ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:さ行の作家

2017年10月13日

書評843 翔田寛「冤罪犯」

こんにちは、曹源寺です。

選挙公示がなされると、マスゴミ各社は議席予想を発表しますね。本日(10/13時点)では自民党が圧勝して自公連立で引き続き3分の2以上の議席を獲得する見込みだと報じています。

いつも不思議に思っていたのですが、事前に議席予想を発表することで国民には何らかのバイアスがかかってしまいませんかね?
心理学でいうところの「バンドワゴン効果」や「アンダードッグ効果」というやつです。
バンドワゴン効果とは、
消費者が他人に遅れないよう物を購入する現象。また、選挙などで、優勢と報じられる候補者に対して有権者の支持や票が集まりがちになる現象をいう。(コトバンク)
一方、アンダードッグ効果というのは、
選挙の勝敗予測で劣勢にあると報じられた候補者に対し、同情から多くの票が集まり、逆転勝利へとつながる現象をいう。(コトバンク)

ということで、こうした事前調査の結果というのは非常に集団行動に影響を及ぼすことが科学的にも証明されています。
自民圧勝なら選挙に行かなくてもいいか!
とか
自民が勝つならうちの選挙区の自民候補にも乗っかったほうがいいか!
とか
立憲民主党は劣勢だな、よし選挙行かないつもりだったけど行こう!
とか、個人の行動に様々な影響を与えるようです。
もしかしたらバンドワゴン効果とアンダードッグ効果が相殺されて、結局は調査結果が影響を与えることはないのかもしれませんが、個人的には投票率との関連があるような気がしてなりません。この辺も科学的に証明してみたいテーマではありますね。

公職選挙法には以下の条文があります。
(人気投票の公表の禁止)
第一三八条の三 何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。


罰則規定もあります。
(人気投票の公表の禁止違反)
第二四二条の二 第百三十八条の三の規定に違反して人気投票の経過又は結果を公表した者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。ただし、新聞紙又は雑誌にあつてはその編集を実際に担当した者又はその新聞紙若しくは雑誌の経営を担当した者を、放送にあつては、その編集をした者又は放送をさせた者を罰する。


ダメじゃんこれ!

と思ったら、どうやら判例があって、マスゴミ各社が行っているのは「調査」であって、「人気投票」ではないので法律違反ではないということらしいですね。
でもこれ、条文にも「新聞社」や「放送」ってちゃんと記述があって、マスゴミが行っているリサーチを「人気投票」という単語にしているだけだろうと思いますよね。高裁判決らしいので、最高裁まで行ってほしいなあと思いますが、最高裁で棄却されたら終わりですからどうしたもんでしょうか。
まあ、この条文は法の精神が形骸化されていることは明白で、法律が有名無実化している典型であろうと思います。

こんな現状ですので、我々は議席予想という事前調査には惑わされることなく、ましてや雰囲気や「人気投票」で決めるのは止めにして、経済対策、外交、安全保障、憲法、社会保障、などなど様々な観点から政策を見て判断するべきであろうと思います。

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内容(KADOKAWA HPより)
たとえ悲劇を招こうとも、真実を暴くのが刑事の役目だ。警察捜査小説の極点
平成29年7月、千葉県船橋市の休耕地で、ブルーシートが掛けられた幼女の遺体が発見された。捜査に乗り出した船橋署の香山は、7年前に起きた<田宮事件>と遺体の状況が酷似していることに気づく。<田宮事件>では不可解な経緯から証拠が見つかり、犯人とされた男は冤罪を主張したまま刑務所内で自殺していた。やがて、捜査を進める香山の前で、ふたつの事件をつなぐ新たな証拠が見つかって――。


曹源寺評価★★★★
警察小説にもいろいろありまして、刑事のキャラクターで読ませる作品、法律の抜け穴や齟齬から生じた事件解決への妨げなどを中心にした社会派ともいわれる重厚な作品、事件の謎を解明することに重点を置いた謎解きの作品、警察署内外の人間模様を中心に悲喜こもごものドラマを描いた作品、そして、警察官の地道な捜査をしっかり描いて事件解決までを追う実直な作品。実際にはこれらの要素を織り交ぜながら仕上げていくのが王道なのかもしれません。これだけ方向性が異なっていても警察官が主人公なら「警察小説」となるのですから、やはりこのジャンルは奥が深いですね。
さて本書は、というと、タイトルの通り冤罪の可能性を疑いつつも、事件を追う刑事の視点を中心に地道な地取り、鑑取りを行い犯人を追いつめていく捜査のシーンをしっかりと描いている作品であります。
事件は千葉県の船橋市で発生します。女児の死体遺棄事件ともなれば、必然的に世間の耳目を集めます。その捜査を進める船橋署の香山刑事と三宅、増岡の3名を中心に話は進みます。捜査を進めるうちに事件は7年前に発生した「田宮事件」とその手口が類似していることが判明。だが、その事件はすでに犯人が逮捕され、死刑判決が出された後に受刑者が拘置所内で自殺しているのだった。田宮事件は果たして冤罪だったのか。事件の真相は如何に。
冤罪モノはこのところよく刊行されていて、中山七里センセーの「テミスの剣」や緒川怜センセーの「誘拐捜査」などが冤罪というテーマを内包していたりします。
冤罪を作り出す要因の大半は「警察内部の事情」であるのかもしれませんが、(以下、多少ネタバレ)
本書では地道な捜査の繰り返しによってこの類似事件の謎を解き明かしていきますので、あまりドロドロした内部抗争的な要因はありません。
だからこそ、この捜査の行方をしっかりと読み進めていく責務が読者にはあるでしょう。読みこなしたその先には、

納得のラストが待ち受けている

はずです。
久しぶりに警察捜査の臨場感を味わえる作品に出会えた気分です。





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2017年10月03日

書評841 佐藤究「Ank: a mirroring ape」

こんにちは、曹源寺です。

先週末から今週にかけて、政治が大きく動いています。政治ではなく政局ですね。
結局のところ、民進党が解党状態になり、希望の党、立憲民主党、無所属に分割されるようになるわけですが、現在のところまでわかっている有力議員(有名なだけの議員も含めて)の行く先だけでもまとめておこうと思います。

民進党→希望の党
細野豪志
後藤祐一
松原仁
笠浩史
玉木雄一郎
櫛渕万里
柚木道義(?)
馬淵澄夫(?)
柿沢未途(?)
階猛(?)
長島昭久(希望の党結成前に民進党脱退済み)

民進党→立憲民主党
枝野幸男
菅直人
長妻昭
初鹿明博
海江田万里
赤松広隆
辻元清美
阿部知子
川内博史

民進党→無所属
前原誠司
岡田克也
野田佳彦
安住淳
江田憲司

参議院は知らねえということで。間違っていたらごめんなさい。
希望の党は200人擁立を目指すとかスゲエこと言っていますが、玉木雄一郎や櫛渕万里を公認した時点で政策集団ではないことが露呈されてしまいましたね。後藤祐一や階猛も含めて、このあたりの人たちとは政策、特に外交や安全保障関連の立ち位置が絶対に合致していないはずなんですが。
個人的にはこの小池氏が本当に胡散臭く思えてしょうがないので、こうした節操のない動きが本当に気になります。胡散臭いというのは、小池氏の最近の動きがどう見てもポピュリストであり、(国内初の女性)総理をやりたいという野望のためだけに動いているのではないかという心証しかないからです。
こうやって眺めると、民進党→希望の党の面々はなんだか節操のない人たちという印象になりますね。
民進党→無所属の人たちはそれなりに知名度もありますが、小選挙区で落ちたらアウト!比例復活なし!の背水の陣で臨むわけですからある意味潔いですね。
あと、民進党→立憲民主党の人たちは党首が中核派なだけに、リベラルを通り越してだいぶ赤く染まってきましたので、立ち位置としてはわかりやすいのかもしれません。でも「立憲」という単語は「憲法を制定する」という意味ですので、護憲派の方々が使用するのはちょっと筋が違うような気がします。

あと(閣僚経験者で、かつ引退表明した人以外で)は
玄葉光一郎
原口一博
あたりがニュースになっていません。まだ態度を決めかねているのですかね。
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内容(講談社HPより)
2026年、多数の死者を出した京都暴動(キョート・ライオット)。
ウィルス、病原菌、化学物質が原因ではない。そしてテロ攻撃の可能性もない。
人類が初めてまみえる災厄は、なぜ起こったのか。
発端はたった一頭の類人猿(エイプ)、東アフリカからきた「アンク(鏡)」という名のチンパンジーだった。
AI研究から転身した世界的天才ダニエル・キュイが創設した霊長類研究施設「京都ムーンウォッチャーズ・プロジェクト」、通称KMWP。
センター長を務める鈴木望にとって、霊長類研究とは、なぜ唯一人間だけが言語や意識を獲得できたのか、ひいては、どうやって我々が生まれたのかを知るためのものだった。
災厄を引き起こした「アンク」にその鍵をみた望は、最悪の状況下、たった一人渦中に身を投じる――。
江戸川乱歩賞『QJKJQ』で衝撃の”デビュー”を果たした著者による、戦慄の受賞第一作!
我々はどこから来て、どこへ行くのか――。人類史の驚異の旅(オデッセイ)へと誘う、世界レベルの超絶エンターテインメント!!


曹源寺評価★★★★★
2016年の乱歩賞受賞作家である佐藤究センセーが受賞後の第1作として書き上げたのが本書です。
四六版474ページの大作には驚かされましたが、その内容にはもっと驚かされました。
舞台は2026年の京都。霊長類研究の先端施設であるKMWPセンターに勤務する(というか創設した)鈴木望は、AI関連の事業で富豪となったダニエル・キュイのスポンサードの下で、ある研究に携わっていた。
2026年10月、突然、京都市内のあちこちで暴動が発生する。人々が急に暴れ出し、殺しあったのだ。
人々を殺りくに導いたのは何か。未知のウイルスか、あるいは生物兵器か、それともゾンビが現実化したのか。人々は老若男女を問わず殴り合い、爪を立て、噛みつく。相手が死ぬまで攻撃を止めない。未曽有の暴動となった京都の町に何が起こったのか。KMWPは関係があるのか。

久々に壮大なテーマの作品に当たりました。

欠点を挙げようと思えばいくつかは挙がりますが、そんな欠点を無視しなくても十分に楽しめる内容に仕上がっています。
テーマが人類史なだけにスケールが超絶的に大きいのですが、だからといって読みにくいわけではありません。謎が出て来てもそれほど引っ張らずに解決し、次の謎に迫っていくスタイルですので、ストーリーがこんがらがるようなことはありません。時系列をしっかりと押さえていけばあちこちに飛んでいる場面もそれほど苦にはならないと思います。

以下、多少ネタバレになりますが、
ゴリラ、オランウータン、ボノボ、チンパンジーの4種の類人猿が現在まで生き残り、アウストラロピテクスに始まる猿人がことごとく絶滅しているのはなぜなのか(正確にはサヘラントロプス・チャデンシスが始祖らしいですねw知りませんわw)。
こんな疑問についてしっかりと考えたことなどありませんでした。そういわれればそうですよね。類人猿が生き残り、猿人が絶滅している。このことだけでも十分にミステリです。この謎に佐藤センセーは独自の解釈を試みます。それが表題としても現れている「mirroring ape」というやつです。
進化論の分野は昔から興味があったのでいくつかの本は読みましたが、ミステリでここまでのアプローチをしてきた作家センセーはなかなかいないのではないかと思います。ちょっと前には高野和明センセーが「ジェノサイド」のなかで新しい人類の方向性を示唆されていましたが、高野センセーが近未来の人類の在り方と現代の「虐殺」を対比させるというアプローチに対して、本書は将来のAIのかたちを求めるのに700万年前の類人猿を研究するというアプローチをしていて、そこに京都暴動という「事件」を持ってきました。
設定自体に多少の無理があるという指摘も多いですが、それ以上に本書は人類の謎という大きなテーマに対して

知的好奇心をめちゃ刺激してくるような

作品に仕上げてきたところが、本当に素晴らしいのだと思います。
個人的には今年のナンバーワンです。





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2017年09月26日

書評839 下村敦史「緑の窓口 〜樹木トラブル解決します〜」

こんにちは、曹源寺です。

自民党は平沼赳夫議員や谷垣禎一議員、高村正彦議員らが政界引退を表明しました。民進党では川端達夫議員が引退です。ご老体はお疲れ様と言いたいです。人間、誰しも引き際が肝心ですね。
この、引き際を間違えてしまった人ほど悲惨なものはありません。プロ野球ではソフトバンクの松中信彦選手などが悪例ですね。せっかくの三冠王が台無しです。同じソフトバンクの松坂大輔投手は現役にしがみついていますが、このまま復活が実現できなければ男を下げること間違いなしでしょう。
逆に広島カープの黒田博樹投手はラストの1年をカープで過ごすという大英断によって男を上げました。「男気」の代名詞にまでなった黒田さんは今後、広島県知事に出馬してもトップ当選するんじゃないかと思います。
つまり、大衆はそれほどまでに「意気」に感じる姿に共感してしまうのだと思います。

政治や芸能の世界だけでなく、ビジネスの世界も然りですね。社長にまで上り詰めていい歳になって引退したかと思えば、会長になってその影響力を残そうと目論み、さらには相談役とかいう謎の役職に就いて院政を敷くような老害が後を絶ちません。次の世代を信用していないということを態度で示しているのだということに気が付かないのでしょうか。
会長に就任して傀儡を社長に据えたはいいけれど、業績がみるみる悪化してしまい、自分は辞めずに社長の首だけを挿げ替えるという暴挙に出た人もいますね。業績悪化の真の原因は会長の院政にあるのに、自分が時代についていけなくなっているのに、自分の周辺を甘言ばかり言う取り巻きで固めているから真の情報が伝わっていないのに。

これから就職活動を始めようとしている大学3年生のみなさんには、こうした会社の組織、特にトップの状況などもしっかりと研究してほしいなあと思います。

そういえば、マスゴミにはこんな会社が結構目につくような気がするなあ。新聞社とかテレビ局とか。政治家も引退するは良いけど結局自分の息子に地盤を継がせることが多いですからあまり変わらないのかもしれませんが、マスゴミも政治家も共通するのは「巨大な権力」であります。一旦手にした権力というのは、簡単には手放すことができないのでしょう。それが人間の性でもあるのでしょう。そう考えると、上西小百合議員のようにすっぱりと不出馬宣言するのもまた面白いなあと思います。政治家としての力量は別にして。
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内容(講談社HPより)
「全ては樹木が語ってくれました」
『闇に香る嘘』『生還者』で注目の乱歩賞作家が挑む新境地。
樹木トラブルの裏には、人の“想い”が隠れている!
笑って泣ける、人の心と樹木をつなぐ6つの連作ミステリー
新設された「緑の窓口」への異動を言い渡された区役所職員の天野優樹。
えっ…、それって切符を買うところじゃ……。
疑問を抱いたのも束の間、「庭にあるスギの伐採をめぐって家族仲がギスギスしています。なんとかしてください」との依頼が届く。
そう、ここは市民の樹木トラブルを解決する部署だった!
花粉症で樹木嫌いの先輩・岩浪とともに依頼先に向かった天野。
しかし、そこにはスギを愛でる先客が。
「柊紅葉といいます。樹木医です。」
清楚な美人の登場に胸をときめかせる天野だったが、事態は意外な展開を見せ……。


曹源寺評価★★★★
下村センセーはそれなりにいいペースで執筆されていますので、とりあえず今のところ全作品を読了しています。
これまではいかにも乱歩賞作家という感じの作品が多かったのですが、本書はこれまでのカラーを一切出さずに、「これがあの下村センセーの本??」と思わせるくらい毛色の違う作品となっています。
まず、軽い。誰かが死ぬわけでもなく、トラブルと言ってもご近所トラブルくらいの軽さでミステリとしてもかなりマイルドです。
そして、ちょっとほっこり。連作短編6話を収録していますが、いずれの話もハッピーエンドです。読み進めるうちに登場人物のキャラクター造型が詳しくなってきますので、感情移入しやすくなっています。最初は「なんか軽くてつまんねえなあ」と思っていたのですが、読み進めるうちにだんだんこの作品の世界にのめり込むようになり、最後は

続編出ても読むわこれ

というくらいはまりました。
樹木(というか植物)の持つパワーもそうですが、複雑に絡み合う人間模様を植物の世界になぞらえて、そこから教訓めいた話に仕上げていくというのはそれなりに大変な作業ではないかと思いますが、それを見事にさっくりと調理してしまった下村センセーの力量に感服です。
巻末には「デビュー直後から長く温めていたアイデア」と書かれていますので、本来の下村センセーはこうしたヒューマンドラマというかちょっと心温まるお話という路線のほうを指向されているのかもしれません。ここまで守備範囲が広かったらなんでも来いという感じです。





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2017年09月19日

書評837 真保裕一「暗闇のアリア」

こんにちは、曹源寺です。

安倍首相が衆議院解散に言及するというニュースが入り、政局がにぎわっています。
日本共産党はいつも「安倍やめろ!」とか「今すぐ解散しろ!」とか言っていますが、いざ本当に解散となると「党利党略だ」とか「権力の私物化はやめろ!」とか言い出していて、いったいどっちなん?と思ってしまいます。でも彼らの思考の中では全然矛盾していないみたいなんですね。なぜかというと、「政府自民党の言うことにはことごとく反対することが党是である」というのが優先されているからだと思います。

さて、その解散総選挙ですが、野党は「大義がない」とか言っているので自民党も「消費税増税の使い道」などを争点にしようとしているみたいです。
個人的には「消費税増税反対」の立場なので、そうなると入れる政党がなくなってしまいます。消費税増税は天下の愚策でしかありませんので、また盛り返しつつある景気に水を差すことになりやしないか心配です。

どうせなら、憲法改正(9条とは言わない)と電波オークション導入、それに移民政策の是非(個人的には高等教育を受けた金持ちだけ移民を認めるか、グリーンカードのような施策として)を問うような大義を持ってきてほしいなあと思います。
電波オークションを選挙公約にしたら、果たしてマスゴミはニュースにするのでしょうか?ぜひ見てみたいものです。

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内容(KADOKAWA HPより)
夫は断じて自殺ではない。現代の闇をえぐる渾身のサスペンス・ミステリ!
相次ぐ自殺の謎
警察庁に作られた特命捜査班
夫は何をしていたのか……
真相はどこにある? 一気読み間違いなしのノンストップ・エンターテインメント
夫は自殺ではない、殺されたのだ。
警察から連絡を受けて、富川真佐子は呆然となる。自殺の状況は完璧にそろっていた。でも、絶対に違う。夫は死を選べるような人ではない。この自殺の背後には、きっと何かある――。真相を探る孤独な闘いが始まった。
警察庁では、真佐子から相談を受けた元刑事の井岡が、内密に過去の事件を調査していく。次々と明らかになる不可解な自殺……。もし、自殺大国と言われる日本で、多くの「偽装された死」があるとしたら?
ついに二人は謎の鍵を握る男の存在にたどりつく。が、彼はすでに異国の地で死んでいた!?
闇にうごめく暗殺者は、なぜ生まれたのか?
国際的スケールで展開する極上エンターテインメント!


曹源寺評価★★★★★
真保センセーのサスペンスは、どうしても複雑なストーリーになってしまっているので「読みづらい」とか「ごちゃごちゃし過ぎ」とか言われます。外交官シリーズなんて典型的ですね。
本書もまた然り。夫の自殺に疑問を感じた富川真佐子が、警視庁に勤務する元刑事の井岡とその真相に迫っていくストーリーですが、なにせ事件の背景が経産省の汚職なのかODAなのかアフリカの紛争なのか、みたいな大きなところから入っていって、そこからなぜか栃木県のほうに行ったりして、事件そのものがどんどん複雑になっていくのであります。
登場人物の数も半端ないので、読み進めていくだけではだれがキーパーソンなのかわかりません。事件の方向性が見えてくるのが中盤以降なので、そこまでは我慢が必要になります。
そこからラストにかけては緊迫の度合いが増していくのですが、エンディングはどうにモヤモヤ感がぬぐえません。

広がりすぎた風呂敷を畳もうとしたら丸まってしまった

というのが正直な感想です。

(以下、ネタバレ注意)
遺書の偽造方法とか、自殺に見せかけた殺人の手段とか、事故死に見せかけた手口の詳細とか、米露の思惑とか、日本の重工業メーカーのうんたらとか、なんだかスルーしてしまったものが多くてどうにも落ち着きがないですわ。
もっとシンプルに国内だけの事件にしてしまったほうが読みやすかったのではないかと思います。せっかく「年間3万人の自殺者に紛れ込ませるテクニック」といった点に着目されたので、そこだけに焦点を絞り込んでもよかったのではないかと、ちょっと悔やまれる内容でした。





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posted by 曹源寺 at 17:26| Comment(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月12日

書評835 佐々木譲「真夏の雷管」

こんにちは、曹源寺です。

山尾議員の不倫問題でさまざまな方がマスコミ等でコメントしているなかで、いわゆる「ダブルスタンダード」な方々がたくさん湧いて出てきたという話題がありました。
曰く、
「宮崎謙介議員はダメだが、山尾志桜里議員は優秀だから大目に見ろ」
「中川俊直議員は復帰しなくて良いけど、山尾志桜里議員には立ち直ってほしい」
みたいなやつです。
ダブルスタンダードという英語はないそうなので、最近では日本語にして「二重基準」などという言い方をされる人が増えてきました。個人的には和製英語など掃いて捨てるほどありますのでダブスタで良いかと思いますが。
そのダブスタですが、要するに「あの人がやるのは良いけどこの人がやるのはダメ」と言っているに等しいわけですよ。

それって差別なんですよね。

ダブスタな発言をされている人ほど、差別している意識がないのではと思います。知らず知らずのうちに差別をしている。こういうのが一番怖いですね。自分は正義で相手は悪。自分の発言は正しいから相手の言っていることは間違い。間違っているから正してあげないといけない。間違っているから糾弾しても構わない。間違っているからその腐った性根をたたき込んであげるのが正義だ。

こうなってしまうと相手の発言をすべて頭ごなしに否定するようになります。末期症状ですね。行きつく先はポル・ポトのような粛清、虐殺ですわ。もしかしたらですが、人間として一番行ってはいけない方向というのがこうした人間性なのではないかと思ったりします。

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内容(角川春樹事務所HPより)

精密工具の万引き、硝安の窃盗事件、消えた電気雷管。三つの事件がつながったとき、急浮上する真夏の爆破計画。誰が、いつ、どの瞬間に?札幌大通署・刑事課の佐伯は、生活安全課の小島百合、機動捜査隊の津久井らと共に、警官の覚悟を見せる。息もつかせぬ緊迫のクライマックス。刻限に向けて、チーム佐伯が走る!待望の書き下ろし長篇。


曹源寺評価★★★★
佐々木譲センセーの北海道警シリーズ最新刊です。このシリーズはシリアスなストーリーのなかに、登場人物のサイドストーリーを織り交ぜていて非常にヒューマンなドラマになっているという印象があります。
しかももうシリーズ8作目に突入です。シリーズ当初は北海道警が釧路本部長による裏金作りの実態暴露で大揺れに揺れた時期に、まさにその裏金問題をテーマに佐々木センセーが書いてしまったものですから大いに反響を呼んだというスタートでした。そこから、佐伯、小島、津久井、立正寺らのレギュラーメンバーがほぼほぼ固定で登場してはそれぞれが主人公的に事件を解決してきたのであります。
本書は園芸センターから硝酸アンモニウム(硝安)が盗難されたところから文字通りきな臭い事件のにおいがするようになります。
この事件を佐伯らが追う一方、小島百合は狸小路にある閉店セール中の模型店(これもろに中川ライター店がモデルですね)で万引き犯の少年を捕まえるが、ちょっとしたことで逃げられてしまう。この少年が盗んだものが精密工具だった。複数の事件が交錯するなかで、浮上する一人の男。徐々に追い詰めていく警察だが、自暴自棄になったらそれこそテロを起こしかねないとして慎重な捜査が求められるように。犯人を追う手がかりはどこにあるのか。そしてテロを起こそうとしているのはどのタイミングなのか。

ラストの緊迫感はシリーズ最強

ではないでしょうか。札幌駅のホームで繰り広げられる攻防は一読の価値ありです。
佐々木センセーの警察小説は他のセンセーよりも比較的ロジックの構成が巧みで、多少の緊迫した場面はあってもバイオレンス臭がバリバリといったシーンは少ない印象です。しかし本書はタイトルの通り雷管→爆弾、しかも手作り爆弾ですのでとってもカオスな、そしてとってもサスペンスな展開が待ち受けています。読むほうも非常にスリリングです。

(以下、少しネタバレ)
今回はJR北海道や札幌駅助役といった実在する組織や人物が登場してきますが、佐々木センセーは容赦なく斬り込んでいます。JRは東日本もそうですが、北海道などまさに「アカの巣窟」と言われて久しいですが(知らない方は西岡研介センセーの「マングローブ」などお読みください)、それゆえに再就職が難しかったりしているわけで、赤字路線のオンパレードなJR北海道がこの先生きのこるためにはこうした赤化体質の改善なども欠かせないのではないか、といったメッセージがもしかしたら本書には込められているのではないかと勘繰ったりもします。







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2017年08月08日

書評826 曽根圭介「黒い波紋」

こんにちは、曹源寺です。

昨日は河野太郎外務大臣が、周囲の期待を裏切って仕事をしていると話題になりました。
「お父さんの意見大切に」王外相、河野氏に皮肉(8/7読売新聞)
【マニラ=比嘉清太】河野外相と中国の王毅ワンイー外相が7日、初会談でいきなり火花を散らす一幕があった。
王氏は会談冒頭から「発言を聞いて率直に言って失望した」と河野氏を批判した。会談に先立つ東アジア首脳会議(EAS)外相会議で、河野氏が南シナ海問題への懸念を表明したことに不満を示したかったようだ。「ハト派」として知られた河野氏の父の河野洋平・元衆院議長を「正直な政治家」と持ち上げ、「お父さんの意見を大切にすることを望む」とも皮肉った。
これに対し、河野氏は「中国には大国としての振る舞い方を身に付けていただく必要がある」と反論した。


河野氏のブログを読めばわかりますが、河野氏は実にマメです。自分の仕事には責任を持ち、きちんと正論を吐いてそれを曲げない精神性もお持ちのようです。先日も書きましたが、父親の売国っぷりとは違って、情に流されたりトラップに引っかかったりはしないような感じがします。法律がこうなっているから、とか、条約で締結したのだから、とか、彼の行動規範はこうした法律第一主義的な色合いが強いのだろうと思います。
こういう人は行政のトップに据えるとなかなかぶれませんので、意外と適任なのかもしれません。
ちょうど外務副大臣には「ヒゲの隊長」こと佐藤正久センセーが就任されました。こと外務に関してはこのコンビが活躍するのではないかと期待しています。
あ、一応補足しておきますが、好きではありません。嫌いだけど仕事はきちんとするんだろうなあということです。

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内容(朝日新聞出版HPより)
元刑事の加瀬将造は、孤独死した父親宛てに何者かから毎月30万円の現金が届いていることを知る。さらにアパートを片付けると天井裏から古いVHSのビデオテープが。中身を確かめると、そこに映っていたのは・・・。江戸川乱歩賞・日本ホラー小説大賞受賞作家、渾身作!


曹源寺評価★★★★
後味の悪いホラーチックな作品で個人的には大好きな曽根センセーの最新刊です。本作はホラーではなくてクライムサスペンスのジャンルだと思います。
冒頭は元刑事にして便利屋家業の加瀬将造が、実父・真木盛夫の死去を知らされ現地に赴くところから始まります。両親の離婚後30年も音信不通であった実父なので、哀しみもわかない加瀬。部屋に金目のものがないか探すと、偽名で借りた私書箱の契約書があり、何者かが毎月30万円を父に送金していることを知る。さらに天井裏には古いVHSのビデオテープが隠されていた。離婚して養育費の支払いに追われていた加瀬は、千載一遇のチャンスに賭けようとする。。。
曽根センセーの作品の特徴のひとつに、「登場人物がみんなクソ」というのがあります。クソ野郎ばかりですので感情移入できません。だから嫌い、という人が多いのかもしれませんが、自分は違います。

クソにはクソの末路がちゃんと待ち構えている

のが曽根作品の特徴でもあります。
本書は主人公と思しき加瀬も、その実父の真木盛夫も、そのあとに登場する政治家とその取り巻きも、みーんなクソで悪党です。しかも加瀬はバカでもあります。(以下、ネタバレあり)


加瀬は脅迫の仕方がめちゃめちゃ下手です。現金の受け取りも下手くそ極まりありません。オレだったらもうちょっとうまいことやれそうな気がするなあ、なんて思ったりもしますが、これは読者が思った時点で曽根センセー的には勝ちなのかもしれません。そう、なんだかんだでこの悪党に感情移入しているわけですからね。
登場人物がクソなので、たいていの作品はラストも後味悪いです。本書もまた、微妙なしこりを残す終わり方をしますので、何とも言えぬ気分にさせられます。
でも、それこそが曽根センセーの持ち味だと思っています。本作は伏線をきちんと回収しているし、悪党にふさわしい末路も描かれているし、政治の世界はやはり闇が深いなあと思わせているし、で納得の一冊であるかと思います。





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2017年07月28日

書評823 笹本稜平「危険領域 所轄魂」

こんにちは、曹源寺です。

R4こと村田民進党代表が辞任を表明しました。自民党では稲田防衛相が辞任しました。個別にみればいろいろな背景がありますが、最近は物議をかもす女性議員が多いのが印象的です。

嫌われる議員が多いのでしょうか。嫌われるとしたら、何がいけないのか。このあたり、女性蔑視にならないレベルで実証したら面白そうな気がします。

議員、それも大臣や党の幹部となれば人望がなければいけません。でも人望って何でしょうね。人望イコール人を惹きつけるもの、ということだと思いますが、じゃあその正体は何よ、という話になります。逆に、人が離れていく要素って何でしょうね。R4議員が記者会見で放った「遠心力」という単語には、なんだかすごく深いものを感じてしまいます。
個人的な感想ですが、遠心力のある人ってこんな感じでしょうか。
・責任を取らない
・言い訳ばかりして謝らない
・人のせいにする
・自分で汗をかかない
・常に上から目線
・攻撃的すぎて何にでも噛みつく
・落としどころを知らない
うーん、ほかにもいっぱいありそうだ。いずれちゃんとまとめたいですね。

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内容(徳間書店HPより)
マンションで転落死と思われる男性の死体が発見された。死亡した男は、大物政治家が絡む贈収賄事件の重要参考人であるという。さらには政治家の公設第一秘書、私設秘書も変死。自殺として処理するように圧力がかかる中、葛木が極秘裏に捜査を開始すると、とある黒幕が浮かび上がってきて……。政治が真実を闇に葬ろうとするとき、葛木父子は警察の矜持を保つことができるのか!大人気警察小説シリーズ第四弾。


曹源寺評価★★★★★
「所轄魂」シリーズも4作目に突入です。根っからの刑事である葛木邦彦と、その父を見ながらキャリア警察官として一気に父を追い抜いた息子の葛木俊史親子が奮闘する警察小説として、笹本作品のなかでは「越境捜査」シリーズとともに定着したシリーズです。父親よりも出世した息子だが、実力(=捜査能力)では父親のほうが一歩も二歩も上であり、それを息子も十分に承知しているから軋轢も生じない。逆に見事な連係プレーを見せてくれるという、いつもながらなんともうらやましい展開になるのが常ですが、まあそこは微笑ましい父子愛ということで我々読者は暖かく見守ってやりましょう。
今回はとある政治家の公設第一秘書と私設秘書が相次いで死体で見つかるというところからスタートします。捜査第二課の理事官として就任している息子の俊史は、贈収賄事件として立件したいところに重要参考人が死んでしまった格好だ。一方の父・邦彦は変死体を前に殺人事件として捜査したいが、事を荒立てるのは良くないと判断した上層部と軋轢が生じ始めます。
国家を揺るがす大規模な贈収賄事件と殺人事件、どちらを優先的に扱うのかで揉めるのですが、そうこうしているうちに捜査は後手後手に回ってしまいます。捜査一課と捜査二課の領分で揉めると同時に、警視庁と福井県警でも軋轢が生じたり、地元の有力者に気を遣う県警のなかにも気骨ある刑事がいて上層部と現場でも意見の相違が表面化したりして、なんだかいろんなところで齟齬をきたしている警察組織というところに最後はやっぱり「所轄魂」で締め括るというお決まりの展開でありました。
それにしても、笹本警察小説というのはいっつも同じ感想しか思い浮かびません。本シリーズのみならず、「越境捜査」シリーズにも共通して言えることですが、思いつくだけでこんなにありました(以下、だいたひかる風にお読みください)。
序盤から中盤にかけて事件がまったく進展しないというダラダラ感。
刑事同士の会話だけで事件が進んでいくという臨場感ゼロの荒技。
しかもその会話がものすごく堅苦しいので読んでも頭に入らないという哲学の授業状態。
事件の詳細が分からないまま進んでいくから読後しばらくするとどんな内容だったのか思い出せなくなるという記憶喪失。


どーでもいーですよ

と歌いたくなってしまいそうになるレベルです。
これに、ラストの事件解決した感がまったくないというモヤモヤ感。というのもありますが、本書はまだ事件解決している方かなあと思いますので、まあここは割愛で良いでしょう。
あと、笹本センセーの意識の根底にあるだろうと思われるのが、反権力思想でしょう。越境捜査にしても所轄魂にしても、犯人像が大抵与党の大物政治家だったり警察上層部だったりしてちょいと食傷気味です。笹本センセーの世代(1951年生まれ)はほぼ団塊の世代です。おそらく最も反権力思想の持ち主が多い世代ではないかと思いますので、これはしょうがないかなあとも思います。55年体制による弊害が多かったというのもありますし、疑獄事件もいっぱいありましたからね。
しかし、それより後の世代は団塊の世代のことを見下していますよ。共産党なんてテロリストだと思っていますし、中核派だの革マル派だのといった単語にはまったくピンときていません。本書に出てくるロッキード事件も解説がなければ理解できないでしょう。
いまはマスゴミが政権与党に対する攻撃を強めていますから、政治家の汚職なんて簡単にできません。やっていることは不倫とか政治活動費のポッケナイナイとか本当にせせこましいことばっかりです。政治家よりも官僚のほうがドス黒いでしょうから、中央官庁の腐った役人あたりにターゲットを絞ってみてはいかがでしょう。財務省、外務省、文部科学省あたりはネタの宝庫かもしれませんね。





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2017年07月11日

書評818 佐々木譲「沈黙法廷」

こんにちは、曹源寺です。

加計学園の話題(問題とは言わない)で、地上波がすべて前ナントカさんの応援団になっているらしく、昨日の閉会中審査では7時間もかけて審査が行われたにもかかわらず、報道された内容が各局とも似たり寄ったりという異常な状態がネットで話題になっています。

議事録をしっかりと読み、加戸前愛媛県知事の話を聞き、時系列で事象を追っていけばこの話題は問題ではないことが理解できるはずなのに、事件化したくてしょうがない連中がいるということがよくわかります。

どんな連中かというと、それは「新聞社の政治部」連中です。

ほとんどの新聞社が、政治部をエリート集団と位置づけており、経済部や文化部などを見下している構図になっています(社会部はまた違う毛色ですね)。その政治部連中というのは「政治」ではなく「政局」を語るのが好きなんですね。だから選挙になると色めくし、与党の支持率が下がるとすぐに政局にしたがるわけです。かつての自民党では右派も左派もごちゃまぜで、古くは「角福戦争」だったり「金竹小(こんちくしょう)」だったりと派閥争いを中心に取材していけば面白かったし、国民の関心事でもあったのですが、今は派閥もあまり機能していないのでどうしても「安倍一強」になってしまうわけで、それを快く思っていない連中(記事にならないからつまらない連中)が政局を作り出したくていろいろと仕掛けているのではないかと勘繰ってしまうんですが。でもそのいろいろというのが、「○○大臣が失言したンゴー」とか「支持率が下がったンゴー」とか「国会前でデモガー」とかそういうのしかなくて、最近の報道に不信感を抱いているネット民からすると「また印象操作してるわねー」という感想しか持つことができなくなっています。

政治部は政局ばかり記事にしないで、政治の中身の記事を書いてくれないですかね。

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内容(新潮社HPより)
絞殺死体で発見されたひとり暮らしの初老男性。捜査線上に家事代行業の女性が浮上した。彼女の周辺では他にも複数の男性の不審死が報じられ、ワイドショーは「またも婚活殺人か?」と騒ぐ。公判で無実を訴える彼女は、しかし証言台で突如、黙秘に転じた。彼女は何を守ろうとしたのか。警察小説の雄が挑む新機軸の長編ミステリー。


曹源寺評価★★★★
久しぶりの佐々木譲センセーでしたが、四六判550ページを超える大作でありました。長い長い作品ではありますが、ストーリーは意外にシンプルです。
東京・赤羽で一人暮らしの男性が絞殺死体で発見される。赤羽署の伊室刑事はこの家に出入りしていた人物の洗い出しを行っていたが、そこに浮上したのがフリーの家事代行業、山本美紀であった。事情を聴こうと彼女に自宅に赴くと、そこには埼玉県警の刑事がいた。大宮でも一人暮らしの男性が不審死していたらしく、彼女に事情聴取を試みていたのだ。これは連続殺人なのか、それとも偶然か?功を焦った埼玉県警と警視庁は逮捕、起訴に持ち込もうとするのだが、、、
地方警察が連携できずに犯罪者を追及できないといった事例は現実にも多いそうですが、本書はその辺の難しい事情を見事に描写しています。
警視庁はこの殺人事件について直接的な証拠の確保ができず、状況証拠の積み重ねだけで公判に臨みます。一方で、マスコミは彼女の周辺を徹底リサーチして類似事案を探すとともに、彼女の人物像を固定化しようとします。こうなると、検察も無視できなくなるわけで、公判を維持しようとすれば被告人の自白か直接的な証拠の確保が必須になるのにそれができていない。
この難しい事件を、

前半は警察小説として、後半は法廷小説として

書き上げているところが、佐々木センセーのうまさでしょう。これだけ厚い本になってしまったのは、法廷シーンのリアリティ追求が半端ないレベルにあることはもちろんのこと、事件の謎とそれを解く鍵をしっかり描写しておく必要があったのだろうと思います。
法廷シーンからラストにかけてはある程度納得の展開ではありますが、正直、期待していたほどではなかったかもしれません。なんとなくもやっとしたところが残ります。最後の最後はおそらく、佐々木センセーがもっとも言いたかったことではないかと思いますが、「社会派の法廷サスペンス」を全面に押し出されないと読者としてはちょっと不満です。なんとなく消化不良な読後感なんですが、それは山本美紀あるいは中川綾子に対する疑惑(特に金銭的疑惑)に関する払拭が完全になされていないからなのかもしれませんが、そういうのはすっ飛ばしておいたほうが良いんですかそうですか。






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2017年05月23日

書評804 佐藤究「QJKJQ」

こんにちは、曹源寺です。

ここ20年くらいで大きく変化した世の中の風潮のなかに、嫌煙権があります。どこでもタバコが吸えた時代はとうの昔に終わっており、受動喫煙対策も本格化しつつありますので愛煙家にとっては窮屈極まりない時代になりました。
自分も新入社員の時代にはオフィスのデスクで吸えたものでしたが、いまは全館禁煙です。オフィス街ではタバコが吸える建物のほうが少なくなっているかもしれませんね。

さて、自民党内における受動喫煙対策の会合で大西英男衆議院議員が「(がん患者は)働かなければいいんだよ」と発言したことが騒動に発展しました。自民党議員の舌禍事件として取り沙汰されています。
大西議員は陳謝したものの「働かなくていいのではないかというのは、ごくごく少数の喫煙可能の店でのことについてだ。がん患者が働かなくてもいいという趣旨ではない」として発言は撤回しない考えです。

これ、舌禍事件ですかね?
発言の趣旨は「喫煙可能な店で肺がん患者が働く必要はない」であって、「小麦アレルギーの人がパン屋で働く必要はない」と言っているのと同じだと思うのですが。
「お酒を飲めない人がバーテンダーをやる必要はない」
「ヘルニア持ちの人が引っ越しの仕事をする必要はない」
「花粉症の人が林業をやる必要はない」
「泳げない人がライフセーバーの仕事をする必要はない」
これらは仕事をすることによってその人の体調を壊し、あるいは症状を悪化させ、場合によっては他人にも迷惑をかけることになる事例です。職業選択の自由とか言う以前に、やったらダメでしょうという話です。
大西議員は言葉足らずだったとは思います(ヤジとしても品がないです)が、これをもって議員辞職せよとか撤回するまで許さないとかいうのは言葉狩りでしかないのではと思います。

受動喫煙対策も、小規模事業者にとっては客が減る可能性が指摘されていますので、自民党としてもどこかで抜け道がないと支持層からそっぽを向かれそうですね。個人的には、タバコを吸えるお店の名称に必ず「シガーバー」とつけなければいけないとか、そういうルールでも定めてはどうかと思います。「シガーバー和民赤坂店」とか「シガーバー塚田農場渋谷店」とか「シガーバーすしざんまい築地店」とか。
嫌煙家は絶対に来なくなると思います。


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内容(講談社HPより)
市野亜李亜(いちのありあ)は十七歳の女子高生。猟奇殺人鬼の一家で育ち、彼女自身もスタッグナイフで人を刺し殺す。猟奇殺人の秘密を共有しながら一家はひっそりと暮らしていたが、ある日、亜李亜は部屋で惨殺された兄を発見する。その直後、母の姿も消える。亜李亜は残った父に疑いの目を向けるが、一家には更なる秘密があった。
「平成のドグラ・マグラ」
「ものすごい衝撃を受けた」
選考委員たちにそう言わしめた、第62回江戸川乱歩賞受賞作。


曹源寺評価★★★★
2016年の江戸川乱歩賞受賞作品です。
90年以降の乱歩賞受賞作品はすべて読了してきましたが、その歴代の受賞作のなかでも本書はある意味衝撃的でありました。
父、母、兄、そして自分の一家4人がすべて猟奇殺人鬼という設定。
ここからしてもう異端です。
地上3階地下1階の我が家には処刑部屋があり、各々殺したいときにその部屋に連れ込んで惨殺する。なんともおどろおどろしい設定です。あぁ、なんだかとっても乱歩的ですね。
こういう奇抜な設定で思い出すのは2000年の受賞作「脳男」でしょうか。ロボットも顔負けのmm単位で精密な動きを行うことができる主人公の「脳男」。ある評者は「この設定だけでもう勝ちだ」と絶賛していたのを思い出しました。
そんな一家にある日、兄が部屋で惨殺され、母も失踪するという事件が起こります。そこからはストーリーが二転三転し、この一家の秘密が明らかになっていきます。
リアリティには欠けますが、それは初期設定のせいだけではありません。真実が明らかになったと思ったら新たな真実が浮かび上がる。普通ならひっくり返さないところをひっくり返す。登場人物の言動や行動にも仕掛けがあったりして、最後まで気の抜けない展開でありました。

幻想と現実の境界線で揺れ動く主人公。

読者もまたその揺れ動く姿に幻惑されます。

この手の作風が好きな方にはたまらない作品になっているのではないかと思います。
佐藤センセーは1977年生まれ。「佐藤憲胤」の名でデビューしていましたが、乱歩賞受賞で改めて佐藤究(きわむ)としてデビューという経歴です。
本書はあの新潮社の中瀬ゆかり氏が「久しぶりに天才現る」と大絶賛しただけでなく、乱歩賞審査委員会の面々のうち有栖川有栖センセーが「平成のドグラ・マグラ」と評したほか、今野敏、池井戸潤、辻村深月の各センセーが褒めていました。
なるほど、こういう世界観でほかの作品も読んでみたいと思わせるような新人の登場かもしれません。次回作にも期待してみたいと思います。





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2017年03月28日

書評791 下村敦史「告白の余白」

こんにちは、曹源寺です。

1週間、更新を止めてしまいました。久しぶりにまとめて有給休暇をいただきまして、ちょいと花粉症のないところまで行ってきたので東京に帰ってきたら寒いわ喉は荒れるわで大変でした。
そんな花粉症のないところ=沖縄県ですが、観光目的では初めてでしたので楽しかったです。3月の沖縄はまだちょっとだけ肌寒いので長袖シャツ1枚、夜はその上に羽織るものが必要でした。でも、シュノーケリングもできたし、安かったのでまずまずの旅行でした。

しかし、自分のなかには沖縄のイメージとして「ちょっと前までアメリカだった沖縄」と「ドーベルマン刑事の沖縄コネクション編」というのがあります(知らない人はググってくださいまし)。小さい頃のトラウマみたいなもので、沖縄=地上戦のあった悲惨な土地、沖縄=アメリカに蹂躙されてきた土地、という変な刷り込みがなされていました。特にトーベルマン刑事は単行本11巻あたりがもう最初から最後までバイオレンスの塊みたいな作品でしたから、ひどく印象に残っています。
やはり沖縄に来たからにはそんな戦争の記録も見なければなるまい、ということで「ひめゆりの塔」に行ってきました。ひめゆりの塔は那覇空港から南東に向かってクルマでだいたい40分くらいかかる場所にあります。
記念館の展示はかなり詳細で、お亡くなりになった学徒と教員200余名の記録が詳細に展示されています。誰がいつ、どこでどんな死に方をした(!)まで記録されているので、おいおい個人情報保護法はどうしたwwwていうくらいすごいです。
映像記録もこれまたすごいです。海岸に広がる死体の山とかダダ流しなので小さな子どもにはトラウマレベルです。たぶんですが、米兵を嫌いになることはあっても好きになることは絶対にない、といえるレベルで刷り込みさせる映像です。
記念館の展示は比較的感情抜きで淡々と事実を述べているものが多かったのですが、映像はショッキングだと思います。
沖縄県民が屈折した感情を持ってもしょうがないのかもしれないなあ、と思いました。

沖縄戦における学徒動員はひめゆりだけではなく、ずゐせん学徒隊や白梅学徒隊などが組織されていましたし、沖縄戦の期間がおよそ6か月であったこと、米軍の動員数が述べ50万人であったことを鑑みれば、こうした学徒の方々による活躍がなければ沖縄陥落はもっと早かった可能性があります。当初、米軍は1か月くらいで陥落できると見込んでいたようですので、もし沖縄陥落が早かったならば沖縄が拠点となって本州への攻撃がさらに激化した可能性もあったでしょう。
我々本土人は、彼女たちに深く頭を垂れて感謝をしなければいけないし、彼女たちのような悲劇を二度と繰り返してはならないということを誓わなければならないと思いました。
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内容(幻冬舎HPより)
「京女の言うことは、言葉どおりに受け取ったほうが幸せえ?」 家を出た兄が実家の農地の生前贈与を求めて突然帰ってきた。しかし、「2月末までに清水京子という女性が来たら土地を譲渡してほしい」という遺書を記し自殺。兄はなぜ死んだのか。そして、女は何者なのか。期限の意味は。 死の真相を知るため、弟の英二は一人京都へ向かうがーーそこは老舗女将、京美人、狡猾な老職人など曲者渦巻く町。腹黒、嫌味、皮肉が飛び交う町が真実を覆い隠し謎は深まるばかり……。 会話すべてが伏線! 一人一人の“本音"を見過ごすことなく、あなたは真相に辿り着けるか。 大注目の乱歩賞作家が「言葉」に罠を仕掛けるノンストップミステリ。 次々と表裏、黒白、真偽が逆転。最後の1ページまで気が抜けない!


曹源寺評価★★★★★
本当に続々と出るなぁと感嘆の言葉しか出てこない下村センセーの著作ですが、今度は京都を舞台にしたミステリです。
4年間も放浪したあげく、ふらっと高知の実家に帰ってきた双子の兄、英一。農家の土地を生前贈与して欲しいと訴え、実現したらその翌日に自殺するという不可解な行動に、弟の英二がその謎を解き明かすため京都に行く。なぜ兄は自殺したのか。遺書に込められた兄の思いは何だったのか。
うーん、最初の導入からあまり面白くないなあ。ガマンして読み進めたら中盤辺りから面白くなってきましたが、ラストもなんだかよく分からなかった。
京都の人とのつきあいはよく「『ぶぶ漬けでも食べていきなはれ』と言われたらすぐにお暇しなければいけない」というよくわからん作法があります。言葉とその真意が真逆だったりすることがままある、ということの例えですが、

そんなん関東人にはわかりません。

「この前の戦」といったら応仁の乱だとか、同じ京都市内でも山科区は京都ではないとか、いつまでも日本の中心地であることのプライドが残っている街であるということは理解できなくはないですが、それって完全に内輪の話ですね。
そんな京都人のどうでもいい慣習の内輪話が延々と続き、でもじつはそれがミステリの伏線になっているというお話ですので、正直

そんなん知るか

という感想です。あとは、それ以上に

京都人怖えぇ

という感想でしょうか。真に受けると京都人と会話ができなくなりそうです。
一応、フォローしておきますと、京都の人たちが婉曲的に表現するのは「直接的な表現をすることで相手が傷つくのを避ける」という大義名分がありますので、嫌味なのではなくて優しさゆえということが真実です。
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2017年03月07日

書評787 真保裕一「脇坂副署長の長い一日」

こんにちは、曹源寺です。

ネットで話題になっていることとテレビで報道されていることのギャップが最近、富に激しくなってきたと思っているのは自分だけではないと思います。
WBCで韓国がイスラエルに負けたというニュースはテレビでガンガン放映されていますが、その韓国がTHAADを批准したことで中国から経済制裁を加えられていることはあまり報道されていません。
国会の動画も、福山哲郎や蓮舫(R4)の威勢のいい啖呵を流しても、維新の足立議員によるR4を糾弾する動画はニュースで報じられることは一切ありません。

民進党のR4二重国籍問題と山尾しおりのガソリン問題は今話題の森友学園よりも個人的関心度が高いんですが、どこの報道機関も報じてはくれません。森友学園は役人と学園の癒着の可能性はあるものの、政治家が関わったかどうかは不明であります。R4と山尾は政治家本人の問題ですので、真相をはっきりさせておかないといけない問題ではないかと思います。というか、これ、自民党だったら自殺まで追い込まれていてもおかしくない案件ですね。


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内容(集英社HPより)
アイドルが一日署長を務める当日、賀江出署は不測の事態に直面する。謎また謎、次々と連鎖する事件。捜査に奔走する副署長の脇坂が、最後に辿り着く真相とは? 予測不能! 分刻みの傑作ミステリー!


曹源寺評価★★★★
真保裕一センセーが警察小説なんて書いたことありましたっけ?と思って探したのですが、やはり見当たりませんでした。あったのは食品衛生監視員と公取委と気象庁地震研究所と、、、あぁ、これは小役人シリーズやん。あとは外交官くらいか。ということで、ついに真保センセーも警察小説に殴りこみです。
本書はタイトルの通り、副署長の脇坂を主人公とした警察小説です。文字通り、長い一日という分刻みの動きで事件と謎に迫っていきます。
この日の夜明け前から事件は始まり、息子の突然の失踪、地域課警察官の事故と失踪、アイドルタレントの一日署長就任、と朝方までに3つの大きな事案を抱え、ドタバタの一日となることが確定的となります。
これらの事件を調べるうちに、謎が謎を呼びもつれにもつれ、ついには、、、
ばらばらに動いていたものが最後、ひとつに収斂していき、張ってあった伏線もすべて回収するというお話は、以前もどこかで読んだような気がしますが、本書のレベルはかなり高次元です。それを、副署長という立場の人物を中心に据えて書き上げるというのもまた、高度な技だと思うのです。所轄の副署長というのは上に署長を置き、時には神輿として担ぎ上げなければならないという立場である一方、下にはたたき上げの課長や現場一筋の部下がわんさかいる職場で責任だけが重くのしかかる職位です。そこに県警内の派閥争いも加わってくるわけで、文字通りの「長い一日」がノンストップでやってきます。

まるで「24」のような慌しさです。

県警の管理官まで歴任しながら、不祥事の責任を取って所轄の副署長にスライドさせられた脇坂ですが、現場感覚を失わずに推理を働かせ、みずから行動して事件に迫っていくというちょっとかっこいい主人公であります。せっかく警察小説書き上げたのですから、シリーズ化してもらっても全然ウェルカムですね。





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2017年01月24日

書評776 柴田哲孝「クラッシュマン」

こんにちは、曹源寺です。

そういえば、文部科学省から早稲田大学の教授職に天下りした元高等教育局長の吉田大輔という人物がいましたが、先日来大きく報道されたのが影響し、辞職ということになりました。
個人的には霞ヶ関の官僚がその高い能力を生かして天下りすること自体には反対したくないのですが、そこに癒着の構造が見て取れる天下りは許したくないですね。
すでに天下り規制に関しては「官民人材交流センター」なる組織がこれをコントロールしているかたちになっているわけですが、この文部科学省の天下り問題の追及になぜかものすごい熱心な毎日変態新聞さんがいろいろと追っかけ記事を出しています。

<文科省>再就職紹介、利用ゼロ…独自ルートで天下り(1/22毎日新聞)
国家公務員の再就職を支援する政府の「官民人材交流センター」を利用した文部科学省の職員が、2008年のセンター発足以降、一人もいないことが関係者への取材で分かった。
文科省の天下りには人事課中心の「現職ルート」と人事課OBによる「OBルート」の2系統があったことが政府の再就職等監視委員会の調査で判明しており、センターを使わず省内で再就職をあっせんしていたとみられる。
(以下、省略)

文科省は天下り規制も顧みず自分たちで天下り先を作ってはそこにもぐりこんでいたわけです。とんでもない話です。では彼らはどこに行っていたのか。
もしかしたらですが、彼らは今回の早稲田大学のように全国の私立大学の教授や准教授、あるいは事務方のトップランク(つまり企業なら経営陣クラス)に天下っていたのではないかという疑惑になるわけです。

大学全入時代などとあおって、90年代からFラン大学が雨後の筍のように乱立してきました。地元の人しか知らないような大学って結構あるんですよね。そんな大学に入って君は一体何を学ぶつもりかね?という大学。アルファベットから英語を学ぶ大学。アジア各国からの留学生が8割を占める大学。少子化の時代になぜかこういった大学は減ってもいません。
医学部の設置には日本医師会という強力なロビー団体がありますから一定の歯止めがかかっていますが、それ以外の大学、特にFランが乱立してきた原因が天下りであったとなれば、文科省の罪はめちゃくちゃ大きいでしょう。
この問題はもっともっと多くの報道が望まれましょう。ただ、大学への天下りという点においてはマスゴミも同じムジナみたいなところがありますから、他紙がこの報道に乗っかってくることはあまりないのかもしれません。よくあるのは@大手新聞社の解説委員→A系列のテレビコメンテーター→Bいつの間にかFラン大学の特任教授みたいなパターンですね。これ一体何の癒着だろうと思うレベルです(AとBが逆の場合もありそうです)。

個人的には大学進学率はだいたい4割くらいにとどめておき、高等専門学校を充実させるかあるいはもう少し低いランクで職人(マイスター)を目指せるような専門教育の機関を設置して、就業に結びつけるべきではないかと思います。

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内容(双葉社HPより)
過剰防衛による殺人の裁判で「無罪」となり、警察庁警備局公安課特別捜査室サクラ≠ノ復帰した田臥を、新たな任務が待ち受けていた。東京駅発博多駅行きののぞみ167号≠フ車内ごみ箱でTNT爆弾が発見されたのだ。さらには、イスラム国の対日本専門のテロリストクラッシュマン≠ェ入国したという情報がICPOのリヨン事務総局からもたらされる。田臥は、部下の室井智、矢野アサルとともに深く静かに捜査を開始する。


曹源寺評価★★★★
2014年に刊行された「デッドエンド」の続編というわけではないですが、デッドエンドの登場人物が再びお出ましとなりました。
デッドエンドではIQ172の天才、笠原と警視庁公安部の田臥のチェイスに警察の暗部が入り乱れてノンストップなサスペンスを繰り広げていますが、本書でも田臥と笠原が邂逅します(笠原親子はチョイ役どまりなのがとても残念ですが)。
今回の主役は田臥で、相棒の室井と新たに加わったエジプシャンの矢野アサルがこれを補佐します。舞台は東京のみならず、2016年に外交首脳が訪れたサミットの舞台である伊勢志摩、それに米国大統領として初の公式訪問となった広島です。各国の首脳が実名で、しかもタイムリーなネタでありますので、あの国家的行事の裏でギリギリの緊張と血みどろの死闘が繰り広げられていたかと思うと(笑

臨場感のハンパなさは尋常ではありません

クラッシュマンと田臥の対決はラストのお楽しみですが、スナイパー同士の嗅覚とか引き寄せとかそういった野性のナントカをちょっとばかり期待していた部分はもうちょっと描写が欲しかったなあと思います。
本書では田臥の心情として対テロに関する日本の無防備さや、警護する側としての不条理さみたいなものがあちこちで吐露されています。彼のセリフからは警察手帳を碌に見もしない警備体制、ドローンへの対抗措置、空港警備の危うさ、国内に300人しかいないSAT、などテロ対策としてはまだまだ不十分な点が多いということがよく理解できます。一方で、公務に携わるものとしてはやや不謹慎な、パフォーマンスのためだけに国民の血税を使う政府への憤慨のほか、警察庁と外務省の連携不足に対する不満など、リアルに捉えればきりがないほどの現状への不安と嘆きが散りばめられています。まあ、対テロという面におきましては早いところ共謀罪改め「テロ等準備罪」の整備を進めて欲しいなあと思ってしまいます。
あと、本作ではかなりイカレたISの敵が登場しますのでかなりむかつく内容になっていますが、ISはイスラムのなかでも狂信者の集団であり、原理主義の究極のような行動様式ですから、普通のイスラムの方々とは切り離して対処すべきであることは論を待ちません。





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2016年12月30日

書評770 柴田哲孝「Mの暗号」

こんにちは、曹源寺です。

今年の更新はこれが最後です。
来年もよろしくお願いいたします。

今年一年を振り返れば、あっという間に過ぎてしまったのはいつものことですが、
       iイ彡 _=三三三f           ヽ
        !イ 彡彡´_ -_=={    二三三ニニニニヽ
       fイ 彡彡ィ 彡イ/    ィ_‐- 、   ̄ ̄ ヽ     し  ま
       f彡イ彡彡ィ/     f _ ̄ ヾユ  fヱ‐ォ     て  る
       f/ミヽ======<|-'いシ lr=〈fラ/ !フ    い  で
       イイレ、´彡f        ヽ 二 _rソ  弋_ { .リ    な  成
       fノ /) 彡!               ィ     ノ ̄l      .い   長
       トヾ__ら 'イf     u    /_ヽ,,テtt,仏  !     :
       |l|ヽ ー  '/          rfイf〃イ川トリ /      .:
       r!lト、{'ー‐    ヽ      ´    ヾミ、  /       :
      / \ゞ    ヽ   ヽ               ヽ /
      ./    \    \   ヽ          /
   /〈     \                 ノ
-‐ ´ ヽ ヽ       \\     \        人
成長しなかったなあ、という感想しかありません。

来年はもうちょっと進歩したいです。具体的なことはこれから考えるとして。

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内容(祥伝社HPより)
戦中戦後に消えた莫大な資産。
遺(のこ)された暗号。
闇に蠢(うごめ)くのは、GHQ、日銀、日本金銀運営会、亜細亜(アジア)産業、そしてフリーメイソン――
30兆円の金塊。
『下山事件 最後の証言』で読書界の度肝(どぎも)を抜いた著者が放つ興奮の痛快ミステリー!!
解読せよ。真実はそこにある――
東京大学で特任教授を務める歴史作家・浅野迦羅守(あさのがらむ)を訪ねてきた美女・小笠原伊万里(おがさわらいまり)。何者かに殺害された彼女の父が、祖父から預かっていた謎の地図と暗号文を解読してほしいと言う。彼女の祖父が戦後史の闇に君臨した亜細亜(アジア)産業とGHQ、そしてフリーメイソンに繋(つな)がる人物だったことが判明した時、戦時中“金属類回収令”によって集められ、消えた膨大な金塊の存在が浮上した! 迦羅守は数学の天才“ギャンブラー”と元CIAのエージェント南部正宗(なんぶまさむね)の協力を得て、その行方を追うが……。

曹源寺評価★★★★
柴田センセーのノンフィクションとフィクションの混じった小説としては、「GEQ」や「下山事件 暗殺者たちの夏」などがあります。いわゆる謀略もの系の作品がこれに当たります。何と言っても「下山事件 最後の証言」がノンフィクションとしては圧倒的なインパクトを持っていますので、これに倣った作品は読者からしてみれば

「あぁ、これはノンフィクションとして書くにはあまりにもヤバすぎるからこうやって小説仕立てにしたのだろう」

と推察してしまうレベルで認識されてしまっているわけです。
本書は戦後の詐欺事件の舞台としてあまりにも有名である「M資金」について、今もどこかで眠り続けている埋蔵金を探り当てていくというミステリであります。
主人公の浅野迦羅守が暗号を解読していくさまはなかなかにスリルある展開ですが、解読するとそこからは一直線ですので話の展開もまたストレートであります。ここに殺人事件と警察(武蔵野署の舟木警部)が加わり、事件を追う者、追われる者、捜査する者という構図ができあがっていきますので、単純なストーリーではないというのがGOODです。
さらに、下山事件とか亜細亜産業とかライカビルといったセンセーお得意のジャンルも散りばめられていますので、ファンにはたまらない作品でしょう。逆に言うと、亜細亜産業って何?というレベルの方にはお勧めできませんが(そういう方は「下山事件 最後の証言」を読んでいただくしかないでしょう)。
それにしても、こんだけ面白いのに最後の方はやや辻褄あわせのようになってしまったのは残念です。何かを置き去りにしているようにも思います(あぁ、小笠原伊万里とアレックス・マエダのつながりが言及されていないねえ!)。そして、それ以上に(ネタバレ)

敵がショボい

というのは果たしてどうなんでしょうか。あれだけ不気味な前フリをしておいて、ラストではどうにも自業自得な姿。。。まあ、敵との戦いが本筋ではないのでいいんですけどね。
そして最後の最後に続編があるように示唆しておく、、、これもまたありがちですが、このテーマでやりますか!?まあ、それぞれのキャラクターが際立っているので続編出たら絶対に読みますけどね。

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2016年12月13日

書評766 新野剛志「優しい街」

こんにちは、曹源寺です。

2016年の「今年の漢字」は「金」に決まりました。4年前も「金」でした。もしかしたら今後は4年ごとに金の字が選ばれるかもしれないですね笑
まあ、「今年の漢字」は個人による人気投票ですから、同じ年末恒例でも「流行語大賞」よりよほど公正です。流行語大賞は選考委員の俵万智氏が「日本死ね」についてツイッターで政治的思惑を明らかにしていました。つまり、流行した言葉ではなく、流行させたかった言葉として選んだと言っているわけです。
もうね、ネットの世界は10年前からいろいろな人の嘘を見破ってきました。現在はさらに加速度を増しています。世の中の欺瞞とか作為とか理不尽とかは誰かさんのちょっとした違和感から解明が進んで、あっという間に見破られる時代になっていると言って良いと思います。それが「炎上」までいくか、あるいはいかないか、その程度の差でしかないと思います。ほんのちょっとしたきっかけで炎上まで行き着くケースも増えてきましたので、今後は世界のあちこちでいろいろなことが暴かれていくのだろうと思います。


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内容(双葉社HPより)
探偵の私は、名古屋から上京していた実業家から、娘を捜してほしいとの依頼を受ける。娘、由はツイッターをやっていて、本来のアカウントとは別に、性的な表現が氾濫する裏のアカウント、「裏垢」もやっていた。私は協力者を得て、裏垢から由の足取りを追う。――現代に浮遊する少女や彼女らを取り巻く大人たちの姿を静かに激しく描いたミステリー。


曹源寺評価★★★★
新野センセーの久しぶりの探偵小説です。しかも本格的なハードボイルドに仕上がっています。なんだかこういう雰囲気の作品、久しぶりだなあ。単独で行動する探偵、舞台は渋谷、人が死ぬ、ヤクザもいて、主人公も大ピンチ。実にいいですね。表紙の装丁もいいですね。
主人公の市ノ瀬路美男−ロミオは、ホテルのコンシェルジュ経由で名古屋の政商、黒川から依頼を受ける。内容は家出娘を探し出し連れ戻すこと。ツイッターの裏アカウント――裏垢から追跡し、彼女を発見するが、親元に引き渡す直前に殺される。市ノ瀬は犯人を捜すが、、、
かっこいいのかどうかはよく分かりませんが、少なくともハードボイルド探偵にありがちなシニカルなセリフはばっちり決まっていますので、読んでいて楽しいですね。
本書はこうした古きよき探偵小説の体裁ではありますが、内容については最新のSNSを駆使した犯人捜しがストーリーの肝になっていますので、裏垢とかリプライとかアカウントとかツイッターやっていないと良く理解できない御仁には難解な小説になっています。
また、この裏垢がイコール別名というより別人格のような扱いにもなっていますので、○○という裏垢は実はAさんのもので、それをリプライしている△△という裏垢はBさんの裏垢、Bさんの本来のアカウントはXXだったとか、もう

誰が誰だかわからんわ

となってしまいそうでした。現実の人間像と裏垢のつぶやきが二重人格すぎて余計に分かりにくいです。ここらへんはしっかりと読みこなさないと絶対に混乱しますわ。
つまり、登場人物を抑えるだけではダメで、仮想空間のやりとりとリンクさせながら話を進めていかないと理解ができないようになっているわけです。
中高年はついていくのが大変ぜよ。





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2016年12月09日

書評765 下村敦史「失踪者」

こんにちは、曹源寺です。

先日はインターネットサービス大手のDeNAがキュレーションサイト「WELQ」において、剽窃や無断盗用のみならず、医療的観点から放置できないほど非科学的で無知でいい加減な捏造記事が垂れ流されていたとして、同サイトの閉鎖を決めました。
実際にはWELQだけでなく、iemoやFindTravelなど合わせて9サイトを閉鎖していますので、DeNAのキュレーションサイトがいかに杜撰で悪質であったのかがわかります。

ちょうどロイターが面白い記事を発信していました。
ローマ法王がメディアに強い警告、「偽りの情報拡散は罪」(2016/12/8ロイター)
[バチカン市 7日 ロイター] - ローマ法王フランシスコは、政治家の評判を落とすためにスキャンダルに焦点を合わせたり偽りの情報を発信することは「罪」だと述べ、メディアに対して強い警告を発した。
ベルギーのカトリック週刊紙テルティオとのインタビューに応じた。
法王は、誤った情報を拡散することは「メディアができうる最大の加害行為」であり、電波通信をそのような行為に利用することは罪といえると述べた。
法王は、「メディアは、明確、透明であるべきだ。たとえ真実であっても、常にスキャンダルなどを報じたがるといった、汚い物を病的に嗜好するような病に陥ってはならない」と語った。また、政敵を中傷する目的でメディアを利用することの危険に言及。「そのようなことをする権利は誰にもない。それは罪であり、傷つく行為だ」と述べた。
米国では、インターネット上の誤った情報によって、有権者がトランプ氏への投票になびいたのではないかとの議論が広がっている。


えー、なんだかトランプ次期大統領への批判記事になっていますが笑
ちょうど日本では上記の問題が起こっていただけに、タイムリーな記事と言えるでしょう。WELQ問題ではこの事業の仕掛け人とされる村田マリなる執行役員が記者会見に出てこなかったためにネット上で吊るし上げをくらっていますが、まあ自分で立ち上げて50億円でDeNAに売り飛ばして自分は碌に税金も払わずシンガポールに高飛びですから、そりゃ吊るされてもしょうがないですなぁ。

しかし、DeNAは会社として謝罪していますのでまだマシですわ。それにこのキュレーションサイトの事業はSEO対策などで支出が先行しているため大赤字のはずですから自業自得です。

ネットであろうと紙であろうと事実と異なる記事を大量に生産して、それを恥じない企業はほかにもたくさんありますから、ローマ法王に直接叱っていただきたいものです。
「偽りの情報拡散は罪」!ですよ。

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内容(講談社HPより)
ありえない、そんなはずはない。
10年前、あいつは死んだはずだった――
極寒の氷雪峰に置き去りにされ、“時”とともに氷漬けになったはずの友。
しかし、対面した遺体は明らかに歳をとっていた……
2016年、ペルーはブランカ山群。山岳カメラマンの真山道弘は単身シウラ・グランデ峰を登っていた。10年前、クレバスに置き去りにしてしまった親友・樋口友一を迎えにきたのだ。ずいぶん待たせて悪かったな――クレバスの底に降り立ち、樋口を見つけ出した真山だったが、遺体の顔を覆う氷雪を落として驚愕する。極寒のクレバスに閉じ込められた遺体は、歳を取ることなく凍りついてしまうはず。しかし、樋口の顔は明らかに10年前より老いていたのだ。なぜだ、ありえない。まさか、樋口はあの時生還していたのか?ならばなぜ連絡をよこさなかった?そしてなぜ同じ場所で命を落としている?樋口、お前は一体何をしていたんだ?
親友が過ごした、謎に包まれし“歳月”。
真相にたどり着いたとき、あなたはきっと胸を熱くする。
注目の乱歩賞作家が仕掛ける、哀しき罪と罰。
『生還者』につぐ感涙必至の山岳ミステリー!


曹源寺評価★★★★
下村センセーの山岳ミステリ「生還者」に次ぐ山岳モノ第2弾ということであります。生還者の次が失踪者ではなにやら続編のようなタイトル付けですが、二つの作品に関連性はありません。
主人公の真山道弘は南米のシウラ・グランデを攻略中に事故で親友の樋口友一を失った。10年後に迎えに行ったものの、そこにいたのは10年前より老いた友人の遺体だった。なぜ彼は死んだはずなのに年老いたのか?
冒頭から謎を突きつけるミステリですが、ストーリーのテンポが良くて山岳シロウトの自分でもぐいぐいと読み進められます。
謎が途中で明らかになっても、今度は別の謎が読者に突きつけられますので最後まで一気読みでした。このへんの作りこみが2014年の乱歩賞受賞者とは思えないレベルなんですよ。6作目とも思えません。
山岳ミステリといえば、古くは森村誠一、最近だと笹本稜平や樋口明雄、大倉崇裕の各センセーなどがこのジャンルに精力的に取り組んでおられます。しかし、自分はそれほど山岳モノが好きではありません。なぜだろうと自問自答していますが、あいにく答えが出ておりません。単なる食わず嫌いなのかもしれませんので、足を一歩踏み出してみようかとは思います。
でも、山岳小説を読みこなすためにはひとつ重要な要件がありました。それは、

専門用語をしっかりと理解しておく

ということです。アイスアックスとかアイススクリューって何?というレベルではストーリーを理解するのに大変ですわ。山の名前も知らなさ過ぎな自分は、読みながら山の名前をGoogleさんに教えてもらっています。あぁ、シウラ・グランデってこういう山なのね〜(棒 とか。
まあ、書くほうにしてみれば山岳モノというのは閉ざされた空間であり、命の危険と隣り合わせであるというミステリの舞台としてはこれ以上ないほどの好立地でありますから、あとはちょっとした工夫でストーリーを仕立てられそうな気がします(もっとも自分には知識がなくて書けませんが)。
しかし下村センセーはそこに男同士のアツい友情や死と隣り合わせの8,000メートル級の山々といった、謎解きとは別次元の物語性にも深い描写がありますので、なんだかとても安定感のある作家センセーになったなぁという感想です。





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2016年11月22日

書評760 雫井脩介「望み」

こんにちは、曹源寺です。

本日は朝方に福島沖を震源とするM7.4の大きな地震がありました。自分はキッチンに立ってお弁当づくりしていましたが、地震を報せるチャラーンという音で一気に緊張しました。あの音は本当に精神を不安にさせますね。よくできていると思います。
東北に大きな被害がないことを祈ります。でもまだ明日、明後日あたりまでは注意が必要ですね。3.11のときは3月9日に震度5弱→11日に本震だったわけですから、今日の地震が前震でないとは言い切れません。警戒を怠らないようにしましょう。

ツイッターでは地震の直後に自民党と公明党がみなさんの安否を気遣うツイートを出しましたが、民進党と共産党は無関心だったと話題になりました。民進党は政権を奪取したかったらこういうところを改めないとダメなのに、本当に学習しませんね。
クラスで学級委員に推薦される人は、普段から「こいつなら学級委員を任せても大丈夫だろう」と思わせる行動と言動があるからみんなから推されるのです。同じことは一般社会でもあります。企業で次の社長とか役員とかを選ぼうかという段階にきたら、過去の実績だけではなく発言や振る舞い、部下からの信頼、将来のビジョン、などなど多角的に審査されるのが普通です。ですから、民進党なら政権を任せても大丈夫だろう、日本をうまく舵取りしてくれるだろうと国民に思ってもらいたいならば、こうした細かな振る舞いの積み重ねが絶対に必要だと思うのですが、なぜかしない。できないのか、それともわざとやらないのか。あるいはそういう思考自体がないのか。いずれにしても現状は「あの政権交代は間違いだった」という感想と「いまはとてもじゃないが任せられない」という感想のいずれかしかないのでは、と思います。

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内容(KADOKAWA HPより)
東京のベッドタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登(かずと)と校正者の妻・貴代美(きよみ)。2人は、高1の息子・規士(ただし)と中3の娘・雅(みやび)と共に、家族4人平和に暮らしていた。規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになったが、2人は特別な注意を払っていなかった。そんな夏休みが明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、連絡すら途絶えてしまった。心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、2人は胸騒ぎを覚える。行方不明は3人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は2人。息子は犯人なのか、それとも……。 息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。相反する父と母の望みが交錯する――。心に深く突き刺さる衝撃の心理サスペンス。


曹源寺評価★★★★★
雫井脩介センセーの作品は大別すると「ちょっと切なくてやるせないサスペンス」と「エンターテインメントに徹したミステリ」の2つになるのかなあと思います(かなり強引)。前者は「クローズド・ノート」「つばさものがたり」など(この2冊はどっちもぼろぼろ泣いた)、後者は「犯人に告ぐ」シリーズや「殺気!」などでしょうか。
本書はどちらかというとものすごく深くて暗いテーマが潜んでいますので前者といえるのですが、ものすごい勢いで読み終えてしまったものですから、エンタメ的でもあるのかなあと思います。
上記あらすじのとおり、息子の友人が殺害されるニュースが飛び込んでくるが自分の息子は帰ってこない。行方不明が3人、逃走中の少年が2人。果たして自分の息子は逃走中=犯人なのか、それとも残る行方不明の1人=死亡?なのか。息子が犯人であることを祈る母親と、被害者であってほしい父親。それぞれの葛藤と苦悩、願望と畏怖、理性と感情が入り乱れておよそ正常な心理を保てない両親の描写がストーリーの主軸となっています。
自分は♂なので父親の心境に近いものがありますが、母親の心理も理解できなくはないです。しかもこの父親と母親の心理が正反対であったにもかかわらず、ちょっとしたことでその距離が一気に近づき、また共有されたりもします。何という巧みな心理描写。
タイトルの「望み」の意味するところがものすごく深くて、誰しもがこの望みについて考えさせられること請け合いです。

そんな深くて暗いテーマにもかかわらず、一気読みだった

のは、センセーの文章力にほかならないのですが、読後感もまた深くてあれこれ考えさせられてしまい、なんともやるせない気持ちになりました。この究極の選択=生きていれば犯罪者、死んでいれば二度と会えない、どちらにしても後味悪い結末が待ち受けているという「望み」つまり

「望みなき望み」に対して、自分だったらどう立ち向かっていけば良いのか。

考えたくもないテーマをぶつけられて多いに悩むことができる作品、それでも(いや、だからこそ)自分は今年の最高作品のひとつに数えたいと思います。





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2016年10月25日

書評754 佐藤弘幸「税金亡命」

こんにちは、曹源寺です。

昨日は駅のホームドアの実証実験がニュースになりました。
「どこでもドア」登場 扉数異なる列車に対応する新型ホームドア、京急が試験導入(10/24 ITmediaニュース)
京浜急行電鉄は10月24日、扉の数や位置が異なる列車にも対応するホームドア「どこでもドア」の実証実験を三浦海岸駅(京急久里浜線)で始めた。実験期間は約1年間を予定している。
どこでもドアは、2、3、4扉車に対応するホームドアとして三菱重工交通機器エンジニアリングが開発した。車両改修の必要なく、地上設備のみでホームドア開閉の連携が可能な「地上完結型連携システム」を採用している。実証実験では、三浦海岸駅1番線の1車両分にどこでもドアを設置し、安全性・耐久性を検証する。
ホームドアの設置では、高い工事費や車両規格の違いなどが課題となる。JR東日本は開口部の広い新型ホームドアを開発するなど、鉄道各社が解決に向け知恵を絞っている。


国土交通省によると、駅のホームで何らかの人身事故が発生した件数は233件(2012年、一都三県のみ)ですから、自動車による交通事故の死亡者数(2015年、161人、東京都のみ)とほぼ同じレベルで発生していることになります。ホームが混雑しているとかなり恐怖に感じる今日この頃です。酔っ払っているとなおさらです。ホームドアはあったほうが良いに決まっています。
各社の設備投資余力にもかかってくる案件ではありますが、必要なら値上げしたって良いのではと思います。京王帝都電鉄は設備増強のため一度値上げしましたが、その後、元に戻したりしました。神対応ですね。これと同じように元に戻す前提でホームドア設備向けの費用負担を乗客に求めても、おそらくみんな納得するのではないかと思います。それにしても京王帝都電鉄、すげえなぁ。

一方、朝のラッシュが激しすぎる東急、小田急は周辺開発をしすぎた結果、輸送能力が追いつかなくなってしまったのではないかと思います。朝の田園都市線は混雑が原因でダイヤどおりに動かなくなっているのは周知のとおりです。それに比べて京王の無理しない経営が素晴らしいですね。まあ、京王は多摩センターや聖蹟桜ヶ丘周辺が過疎ってきているのではないかと思いますので逆に心配ですが。

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内容(ダイヤモンド社HPより)

国税か、富裕層か、はたまた国税OB税理士か? 最後に笑うのは誰だ? 「日本―香港」で起きた巨額の脱税事件。国税最強部隊出身の著者が圧倒的な臨場感で描く! 知られざるタックスヘイブンの真実


曹源寺評価★★★★
元東京国税局職員の佐藤センセーが書き上げたリアル小説です。
日本に帰化した木戸勲はビル売却で多額の利益を得るが、国税OBを抱える税理士法人と組んで「節税」を目的に策略を練る。東京国税局の高松はこれを察知した部下とともに真相の解明に乗り出すが、、、
税金逃れのプチセレブと国税局との攻防をリアルに描いており、中盤からの当事者同士のやり取りは現場を見てきた佐藤センセーにしか書けないであろう修羅場の臨場感がものすごいです。

ここだけでも読んだ甲斐があるってもんです。

また、税務調査によっては法的根拠が異なる場合があって、質問を拒否することも違法になるというマメ知識をはじめ、「B勘」とか「情報トージツ」とか「コメ」とか、耳慣れない業界用語がバンバン出てくるので非常に勉強になります。


ただ、(以下ネタバレ注意)
このバッドエンドはなんなんでしょうね。木戸はまんまと逃げ切りに成功しました(香港で逮捕されそうな流れのラストですが)。木戸の味方であるはずの国税OB吉田の忠告を無視して香港に逃げるのですが、吉田がなぜこんなに行くなと忠告を繰り返したのか、よく分かりません。
今回のように、多額の特別損失を架空に計上→利益を圧縮→キャッシュは海外経由で日本に持ち込み→会社は清算結了、なら後でばれても証拠不十分で追い詰められないということになるのでしょうか。それともマイナンバーの運用でこのスキームは不可能なのでしょうか。この辺がリアルに知りたくなりますね。

佐藤センセーは「国税局資料調査課」というノンフィクションを上梓されていますが、小説はこれが初みたいです。国税vs脱法者の丁々発止のやり取りはさすがに元国税の貫禄十分ですので、人物の書き分けやキャラクター造型、表現力やストーリーのまとめ方などに磨きがかかればこのジャンルでのスペシャリストになれるかもしれないですね。





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2016年09月20日

書評744 真保裕一「遊園地に行こう!」

こんにちは、曹源寺です。

昨日はテレビ朝日系「ミュージックステーション」が特別番組だったらしく、「30周年記念特別番組 MUSIC STATION ウルトラFES 2016」と題して10時間ぶっ続けで放送されたようですね。
で、こんな企画があったようです。

「日本に影響を与えた曲ベスト100」

うーん、老若男女にアンケートを取ればサンプル数の違いで大きく順位が変わりそうなランキングですな。
そもそも音楽は最も世代間の違いが明確になるようなジャンルだと思います。ですから、よりサンプリングを重要視しないといけないと思いますが、まあこんなのはどうせお祭りですから順位に意味はないと思わないといけませんね。
ちなみに、ベスト10はこんなラインナップ。
10位:「A・RA・SHI」(1999) 嵐
9位:「負けないで」(1993) ZARD
8位:「恋するフォーチュンクッキー」(2013) AKB48
7位:「Let It Be」(1970) ザ・ビートルズ
6位:「川の流れのように」(1989) 美空ひばり
5位:「Let It Go〜ありのままで〜」(2014) エルサ(松たか子)
4位:「勝手にシンドバッド」(1978)サザンオールスターズ
3位:「Automatic」(1998) 宇多田ヒカル
2位:「上を向いて歩こう」(1961) 坂本九
1位:「世界に一つだけの花」(2003) SMAP


ハイハイ、SMAP、SMAPと。

どうせやるなら「日本の音楽シーンを変えたアーティスト30」とかの方が良かったのではないかと思います。楽曲じゃなくてミュージシャンとしての影響力ね。
たとえば、70年代のフォークソングを牽引したのは間違いなく吉田拓郎や伊勢正三ですね。また、フォークソングの時代をニューミュージックに染め上げたのは松任谷由実やナイアガラ・トライアングル(大瀧詠一、佐野元春、杉真理)、オフコースなどでしょう。80年代のロックシーンを牽引したのはサザンや忌野清志郎やBOOWYだし、ソウルを持ってきたのは久保田利伸、テクノはY.M.Oでしょう。90年代は小室哲哉と織田哲郎の楽曲が溢れ出して大変なことになりました。
時代を切り開いたのはアーティストその人であり、1つの楽曲ではないと思います。ですから、秋元康もある意味「時代を切り開いている」と思います。切り開きすぎて崩壊させてしまったように見えますが。

卓球界では「福原前」と「福原後」というのがあるそうですね。福原愛選手が登場してからの日本卓球界は世界ががらりと変わったのです。一人の天才少女が日本の卓球界を変え、世界に通用するレベルに押し上げたのは間違いないと思います。おそらくテニス界も「錦織後」の世代がやってくる(もうやってきている)のではないかと思います。
こう考えると、日本の音楽業界も「○○前」と「○○後」で新しい価値観や新しい市場が生み出されたシーンがいくつかあるのではないかと思いますが、そうした偉大なる先人たちを差し置いてSMAPの「世界にひとつだけの花」が日本に影響を与えた云々というのは、誠におこがましいことではないかと思ったりもします。

まあ、繰り返しますが、これは「祭り」ですからランキングに意味を求めてもムダですね。うーん、割り切っていてもなんだか納得いかないなぁ。

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内容(講談社HPより)

明日も仕事に行くための、勇気と熱狂ここにあります! 
感動を巻き起こせ!
大ヒット『デパートへ行こう!』『ローカル線で行こう!』
累計25万部突破「行こう!」シリーズ、待望の第3弾
奇跡の復活をとげた遊園地ファンタシア・パーク
夢を抱けない僕たちの前に、魔女が現れた――
真保裕一・作家生活25周年記念作品
読めば元気が出てくる痛快お仕事ミステリー


曹源寺評価★★★★
いつの間にか「行こう」シリーズになっていたのでちょっと笑ってしまいました。
この「行こう」シリーズは真保センセーにしてはヒューマンドラマなミステリに仕上がっていて、近年のヒリヒリと胸を抉るような展開、あるいはドロドロとした人間関係から生まれる後味悪い路線(これもある意味ヒューマンではありますが)からはやや脱却しつつあるように思えます。
某電鉄会社が遊園地を生まれ変わらせて成功した「ファンタシア・パーク」におけるさまざまな人間模様から生まれるドラマとミステリを、連作短編のようなかたちでまとめたのが本書です。顔に大きな傷を負ったがゆえに就職活動に失敗し、ファンタシアに着ぐるみの応募で入社したらなぜかフロントにまわされてとまどう北浦諒輔、着ぐるみダンサーとして着実にステップアップしながらも着ぐるみが故に自己のアイデンティティーを見失いそうになる新田遥奈、大手工作機械メーカーからテーマパークの設備メンテナンス子会社に転職してきたところに、なぜか配電盤が小火騒ぎを起こすことになり原因を追究する前沢篤史、それらを陰で支えるファンタシアの「魔女」と呼ばれる及川真千子と、彼女をインタビューさせよと執拗に絡んでくる雑誌ライター。ひとつひとつがドラマでありながら、一本の線で結びついて大きな事件がやってくる。
さらに、真保センセーならではの技巧あふれる最後の展開に、なんだかこみ上げるものを感じてしまいました。かつての名作「ホワイトアウト」を何となく髣髴とさせてくれたように思います。
なんだか、いいですね。

ヒューマンドラマとミステリの融合

のような展開。読後感もGOODです。





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2016年07月15日

書評728 下村敦史「難民調査官」

こんにちは、曹源寺です。

フランスではお祭りの見物客の列にトラックが突っ込むテロがありました。
トラック突入テロ、80人死亡=革命記念日、花火客に乱射も−仏ニース(7/15、時事通信)
【パリ時事】フランス南部のリゾート地・ニースで14日午後10時半(日本時間15日午前5時半)ごろ、フランス革命記念日を祝う花火を見物していた人の列にトラックが突っ込んだ。ほぼ同時にトラックを運転した容疑者は見物客に向かって銃を乱射した。カズヌーブ内相は15日、事件による死者が80人に上り、18人が重体だと述べた。負傷者も100人以上に達した。(以下、略)

ニースといえばフランス南部のリゾート地です。被害に遭われた方のご冥福をお祈り致します。

欧州は完全にテロリズムとの戦いが常態化しつつあります。テロというのは本当に卑劣なもので、一般人のなかに紛れ込んで無秩序を作り出そうというのですから、攻守にわたって一般人を巻き込んでいるといって間違いではないわけですよ。
例えて言うなら、日中戦争時の大陸における便衣兵のようなものです。便衣兵は軍服を着ないで戦争に参加していましたから、日本軍は油断した隙に殺されまくったわけです。
フランスが今回の事件で警備を強化するのは当たり前ですが、これをもってイスラム系移民などが住みづらい街になったとしても、それは移民社会のなかで自浄作用が働いていないならば致し方ないのではないかと思います。
つまり、移民社会のほうがテロリストと決別しなければいけないのです。

もし、ある国の日本人街に日本人テロリストが紛れ込んでその国の軍隊がやってきたら、日本人街の人たちはテロリストを炙り出して当局に突き出すでしょう。そうしないと日本人街が守れないとなれば、民族とか思想とか関係なしにそうするのではないかと勝手に思っています。

それができないイスラム系移民たちは、「内部でテロリストを飼っている」と指摘されても「いや、俺たちはテロリストとは一線を画している」と言い訳したところでその国の政府から守ってもらるわけはありません。誰が敵で誰が味方かわからない状況では、全員を一旦は敵とみなさなければこちらがやられてしまうからです。

日中戦争のことを引き合いに出しましたが、中国人は世界各国に「中華街」を形成しています。彼らは自分たちの秩序で自分たちのルールに従って行動していますが、一方でその国のルールとも折り合いをうまくつけています。だから残っているわけです。不可侵条約みたいなものですね。

移民に冷ややかな意見かもしれませんが、本日紹介する本もまた、移民、難民問題を考えるうえでよい勉強になる本だと思います。「日本も移民をもっと受け入れろ」的な意見を安易に受け入れて良いのかどうか、真剣に考えてみる良い機会になると思います。

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内容(光文社HPより)
29歳の如月玲奈は、東京入国管理局で働く “難民調査官”。補佐の高杉と共に、難民申請者が本当に母国で迫害される恐れがあるのか、調査するのが仕事だ。ある日、ムスタファというクルド人難民申請者が、合法的に来日しながらパスポートを処分し、なぜか密入国者を装っていたと発覚する。その頃、ネットカフェ難民の西嶋耕作は、自分の通報が原因で家族想いのムスタファとその妻子を引き裂いたことを悔いていた。善良そうに見える難民申請者は、一体何を隠しているのか? 現在最も注目される乱歩賞作家が難民問題に鋭く切り込んだ、怒涛のポリティカル・サスペンス小説。


曹源寺評価★★★★
いま最も新進気鋭のミステリ作家、というほどではありませんが、最近の乱歩賞出身作家のなかでは意気盛んなセンセーの一人でいらっしゃいます下村センセーの最新作です。
なかなかにタイムリーなネタですね。タイトルの通り、入国管理局(入管)に勤務する主人公が事件(というほどのものでもないですが)の謎に迫るミステリであります。
大柄で女っ気のしない主人公、如月玲奈と難民調査官補の高杉純は難民申請者を「インタビュー」して本物の「難民」か「偽装難民」かを見極める仕事をしている。ある日、クルド人の申請者にインタビューしたが、彼はいくつかの嘘をついていた。なぜ彼はばれたら一発アウトの段階で嘘をつくのか。一方、妻と息子と別れ半ばホームレスとなっている西嶋耕作は賃金の安い外国人労働者に取って代わられていた過去から、不法入国者、違法滞在者を通報することで溜飲を下げている日々であった。ある日、クルド人の親子をふとした意識の変化から庇うことになり、、、
とまあ、終始、難民問題に関連したテーマで一貫されています。血生臭いシーンも展開もありませんが、常になぜ?がつきまとう立派なミステリに仕上がっています。

難民調査官という仕事はあまり知られていませんね。入国管理局は法務省所管の出先機関であり、ホームページにはこんな風に書かれています。
『出入国管理行政を行うための機構として,法務省に入国管理局が設けられているほか,地方入国管理局(8局),同支局(7局),出張所(61か所)及び入国管理センター(2か所)が設けられています』
すげえ、こんなにあるんですね。

本書のストーリー自体は大したことありませんが、読みどころはいっぱいあります。日本における難民認定の壁といった問題をはじめ、外国人労働力の受け入れやいわゆる「多文化共生」の問題、課題を抱えている現状について、かなりリアリティを持った議論が主人公を通してなされています。ココがキモですね。
たとえば、「ドイツは難民認定者数が4万人もいるのに日本は121人。正式な難民認定者は立った6人。オカシイ、厳しすぎる」という議題があります。これに反論するには普通「いや、ドイツは欧州で地続きなわけだから島国の日本と比較するのは違うでしょ」というのが一般的です。しかし本書ではさらに「いや、難民認定者数だけならその通りだが、不認定者数を見なはれ。ドイツにおける不認定者数は16万人、日本は3,000人だからね」と冷静に分析しています。つまり、分母が違うので比較するのがおかしいという主張です。おまけに、ドイツは難民を受け入れすぎて1兆円以上の負担がのしかかっているのが現状です。
ほかにも、難民と民族差別、マイノリティと地域社会、難民とテロリストの境目、などなど、議論のネタは尽きません。なかなかに示唆に富んだ主人公の発言(=作者の論理、主張)があちこちに散りばめられていて、もしかしたら

下村センセーはネトウヨではないか

と思わせるようなくだりもあって小説でここまで保守思想を展開されるとは思いもしませんでした。
特に171ページから174ページあたり(某団体をパクッていますが)は秀逸です。
ところで、入管職員は国家公務員でありまして、公務員を主人公にした作品といえば真保裕一センセーの小役人シリーズ3部作(「連鎖」「取引」「震源」)が有名ですね。真保センセーも当時は大して売れなくて、その後の「ホワイトアウト」でブレイクされましたので、下村センセーも本書を足がかりにして次作で大ヒットでも飛ばしてくださいまし。いや、本作でもいいんですけどね。





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posted by 曹源寺 at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月08日

書評726 島田ゆか、八木佳奈「バムとケロのおいしい絵本」

こんにちは、曹源寺です。

英国のEU離脱問題の根本にあるものは移民問題である、との主張はマスゴミが書きたくても書けないタブーのような状態になっておりますが、今度は米国で警察官による黒人射殺問題がクローズアップされてきました。黒人サイドによる報復が始まっています。
人種差別問題だけでなく、そもそも移民国家な米国ではマイノリティとマジョリティの格差などが根底にあるわけで、こればかりは一朝一夕で解決できる話ではありません。勝手に作り上げたタブーも社会情勢の急激な変化には耐えられそうにありませんね。

先日は国連が「日本には1,700万人の移民受け入れが緊要」とか言い出したらしいですが、1,700万人てあーた、全人口の10%以上じゃないですか!移民が1割いたらもうその時点でマイノリティではないですね。完全に移民国家になっています、はい。

橋下徹前大阪市長がツイッターでつぶやいたのが「パスポート審査なしで中国人、韓国人、さらには東南アジアの人々が大量に日本にやってきて自分たちの生活習慣で生活をし、低賃金で仕事をする日本社会に耐えられるか」と、移民が大量にやってきた時の日本人の想像力のなさを疑問視しました。
まあ、もっとも橋下氏は府知事時代に「移民はどんどん受け入れよ」的な発言もしていましたので、どっちが本音か良くわかりませんが。。。

ただ、ひとつ言えることは、

「グローバル化こそが人類の進歩であり、日本も率先してグローバル化するべき」

とか

「国際社会の一員として移民を受け入れることこそが大事である」

といった論調が「正義ヅラ」しているのではないかと。
パスポートなしで国境を越えることができることが絶対的に正しいなんて、お花畑もいいところではないかと思うのですが。
こうした論調を崇め奉っている自称進歩人たち、特に還暦過ぎた辺りの人たちに多いのですが、まったくもって勘弁してください。

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内容(絵本ナビHPより)
(出版社より)
バムとケロは、食べるのも料理するのも大好き! だから、絵本にはたくさん料理シーンが登場します。作者の島田ゆかさん監修のもと、忠実に絵本のおやつや料理を再現したレシピは、本著のみ! レシピの他に、料理シーンにまつわる楽しいエピソードも満載! 付録として、バム、ケロ、おじぎちゃんの3種類のステンシルプレートや、クッキーやドーナツの実物大型紙付き。手軽に作れる料理も載っているから、ぜひ親子で料理にチャレンジしてみてください!


曹源寺評価★★★★★
絵本界のロングセラーは数あれど、大人たちのハートもグッと掴んだ本は少ないですね。本書はあの不朽の名作「バムとケロ」シリーズのなかで紹介されたおやつなどのレシピを紹介した本でありまして、2015年に刊行しています。
え、バムとケロを知らないって?それはいけません。
何度読んでも面白い絵本なんてそうそうあるものではありません。主人公のふたりが巻き起こす騒動が楽しいですが、本書の魅力はそれだけでなく、サイドストーリーが充実しすぎているという点にもあります。シリーズ5作品、すべてがつながっています。それだけでなく、「かばん売りのガラゴ」という作品シリーズもありまして、そちらにもバムとケロのおともだちが登場しますので必読です。
最初に発行された「バムとケロのにちようび」からもう20年以上が経つのですね。。。早いなあ。







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posted by 曹源寺 at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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