?
東京のやくざ組織・東鞘会に所属する兼高昭吾は、弟分の室岡と沖縄に飛び、ターゲットの喜納修三を殺害した。その夜、一人になった兼高は激しく嘔吐する。実は兼高は警視庁組対部に所属する潜入捜査官だったのだ。後継者問題をめぐり、東鞘会では血で血を洗う抗争が続いており、喜納殺害はその一環だった。兼高の最終任務は東鞘会会長である十朱の殺害。十朱は警視庁を揺るがす、ある“秘密”を握っていた。ボディガード役に抜擢された兼高は、身分が明かされた瞬間に死が迫る中、十朱への接近を図るが……。
『果てしなき渇き』『アウトバーン』の著者が挑む、ノンストップ・エンターテインメント!


曹源寺評価★★★★★
深町センセーはデビュー当時からバイオレンス感ありましたけれど、最近の著作は以前にも増して殺戮だの拷問だの決闘だのと血飛沫が飛びまくっておりますなぁ。
本書は警視庁の潜入捜査官が任侠の世界で成り上がっていくお話ですが、ばれたら終わりの緊張感と圧倒的な暴力シーンの連発で息もつかせぬ展開が読む人を疲弊させてくれるという代物です。
冒頭から内部抗争の生き残りを抹殺するシーンです。主人公の兼高昭吾は格闘技ではなくケンカのプロ。その場にあるモノで相手を制圧するのが得意です。相棒の室岡は若くて童顔ですが、悲惨な生い立ちが影響して人殺しを何とも思わなくなっているちょっぴりサイコなやつです。東鞘会は十朱会長をトップに据え、三羽ガラスと呼ばれる直参をバックにして東京で一大勢力を築いています。その十朱の命を狙うのが兼高です。十朱を殺す理由にはある秘密がありました。。。
任侠の世界を緻密に書き上げていて、なんだかとても臨場感があります。そして、兼高もその挙動に細心の注意を払います。バレたら終わりですから。その緊張感が読者にも伝わりますので、読むほうは非常に疲れます。
最初から最後まで緊張感の連続ですから、一気読みできる人は相当タフな人ではないかと思います。最後もちょっと救われない展開ですので、胸糞悪いと思う人も多いかと思いますが、個人的にはこれしかないだろうというラストだと思っています。
よくもまあこんな小説を書き上げたものです。バイオレンス警察小説、アウトロー警察小説、任侠小説警察版、、、まあいろんな呼び名をつけることができそうですが、本書を読んで

暴力団組織って警察よりも人情が厚いのではないかと思う

のは自分一人ではないはずです。







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2017年08月22日

書評829 誉田哲也「増山超能力師大戦争」

こんにちは、曹源寺です。

「コンコルド効果」というワードをご存知でしょうか。
日本語では「埋没費用効果」と言いますが、意味は「今までに投資した金銭や時間、人的資源、努力などが無駄になるからと、そのまま続けても損失にしかならないことが分かっていながらやめることができない状態」を指します。
超音速旅客機コンコルドが、赤字続きだったのに運航中止できなかったことになぞらえてこのような呼び名になったそうです。

「やめたくてもやめられない状態」というものが世の中にはゴロゴロありそうですが、単に「伝統だから」「長年続けているから」というだけでやめられないのは「コンコルド効果」とは少し意味合いが違ってくるのかもしれません。しかし、時代にそぐわなくなっているものや存在意義を失っているもの、もういい加減やめたらどうなの?と思えるものは逆に「なんでまだやってんの?」と言いたくなりますね。

その代表格が「夏の甲子園」と「24時間テレビ」ではないかと思うのです。

夏の高校野球(以下、甲子園)は高校生を使った感動ポルノ(感動の押し売り)、24時間テレビは障がい者(障碍者という漢字が嫌いなので百歩譲って)を使った感動ポルノであります。
甲子園はまあ、他のスポーツと同様にインターハイだと思えば良いのですが、インターハイならインターハイとして時代とともに変わっていけば良いのだと思います。坊主頭の強要、炎天下での強行スケジュール、かたくなな一会場制(サッカーなど他のスポーツは複数会場制です)、神聖なイメージの醸成等々、全部大人の都合で維持されている制度です。
24時間テレビも然り。もはや何のために走っているのかさっぱり分からない100キロマラソン、一般人から募金を集め出演者にギャラを支払う謎のシステム(海外のチャリティー番組は文字通りチャリティーで出演者はただ働きですね)、障がい者にアイドルの格好をさせてステージで躍らせるという何の見世物やねん状態、24時間ぶっ続けでやることの意味さえも失われた構成(かつては24時間というスケールにインパクトがありましたが、もはやそれは微塵もないですね)等々、完全に偽善番組のレッテルを貼られて久しいのに何一つ変えようとしないのは完全に「大人の都合」によるものでしょう。

まあ、いずれのコンテンツもテレビ番組としては視聴率を稼いでいるのでしょう。数字が落ちない限りは変わらないのかもしれません。

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内容(文藝春秋HPより)
ドラマもヒット。スピンオフ作品も公開予定
超能力にまつわる機械を開発していた技術者が行方不明に。増山が調査を始めると、所員や家族に魔の手が……。大好評シリーズ第二弾。


曹源寺評価★★★★
テレビドラマ化もされた本書シリーズに、第2弾が登場しました。うれしいですねこういうの。
前作は増山圭太郎率いる超能力師それぞれのメンバーにスポットを当てていて、どちらかというとほんわかした作風でありましたが、本書はだいぶシリアスな展開を迎えます。しかも長編です。
超能力を持つ人間とそうでない人間がいる近未来の世界、という設定でスタートしていて、ものすごく現実的な展開をしていくのが特徴的な本書ですから、超能力を測定したり数値化したりするのは当然の成り行きですね。さらに一歩踏み込んでいけば、超能力を科学の力で再現しようとするのも必然であります。
本書はこうした動きを中心に、産業スパイとか防衛産業とかそんな領域にまで足を踏み入れています。
ただ、「大戦争」というほど超能力対決がビシバシ描かれているかというと、全然そんなことはありません。それに、第1弾を読んでいない人にとっては少しわかりづらいところもあるかもしれません。そもそもの世界観を解説している箇所はほとんどありませんので、やはり第1弾から読むことをお勧めします。
また、ストーリー展開もどうしても説明チックになってしまうので、決してスピード感あふれるようなお話でもないです。
本書の世界観は、

超能力を国家資格にすることで非超能力者との共存を図ろうと模索している超能力師たちの奮闘

というのが根底にあるのだろうと思います。ですから、ある意味非常に社会学的で哲学的なお話なのだろうと。派手なアクションを期待するとあとでがっかりしますので、上記のような社会背景を理解したうえで読むほうが良いだろうと思います。
あと、ドラマはココリコ田中が主人公増山を演じていますが、個人的には谷原章介が脳内再生されてしまいます。あと、増山の師匠格である高鍋リサーチ代表の高鍋逸雄は鹿賀丈史ではなくもっとゴツイ・・・古田新太とかですかね。でも、ドラマの原作再現に対する忠実さは他のドラマにはないくらい高いレベルだと思います。





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posted by 曹源寺 at 17:16| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月07日

書評779 歌野晶午「Dの殺人事件 まことに恐ろしきは」

こんにちは、曹源寺です。

この時期は高校受験の真っ最中ですね。我が家も3年前は大変でした。そういえば3年前は東京でも大雪が降って、交通機関が大幅にマヒしたのを思い出します。家から脱出するのにも一苦労だったくらいの大雪でしたので、さすがに受験は中止だったり延期になったりしました。我が家では娘が私立高校の2次試験でしたが、中止になったおかげで(?)無事合格しました。
春からは大学生ですよ。早いものですね。

さて、その受験ですが、東京では高校受験のほうがお得なのか、あるいは中学受験のほうが後々有利なのか、といった命題があります。資金的な余裕があれば後者なのかもしれませんが、いまや公立高校は無償化の時代ですから一般家庭では教育費の負担は少ないほうが良いでしょう。

個人的感想ですが、将来的にMARCH以上の私立大学を狙うなら附属高校はありだと思います。大学の附属中学もけっこうありますが、高校より門戸は狭いです。我が家は高校受験でリベンジして、中学で落ちたところを全部合格しました。特待生で入学金免除というところもありました。
高校生活も附属だといろいろなことをやります。英語のプレゼンテーションや短期留学、卒業論文なんかもあります。TOEICも取らされました。赤点が続けば留年もあります。一昔前は「附属はバカ」というレッテル張りをされることもありましたが、いまは「ちょっとおバカではあるが、受験勉強だけやってきた奴よりは経験値が高い」と思います。

国公立大学狙いだと、中学高校の5年で通常の6年間のプログラムを終えて、あとの1年を受験対策に費やすくらいのことをする私立高校もありますので、高校からそういったところに入るのは後で苦労することがありますね。大学受験の面倒見が良い高校は相変わらず人気が高いです。しかし、高校の授業だけではダメみたいで、結局進学塾に行ったりするわけで、私立の中高一貫校+進学塾で一体授業料はいくらになるのか、、、親にしてみれば子どもが幸せになれるならと思って頑張りますが、本人のやる気がくっついてこなければ無駄な投資になるのが教育費です。博打だとは思いたくありませんが、難しいものですね。


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内容(KADOKAWA HPより)
トリックと幻想は紙一重。ミステリの鬼才×乱歩、驚愕のミステリ短編集!
歌野晶午×江戸川乱歩――貴方を「非日常の興奮」に導く、超ミステリが誕生!
『葉桜の季節に君を想うということ』の異才が、刺激的なサプライズと最新テクノロジーで現代に蘇らせる乱歩ミステリ集!
カメラマンの「私」が渋谷の道玄坂で出会い、交流するようになったのは、賢いが生意気な少年・聖也。
その日も私は道玄坂のダイニングバーで聖也と話していたが、向いの薬局の様子がおかしい。駆けつけた私たちが発見したのは、カーペットの上に倒れた、上半身裸の女性だった。
その後、私と聖也は事件を探り始める。しかし、私はあることに気がついてしまい、元の世界には戻れなくなっていた――(表題作)。
「人間椅子」「押絵と旅する男」「D坂の殺人事件」「お勢登場」「赤い部屋」「陰獣」「人でなしの恋」「二銭銅貨」……サプライズ・ミステリの名手が、新たな魅力を吹き込む!
もくじ
「椅子? 人間!」
「スマホと旅する男」
「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」
「「お勢登場」を読んだ男」
「赤い部屋はいかにリフォームされたか?」
「陰獣幻戯」
「人でなしの恋からはじまる物語」


曹源寺評価★★★★★
歌野センセー、久しぶりでした。最近は技巧に走りすぎていないかと評されることも多い歌野センセーですが、全然そんなことは思っていなくて、とても読みやすいし展開も驚きが多くて好きです。後味の悪い作品が多いのがちょっと残念なくらいで。
さて本書は短編集ですが、上記HPの紹介文のように、あの江戸川乱歩センセーの作品をオマージュしたと思われるタイトル7作品が収録されております。
いずれも江戸川作品のタイトルから持ってきたのが一発で分かるのと、乱歩の作風をどことなく感じられるところが歌野センセーのテクニックだなぁと思わせてくれます。
我が家には母親から譲り受けた「江戸川乱歩全集」15巻が揃っていて、大学時代にチャレンジしたのですが、著名な作品をいくつか読んだだけで挫折してしまいました。以来、書棚に眠ったままの状態です。
7作品のなかにはドキッとさせられる展開もあれば、ムナクソ悪いラストの作品、なるほどこれはキツイという作品などがあります。個人的には「スマホと旅する男」の不思議なお話や、表題作「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」の後味の悪さなどが良かったです。表題作は

こんな小学生いねえよ

というツッコミを無視して読み進めてほしいです。





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posted by 曹源寺 at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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