ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:あ行の作家

2017年03月17日

書評790 一橋文哉「世田谷一家殺人事件 15年目の新事実」

こんにちは、曹源寺です。

森友学園のニュースはかれこれ1か月以上も続いていますが、今のところ何一つ物証が出てこないで印象操作だけが進んでいる状況ですね。よくもまあこれだけズルズルと引き伸ばせるね〜と思います。
まあ、理事長がちょっとヤバイというのは良くわかりましたが。。。
せっかくですから、これを機会に教育界の闇の部分を引きずり出してほしいなあと思います。国有地の払い下げ問題は他の学校法人へのファクトチェックをぜひやっていただきたいです。政府ではなくて文科省あたりの「闇」が炙り出されるのではないかと期待してしまいます。

あとは、大学の医学部設置問題ですね。現在進行中なのは国際医療福祉大学で、2017年4月には成田キャンパスに医学部が開学します。受験倍率はなんと27倍!すごいですね。
でもなぜこの大学に決まったのか。同志社大学や東北福祉大学なども誘致を促していたようですが、なぜ歴史と実績のある大学が蹴られてこの大学になったのか。早稲田大学はどうなったのか(どうも鎌田総長が誘致活動を見送っているらしいですが)。(ちょっと違いますが)東京女子医科大学の財務状況はどうなっているのか。そもそもなぜ1979年の琉球大学以降、設置認可が下りなかったのか、などなど、いろいろと不明なことが多くて訳分かりません。
なぜ医学部の設置が見送られてきたのか、という疑問には、どうやら「医学部ができると現場の医師が教壇に立たなくてはならず、人手不足が加速するから」という言い訳が用意されてきたようです。
でもそれっておかしいですね。そんなこと言ってたら人手不足にますます拍車がかかるじゃないですかね。高齢化社会の到来を見据えていたはずなのに、多少の定員増があったにしても1979年から医学部がずーっと設置されてこなかったのってやっぱり変ですよね。

自分はこう思います。もっと門戸を広げる代わりに、国家試験の壁を厚くして医師に向いていない奴はどんどん落とすようなシステムにするべきであると。医師国家試験の合格率は90%、かたや司法試験は23%程度です。一人前の医師を育成するまでの投資は判事・検事・弁護士の比ではないと思いますが、投資をすれば誰でも医師になれるというのもちょっと違うと思いますし、医療従事者間の競争原理もある程度働かせたほうが健全な業界になると思います。
それに、今回の国際医療福祉大学の医学部も定員はたった100名です。100名程度の医学部設置で認可までにものすごい紆余曲折があるとしたら、それはそれですごい時間の無駄遣いのような気もします。

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内容(KADOKAWA HPより)
私は真犯人に会った!
2000年12月31日、世田谷区上祖師谷の四人一家が無残な状態で発見された。現場に多数の痕跡を残しながら捕まらなかった犯人。その犯人を追って著者が向かった先とは? 真犯人がついに本書で明らかになる。

曹源寺評価★★★★
一橋センセーのノンフィクションは徹底した現場主義による綿密な取材活動と、それに裏打ちされた迫力ある筆致、臨場感溢れるインタビューが売りです。読者としては本当に「これぞジャーナリズム」とうなってしまうこと請け合いの内容です。一橋センセーのみならず、清水潔センセーや溝口敦センセーなど、リアルなジャーナリズムを背負って日々活動されている「本物」の著作はどれもこれも頭が下がる思いです。
さて、本書は2000年12月に世田谷区上祖師谷で発生した一家4人の惨殺事件を丹念に追ったルポルタージュです。謎の多いこの事件は本書以外にも多くの作品が出回っていますが、実行犯と思しき男性へのインタビューのみならず、その主犯、さらに黒幕へと網を広げて切り込んでいるのは一橋センセーだけではないかと思います。
だからこそ、リアルでホラーな事実が浮かび上がっているわけで、本作なくしてこの事件は語らしむべからずでしょう。
詳細はお読みいただくとして、本書の主張のキモである「犯人は誰?」という点において位置はしセンセーはズバリ書き込みつつも、その本人の安否が不明というかちょっとモヤモヤして終わってしまうのがなんとも歯がゆいですわ。
本書で語られることのなかった断片はセンセー自らコラムなどで追記されているようですが、犯人は東京・武蔵野市内のマンションに潜伏していたとの情報もあったりして、

ガチで怖いんですが

ただでさえ武蔵野三鷹エリアは殺人事件が増えて困っているのに、リアル殺人鬼が潜伏していたなんてみんな知ったら大変ですわこれ。
こんなやつ、何でもいいからとっとと別件で逮捕して指紋とDNAの鑑定して捕まえてくださいまし。というか、なんで野放しなの?本当に死んでないの?誰か教えてクレメンス。





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2017年03月03日

書評786 相場英雄「クランクイン」

こんにちは、曹源寺です。

NYダウ平均株価が今月に入り21,000ドルを突破しました。1か月で1,000ドルの上昇となっていて、ちょっとしたバブル状態ではありますが、バブルを差し引いてもトランプ政権の施策が経済に好影響を与えていることは事実でしょう。反トランプの動きばかり報道しているマスゴミ各社はこのニュースとの整合性を問われていますが、なんだかんだ支持率が高いという現状を報道できない(あるいはしているけどかなりさらっとにとどめている)ため、多くの日本人は米国のトランプ政権に対する本当の姿勢が理解できなくなっているのではないかと危惧します。

安倍政権に対する支持率も60%と依然として高く、森友学園の国有地売却問題も安倍首相との関連がないということが分かっているにもかかわらず報道は過熱するばかりで、今度は昭恵夫人のほうに矛先が向かっている始末です。この異常とも思えるメディアスクラムに視聴者はドン引きです。

実態とかけ離れた心象報道ほどたちの悪いものはありません。嘘も百回言えば本当になる、というのを地でやっているわけです。
個人的には森友学園を支持しませんし、教育の政治利用はNGだと思います。しかし、教育の政治利用の先頭を走っているのは日教組ですから、この問題だけをクローズアップするのは違うと思います。


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内容(双葉社HPより)
とある日。広告代理店に勤める根本に、ベストセラー小説を映画にするよう社命がくだる。映画好きの根本は喜び、映画製作に邁進するがトラブル続出で……果たして映画はできるのか。『震える牛』『ナンバー』の著者が満を持して放つエンタメ小説の快作! 


曹源寺評価★★★★
「震える牛」以降、快調にヒットを飛ばしてくる相場センセーですが、本作はこれまでの路線とはずいぶん違ってコメディ感満載の企業小説でありました。
京楽エージェンシーという準大手・中堅の広告代理店に勤務する根本崇は映画好きを見込まれて、社長直々の特命として映画制作の任務を持ちかけられます。最近の映画は「製作者委員会方式」というスタイルで制作するのが基本路線です。製作者委員会って良くわかりませんが、配給会社のみならず、広告代理店、出版社、制作会社、テレビ局などのほか、スポンサー各社からも人と金が入り込んでみんなで作りましょうと。その代わり、売れたらその収益はみんなで山分けしようと。つまりはそういうことですね。
また、映画制作とひとくちに言っても、原作者の口説き落としから始まって、脚本作り、監督選び、予算取りとスポンサー集め、キャスティング、ロケ地の選定や調整、などなど、ゼロからのものづくりとなればそりゃもう大変な労力が要るんですね。このへんの描写が妙に細かくて臨場感あります。
こうした制作の裏話的なストーリーとは別に、主人公の根本が幼い頃に死んだとされる母について、映画業界関係者から思いも寄らぬ情報が入ってきます。このへんがちょっとしたミステリになっていて、単調になりがちなストーリーに一本の軸を入れ込んでいるのが良いですね。おそらく、

この味付けがなかったら、ものすごく単純なドタバタ劇

で終わってしまいそうな内容です。
いや、味付けではなくてこちらが本筋なのかもしれません。根本の母は一体何者であったのか。最後のほうまで引っ張る引っ張る。
そしてラストですが、この母の正体だけでなく、本書にはちょっとした仕掛けが施されています。それは読んでのお楽しみということで。
本書を読むと映画作りってなんだか楽しそうだなあ、という思いが湧いてくるのと、昔の映画作品の描写(オープニングが高倉健の「新幹線大爆破」です)が観たことあるひとにはグッとくるものがありそうなところが相まって、未鑑賞の定番作品をもう少し押さえておかなければとの思いを新たにしました。





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2017年01月10日

書評772 石持浅海「パレードの明暗 座間味君の推理」

こんにちは、曹源寺です。

冬休みが終わり、学生たちは3学期に突入しました。センター試験は目の前です。今週は寒い日が続く見込みですが、風邪などひかないよう気をつけて過ごしてくださいね。

さて、我が家ではこの正月に新たな家族を迎え入れました。
ハリネズミです。

かわいいです。

娘と息子がお年玉を出し合って買ってきました。

最初は反対しました。人に懐きにくい、夜行性である、針が痛い、寒いと冬眠してしまう、というのが反対理由です。

でも、小さい頃から飼えば多少は懐く、昼もちょくちょく起きる、針は警戒させなければ逆立つことはない、25℃前後に保てばOK、ということからとりあえず理解しましたので断固反対とまではいきませんでした。

家に来ました。繰り返しますが、かわいいです。
懐くのはこれからですが、家長として懐いてもらおうと思っています。

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内容(光文社HPより)
警視庁の女性特別機動隊に所属し、羽田空港の保安検査場に勤務する南谷結月は、日々の仕事に不満を感じていた。身体を張って国民を護るのが、警察官として最も崇高な使命だ。なのに――。そんな不満と視野の狭さに気付いた上官から、結月はある飲み会に同席するように言われる。行ってみた先に待っていたのは、雲の上の人である大迫警視長と、その友人の民間人・座間味くんだった。


曹源寺評価★★★★★
「月の扉」に始まり、「心臓と左手」「玩具店の英雄」と続く「座間味君シリーズ」の第4弾であります。いつの間にか「呑み屋探偵」というあだ名がついているようですが、要するに座間味君が警察幹部と食事をしながら事件の真相を明らかにしていくというストーリーなんですね。安楽椅子探偵の呑み屋バージョン、それもかなりあっさりした短編です。
本書のパターンは、警視庁の大物警視長である大迫と、女性特別機動隊所属の南谷結月巡査、これに座間味君が加わった3名で新宿駅東口近くにある大型書店で待ち合わせ、居酒屋や焼肉、そば店などに入って談義をするというところから話は始まります。
大迫が「こんな事件があってね〜」とちょっとした話題を振り、それを結月が「教訓になります」とかしこまったところに座間味君が意外な一言を言います。
静まり返る場。一瞬言葉に詰まる二人。座間味君はしれっと続けます。「どうもこうも」と。そして明かされる真相。事件を裏返してみてみたら、実はこういうことも考えられますね〜という真相。でも正論でもあったりする。ややこじつけでもあるけれど、なるほどこの見方は正しいのだろうと。
事件の概要を聞いただけで真相に辿り着くという恐るべき離れ業を駆使する座間味君。実在したらどんな感じなのでしょうか。小説の中では子煩悩でおとなしい、しかも礼儀をしっかりわきまえている背筋の伸びた青年という描き方をされています。でも、こんな会話をリアルに聞かされたら

ちょっと嫌味な奴に見えなくもなさそうです。

あと、本書のシチュエーションとして警察の大物幹部と下っ端が飲み会を開き、そこに一般青年が加わるという極めて不可解な、現実にはありえそうにない設定が笑いのポイント(?)なのかもしれません。警視庁の警視長なら役職は方面本部長か主要参事官クラスですからやはり大物です。そんな大物がたかが巡査に声かけして何度も食事に行ったりはしないでしょう。
座間味君も座間味君としか扱われていませんが、座間味君は本名ではなかったような。





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2016年11月29日

書評762 五十嵐貴久「7デイズ 日韓特命捜査ファイル」

こんにちは、曹源寺です。

シャブ&ASKAのASKAがまたしても覚醒剤使用の疑いで逮捕されました。50歳を過ぎると覚醒剤の再犯性が高まるそうで、最初の逮捕前から週刊文春であれだけラリッていた姿を写されたにもかかわらず自宅療養していたなんて、普通に考えたらありえないでしょう。なんで田代まさしのような療養施設に行かなかったのでしょうかねぇ。
自分の世代ではあの昔の漫画「ドーベルマン刑事」の中に覚醒剤患者の描写があって、たしか「生きていても死臭がする」とか「死んで火葬すると骨が残らない」とか、かなりエグイ表現で覚醒剤の危険性を読者に訴えていたのを覚えています。あれは絶対に我らの世代に抑止力となって働いていると思います。平松センセーに感謝ですね。
でも、小学生にはドーベルマン刑事、かなりキツイです。今思えば、ヤクザ、マフィア、暴力、レイプ、爆弾魔、シャブ、などなどヒャッハー!な世界がバリバリ描かれていましたわ。加納刑事のぶっ放す44マグナム「ブラックホーク」なんて実際に当たったら一発で人間粉々ですよ。「ド外道がー!」と言いながら人間を粉々に破壊する銃を街中で撃ちまくる刑事。。。西部警察も真っ青です。
でもこうやって思い出しながら書いていると読み返したくなりますね。しかし、もう我が家にコミックを置くスペースはありませんので買うのはあきらめよう。。。

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内容(PHP研究所HPより)
日本と韓国を揺るがす、最強の“相棒”登場!
韓国の麻薬王・インチェルの死体が、隅田川で見つかった。エリート女刑事・ジヒョンが捜査のためソウルから来日する一方、警視庁の新米刑事・後藤陽平は、ジヒョンに捜査の邪魔をさせないよう上司から“特命”を受ける。初対面からぶつかり合う二人だが、事件の裏には日本と韓国を巻き込むある陰謀が隠されていて……。
何から何まで違いすぎる二人が繰り広げる、ノンストップ警察小説!


曹源寺評価★★★★★
エンタメ系作品を次々と発表される五十嵐センセーの量産ペースは衰えることを知りませんな。今回は韓国のエリート女刑事と警視庁の新人刑事がぶつかり合う警察小説でありました。
日本に潜伏していた韓国の麻薬王が水死体で発見され、警視庁は事故死と認定していた。そこに韓国からソウル大学主席卒業、テコンドーの達人にして弱冠29歳の警部補クラスのエリート刑事、ジヒョンが来日し、捜査をさせろと要請してくる。警視庁はできるだけ穏便に済まそうとして新米の後藤に警護役を命じジヒョンをもてなすが、一刻も早く捜査を行いたいジヒョンとの間で諍いが。他殺の疑いが濃くなってきたため、後藤も捜査に加わろうとするが、そこには、、、
前半の二人のすれ違いと後半の犯人との攻防の間にものすごい落差を感じてしまいますが、それ以外はだいぶ素直に読めます。最初の100ページはある意味ムダかもしれませんが、後半の味付けのためだと思えばまあ納得できなくもありません。

ただねぇ、この主人公2人のキャラはねぇ、どうなんだろぅ。

日本を見下しているだけでなく、誰に対しても上から目線でバリバリの国粋主義者であるジヒョンと、刑事になって半年、公務員気質が抜け切れない刑事っぽくない後藤のやりとりはあまり面白いものではありません。
それと、五十嵐センセーにありがちなのですが、軽くて読みやすい反面、派手なアクションシーンなどは描写が雑ですのでのめりこんで読むとちょっとがっかりします。ここはさらっと流して展開だけを楽しむのがコツなのかもしれないですね。





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2016年11月01日

書評756浅井建爾「知らなかった!驚いた!日本全国「県境」の謎」

こんにちは、曹源寺です。

東京都民としましては五輪を控え、古い建物が壊されたり新しい道路ができたりするとすごく新鮮な気分になります。新たなインフラ整備は大歓迎なのですが、今年4月に開業した新宿バスタがひどい状態ということで残念な記事が増えてきました。

バスタ新宿前「渋滞改善と発表は間違い」と国交省謝罪 バス会社120社に違法駐車の改善要請(2016/11/1産経新聞)
全国最大のバスターミナル「バスタ新宿」(東京)の渋滞問題で、国土交通省は1日、過去に公表した「渋滞が改善した」とする調査結果が間違いだったことを明らかにし、謝罪した。同施設周辺の違法駐車問題に対しては、バス会社に文書で改善を要請した。
国交省はバスタ新宿開業1カ月後の今年5月、施設前の国道20号のタクシー乗降場を施設内に収容したことで「渋滞が改善した」と発表していたが、「改善がみられない」と訂正した。昨年11月と今年5月のそれぞれ1日分だけの渋滞の最大延長を目視確認した不十分なデータで比較したことが原因という。
膨大な情報を分析する「ビッグデータ」で昨年と今年の4〜9月分の渋滞状況を解析した結果、ほとんど改善しておらず、時間帯によっては悪化していた。今後、渋滞解消に向けた取り組みを強化する方針。
一方、国交省は10月下旬、西新宿地区で路上駐車し、時間調整している高速バスを確認。同月28日にはバスタ新宿を運営する「新宿高速バスターミナル」(東京)を通じ、バス会社約120社に路上駐車をしないよう口頭で要請したが、状況が変わらなかったことから再発防止策の提出とともに改めて文書で求めた。10月下旬の3日間の午前中だけで、約30台が路上駐車していたという。


新宿駅西口に分散していたあれだけのバスを一箇所に集めたらどうなるのか。しかも国道20号(甲州街道)沿いという東京屈指の動脈に隣接したらどうなるのか。こうした思考が働かずに、あるいは働いたのかもしれないが机上の計算だけにとどまったりすると、こうした弊害が起こるという悪い見本のような有様になりました。
渋滞だけでなく、トイレが少ないとかコンビニを誘致できていないとか、利便性にも知恵が働いていないという酷さ。お役所仕事の真髄を垣間見ることができました。
なぜ、頭のいいはずの役人(今回の場合は国土交通省)がこうした無様な結果をさらけ出すのか。これを学問にして研究を重ねても良いのではないかと思えるレベルです。

かつての新宿駅西口は停留所が分散しすぎていて、中央高速方面ならヨドバシ前だとか、山陽方面ならスバルビルの方だとかいろいろ知っていないと乗るまでに大変という有様でした。それが一箇所に集まれば道に迷う人はいなくなります。大きなバスターミナルができれば便利は便利です。
しかし、新宿駅西口は大きなターミナルがあって、北にも南にも西にも抜けられるように設計されていました。北に行けば青梅街道、南にいけば甲州街道、西からちょっと行けば首都高速4号線といずれの方向にもスムーズなアクセスができる場所なんですね。それを甲州街道だけにしてしまえば当然渋滞するわけです。

バスタの立地は素晴らしいのですが、どうせなら首都高に抜けられる専用道路か、あるいは甲州街道の車線を1〜2車線増やすくらいのことをしなければいけなかったのだろうと思います。ホント、これどうするんでしょうね。

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内容(実業之日本社HPより)
好奇心や旅心をくすぐるネタ満載!
四国には、愛媛県と高知県しかなかった?
日本一人口の多い県は、石川県だった?
時代とともに、めまぐるしく移り変わったのが日本の「県境」でした。明治維新から140年を経たいまでも、全国47都道府県のうち、およそ半数の23都県に「県境未定地」があるなんて、信じられますか? 県境は単なる行政上の境界線、と思いきや、この曲がりくねった一筋の線が引かれるまでには、全国各地に悲喜こもごものドラマがありました。たかが県境、されど県境――思わずだれかに話したくなるようなエピソード満載の面白本、日本の地理や歴史を見る目が変わります!


曹源寺評価★★★★★
最近の新書は粗製乱造が甚だしいのであまり書店の新書コーナーに立ち寄らなくなっていましたが、本書は息子の通う塾の先生がお勧めしていたので親が先に読んでみた次第。
本書は2007年9月の発刊ですから、かれこれ9年も経過しています。いまさら感満載ですが、教養として学ぶものですから勘弁しておくんなまし。
なるほど、タイトルの通り「県境」ってどんな理由で構築されたのだろうという疑問には十分応えてくれる内容です。都道府県の成り立ちを知る上で本書の記述はかなり役に立ちます。東京都の多摩地区は神奈川県から分離された、とか、四国は2県しかなかった時代がある、とか、石川県が一時、国内最大の人口を誇る県だった、とか、知らないことだらけで一気読みでした。
高校日本史の教科書にさえ載っていない話って、いいですね。
個人的にはこの幕末から明治にかけて、あるいは明治から大正、昭和初期あたりまでの歴史というものが教養的にまったく不十分なので、一時期ちょっとだけ読み漁ったのですが、難しすぎる本を手にとってしまうとそこでお勉強がストップしてしまうわけですよ。
それでもWebサイトなどで面白そうな雑学を得られるところはブックマークしてたまに閲覧するようにしています。「東京DEEP案内」とか「探検コム」(ここの管理人さんは本当にすごい人)などは良く知られるサイトですが、日本史の裏とか現代の闇とか本当に奥が深いですね。
さて、本書に戻りますが、江戸から明治にかけては廃藩置県というものすごい大規模な行政改革がありました。県境が変われば行政管轄も変わるということで、住民にとっては生活の基盤そのものが大きく揺らいだ時代でもあったわけです。しかし、長い歴史を経て統治されてきた藩という制度は住民生活と密接につながっていたため、県を置いたところで旧藩の制度をまったく無視するわけにはいかなかったというのが実情のようですね。
読んで楽しかったのは事実ですが、編集にはちょっと疑問が残りました。

何というか、整然としていないんですよ。

北海道から順に南下するわけでなく、時系列に並んでいるわけでもなく、マメ知識がずらりと並んでいるだけという感じで、ひとつひとつの単元もつながりがないのでもうちょっと理路整然と並んでいて欲しかったなあという印象です。もちろん、少しは並んでいる(たとえば、どちらの県にも属していない地域の話とか)のですが、編集にはもう一工夫あっても良かったのではないかと思います。
あ、あと本書には続編もあるみたいなので探してみようと思います。





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2016年10月28日

書評755 相場英雄「ガラパゴス(上)(下)」

こんにちは、曹源寺です。

今年のプロやきう日本シリーズは見応えがあって面白いですね。両軍のファンにしては胃が痛いくらい緊迫した試合が続きましたからつらいとは思いますが。視聴率も関東地区17.4%ならそこいらの安物ドラマよりよほど良い数字だと思います。広島地区は27日の試合の平均視聴率が44.4%だったそうで。お化けコンテンツですな。
プロやきうというコンテンツはすでに過去の遺物だという意見は多いですが、実際のところはどうなんでしょう。日本シリーズですから多少は割り引かないといけないと思いますが、ローカルだけならまだまだ十分いけるのかもしれないですね。

そうすると、プロスポーツの中継試合はテレビ番組としてどれだけ価値があるのかという命題になってしまうのですが、やきうとサッカーは代表戦なら十分魅力的ですね。代表戦だけという観点ならばラグビーもバレーボールもいけるかなあ。テニスは個人戦でも観たいなあ。でも冗長だよなぁ。といろいろなことを考えてしまいます。
プロスポーツのなかでもマイナーな競技をEテレだけに独占させず、民放でもやってほしいなあとは思います。スポンサーがつけば問題ないわけで、卓球バドミントンの世界ツアー個人戦や体操の世界選手権レベルの試合、日本人が参加している海外メジャーゴルフあたりは真剣に観たいかもしれません。スポーツバーとかで盛り上がりたいです。

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内容(小学館HPより)
(上)
現代の黙示録『震える牛』続編!
警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、身元不明のままとなっている死者のリストから殺人事件の痕跡を発見する。不明者リスト902の男は、自殺に見せかけて都内竹の塚の団地で殺害されていた。
遺体が発見された現場を訪れた田川は、浴槽と受け皿のわすかな隙間から『新城 も』『780816』と書かれたメモを発見する。竹の塚で田川が行った入念な聞き込みとメモから、不明者リスト902の男は沖縄県出身の派遣労働者・仲野定文と判明した。田川は、仲野の遺骨を届けるため、犯人逮捕の手掛かりを得るため、沖縄に飛ぶ。
仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた。田川は仲野殺害の実行犯を追いながら、コスト削減に走り非正規の人材を部品扱いする大企業、人材派遣会社の欺瞞に切り込んでいく。

(下)
平成版『蟹工船』!メモ魔の刑事、再臨場!
警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、身元不明のままとなっている死者のリストから殺人事件の痕跡を発見する。自殺に見せかけて都内竹の塚の団地で殺害されたのは沖縄県出身の派遣労働者・仲野定文だった。仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた。田川は、仲野が非正規雇用労働者として勤務していた三重県亀山市、岐阜県美濃加茂市を訪れる。そこで田川が目にしたのは国際社会に取り残され、島国で独自の進化を遂げる国内産業の憂うべく実態だった。
仲野殺害の実行犯を追いながら、田川はコスト削減に走り非正規の人材を部品扱いする大企業、人材派遣会社の欺瞞に切り込んでいく。


曹源寺評価★★★★
「平成版 砂の器」と賞賛され、テレビドラマ化もされた「震える牛」の続編という触れ込みになっていますが、主人公の田川信一刑事が同じなだけで、続編というよりは「刑事・田川信一シリーズ」と呼んだ方がしっくりくるような作品です。しかし、今度は「平成の蟹工船」ときたもんだー。まあ、あながち間違いではないと思いますが。
本書は身元不明者の死体から殺人事件の痕跡と思しきものを発見した主人公の田川が、事件を発掘するうちに見えてくる、派遣労働をコストとしか見なさなくなった大手製造業の実態、工場撤退による地方都市の衰退、大手人材派遣会社の暗躍などに迫りつつも犯人を追い詰めていくストーリーであります。
相場英雄センセーは経済ネタに強いので、こうした労働問題や経済不祥事事件など時事ネタを盛り込んだ作品はお手のものであります。
上下巻600ページを超える大作にもかからわず、ぐいぐいと読ませるまでに昇華されたテクニックはさすがです。昔の相場センセーはこの辺があまりうまくなかったですが、最近の著書はいいですね。もう何の文句もありませんわ。
地味な刑事の主人公・田川もなんというか、平泉成が演じているかのような正統派の刑事なものですから、中途半端なキャラクターよりもずっと好感が持てます。疑問は徹底的に潰していくという姿勢がすごいです。三重、岐阜、愛知、埼玉、宮城、沖縄と被害者の足取りをひたすら追っていく様が刑事の執念を感じさせてくれるのです。

これを退屈という人は警察小説なぞ読まないほうが良いと思います。

表題の「ガラパゴス」ですが、すでに国内だけで発展してきた携帯電話がガラパゴス携帯→ガラケーとなったように、独自の進化を遂げたがゆえに世界標準から取り残されてしまった工業製品を総じてガラパゴスの名を使って揶揄することが当たり前になってしまいました。携帯電話だけでなく、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電、テレビやカメラなどの映像・音響製品などがガラパゴス化してきています。
本書はさらに、自動車の分野においてハイブリッドモーター搭載の乗用車もガラパゴス化していると見なしていて、欧州などで主流になりつつあるディーゼルまたは小型エンジン+過給機(ターボ)の分野で日本勢は大きな後れを取っていると論破します。そのうえで、あのシャープが敗者となったことで亀山市の工業団地がとんでもないことになっている点を挙げ、自動車でもガラパゴス化によって企業城下町が過疎化してしまったら日本はどうなるのだろうと本気で心配してくれています。
主人公の田川が事件の本質に迫っていくのは下巻からでありますが、上巻もまた現代日本の縮図をさまざまな捜査過程で示してくれていますので、非常に興味深い展開です。外堀を徐々に埋めていって、後半で一気に本丸に攻め入ってくる刑事たちの迫力ある捜査は読み応えあります。
本書に登場するダーク企業は国内自動車ビッグ4の一角であるトクダモータースと、一代で大手企業にのし上がった人材派遣会社のパーソネル。トクダはハイブリッドで攻勢を仕掛けるも、バッテリーの重さゆえに燃費性能が上がらないため禁じ手を使うようになるという、笑うに笑えない企業です。コストダウンだけに血道をあげて本来の顧客満足を忘れた企業に明日はない、ということを知らしめてくれているわけですが、現実社会でもボディ鋼板裏面の塗装が雑すぎて笑えないクルマが見つかったりしていますので、乗用車というのは本当によく吟味してから乗りたいものですね。
まあ、結局のところ、

本書はリアルすぎて怖い

という点において、「震える牛」と同等、いやそれ以上に暗澹な気分にさせられること請け合いです。殺人の動機がついにここまできたか、との思いは強くなりますが、あまりにも哀しく、そしてリアルにありえそうで怖くなります。最近のミステリでは「何でこんな動機で人を殺すかね〜」と疑問符つけながら読まなければならない作品が増えてきたのですが、本書は違います。あまり考えなかったことでもありますが、この動機は現実に起きても全く不思議ではないというところにこの作品の奥深さがあるのだと思います。
国内経済は2000年代前半からの不況→内需落ち込み→企業業績悪化→そこにリーマン・ショック→円高→輸出型企業の怨嗟→デフレ進行→内需さらに落ち込みのループだったわけですが、そこにアベノミクスというカンフル剤を打ったことで円安→輸出型企業の回復→(本当なら)賃上げ→内需回復、という青写真が待っていてくれるはずでした。しかし現実には賃上げ実施には至らず、一部の大手企業のみがアベノミクスの恩恵を受けているだけにとどまっています。
どうしてこうなったのか。本書は日本経済の失速の原因が何であるのかを遠まわしに、そして比喩的に示唆しているように思えてなりません。

ラストも(以下、ネタバレ)
リアルすぎなんですよ本当に。警察の上層部と大企業の経営層による「手打ち」が現実社会で日常的にあるとは思えませんが、最期はすっきりしない展開でちょっと胸糞悪いです。どうせなら、クビになったパーソネルの高見沢女史が逮捕前に週刊誌にリーク→パーソネル森社長憤死→法廷でも田川刑事が証言台に立つ→米国でリコールの嵐→トクダ松崎社長憤死、くらいのところまで書けば読者的には溜飲が下がる思いだったのにと思います。





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2016年10月11日

書評750 伊坂幸太郎「サブマリン」

こんにちは、曹源寺です。

東京はようやく秋らしい気候になりました。朝晩の気温が15℃くらいになるとちょっと肌寒いのですが、自分はこのくらいがとても好きです。テニスの格好だと、上下ウォームアップを羽織って打ち始め、少し暖かくなったら脱いで試合開始、くらいの感覚が一番いいですね。

さて、いま国会では予算審議が行われていますが、実は憲法改正に必要な3分の2以上の議席を持った初めての論戦ということもあって、民進党が警戒を強めています。
予算の審議のはずなのに、なぜか憲法改正のことばかり聞く民進党。そんなに議論したいんですかね。予算の話をして欲しいのですが、矛先はなぜか憲法だったり稲田防衛相のことだったり訳分かりません。民進党は本当に政権を取りに行く気持ちがあるのか?単なる揚げ足取りだけに終始するだけなら、最大野党でいてほしくないですね。まあ、全然期待はしていないんですが、自分の周囲には民進党ファン(というよりアンチ自民党)がそれなりにいまして、たとえば都議会自民党のような伏魔殿をつくらせないために二大政党制のほうが良いと本気で思っている人はそれなりにいるわけです。

しかし、いまの民進党に政権担当能力はないと思います。

維新にも生活にもないでしょう。共産党なぞもってのほかです。
日本は長年、自民党の一党独裁体制が続きましたが、それは右派も左派も自民党内に取り込んでいたからこそであり、中曽根政権と宮沢政権ではその政策の中身がだいぶ違うように、自民党内で二大政党制が行われていたようなものだったわけです。
ですから、日本の政治をクリーンにしたいのならば、自民党を二つに分けたほうが早いと思うのです。石破、二階、谷垣(もう死に体ですが)あたりが党を割って中道左派政権をめざしたほうがよっぽど日本のためになると思います。実際のところ歴史は逆で、保守系の議員が党を割って保守党→日本のこころ、とか一部が維新になったりしているわけで、本来の保守を考えるならもう少し多めの議員が割っていても良かったのではないかと思います。ということは、つまり自民党は中道より若干左寄りであると言って良いのかもしれません。だとすると、少し右寄りの方にはいまの自民党は物足りなく感じるわけです。たまに出てくる自民党からのフザケンナッ!的な政策はそのせいだと思っています。このへんを何とかして欲しいなあ。

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内容(講談社HPより)
陣内さん、出番ですよ。
『チルドレン』から、12年。
家裁調査官・陣内と武藤が出会う、新たな「少年」たちの物語。
伊坂幸太郎、書き下ろし長編。


曹源寺評価★★★★
家庭裁判所の調査官である陣内と武藤。この二人を主人公に添えた「チルドレン」という作品が上梓されたのは2004年でありました。あれから12年が経過し、似たような装丁で再び書き下ろしてこられたのが本書であります。
先日の「陽気なギャング」シリーズも第2作目と第3作目の間に9年の歳月が流れておりました。伊坂センセーはよう分かりまへん。チルドレンの印象は「陣内とかいうちょっと変わった公務員がいて、それを武藤が語り部的に付き添っていて、二人でいろいろやらかした本」というくらいのものでしたので、他の作品と比較してしまうとどうしても薄い印象でした。
そこで本書ですが、家裁調査官ということでどうしてもテーマが少年犯罪になってしまうのはしょうがないとして、本書で書かれているテーマは重いです。すごく重いので

簡単に結論が出せるものではありません。

事件関係者や陣内、武藤、それぞれが本作で主張していることや疑問に思っていることなどは現実社会でも重厚なテーマとして議論が尽きないものだと思います。ですから、彼らの主張はそのひとつとして受け止めておけば良いのかもしれませんが、自分がいま言えることは「日本は法治国家であり、仇討ちは法律で認められていない」ということくらいでしょうか。
作中の陣内はこうした難しいテーマをしっかりと受け止めながら、自分にできる最良のことをする。先頭切って行動する。そして結果を出す。このフットワークの軽さと有限実行の力が読者的には心を惹かれるのだと思います。家裁調査官陣内シリーズとして、できればまた出していただきたい作品ですが、伊坂センセーはインタビューでもうやらない宣言をしておられるようです。残念です。





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2016年09月30日

書評747 伊坂幸太郎「陽気なギャングは三つ数えろ」

こんにちは、曹源寺です。

28日の話ですが、上毛新聞という地方紙が誤報をやらかしてしまったことがありました。
【おわび】「格闘ゲーム優勝」は虚偽(9/28上毛新聞)
27日に掲載した「仏で格闘ゲーム世界大会」の記事で、群馬県太田市臨時職員の男性(23)が渡仏して大会に出場した事実はなく、格闘ゲーム部門で優勝したとする報道は事実無根だったことが分かりました。読者の皆さまに深くおわび申し上げます。(以下、略)

経緯としては(コピペですが)、
(1)同僚に格闘ゲームの世界大会に選抜されたと自慢する
(2)フランスの大会に参加するという名目で上司に休みを申請(休む日は連休になるように選んでいた)
(3)ウェブ上にある海外の写真をパクってFacebookに投稿することで海外にいるように偽装工作を図る
(4)出社後、「優勝した」と自慢する
(5)上司が賞金を使っての祝賀会&記者会見を勧める
(6)記者会見の資料を自分で用意し「300万円を放棄して次のシード権を選びました」と発表
(7)虚言疑惑が浮上するも「ゲームセンターレベルの小さな大会だった。携帯は壊れたので証拠はない」と話す
(8)嘘を認める


本人の知らぬ間に話が大きくなってしまい、引くに引けない状況になってしまったという感じですね。
まあ、こんな嘘までついて長期休暇を取ろうとしたクズはとっとと処分されてください。

問題はマスゴミのほうですね。いくら市役所の公式なリリースとはいえ、賞金300万円の大会って結構大きいはずなんですが、現地への確認も一切しないまま写真入で記事を垂れ流すということが許されているということのほうが気になります。
しかも、上毛新聞だけでなく、朝日新聞もこれを転載しているというから驚きです。

いまはこういう「何の裏も取らない記事」=「下手すりゃ捏造記事」が審査校閲をスルーして本紙に載ってしまう時代なんですかね。時代じゃなくて昔からの慣習だったらすごいですね。いや、むしろそうなのかもしれないですね。

こういうのも何のお咎めもなく、運が悪かったね〜で済まされるなら新聞社に未来はないですね。ご愁傷様でした。

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内容(祥伝社HPより)
陽気なギャング一味の天才スリ久遠は、消えたアイドル宝島沙耶を追う火尻を、暴漢から救う。だが彼は、事件被害者のプライバシーをもネタにするハイエナ記者だった。正体に気づかれたギャングたちの身辺で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発。蛇蝎のごとき強敵の不気味な連続攻撃で、人間嘘発見器成瀬ら面々は断崖に追いつめられた! 必死に火尻の急所を探る四人組に、やがて絶体絶命のカウントダウンが! 人気シリーズ、九年ぶりの最新作!


曹源寺評価★★★★★
実に9年ぶりだそうです。「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」に続く第3弾といわれましても、もうすっかり忘れておりますがな。
と思いつつ読み進めていくと何となく思い出しました。「陽気なギャング」は銀行強盗を生業とする4人組で、演説の天才である喫茶店店主の響野、相手の嘘を一瞬で見破る公務員の成瀬、動物をこよなく愛するスリの天才の久遠、正確な体内時計を持ち抜群のドライビングテクニックを持つ雪子、の4人でした。今回は彼らの強盗団としての活躍ではなく、彼らの正体を暴き出そうとした週刊誌記者、火尻との対決というストーリーです。
4人の持ち味が十分に発揮されただけでなく、いつもの伊坂ワールドも存分に展開されていますので、ラスト、特に200ページ以降の伏線を回収しにいくところからの半端ない展開に読んで納得の一作になりました。すべてがラストを迎えるための仕掛けだったのではないかと思うくらい、あれもこれも盛り込んでくれています。

こんなどうでもいいサイドストーリーさえ伏線になっていたんかい!

という驚きは「ゴールデンスランバー」以来かもしれません。読み返しは必至ですわ。
(以下、ちょっとネタバレ)
伊坂作品のラストの傾向として、悪党が最期に因果応報的にやられてしまう、特に主人公が自ら手を下さずとも地獄に落ちてしまう、というのがここ最近のトレンドです。「死神」シリーズや「殺し屋」シリーズなどにもこんなラストが見受けられました。
読者としてはスカッとするような、ちょっとだけもやもやが残るような、何とも言えない気分にさせられますね。
でも、それこそが伊坂作品なのだ!と思えばその通りです。死神だの殺し屋だの、あるいはギャングだの、「ちょっと道を踏み外せばそこは畜生道な連中」がわんさか登場する作品において、おどろおどろしい復讐譚など伊坂作品にはそぐわないですもんね。ちょっとあっけないくらいがちょうど良いのかもしれません。本書もまた、ちょっとあっけないのですが、それもまた良し!でありましょう。





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2016年09月09日

書評741 大倉崇裕「スーツアクター探偵の事件簿」

こんにちは、曹源寺です。

今週は蓮舫議員(以下、R4)の二重国籍疑惑が政治ネタの中心にありましたが、早く幕引きを図りたい民進党となぜか民進党を執拗に擁護する一部マスゴミが議論をすり替えたり、あるいは意味不明な擁護発言をしたりと、いろいろややこしい状態になっています。

整理しますと、
・国籍法において、二重国籍は違法である
・しかし、その運用についてはほとんどザルである
・被選挙権を規定する公職選挙法においても特段の規定はない

と、ここまでが客観的事実です。
以降は議論が分かれるところです。
・規定がないなら別にいいじゃん
・違法ではないが不適切である →枡添のときと同じセリフが再び〜
・外務省や国会議員など、二国間あるいは多国間の利害調整を行う職業においては、厳しく取り締まるべきである
・そうだ、法律で制限しよう →維新の党が動議(!)

実際には二重国籍者は外交官になれないようですね。当たり前といえば当たり前です。しかし、議員についてはこれまであまり議論されてこなかったわけで、そのツケがいま廻ってきているのでしょう。ちょうど良い機会ですから、しっかりと規定し、厳格に運用していただきたいものです。
いっそのこと、帰化一世は議員になれないとするくらい厳格な規定を設けても良いと思います。米国がそうですからね。

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内容(河出書房新社HPより)

ひょんなことから、怪獣に入って演技する「スーツアクター」のコンビを組むことになった、椛島雄一郎と太田太一。映画撮影所で次々とおこる謎の事件を、この凸凹なふたりが解決する!


曹源寺評価★★★★
大倉崇裕センセーの最新刊です。
本書は着ぐるみの中に入って演じるスーツアクターを志望する青年、椛島雄一郎を主人公にして、その相棒である太田太一とともに特撮映画の撮影現場で巻き起こす事件、騒動を解決していく、というお話です。
映画「シン・ゴジラ」は完全CGですから、着ぐるみというのはいわば斜陽産業であるのかもしれません。ヒーローならウルトラマンも仮面ライダーも依然として着ぐるみですが、怪獣となるとどうなんでしょうかね。破壊されるためだけに作られたミニチュアセットとか重くてしょうがない着ぐるみとか、前時代的な匂いがしてしょうがないのですが。
これが怪獣ではなくてゆるキャラであれば最先端の業界と言えるのかもしれませんが。
ストーリーは連作短編形式で4作品を収録していますが、謎解きとしては読み進めるうちに高度になっていくという仕上がりを見せています。短いストーリーのなかで伏線を張り巡らせながら、きちんと回収していくというのはなかなか高度な技だと思いますが、この伏線が分かりやすいものだと読者にバレバレになってしまいますのでこのさじ加減が難しいですね。
本書はまた登場人物のキャラが際立っているのも特徴的です。スーツアクターを志望しつつも、ちょっとした事故から着ぐるみを着ることができなくなってしまった主人公の椛島。怪獣のことなどさっぱり知らないのに天性の才能を発揮する太田。自尊心の塊で友達がいない布施。おとなしい助監督なのに実はとんでもない人だった小川。さっぱりとした男っぷりを見せつける女編集者の飛田。などなど。分かりやすいキャラ設定で会話の妙も楽しめます。
大倉センセーは最近、怪獣オタクであることを隠さなくなっていて、近著「BLOOD ARM」では未知の怪獣をネタにした作品を挙げてこられました。読者としては

この大倉センセーの怪獣愛をどう受け止めようか

と思案してしまいますが、同世代の人間としましては怪獣ネタどんとこい!という気分にさせられてしまいます。





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2016年09月06日

書評740 奥田英朗「向田理髪店」

こんにちは、曹源寺です。

残暑が続きますね。西日本はずっと酷暑だそうですが、いま日本で最も暑いのは広島かもしれません。
真っ赤に染まる広島 25年ぶりV「夢の瞬間」心待ち(9/6朝日新聞デジタル)
スタジアムだけではない。まちも、人も、広島は「赤」に染まっている。広島カープの25年ぶりのセ・リーグ優勝が目の前に迫ってきた。思い返せば万年Bクラスの暗黒時代もあった。「メークドラマ」されたこともあった。でも、もうそんなことはどうでもいい。「その瞬間」まで、マジックわずか4だ。(以下、略)

25年ぶりのセ・リーグ優勝はほぼ確実なところまできました。マジック点灯から試合のある日はほとんどマジックを減らしてきているという驚異的なスピードで一気に「残り4」まできましたので、地元民はお祝いの準備に大わらわだそうです。
東京にいるカープファンはどこでお祝いしたら良いんでしょうかね。黒田投手や新井選手が間違いなく泣くでしょうから、そのときはもらい泣きしようと思います。
さあ、いよいよカウントダウンです!

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内容(光文社HPより)
・札幌で就職した息子がわずか一年で帰郷。理髪店を継ぐと言い出した。
・幼馴染の老父が突然倒れた。残された奥さんは大丈夫?
・異国の花嫁がやって来た。町民大歓迎。だが新郎はお披露目を避け続ける。なぜ?
・町に久々のスナック新規開店。妖艶なママにオヤジ連中、そわそわ。
・映画のロケ地になり、全町民大興奮。だけどだんだん町の雰囲気が……。
・地元出身の若者が全国指名手配犯に! まさか、あのいい子が……。
──心配性の理髪店主人が住む過疎の町で起こる騒動を描いた極上の一冊。


曹源寺評価★★★★★
北海道の中央に位置する苫沢という町で巻き起こる騒動をコミカルに描いた作品です。奥田テイスト満載の連作短編ですから、まあハズレはありません。過疎に苦しむ財政破綻の町という設定で、主人公は理髪店の2代目店主、向田康彦。ご近所のガソリンスタンド経営者や農業従事者、町の助役などさまざまな人たちのストーリーに絡みながら、濃密な人間関係からくるヒューマンなドラマを描いてくれています。そう、田舎町だから濃密なんです。でも田舎なので人口がどんどん減っているわけです。リアルな現実を突きつけられながらも、若い人たちが町の活気を取り戻そうと奮闘したりするなかで、未来に希望も何も持っていない主人公の康彦、という対照的な設定にもまさに現実の平成日本社会を炙り出しています。ですから、

これは平成における昭和のお話

といっても良いかと思います。

テレビドラマ化決定ですわ(願望)

話をじんわりと広げていき、着地点がないようにみえて実はある。読み終わればなぜかほっこりする。こんな文章を書く奥田センセーはやっぱり神ですわ。





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2016年08月05日

書評733 一橋文哉「国家の闇」

こんにちは、曹源寺です。

あぢぃ〜 夏本番ですね〜
今夜辺りから相当寝苦しい夜になりそうです。

さて、自分はアラフィフですが、この世代は小さい頃にロッキード事件があり、その後成人を迎える前後にリクルート事件があったりして、いわゆる汚職・疑獄といった政治事件を強く記憶に留め置いています。
また、UFOやUMAなどミステリ関連、ノストラダムスの大預言、「あなたの知らない世界」や&ロ愛子センセーのような霊能関連にも興味を注がれる時代を過ごしてきました。
ですから、反権力志向をとどめつつも陰謀論にも加担しているという歪んだ精神構造を持っている人が多いのかもしれません。自分もその一人です笑

謀略とか謀殺といった単語にも反応してしまいまして、これを強化してしまったのが松本清張センセーの「日本の黒い霧」という著作であります。下山事件の詳細を知ったのは20代後半、本書を読んでからでした。ちょうどその頃はバブルの後始末で日本中が大騒ぎの最中でした。おまけにオウム真理教関連事件が立て続けに発生し、世はまさに世紀末でありました。イトマン事件や住専問題、住友銀行名古屋支店長射殺事件などは日本経済の闇の深さを我々に教えてくれたものでした。
20年後の現在、政治事件に関しては東京地検特捜部のパワーが大きく下落し、政治資金収支報告書の重箱の隅を突いてはやれガソリン代がどうだとか、コーヒー代が異常だとか、そんな話ばっかりです。
デジタルの時代になって心霊写真もなんだかぱっとしないし、預言みたいなやつはネットに「降臨」してくる怪しげな未来人とか地震を予知できるお母さんとかそんな話で盛り上がっては消えていく。退屈しのぎのネタになっているだけですね。

なんだか、国民全員が不感症みたいになっていて、もうちょっとやそっとじゃ驚かなくなっていませんか。たまに盛り上がるのは「文春砲」くらいなもので、なんというか「モラル的におかしいけど徹底的に追求するには至らない」みたいな話が多すぎますね。
う〜ん、話が抽象的すぎてうまく伝えられないなあ。

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内容(KADOKAWA HPより)
日本の犯罪史を本質を抉るノンフィクション
戦後を代表する重大事件がいかにして起こり、人々にどう受け止めてきたのか。また、その後の日本にどのように影響を与えたか。犯罪史を総括する。


曹源寺評価★★★★
先日読了した「人間の闇」の姉妹作です。一橋センセーは本書のほかにも「マネーの闇」を上梓されていて、角川新書「闇シリーズ3部作」とでもいうかたちになっています。
本書ではロッキード事件、佐川急便事件、リクルート事件といった政財界関連の疑獄事件にはじまり、オウム真理教関連事件とロシアのつながり、古いところでは国鉄3大事件(下山事件、三鷹事件、松川事件)や帝銀事件、また、豊田商事事件の残党と「指南書」の行方など、昭和から平成にかけて世間をにぎわせた事件を幅広く取り上げています。
「国家」というタイトルですが、実際に国家というか政権というか純粋に政治マターといえるのはいわゆる疑獄事件関連に留まりますが、逆に「国家が手を出せないタブー」というのもある意味「国家の闇」と言えなくもないですね。本書後半に書いてある○○利権関連などはもうすでに誰も手を出すことができなくなっているのかと思うと暗澹たる気持ちになります。闇深すぎるわ。。。
読了して思うのは、一橋センセーの取材範囲の広さと、仮説組み立てのうまさが際立っているということです。取材範囲が広いゆえに、他の未解決事件との関連性などにも言及されていまして、

まさか豊田商事事件とライブドア事件がつながっているとは思いませんよ。

つまり、我々一般庶民が事件を聞きかじっていても、それはほんのわずかな踏み跡でしかなくて、

ナスカの地上絵のように、地面にはいつくばっているだけの人間には全体像が理解できない

のでありましょう。
その地上絵の、ほんの一部でも一般庶民に理解してもらおうとする一橋センセーの取材活動に、心から敬意を表したいと思います。せっかくですから、センセーの古い著作から読み返そうかと思います。





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2016年08月02日

書評732 一橋文哉「人間の闇」

こんにちは、曹源寺です。

東京都知事選挙は小池百合子の圧勝に終わり、増田と鳥越は男を下げました。それ以上に男を下げたのは石原伸晃都連会長でした。政治家の発言というものは一般人のそれとは大きく異なり、あっという間に伝播し、多くの人に影響を与えるのだということが良くわかります。
都議会自民党はどうやらクソだということらしいので、これを機会にある程度の膿を出さないといけません。小池氏の手腕に期待しましょう。

最近思うのは、こうした腐れ組織、クソッタレな既得権益団体、トンデモ思想にかぶれて毒を撒き散らしている団体、こうしたものが日本を腐らせているのだなあということであります。
一般企業であれば客が離れ、人材が離れ、組織は瓦解していきます。時代の波に取り残された企業もやがては淘汰されていきます。
しかし、役所や議会は別です。決して潰れることはありません。そこに権力などを与えられているわけですから増長しないわけがないんです。権力は必ず腐る。これは古今東西の不変の真理です。ある程度の新陳代謝がないと本当に腐れていくんですね。
都議会のみならず、全国の地方議会もいろいろありそうです。そろそろメスを入れるべき時が来たのかもしれません。

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内容(KADOKAWA HPより)

グリコ事件、世田谷事件、他、戦後を代表する重大事件がいかにして起こり、日本人にどう影響を与えたか。未解決事件の本質の闇を覗く。


曹源寺評価★★★★
つい先日、相模原市の介護施設において元職員による大量殺人事件が発生しました。抵抗できない重度障害者を真夜中に刺し殺すという大変ムナクソ悪い事件です。大量殺人事件といえば明治の津山三十人殺しをはじめ、深川通り魔事件、宮崎勤事件、埼玉愛犬家連続殺人事件、酒鬼薔薇聖斗事件、北九州監禁殺人事件、大阪教育大学附属池田小事件、池袋通り魔殺人事件、土浦連続殺傷事件、下関通り魔殺人事件、そして秋葉原連続殺傷事件、と思いつくだけでもこんなにあります。通り魔事件多すぎ。

今回の事件は通り魔のように「無差別」に人を殺して回る事件とは性質が違うと思いますが、「差別殺人事件」とは誰も言わないですね。無差別殺人は時に模倣犯を生み出しましたので、差別殺人を大々的に報道すると同じように模倣犯を生み出しかねないから自粛しているのかもしれません。
たとえば、糖尿病で人工透析患者にでもなれば年間500万円以上の医療費がかかりますが、人工透析は自己負担ゼロです。糖尿病患者310万人のうち、人工透析は10万人。人工透析にかかる国費はざっと5,000億円です。
「暴飲暴食を重ねた奴の医療費など国が出すのはおかしいやろ!」
というような意見がまかり通れば、人工透析患者を刺し殺してもええやろ、といった極論が正当化されることになります。糖尿病は暴飲暴食だけが原因ではありませんので、こんな意見でもネットで盛り上がろうものなら大変な世の中になってしまいます。

本書に戻りますが、事件の裏を探り真相に迫るジャーナリスト、一橋文哉センセーが過去の重大事件を紐解き、事件に至る犯人の心理描写や証言、生い立ちなどの背景からその病理の根源に迫るノンフィクションを書き上げたものです。
マスコミや警察が発表しているような上っ面だけの背景では分からなかった「闇」の部分を浮かび上がらせているのが、本書を読むと良くわかります。たとえば、世田谷一家4人殺害事件では、上層部が秘密保持を重視しすぎて現場に伝わらず、犯人が逃走する前の時間帯の目撃証言を集めていた(!)とか、秋田児童連続殺害事件の畠山鈴香被告は小学校時代からのいじめ被害者で、その内容が(実に東北らしい)えげつないものだった、とか、実際には事件当日の供述が曖昧なまま審理が進んでいたことなどなど、不可解だったりムナクソ悪い話だったりいろいろですが、上っ面だけのテレビ新聞とは異なる非常にディープな内容がそこにはありました。

未解決事件という単語だけで普段からゾクゾクするような自分ですが、考えてみれば解決済みの事件であっても実際には謎な部分が残っているような話はあちこちにあります。オウム真理教の村井副代表が視察された事件は、犯人の徐裕行は2007年に出所しています。本当は誰に頼まれて村井を殺したのか?彼は明確にヒットマンを否定していますが、真相はどこにあるのでしょうかね。
また、新潟少女監禁事件なんて、2000年に逮捕、2003年に実刑判決で懲役14年だから、未決拘留期間を考慮すると実質的に犯人の佐藤宣行は出所していることになりますね。
(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル

マジで怖いんですが。






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2016年07月29日

書評731 池井戸潤「陸王」

こんにちは、曹源寺です。

東京都知事選挙はいよいよ明後日を投票日に控え、各候補者も最後の追い込みにかかっています。
今回は21人の候補者が立候補していまして、事実上上位(って何やねん。誰が決めるねん)3候補の決戦と報道されていますが、その他18人の候補者が共通して主張しているのが「どうか投票所に行ってください」というやつです。

彼らには組織票という名のバックアップがありませんので、頼りになるのが4割とも言われる浮動票なわけです。4割でも400万票ありますから、総取りすれば(理論上は)知事になれるのです。

都の選管によると、前回の投票率は46.14%、前々回は62.60%、さらにその前は57.80%となっており、都知事選の投票率はだいたい15%くらいのぶれ幅があるようですので、100万票以上の死に票が生まれたり生まれなかったりということが分かります。まあ都民は気ままであるということの証左ですね。

個人的にはこの投票に行ったり行かなかったりする150万人の行動に非常に興味があります。常に投票率が安定している高齢層ではないですね、間違いなく若年層です。この若年層がどれだけ投票行動するのか、それによってどれだけ票数に影響を与えるのか、注目したいと思います。
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内容(集英社HPより)
走れ、勝利を信じろ。
足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。
埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか。
社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害――。
チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか?


曹源寺評価★★★★★
企業小説を書かせたらもはや右に出る者なし、の池井戸センセーの最新刊は、埼玉県行田市に本社を置く零細の足袋メーカー「こはぜ足袋」が新たなビジネスに果敢にチャレンジする感動のストーリーであります。
池井戸小説の定番といえば、
・中小零細企業である
・経理担当の番頭がいる
・大手企業が妨害する
・資金繰りに窮する
・みんなの努力で開発に成功する
・一発逆転からのハッピーエンド
という王道を行くストーリーがもはや定番と化していますが、本書もまたこれに倣うものであります。
マンネリと言えばそれまでですが、読者はこれを求めています。

だから、これでいいんです。面白いですから。

困難が待ち構えていてもチャレンジする姿が見たいのです。
艱難辛苦の果てにあるハッピーなゴールが見たいのです。
主人公とともに滂沱の涙を流したいのです。

これまでの作品と微妙に異なるのは、主人公の元にやってくる様々な「縁」が微妙にリアルだったりすることです。たとえば、取引銀行。古い体質の地方銀行をメーンバンクとするこはぜ足袋は当初、非常に理解のある担当者がいましたが、支店長とぶつかった挙句に異動、さらには退職してしまいます。後任の担当者はきわめてクールで何を考えているのか良くわからない。しかし、、、
また、ソールの素材を探していた主人公宮沢の元に届いた情報で、特許を保有する男がいたが、過去に倒産歴があり、様々な名目でお金をふっかけるクセのある男だった。しかし、、、
さらに(ややネタバレ)、外資系アパレルの社長との丁々発止のやりとりや、メーンバンク支店長の言葉、などなど、小説というよりも現実の企業経営の場面をリアルに見せているかのような描写に、これまでの作品とは一線を画すリアリティを描いてくれています。
実はこの小説には実在するモデルがありまして、行田市の「きねや足袋」という企業です。本当にランニング分野に参入していて、ランニング足袋「MUTEKI」というネーミングで販売されています。ランニングシューズとはちょっと違いますが、足袋とシューズの中間のようなMUTEKI、ちょっと履いてみたくなりました。







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2016年06月21日

書評722 麻見和史「深紅の断片」

こんにちは、曹源寺です。

昨日は沖縄県で米海兵隊に属する男性が暴行殺人で捕まった事件に関して、地元住民(!?)による抗議集会が行われていたことが大きなニュースになりました。

正直申し上げますと、この手の報道にはうんざりです。
個人の犯罪をそいつの属する団体の責任に摩り替えるのはもうやめにしませんかねぇ。今回のは軍属の人間が犯した罪だけど、軍の命令があってやったわけではないし、軍に何らかの責任があるわけでもないでしょう。
「海兵隊がいなければこんな犯罪も起きなかったんだから海兵隊の撤退を求めることに何の間違いがあるのか?」という主張は、一見正しいようで実は大間違いです。

なぜなのか?
では、こう言い換えてみたらどうでしょう。
「底辺高校の教師がわいせつ事件を起こした。底辺高校は生徒のみならず教師も底辺なのか。こんな危険な学校があるからわが町は危険に晒されるのだ。ただちに移転せよ」
こんな主張をされたらものすごく違和感を覚えますよね。沖縄で活動している連中はまさしくこれと同じ主張をしているわけですよ。もしもこんな発言が飛び出したら人権派の弁護士が黙っていないでしょう。大挙して現地に押しかけてきますよ。
もっと過激な言い方をすればこうなります。
「朝鮮学校の生徒が暴力事件を起こして他校の高校生が死んだ。朝鮮学校は反日教育をしている。こんな危険な学校があるからわが町は危険に晒されるのだ。ただちに移転せよ」
こんな主張と本質は一緒です。
つまり、今回の事件でいくら「沖縄県民の我慢は限界に近づいた」などと叫んでも、これを米軍撤退のための錦の御旗にするのはある意味人権侵害であり、差別でもあるということです。
これを県知事が先頭に立って発言しているのが今の沖縄の現状です。

こうした集会を意気軒昂として報道するマスゴミの姿勢にも疑問です。マスゴミはむしろ、こうした先鋭的な活動が差別の助長につながるとして住民に冷静さを求めなければならない立場のはずですが、率先して報道を繰り返すマスゴミは人権侵害と差別を助長していると言っても過言ではありません。
犯人は厳罰に処されるべき(死刑でもいいくらい)ですが、これを政争の具に使う連中(○核派とかね)と報道で煽っているマスゴミには本当に辟易とします。


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内容(講談社HPより)
犯人の119番通報で、事件の幕が開く!
救急隊の若き隊長・真田健志は、血気盛んな後輩・工藤、運転のエキスパート・木佐貫と三人一組で出動する日々をおくる。ある晩、「少女が閉じ込められている、早く助けないと死ぬ」と、犯人と思しき相手から通報が!監禁された少女は衰弱し、背中にはトリアージタッグを模したシールが貼られていた。四色の紙片(タッグ)は、本来、疾病者の治療優先順位を示すためのもの。しかし、現場に残された紙片は、被害者をどれだけ痛めつけたのかを表し、次の事件を示唆していた。彼らは、人々の命と町の平穏を守ることができるのか!?


曹源寺評価★★★★★
消防・救急関係のミステリといえば日明恩センセーが常連として有名ですが、麻見センセーがこのジャンルにチャレンジしてこられましたので読んでみましたよ。
主人公の真田が所属する救急隊に、犯人と思しき人物からの119番通報が入る。真田が現場に急行すると、廃工場の大型冷蔵庫に閉じ込められた少女を発見する。少女の足もとにはなぜか大量の血液が残されていたが、少女は大量出血していたわけではなかった。そして、少女の背中にはトリアージタッグのようなシールが貼られていた。
少女は一命を取りとめたが、同様の事件が続いた。なぜ、被害者にタッグがついて大量の血液が残されていたのか。
とまあ、なかなかに謎な展開ですので読み手としては続きが気になりどんどんページが進んでいきます。
途中、救急隊に別の救急事案が続いてしまうので話が脱線しているように思えるのですが、

これがどっこい伏線だったりする

のでまったくもって気が抜けません。全然関係ないと思っていたらつながるつながる、、、おぉ、つながった!みたいな感じです。
ラストもちょっと意外な展開なので、ミステリとしてはまあ楽しめるほうではないかと思います。残念なのは登場人物の書き分けがやや雑であったこと、事件の鍵を握るトリアージタッグについての理解が予備知識なしだとちょっときついこと、そして警察の動きが連動しなさすぎなこと、の3点が挙げられましょうか。このへんが肉厚だったらもっと面白かったのではないかと思いました。





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2016年06月17日

書評721 一橋文哉「未解決−封印された五つの捜査報告−」

こんにちは、曹源寺です。

舛添が都知事の職を辞したわけで、まあこれはこれで結構ではありますが、次の都知事をどうするの?という点がまさにクローズアップされております。
都知事選というのは、どうして毎回毎回、いろいろな人たちが登場してくるのか、不思議でなりません。当選を目的としていない人が半分くらいいそうですもんね。
ちなみに、2014年に実施された都知事選の立候補者の面々は、以下のリンクで見ることができます。

候補者一覧(朝日新聞より)
ひめじけんじ 61 建物管理業 無所 新
宇都宮健児 67 (元)日弁連会長 共産 社民 無所 新
ドクター・中松 85 発明家 無所 新
田母神俊雄 65 (元)航空幕僚長 無所 新
鈴木達夫 73 弁護士 無所 新
中川智晴 55 設計事務所代表 無所 新
舛添要一 65 (元)新党改革代表 無所 新
細川護熙 76 (元)首相 無所 新
マック赤坂 65 スマイル党総裁 諸派 新
家入一真 35 ネット会社役員 無所 新
内藤久遠 57 (元)陸上自衛隊員 無所 新
金子博 84 ホテル業 無所 新
五十嵐政一 82 社団法人理事長 無所 新
酒向英一 64 (元)瀬戸市職員 無所 新
松山親憲 72 警備員 無所 新
根上隆 64 政治団体代表 無所 新


こんなにいたwwww

舛添が当選するのも無理はありません。知名度が違いすぎました。

都知事選では前回のようにどうしても知名度が得票数を左右してしまいます。知名度が低い人はそれだけで圧倒的に不利なわけです。これは何を意味するのかというと、「大勢の都民が情報不足の状態にある」というのと同義なわけです。
あ、もちろん逆の意味もありますよ。「大勢の都民が情報に触れようとしていない」ということも見逃せないと思います。
インターネットの時代においてもなお、みずから積極的に情報を取得しようとしていない人が何と多いことか、と嘆いてしまうレベルだと思います。

ですから、おそらくR4が立候補したら相当の得票数となることは間違いないでしょう。もしかしたら本当に当選するかもしれません。知名度という点では相当なものですからね。

自分は思うのです。いっそのこと、都知事は俳優の松平健でいいのではないかと。
マツケンに殿様の格好をしていただき、大江戸の殿としてふんぞり返っていただく。それだけで都政はうまく回るのではないかと。暴れん坊将軍ならぬ暴れん坊都知事、どうでしょう。
ちょうどリオに行って次の五輪の引継ぎという行事もありますから、マツケンサンバを世界中に知らしめるいい機会でもあります。

中途半端に知名度があって、でもその裏にはとんでもないイデオロギーを覗かせている、、、そんな人よりよっぽど都民のために働いてくれそうです。

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内容(新潮社HPより)
「住友銀行名古屋支店長射殺事件」「八王子スーパー強盗殺人事件」「ライブドア『懐刀』怪死事件」……。闇でほくそ笑んでいるのは誰か。文庫オリジナル。
犯人逮捕が何度もささやかれながら、いつまでも終結しない事件がある。一方で、犯人が逮捕されていながら、その背景が全く明らかにされない事件がある。それはなぜなのか。迷宮入りする「住友銀行名古屋支店長射殺事件」「ライブドア『懐刀』怪死事件」、そして、すべてが心の闇に隠された「酒鬼薔薇事件」など、解決されざる大事件の深層に圧倒的取材で斬り込んだ犯罪ノンフィクション集。


曹源寺評価★★★★
読む本がなくなるとノンフィクションに走ってしまうことが良くありまして、そういえば一橋センセーの著作はあまり読んだことがなかったなあと思い出したので、手ごろなところから始めることにしました。
未解決事件と聞くと心がときめいてしまう、という書き出しで始まる一橋センセーですが、ミステリ好きならこの気持ちは分からなくはないですね。真犯人はどこにおるんや?という純粋に事件を解き明かしたい気持ちがまずは先にたちますので。
本書は「新潮45」で連載されていたコラムが文庫化されたもので、内容は「八王子スーパー強盗殺人事件」に始まり、「住友銀行名古屋支店長射殺事件」「豊田商事会長刺殺事件」「ライブドア『懐刀』怪死事件」といずれも世の中を騒がせた未解決事件ですが、一橋センセーは世に流れた通り一遍の情報ではなく、まさしく「裏の情報」から事件を見つめなおしておられます。
「八王子スーパー〜」は単純にパートのオバちゃんと女子高生が殺された事件ではなく、怨恨のセンが濃厚であったというのはちょっと衝撃でした。
「豊田商事〜」もあちこちで恨み買っていたから殺されたのはしょうがねえなあと思っていましたが、実はあのタイミングで殺されたのには理由があった!みたいな記事でちょっと驚きを隠せませんでした。
あと「神戸連続児童殺傷事件」も掲載されています。「酒鬼薔薇聖斗」であまりにも有名なこの事件は、犯人逮捕で一件落着といかないところが未解決ではないという理由になるのでしょう。最近は本人がホームページを立ち上げたり、文春だかが出所後の本人を捉えたりして誌面をにぎわせていました。しかし、一橋センセーは文春より前に多摩地区にいることをキャッチして本人と思しき人物に接触を試みていました。

一橋センセーの取材力は半端ないですね。

世の中には全く尊敬できないノンフィクションライターが結構いますね、実名は出しませんが。逆に、事件ものでがっちりと取材されているのは一橋センセーと清水潔センセー、野村旗守センセーなどはすごいなあと思います。あ、あと忘れてはいけない溝口敦センセーはもう大御所ですね。
本書の文章はまとまりがありそうで実はなかったりしますが、これは膨大な情報量を短編レベルのボリュームに圧縮して書かざるを得ない編集の都合ではないかと推察します。それだけ取材力が半端ないということの裏づけでもありましょう。それぞれが一作ずつ本にできそうな内容ですので、お得感はありますね。
ただ、豊田商事事件はいかんせん古すぎかなと思ったのですが、21世紀に入ってからも豊田商事の残党どもが当時のマニュアルに従って詐欺を働いているという事実(!?)を読まされると、「バブルの系譜」と「詐欺の遺伝」はこの豊田商事に源流を求めることができるとする一橋センセーの主張には耳を傾けざるを得ません。

そういえば、本書を読んで90年代半ばから後半にかけてさんざん読みつくした「別冊宝島」シリーズを思い出しました。「コスモポリタン事件」や「平和相銀金屏風事件」にはじまったバブル関連の事件はだいたいあのシリーズで勉強させていただきました。あの頃から未解決事件のなかでも特に経済事件、ウラの世界が垣間見える経済事件は自分のすぐ近くにあるのだということを学びながら仕事をさせていただきました。今はただ感謝感謝であります。





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2016年06月03日

書評717 大倉崇裕「天使の棲む部屋−問題物件−」

こんにちは、曹源寺です。

祝!増税延期!!
安倍首相でなければできなかった決断ではないかと思います。財務省と外務省を押し切ることができる内閣というのは、強い内閣であると言って良いでしょう。
財政の均衡よりも経済の成長を促すべきという論調は至極真っ当なのでありますが、日本の新聞社はこの決断さえも「目先の選挙対策」とか「社会保障の財源はどうするのか」といった内容でしか論評できないようです。
まあ、そもそも安倍首相も「リーマン・ショック級のクライシスや大震災がなければ増税する」などと発言していました。これは裏を返せば「月次の経済指標は無視する」と言っているに等しいわけで、これを修正して「新たな判断」としたのはまあ評価できます。

新聞各社の社説を見出しで比較してみましょう
【読売】消費増税延期 アベノミクスをどう補強する(6/2)
【朝日】増税再延期 議論なき決定の異様さ(6/1)
【毎日】増税再延期表明 未来への責任はどこへ(6/2)
【産経】消費増税の再延期 今度こそデフレ脱却を 社会保障への影響食い止めよ(6/2)
【日経】成長と財政再建の両立捨てるな (6/1)


朝日と毎日は「ツケを未来に回すな」といった内容が中心です。読売と産経、日経は「経済成長を優先するのは分かったが、社会保障の財源のためにも財政再建は無視するな」という内容、それと「ムダを省く構造改革も必要だから考えろ」です。

読むと納得してしまいそうになるのですが、そもそも財政再建は優先順位としてそんなに高位にあるのか、どうしてもそこが疑問符なんですよね。
「国債の信認が〜」とか「プライマリーバランスが〜」とか言う財務省ですが、本当にそうならすでにシングルAマイナスまできている日本国債はもっと金利が高くてもおかしくはないのですが、なぜかスルーされています。
ムダを省く構造改革は個人的にはあまり反対ではないのですが、経済関連の人気ナンバーワンブロガーである三橋貴明センセーはもっと積極財政しろと主張されています。

積極財政は個人的にも賛成ですし、インフラ強化のための投資は怠るべきではないと思っています。しかしですね、Fラン大学をどんどん作っては教授職に自分たちのところの役人を送り込んでいる文部科学省みたいなところは、どんどん予算削減しても良いのではないかと思ったりもします(これはマスゴミも一緒に乗っかっているので性質が悪いですわ)。Fラン大学は百害あって一利なしです。
あとは資格ビジネスに熱心な天下り団体とか、公営ギャンブルを運営する特殊法人とか、UR(都市再生機構)のようなゾンビ団体とか、叩けばホコリがいくらでも出そうな公益社団法人などは民間の活力を阻害していると判断されれば即、廃止にするべきだと思います。

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内容(光文社HPより)
大島不動産販売・販売特別室の若宮恵美子は、桁外れの「問題物件」のクレーム処理に悪戦苦闘、危機一髪のところを何度も犬頭光太郎という奇天烈な男に助けられている。文字通り人間離れした力を持つ犬頭は、前社長の遺児・大島雅弘が大事にしているぬいぐるみ・犬太(いぬた)の化身なのか……?そんな恵美子に新たに押しつけられたのは、アメリカのアリゾナ州の外れに建つ洋館だった。「天使の棲む部屋」と呼ばれる一室では、犯罪者ばかりが何人も拳銃自殺を遂げており、死者は50人とも100人とも言われているというのだが――。


曹源寺評価★★★★
難病で苦しむ男のぬいぐるみが化けて!?活躍する「問題物件」シリーズの第2弾です。って書くと、なんだかラノベのようですね。軽く読めるという点で、あながち間違いではないですが。
主人公の若宮恵美子は2代目社長になるはずだった雅弘のお世話をしているという設定。しかし、この雅弘が難病に侵されていて社内も雅弘を追い落とそうとする勢力がいる内紛状態。雅弘の部署である販売特別室には曰くつきの物件が次々と舞い込んできて、恵美子はその処理に追われるが、ピンチになると颯爽と現れるのがこの犬頭光太郎であります。なんだかヒーローものにも聞こえますね。
連作短編4作品が収録されています。ちょっとしたミステリにもなっていますので、「問題物件」に仕掛けられていた謎が解き明かされるまでの展開は比較的軽めであるものの、内容はかなりシビアだったりします。この辺りのギャップの激しさは「警視庁総務部動植物管理係」シリーズにも見られる大倉センセーならではの特徴かもしれません。
しかしながら、犬頭光太郎の無双さが際立ってきましたので、

シビアだけれどもファンタジー、ミステリだけどもファンタジー

という、なんとも言えない味わいがここに生まれました。楽しく読めるシリーズです。





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2012年04月25日

書評381 相場英雄「震える牛」

平日は毎朝4時40分くらいに起床して、夜11時くらいに就寝。仕事もストレス溜まりっぱなしで時間に終われる毎日。土日も起床時間が同じで、テニス漬けにより肉体をいじめ抜き夜も遅い。こんな生活が3週間も続くと、蓄積した疲労がいつまで〜も抜けないですね。眼の焦点が合わないときがあるんですが、ヤバイかしらん。GWまではガマンの日々だな〜。


内容(小学館HPより)
平成版『砂の器』誕生!
警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち未解決となっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。初動捜査では、その手口から犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んでいた。田川は事件現場周辺の目撃証言を徹底的に洗い直し、犯人が逃走する際ベンツに乗車したことを掴む。ベンツに乗れるような人間が、金ほしさにチェーンの居酒屋を襲うだろうか。同時に殺害されたのは、互いに面識のない仙台在住の獣医師と東京・大久保在住の産廃業者。田川は二人の繋がりを探るうち大手ショッピングセンターの地方進出、それに伴う地元商店街の苦境など、日本の構造変化が事件に大きく関連していることに気付く。
これは、本当にフィクションなのか?
日本の病巣、日本のタブーに斬り込んだ、衝撃のエンターテイメント大作!






曹源寺評価★★★★★
この相場英雄という方は元々、時事通信社の記者をやっていらした方で、ダイヤモンド社の「経済小説大賞」を受賞した経歴がおありだそうです。受賞作の「デフォルト(債務不履行)」は読んだ記憶があります。
それ以来ということになりますので、7年ぶりですね。本書は新聞の5段ぶち抜きで広告が掲載されていたのでインパクトが強かったのを覚えています。
タブーに挑戦した内容だという触れ込みでしたので、業界の裏話が中心になるのかなあと思っていましたが、内容は捜査一課の田川刑事を中心としたミステリで、これに元新聞記者でWebニュースサイト記者に転身した鶴田真純のストーリーが交錯しながら、事件の真相に迫るという展開になっています。
ただの警察小説ではなく、むしろ奥深いテーマが見え隠れします。それは「巨大SCの繁栄と商店街の没落」であったり、「食肉業界の深い闇」であったり、「地方都市の衰退」であったり、ということで、なるほど、郊外の幹線道路沿いは確かに大手小売チェーンの巨大店舗ばかりになり、地方出張しても金太郎飴のような同じ光景が眼前に広がります。巨大なショッピングセンターがオープンするとなれば、一応地元の企業や店舗にも声がかかりますが、割高なテナント料から出店もままならず、結局安さに惹かれた客がSCに流れ込んで地元の商店街がどんどん衰退していき、シャッター通りになります。しかし、ちょっとでも売り上げが落ちればテナントも撤退するでしょうし、目玉のテナントがいなくなればSC自体の集客力も落ちるでしょう。SC全体では成長を見込むことが出来なくなり、結局SC自体が撤退となれば、残された住民は買い物難民になるわけです。つぶされた商店街もたやすく復活は出来ないでしょう。おそらく、SCには「社会インフラ」としての自覚などなく、まるで焼き畑農業のように市場を荒らして去っていくだけの存在なのかもしれません(本書はこのような「悪」としてのSCを強調しています)。商店街は地方都市より、むしろ東京のほうが頑張っているのかもしれないですね。本書では中野区の商店街を人情味溢れる街として描いていますし、自分の住む街も南北と東西の2本の商店街モールがあって元気です。本書を読むと、商店街のよさを再認識させられます。
食肉業界のほうは、その昔にTV番組でミー○ホープ事件を再現したVTRを流していたのを食い入るように観てしまったために、非常に印象に残っています。あの事件は本当に胸糞悪かったです。挽き肉に古いパンを入れていたとか、水を足して重量をごまかしていたとか、いまでも信じられないようなことを平気でやっていたんです。うちの息子は小麦アレルギーですから、そんな挽き肉食べようものならアナフィラキシー起こして救急車もんですよ。そんなあくどい業者も、本書には登場します。
あと、「食品の裏側〜みんな大好きな食品添加物」という本がベストセラーになりましたが、「古い肉」と「混ぜ物」と「添加物」でできた成型肉は本書でも登場します。本書を読むだけで、安いだけのレストランとかスーパーで買い物できなくなります。この本とミートホー○事件を反面教師として、我が家は未だに野菜は無農薬野菜のお店で、肉は信頼の置ける肉屋か生協だけでしか買いません。
本に戻りましょう。難しいことを専門用語を交えて書いているわけではありません。むしろ、難しい表現や経済用語などを避けて平易に書かれていますので読みにくくはないし、展開が速いからどんどん読み進めることができます。どことなくミート○ープやイ○ンを髣髴とさせる設定で、現実と照らし合わせながらイメージすることもできます。
ただね、「平成の砂の器」とかオビに入れるのやめましょうよ。本作は砂の器とは似て非なるものですよ。地道な捜査の積み重ねによって犯人像をとことんまで絞り込んでいく展開はお見事ですが、砂の器はまたちょっと違うテーマが内包されていますし、本作は警察小説と経済小説の高次元での融合と呼べる、新たな頂点に立つ作品ではないかと思います。社会派ミステリという言い方でも通じるかもしれませんが、このくくりに入れるのはちょっと憚られるような感じがします。
あと、最後がちょっと後味悪いなあ。警察の闇まで加わって、著者は

とことんタブーに挑戦しているなあ

と感じた次第(あと、新聞業界の闇も書かれているかもしれません)。








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2012年04月12日

書評378 今野敏「防波堤 横浜みなとみらい署暴対係」

日経新聞を読み始めて、はや15年、いやもっとか、経過しておりますが、最近になっていい加減やめてしまおうかと思うようになりました。
その理由は
・一面記事はうそばっかり(何回だまされたことか)
・政治記事は政局ばっかり(政党に「政策を語れ」とか抜かすくせに、政策を記事にしないのは卑怯)
・経済記事は誇張ばっかり(財務省の言いなり記事が目立つね)
・産業記事は広告ばっかり(プレスリリース読めば十分だし、カネもらってんのか?という記事もあるね)
・スポーツ記事はちっちゃい(記事は他紙よりかなりまともだが、ボリュームがほしいね)
・社会記事はネタばっかり(スクープとかないの?)
まあ、日経に限らず、大新聞はたいていこんな感じでしょうが、日経の場合は「経済新聞」を名乗るだけに、経済ネタが命であるはずです。ですから、スポーツ記事が少ないとか言うのはある意味反則です。ケチつけるレベルとしては間違っていますね、と自己反省。
ですが、その経済記事はどうかというと、最近でもひどい記事があったと話題になりました。
任天堂が日経にブチ切れ(まとめサイトにリンク)
日経やめれば年に5万円浮くなぁ。ちょっと真剣に考えようかな。

内容(徳間書店HPより)
神奈川県警みなとみらい署の暴対係長・諸橋は「ハマの用心棒」と呼ばれ、暴力団から恐れられている。昔馴染みのやくざ・神野の唯一の組員・岩倉が身柄を拘束された.素人に手を出したという。神野がそんなことをするはずがない。陽気なラテン系の相棒・城島とともに諸橋は岩倉の取調に向かった。 表題作「防波堤」他、横浜を舞台に悪と戦う諸橋班の活躍を描く6篇を収録。






曹源寺評価★★★★
「禁断 横浜みなとみらい署暴対係」の続編というかシリーズもので、今回は短編集です。主人公の暴対係長・諸橋とその相棒である城島、部下の浜崎、日下部、倉持、八雲の面々、また、組員が一人しかいない神野組、などなど、いつもの登場人物がいつものように事件を追う。6篇収録されているんですが、なんだか同じようなセリフ、同じような展開、同じような結末が読者を襲います。なんだかデジャブーのように襲います。
そう、

まるで水戸黄門です。

娘が悪者に襲われ、黒幕の越後屋が悪代官と組んで、そこへ助さん格さんが乗り込んで暴れて、頃合を見て「この紋所が目に入らぬか」と一喝してみんなが平伏す。黄金のパターンですね。本書もまさしくそれであります。一触即発の横浜で、暴力を未然に防ぐために街を歩き、情報を集め、ときには強引な捜査も行う。そして誰かが一言「さすがハマの用心棒」。それに対して諸橋が「オレはそう呼ばれるのが大嫌いなんだ」。ウゼーッと思う人も多いでしょうが、しつこいくらいに繰り返される名セリフ。奇妙な安心感。それでも面白いと感じるのは、まさしく今野センセーの筆力にほかなりません。
まあ、連載を単行本にすると時にこういう弊害も出てきますが、これって

再編集したほうがいいんじゃないすか?

この水戸黄門状態をわざと狙ったのだとすると、ある意味たいしたものだとは思いますが。








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2012年03月23日

書評374 麻生幾「外事警察 CODE:ジャスミン」

最近はニュースや新聞記事、それに雑誌までもが「首都直下型地震:震度7」の特集を組んでいますね。
もう震度7だったら地下街、ビル、古めの建物、電車、高架、橋、これらの場所にいた時点でOUTな気がしますね。つまり、耐震性のしっかりした建物の中にいるか、広場のような場所にいるか、でないと身の安全は保証されないということでしょう。
これが何を意味するかと言うと、「もう首都圏の人間はいつ死んでもおかしくない」ということではないでしょうか。だれもそんなことは言ってませんが、そういうことだと肝に銘じておく必要があります。
人はみな「自分だけは死なない」と勝手に思っている(自分もその一人)わけですが、2万人が一瞬にして死ぬ時代です。いつ死んでもおかしくないように、身支度を整えておきましょう。
え、お前は整えているのかって?いいえ、やっていません。なんだか、身支度を整えると本当に死んでしまいそうだから。

内容(NHK出版HPより)
その女は敵なのか味方なのか
すべての始まりは、外事警察の内部資料流出事件で明された、〈協力者〉である女の存在だった。女の存在を隠蔽しようとする日本の外事警察とその女を密かに追う韓国NIS、FBIの捜査官。数奇な運命の女を巡る、各国の激しい情報戦の先に見え隠れするのは迫り来る核テロの現実的な脅威だった。陰謀、罠、裏切りが渦巻き、圧倒的リアリズムで描写する緊迫のサスペンス諜報小説。






曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

曹源寺評価★★★★★
本書は2009年に発刊された「外事警察」の続編ということになりましょうか。登場人物がかなり重なります。でもちょっと忘れちゃっていたなぁ。
NHKではドラマになったし、今年の6月には映画も予定されているという作品ですが、本書はどうなんだろう。うーん、、、読みにくくて難解。時系列も文法も滅裂で、主語もわからないような文章が並ぶから頭の中に入ってこないのよ。
ストーリーの大枠としては、さすがに麻生作品だけあって壮大かつ緻密で、サスペンスタッチなところもステキなんですが、いかんせん、ざーっと読んでも理解するのに時間がかかるので頭の中を整理するだけで大変です。読み終えた文章の3行あとに意味を理解していく感じといえば分かるでしょうか。
それに、視線が首尾一貫していないというか、誰の視点で描いているのか良く分からなかったり、ピンポイントで情景や心情が良く分かる場面があれば、逆にいくら読み込んでもなんのこっちゃという場面もあったりで、頭の中がかなり混乱します。

ここまで読みにくいのは久しぶりです。

麻生作品は基本読みにくいのですが、最近はだいぶこなれてきた印象だっただけに、昔に逆戻りしたのではないかと思ったくらいです。








曹源寺評価★★★★★
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しかも御年81歳!

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2012年03月09日

書評371 歌野晶午「春から夏、やがて冬」

面白い画像を見つけたのでアップロードしておきます。なかなか含蓄があります。
勝者たれ.jpeg

仕事でも、新しいことをやろうとするとまず、「できない理由」を探す人がいますね。自分はそういう人になるのが嫌で、公務員になるのをやめました。前例主義のはびこる大企業も嫌でしたので、それほど大きくない企業に入りました。いま、ウチの会社も少し大きくなって、前例主義がはびこっているような気がします。思考を切り替えて、「どうやったら実現できるか」という考え方をしていかないと、立ち遅れてしまいそうですね。


内容(文藝春秋HPより)
『葉桜』を超える衝撃! 鬼才の渾身作、ついに降臨
スーパーの保安責任者の男と、店で万引きを働いたDVの被害に遭っている女。偶然出会った2人は、驚くべき因縁で結ばれていた!?
関東の地方都市にあるスーパーの保安責任者・平田は、ある日、店で万引きを働いた末永ますみを捕まえた。いつもは情け容赦なく警察へ引き渡す平田だったが、免許証の生年月日を見て気が変わり、見逃すことに。それをきっかけに交流が生まれた2人。やがて平田は己の身の上をますみに語り始めるが、偶然か天の配剤か、2人を結ぶ運命の糸はあまりに残酷な結末へと導いていく。傑作『葉桜の季節に君を想うということ』の著者が満を持して放つ、究極のミステリー。






曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

曹源寺評価★★★★
本書は「葉桜の季節に〜」の版元と編集で望んだ作品ということで、オビにも「『葉桜』を超える衝撃!」みたいな文字が躍っています。あと「ラスト5ページで世界が反転する!」という文字も。これでは嫌が応にも盛り上がざるを得ません。
実際には世界が反転するほどでもないし、「葉桜」超えでもない。
普通に読めば、それはそれは哀しいお話で、やり切れなさは貫井徳郎先生の作品に並ぶくらいですが、期待感が高すぎてその分、ちょっとガッカリです。もったいない。

編集者は読者をオビであおるのを止めろ!

と言いたくなります。
主人公・平田誠の半生も、そして出会った末永ますみの半生も、出会うとか出会わないとか関係なしにそれぞれが不幸です。そして、不幸と不幸が出会ってしまったら、今まで以上に不幸になってしまったという感じでしょうか。いや、違いますね。本書は単純な解釈ができない仕組みになっています。もしかしたら、最後に平田は救われたのかもしれないし、ますみもまた、救われたのかもしれない。哀しいのは哀しいけれど、単純な二元論では収まらないような作品として捉えるべきなのではないかと思います。
だからこそ、哀しいお話なのに直木賞の最終候補にも選ばれたのでしょう。深いです。
どこかのインタビューでも作者は「連続殺人ゲーム」シリーズのような本格ミステリと、本書のようなサスペンスティックな作品を書き分けていくといった内容のコメントを目にしました。
自分はどちらも好きです。歌野センセーの本ならば読み続けましょう。








曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

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posted by 曹源寺 at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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