ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:か行の作家

2011年11月18日

書評350 玖村まゆみ「完盗オンサイト」

ブータン国王夫妻が来日されていて、イケメン夫婦ということで報道が過熱していますが、なんだかワイドショー的で嫌だなあと感じているのは自分だけでしょうかねえ。
晩餐会に出席せずに政治資金パーティーを優先させた一川防衛大臣などは責められて当たり前ですが、こうした時だけブータンという国を採り上げるのは、ちょっと違うのではないかと。
つまり何が言いたいのかというと、もっと普段から海外の話題を採り上げてくれませんかねえということです。印象操作など無用ですが、あんなに日本のことを気にかけてくれる、メンタリティの近い国なら、こちらももっと浸透させたいなあと思うわけです。台湾とかトルコとかブルネイとかインドとかポーランドとか、親日国ならいっぱいありますから。

内容(講談社HPより)
第57回江戸川乱歩賞受賞作
どこまで真剣? ホントにできるの? 550歳の人質を皇居からいただいちまえ!
報酬は1億円。皇居へ侵入し、徳川家光が愛でたという樹齢550年の名盆栽「三代将軍」を盗み出せ。前代未聞の依頼を受けたフリークライマー水沢浹(とおる)は、どうする? どうなる? 不気味な依頼者、別れた恋人、人格崩壊しつつある第3の男も加わって、空前の犯罪計画は、誰もが予測不能の展開に。
最後に浹が繰り出す、掟破りの奇策とは?
アイデアは馬鹿馬鹿しく、動機は不条理。特異な才能の出現を感じた――<東野圭吾氏>






曹源寺評価★★★★
第57回の江戸川乱歩賞受賞作のひとつです。乱歩賞というのは推理小説作家への登竜門ということで長年の伝統があり、毎年受賞作を楽しみにしております。しかーし、本書は果たしてミステリなのか?という素朴な疑問が持ち上がります。
「なぜ」というストーリーがあまりないんですね。いや、あるんだけどなんというか重々しい殺人だとか逃亡だとか謀略みたいなものが一切ないので軽く感じてしまうのでしょうか。むしろ冒険モノとかファンタジーモノといった趣です。いや、一応「盗む」というストーリーがあるから「クライムノベル」と呼んで差し支えないでしょうか。でも、これを乱歩賞にしてしまった選考委員はどうなのよ?
といっても、受賞作にはいつもいつも辛らつな評価が巻末に掲載されていますが、今回は一層厳しい評価がそこには載っていましたわ。「前置きが長い」とか「ゼネコングループのトップがこんなのってありえねー」とかいろいろあります。
本書のキモは「なぜ主人公の水沢浹は皇居に侵入して盆栽を盗むと決意したのか?」という点でしょうか。そこにある仕掛けがなかなか洒落ていて、思わず

「なーるほど」

と叫んでしまう鮮やかさがあります。選考委員は恐らく、こうした奇想天外な展開に膝を打ったのではないかと想像します。
乱歩賞はその内容にあら捜しをすると結構いろいろ出てくるのですが、そうした批判を受けつつも、それ以上のパワーで相手を打ちのめすものがあればデビューは可能であるということを知らしめた意味で、本書は新しい地平を開いたと言っても良いのではないかと思います。








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2011年11月08日

書評348 神山裕右「炎の放浪者」

本日の日経新聞1面横に、本紙論説委員長芹川洋一氏のTPPに関する論説が掲載されています。タイトルは「国を開かないでどうする」。なかなか刺激的ですね。
っておいっ、日本は鎖国でもしてんのか?ナナメ過ぎて笑えるレベルですね。内容もお粗末です。
このTPPに関する議論をあちこち読んでみて思うのは、「自由貿易」や「第3の開国」といったフレーズの裏側にある、「国としての主権」を問わざるをえないほどの譲歩(というか放棄)であります。すなわち、TPPはネガティブリスト方式ですから、「これとこれはダメ」ということはできますが、言わないものについては基本的にFreeとなります。後になって「やっぱりこれはダメ」というのができないわけです。また、「これは自由貿易の妨げになるから排除ね」といわれて「いやこれは安全の問題から国内ではこういう法律ができているのでダメです」と切り返しても、「No!国際法廷に訴えるからそのつもりで」とやられて最終的には敗訴→自由化という流れになるケースが圧倒的に増えると思われます。
(最も恐れるのは、BSE牛や遺伝子組み換え食品などが自由貿易の名のもとに大量流入することでしょう。検疫なんて名目だけになってしまいそうです)
つまり、「日本としては国益を考えてこういう法律を作っているのだろうけれど、TPPに参加したからには無しだよ」と言われても受け入れろと言っているに等しいわけです。
主権侵害というか、不平等条約というか、TPPはそこまでやるわけですから、自由化するメリットがどこにあるのかと糾したくなるわけです。貿易は「自由化」ではなく「公正化」(=フェアトレード)が正しい姿ではないのかと、マジで思う今日この頃です。


内容(講談社HPより)
帰るべき場所のために戦う人々に捧げる物語。
14世紀初頭、端麗王フィリップ四世が統治するフランス。パリに暮らす鍛冶屋ジェラールは、ある日突然、妻と共に投獄される。無実の罪を訴える彼に王の腹心が出した解放の条件は、神殿騎士団逮捕直前に失踪した、一人の神殿騎士を探し出して捕らえるというものだった。妻を囚われたジェラールに選択肢は無く、わずかな手がかりを頼りに、謎の騎士を追う旅に出る――。
妻を救うため、男は理不尽を受け入れ、旅に出た。幾多の苦難を乗り越え、使命を果たした彼が最後に見たものは――。
江戸川乱歩賞作家・神山裕右の才能がついに放たれた、慟哭のサスペンス。






曹源寺評価★★★★
えー、「カタコンベ」で最年少の江戸川乱歩賞を受賞した神山氏ですが、その後「サスツルギの亡霊」を上梓してから、とんとご無沙汰していました。氏は一体今まで何をしていたのでしょうか?
「カタコンベ」が洞窟モノで、「サスツルギ〜」が南極モノという、ちょっと変わった舞台でしたので、新たなジャンル開拓か?なんて思っていたのですが、本書はなんと中世のフランスが舞台ですよ。ちょっとがっかり。
それでも、なかなか読み応えのある内容でした。主人公のジェラールはイスラム教徒の父を持つ「混血児」のため、さまざまな迫害を受けてきた。そのジェラールが神殿騎士アンドレを探す旅に出るというストーリーですが、決闘シーンや騙し騙されの展開などはなかなか読む人を惹きつける内容に仕上がっています。浅学にして当時の宗教的背景など分からない自分でも、キリスト教とイスラム教の対立やユダヤ人迫害などの歴史が散りばめられていて、でもそれは読むのに苦痛ではなく、作者の筆力の賜物ではなかろうかと思われます。
でもね、面白いんですが何かが欠けているように思うのですよ。それは一体何なのか。人物描写よし、ストーリーよし、人間関係よし、時代背景よし。あれ、結構いいじゃない。おかしいな。
ん?そうか、これだ。

ラストのあっさり感だ。

なんだか非常に大事な場面のはずなのに、とてもあっさりし過ぎていて「あれ、終わっちゃったよ」みたいな感じ。
それももうひとつあった。

感情移入できない

というやつだ。こればっかりは設定からしてしょうがないような気がしますが、イスラム教徒でもなくキリスト教徒でもない、ましてやユダヤ教徒でもない自分(を含む大多数の日本人)の持つ宗教感覚が、イスラムとキリストの間で揺れ動く主人公の気持ちを推し量ることなどできるわけもありません。
まあ、中世のヨーロッパなんでそのへんは割り切って読むしかないですね。








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2011年10月26日

書評346 今野敏「化合」

電子書籍市場が盛り上がり始めて、2011年は「電子書籍元年」などと持て囃されました。しかし、市場は果たして本当に盛り上がっているのでしょうか?
シャープは電子書籍端末「GALAPAGOS」から撤退(完全撤退ではないみたい)、ソニーも専用端末「Reader」の販売がイマイチということで、媒体はスマホに軍配が上がったかのような印象です。
では、中身の方はどうでしょう?未だに規格が統一されておらず、売れ筋コンテンツも電子化されず(京極夏彦氏みたいな例はホントに稀)で、版元さんよ本当にやる気あるの?ってな感じですね。
そんな折、ついにAmazonが本格参入開始か?という記事が出ましたね。
“黒船”キンドル襲来に戦々恐々 アマゾン、電子書籍で日本参入
amazonサイトでは、著作者が版元の力を借りずに自力で電子書籍をリリースすることができるようになるみたいです。出版業界オワタね。


内容(講談社HPより)
筋書きで真犯人は見つからない。
「落ちるな。必ず証拠を見つけ出すから」
何度でも足を運ぶ。それが刑事の誇り。
時は1990年、科学捜査の夜明けを迎えようとしていた。
板橋区内の公園でイベントサークル主宰者が刺殺された。乱れた男女関係、バブル期の借金を取り立てる金融屋、男が執着して通った六本木のキャバクラ嬢……。
スピード解決を目指すエリート検事は容疑者を固めた。検事主導の捜査本部に、若き警視庁捜査一課刑事は抗えるのか。






曹源寺評価★★★★
最近の今野センセーは読みやすさが増す一方で、なんだか突っ込みどころ満載の作品が多かったように思います。本書もよくよく考えると「これ、変じゃね?」的な場面に出くわすことがあります。本書の場合は(ややネタバレ)「どうして被害者はこの時間にこの場所にいたのか?」という基本的な捜査事項が、なぜか後回しにされてしまい、捜査を主導する検事に逆らえずに別の筋読みをされてしまうという内容です。
だから普通は勘取りでそういうのからツブすから、謎として残るということは

警察ではありえないんじゃね?

となるわけです。
それでも今野センセーが絶大な人気を誇るのは、なんといっても「主人公のキャラが立っているわけでもないのになんだろうこの臨場感」といった評価や「人間と人間のぶつかり合いがストーリーの中にまぶされていて深い」「一気読みさせるこのテンポのよさはハンパない」などに代表される、ストーリーテラーとしての実力ではないかと思います。
自分も一気読みでした。あっという間の2時間、ムダのない作りこみには恐れ入りました。
ところで、本書のタイトルはなぜ「化合」なのか?ネットの辞典では『[名](スル)2種以上の元素が化学反応を起こして結合し、新しい物質を生じること。』とありましたが、じゃあ本書では何と何が化学反応を起こしたの?うーん、良く分からん。自分はてっきり「化かし合い」のことかねえと思っていたのですが。
それに、主人公の菊川って聞いたことがあるような・・・と思っていたら「ST」シリーズの菊川吾郎じゃねーの?それに1990年ということは、ST誕生前の菊川ってことね?
ググってみたら本当だったわ。舞台が90年でなければならない理由が、まだDNA鑑定が不十分で証拠として正式採用されていない時代という設定らしいんですね。確かに、検察の「起訴主義」とか「自白偏重主義」とは相容れないわけですから、90年に設定しなければならないわけです。でも、今野センセーの描く90年はバブルがもう完全に崩壊しているみたいでしたが、実際には90〜91年くらいはまだズタボロではないですね。不動産やノンバンクがごろごろ斃れるのは95年くらいからでしょうか。90年なんてまだバブリーな人がいっぱいいましたね。そういう意味では、90年という設定に納得はできても、内容にはちょっと???マークがついてしまいました。









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2011年10月04日

書評342 垣根涼介「月は怒らない」

学習院大学の岩田規久男教授がある講演で70分ばかりお話されていたのを聴きに行きました。
教授曰く「復興増税はするな」
曰く「20〜30兆円の復興国債を発行し、日銀に同額の買いオペを実行させろ」
曰く「国債発行は将来世代への負担増加にはつながらない」←ココ重要!
曰く「実質金利が相対的に高くなるので円高になっている。まずはデフレを解消せよ」
曰く「ハイパーインフレが怖いなら、財政規律をしっかり取ればいいだけの話」
うーん、真っ当すぎて感動しました。
国債発行は将来世代への負担増につながるから、将来へのツケを残さないためにもいま増税すべきだ、という理屈がまかり通っています。
逸れに対して自分は「いや、1,000年に1回の大災害なんだから、極論を言えば1,000年かけて将来世代が負担してもいいんじゃないの?」という理屈で対抗しようとしていたのですが、そうではなかったです。「国債の引き受け手が国内(の機関投資家)であれば、その債権者である日本人に配当利子がつくのだから、負担になるというのは間違い。これが国外の引き受け手であれば話は違うが、今は国内で消化できるのだからやればいい」というのが正しい解釈でした。

昨今の増税論議など一蹴する勢いの岩田教授を自分は断然支持します!


内容(集英社HPより)
ミステリアスな女と男3人の四角関係の果て
化粧もしない。服も地味。美人でもない戸籍係の女にどうしようもなく魅かれていく3人の男。その理由は? 男たちの視点を通して、女の正体が徐々に焙り出される。人間の繋がりの意味を問う挑戦作。






曹源寺評価★★★★
垣根氏にしてはやや平坦な小説と言えるかもしれませんが、じっくり読むとかなり哲学的というか心理学的というか、いろいろと考えさせられるお話に仕上がっていて結構楽しめました。
舞台は東京・吉祥寺です。吉祥寺ですが市役所戸籍係の女である三谷恭子の家は恐らく三鷹市下連雀6〜7丁目あたりでありましょうか。吉祥寺駅から吉祥寺通りを南下して徒歩25分くらいかかる場所と推測されます。
同じ吉祥寺に住む大学生の弘樹と、たまたま市役所に立ち寄ったことがきっかけで付き合うようになったチンピラ(というか金融業というかサルベージ屋というか)の梶原、それに市役所前の派出所に勤務する警察官の和田。この3人が恭子という謎多き女に惹かれてしまうわけですが、恭子は3股かける(実際には二股ですが)んですわこれが。まあ、当然バレるんですが、この辺のストーリーはあくまで伏線というかおまけみたいなものでして、恐らくメインは「人と人が惹かれあうために必要なものは何か」かもしれません。あるいは「心の奥底に潜んでいる何かが相手を真のパートナーとして認めうるのではないか」といった仮説だったりするのかもしれません。その何かがなんなのかは分かりませんが。
本書ではこの3人の男が交錯しながらお互いに自分の立ち位置を見つめなおします。さらに、毎週日曜日に井の頭公園の池でカメにえさをやり続けている老人・オオキドという人物が登場します。

この老人との会話が実にいいですね。

これがなかったらまったくつまらない三文小説ですが、このおかげでかなり引き締まった内容になっていると思います(ただ、このオオキドと恭子の会話を横で聞いているホームレスの男というのが登場しますが、この会話を聞いているだけの存在というなんとも間抜けな設定です。まあ、オオキドが短期記憶障害という病気なのでオオキドを主体に書くことができなかったためと思われます)。
ラストの方の会話が秀逸です。

オオキド「失礼ですが、どうしたんですか、その傷」
恭子「ちょっと、転んでしまって」
オオキド「で、ちゃんと立てましたか」
はい、と元気よく彼女は答えた。

前段がないと何のことやらさっぱり分からない会話ではありますが、この会話こそが本書のキモであるかもしれません。恭子もおそらくはオオキドとの会話のなかで、自分自身の中にあった迷いや逡巡が解消されたのだと思います。だから、このラストはそうした迷いを吹っ切ることができたのかどうかを問うたものでありましょう。
自分も酒飲んで酔っ払うとこうした形而上学のような話しっぷりになることがありまして、周りからは「ウザイ」と思われているようです。たまに理解者がいるとうれしくてエスカレートしますが。だから、こうした会話に隠された真の意味を探すといった作業は嫌いではありません。








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2011年09月21日

書評339 古賀茂明「日本中枢の崩壊」

すんごいねえ台風。
首都圏直撃は何年ぶりだろうか。震災の時は帰宅難民になって徒歩で帰ったけれど、今日は会社の近くでのんびり復旧を待つことにしました。
地震、大雨、台風、、、日本はなんか試されていますな。とりあえず生き抜こう。やることいっぱい作っておけば、そう簡単にはあの世に行くまいと思っていますので、まずは仕事をいっぱい入れることにしています。


内容(講談社HPより)
「日本の裏支配者が誰か教えよう」
経産省の現役幹部が実名で証言!!
福島原発メルトダウンは必然だった……政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!? 家族の生命を守るため、全日本人必読の書
経産省が握りつぶした「東電処理策」を巻末に全掲載
発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚もいた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるところだった。その理由とは何だったのか――。――<「序章」より>






曹源寺評価★★★★
テレビに講演に引っ張りだこの古賀茂明氏ですが、理路整然とした語り口や誠実な受け答えはテレビ向きなのかもしれませんね。頭の良い人という印象は誰もが持つのではないでしょうか。
そんな古賀氏を一躍有名にしたのが本書であります。やはり読まねばと思い、買ってしまいました。
古賀氏の主張は「省益で動く官僚を、国益で動く官僚にせよ」という根幹があり、そのために「民間からも登用できる回転ドア制度」を導入したり、「労働基本権を導入する代わりに身分保障をなくす」仕組みにしたり、と公務員改革制度の導入にかなり意欲的です。
しかし、先日のニュースではついに辞表を出したとか出さないとか。こういうニュースを見ると、つくづく

日本人は内部からの変革ができない民族

だなあと思います。
「公務員は身分ではなく、職業である」という、当たり前の理屈でさえも、霞ヶ関では通用しないという時代錯誤な感覚。「人材の墓場」とはよく言ったものです。古賀氏にはぜひ外部から(=政治家として、ということになりましょうか)改革を推進していただきたいと思います。
古賀氏の主張すべてに諸手を挙げて賛成とは思いませんが、「増税は愚策」とか「東電は解体」とか「公取委は強くあるべし」とか「壊す公共事業を推進」などといったアイデア・主張はごもっともであります。政策で競い選ぶ政治家、という観点からすれば、民主党の議論のなさ、自民党の旧来すぎる主張などと比較して至極斬新であります。
政治の話はSNSなどでもタブー視されがちですが、もっと国民的議論ができる環境に早くなってもらいたいものだなあと痛感します。








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2011年08月16日

書評332 今野敏「警視庁FC」

この前の日曜日、夕方の西の空に放射線状に縞模様を作った雲があって、今流行の「地震雲」かと思っていたら、満月も赤くなっていて怖かったわ。
地震を感知する「みゆ吉」さんのブログもなんだか怪しげな更新をしているし、こりゃもう一回くらいデカイのが来るんじゃないすか?

ホント、気をつけなきゃ。。。


内容(毎日新聞社HPより)
警視庁地域部地域総務課の楠木が言い渡された特命「警視庁FC」。FCとは“フィルム・コミッション”の略で、映画やドラマの撮影に対して、警視庁がさまざまな便宜を図るという。
「刑事なんてまっぴらだ」。そんな楠木にとって安全で簡単な仕事とも思われたが、警備についた撮影現場で、謎の変死体が見つかる。警察のウラとオモテ。虚偽入り乱れる数々の証言と化かし合い。そこには、組織をも巻き込んだ壮大な企てがあった−−。






曹源寺評価★★★★
こ、これは・・・これはかなり奇作というか怪作というか、

Strangeな小説

であります。世に出ている警察小説のなかでもここまでどんでんな作品はなかなかお目にかかれない、警察小説の旗手と呼ばれる今野センセーだからこそ描けたのではないか、そんな作品です。
フィルム・コミッションは自治体が町おこし・村おこしの目的で映画ロケを誘致する活動ですが、すなわちFCは地方警察本部が手がける事案でもあります。東京、すなわち警視庁がFCのお手伝いをするということ自体はあまり現実的ではないかもしれません。その他、交通機動隊や本庁の総務課とか四課(いわゆるマル暴関係)の刑事とか、さまざまな部署から応援として集まったFC室という存在そのものもなんとなく胡散臭いわけです。さらには、主人公の楠木がまるでやる気のない人物で、事件にかかわるなど真っ平御免という体たらく。そのくせ、周りからは「切れ者」という評価がついて回ってくるという、まあこの辺はなかなか面白い設定ではありますが、こうした前提条件が非現実的すぎて最初は戸惑います。
FC配属メンバーが映画ロケ地の警護を行っていたところ、事件が発生する。映画の助監督が首を絞められて殺されたというのだ。目撃者はおらず、殺人の影には暴力団の関与やプロデューサーの失踪も疑われている。おまけに関係者の証言もあいまいで、謎が謎を呼ぶ展開です。
ネタバラシはしませんが、3分の2くらいまで読み進めると話の大筋は見えてきます。ラストはなかなか推理しにくいかもしれませんが、どうなんでしょう、これって・・

禁じ手だったりしませんか?

夢オチ並みとまでは言いませんが、この手のオチというのが果たして本当に正しく評価されるべきものなのか、自分には分かりませでした。








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2011年08月12日

書評331 貴志祐介「ダークゾーン」

軽井沢に行くと必ず買ってくるのが「よなよなエール」であります(ホームページは多少ウザイ)。エールビールはフルーティな香りに加え、どっしりした味わいがあって大ファンになっています。近所でも売っていますが、エビスビールより高いので普段買うにはちょっと躊躇します。お土産だから買う、見たいな感じでしょうか。
だから、逆にスーパードライみたいなビールをおいしいと思えなくなっています。濃い味系のビールのほうが嗜好に合うということでしょう。
でも、これだけ暑い日が続くと、350mlなんて一気飲みですから、よなよなエールはもったいない!1本目はフツーのビールにして、2本目からよなよなエールにしています。
最近はお店でも取り扱うところが出てきていますので、味のわかる人とビール談義でもしながら飲みたいですね。

内容(祥伝社HPより)
神の仕掛けか、悪魔の所業か。
地獄のバトルが今、始まる!
戦え。戦い続けろ。
各賞撃破!
1997年日本ホラー小説大賞、2005年日本推理作家協会賞長編賞
2008年日本SF大賞、2010年第1回山田風太朗賞
エンターテインメント界の鬼才が贈る最新長編!
「覚えてないの? ここ、端島(はしま)じゃない」
その名前に触発されて、いくつかの情景が意識に現れようとした。しかし、その映像はぐにゃりと歪(ゆが)み、闇の中に溶け去ってしまう。まるで、この島に関する記憶は、絶対に思い出してはいけない禁忌(きんき)であるかのように。
「そうか……そうだった。
俺も、たしかに、ここへ来たことがある」
長崎(ながさき)市の沖合にある、遺棄(いき)された海底炭坑の島――端島。コンクリートの護岸に囲まれて、建物が密集した独特の外観から、軍艦島(ぐんかんじま)という通称で知られている。だが、何のために、こんな島へ来たのかは、思い出せない。まして、なぜ、ここで戦わされているのかは、見当もつかなかった。(本文より)






曹源寺評価★★★★★
もはやホラー界の巨匠になりつつある貴志祐介センセーですが、こりゃまた奇天烈な作品を出してきましたよ。長崎県に浮かぶ廃墟の島、端島。通称名は「軍艦島」ですね。あの内田康夫センセーが「棄霊島」というタイトルで軍艦島を舞台にした殺人事件を作品にされていますが、本書は場所が軍艦島でも内容は異次元の話です。すなわち、これ人間将棋であります。
元棋士で夢破れてタダの人になった主人公の塚田裕史は、眼が覚めると軍艦島にいた。そこには18人の異形の味方と、同じく18人の敵がいて、赤いオーラを放つ赤軍と青いオーラの青軍に分かれて肉弾戦を繰り広げるというゲーム(!?)の中であった。18人は塚田の知人・友人であるが、いずれも腕が鎌のようになっていたり、空を飛んだり、毒をもつ触手がついていたりと、特徴ある姿に形を変えていて、塚田本人は4つの眼を持つ王将(キング)であった。相手の青軍もほとんどが知人であり、青の王将もまた友人であった。7戦のうち4勝すれば生き残れるが、最終的に敗れた方は消滅するというルールになっている。本書のいたるところに登場する「戦え、戦い続けるのだ」というフレーズがちょっとウザイですが、島を舞台にして王将の指示で戦闘が開始されます。
それぞれの駒(というか戦士というか)は将棋(というよりはチェスに近いか)のようにAはBより強いがCに弱く、BはCに強いがAに弱い、みたいな関係が成立しているため、駒の配置や戦い方に工夫がないとやられてしまいます。
なるほど、その描写は

まさしく人間将棋。

戦いのシーンは将棋なんてもんじゃなくかなりグロいですが、さりげなく描くのが貴志センセーの真骨頂でもあります。「満員電車の中で全員が刃物を振り回している」なんて表現は、普通に怖いです。
しかし、なんだろうねぇこの違和感。章立てが「第1局」から「第8局」まであって、その間に「断章」がそれぞれ入るんですが、なんだかうまくリンクしていないような感じです。ラストも「あれっ?」って感じです。うまく言えませんが、「最初からこの結末を用意していたのか?」というちょっとした疑問や、貴志センセーらしくない中途半端感というか。もうちょっと違う結末を期待してしまったために少し残念。ただ、「悪の教典」もそうでしたが、なんだか

異様に後を引く

んですよね、貴志センセーの作品は。「青の炎」も後を引きましたね。そう、青の炎に近いかな、読後感は。読み終わってからいろいろなことを考えさせられるようになるのが貴志作品の良さでもあります。ファンなら読むべし。ファンじゃなければほかにも良い作品はあるでよ。








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2011年07月08日

書評322 今野敏「エチュード」

毎年恒例のブックフェアを視察に、お台場のビッグサイトに行ってきますた。
例年、初日は芋洗い状態なんですが、今年はちょっと人の入りが悪いです。となりの電子出版EXPOのほうが人が入っていました。

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ついにPANASONICも電子書籍デバイスに参入ということで、いよいよ本格化するかなあと思いながらも、じゃあ昨年の「電子書籍元年」って何よ?ということにもなりまして、盛り上がりそうで一向に盛り上がらない電子書籍市場は今年コケたら来年はないんじゃないの?とちょっと心配になりましたよ。
でもまあ、こういう記事も出ているのでちょっとは安心か。
日本経済新聞2011/7/3朝刊
新潮社、講談社、学研ホールディングスの3社は今後発刊する新刊書をすべて電子化することを決めた。新潮社は今年2月に出版した新刊を8月に電子化して配信を始める。講談社や学研ホールディングスも作家との交渉に入った。3社合計で月に400点以上が電子化される見通し。インターネット利用者を取り込んで書籍離れに歯止めをかける。


内容(中央公論新社HPより)
繁華街で相次いで発生した通り魔殺人事件で、警察は誤認逮捕を繰り返す。警視庁捜査一課・碓氷弘一は心理調査官・藤森紗英を相棒に巧妙な「犯人すり替え」トリックの真相に迫る。






曹源寺評価★★★★
現行犯逮捕なのに誤認逮捕?というトリックを軽快かつ鮮やかに書き下ろしたのがこの「エチュード」です。今野センセーの相変わらずのサクサクぶりに、2時間あっという間の読了でした。特にラスト3分の1くらいからは展開が非常にスピーディで、心理調査官藤森嬢のプロファイリングはなかなかのものだと思います。また、主人公碓井や脇を固める刑事(特に「梨田洋太郎」のあだ名が「洋梨」だもんね。こういうの好きだなあ)のキャラ造型はいつもながら感心させられます。こうした要素が絡まりあって昇華しているのが今野作品の人気の秘密ではないかと、個人的には思います。
しかし、本書はこうしたすぐれたストーリーとは別に、

突っ込みどころが満載でもあります。

実際にこんなトリックが完結するのか?という素朴な疑問にはじまり、目撃者が多数いるはずなのに何で他の目撃者探しをしないの?とか、
現場に残された凶器の指紋を調べれば誤認逮捕ってすぐに分かるだろ常考
といったツッコミがどうしても頭から離れません。
そのへんのまどろっこさが却って読書ペースを速めさせる(つまり、はやく続きが読みたいと思わせる)要因になっているとしたら、今野センセーは稀代の悪人ということになりましょうか。








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2011年06月24日

書評318 鏑木蓮 「思い出をなくした男」

昨日はヨメが置き引きに遭いました。スーパーで買い物をして、カートに荷物を入れて自転車まで行き、自転車に荷物を積んでカートを戻しに行って帰ってきたら荷物がなくなっていたと。
その間、わずか1分足らず。何という早業。。。
まあ、財布などの貴重品は被害に遭わず、被害額にして2,000円ポッキリ(死語だなあ)でしたし、犯人を遭遇して格闘にならずに済んだわけですから、ダメージとしては大したことないんですが、高級住宅地のスーパーでこんなことが発生したということにちょっと心理的ダメージがありました。
おまけに、110番して警官を呼んだら、その対応が納得できないほど酷かったわ。
「調書とりますが?取るなら交番まできていただけますか?」だとぉ!
調書は取るのが当たり前やろボケェ!事件なかったことにすんのか?統計上の犯罪件数を減らしたいのか?やる気ゼロやん。
ヨメから電話来て「どうしよう」って言うから、「行け!絶対ちゃんと対応してもらえ」とハッパかけて「警官の名前も聞いておけ」と念押し。後で聞いたら「調書取るのに1時間半かかった」だって。もうね、アホかと。どうせ犯人はつかまりっこないし〜、みたいな対応で本当にありがとうございました。


内容(PHP研究所HPより)
犯人を追うのではなく、思い出を追う。犯罪の謎を解くのではなく、人生の謎を解きほぐす。それが「思い出探偵社」の仕事――。
元刑事の実相浩二郎が、依頼人のわずかな手掛かりから思い出を探し出す「思い出探偵社」を、京都で始めてから7年が経つ。創設以来厳しい経営が続いていたが、1年前から主任探偵の一ノ瀬由美がテレビの人生相談に出演するようになって、依頼が徐々に増えてきていた。ところが、平井真という新人がメンバーに加わったことで、「思い出探偵社」に波紋が……。
遊園地に残された写真の少年を探す「雨の日の来園者」、行方をくらました斬られ役を連れ戻すべく、浩二郎が会津へ向かう「大芝居を打つ男」、喫茶店店主の初恋の人を探し出す「歌声の向こう側に」、由美の人生相談にもちこまれた記憶喪失の男の過去をたどる表題作「思い出をなくした男」の4編を収録した連作短編集。
乱歩賞作家が紡ぎ出す、せつなくて懐かしいハートフルストーリー。






曹源寺評価★★★★
最近の乱歩賞作家のなかでは地道に執筆活動を続けられている鏑木センセーですが、どうもイマイチパッとしないすなあ。いや、どれもこれもある程度のレベルを維持していますし、読めばそれなりに面白いんですが、ズバ抜けて驚嘆したり感動したりするような作品にはお目にかかっていないからでしょうか。前評の翔田寛センセーのやつは面白かったし、時代物でもそれなりに地位を確立させつつあるようですので、なんかひとつ抜け出したなあという感じがしなくもないですが、やはりこれはすごいという作品(=彼の代表作とも呼べる作品)というのがないと小数の固定ファンで終わってしまいそうです。怖い時代です。
本書は「思い出探偵」の続編ですが、すみません、そっちのほうを読んでいないので良く分かりませんでした。良く分からないままに読み進めましたが、それでも結構いけますね。登場人物のキャラ設定はフツーにうまいし、事務所内メンバー間の軋轢や確執もあったりして読ませる文章です。うまいです。4編による連作ですが書き下ろしだそうで。この4編はいずれも

深イイ話っぽくて心に滲みます。

だから、すんごい良い作品でもないけれどまあまあハートに残る作品なのかなあと思いました。








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2011年05月30日

書評311 劇団ひとり「青天の霹靂」

イケメンシェフ川越達也が人気ですね。予約が全然取れません。8月と9月の予約をGW(おそらく5日)から受付開始したみたいですが、電話全然つながらず。ようやく18日くらいにつながったら終了してました。。。
まあ、代官山のイタリアンにしては安めの設定だし、べらぼうに高い金額をふっかけるどこかの星がつくレストランよりはマシかもしれません。人気があるのもうなづけます。
しかしなあ、これはねえっぺよ。
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なんでイタリアンシェフがキムチをプロデュースするん?売れればなんでもいいのか?
などと抜かしつつ、スーパーで見かけたからついつい買ってしまいました。。。
でも、全然辛くないし、正直、あまりおいしくなかったわorz。。。

そういえば、アルポルトの片岡護氏も週刊文春でキムチ紹介していたわ。イタリアンシェフはキムチ好きなのか??

内容(幻冬舎HPより)
「俺はみにくいアヒルの大人」。十七年間、場末のマジックバーから抜け出せない三十五歳の晴夫。腐りきった自分に飽き飽きしていたある日、テレビ番組のオーディションに挑む。新たなる傑作!






曹源寺評価★★★★
劇団ひとりの2作目にして初長編ということで久々に読みましたが、いや、彼はツボを心得ているというか、十分小説家としてやっていけるのではないかと正直思いました。
主人公の晴夫はかなり自虐的に描かれていて、卑屈でモテなくてトークも下手で、おまけに幼少時に母親に逃げられて父親と暮らしていたという設定なため、あまり感情移入できません。前半はだからちょっと苦痛です。しかし、文字通り「青天の霹靂」な出来事の後はさまざまなことに翻弄されながらも「生まれてきた意味」について考え、そして発見する・・・
2時間もかからずに読了しましたが、さらっと読ませておいて、泣かせるところはきちんと押さえている。うまいなあとつくづく思います。
いや、時代背景の書き込みが足りないとか、もっと話を膨らませたほうが良いとか、いろいろな意見が出そうなくらいさらっとしているんですが、これはこれでなんかいいんじゃない?という気がします。そう、

これこそが彼の持ち味です。

どっぷりと浸れる作品は他の著者に任せればいいんです。彼はこの路線(=軽いけれど読ませる、感動させる)でいけば十分に固定ファンを増やせそうです。








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2011年05月20日

書評309 京極夏彦「死ねばいいのに」

久しぶりに監修の仕事などやりましたら、この業界の相変わらずのメタメタぶりに翻弄されますた。
版元ももう少しスケジュールに気を配ってくれよ〜。修正を指示したページももう一回確認しないと大変なことになっているぞ〜。こんなんで書店に出したら恥ずかしいぞ〜。
編集プロダクションもあまり変なライター使うなよ〜。どっかの新聞記事を薄めたような内容を書いてきたヤツがいたぞ〜。これにはちょっと怒った(#゚Д゚)ゴルア!
ウチの会社は品位を大事にする(しすぎる)から格調の高い文章でないとアカンのですよ。どこの誰に聞いたか分からん話を形容詞だらけにして無理やり膨らませたような文章だと、一発で分かっちゃうんですよ。もっと一次ソースを大事にしてください。そして、事実に基づいて話を構築してください。
頼みます。

内容(講談社HPより)
死んだ女のことを教えてくれないか――
無礼な男が突然現れ、私に尋ねる。
私は一体、彼女の何を知っていたというのだろう。
問いかけられた言葉に、暴かれる嘘、
晒け出される業、
浮かび上がる剥き出しの真実・・・・・・。
人は何のために生きるのか。
この世に不思議なことなど何もない。
ただ一つあるとすれば、それは――






曹源寺評価★★★★
京極作品は読むのに疲れるので敬遠していましたので、「魍魎の函」以来ですわ。いや、「鉄鼠の檻」以来だったか。いやまあ、どっちでもいいんですが。
しかしまあ、本書は自分の中の固定観念がいろいろな意味で覆されました。
ひとつは、京極作品にも一気読みできる作品があったということですね。会話が中心なのでとても読みやすいです。
もうひとつは、この謎の青年ケンヤが指摘する人間の本質というか、人の心の暗部というか、グサッとくるセリフに「人と人とのかかわり」のあり方みたいなことを教えられる、そんな感じを受けました。
読了したあとに考えてみると、このケンヤという主人公は「心理カウンセラー」のようであります。その人の本音を聞きだすのがあまりにもうまい。うますぎる。カウンセラーは相手を納得させるために、あえて相手にしゃべらせるという手法を使いますが、ケンヤはいい突っ込みをすることで相手の本音を引き出しています。
相手を怒らせたり泣かせたり、最後は呆然とさせて立ち去る、ってな感じでカウンセラーというよりはむしろ哲学論議で絶対的に強かったあのソクラテスのようでもあります。「無知の知」を引っさげているところなどは

まさにソクラテス。

「いや、俺って勉強もできないし、よくわかんねえっすよ」とか平気で言うから相手も困るわけで、「でも良く分かんねけど、つまりこういうこと?」と言って実は的確に相手の急所を突いているというところなどは、何こいつ最強じゃん、みたいな感じです。
そして最後のドンデン返し(というほどのことでもないかもしれんが)が待ち受けているというのも、京極作品ならではのうまさを感じさせます。








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2011年04月12日

書評301 香納諒一「噛む犬 K・S・PV」

娘と同じ小学校のPTAのオバハン(といっても自分より若いかもしれんのでここはオネイサンと呼んでおく)が、原発で若干ノイローゼ気味だ。
実家が九州にあるそうなので、「早くこっちに来い」と言われているそうだ。しかし、娘は学校があり、旦那も自営業で仕事をいっぱい抱えているから動けないし、自分だけ避難するわけにもいかず、かといってこのままここにいていいのかと自問しながら過ごしているから、いつまでたっても問題が解決しないわけです。
まあ、自分も立場的には同じですが、なんだか原発情報に感覚が麻痺していたみたいですわ。その人に「いつ避難する?」って聞かれて、「あぁ、なんだか避難するという選択肢をいつの間にか捨てていたわ」という自分に気がつきました。
水も大気も今のところ数値的には安定している東京ですが、チェルノブイリ級の「レベル7」になったということで、もう遅いかもしれませんがまた検討を始めなければならないかもしれません。
政府の小出しの情報戦略に、我々はいつのまにか「茹でガエル」にさせられていたのかもしれないなあと思った次第。


内容(徳間書店HPより)
新宿高層ビル街の一角に沖幹次郎、村井貴里子らK・S・P特捜部が駆けつける。植え込みから白骨体が見つかったのだ。身元は警視庁捜査二課の溝端悠衣警部補。貴里子が敬意を寄せる先輩だった。死亡前の動向を探ると、未解決の轢き逃げ事件を単独捜査していた形跡が浮上。被害者は暴力団組員で、溝端は保険金の受取人である婚約者とも接触していた。彼女が秘密裏に突き止めようとしていたものとは。事態はやがておぞましき全貌を――。警視庁歌舞伎町特別分署KSPシリーズ第3弾!






曹源寺評価★★★★
最近嵌っている香納諒一氏の最新刊はあのK・S・Pシリーズの第3弾です。新宿のなかでも最も治安の悪い歌舞伎町の事件に特化した分署として設置されたK・S・Pの活躍を、特異なキャラクターで読ませるシリーズです。
「孤独なき地」「毒のある街」ときて「噛む犬」としたこのシリーズは、警察小説のなかでもあまり勧善懲悪で語られず、警察内部の腐敗を絡めながらも刑事としての本懐を遂げる骨太な小説でありませう。
主人公の沖幹次郎は禿頭で迫力のある無骨な刑事ですが、物凄く有能で事件をバリバリ解決するという設定ではありません。時には同僚と子供じみた喧嘩をしたり、尾行に失敗したりします。また、キャリアにして美人の上司である村井貴里子との擬似恋愛的なやりとり(コンプレックスを持っている沖が勝手にドギマギしているという内容ですが)もあったりして、他の警察小説とは一味違う仕上がりになっています。
ミステリ的な要素には乏しいですが、人間味あふれる登場人物によって一級のエンタテインメントに仕上がっているという感じでしょうか。
惜しむらくは、今回はどちらかというと「大山鳴動して」という感じになってしまったのがちょっと痛かったですね。読者をこっちの方に引っ張ろうとしつつも、なんだか終わってみたら違う着地点にいた、という表現で通じるでしょうか。
まあ、そもそも氏の作品は始めのほうでいきなり大きな事件が勃発して、そこからどんどん話が広がっていくというのがお決まりのパターンではあります。その過程で謎が次々と出てくるものですから、読者はそれを整理するだけで精一杯になったりすることがままあります。これらの伏線をしっかり回収しておかないと、「あれはどうだったっけ?」という消化不良を起こすことになりますので、読むほうも大変です。
本書はさらに、汚職事件(御食事券ではない)へと展開するのかと思いきや、警察上層部や国会議員などへの疑惑の展開といったお決まりのパターンにはならず、うーんなんだかなあという、これはこれで煮え切らない感じがしなくもありません。
まあ、でもこのシリーズのキャラクターは警察小説のなかでもかなり好きなほうかもしれません。4作目も当然、期待します。








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2011年03月18日

書評296 後藤忠政「憚りながら」

震災からまる1週間経ちました。
いまだに被害の全貌が分かっていないうえ、原発事故が今後どうなるのか全く展開が読めないので、多くの国民が疲弊しているかと思います。自分も疲れています。何が疲れるって、通常の地震ならば、さあ復興だー!という感覚になるため前向きになれるのですが、今回はいつ放射能が大量拡散するか分からないうえに、東京への本震もまことしやかに噂されているために心が休まらないのです。
被災地のみなさまには改めてお見舞い申し上げますが、東京都民も自分と同じ心境でいる人が多く、あまり余裕がないのが実情ではないでしょうか。
だからこそ、ああいった買い占め騒動などが発生するのではないかとも思うし、自分もカップめんの2つばかりですが保存食として買ってしまいました。すみません。子供の分ということで勘弁してください。

今のところ落ち着いて行動している人が多く、一見すると平穏ですが、張り詰めた糸が切れるかのようにブチッといってしまう人が出てきやしないか、ちょっぴり不安でもあります。
一日も早い事故処理と復興がなされるよう、心から祈念いたします。
ガンバレ、ニッポン。

内容(宝島社HPより)
しょせん、俺はチンピラだった。得度から1年――
伝説の組長はなぜ、山口組を去ったのか?
戦後愚連隊社会、創価学会との攻防、山一抗争、
伊丹十三襲撃事件、バブル経済、政界との交流。
日本の深層を生き抜いた人物の半生と人生哲学。
かつて伊丹十三監督襲撃事件などで日本社会を震撼させた武闘派団体・後藤組の後藤忠政組長。2008年10月に山口組を電撃引退し、翌年には天台宗系の浄発願寺で得度(得度名=忠叡)。日本中をあっといわせたのは記憶に新しい。
それから1年……財界・政界にも大きな影響力を発揮し、山口組の直参として、日本の深層を生き抜いた後藤忠政とは、いかなる人物なのか?本書は、半年にわたる延べ50時間のインタビューを構成したもので、これまでその人物像が明かされることのなかった伝説の組長の生い立ち、静岡県富士宮を舞台にした愚連隊時代、山口組直参昇格、竹中正久四代目の思い出、山一抗争、伊丹十三襲撃事件、孤高の民族派・野村秋介との交友、企業社会への進出、政界との交流、武富士との攻防、山口組引退の真相、そして自身の人生哲学から女性哲学までが、たっぷりと語られる。
激動の半生を送ってきた人物が語り下ろす、今年、注目度ナンバーワンのノンフィクション!






曹源寺評価★★★★
いささか古くて恐縮ですが、本書は読了するとやはりある意味衝撃的ではあります。最も面白いところは、創○学会との確執の章でしょうか。学会が死ぬまで攻撃し続けてきた山崎正友弁護士のやり口なんてのは、生々しすぎてたまりません。山崎弁護士は結局脱会して、学会からさんざ攻撃されていましたが裏側にはこんなわけがあったのね。
まあ、ヤクザ(暴力団ではなく任侠のある人をヤクザと呼ぶのは良いみたい)の生き様を肯定しようなどとはこれっぽっちも思いませんし、得度したからといって今までの罪が消えるわけでもありませんので、氏の言い分を信じるつもりも毛頭ありません。
しかし、ヤクザにはヤクザなりの生き方があるというのは理解できなくもありません。日本人は昔からヤクザを必要悪のように考えているフシがありますし、暴力団は行き場を失ったチンピラやロクデナシを再教育して食わしてやる団体という見方もできます。だからといって、素人に因縁をつけてカネを巻き上げることや、メンツのためなら人に危害を加えても構わないという行動様式(伊丹十三の件はまさにこれ)などを容認できるわけはなく、氏も部下の教育・統制には完全に成功していなかったようですので、本作を持ってこれを免罪符とするようなことだけはしてほしくありません。
つまり、「もっと書いて」ということになります。








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2011年02月07日

書評289 今野敏「禁断 横浜みなとみらい署暴対係」

娘の中学受験オワタ。ようやくひと段落です。それにしても都内の競争はやはりハンパじゃないわね。しかしまあ、実質1年でよくこれだけ学力を伸ばしたものです。3年生くらいからSAPIX(家の近くにある)に通っている子もいましたから、彼らを競争相手にしてはよくやったのではないかと思うわ。ちょっと学校は遠くなるけれど、良い学校に受かったのだから頑張って通って欲しいね。
最近気に入っている言葉に「過去と他人は変えられないけど、未来と自分は変えられる」というのがありまして、まだまだ自分も頑張らないといけんなあと思うし、子供らにもそう思ってもらいたいなあと感じる次第。


内容(徳間書店HPより)
神奈川県警みなとみらい署警部の諸橋。暴力団の間では「ハマの用心棒」と呼ばれ怖れられている。かつてヤクザの抗争に巻き込まれ、両親を失った諸橋の暴力団に対する憎悪は特別深いのだ。今日も陽気な相棒の「ジョー」こと城島と摘発に向かった諸橋のもとへ男子大学生の変死体発見の報が。死因はヘロインの中毒死。市内では薬物検挙数が目に見えて増えているという。諸橋は捜査を開始する。






曹源寺評価★★★★
横浜みなとみらい署防犯係シリーズの第2弾(第1弾は「逆風の街」)ということですが、「東京湾臨海署安積班」シリーズとか「樋口顕」シリーズとか「隠蔽捜査」シリーズだとか、警察小説でこんなにたくさんの登場人物を書き分けているのは今野センセーだけではなかろうかと。よくもまあ、こんなにいっぱいシリーズものをwww
このみなとみらい署の主人公である諸橋は「ハマの用心棒」と呼ばれるベテランで、地元のヤクザからも一目置かれているという設定です。分かりやすいキャラというのは大事ですね。杉下右京とか青島俊作とか新宿鮫とか(そういえば新宿鮫の鮫島警部は下の名前が公表されていないですね)。
事件は単なる中毒死から複雑に変化していきますので、このへんの展開はお見事です。それと、クライマックスとを迎えるラスト30ページはなかなか迫力あります。いまや警察小説の旗手となってしまった今野センセーですが、やはり空手モノとかよりはこの方が良いですね。








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2010年12月02日

書評277 貴志祐介「悪の教典」(上)(下)

このご時世に、せっかく入った会社を辞める新入社員がいます。「お話があります」というから何かと思ったら「辞めます」ときたもんだ。迷っているなら引き留めようかと思いましたが、決心は堅いということなので引き留めませんでした。
でも、辞めてどうするのか聞いたら「音楽関係に進みたい」って言うからちょっと待てよ、と。世界中で市場が縮小している業界に飛び込むって正気の沙汰じゃないよ。よほどの自信家かよほどの馬鹿か。それとも金を稼ぐ必要はないボンボンか。
でも当たれば大きい商売なので、当たったらなんかおごってね。


内容(文藝春秋HPより)
生徒に絶大な人気を誇り、PTAや職員の間でも抜群に評判のいい教師が反社会性人格障害(サイコパス)だったとき、惨劇へのカウントダウンが始まった。
英語科教諭・蓮実聖司、32歳。
暴力生徒や問題父兄、淫行教師など、現代の学校が抱える病理に骨まで蝕まれた私立高校で、彼は何を行ったのか。 高いIQをもつ殺人鬼は、“モリタート”の旋律とともに犯行を重ねていく。






曹源寺評価★★★★★
相変わらず貴志祐介センセーは話題作を出すのがうまいですね。今回も内容はホラーテイストですが、ページをめくる手が厳しかったです。それは「怖い」からではなく「気持ち悪い」からなんですが、その気持ち悪さも「キモい」ではなく「エグい」でもなく「非道い」あるいは「惨い」という表現が近いでしょうか。稀代の殺人鬼である蓮見聖司が大量殺人を重ねていくシーンがこれでもかと押し寄せてくる下巻には、ちょっと辟易とします。上巻は下巻よりもマイルドですが、これは蓮見が殺す相手も悪人であるという理由でしかないと思います。つまり、下巻はそれだけ非人情的というか、非人間的というか、人の皮をかぶった何かみたいな描かれ方をしているということです。共感する心が欠落した人間の怖ろしさをまざまざと見せつける作者のやり口に恐怖を覚える作品でした。ちょっと後を引きます。
(以下、ちょっとネタバレ)自分としては物語の最初の方から登場するカラス(表紙にもなっています)が、ラストに何らかの役割を果たすのではないかという期待を持っていました。これが期待はずれだったのでちょっと残念でしたが、こんだけ後を引く作品も久しぶりでした。
本日発売の週刊文春では「2010ミステリーベスト10」の国内部門で本書が堂々の1位に輝きました!
えっ?これってミステリじゃないんじゃ・・・しかも、「蓮見ファンが増えている」って・・・怖っ。









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2010年11月18日

書評274 香納諒一「熱愛」

先日、サラリーマンの新聞代が「特定支出」として税額の控除対象になりそうだという記事が読売と日経に出ていました。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/enterprises/manda/20101110-OYT8T00263.htm

以下はツイッターのまとめ

Togetter - 「政府税調『新聞代も控除対象に』がマスコミ対策、不公平と非難を浴びる」
http://togetter.com/li/68760

もうね、アホかと。マスコミがこれ以上政治に擦り寄ってどうすんのよ。これって国が新聞社のスポンサーになるってことよ。恥を知れと言いたいね。侮日新聞が「500億もあれば足りよう」ってほざいていましたが、もしかしてこれのことだったんですかねぇ。
控除が認められるべきは、これがないと生きていけないレベルの物品でしょうに。女性の生理用品とか(昔ビートたけしが言ってた)、サラリーマンのスーツ代とか。
それに、新聞が良くてネットがダメな理由って何?。ナイタイでもOKなの?聖教新聞は?次々に疑問がわきあがってきますね。彼らは、なぜsengoku38こと海上保安官一色氏がyoutubeに画像をアップロードしてマスゴミには一切提供しなかったのか、その本質が理解できていないんだなあとつくづく感じます。

内容(PHP研究所HPより)
事件に巻き込まれ、障害をもった息子を殺された男。そのことが原因で、別れた妻までも死に追いやった。捜査過程で罠に嵌められ、警察を追われた元刑事・鬼束啓一郎は、そんな過去に苦しみながら、探偵を名乗ってやくざの下働きも請け負う荒れた生活を送っていた。そこへ舞い込んだ仁科興業組長の次男坊・仁科英雄からの依頼。謎の殺し屋“ミスター”を探してほしいという。
“ミスター”につながる安城徹を拉致しながら誤って殺してしまった鬼束たちは、英雄の弟・大輝と3人で安城の過去を探りつつ、“ミスター”の正体に迫る一方、裏社会の根深い抗争に巻き込まれていく。“ミスター”を追いながら、いつかその手で自らの命が奪われることを熱愛する鬼束。そして訪れる絶体絶命の窮地……。深い闇に沈んだその心に救いはあるか。
ハードボイルドの旗手として根強いファンを持つ著者が、濃密なストーリー展開で男たちの魂の絶望と再生を描ききった渾身の長篇。






曹源寺評価★★★★
相も変わらず香納諒一氏の本を読み漁っておりやすが、彼の作品の質は年を追うごとに上がっているような気がしています。後半あたりからのドンデン返しは「ステップ」や「虚国」などでも冴え渡っていますが、本書もまたいい具合にひねってあるなあという感じです。
ただ、惜しむらくは、わずかな手がかりを元にして情報をかき集めていく作業において顕著でしたが、本筋にやや無理やり感があるなあというのが玉に瑕でしょうか。それと、最後のシーンがまたしてもクルーザーの上という既視感。古本とクルーザーがやたらと彼の作品の舞台として登場するのはどういうことでしょうか。今度はもうちょっと違う舞台と演出を用意してほしいですね。
ただ、「絶望」で終わる哀しいラストから、最近は「希望」が残るラストに変わりつつありますね。いや、絶望ではないな、「死に際の美学」と言った方が良いかもしれません。








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2010年11月04日

書評271 近藤史恵「エデン」

早いもので異動して1カ月が経過しました。9月の終わりごろからのドタバタを今も引きずっているような感覚がありますが、だいぶこなれてきたかもしれません。
今までの仕事と違って、「判断」を迫られる機会が圧倒的に増えました。しかも、即断しなければならない場面が多く、これがちょっとしたストレスになっているのかもしれません、酒量が増えました。寒くなってきたので、濃い酒がうまいっす。自制せねば。。。


内容(新潮社HPより)
あの『サクリファイス』の続編、遂に登場。今度の舞台は、ツール・ド・フランス!
あれから三年――。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を掛けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を見る。そしてまた惨劇が……。大藪賞受賞、本屋大賞2位に輝いた傑作の続編が、新たな感動と共に満を持して刊行。






曹源寺評価★★★★★
前作の「サクリファイス」が本屋大賞の2位になったということで読んでみたら結構オモシロスでした。この第2弾が本書です。「サクリファイス」は確かに面白かったです。欧州では当たり前に人気のある自転車競技も、日本ではあまりにマイナーですから、日本人が主人公で欧州を舞台に活躍しながらの展開にはある意味斬新なイメージがあります。また、そこで巻き起こるさまざまな「事件」も新鮮味がありました。しかしながら、本書は続編とは言いながらも前作ほどの期待感あふれる展開はなく、「惨劇」と呼ばれるほどの事件もなく、どちらかというとヒューマニスティックなお話に終始しているように感じます。
そんなわけで、続きものとしてはあまり過激にならず、ちょっと期待はずれな感じがしなくもありません。フツー、続編というと前作よりも多少過激になったりするもんですが、本書は穏やかです。穏やかなだけに物足りなさを味わうのかもしれません。








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2010年08月19日

書評258 今野敏「初陣 隠蔽捜査3.5」

我が家に犬が来て2週間が経過しました。ヨメの実家の犬です。ご主人様の体調が思わしくないので、散歩ができてマンションでない家ということで我が家に来たわけですが、これがまあ大変です。ヨメと交代で朝、5時30分に起床して散歩、6時30分に戻り犬にご飯をあげます。そして散歩でない日は人間の朝ごはんを作り、それから出勤です。朝の公園は気持ち良くて楽しいのですが、これだけ暑いと朝っぱらでも30℃あって汗だくです。
家に帰ってからも散歩です。夜中の散歩もこれはこれで楽しいわけですが、ビールがうますぎるのが曲者ですwww

内容(新潮社HPより)
「隠蔽捜査」シリーズが8倍楽しめる、スピンオフ短編集、いよいよ登場!
警視庁刑事部長・伊丹俊太郎と大森署長・竜崎伸也。幼馴染にして同期のキャリア二人の絶妙なやり取りが、難事件を解決に導く――竜崎に敵対する野間崎方面本部管理官、大森署の貝沼副署長と斎藤警務課長、女性キャリアの畠山美奈子など、おなじみのメンバーが登場。「隠蔽捜査」シリーズの舞台裏を描いた特別短編8話を収録。






曹源寺評価★★★★
「隠蔽捜査」シリーズは分かりやすくて読みやすい、シリアスだけれどもどこかほのぼのしている警察小説です。本書は上記の通りスピンオフ短編集ということで、伊丹俊太郎が主人公となっていますが、ガチガチの原理主義者である竜崎伸也よりも人間味のある人物なだけに、このほのぼの感がさらに際立っていてスピンオフとは言いながらも出色の作品に仕上がっています。
伊丹を軸に時間が経過していきますので、シリーズを振り返るような内容になっているのも良いですね。逆に言えば、シリーズを全く読んでいない人には何が何だかさっぱり分からない本になっているとも言えるでしょう。でも、こういうのは嫌いではありません。実は影にこんなストーリーが展開されていた!なんてワクワクしませんか?








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2010年06月25日

書評248 香納諒一「ステップ」

とりあえずサッカー日本代表オメ!いままで観た代表試合のなかでも会心のできではなかったかと思います。朝からこんなに興奮させられると、夜まで持たないです。おやすみなさい。。。


内容(双葉社HPより)
「その日、俺は、8回死んだ」。女とヘロインをめぐるトラブルに巻き込まれた盗みのプロが、横浜の街を奔る! 繰り返される生と死のループの先に明日はあるのか!? 気鋭が放つハードボイルドSF。







曹源寺評価★★★★★
うーん、香納諒一に最近ハマリつつあるんですが、本書はかなり衝撃的でした。さりげなく「ハードボイルドSF」なんて書いてありますが、良く考えてみるとそんなジャンルあったっけか?という感じですね。本書はそういう意味で新しい、よく言えば斬新、悪く言えばなんじゃこりゃ?な作品です。何しろ、主人公がつごう8回死ぬわけですから。
第1章(本書では「Step1」となっている)から主人公が死んでしまい、あれ?これって短編集だっけか?という感じにさせておいて、第2章にいきなり生き返っている主人公が登場します。そんでもって、Step2でもまたコイツが死ぬわけです。おいおい、また死ぬのかよと思いつつもページをめくれば、また生き返っている主人公がいる。げ、マジでこれ繰り返すのかよ、と思いながらも、生き返るたびに謎が解け、そしてまた新たな謎が生まれるのでページをめくる手が止まらんのです。最後の最後に別の仕掛けがあったりして、かなり細かいプロットをしているのも素晴らしいですね。自分が読んだ著作のなかで、主人公がすぐに死ぬという作品は山口雅也のあの名作「生ける屍の死」以来かもしれません。あれはあれで衝撃的でしたが、本書も負けず劣らずの名作だと思います。この作品はこのミスなどにも選ばれませんでしたが、個人的にはかなり高い評価ということにさせてください。













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2010年06月10日

書評245 垣根涼介「張り込み姫―君たちに明日はない3―」

捻挫してから10日以上経ちましたが、いまだに痛みが残っていて完全ではありません。捻挫ってこんなに時間かかるもんだったでしょうか?遠い昔のことは忘れてしまいました。1年が経つのはあっという間ですが、だんだん少年時代のことなど忘れてしまうようになっています。


内容(新潮社HPより)
リストラ請負人・村上真介参上! テレビドラマ化の人気シリーズ最新刊!
企業のリストラを代行する会社に勤める真介の仕事は、クビ切り面接官。「人間にとって、仕事とは何か――」。たとえどんなに恨まれ、なじられ、泣かれても、真介はこの仕事にやりがいを感じている。今回のターゲットは、英会話学校、旅行会社、自動車業界、そして出版社だが……。働くあなたに元気をくれる傑作人間ドラマ。







曹源寺評価★★★★
「君たちに明日はない」シリーズの最新刊ですね。幅広いジャンルで活躍する垣根氏の作品のなかでは、かなり異色といえば異色でしょう。本書はドラマ化もしていますが(観ていませんので論評不可能、でも坂口憲治はどーすか?)本来、垣根氏の作品はドラマ化できるような内容ではないっ!と思っていましたので、なんだか低俗な脚本家にでもなったのかと一瞬訝ってしまいました。
やはり自分としては、「ワイルドソウル」や「ゆりかごで眠れ」のようなキツイ作品を切望しますが、まあ、これはこれで軽くて読みやすいので赦します。
本書は自分の仕事のテーマでもある業界事情についても、かなり掘り下げて取材されていることが良く分かります。旅行会社の給料がホントに低いのは業界の常識ですが、なぜ毎年毎年JTBとか近ツーとかが就職人気ランキングの上位に食い込んでくるのか、不思議でしょうがありません。これに関してはこんな記事も見かけました。まあ、あながちウソでもなさそう。
http://www.cyzo.com/2010/05/post_4618.html
自分にとって、仕事とは何か――もう社畜になってしまった自分はともかく、やりがいとか仕事の意義だとか、あるいは人生だとか、そんなことを考えている人には、本書が何らかの答えを出してくれるかもしれません。










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posted by 曹源寺 at 23:10| Comment(0) | TrackBack(3) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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