ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:か行の作家

2009年10月28日

書評202 郷原信朗「思考停止社会〜遵守に蝕まれる日本」

朝晩がめっきり冷え込んでまいりました。乾燥してのどが痛くなる季節でもあります。風邪などひかぬようご自愛ください。

それにしても眠い。。。


内容(講談社HPより)
日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体
建築不況、食品偽装、市場混乱、メディアスクラム、裁判員制度……。日本停滞の背景には「法令遵守」からさらに進む、なんでも「遵守」の害があった!コンプライアンスの第一人者が問題を鋭く指摘、解決策を示す。

目次
--------------------------------------------------------------------------------
第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
第4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
第5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
第6章 思考停止するマスメディア
第7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
終章 思考停止から脱却して真の法治社会を








曹源寺評価★★★★
尊敬してやまない郷原先生の著書です。コンプライアンスを語らせたら右に出る者はいないとされる郷原先生が今回著したのは、物事の本質を見極めずにあーだこーだとわめき散らす有識者やマスゴミの意地汚さというか、本当に何考えてんの?みたいな思考停止状態を厳しく諌めている内容の新書です。
常日頃、企業のプレスリリースや業界のニュースなどに触れているため、いわゆる「メディア・リテラシー」というものにはかなり敏感になっている自分ではありますが、実に論理的にズバズバと斬る郷原先生の文章には圧倒されます。メディア・リテラシーとは「情報を使いこなす」とか「情報を主体的に読み取る」とか「情報を自ら発信する」とかいろいろな言われようをしていますが、個人的に言わせていただくならば「情報を客観的に見る力」だと思っています。日本人は活字になっているものをありがたがる性質があり、活字になっているものはすべて正しいと思い込んでしまうところがある――
これではあきまへん。ま、たぶん小学校や中学校で教科書を一所懸命読んだ人などは「教科書に書かれていることはすべて正しい」とでも洗脳されてしまっているのではないかとちょっと危惧します。
情報を客観的に見るというのは、自分も大学生の時に教わりました。本を一冊与えられて「作者の主張を批判しなさい」という宿題が出たことがあって、それ以来、感想文を書くのが非常に苦手になってしまったわけですが、客観的な視点だけは今も残っているのだなあと感じてしまいます。おかげでかなり助かりました。相手のつくうそを一発で見破ったりするためには、情報のソースをまずはしっかり自分のものにしていただければと思います。











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2009年09月14日

書評195 今野敏「疑心 隠蔽捜査3」

朝晩がとても涼しくなり、秋を感じますネエ。秋は仕事が忙しいので大変です。これから執筆と講演と座談会の司会進行役とラジオ出演が重なるわけで、マジで死ぬかも知れないわwww
まあ、ほどほどにがんばりますか。

内容(新潮社HPより)
山本周五郎賞・日本推理作家協会賞の二冠に輝いた『果断』に続く、シリーズ第三弾!

息子の不祥事で大森署署長に左遷されたキャリアの竜崎伸也。異例の任命で、米大統領訪日の方面警備本部長になった彼のもとに飛び込んできたのは、大統領機の到着する羽田空港でのテロ情報だった。警視庁から派遣されてきた美貌の女性キャリア、空港封鎖を主張するシークレットサービス……。虚々実々の警備本部で、竜崎の心は揺れる。







曹源寺評価★★★★
「隠蔽捜査」「果断 隠蔽捜査2」に続く第三弾ということで、ワクワクして読み始めました。このシリーズは非常に好きなんですよ。今野氏が描く真面目な警察官は、どれもこれも非常に好きですが、本書の主人公である竜崎は堅物すぎて大好きです。
本書はその竜崎が恋に落ちるという設定です。ですから、事件のほうはなんだか盛り上がりに欠けるというか、もう最初のほうで「あぁ、これが伏線かぁ」みたいな感じで分かってしまうので、ちょっとひねりが足りなさすぎです、今野先生。
この竜崎という人物は息子の不祥事で左遷されて大森署の署長をやっているという設定ですが、キャリア警察官はどうやら、不祥事の責任を取るということはイコール警察を辞めるということらしく、彼のように左遷されても職にとどまるということはあまりないようです。でも、警察官僚はパチンコ屋か警備業界くらいしか天下りはないし、一般企業でも総会屋対策で総務担当程度で厳しそうですね。厳しいけれど、逆に「渡り」を繰り返すどこかの役所みたいな輩は少ないということでしょうかね。官僚というのは日本では「身分」であって「保障されなければならない」みたいな風潮がありますが、これはいい加減改めて欲しいものです。身分ではなく、あくまでも職業のひとつでしかないわけですよ、その辺を勘違いしている官僚はあまりにも多すぎるんでしょうね。民主党に風が吹いたのは、こんな官僚の特権みたいな風潮も改めて欲しいと思っているからでしょう。公務員改革、やるならちゃんとやって欲しいです。



この表紙の写真はエエですわ。







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2009年09月07日

書評194 真保裕一「アマルフィ」

民主党に一票を入れた人に一言言わせていただきます。
民主党に一票を投じた人はマスコミに担ぎ上げられて、いわば「自民党をお仕置きしましょう」というプロパガンダに乗せられて、「一回くらい政権を彼らに握らせたほうが日本は良くなるに違いない」と思わされた人々である、と思っています。したがって、その大多数は決して「積極的に民主党を支援する」というスタンスではなく、「自民党よりはマシ」という程度で投票した人が多いのではないかと考えられます。まあ、あくまでも推測ですが。
そういう人は、いや、そういう人こそ、これから民主党が行う施策を十二分に検証していく必要があるだろうと思います。彼らがやろうとしている施策のなかに、まだマスコミがあまり触れていないものが多数あります。もし、これらの政策を実施しようとしたときに、マスコミ連中がだんまりを決め込んでいたなら、私は絶対に許しません。


内容(扶桑社HPより)
真保裕一が書き下ろす、
フジテレビ開局50周年記念映画の原作小説
少女が失踪。誘拐かテロの序章か?イタリアを舞台に壮大なスケールで描かれる、織田裕二主演の超大作映画の原作本。真保裕一ならではのエンターテイメントサスペンス小説。







曹源寺評価★★★★
最近の真保裕一はなんだか壊れてしまったんじゃないかというくらい、駄作が多くて嫌になっていました。良かったのは「ボーダーライン」くらいまでで、そのあとはあまりパッとしなかった印象が強いですね(「栄光なき凱旋」はまあ良かったですが)。
ところが、この「アマルフィ」はええわー。なんだか、久しぶりに彼らしい作品がキターッ!って感じです。映画は観ていませんが、アマルフィのきれいな景色が眼に浮かぶようだし、外交官・黒田はまあ織田裕二でOKでしょう。その他の登場人物も映画はだいぶ原作に近いキャスティングだと思います。
真保裕一を真保裕一たらしめている要素というのを少し考えてみました。たぶん、こういうことではないかと。
・主人公は極めてシニカルで、上司の言うことを聞かない。
・だけど好青年である。
・主人公は事件に巻き込まれるが、セオリーを無視して行動する。
・表面的に見える犯罪とは別の何かが同時に進行している。
・最後は主人公が見事に謎を解き明かし、事件を解決する。
こう考えると、「ホワイトアウト」はまさに上の条件をすべて満たしています。そして、あの「小役人3部作」と呼ばれる「連鎖」「取引」「震源」などもこの条件のうち2つか3つをカバーしていると言えるでしょう。本書もこの5つの条件をすべてカバーしているわけでして、彼の真骨頂といいますか、彼ならではの作品に仕上がっているというわけです。フジテレビが推しに押し捲っているようですが(テレビ見ていないので良く分かりませんが)イタリアの風光明媚な観光地を舞台にしているだけに、映画も観たくなりました。










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2009年06月02日

書評179 黒川博行「煙霞」

先週は怒涛の一週間だったので、乗り切った今はちょっと腑抜け状態です。あんなに原稿を書きまくったのは本当に久しぶりでした。
おまけにRadioの仕事も入って定期刊行誌と新書の3本同時に仕事をすると、もうぐちゃぐちゃですわ。
Radioは生放送に15分だけお邪魔してきました。なんだかこう書くと売れっ子の作家みたいですね。全然そんなんじゃありませんが。。。
Radioの生放送は本当に緊張します。おかげでしどろもどろ極まりない、かなりひどい醜態を晒してしまいました。もう二度とやりたくないっす。

【文藝春秋HPより】
高校講師の熊谷は、学校を私物化する理事長から金を奪う計画に巻き込まれるが…。計画の首謀者は誰なのか、奪った金塊の行方は?
大阪の私立晴峰女子高校では、理事長の酒井が学校法人を私物化していた。美術講師の熊谷と音楽教諭の菜穂子は、同僚から、酒井を拉致して不正の証拠を突きつけ、理事長退任を迫る計画に誘われる。酒井と愛人を拘束し、交渉は成功したかに思えたが、その後酒井たちが失踪。じつは“教育・学校ブローカー”の箕輪に誘拐されていた。結局、熊谷と菜穂子も箕輪に捕まり、酒井から金塊を奪う計画を手伝わされるが、成功しかけたところで酒井の愛人が金塊を持ち逃げする。さらに、金塊を積んだはずの車が途中で入れ替わり、金塊の行方も分からない。はたして誰と誰がグルでこの計画を立てたのか、金塊の行方は――。
軽妙な大阪弁は変わらず快調。騙し騙され、コン・ゲームの要素が加わった痛快ミステリーです。(YB)







曹源寺評価★★★★
大阪を舞台に教師が主人公といえば、黒川博行氏の得意中の得意なジャンルということになりましょうか。軽妙な会話とスリリングな展開に、読者は惹き込まれること間違いなしな小説に仕上がっています。本書紹介にあるとおり、誰と誰がつながっていて、誰が裏切り者なのか、そして金塊のゆくえはどこなのか、最後までノンストップなストーリーに「こんなんで最後お話がまとまるんかいな」と残りのページ数を気にしながら読むような、そんなワクワク感があります。
黒川氏は近著「悪果」で直木賞候補になりましたが、ぜひまた頑張っていただきたいものです。









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2009年05月15日

書評177 海堂尊「イノセント・ゲリラの祝祭」

GW過ぎから仕事がパンパンで文字通りてんてこ舞いの日々です。ところで、てんてこ舞いって、どんな踊りですか?
そんなことはまあいいのですが、雑誌と新書の執筆・編集が同時並行で、そのうえにラジオの仕事が入ってきてどうしたらいいの?って感じです。ブログなんぞ更新している暇はない、と思いながらまたこうやって更新しています。なんだかんだいって楽しいんでしょうね。我が家ではもうあまりテレビを見ないようになりました。地デジになったらテレビ買わないでそのままなしでも良いかなあ、なんて思ったりしています。


内容(宝島社HPより)
田口・白鳥シリーズ最新刊!
厚生労働省をブッつぶせ!
医療事故を裁くのはいったい誰なのか?
東城大学医学部付属病院不定愁訴外来の責任者で、万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長からの呼び出しを受けていた。高階病院長の“ささやかな”お願いは、厚生労働省主催の会議出席。依頼主は、厚生労働省役人にてロジカル・モンスター、白鳥圭輔。名指しで指名を受けた田口は嫌々ながら、東京に上京することを了承した。行き先は白鳥の本丸・医療事故調査委員会。さまざまな思惑が飛び交う会議に出席した田口は、グズグズの医療行政の現実を知ることに・・・・・・。







曹源寺評価★★★★
本書はミステリとは言い難いのですが、読むと引き込まれるテクニックはさすが海堂氏といったところでしょうか。医療事故調査委員会を舞台にした丁々発止のやりとりはものすごい臨場感で迫力を感じます。木っ端役人という単語がありますが、「ミスター厚労省」と呼ばれるガチガチの官僚と、その彼をやり込めるもう一人の論客が、非常に良い味を出しています。本書の元となっている事件は、恐らく本当にあったのではないかと思われますし、解剖至上主義者のような病理医や法医学者もたぶん実在するのだろうと思います。ガチガチの権威主義者である大学教授や、第三者委員会を開催することを免罪符としながら天下り先の確保と予算消化だけにまい進する官僚というのも、ステレオタイプではありますがたぶんいるんだろうなあ、と感じずにはいられない仕上がりです。医療現場がどれだけ無駄の固まりになっているか、とか、医療先進国といいながら解剖率2%とはどういうことだ、と憤らずにはいられない読後感ですが、医療の明日を考えるうえでは本書は欠かせない材料となる(もちろん、素人レベルの話ですが)のは間違いないでしょう。










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2009年05月11日

書評176 北尾トロ「裁判長!これで執行猶予は甘くないすか」

忌野清志郎が天に召されました。
人は死んだときに評価されるものだ、ということを良く聞きますが、彼は死んでから評価された人かもしれません。名曲「雨上がりの夜空に」はもちろんのこと、「パパの歌」や「サラリーマン」はいまこの年になって改めて聴くと、中学生の頃に聴いた時よりもさらに感慨深いものがあります。個人的にはカバー曲が好きです。「イマジン」の日本語カバーは完全にジョン・レノンのそれではなく、彼の曲になっています。「サン・トワ・マミー」は越路吹雪さんのシャンソンではなく、真性のロックになって私達のハートを鷲づかみにしています。本当に惜しい人を亡くしました。
合掌。

内容(文藝春秋HPより)
一度傍聴したら、もうやめられない! 通いはじめて早四年、窃盗、詐欺から連続殺人まで。法廷はいつでもドラマに満ちている
裁判を傍聴するなんて、自分には一生縁がないと思ってはいませんか。
ところが、ひとたび本書を読むと、法廷がワイドショーや映画も顔負けの人生劇場に早がわり、つい傍聴してみたくなるはずです。窃盗、詐欺、強制わいせつ、殺人……。法廷で追い詰められた被告人たちはどんな言動をとるのか。その顔つきから、服装、話し方、しぐさ、思わず笑ってしまう弁明まで、独特のイラストとともに描く北尾さんの観察眼が冴えわたります。
好奇心から覗いてこそはじめてみえる人間の本性とは――。裁判員制度導入が決まったいまこそ、必読の傍聴記です。







曹源寺評価★★★★★
もうすぐ裁判員制度の開始ということで、裁判ネタの本を少しかじってみようかと思い読んでみたのが本書です。北尾氏には本書の前に「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」というのがありますが、本書はその続編といった位置づけでしょうか。被告がなぜこの事件を起こして起訴されたのか、裁判でどのようなやりとりがなされているのか、検察側はこうした事件にどんなスタンスで望んでいるのか、弁護側はこの救いようのない被告をどうやってかばうのか、といったことが事件ごとにつづられていくわけですが、これがとてもドラマチックで面白い。事実は小説より奇なりとは、本当に的を射た表現だということがわかります。
裁判傍聴マニアというのはかなりいらっしゃるようで、そうした方々との交流というのは自分では考えられませんが、阿蘇山大噴火氏や霞っ子クラブという常連さんとのお話も少し盛り込まれています。
北尾氏も本書で述べておられますが、その事件の真実を追い求めて傍聴を続けるというスタンスではなく、傍聴マニアの多くが裁判の経過を純粋に楽しんでいるというか、裁判の場でどんな発言があり、どんな発言を元に判決が構成されていくのか、といった部分に興味を示しておられる方が多いということらしいのです。ハマる人はハマるということでしょうか。ミステリ小説ファンは真実を追い求める性格の人が多いでしょう。たぶん、傍聴そのものを楽しむことができる人は自分とは違う人種なのだろうと思いました。












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2008年09月18日

書評137 鏑木蓮「屈折光」

リーマン・ブラザーズの破綻には驚かされました。今年はデベロッパーの大型倒産が相次いでいて、マジ日本ヤバイな〜と思っていたところにアメリカで大型爆弾が炸裂したって感じでしょうか、おまけにAIGグループまで破綻寸前までいってたなんて、97年の日本の金融危機なんて比じゃないくらいの破綻っぷりですわ。
おまけに、ロシアの株式市場は午後に取引停止だそうですね。
金融恐慌の日も近いんでしょうか。シャレになりません。

日米同時株価下落

世界恐慌

中国とロシアから資金引き上げ

金正日失脚

中国が経済失政をごまかすため北朝鮮を攻め併合

ロシアが資源と権益を求め近隣諸国に攻め入る

NATOが軍事介入

米国も戦争に加担

世界大戦

うわっ、すげえシナリオ。。。


内容(講談社HPより)
乱歩賞作家による最先端医療ドラマ
異常プリオンが天才脳外科医を襲う――
父娘、師弟が抱えた壮絶なる葛藤と秘められた想い
獣医師・内海綾子の周囲に異変が連続する。創薬コーディネーターの恋人が変死し、発見現場近くの牧場からはBSEの疑いがある牛の白骨体が発見される。そして勘当された天才脳外科医の父親が入院する……。すべてを解く鍵は、父親から消えゆく記憶と意識だった。
『東京ダモイ』の第52回江戸川乱歩賞作家が、2年の歳月をかけて織り込んだ深遠なテーマ、壮絶なドラマ、驚きのミステリー。堂々たる骨太エンターテインメント、完成!







曹源寺評価★★★★★
乱歩賞作家は必ず毎年確認しているということは以前も記しましたが、やはり受賞後第1作目(つまり第2作目)は受賞作品以上に注目したいと思っています。なぜなら、その作家が本当に売れる作家なのかどうかという点において第2作目の出来が重要な意味を持っているのではないかと考えているからです。もう一度この作家の本を読みたいか、という問いかけを自分に投げてみて、「うん、もう一回読みたいね」と思ったらその作家の勝ちです。そうしたら、読み続けます。最近の乱歩賞作家では「天使のナイフ」の薬丸岳氏や「翳りゆく夏」の赤井三尋氏あたりは結構読めますね。
で、本書というか鏑木蓮氏です。結論から言いますと「×」です。正直言いまして退屈でした。ワクワク感ゼロ、冗長な部分が多すぎてなんでこんな平坦な文章なの?というくらい無駄な部分が多いです。サスペンスタッチなところは随所にあるのですが、無駄な文章がそれをスポイルさせてしまっていて次の展開が楽しくなくなってしまっています。主人公とその父親との葛藤といってもたいしたものではないし(すでに小説の中にはありふれている)、もっと主人公と被害者との関係のほうをしっかりと書いたほうがよかったのでは?と思いました。
読後感はまあ良いので、それだけが救いといったところでしょうか。次に彼の作品が出ても積極的に読むかどうか微妙なところです。









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2008年08月09日

書評131 黒井勇人「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」

内容(新潮社HPより)
高校中退後、10年間ニートとして隠遁生活。パソコン以外の友達は1人だけ……。そんな1(いち=マ男)くんが母の死をきっかけに、一大決心し資格を取得。プログラマとして社員15人ほどの小さなIT企業に就職する。しかし、そこはデスマ(デスマーチ=倒れるまで帰れずに徹夜連続生活を強いられる状態)だらけの地獄のような職場、残業代って何? な、世にいう「ブラック会社」だった! 責任感のかけらもない上司、中学生レベル以下のどうしようもないイジメ、ありえない納期を平然と押し付ける取引先とそれを受け入れるリーダー。現代の蟹工船ともいえる過酷な職業環境で働くはめになったマ男の周りで巻き起こされる様々なトラブル、淡い恋、暴かれる過去……。ある日、マ男が2ちゃんねるのVIP板に立てたスレ「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」。一体、「ブラック会社」で何が起こったのだろうか! マ男の運命は?







曹源寺評価★★★★
タイトルと装丁に惹かれて手に取った方も多いのではないでしょうか。本書は別にミステリでも小説でもない(!?)と思いますが、純粋に読んで楽しいものということで押さえておいて良いかなあと思いまして読みましたので、一応紹介します。
お話は良くできていると思います。登場人物の書き分けもできているし、キャラクターがホンマかいなというくらい特徴的であるのは、ひとえに作者の表現力のなせる業でしょうか。主人公はともかく、職場の面々はありえなさそうでありえるかもというメンツ。少人数でひとつのプロジェクトを成し遂げようとした場合の人間関係、それも普通にやったら絶対納期に間に合わないような受注をこなそうとした場合のギリギリの職場、そしてギリギリの心理状態。こういったものが実にリアルに描かれていて、あー、自分はSEにならんで本当に良かったなあ、としみじみ感じる次第です。
これと同種の作品が「電車男」ですが、本書は電車男よりも良くできていると思います。周りの書き込みよりも本人の文章がうまく、彼は本当に高校中退か?と思わせるようなうまさです。もっと言えば、これは本当に実話なのか?というくらい良くできたお話です。フジテレビあたりがまたドラマにしたら結構いけるのではないかとさえ思いました。もちろん、主人公のマ男役は伊藤淳史で。
あ、あと本書を読んだ方は新潮社の本書紹介ページに行くことをお勧めします。そこには「後日談」というコーナーがありますので、最後の最後まで楽しめるかと思います。









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2008年07月06日

書評125 今野敏「リオ―警視庁強行犯係・樋口顕―」

この前の木曜日に発売した週刊文春の記事に、
2000人大アンケート「最強の刑事デカ」は誰か?
「非情のライセンス」「太陽にほえろ!」から「相棒」まで
というのがありまして、買うなり早々に読んだのですが、なんと第1位は


「銭形警部」


ですよ。
思いっきり脱力しました。まあ、確かに強いは強いですね。絶対に死なないし。人情味溢れる設定もいいですしね。文春読者世代もアニメで育った人々が主流になっているんだねえ、としみじみ思いましたが。。。

ちなみに、警察小説ものは「アンフェア」の雪平夏見が9位にはいりましたが、これもテレビドラマの影響ですしねえ。
文春さん、もう日曜日だから引用させていただきますね。
1 銭形警部
2 古畑任三郎
3 杉下右京
4 青島俊作
5 大門圭介
6 ジーパン
7 タカ
8 ユージ
9 雪平夏見
10 安浦吉之助

個人的には「うわさの刑事トミーとマツ」が欲しかったですね。あとGメン'75の草野刑事ですかね。あのマッチョマンと戦う倉田保昭が大好きでした。特に、「香港シリーズ」が始まると大興奮だったのを思い出します。刑事ドラマにあの頃の感動と興奮をよみがえらせてくれるような作品は出てきますかね。


内容(新潮社HPより)
地道な捜査、落としの人間力。「火曜日の連続殺人犯」を追いつめる刑事たち。これが警察小説だ!
「彼女が容疑者だとは、思えない」警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補は、荻窪で起きた殺人事件を追っていた。デートクラブオーナーが殺害され、現場から逃げ去る美少女が目撃される。第二、第三の殺人が都内で起こり、そこにも彼女の姿が。捜査本部は、少女=リオが犯人であろうという説に傾く。しかし、樋口の刑事の直感は、“否”と告げた。名手が描く本格警察小説。







曹源寺評価★★★★
いま書店で本書のシリーズ3部作が平積みになっています。本書を皮切りに「朱夏」「ビート」と続く、警視庁捜査一課強行班の樋口顕が主人公のシリーズです。この主人公は警察小説史上、最も気弱といいますか、自信なさげといいますか、堂々としたところが実に少ない、お人よしな側面を強く打ち出した設定となっています。周囲の目を気にするタイプですので、普通に書くとイジイジオドオドした人物に見られてしまいそうですが、今野氏の見事な描写でとても頼もしい人物に仕上がっています。周囲の評価と自分の生来の弱気が生み出すギャップに悩む姿が見事に描写されていて、実に人間っぽく仕上がっています。
こうした警察小説はあまり例を見ないので、それがかえって本書の魅力を押し上げているのではないかと思います。
今野氏の特徴として挙げられるもののひとつに、あまりドンデン返しはない、といいますか、東野圭吾氏のように、ラストにもうひとつの仕掛けがあった、というようなよく言えば嫌らしさがない、悪く言えば平坦な作りこみというものがあると思うのですが、それでもこういう主人公を刑事に仕立て上げてしまうと、ラストはまた一味違うものが出来上がるなあという感じを受けました。何といいますか、爽やかな、後味スッキリみたいな感じといったらよいでしょうかね。このシリーズはぜひ、本書からお読みいただき、「朱夏」「ビート」へと続いていって欲しいと思います。



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2008年06月29日

書評123 貴志祐介「狐火の家」

今年に入ってからの不動産業界はかなり慌しいようでして、デベロッパーがいくつも倒産しているようですね。先日もスルガコーポレーションが民事再生法の適用を申請しました。ほかにも郊外のマンションが売れなくて困っている業者をいくつも聞きます。仕事の関係で仲良くなった不動産業界の人も情報提供してくれますが、ホントにかなりヤバイようでして、上場企業もあと2〜3社は飛ぶかもしれないですね。まあ、べつに株を買っているわけではないので自分に何かが降りかかるわけではありませんが、日本経済の先行きとしては大きな懸念材料になることは間違いないでしょう。

では本題。

内容(角川書店HPより)
内容紹介長野県の平和な農村で殺人事件が発生。
一家が松本の親戚宅に出かけている間、一人残った中学3年の長女が自宅で殺害されたのだ。
強い力で突き飛ばされて、柱に頭をぶつけ、脳内出血を起こしたのが死因と思われた。現場は、築百年は経とうかという古い日本家屋。玄関は内側から鍵がかけられた密室状態。第一発見者の父親が容疑者となり、青砥純子が父親の弁護にあたる。純子は、防犯ショップの店長、榎本径を現場に呼ぶ。
この男、本職は泥棒としか思えないが、推理の冴えは抜群だった。(『狐火の家』)。

日本推理作家協会賞受賞作『硝子のハンマー』でおなじみの純子&榎本のコンビが密室の謎に迫る、シリーズ第2弾!







曹源寺評価★★★★
筆が遅いと有名な貴志祐介氏でしたが、「新世界より」に続いて本書が登場しまして、一体どうしちゃったんだい?と言いたくなるんですが、正直うれしかったです。
しかも、本書はあの「硝子のハンマー」で登場した防犯探偵こと榎本径が再び登場します。防犯ショップの店長という肩書きの榎本ですが、真の姿は本物の泥棒です。しかも、相方役が女性弁護士ということで、二人が密室の謎を解くという設定はいささか軽めながらも楽しく読むことができます。
本書は短編集ということで、標題の「狐火の家」のほか、「黒い牙」「盤端の迷宮」「犬のみぞ知る」の計4作で構成されています。個人的には「狐火の家」と「黒い牙」が気に入りました。「黒い牙」では、あるペットが巻き起こす事件、それも密室に絡んだ事件を二人が解き明かしていくのですが、これを飼っている人はかなりのマニアです。名前が登場するたびにネットで検索をかけていくと、出てくる出てくる怪しげなその正体に、思わず背筋が震えました。これぞ貴志祐介ならではの描写です。こういうのがないと彼の作品を読んだ気がしません。他の作品はその意味においてかなり軽いといいますか、万人向けに仕上がっているといってよいでしょう。
万人向けではありますが、前作「硝子のハンマー」を読んでいないと、登場人物の役どころや奥行きに触れている箇所が少ないために、面白さが半減してしまうといったマイナス要素もあるかもしれません。
個人的には「新世界より」が強烈すぎたので、あれに比べると印象に残る作品がほとんどないというのも欠点かもしれません。「クリムゾンの迷宮」な「新世界より」レベルの作品であれば、何年待っても許せます。それこそ、大物アーティストが放つ最新アルバムのようなスピードでも良いので、またスンゴイ作品をお願いします。










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2008年06月15日

書評120 近藤史恵「サクリファイス」

最近、1日5時間くらいテニスコートに立つことが多く、インドアのカーペットコートはけっこう腰にきます。そんな時に頼りになるのがスパッツでして、今はユニクロが昔出していた「BODYTECH」というシリーズのものが安くて良いんです。しかし、残念なことに、このBODYTECHは2006年に生産中止になっていまして、今手に入れようとするならばヤフオクなどに頼るしかありません。
いまこの手のボディケア系アンダースーツは人気のようでして、「アンダーアーマー」や「CW-X」(byワコール)などが売れているようです。しかしですね、どいつもこいつも高い!高いんですよ。アンダーアーマーは比較的良心的ですが、CW-Xなんてハーフスパッツで1万円を楽に越える価格です。BODYTECHは最後のほう、500円とかで販売していましたので、その差は歴然です。ユニクロさん、もう一度生産してもらえないですかね。お願いしますよ。


内容(新潮社HPより)
ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。
勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。







曹源寺評価★★★★
本書は2008年本屋大賞の第2位に選ばれた作品です。1位はこの前絶賛した「ゴールデンスランバー」でしたので、2位のほうにも興味がわきまして早速ですが読んでみました。
これも良いですね。さらっと読めるんですが、短い文章の中に意味が凝縮されているといった感じに仕上がっていますので、キャラクター造形が適確だったり、感情移入しやすかったりします。
主人公の白石誓(ちかう、と読むのでしょうか、あだ名はチカ)は高校まで陸上競技を行っていて、インターハイでも優勝するほどの実力だったにもかかわらず、ある出来事から陸上競技を辞めてしまい、自転車競技に転向します。現在は社会人のチーム「オッジ」に所属しており、エースを支える「アシスト」役としてがんばっています。そんなチームにはある疑惑が存在していて、白石は感情的なしこりを抱えながら走り続けます。やがて明らかになる真相は二転三転してエンディングに突入します。
話は後半になってテンポ良く進んでいき、読む人をググッと惹きつけます。なぜ本書のタイトルが「サクリファイス」=犠牲となっているのか、結末まで読み終えて初めて、その意味が分かります。アシストに徹することは確かに、ゴールテープを切ることができない裏方役であり、「犠牲」になる役回りではありますが、それだけではありませんでした。本書はいろいろ深い意味が内包されており、本屋さんが勧める青春ミステリとして、読んで損はない本でしょう。
ひとつ、難があるとすれば、あの過酷な自転車競技の場面がかなりあっさりしているというところでしょうか。太ももがパンパンに膨れ上がる限界までペダルを漕ぐ白熱した緊張感などは微塵もなく、せっかくマイナーなスポーツを採り上げたのにそのスポーツの面白さをほとんど伝え切れていないというのがなんともやるせないですね。
ただ、ミステリの世界ではスポーツものは売れないという変なジンクスがあるようでして、堂場舜一氏の一連の作品をはじめとしてもっと評価されても良いのでは?というものはかなりありますので、逆にこれくらいさらっとしていたほうが多くの人に好まれるのでしょうか。
それと、自分は今までこの近藤史恵女史を全くといっていいほど知りませんでした(汗)。他にも良い作品があったら教えていただきたいものです。









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2008年06月05日

書評118 貴志祐介「新世界より」

今週は日曜日に小学校の運動会があって、綱引きなんぞをやりましたら、これを書いている木曜日も肩が痛いんですが。ホントにヤバイなあ。寝不足もあるんでしょうが、治りが遅いというこんなときも年を感じてしまう今日この頃です。

そういえば、最近のヒットといえば鼠先輩ですね。最初TVで聞いたんですが、一発でハマリました。六本木をgiropponと言ってしまうというだけでなんだかバブルの匂いがします。ぜひ今年の紅白に出てPOPOPOPOPOPOとやってほしいものです。
ようつべにありましたので貼っておきますね。
http://jp.youtube.com/watch?v=cEJP7YQZe3w

内容(HPより)
1000年後の日本。伝説。消える子供たち。ここは汚れなき理想郷のはずだった――
子供たちは大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。いつわりの共同体が隠しているものとは――。何も知らずに育った子供たちに、悪夢が襲いかかる。
八町標の外に出てはいけない――悪鬼と業魔から町を守るために、大人たちが作った忌まわしい伝説。いま伝説が「実態」となって町に迫る。新しい秩序とは、おびただしい流血でしか生まれないのか。少女は、決死の冒険に身を投じる。








曹源寺評価★★★★★
貴志祐介氏の大ファンである私、曹源寺は本書をとっておきの本としてガマンにガマンを重ねて読むのを抑えてきました。なぜなら、上下巻で1,000ページを超える大作にもかかわらず、一気に読んでしまうのだろうなあと危惧していたからです。案の定、読み始めたら止まりませんでした。貴志ワールド全開です!これはまたスンゴイ本が出てしまいました。ちょっとネタバレになりますが、あらすじを紹介しましょう。
1,000年後の日本には9つの町が存在しており、主人公の渡辺早季がいるのは神栖66町という場所で、恐らくは現在の茨城県ないしは千葉県、利根川近辺です。その頃の人間には「呪力」という力が備わっており、呪力で高くジャンプしたり、水蒸気で鏡を作って空中に浮かべたり、「八町標」と呼ばれる結界の外にコロニーを作っている「バケネズミ」をやっつけたりすることができます。子供たちは「全人学級」という施設に入れられて、そこで呪力が発動するのを待ちます。呪力が身についた後も、呪力を操ってさまざまなものを作ったり実験をしたりする訓練を行います。しかし、いつの間にか友達だった同級生がいなくなったりします。結界の外に出てはいけないとする伝説に登場する「悪鬼」と「業魔」。なぜ子供がいなくなるのか。大人たちは何を隠しているのか。そして、なにより、なぜ1,000年後はこんな世界になっているのか。
早季は結界の外でバケネズミ同士の戦争に巻き込まれたり、「業魔」=橋本・アッペルバウム症候群の子供に遭遇(という表現はちょっとおかしいのですが)したり、さらには「悪鬼」=ラーマン・クロギウス症候群の少年にも命を狙われます。最後は悪鬼と直接対決することになりますが、この一連のストーリーがものすごく壮大で、かつSFなのにほとんど論理的破綻がないという(もちろん、少しはあります)ものすごく良くできた作りこみ、登場人物のプロットの見事さ、新たな生態系のディテールの細かさ、こうしたものが読む人を惹きつけて離さないわけです。別世界に没頭したい人にはぜひ一読をお勧めします。貴志ワールドと申し上げましたが、「天使の囀り」や「クリムゾンの迷宮」など、ちょっとグロ入っているホラー小説のテイストがふんだんに盛り込まれているのが、久々に「キター!」という感じでしたので、氏の一連の著作を全く読んだことのない御仁には描写がちょっとキビシイかもしれません。どこかのオンライン書店の書評で「SFとして子供たちにも読んで欲しい」などと書いてあるサイトを見つけましたが、とんでもありません。子供は読んではいけません。絶対にダメです。ハリポタみたいなファンタジーっぽさはあまりあいませんので、R15指定とさせていただきます。









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2008年05月15日

書評113 垣根涼介「借金取りの王子」

中国の大地震、すごいですね。日本でも大地震が起こるなんて説がまことしやかに流れておりますが、流言飛語に惑わされずにしっかりと行動したいと思います。とりあえずは、避難リュックの見直しと懐中電灯、ラジオの準備だーっ!
って、惑わされてるじゃん。

でも、こういうのを見ると、やっぱりちょっと不安やねぇ。
http://www.e-pisco.jp/r_ion/data/kanagawa_atsugi.html


内容(新潮社HPより)
もうダメ。私だって限界よ! 働く私のリアルを描く、恋と仕事の傑作小説。
村上真介はリストラを請負う会社に勤めるサラリーマン。昨日はデパート、今日はサラ金、明日は生保に乗り込んで、泣かれたり、殴られたり。相性バッチリの恋人陽子は恐ろしく気の強い女で、すんなり結婚とはいかないし、真介の前には難題山積み。だけど明日は来る――。他人事でないリストラ話に思わず涙。働く人必読の面白小説!







曹源寺評価★★★★
山本周五郎賞を受賞した「君たちに明日はない」の続編です。リストラ請け負い会社に勤務する主人公、村上真介がさまざまな会社のリストラ策を通じて出会うドラマにスポットが当てられていきます。
前作の「君たちに明日はない」では、リストラされる側であるさまざまな人物の生活と内面の葛藤が臨場感たっぷりに描かれていました。時は本当に企業のリストラの真っ只中だった2005年に発刊されていましたので、不況業種にいる人たちの厳しい現状と「辞めるべきか、それとも残るべきか」という人生の大きな岐路に立たされた時の心理がホントに身につまされたのを覚えています。
本書はそうしたリストラされる人々の戦いよりも、主人公の村上とその彼女である芹沢洋子の駆け引きや村上自身の行動・言動に文字を多く割いていますので、前作ほどのギリギリ感と言いましょうか、切羽詰った感じなどはありません。これはこれで良いのですが、もう少しダメ社員のダメっぷりみたいなものも描かれていれば面白いのになあ、と思ったりもしました。
ですので、「君たちに明日はない」を読んでいない人は、まず「君たちに〜」を読んでから本書に取り掛かっていただいたほうが良いかと思います。
本書は短編5作で構成されていますので非常に読みやすいです。表題作は出色の出来だと思います。本書がなぜこのタイトルになったのか、よーく分かりました。他の4作品がこの水準にあったなら間違いなく5つだったでしょう。まあ、読後感さわやかですので、他の4作品もまずまずではありますが、ちょっと物足りなさを感じたのはやはり、たださわやかなだけでもダメな自分のワガママだと思います。









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2008年05月10日

書評112 今野敏「TOKAGE 特殊遊撃捜査隊」

今日、夜の雨の中を自転車に乗って家に向かっていたら、お巡りさんに呼び止められました。
別に無灯火ではないし、信号無視したわけでもないのに。。。
しかも、そのお巡りさんが呼び止めたのは、自分がすれ違ってから100mも進んだ先でした。よっぽど怪しかったんでしょうかね。
「その自転車はあなたのですか」
「そうですよ、よければ防犯登録見てください」
「あ、いや、べつにあやしんでいるわけではないです。えーと、免許証とかお持ちですか」
「ありますよ、はい、どうぞ」
「あ、いや、出しにくかったらいいですよ」
「別に出しにくくはないですよ。はい、これです」
「すみません。これも仕事なもので」
えらい恐縮しきりなお巡りさんでしたが、こっちが堂々としているとあっちは申し訳なさそうにするみたいです。
もっといわゆる職務質問てやつを期待していたのですが、
「じゃあ、お気をつけて」
なんて送り出してくれたもんですから、なんだか拍子抜けでした。ちゃんちゃん。


内容(朝日新聞出版HPより)
警視庁捜査一課特殊犯捜査係の覆面捜査部隊「トカゲ」が、大手銀行の行員3名が誘拐される企業誘拐事件の犯人逮捕に挑む! 警察小説の第一人者による、吉川英治文学新人賞受賞後初の警察小説(シリーズものはのぞく)。







曹源寺評価★★★★
「隠蔽捜査」で吉川英治文学新人賞を受賞した今野敏氏が、新しい警察小説を発表したのがこの「TOKAGE」です。警視庁の特殊捜査係といえばSITが有名ですが、TOKAGEはそのなかでもバイクによる機動的な捜査を担当するチームということで結成されている――のが本当なのかどうかは知りませんが、隠密行動をとり、事件現場でも中心には加わらずに常にその周辺を警戒するという役回りがTOKAGEの宿命ということになっています。こうした、常に緊張を強いられながらも、他の捜査班を陰で支えるような仕事はなかなかできるものではないでしょう。それでもか彼らのプロ意識の高さが、読んでいてビンビン伝わってくるところが今野氏らしい筆致の冴えだと思います。
事件はいわゆる企業誘拐というやつで、大手銀行の行員3名を誘拐して身代金10億円を要求するという大胆な行動に出る犯人を、捜査班が追い詰めていくというストーリーです。内容的には目新しいものがあるわけではありませんし、読んでいて「もしかして」と思うようになりますのでトリックだとか奇抜なストーリーなどは期待しない方がよいでしょう。
しかし、犯人と銀行とのやりとりや、捜査現場のさまざまな意見のぶつかり合い、それに新聞記者湯浅の地道な取材などが非常にリアルで臨場感にあふれていますので、読者をぐいぐいと引っ張ってくれます。自分は約2時間で一気読みでした。警察小説好きなら、読んで損はしない本だと思います。
このTOKAGEもシリーズ化してほしいなあと思いました。










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2008年03月07日

書評90 鏑木蓮「東京ダモイ」

人事異動の季節ですね。今年もまた何事もなく過ぎていき、周りだけがドタバタしているのはちょっと哀しいようなホッとするような。。。


内容(講談社HPより)
第52回江戸川乱歩賞受賞作
男は帰還(ダモイ)を果たし、全てを知った。
極限の凍土・シベリア捕虜収容所で起きた中尉斬首事件。
60年間の沈黙を自らに強いた男が突如、姿を消した――。
風化する歴史の記憶を照射し、日本人の魂を揺さぶる感動作!







曹源寺評価★★★★★
「三年坂 火の夢」と同時に乱歩賞を受賞した作品です。タイトル、装丁ともにこちらの方が気に入ったので先に読んだ記憶があります。シベリア抑留のことは大人になってから何かの本で読んで知りました。それまでは全然知らなかったので、知ったときには恥ずかしささえ覚えました(受験で日本史をやらなかったことを今さらながら後悔しています)。
我が祖父は海軍将校だったと聞いていますので、大陸のことなどは親父も聞かされなかったのでしょうか。まあ、武勇伝ばかりで悲惨な話というのはあまりしないものでしょうけれど。
マイナス50℃の極寒の中で強制労働させられ、一日一食、夜は毛布一枚という生活で死なない方がおかしいわけで、6万人とも34万人ともいわれる死者が出たのは当然と言えましょう。しかし、自分の世代以下にこの話が伝わっているかどうか本当に怪しいものです。あの瀬島龍三もシベリア時代のことは一切黙して語らなかったといいます。死んだ人をむち打つことはしたくありませんが、沈黙も時には大罪であると言わざるを得ません。
そんな60年前の出来事にスポットを当てたミステリということで、非常に興味深く読むことが出来ました。ノンフィクションでは読みにくいテーマも、こうしてミステリに仕上げれば多くの人の目に留まってくれるという見本のような作品です。
本書のなかには俳句がいくつか登場します。これも鏑木氏が作成したオリジナルだということですが、殺人の証拠やこうした俳句などのエッセンスがストーリーにひと味ダシを加えたような働きをしてくれていまして、これが良かったですね。
ただ、ちょっとだけ冗長な展開や、緊迫感の必要な場面での書き込み不足などがみられましたのでもう少し期待したいということで★は3つ。









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2008年03月01日

書評84 貴志祐介「硝子のハンマー」

今日は土曜日のくせに朝からスケジュールがびっちり詰まっていまして、ついにブログ更新も途絶えるかと思いましたが、なんとか間に合ったみたいです。100回までは毎日いきたいっス。

内容(角川書店HPより)
エレベータに暗証番号、廊下に監視カメラ、隣室に役員。厳戒なセキュリティ網を破り、社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。弁護士純子は、逮捕された専務の無実を信じ、防犯コンサルタント榎本の元を訪れるが−−







曹源寺評価★★★★
本書は2004年4月に初版が登場したので、かれこれ4年が経過しています。貴志氏の筆の遅さは業界ではかなり有名のようでして、本書の前の作品はさらに4年前の「青の炎」です。最近ようやく「新世界にて」が登場していますが、フントに遅いですね。もっとガンガン描いて欲しい作家の一人ですが、こればっかりはしょうがないんでしょうか。
もともとホラーの分野でそれなりの地位を確立していた貴志氏がミステリにチャレンジしたと言うことで話題になりました。また、第58回の日本推理作家協会賞を受賞していますので、一応折り紙つきです。
実際に面白かったですね。ホラーな感じは一切排除されていますので恐くないですし、トリックもよくできていると思います。リーダビリティもさすが!という感じです。ただ、貴志氏の他の作品と比較しますと、「クリムゾンの迷宮」や「天使の囀り」でみせたあのビリビリとした迫力はあまりありません。フツーのミステリといいますか、よく出来ているなあという感想がぴったりくる作品だと思います。
主人公の「防犯探偵」こと榎本径という人物が、けっこう面白いキャラクターで登場していますので、彼を主人公とした続編に期待が高まっていたのですが、どうやら貴志氏にはその気がなさそうですね。でもやっぱり続編書いて欲しいなあ。









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2008年02月29日

書評83 桂木希「ユグドラジルの覇者」

眠い。。。
平日は平均の睡眠時間が5.5時間くらいの日々が続いています。12時に寝て5時半に起きるという生活。日曜日も朝に「がっちりマンデー!」観たりしていますので、土曜日の朝が一番のんびりできます。それでも、息子のはしゃぐ声で起こされますので、いや、はしゃぐ声ならまだしも泣き声の方が多いか、とにかく時間を一切気にしないで寝たいです。


内容(角川書店HPより)
200X年、世界はかつてない勢いでネット経済へとなだれ込もうとしていた。米、欧州、アジア……各国の経済覇者がしのぎを削る。果して世界経済の支配権は誰の手に渡るのか!? 壮大なスケールで描く経済謀略小説。







曹源寺評価★★★★★
なんだか書店で目立っていたので手にとってみたのが2006年の秋だったか冬だったか。黒い本って目立ちますよね。第26回横溝正史ミステリ大賞受賞作ということで期待して読みました。
でも、結論から言うと「なんだかなあ」という感じでした。どういう話かといいますと、矢野健介という日本人と「ラタトスク」という謎のトレーダーが手を組んで、ネット銀行などのIT金融ビジネスの世界を牛耳ろうとするアジアと欧州の勢力と対決するという内容なんですが、これがどうにもよく分からない。自分はこれでもビジネスマンですし、金融の世界も全く知らないわけではありませんが、ストーリーが良く分からんのです。何でだろうと考えると、一つ思い当たったのが「人物を描くのはすごくうまい」けれど「物語を描くのはイマイチ」という作り込みになっているのだということでした。そう、読み始めは良いんです。ブラジルにいる矢野健介が登場して、これから何が始まるんだろうドキドキみたいな感じでスタートします。また、ハンナ・ベルカッツという女性が登場するんですが、彼女の養父が欧州金融界のボスだそうで、その家族関係なども詳細に描かれていましてその辺は惹き込まれてしまうほどうまいのですが、あとで読み返すとあまり本題とは関係ないんじゃないの、なんでこんなに書き込んでんねんと突っ込みたくなるような感じがしなくもないです。だから、全体としてはまとまっているようでまとまっていません。世界経済の覇権を握るのは誰だと聞かれても、じゃあ何で矢野健介はここまで大仕掛けをするの?って思ってしまうのです。
ボリュームを広げる場所と狭める場所を間違えると読むほうにとってはせっかくのストーリーが台無しじゃん!と批判されてしまう典型のような作品と言わざるを得ないでしょう。キャラクターの造形よりもストーリーの組み立てを重視したほうが良い作品に仕上がることが多いのではないかと思います。実際、東野圭吾氏などは人物像にあまり重きを置かないことがままありますが、それでも十二分に読ませる仕事をしていますね。キャラクターとストーリーがみごとにミックスした作品というのも少ないのかもしれませんね。










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2008年02月19日

書評73 垣根涼介「ゆりかごで眠れ」

先日も書きましたが、道路特定財源じゃなくて自動車重量税の廃止を優先してやって欲しいと思うのですが、どうしてそういう議論にならないんでしょうかね。東国原知事と菅直人の討論もなんだか全然噛み合っていなくて失笑してしまいます。
日本はなんだかオワットルという感じでしょうか。こういうときにこんな本を読むと、日本という国を捨てたくなります。

内容(中央公論新社HPより)
愛は十倍に、憎悪は百倍にして返せ――壮絶な幼少時代を過ごしながらもコロンビア・マフィアのボスに上りつめた男・リキ。彼に纏わる人間達の凄絶な愛憎、そして生と死を描く書下ろし巨篇。







曹源寺評価★★★★★
垣根涼介氏のテイストを味わいたかったら、本書と「真夏の島に咲く花は」、それに「ワイルド・ソウル」の3作が良いかもしれませんね。どれが一番かと聞かれたら「ワイルド・ソウル」と答えますが、本書もなかなか良いですよ。特に、主人公のリキ・コバヤシが熱い。熱いです。リキは幼くして孤児になるのですが、持ち前の頭脳と度胸でコロンビア・マフィアのボスにまで登りつめます。コロンビアと日本を舞台にして、部下の奪還や裏取引などブラックな現場をスリリングに描いてくれました。
リキの言動には南米の明るさと言うよりも、日本人的なメンタリティが色濃く露出されていますが、それでもマフィアのボスとしての矜持みたいなものがあふれ出ていて魅力的なキャラクターに仕上がっています。「愛は十倍に、憎悪は百倍にして返せばいい」というセリフにはシビレました。また、部下や娘(本当の娘ではないが)に対する接し方などはマフィアのボスと言うよりは一人の人間としてグッとくるものがあります。
ラストはちょっといただけませんし、彼にはもっと面白いストーリーテリングができるはずですので、ちょっと点数はキツめです。でも、この一連のラテンシリーズに次回作を期待しますよ。南米やオセアニア系でこれだけの作品を描ける人はそうそういないですもんね。もっと読みたいッス。










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2008年02月11日

書評65 黒藪哲哉「新聞があぶない」

朝10時まで寝るなんて超久しぶりでした。本当にこんなにのんびりした日はしばらくありませんでした。。その分、ヨメには迷惑かけましたが。


内容(花伝社HPより)
新聞界のタブーを暴く!
新聞社の闇を追う
新聞はなぜ右傾化したか?
読者のいない新聞=「押し紙」が3割、1000万部!!
異常な拡販戦争の実態──新聞購読申し込みで、商品券1万円とは!!
無権利状態の新聞販売店主 
日本新聞販売協会政治連盟を通じた、政治家との癒着──  
これで新聞の自由、言論の自由が守れるのか?







曹源寺評価★★★★
新聞業界の「押し紙」問題を積極的に追いかけているジャーナリストの黒藪氏が2006年に発表した著作です。押し紙問題はこの人なくしてはこれほどまでに注目されることがなかったのではないかと思うほど、積極的に取り組んでおられる方です(黒藪氏のホームページ「新聞販売黒書」は非常に参考になります)ので、内容は非常に濃いです。濃厚です。
新聞は「インテリが作ってヤクザが売る」とよく言われますが、本当にその通りの世界であるというのがよく分かりますが、黒藪氏としてはそのヤクザな部分である販売店側に非常に同情的です。なぜなら、押し紙によって部数をコントロールされていて、担当するエリア内でパイの奪い合いをするしか生き残りの道がなく、販売エリアを広げたくてもできない、押し紙を断ると露骨な嫌がらせがやってくる、なんて本当にひどい話です。生殺与奪を新聞社に握られている販売店の実態がこれほどよく分かる本は他に知りません。
あと、最近になって知ったのですが、上場しているテレビ局の親会社に相当する新聞社の場合、決算短信などで親会社の業績を公表することが義務付けられるようになったのですね。朝日新聞社(テレビ朝日)や産経新聞社(フジテレビ)などは業績が分かるようになりましたが、読売新聞社だけは1回出したきりで最新のものをホームページで見かけないんですがどういうことでしょうかね(しかも、持ち株会社の単体業績だけですよ)。証券取引法違反ですかね。まあ、そもそも、企業は決算公告を公表する義務が商法で決められていますから、商法違反であることは間違いないみたいです。コンプライアンスと騒がしい昨今で、自らの立ち位置を見誤っている新聞社の実態がここにもよく現れているみたいです。もう一度言いますよ、読売新聞社さん、商法くらい守りましょうね。










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2008年02月09日

書評63 河内孝「新聞社−破綻したビジネスモデル」

今日も寒いですね。パソコンの置いてある部屋にはエアコンがないので、オイルヒーターを持ち込んで書いています。
今日も息子はYouTubeで電車の映像を見て寝てしまいました。寝かしつけるにはこれが一番ですな。


内容(新潮社HPより)
潰れるか? 生き残れるか? 元大手紙幹部が明かす危機の実態。
新聞という産業は今、様々な危機に直面している。止まらない読者の減少、低下し続ける広告収入、ITの包囲網、消費税アップ、特殊指定の見直し――そして何より、金科玉条としてきた「部数至上主義」すなわち泥沼の販売競争は、すでに限界を超えている。いったい新聞は大丈夫なのか。生き残る方策はあるのか。元大手紙幹部が徹底的に解き明かす、新聞が書かない新聞ビジネスの病理と、再生への処方箋。







曹源寺評価★★★★★
毎日新聞社の常務取締役だった河内氏が新書を出したということで話題になった本です。河内氏は販売店改革を実行しようとしたら、反対勢力に邪魔をされて最終的に退任に追い込まれた経緯を持つ方ですので、本書を出された理由も恐らくその辺の内幕を暴露しようとしたのかなあと勘ぐっていました。
河内氏は新聞社OBにしては珍しく、例の「押し紙」問題に正面から取り組んでいます。本書でも押し紙問題は「ある」と断言していますので、興味深いところです(各新聞社は押し紙などないの一点張りです)。
たぶん、毎日に限らず、どの新聞社も押し紙を行っていて、それは社内でもタブーになっている。そして販売部という部署が聖域化してしまっているのではないかと推察できるわけです。これだけ読者離れが進んでいて、それでもなお現状の販売方法にしか頼れないというビジネスモデルが破綻寸前であるというのが本書の主張ですが、じゃあ、その処方箋は何かというと、毎日−産経の連携だというのです。読売と朝日に対抗できる第三極を形成して、販売店網などを整備するべきであるというのが恐らく河内氏の最も言いたいことではなかったのかと思いました。
折りしも、本書が出た半年後に日経−朝日−読売の3社が業務提携を締結しました。3社連合で販売店も再構築されるようなことになれば、毎日も産経もかなりやばくなるのは間違いないでしょうね。その意味において、河内氏の主張はタイムリーで的を射ていると思います。

しかしですね、個人的には全く賛同できんのです。そもそも毎日と産経では主義主張が正反対でしょうに。それに、毎日は産経にマイクロソフトとの配信サイト提携を奪われたわけで、社内でもそのことをうらみに思っている人がいるんじゃないですかね。
個人的には、毎日新聞社はもうなくなっても良いのではないかと思います。一度潰れていますし。もう全国紙と呼ぶには地方で負け続けていますし。
河内氏としては、親心として本書を出されたのだと思いますが、読者としては、毎日なんていらねえじゃん!と思うだけで却って逆効果だったかもしれません。









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