ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:た行の作家

2018年03月13日

書評880 月村了衛「コルトM1847羽衣」

こんにちは、曹源寺です。

朝日新聞のスクープによって森友学園のやつが一気にヒートアップしてきましたね。さんざん捏造新聞と馬鹿にされ、麻生財務相からもお小言を頂戴していた朝日新聞がついに反撃に出たわけですが、朝日に情報を漏らしたのは大阪地検か近畿財務局か。いずれにしろ背任行為で犯罪ですね。
まあ、スクープと騒いでいる割には、その内容に進展がないというのも面白いですね。
結局のところ、やらかしたのは近畿財務局であり、認可した大阪府であるわけで、政府とか自民党とかが何らかの関与をしたエビデンスはみつかっていないのでありました。この辺の次の矢が飛び出してくるのかどうかが今後の焦点になるかもしれませんが、現在の見通しではなさそうですね。あるなら1年以上前に出ているはずですからね。
籠池という詐欺師が安倍昭恵夫人とか天皇陛下とかいろいろな人間を使って近畿財務局を騙しにかかったけど、近畿財務局は騙されたとか利用されたとかそういう記録が残るのを嫌がったから書き換えた、というのが専らの(判明している限りの)経緯でありましょう。
ですから、近畿財務局はやっちゃいけないことをやっちゃったのは事実ですから、いっそのことここで財務省を徹底的に叩きに行くのはありかと思います。ネットでは「財務省解体!」なんて熟語も出ているくらいですから、与野党がタッグを組んで財務省を叩くwww
面白そうですがたぶん野党は政局にしたいんだろうなぁ。
マスゴミも政局の方を選ぶんだろうなぁ。
歳入庁とか作って財務省から切り離したら面白いんだろうけどなぁ。

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内容(文藝春秋HPより)
女渡世・お炎、六連発銃を片手に佐渡金山に殴り込む!
羽衣の異名を持つ女渡世・お炎は、最新式六連発銃・コルトM1847片手に佐渡へと渡る。江戸の暗黒街を描く人気時代小説第二弾!


曹源寺評価★★★★
大藪春彦賞を受賞した「コルトM1851残月」に続く月村センセーの時代小説第2弾であります。「残月」はアウトローなクライム小説という内容でしたが、本作は女渡世人がコルトをぶっ放すアクション小説といった感じの仕上がりです。
主人公のお炎が単身乗り込んだのは佐渡島。江戸時代の佐渡といえば金山がありました。金山には江戸やその他の地方から無宿人と呼ばれる、今でいうところのホームレスが次々と送られ鉱山のなかで作業させられていた。お炎がやってきたのは元恋人の信三郎がそこにいるという情報が入ったからであった。しかし、その信三郎は金山のなかで変わり果てた姿になっていた。お炎は金山を舞台に大きな陰謀があることを見抜き、御用商人・四海屋の玄人衆とともに戦うことを決意した。
江戸時代に最新式のコルト、しかも44口径を操る女渡世人という設定はなんだか最高に胸躍るんですが、それも脇役に軽業師のおみんとか、四海屋の怪力男である与四松とか、時代劇には欠かせないプロットが揃っていて、そのうえに派手なアクションが満載という月村センセーならではの描きっぷりがたまりません。
しかし、前作が持つアウトローなイメージとはだいぶ違いまして、あちらのほうがどす黒い、テレビの時代劇でもお目にかかれないほどの真っ黒な作品だっただけに、ちょっと

本作はまっとう過ぎる感じがしなくはないです。

自分としては前作の持つ暗黒な感じが衝撃的だった印象が強すぎて、本書にもちょっと期待しすぎだったのかもしれません。
それでも、月村センセーならではの魅力がいっぱい詰まっているのは間違いないわけで、「土獏の花」でなんとなく「七人の侍」的なキャラクター設定が味付けとして成功していたように、本書もまた、玄人衆の活躍が花を添えています。ただ、その造型はもっと深くても良かったのかもしれませんが。それに、佐渡金山が幕府の富の源泉であったということが良く分かるエピソードが入っていたり、その金山での労働が極めて過酷であったということがリアルな描写で読者の心にグッと押し込んでくるところなどは、臨場感が半端じゃありません。
結局は主人公のお炎がカッコ良すぎて、ラストシーンなんかは泣けてくる始末です。エンタメとしては完成していますね。





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2018年02月02日

書評869 大門剛明「反撃のスイッチ」

こんにちは、曹源寺です。

2月1日になるとプロ野球チームがそろってキャンプインします。球春の到来です。プロ野球という「コンテンツ」はテレビから遠ざかって久しいですが、サッカーJリーグにならって地域密着の姿勢を強化したことで球場への集客力はかえって向上していて、2017年は入場者数が過去最高を更新したというのが現状です。
一時期、集客力が上がらず近鉄が球団売却に動いた時などは「1リーグ10球団構想」なんて話も持ち上がっていましたから、今思えばあれはいったい何だったのかという感じですよね。
今は逆に、元ジャイアンツの村田選手が行き場を失っているくらい、優秀な選手が余っている状況であるとも言えそうです。
だったら、今こそ球団を増やしてJリーグのように昇降格システムを導入してはどうだろうかと思うのですが、いかがでしょう。
メジャーを10球団にして、その下にマイナーをやはり10球団くらい置く。マイナーの上位2チームは自動昇格して、その代わりメジャーの下位2チームは自動降格する。
あるいは、12球団はそのままで、日本シリーズもやる。下位リーグにはいっそのこと24球団くらい作って、上位2チームは自動昇格だけど下位リーグ3位と4位は上位リーグ11位、12位と入れ替え戦を実施して勝った方が昇格または残留するという仕組み、とか。

独立リーグもだいぶ定着したことだし、選手も上位リーグの2軍でくすぶっているくらいなら下位リーグにいってレギュラー獲ろうとか、それこそ昔の大スターが下位リーグのどこそこで活躍!みたいになれば大いに盛り上がるんじゃないでしょうかね。
広島カープなんて4番打者の候補だけで鈴木、新井、松山、(期間限定ですが)エルドレッドと4人もいますし、捕手だって石原、會澤、船越、坂倉といて、さらに新人の中村までいます。まあ次世代育成というのがあるんでしょうが、ちょっとでも実績を残せなければ飼い殺しでしょう。厳しい競争を勝ち抜くからこそレベルの高い野球を観ることができるというのがNPBの言い訳でしょうが、選手にしてみれば活躍の場が増えるほうがありがたいに決まっています。
いっそのこと、政令指定都市には1球団置くべしとか規約を作って地域で育てるくらいのことをしても良いのではないかと思います。

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内容(講談社HPより)
大手人材派遣会社社長の娘を誘拐せよ。
〔派遣時給400円〕負け犬たち、崖っぷちの逆襲!
大手人材派遣会社社長・原沢は、弱者を社会のゴミ呼ばわりする発言が反感を買っていた。生活困窮者自立を支援するジョブトレーナーの沖田は就労生たちを金で誘い原沢の娘を誘拐するが、釈放の条件はむしろ原沢を困惑させる。社会の底辺からのリベンジは果たして成功するか? 書下ろしノンストップ・ミステリ。


曹源寺評価★★★★
リーガルサスペンスに強い大門剛明センセーですが、一時期は得意でもないジャンルに手を出して(失礼!)さっぱり売れなかった(重ねて失礼!)ようにお見受けします。そんなわけで最近読んでいなかったのですが、文庫書き下ろしの本書を見つけましたのでちょっと読んでみたわけです。
あらま、面白いじゃありませんか。
ジョブトレーナーと非正規雇用者3人が人材派遣会社社長の娘を誘拐するというストーリーですが、話は全然単純なものではなくて、なかなか先の読みづらい展開になっています。

このストレンジな展開こそが本書のキモ

であろうかと思いますので詳細は書きませんが、中盤からラストにかけては一気読みでありました。最初のほうがやや退屈なのは致し方ない――とは思いませんが、ちょっと切ない(というかちょっと焦点がぼやけているので感想に困るのですが)ラストまで気が抜けないのはさすがであります。
最初のほうが退屈なのは、キャラクターづくりがちょっと雑であったり、人間関係も希薄なのにチームを組んだりしてしまっているところだったり、あるいは誘拐された娘のリアクションが薄すぎて誘拐現場としての迫力に欠けてしまっているという点などがちょっと残念というのが理由です。このへんがもうちょっと肉厚だったらなあと思います。
誘拐というのはもう国内で成功させることが不可能な事件だと言われています。これだけ監視カメラが普及し、スマホをみんなが持つようになり、GPSで追跡ができる時代になったわけですから、小説でも警察力が介入してしまうとこうした先端科学を書き込まないといけないことになっています。
この難しい時代にあえて誘拐事件を書くというのは作家センセーにとって非常に厳しい題材であろうかと思いますが、あえてこの事件を書き上げた大門センセーには拍手をお送りしたいと思います。





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posted by 曹源寺 at 17:44| Comment(0) | た行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月23日

書評866 月村了衛「機龍警察 狼眼殺手」

こんにちは、曹源寺です。

昨日(1/22)に関東地方を襲った大雪ですが、相変わらず雪に対する都会の脆弱さを見せつけられた思いがしました。
今回の大きなトピックとしては、以下の4点を挙げることができると思います。
1.交通機関は短時間の集中に弱すぎる
2.どのくらいの雪で交通機関が止まるのか分からない
3.ノーマルタイヤを履いて雪道を走るクルマ多すぎ
4.高速道路も規制がザル

1.交通機関は短時間の集中に弱すぎる
「早めに帰宅しましょう」と呼びかけた気象庁でしたが、そのおかげで16時30分くらいには東急東横線渋谷駅はもう入場規制がかかっていました。ほかにも京王井の頭線渋谷駅やJR品川駅などが入場規制かかっていましたね。普段ならば3時間くらいかけて分散して帰宅している人たちが一斉に帰ろうとしたらこうなるのだということが良く分かりました。今後は無理してあせって帰るのはやめましょう。

2.どのくらいの雪で交通機関が止まるのか分からない
上の1.に関してはこの2.の問題が解決されないとみな不安を抱えたままになるので、結局はみんな早く帰ろうとして大混雑になってしまうのだろうと推測できます。
したがって、今後は実証実験するのか、あるいは過去の経験則から「降雪○○センチ、気温マイナス△△度になったら止まる可能性が◇%あるから22時までに電車に乗りましょう!」とかある程度の予測でも出していただくのが良いかと思います。

3.ノーマルタイヤを履いて雪道を走るクルマ多すぎ
大雪だとあれほどアナウンスしていてもノーマルタイヤを履いて走る馬鹿がいるわけで、こいつらのせいであちこち大渋滞したわけですから、きっちりと道路交通法違反で処罰していただきたいですね。

4.高速道路も規制がザル
首都高速中央環状線山手トンネルでは出口付近の坂を登れなかったクルマのせいで大渋滞が発生しました。また、レインボーブリッジでも複数のクルマが坂道で立ち往生しました。なぜノーマルで登れると思ったのか。都民は雪を舐めすぎです。道路管理側も、東京には馬鹿が多いという前提で規制をしなければいけないということが分かるエピソードです。

都内を走るだけならスタッドレスタイヤを持っている必要がないですから、おそらくスタッドレスタイヤの普及率は相当に低いのでしょう。マイカーより商用車ならなおのことです。せめてチェーンくらいはもっておいてほしいものです。

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内容(早川書房HPより)
2010年代もっとも優れたミステリシリーズの最新作にして最高傑作
高級料理店で会食中の男たちが何者かに射殺された。被害者の一人が特捜部の追う馮グループの要人で、疑獄事件の疑いもあることから、捜一、捜二、特捜部の合同捜査となる。内部に複雑な軋轢を抱えながらも捜査に当たる警視庁。だが事件は全く別の様相を見せ始める……


曹源寺評価★★★★★
機龍警察シリーズも第6作目(長編としては第5作目)となりました。このシリーズはホンマ大好きです。本書は2018年「このミス」の第3位にランクインされました。タイトルのつけ方といい、人気の上昇っぷりといい、なんだかかつての「新宿鮫」を彷彿とさせますね。大沢在昌センセーの「新宿鮫」シリーズは「無間人形」とか「風化水脈」とか独特のネーミングがグッときたのを覚えています。また、「無間人形」では直木賞も受賞されていますね。本書シリーズも「自爆条項」「暗黒市場」「未亡旅団」と、なかなか負けていません。
さて、本書は国家的な次世代通信情報システムである「クイアコン」をめぐり、関係者が相次いで殺害されるという事件が発生。汚職の疑惑も持ち上がっていることから捜査一課、捜査二課、それに特捜部が合同で捜査に当たることになります。
この特捜部こそが本書シリーズの主人公であります。沖津旬一郎部長率いる精鋭たちですが、「竜機兵(ドラグーン)」を操る3人(元傭兵、元警察官、元殺し屋)を契約社員のように警察官に任用して運用していることから警察内の鬼っ子になっているという設定です。
さて、殺された関係者にはカトリックの護符が郵送されているという共通点があった。次の標的は誰なのか。なぜ護符が送られるのか。そして暗殺者は誰なのか。警察は後手後手に回らざるを得ない状況のなかで、次の殺人が行われる。そして警察は、狼眼殺手なる殺し屋の存在に行きつく。
クイアコンをめぐり様々な方面で繰り広げられている汚職、チャイナマネーに群がる政治家、その中国を排除したい別の勢力、そして警察内に潜む「敵」。さまざまな思惑が重なり合い、そして衝突していきます。その衝突は時に殺人事件となり、時に疑獄事件となり、そして警察内部の軋轢となります。このあたりの複雑な構図は読み進めるうちに明らかになっていきますが、それまでは地道に読んでいくしかないところが辛抱のしどころです。しかしそれは全く苦になりません。むしろ楽しい作業でもあります。
さらに、クイアコンをめぐる謎も読者をときめかせてくれます。単に利権に群がる闇の勢力という構図だけではなく、特捜部が抱える秘密にもつながっているという事実に読者は愕然とさせられます。なぜなら、前作においてすでにその伏線が張られていたのですから。特捜部が他部署から忌み嫌われながらも、かたくなにそのベールを覆い隠そうとしているのはなぜなのか。本書でようやくその一端が理解できるのですが、これぞまさに近未来というか、読者の想像の遥か上を行く怖ろしい未来を垣間見た時、

我々は戦慄を覚えること間違いなしです。

なお、本書では残念ながら竜機兵の活躍がまったくありませんが、それでも本書を機龍警察シリーズの最高峰に位置すると称賛せざるを得ないのは、圧倒的なスケールの上に描かれた迫力と、そこにまぶしてあるリアリティが見事に融合しているからであり、さらに、ただの警察小説としての出来栄えもこれ以上にないレベルであるということ、そしてこのシリーズの行きつく先がほんの少しだけ見えてきたように思えるからではないでしょうか。
正直、これほどまでに没頭される小説も久しぶりでした。





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posted by 曹源寺 at 16:34| Comment(0) | た行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月05日

書評856 竹内明「スリーパー 浸透工作員 警視庁公安部外事二課 ソトニ」

こんにちは、曹源寺です。

先週、流行語大賞2017が発表されました。2017年は「忖度」と「インスタ映え」だそうです。昨年の「日本死ね」あたりからネット民の反発がすごくて、「ユーキャン○ね」まで発展してきましたが、今年もまた「忖度」で政治ネタを持ってきましたね。
さらに、トップ10には「フェイクニュース」がランキングされてより一層の物議をかもしています。
デイリー新潮の記事がありました。

流行語大賞「フェイクニュース」の説明もまたフェイクだった(2017/12/5)
毎年大きな話題となる「ユーキャン 新語・流行語大賞」。2017年の大賞は「忖度」「インスタ映え」で、それに続くトップテンの中には「フェイクニュース」が選ばれた。
この言葉が選ばれること自体には異論を挟む人は少ないだろう。なにせ大統領が頻繁に使っていたくらいである。
が、問題はその説明。同賞のホームページでは、「フェイクニュース」について、以下のような説明が掲載されている。
「ネット上でいかにもニュース然として流布される嘘やでっち上げ。2016年のアメリカ大統領選挙では『ローマ法王がトランプ候補の支持を表明』『クリントン候補がテロ組織に資金を渡した』など、いかにも報道サイトっぽい雰囲気のウェブサイトに掲載され、それがあたかも事実のように拡散した」

この説明を読んで、違和感を持つ人も多いのではないか。フェイクニュースは、ネット上で流布するもの限定の概念だったっけ? と。たしかトランプ大統領は、CNNなど既存メディアに対して「フェイクニュースだ!」と言っていたはず……。

その名も『フェイクニュースの見分け方』(烏賀陽弘道・著)には、「言葉の定義を明確にすることは、論点を明確にすることでもある」とある。つまり、何かを調べる際に、まず言葉の定義をきちんとしておくことが大切だというのだ。また、同書では「公開情報にあたることが大切だ」ともアドバイスしている。

そこで誰でもすぐにアクセスできる英語版のウィキペディアで「fake news」を見てみよう。
すると、最初に次のように書いてある。
「フェイクニュースとは、従来型の印刷物や放送、またはネットを介して伝えられる、意図的な誤情報、悪質な情報で、イエロージャーナリズムやプロパガンダの一種である」
少なくとも、「本家」アメリカでは「ネット上」の情報に限定していないことは明らかだろう。ところが、「流行語大賞」に限らず、日本では「フェイクニュース」というと「ネット」と結びつける論調が見られるのも確かだ。
もちろん、ネット上には怪情報が溢れていることは事実であるが、一方で新聞など大手メディアの誤報をいち早くネットユーザーが指摘することも珍しくない。『フェイクニュースの見分け方』の中で、著者は次のように述べている。
「よく『どの新聞なら信用できますか』という質問を受ける。あるいは『どのテレビ局なら』『どの雑誌なら』『どの番組なら』と聞かれる。そういう時、私はこう答えることにしている。『情報は料理です。媒体は料理を運ぶ器です。みなさんが食べるのは料理であって器ではありません』
ある料理を『美味しい』と気に入ったとき、覚えておくべきは料理を作った板前・シェフであって、皿を焼いた陶工ではない。
信用できる発信者を見つけたなら、その人がどんな媒体に移ろうと、発信する情報を追いかければ良い。
発信する情報が事実である精度が高ければ、別に報道記者でなくてもいい。研究者や弁護士など『高リテラシー職業』の人でなくてもいい。普通の市井の人でいい。肩書や職業はあまり関係がない。インターネット時代は、そういう人も事実を公に発信できる」
多くの場合、「フェイクニュース」と「ネット」を結び付けたがるのは、新聞などオールドメディア出身者である。してみると、「新語・流行語大賞」の説明で「フェイクニュース」=ネット上の情報、となっていたのは、そういう人たちへの「忖度」ゆえなのだろうか。


ユーキャンの説明に違和感を覚えた方は多かったと思いますが、怖いのは違和感を覚えずに「フェイクニュースとはネットに流布されているウソの情報である」という定義づけがいつの間にかなされていて、それを鵜呑みにしてしまっている人がそれなりにいるのではないかという点にあります。

違うんですね。
フェイクニュースを垂れ流しているのはマスゴミのほうであるということをしっかりと広めていく必要があるなあと痛感します。本当にひどいわ。


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内容(講談社HPより)
母上様、あなたはどうして日本を捨て、北にやってきたのですか――。
報道記者としても活躍する著者が放つ、リアル諜報ミステリ。
東京で、就活中の大学院生として、ごく普通の生活を送る青年・倉本龍哉。だが、彼の名前や戸籍、経歴は、すべてある国家によって用意され、与えられたものだった。
豊かで平穏な日本での日常と、家族の暮らす祖国のギャップ。エリート工作員としての誇り。周囲には決して悟られぬよう、日本社会に「浸透」(チムツ)する緊張……。
だが母親から、「日本でしてほしい」と頼まれた、ある願いが龍哉の運命を変えていく。
一方、「公安警察の狂犬」として外国スパイに恐れられながら、日本の上層部に巣食う潜入者=モグラの影に切り込み、警察組織を追われた外事二課のエース・筒見慶太郎は、指令を受けて訪れたバングラデシュ・ダッカのスラムで罠にかかり、殺人の嫌疑をかけられる。
交錯する筒見と龍哉の運命。日本と北朝鮮、対立する国家の狭間で引き裂かれた人々の思い。激闘の果てに、ふたりが辿り着いた驚愕の真実とは。
「目を醒ませ。本当のお前は、誰なのか――」


曹源寺評価★★★★
「外事二課」通称ソトニ。ソトニシリーズというのでしょうか、現役のTBS記者である竹内センセーが出したシリーズ第1弾の「背乗り」は、北朝鮮のスパイが日本人の戸籍を乗っ取って日本人に成りすましているという設定でその工作っぷりを暴露して話題となりました。本書は「背乗り」「マルトク」に続く第3弾ということになります。
竹内センセーの著作は悪の巣窟北朝鮮!というテーマで一貫されています。本書もまた公安vs北朝鮮という構図は変わりませんが、北の工作員の活動っぷりがあまりにもリアルなので驚かされること請け合いです。
ストーリー紹介は上記に譲りますが、あちこちで事件が起こり、一見バラバラのように動いて見えるピースが、実は一本の糸でつながっているということが中盤以降徐々にわかってきます。バングラディシュの殺人事件、国内で活動する背乗りの工作員、警察庁理事官の妻の不貞、筒見の元部下の裏工作、等々。中盤からラストにかけては怒涛の一気読みでありました。
ただ、事件というか工作そのものに重きを置かれていますので、何故にそういうことになったの?という疑問符が浮かぶ場面が少なくありません。

ディテールがイマイチなのに面白い

のは、やはりあちこちに仕掛けられているちょっとしたどんでん返しが良いスパイスになっているのでしょうか。
事件の構図はやや複雑ですが、ひも解いてみるとよくできているなあという感想です。だからこそ細かなところまでは書ききれなかったのでしょう。場面もあちこち飛ぶので頭の中を整理しながら読む必要があります。
衝撃的なラストも含めて、本書はシリーズ中でも最高の出来ではないかと思います。





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2017年10月10日

書評842 竹本健治「涙香迷宮」

こんにちは、曹源寺です。

今日から衆議院議員選挙が公示され、本格的に選挙戦に突入しましたので、個別の論評は控えようと思います。しかし、個別でなければ言いたいことを言って良いかなと思っています、なんてね。

各党の選挙公約を見れば、だいたいのことはわかりますね。
現政権を打倒することが目標の党というのがありますが、この政党は打倒したらどんな政治を行うのか分かりません。そんな政党になど怖くて投票などできるわけがありません。
公約ではなくて目標を掲げている政党もあります。目標なんて言うだけなら誰でもできます。「目指します」なんて当たり前じゃないか、と。目指すなら目指すための工程表とかプロセスとか財源とか期限とかも一緒に掲げてくれないと、それは公約ではないんですね。
こういう政治を「衆愚政治」と言います。

もしかしたら、小○百○子が選挙後にこんなことを言うのかもしれません。

この小○百○子 目標にする、とは言った・・・・・・!
言ったが・・・・・・
今回 まだその時と場所の指定まではしていない
そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい
つまり・・・・我々がその気になればその実現は
10年20年後ということも可能だろう・・・・・・・・・・
ということ・・・・!


「満員電車ゼロ」って、今から30年地下鉄の穴を掘りなおすんかいな!
「花粉症ゼロ」って、日本中のスギの木を入れ替えるのに何年かかると思ってんだ!
(実は石原慎太郎元東京都知事は花粉症対策として多摩地区のスギの木を入れ替えようと実際に行動に移しましたね。ディーゼル排ガス対策もそうでしたが、あれもちょっとパフォーマンスが過ぎました)

という心の声は抜きにして、有権者の耳に聞こえの良い科白ばかり言っている政党は国民をバカにしているのだと思った方がよさそうです。実際に、これまではこうした耳障りのよい甘言ばかりを吐いて実際に政権を握った政党がありました。国民はバカでした。マスゴミにも踊らされました。
ですが、もう今はネットの普及率もだいぶ高くなりました。若い人たちはもう騙されていません。テレビのワイドショーばかり見ているジジババだけが相変わらずな状態ですが、もうそろそろしっかりと啓蒙してやったほうが良いと思います。

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内容(講談社HPより)
明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰!
いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。
そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。
日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。


曹源寺評価★★★★
本書は「このミステリがすごい!」大賞2016年の1位を獲得した作品として知られています。
竹本健治センセーの作品は未読でしたので、これを機に読んでみることにしました。
主人公は本因坊の牧場智久。他の作品でも登場しているようですが未読なので知らんということで。たまたま遭遇した殺人事件では、囲碁の真っ最中に背後から刺されて死んだ被害者の姿があり、警察に協力することになります。
と思ったら、なぜか涙香が生前に隠し持っていたとされる隠れ家が見つかり、中を探検することになります。そこで浮かび上がった涙香の人物像はやはりすごかった!
そのすごさと並行して、この場所でも殺人事件が発生するという展開になり、事件を解く鍵は牧場の頭脳にかかってくることになります。
この犯人を捜すミステリはとりあえず置いといて、本書のキモは明治時代の傑物である黒岩涙香に関する数々の異聞と功績、そして涙香が残した暗号の謎という設定で読ませる奇想天外なストーリーにあります。
涙香の残した足跡は知れば知るほど驚きの連続なのですが、それ以上に読めば仰天するのは、本書に登場する「いろは歌」です。これは竹本センセーの創作のようですが、なんだかとんでもなくすごい内容です。

ほえぇ、日本語ってすごいなぁ

という感想しか思い浮かばないのですが、自分は語彙力ゼロの俗物ということですね。
暗号を解くのが好きな人や、囲碁連珠が好きな人にはとっつきやすい作品かもしれませんが、自分はいずれもそれほど情熱があるわけではないので、さらーっと読み流してしまいました。
つまり、本書は好き嫌いがはっきり分かれてもおかしくない作品なのですが、これがどういうわけか「このミス」1位になったのであります。本屋大賞はどちらかというと万人受けする作品が受賞する傾向にありますが、文春ミステリやこのミスではややマニア受けする作品のほうが順位が高いこともしばしばです。そういう意味では納得できますが、自分にはちょっと毛色が違うという感じでしょうか。
そもそも本格ミステリは謎解きのほうに重点が置かれていて設定の甘さが目につくことが多いのであまりのめり込めないことが多いんです(○辻○人とかまさにそんな感じです)。そのマニア受けのなかでもさらにコアなマニアに向けているかのような本書は本来なら避けてもおかしくはないのかもしれません。まあ、1位だから読みました、ありがとうございました、という感じですかね。





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2017年06月23日

書評813 月村了衛「追想の探偵」

こんにちは、曹源寺です。

AKB48の総選挙とかいう集金イベントで、20位の須藤ナントカが突如結婚宣言をして周囲をどん引きさせた件では、一部のタレントや評論家が「アイドルだって結婚しちゃいけないわけじゃない」という結婚の是非という問題にすり替えていますが、本筋は「金を集めておいてドロン」という行為の問題であります。マツコ・デラックスは「キャバ嬢がドンペリ30本空けさせておいて結婚しますと言うようなもの」という的確なツッコミをされていました。個人的には計画倒産と同じだと思っています。
政治では加計学園の報道で、「安倍首相の指示があったかどうか」とか「安倍首相の意向に忖度したのかどうか」といった問題になっていますが、加計学園に獣医学部の設置を決めたのが2016年1月で、それ以降の行政文書(という名の怪文書を含む)に「官邸の上のほうから〜」とか書かれていたとしても、それはもうすでに時系列的に辻褄があっていない、破綻している話であります。それをいつまでもいつまでも問題として報道しているテレビと新聞は国民を騙しにかかっているとしか思えないですわ(Fラン大学の乱立とか国際医療福祉大学の医学部設置の件とか、そっちのほうが闇がありそうですが報道ありませんねー棒)。
ほかにも、朝鮮学校への補助金支給にかかる問題では「生徒たちを差別するな」とか「学問の自由を守れ」とか言う意見がありますが、これも本筋ではありません。法律でいうところの「一条校」でないために出せないだけです。朝鮮学校はいわば「私塾」であり、学習塾やサッカー教室と同じ区別なんですが、そうした本質的なところを無視して「子どもたちの教育の機会を奪うな」などと言ってくるわけです。

このように、世の中には物事の本質をわざと矮小化させたり別の問題にすり替えたりしようとする輩が腐るほどいることが分かります。
特に政治問題になると、テレビ新聞だけでなく、ネットで細々と記事を配信している自称ジャーナリストたちが湧いて出てきます。あちこちで「○○問題」という言い方をするようになると、この○○がいかにも問題であるかのような印象にさせられるわけですね。世間ではこれを「印象操作」と言います。我々はこうした印象操作に引っかかることなく、冷静に物事を見つめていく必要があります。これが「リテラシー」だと思います。

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内容(双葉社HPより)
雑誌編集者・神部実花には、人知れぬ特技がある。それは、誰も行方を知らない人物を捜しだすこと。あらゆる手段を駆使して人々の記憶の扉を開き、真実をつかみ出す。愛する雑誌を守るため、上司の無理難題や個性的な面々に挫けることなく、「日常のハードボイルド」を生きる若き女性の活躍を描いた連作短編集。


曹源寺評価★★★★★
アクション系の多い月村センセーが探偵モノを出した!と思って読んだら、主人公は探偵ではなくて雑誌編集者でした。何だこれと思いながら読み始めましたが、あぁ、これは確かに探偵モノですわ。
主人公の神部実花は黎砦社という零細?出版社の若き編集長であります。不定期雑誌「特撮旬報」をほぼ一人で切り盛りしているという設定です。昔の特撮モノ(リアルでいえば円谷プロ作品などになりましょうか)の裏側とか内幕を特集する雑誌ということで、自分のような少年時代を特撮ヒーローモノで過ごした中高年には

マニアじゃなくてもグッとくるテーマ

の雑誌なわけです。当時の監督や技術者などを掘り起こしてインタビューする記事がマニアに好評ということで、読者にも「これは読みたいかも」と思わせるような興味深い内容が綴られています。「人探しの神部」という異名を持つ彼女は、独特の嗅覚で「あの人は今」になってしまった人物を掘り起こします。その裏側に秘められた過去のエピソードもいっしょに掘り起こしてくれるので、じんわりと暖かい、そして少し哀しい、そんな物語になっています。
連作短編6作品を収録していますが、最初の2作品はやや長めの作品で、実花の執念深い捜索が実を結ぶ感動的な作品に仕上がっています。いや、

たいした話ではないはずなんですが、それでもちょっと泣ける

という、後になってじわじわくる味わい深い作品と言えます。
実花の周辺を囲む脇役は個性派揃いですが、それほど活躍していないのがもったいないと思います。しかしこれは次回作に期待を込めて長期シリーズとして続けていただきたいと強く願うことにします。
そういえば、特撮モノの大ファンといえば、大倉崇裕センセーがインタビューなどで自称されているのを思い出しました。作品としても「BLOOD ARM」などで怪獣(!)を本当にテーマにしておられます。おそらく大倉センセーあたりは、本書を手にして「やられたっ」と思っていらっしゃるのではないかと考えるのは、「当時を偲ぶ」という行動と「特撮モノ」というジャンルがひどく相性がよかった、という点に加え、廃れたジャンルだからこそ人探し=探偵という定番のミステリジャンルがこれまたマッチしてしまったという点にあるのだと思います。
この相性のよさに着目された月村センセーは天才ではないかと思いました。





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2017年01月20日

書評775 高嶋哲夫「日本核武装」

こんにちは、曹源寺です。

先日、LINEアカウントが乗っ取られまして、多くの知人に詐欺まがいのメールが届いてしまうというハプニングがありました。多くの方にご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。
詐欺メールの内容は懲りもせずに、コンビニで電子マネーを買ってきてくれというものでありました。まだいるんですね。この手の詐欺グループは外国人が主体と聞いています。まあ、電子マネー買ってきてくれという依頼そのものが陳腐でありますから、引っかかってはいないのですが。
もう不逞外国人はどんどん本国に送還してやってほしいですね。

備忘録として書いておきますと、LINEアカウントが乗っ取られて制御できなくなったら

最初に登録した電話番号で新たなアカウントを作成する

でとりあえずは回避できます。

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内容(幻冬舎HPより)

戦争阻止にはこれしかない。 中国の尖閣支配、北朝鮮の核配備、形骸化する日米安保――。 最大の禁忌(タブー)に踏み込む、超リアルサスペンス巨編。 尖閣諸島を巡って海上自衛隊と中国の艦船の睨み合いが続く中、国内では日本の核武装に向けた詳細な計画書が見つかった。表沙汰になることを恐れた政府は、防衛省の真名瀬に秘密裏に全容解明するよう指示。真名瀬は計画に携わる大手企業や元自衛隊幹部、政界重鎮を突き止め、核爆弾完成が間近に迫っている事実をつかんだ。そのとき、東シナ海では日中の艦船が衝突。北朝鮮は核実験を実施し、弾道ミサイルが日本上空を通過する……。『M8』『TSUNAMI』の著者、構想15年、戦慄の予言小説!


曹源寺評価★★★★
災害シミュレーション小説の旗手として名高い高嶋センセーですが、本来は原子力の研究をされていたバリバリの理系です。そんな高嶋センセーがリアルシミュレーションとして選んだのが核武装の話でした。
タイトルがものものしいのでこれを見るだけでは「高嶋センセーって結構タカ派だったのね」と思わせる勢いですが、果たしてどうなんでしょうか。
主人公の真名瀬純は防衛省防衛政策局の官僚。ハーバード大に留学していた時に友人となったデビッドとシューリンの2人とは米国、中国と国は違えど友情を交わした仲である。
帰国した真名瀬に降りかかったのは、交通事故で意識を失っている防衛技官のクルマから見つかった設計図面。そこには核兵器の製造方法が記されていた。
核兵器を日本で製造しようとしているのは誰なのか。そしてその目的は何なのか。
同じ頃、東シナ海では日本と中国の艦船がにらみ合っていた。一触即発のなか、真名瀬も尖閣諸島沖に繰り出していく。緊迫する東シナ海。中国軍の暴走を止めるためには何が必要なのか。そして、真名瀬の決断は。。。
ふむふむ、なるほど。日本国内で核兵器を製造するためにはどんな仕組みやプロセスが必要なのかよく分かります。相当にハードルの高い話だと思っていたら、実際にはそうでもなさそうです。もちろん、核物質の入手が一番難しいでしょう。核兵器の設計図と核物質を巡る作戦と同時進行する東シナ海での日中衝突。リアルシミュレーションとして読むにはかなり緊迫感のある描写です。

高嶋センセー、文章うまくなってる

と思います。最近の作品のほうがすごく読みやすいです。
ひとつ残念なのは、どの場面においても必ず主人公がいる(! というストーリーテリングなところでしょうか。そうでないのがあったとしてもほんの少しなんですよ。これだけ長編になると、主人公以外の人に焦点を当てたシーンがいくつかあっても良いのではないかと思います。
そういえば、核燃料リサイクル施設の「もんじゅ」は廃炉が決まりました。夢の核燃料リサイクルともてはやされましたが、科学技術の限界なのでしょうか。リサイクルが不可能と結論付けられると、日本は大変なことになります。
まず、各電力会社が保有している核廃棄物が、リサイクルを前提とした「資産」であったものを「負債」にしなければなりません。各社はこれだけで一気に債務超過に転落ですか?
これ、逆に考えると、もんじゅがこれまでだらだらと運転(という名の検査)を続けてきたのは、電力会社の財務を健全に保つためではなかったのかと邪推したくなりますね。
リサイクルができないとなると、あとは核ミサイルです。兵器としての核利用ということで名目が立てば、負債勘定にはならないでしょう。ただ、核ミサイルにするにはウラン235とウラン238の分離が不可欠です。技術的にはカバーできそうですが、これの保管管理は大変ですね。
さて、話がそれましたが、本書は核兵器モノのリアルサスペンスとしてはそれなりに読みやすく、ちょっと冗長なきらいはあるにしても現実世界っぽい展開が読む人をぐいぐい引き込んでくれますので、タイトルはともかく(笑 読んで損はないかなと思います。





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2016年12月06日

書評764 月村了衛「黒涙」

こんにちは、曹源寺です。

ちょっとびっくりしたニュースがありましたので(ニュースというか話題というか)。
【なんて時代だ】除夜の鐘を禁止させられるお寺が続出中
年越しに鳴り響く『除夜の鐘』。聞くと「一年が終わり、また新しい年が始まるんだなぁ」と思わされる
日本の風物詩です。
しかし最近では、この除夜の鐘が「うるさい」との近隣住民の苦情を受け、昼間や夕方に鳴らすお寺が増えているのだとか。
静岡県にある大澤寺(だいたくじ)もその一つ。大澤寺のwebサイトには除夜の鐘が一時中止になり、再開したものの昼間に除夜の鐘をつくことになった経緯が記されています。
『夜間衝く鐘の音に対する波津地区のどなたからのクレームの電話があったことから父の代で終了した除夜の鐘。それを昨年から時間を大幅に繰り上げて再開したというものです。』
「除夜の鐘がうるさい」とのクレーム。日本の風物詩として楽しみにしている身としては信じられない気持ちですが、多くの方はどのように感じているのでしょうか。
「こわい」という声を受けてなまはげが優しくなったり、「子どもを歩かせるのか」という声を受けて二宮金次郎像が座ったり、伝統より苦情の声が大きくなりつつある日本。
一つのクレームで、多くの方が楽しみにしている伝統が無くなってしまうのは悲しいですね。改めて、大切にすべきものは何かを考えていきたいものです。
(grapeの記事より)

ほんの少しのクレームで自粛を余儀なくされる時代とはいえ、ここまでいくと時代がおかしいのではないかと思ってしまうレベルです。
そういえば、先日も日本人が麺類をすする音が不快であるとする「ヌードルハラスメント」略してヌーハラなる言葉を編み出したどこかのマスゴミTV局がありましたが、あっという間に沈静化しましたね。
これらに共通するのは、どちらも日本人の感覚としては当たり前なのに(おそらく)外国人からは奇異に映るものが時に不快であること、という点にあると思います。

しかし、ここは日本です。日本国内で日本人がはるか昔から営んできた慣習や風習について、外国人からいちゃもんをつけられる筋合いはありません。そもそもこんなこと(特にヌーハラ)が記事になること自体がアホなことです。これ、逆に言えば他国の文化に異邦人が余計な口出しをしているだけではないかと思うのですが。
たとえば、中国人は賓客をもてなすときは食べきれないほどの料理を出すのが風習です。だから客の側も食べ残すのがマナーになっています。これを食べ物がもったいないと怒るのは筋違いです。
また、欧州では皿に残った肉料理のソースをパンですくって食べるのは普通のことですが、日本ではあまりなじまないマナーだったと思います(今はそうでもないですが、おそらく30年前ははしたないことだったと思います)。
自国の文化を基準にして他国の批判をすることほど無知蒙昧なことはありません。こういうのは徹底的に無視するのが一番だと思います。

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内容(朝日新聞出版HPより)
警視庁組織対策部2課の警部補・沢渡は、実は黒社会とつながる警察内部の〈黒色分子〉だ。中国語が堪能な沢渡は、対中国防諜作戦を目的とする公安部の特別捜査チームに出向となる。沢渡と義兄弟の契りを結ぶ黒社会「義水盟」の大幹部である沈は、インドネシアの青年実業家ラウタンも巻き込んで、沢渡らの中国諜報機関摘発に協力することなった。やがて三人の前にシンシア・ユンと名乗る謎の美女が現れるが……。
まさに“黒の中の黒”――
黒色警察小説の新たな傑作誕生!


曹源寺評価★★★★★
月村センセーの警察小説「黒警」の続編が出ました。雑誌連載中は「黒警PARTU」というタイトルだったのに、単行本化したら改題されました。それでもこのタイトルで「あぁ、黒警の続編だな」と理解できた方は多かったのではないでしょうか。「黒警」は警視庁の組織犯罪対策部に所属する刑事、沢渡を主人公とする警察小説ですが、かなりノワールな作品であります。なにしろ中国の黒社会集団である「義水盟」に所属しているという設定で、いわゆる「義賊」のような集団ですがやっていることは違法行為だらけです。
今回その沢渡は中国語が堪能であることから公安部の特別捜査チームに加わることになり、中国のスパイ活動を炙り出す役割を命じられます。義賊とはいえ、自分も半分はスパイみたいな立場にいる沢渡は、身分がばれないように対中国の防諜活動をしなければならなくなります。そのへんの(身分バレの緊張感を味わう)スリリングなやりとりはあまりありませんが、月村センセーならではのスペクタクルな展開は相変わらず冴え渡っております。
特捜チームは今回の中国のロビー活動を贈収賄で立件できるかという命題に対し、地道な捜査活動だけでは突破口が開けないとして、インドネシアの実業家であるラウタン氏の協力を仰ぐ。ラウタンはさわやかな青年実業家で、人を惹きつける魅力を持っているが、中国側のハニートラップも真正面から受けて立つほど自信過剰な側面もあり、この男女の駆け引きも読みどころではあります。
しかし、物語は中盤から後半にかけて一変していきます。さすが黒警。ノワール感満載です。特に後半〜ラストにかけては黒も黒、真っ黒になった沢渡の本領発揮で、なんだか

怪談を読んでいる気分になりましたよ。マジホラーですわ

それにしても、月村センセーの作品はラストにかけての描写が震え上がるレベルになってきました。特に、いざ決着をつけようという場面においては読む手が震えるほどガクブルものです。まあ、ホラーといっても後味悪いものではなく、真っ当な悪党の末路を見せつけてくれるものですから納得のいくラストであります。
警察小説でもあり、犯罪小説でもあり、またまたミステリでもある。印象深い一冊でありました。





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2016年10月21日

書評753 高嶋哲夫「交錯捜査 沖縄コンフィデンシャル」

こんにちは、曹源寺です。

今日は鳥取県で震度6弱の大きな地震がありました。鳥取はあまり地震に縁のない地域かなと思ったら、2000年10月に鳥取西部地震というのがありました。大きな被害がないことを祈りつつも、地元の方々には引き続き警戒くださいますよう。

さて、国内で揺れに揺れている地域は鳥取や熊本だけではありません。沖縄は揺れっぱなしです。もちろん比喩です。ヘリパッド建設反対とか辺野古移転反対とか、とかく反対運動が激しいのですが、あれは地元の人が反対しているのではなくて本土からやってくるプロの活動であります。そのことをネット民はみんな知っているのですが、なぜかそうした報道はテレビや新聞でなされることはありません。産経新聞だけが少し意地を見せているだけですね。
そこへ来て昨日の「土人」発言問題などが飛び出してくるものですから、なんじゃこりゃと思ってしまうわけです。プロ市民といわれる人たちがどんな活動しているのか正確に報道されることなく、土人と言われた〜と言って急に被害者みたいな主張をしだす。なんだかな〜という感じです。こんな印象操作に本当に乗せられるもんなんですかね。

マスゴミの「報道の自由」と「報道しない自由」が見事に使い分けられているなあと思います。まあ、いっそのことプロ市民にはもっともっと過激な活動へ走っていただき、あさま山荘みたいに立て篭もり事件でも起こして欲しいです。当時の反安保をはじめとした左翼活動への理解は「山岳ベース事件」が発覚してから急速にトーンダウンしましたからね。

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内容(集英社HPより)
青い海、白い砂浜が広がる楽園・沖縄で、殺人事件と米軍用地を巡る二つの事件が同時発生! 捜査を進めると裏には巨大な権力の影が……。渾身の社会派ミステリーをいきなり文庫で!


曹源寺評価★★★★★
高嶋哲夫センセーといえば災害パニック小説の大御所でありますが、たまに単発的に警察小説を出してこられるので(それもいきなり文庫で)チェックしておかないとついつい忘れがちです。
しかし、高嶋センセーの警察小説は往々にしてハズレです。これまで、面白いと思った作品がほとんどありません。まあこれだけ毎日のように警察小説とかミステリとかを読んでいるとさすがに目が肥えてきますので、一箇所でもグッとくる場面がないと時間を無駄にしたような感覚にさせられてしまうようになってしまいました。
さて、本書は沖縄県警の刑事、若手の反町とベテランの具志堅というコンビが活躍するお話です。舞台は当然、沖縄です。沖縄といえば米軍基地です。ということで、本書のストーリーの中心は沖縄の特殊事情を絡めた犯罪捜査であります。
東京から来た不動産会社経営の高田が、ホテルの一室で殺害された状態で発見された。部屋には現地のホステスも死体で見つかっており、殺人事件として帳場が立った。高田は現金で3,000万円を持っていたとされ、犯人が持ち逃げした可能性がある。目撃情報などから犯人は地元の暴力団員、トオルであるとされたが、そのトオルはリンチされた後に殺害、遺棄された。浮かび上がるのは、軍用地の転売という沖縄ならではの取引。。。
なるほど、軍用地転売というおいしいビジネスがあって、基地移転問題とは切り離せなくなっているのが今のリアルな基地問題の根幹にあるとするならば、なぜマスゴミはここを突かないのかなあとさえ思ってしまうわけですが、そんな背景を探りながら捜査はどんどんこう着状態に陥っていきます。
ラストまで一気読みとはいきませんが、読み終えた後の感想は

え、何これ?

です。
なにしろ、

事件は何一つ解決していませんから

ものすごい中途半端感ですわこれ。

(以下、ネタバレ)
社長とホステスを殺した犯人はクスリでラリッた別の男に殺害されて一件落着ということになった沖縄県警と、それを不服とする二人の刑事。真犯人と思しき男との宮古島での邂逅も立件できず中途半端な幕引き(これ、傷害の現行犯で緊急逮捕できるじゃん!というツッコミを思い切り入れたいですわ)。消えたお金の行方も分からなければ、議員の関与も不明。本当は3,000万円ではなくて7,000万円だったことに何の意味があるのか。大地主の息子は一体何をやらかしたのか。警察庁と東京地検特捜部は何を掴んでいるのか、などなど、あれもこれもぜ〜んぶ分からないまま本を閉じるはめに。

ここまで読者に何にも提示しないまま終わらせてくれた小説は(個人的には)初めてです。なんというもやもや感。これで続編が出てこなかったらヤバイですね。いや、続編を意識したとしてもですよ、ここまで全部引きずることはないじゃないですか。どれか一個だけでもスッキリさせてくれれば良いのに、それもしない。これでは読者に不誠実と言われてもしょうがないレベルです。

それに、話の展開が酷いです。米軍のMPに聞けば何か出てくるという雑な運びもそうですが、反町のセリフなのか具志堅のセリフなのか良くわからない場面の連続、ヤクザがらみの事件なのに暴対の刑事が出てこない、キツイ方言の解説もない、重要な情報を一切共有しないへんてこな組織、

なんだか読んで得したことが何一つないという残念感。

高嶋センセーはやはり警察小説を作るのが本当に下手クソでした。





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2016年09月02日

書評739 月村了衛「水戸黄門 天下の副編集長」

こんにちは曹源寺です。

9月に入りまして、義務教育課程のお子様をお持ちの家庭では2学期が始まっていつもの生活に戻ったかと存じます。大人は4月1日とか10月1日のほうが節目になっていますよね。お子様のいないご家庭、すでに巣立っておられる家庭では9月1日が節目になっていないのではないかと思います。

9月は残暑が厳しいのであまり好きではありませんが、1970年代から80年代にかけては9月の情景を歌った歌がたくさんありました。
太田裕美「9月の雨」
松任谷由実「9月には帰らない」
竹内まりや「セプテンバー」
一風堂「すみれSeptember Love」
チューリップ「September」
EARTH wind and FIRE 「September」
オフコース「I LOVE YOU」(あゝ早く九月になれば と歌っているが、9月になれば具体的にどうとは言っていない謎の歌詞)


なんなんでしょうね、この数。セプテンバーというのはなにか心の変化を惹起させるものがあるのでしょうか。9月のうちはなんだか暑くて、あまり秋を感じさせてくれないのですよ。10月に入った頃に、風の涼しさと空の高さを感じて秋だなぁと思うのがここ10年くらいの感じ方です。秋は短いですね。

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内容(徳間書店HPより)
『国史』が未完に終われば、水戸徳川家は天下の笑いもの。遅々として進まぬ編修作業に業を煮やした光圀は、遅筆揃いの不届き執筆者たちの元へ、御自ら書物問屋のご隠居に身をやつし、直々に原稿の取り立てに。御老公の旅のお供は、水戸彰考館で国史の編纂に携わる、おなじみ覚さん介さんをはじめ、鬼机のお吟など名うての編修者。爆笑必至、痛快時代エンターテインメント登場!


曹源寺評価★★★★
「機龍警察」シリーズなどでおなじみの月村センセーが、何を血迷ったのか時代劇パロディを書き起こしたのが本書であります。
水戸藩藩主にして前の副将軍である水戸光圀公が編纂を進める「国史」つまり歴史の教科書でいう「大日本史」の編纂を進めるなかで、締め切りを守らない執筆者に対して自ら原稿を取りに全国を行脚するという、水戸黄門をオマージュしたストーリーになっています。
お供をするのは水戸彰考館総裁の安積澹泊覚兵衛と、元僧侶にして国史編纂顧問を務める佐々介三郎宗淳の二人。そう、介さんと覚さんであります。それに、甲賀のくノ一であるお吟、公儀隠密の中谷弥一郎も連れ立って、完全に水戸黄門の世界となっています。
書籍を作るのに原稿が集まらない、編集者にとっては胃に穴の開きそうなストレスでしょう。黄門さま自ら原稿取りのたびに出るという設定はなるほど、お見事です。さらに、その道中には敵対する組織、すなわち国史編纂の邪魔をする勢力が待ち構えておりました。連作短編ですが中盤からはお吟vs敵方の戦いになっています。
まあ、完全にお笑い系の作品ですので、エンタメ中心にヒットを飛ばしている月村センセーといえども評価は真っ二つに分かれているみたいですね。自分はこういう作品、嫌いではありません。
何より面白いのは、「スランプとは、清の同治年間に寧波の陳魚門が明代から存在した手札を〜」などと解説しているくだりがいくつかありまして、

完全に民明書房ですありがとうございました

ここまでやらかしてくれるセンセーはなかなかいませんぜ。男塾ファンは必読(?)かも。





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2011年12月05日

書評353 建倉圭介「マッカーサーの刺客」

息子が小学校受験したら、あらなんと、繰り上げで受かっちゃたわ。発表当日は不合格通知でちょっと落胆していたんだけれど、ヨメが「まだまだ、これから国立の発表があるからそっちに流れるの。絶対繰り上がるわ」と妙に強気なコメントを残して待っていたのよ。こっちとしては倍率10倍以上あるのにそう簡単に繰り上がるわけねえべよ、と思っていたので、ちょっとびっくりでした。それに、国立の発表よりはるか前に繰り上げの電話がきたので、あれ、もしかしたらウチの子は当落スレスレくらいにいたのか?すげえじゃん!よく頑張った!
まあ、これで一件落着というか、上の子と合わせて高校まではストレートで行けることになったし、お疲れちゃんでした。
じゃねーよ。どうしよう二人とも私立なんて。教育費かさむなあ。もうちょっと仕事頑張らないと。。。


内容(角川書店HPより)
GHQ占領下の東京。マッカーサーの命を狙う加代とフィリピンから帰還した桧垣。二人の運命が交錯し加速する。一発の銃弾が時間を止めるまで。熱い感動を呼ぶ著者入魂のエンタテインメント大作。






曹源寺評価★★★★★
建倉センセーは重厚な作品が多く、軽く読み流す作品が好まれる昨今の風潮においては稀有な存在でありますが、自分は「デッドライン」の一作だけで大ファンになってしまいました。
本書は2010年の作品ですが、未読だったので早速読みました。うーん、やっぱり氏の作品は

ズシリとくる。

舞台は終戦直後の日本です。マッカーサーを暗殺しようとした小林加代と、フィリピン・レイテ島で戦い、危うく戦犯にかけられそうになりながらも帰国を果たした桧垣、それに参謀本部から警察官に転身した富岡。3人の異なる生き様を描きつつも、いつしか発火点を迎えて交差する運命を描いています。
東京大空襲で家族を失った加代の執念たるや、すさまじいものがあります。時に老婆に扮し、時に乳母に扮し、マッカーサーに近づいて暗殺のチャンスを伺うさまは、文中で表現される加代の姿とは異なり狂気の様相でありますが、その狂気のなかにも少なからず共感を覚えるあたりが書き手のうまさでしょうか。
そしてふと考えます。マッカーサーがもし暗殺されていたらどうなっていたでしょうか。本書を読むと、間接統治から直接統治に切り替えられて、それに反発する民衆が内乱を起こして、下手をすると天皇制さえも廃止されたのではないかと危惧されます。そこまでいかなくとも、少なくとも4〜5年は復興が遅れたでしょう。しかしその一方で、国民の矜持(対米追従を良しとしない風潮)は保持されたのではないかとも思いますね。民間人を大空襲で焼き殺したうえに原爆まで落とした米国の戦争法違反は明確ですが、マッカーサー=天皇陛下より上みたいな雰囲気を作り上げ、戦後の統治を成功させた手法によりいつのまにか従順な日本人を作り上げることに米国は成功してしまいました。このへんはイデオロギーに関係なく(右だの左だのいちいちレッテル貼る人が最近は多すぎますね)、素直に読んでみたいと思います。
また、終戦直後のエピソードがこれでもかというほど満載です。教育現場における皇民教育の崩壊と180度転換、マッカーサーの天皇陛下とのツーショット写真による神格化、闇市の情景、元上官に対する虐め、戦争孤児、東京大空襲の地獄絵図、などなど。細かなエピソードを散りばめることにより、リアルなエンタテインメントに仕上がっています。
こういう作品は大好きです。








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2011年10月13日

書評343 大門剛明「共同正犯」

知り合い(というか、ただ知っているだけとも言うが)がタイーホされるという経験は、果たしてみなさんにどれだけあるのでしょうか。自分は本日で2回目です。名刺交換したことがある人、というレベルでしかないのですが、新聞記事やニュース映像でこれを知った時の驚きったらハンパないんです。
いずれも電車内でいざこざを起こして捕まりました。ひとつは痴漢行為で、そして今回は隣の人をぶん殴った容疑で。電車内って怖いねー
コワイ(ο・д・)(・д・`ο)ネー
こんな経験は普通ないですよね。「自分の人脈って意外とアングラwww」なんて自慢にもなりゃしない。特に2回もなんて逆に恥ずかしいわ。


内容(角川書店HPより)
播磨灘近く、製鎖業者の多い一帯で見つかった一つの死体。死体は不動産屋の長岡。連帯保証債務三億二千万を背負った社長・翔子の犯行と直観した鳴川は、死体を移動させてしまうが−−。






曹源寺評価★★★★
大門センセーの作品はどんどん読みやすくなっていて、社会派と言われながらもそれほど堅苦しい内容にはなっていないのが特徴です。本書もほどよいペースで読めます。
主人公の鳴川は以前、製鎖工場に勤務していたが独立し、現在は姫路名物の「どろ焼き」を出す居酒屋の店主という設定。ちょっとしたヒントから答えを導き出すため「どろ焼き探偵」の異名を持つが、どちらかというと直情的で考えるより先に行動するタイプ。なんだか矛盾しているような気がしないでもないですね。どろ焼きって知りませんでしたが、ネットで画像などを見るとめちゃめちゃおいしそうですね。
そんな姫路の下町にある製鎖工場が舞台となって、不動産会社社長の長岡が工場敷地内で絞殺体で見つかります。10年前に失踪した元従業員の池内、現従業員の浅尾、NPO法人代表の小寺沢、それに翔子に連帯債務を負わせた石井。これに刑事の岩田と池内準規(失踪した池内の弟)が絡み、鳴沢とともに複雑な人間関係のなかで事件が交錯していきます。
予想を覆すドンデンもあり(と思っているのは自分だけ?)、なるほどよく練られたプロットが最終的には事件の背景を効果的に説明させてくれるあたりは、さすがに社会派といわれるだけのことはありますね。

なんだか松本清張みたいです。

造船向けのアンカーチェーンのメーカーなどという、マニアックな工場が舞台となっているのもいいですね。ニッチな業界をターゲットにする手法は、自分がもし書くならやってみたい手法でもあります。
読み応えとしては、クライマックスの描写にもう一工夫欲しいかなあとも思いますが、構想やプロットは十分楽しめるレベルにあると思います。








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2011年08月02日

書評328 高野和明「ジェノサイド」

先週はあの小松左京大先生がお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
「日本沈没」は迫力がありました。「首都消失」や「さよならジュピター」も読みました。「一生に一度の月」は笑わせてくれました(本当にこんなことがあるんですね〜)。小松大先生は後世の作家に与えた影響からすれば、漫画における手塚治虫に匹敵するのではないかと思うのですが、言い過ぎでしょうか。

内容(角川書店HPより)
創薬化学を専攻する大学院生・研人のもとに死んだ父からのメールが届く。傭兵・イエーガーは不治の病を患う息子のために、コンゴ潜入の任務を引き受ける。二人の人生が交錯するとき、驚愕の真実が明らかになる――。





曹源寺評価★★★★★
今年度の直木賞候補にもなりました高野和明氏の最新作です。直木賞はあいにく「下町ロケット」に譲りましたが、本書のできは(個人的には)今年度のナンバーワン!だと思います。
とにかく圧巻です。今風に言うと

胸熱です。

主人公・古賀研人は父の死後に受け取った電子メールから、難病の治療薬を創る極秘プロジェクトを引き継ぐのですが、これと並行して、コンゴへの潜入任務を引き受ける傭兵イエーガーのプロジェクトも動き出します。最初はなぜこのまったくつながりの見出せないストーリーが同時に展開するのか、読者にはまったく分からないのですが、それぞれがノンストップで展開していくうちにピタッとつながってくるというのがすばらしく職人技的で感動的でもあります。
そして、難病患者を介在させることで創薬にタイムリミットを設けるのもうまいですね。高野氏は「13階段」や「6時間後に君は死ぬ」でもタイムリミット型のミステリを書き上げていますので、ここらのテクはお手の物なんでしょう。
さらに、個人的には非常に興味深い「人類の進化」が本書の最も大きなテーマでもあります。タイトルのとおり「ジェノサイド」の記述は随所に見られます(南京大虐殺だけは絶対に認めない)が、そもそもジェノサイドが今も現在進行形で行われている今の人類は劣等生物であり、高等生物に進化しないとこれからも世界のあちこちで戦争や虐殺が繰り返されるのではないかという仮説のもとに、本書は成立しているのではないかと思われます。
高野氏は角川書店のインタビューで、かなり前から構想があったことをほのめかしていますが、ちょうど我々の世代(というより自分自身)は「人類の進化」という壮大なテーマに真っ向から挑まなくてはならないのではないかと思っています。人類の脳は動物の脳の上に大脳新皮質がかぶさっているだけで、ふたつの脳が融合していないが故に欠陥生物であると、アーサー・ケストラーは指摘しています(「機械の中の幽霊」ほか)し、あのアドルフ・ヒトラーも人類は21世紀に進化すると言っていたようです(五島勉「1999年以後」)。
こうした本を読んできた自分にとっても、本書が描く新しい人類の姿は全く違和感がないどころか、これこそが未来に生まれる(あるいはもう生まれているかもしれない)新しい人類の姿であり能力であると思ってしまうくらい、見事な描写です。この進化したピグミーの子どもに関する描写には

隙がありません。参りました。


壮大なストーリーと驚愕のラスト、いままでの高野作品とは一線を画す内容です。この作品で氏は一皮剥けたという評価もその通りだと思います。









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2011年07月20日

書評325 竹田恒泰「なぜ日本は世界で一番人気があるのか」

関東は風がすごいけれど、朝方とか割りと平気でしたね。うちは中学校も幼稚園も休校・休園ですよ。
台風が東北地方に行きませんように・・・
原発処理はステップ1が終了し、ステップ2に移行したそうですが、まだまだ安心はできないね。放射能がダダ漏れしているのは間違いないし、地面が汚染され続けていればやがて地下水にも届くでしょうし、そうなればいまより酷い汚染が明らかになるでしょうし。
家に帰れるとかそういうレベルでは全くないことをどうして報道しないんでしょうか?変に希望を持たせてどうしようってんでしょうか?不思議でしょうがありません。


内容(PHP研究所HPより)
天皇の意味がよくわかる最強の日本論。
マンガ・アニメが席巻し、世界はいま空前の日本ブーム。しかし理由はそれだけではない。食文化、モノづくり、日本語、和の心、エコ――あらゆる日本文化に好意が寄せられている。それなのに自分の国を愛せなくなったのはあまりにも悲しい。
なぜ『ミシュランガイド』は東京に最多の星を付けたのか? どうして「もったいない」が環境保全の合言葉に選ばれたのか? 「クール・ジャパン」の源流を探ると、古代から綿々と伝わる日本文明の精神、そして天皇の存在が見えてくる。いまこそ知っておきたい日本のすごさが一冊でわかる。なんだか自信が湧いてくる!
【世界に愛される日本文化のキーワード】第一章「頂きます」/第二章「匠」/第三章「勿体無い」/第四章「和み」/第五章「八百万」/第六章「天皇」/終章「ジャパン・ルネッサンス」
巻末付録として北野武氏との対談「日本は生活そのものが『芸術』だ」を収録。






曹源寺評価★★★★
明治天皇の玄孫にして慶応大学講師の竹田恒泰氏が書いた日本論ですが、自分にとっては既知のものが多かったですかね。初心者向けかもしれません。
昨年末に発刊され、半年が経過してもなおPHP新書の売れ行きランキングでは4位に入っているというのはなかなかすごいなあと思います。やはり、震災によって多くの日本人がココロの拠り所を失いつつあるのかもしれません。これに民主党政権が追い討ちをかけているのであれば、由々しき事態です。「2位じゃダメなんですか?」と言われても、やはりワールドカップでは1位にならなければここまで盛り上がらなかったでしょうし、「はやぶさ」の快挙やスパコン「京」の記録更新でも日本の底力を見せてくれていますので、やはりこういったイベントは日本人の団結に欠かせないのではないかと思ってしまいます。
だからこそ、改めて日本論を読み返すというのも一興ではないかと。特に、第一章は必読でしょう。どこぞのモンペアが「給食費を払っているんだから『いただきます』と言わせるのはおかしい」と抜かした新聞記事は自分も見ましたが、竹田氏の指摘するとおり、

「いただきます」とは「命をいただきます」ということであります。

人間は生きているものしか食べられないわけですから、米にしろ野菜にしろ、食べ物の生命を自分の血肉に代えさせてもらうというのが、本来の「いただきます」の意味であると。こういうメンタリティは日本人ならではのものだと思いますが、でも、大事にしたい文化のひとつでもありますね。こうした日本特有のメンタリティさえも、グローバル化だのガラパゴスだのといった側面でしか受け止められなくなるようでしたら、日本は本当に終わるのではないかと本気で心配になります。








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2011年04月27日

書評304 戸梶圭太「見当たり捜査官」

先日、統一地方選挙がありましたが、今まで自分が投票した候補者ってあまり当選したことがないんですよ。自分がひねくれ者だからかもしれませんが。
そう、あまり有名な候補者には投票しません。今回は珍しく当選されましたので、自分でも驚きました。
わが街(市ですが)の議員選挙では、元都議がトップ当選を果たした一方、先日の舌禍事件でマスゴミを賑わした現職は落選しました。まあ、そういう点においては選挙民の意識もそれなりに高いのかもしれませんが、隣接する市とあわせて、ウチの界隈は左巻きが多いので気をつけなくてはと思います。今回は共産党の弁護士新人候補が当選したりもしています。もう赤い弁護士は仙谷だけで十分お腹いっぱいなんですが、共産党はたまに良いこと言うので一定の層から支持されるんですね。
本当の民主主義とは、少数意見を無視するのではなく、真実であれば耳を傾ける必要があるのだと思います。その意味においては、共産党が主張する点を全く無視することはあまりよろしくないのだろうと思いますが、民主党+共産党でタッグを組まれた暁には、その自治体オワタ状態になってもおかしくないのではと危惧します。やはり野党は野党でいてほしいわ。


内容(双葉社HPより)
警視庁捜査共助課。久米山はそこに所属する「見当たり捜査官」である。見当たりとは、指名手配犯を見つけ出すことで、手配写真がすべて頭に入っているといっても過言ではない。久米山は過去に警視総監賞をとったこともあるほどの優秀な刑事だったが、最近は逮捕することもなく焦っていた。






曹源寺評価★★★★★
「牛乳アンタッチャブル」以来でしょうか。久々に読んだ戸梶氏の小説でしたが、彼にしては珍しく普通っぽい警察小説でした。主人公の久米山は40に手が届きそうな独身の警部補という設定で、新たに設置された「捜査共助課」というセクションに所属する見当たり捜査官であります。指名手配犯の顔を頭に叩き込み、盛り場や競馬場、風俗店などに張り込み(というよりはそこに居続けることにより)犯人を捕まえるのが仕事という設定です。
警察官の単独行動は原則としてありえません(たいていは2人1組)ので、それだけでも「ありえねー」設定なわけですが、それ以上に「ありえねー」のは、無逮捕が50日も60日も続くとクビを覚悟しなければならないほど過酷なノルマ(実際にはノルマとしては描かれていません)が存在することでしょうか。犯人がそんなに都合よく街を闊歩していることはないでしょうに、と思わずツッコミを入れたくなりました。
まあ、それでも相変わらずのテンポ良いリーダビリティで読者を一気に戸梶ワールドに引き込むテクニックには脱帽です。そして、お決まりのグロすぎる暴力シーンにも磨きがかかっていました。腸がはみ出て目を潰されながらも犯人に立ち向かう刑事を描くなんて普通の作家は描きません(笑)。まあ、この辺が戸梶氏に対する激しい好き嫌いを生み出す源泉にもなっているわけですが、個人的にはあまり嫌いではありません。








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2011年01月26日

書評287 大門剛明「告解者」

なんだかTPPに関する議論がお盛んですね。いや、お盛んではなく「早くTPPに参加しろ」というへんな誘導が増えたというのが正しいでしょうか。
日経は惨たらしいくらい参加促進派ですね。反対意見を本日に至るまで全く載せていませんし、社説子も徹底的に「船に乗り遅れるな」的な記事ばかりです。しかも、懸念事項を農業の壊滅だけに矮小化していますので、TPPに反対する人には「農業保護を繰り返してばかりでは国際競争に勝てんぞ」と脅す始末。これって違うでしょ。
もっと多角的に検証しなければいけないのに、農業の問題だけに摩り替えてませんか?金融サービスやその他のサービスなども海外勢力が進出してきますが、これは金融業界OKなんですかね?
あと、円高の是正にはつながらないでしょうし、むしろ円高が加速したりデフレが解消されなかったりする懸念のほうが大きいのに、なぜ「TPPに参加するとデフレ問題は解消されないぞ」とか「TPPでは雇用悪化の影響が大きいぞ」とか、なぜこういう記事が出てこないのか不思議でなりません。
今の日本に必要なのは、デフレの解消と雇用の改善であり、社会保障の基盤強化などがその次にくるのではないかと思っていますが、なぜTPPが先なのか?まったくもって理解不能です。


内容(中央公論新社HPより)
23年前に二人を殺した無期懲役囚が更生保護施設に入寮。補導員のさくらは彼の誠実な更生ぶりに惹かれる。そこに新たな殺人事件が発生。寮生への疑いを解くため、二人は奔走する。






曹源寺評価★★★★
大門氏の作品はデビュー作の「雪冤」に始まり、「罪火」「確信犯」と読んできましたが、4作品目となる本書はだいぶ良い出来栄えだと思います。「更生」とは何か、を問い続けているという姿勢は、かの乱歩賞作家、薬丸岳氏とも似ていますが、彼が少年法の不備という側面であるのに対し、大門氏は殺人そのものから真正面に斬り込んでいます。もともと氏は法曹関係の職を目指していたそうですので、専門知識は豊富ですが、その分文章が堅いという難点も見え隠れしています。本書はその辺がだいぶこなれてきましたので、以前よりも読みやすくなっていることは間違いありません。もうちょっとセリフがまともになれば良いんですが。。。
ミステリとしての深みというか、どんでん返しもありますのでページをめくる手は軽快ですが、ラストはやや無理矢理感がないわけではありません。それでも、なぜかしみじみとさせる展開です。作品を重ねるごとに成長していく氏の、さらなる飛躍に期待します。








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2011年01月11日

書評284 高嶋哲夫「タナボタ!」

なんだか、全国に伊達直人が現れてはランドセルを配っているそうですね。こういう善の連鎖というのは珍しいですが、なんだか胸が熱くなります。この行為自体をあざ笑うヤツは下賤極まりないと思いますが、「伊達直人(ヒバクシャ)」って何よ。へんな自己主張は要りません。
最近では桃太郎や矢吹丈も登場しているようですが、正義の味方なら掃いて捨てるほどいますので、本郷猛でもモロボシダン(古っ)でもいいからどんどん名乗って盛り上げていただきたいと。ウチは貧乏なのでできませんが。


内容(幻冬舎HPより)
プータローの大志が国会議員になった。年収約二千万円やJRパスなど、数々の特権に当初は歓喜するも、政界の実態に知るにつれ嫌悪感を抱く。そんな時、不条理な法律の存在を知るのだが――。






曹源寺評価★★★★★
災害小説(!?)でおなじみの高嶋氏が政治モノを書き下ろしたというので、どんな災厄だろう(笑)と期待したら全然違いました。まあ、現実に勝る災厄はありませんからwww
なんだかグチのオンパレードです。政治に対する鬱憤が相当溜まっていたのでしょうか、あーだこーだと主人公の周辺人物を借りて文句を垂れ流しているだけのような感じです。まあ、中盤はそれ自体が面白いと思わせる場面もあるにはあります。ただ、全体に流れる「ミンス党」のような雰囲気がいまさら感というか、ちょっとタイミングはずしたな、というしらけた空気が漂うため、読むほうもちょっとしらけ気味です。これは発刊タイミングというより、読書タイミングかもしれませんが。
しかも、不条理な法律の存在って、外国人看護師の試験問題が日本語なのはおかしいとか、そういうやつです。まあ、言語の壁は取っ払ったほうが良いかもしれませんが、個人的には雇用と求人のミスマッチを外国人労働者でカバーしようとしている法律の存在そのものが不条理だと思いますが。








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2010年10月18日

書評268 富坂聰「中国の地下経済」

これってホントですかね?
(以下、コピペです)
海保船舶が横付け。海保職員が乗り込む。その後、中国船舶が突如離船。取り残された海保職員が中国人船員に飛び蹴りされて中国船舶から海中に突き落とされる。海に落ちた海保職員を潰すように、中国船舶が進路変更。海保職員が必死に泳いで逃げるのを執拗に銛で突き殺そうとする中国人船員。海保船舶が海保職員を救出するため停船し救助に乗り出す。その後ろから中国漁船が溺れる海保職員に乗り上げ、海保職員が海の中に沈んで見えなくなる。その後、浮かび上がった海保職員は海保船舶に後部から担ぎ上げられる。這い上がる海保職員めがけて数秒後に漁船が全速力で海保船舶の後部から衝突し、海保側の船体が大破」。 

ミンス党がビデオを公開しないわけがわかりました。ってか、日本オワタ。

内容(文藝春秋HPより)
中国経済がはらむ「危険水域」の実態
金融危機後も急成長を遂げる中国経済の原動力は、実は政府も管理できない「闇のマネー」。誰も書けなかった世界初の告発レポート
あなたは「地下経済」という言葉から、何を連想しますか? ヤミ金融、ドラッグ、売春、暴力……。しかし、「中国」では、これらの範疇を大きく逸脱した、「広大な経済ネットワーク」が築き上げられています。その規模は、中国の正規のGDPの半分というのだから、もはや地下経済なくしては、中国の社会と経済は成り立ちません。世界第2位に躍り出る経済大国の実像に、斯界の第一人者が迫ります。






曹源寺評価★★★★★
大手マスコミが取り上げない、中国の裏経済に関する新書です。裏経済モノといえば、かつての「別冊宝島」が大好きでした。あれで経済ヤクザとか大規模な詐欺事件とか、裏側の経済活動を勉強させてもらいましたので、いまあれに代わるシリーズってあまりないのが残念です。いまの若いやつらに勉強していただくためには、うちの会社あたりがやった方が面白いかもしれません。
で、本書です。さすが富坂氏です。中国経済をこれほどまでに深く追求している人は経済学者にもいないだろうと思われます。実は、氏には一度お会いさせていただいたことがありまして、そのときは情報交換などと言いながら、こちらから提供させていただくようなことがほとんどなくて恐縮しきりでしたのを覚えています。あの時はすみませんでしたー!(と謝っておこう)
特筆すべきは「央企」と呼ばれる中央政府直轄の大型企業の存在でしょう。富坂氏は、彼らこそが本物の勝ち組であり、中国経済のけん引役であり、そのうえ貧富の差を拡大させる最大の要因でもあるという、一見すると矛盾するような存在なのだと指摘しています。そして、地下経済は「霜降り肉の脂身だけを取り除く」ことができないように、中国経済に根深く浸透しているという現実があると指摘します。読めば読むほど「知られざる中国」にただただ驚かされます。こういう骨太な新書にはどんどんお目にかかりたいものです。








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2010年09月13日

書評262 大門剛明「確信犯」

人生には3回の「モテ期」があるとのことですが、よくわかんないです。40歳過ぎて今さらモテ期もないでしょうが、じゃあ今まで3回あったかと聞かれると困ります。自分ではあまり自覚がないからです。高校までは硬派気取っていましたので、あまり異性を近づけませんでしたし、大学入ってから反動で軟派になりましたがあまりモテた記憶もないし。
じゃあ、これからモテ期到来か?モテる中年というのはあまり見かけたことないのですが、ウチのヨメなぞはその昔「すてきな部長さん」などといって渋い中年にのぼせていましたので、自分もああいう中年を目指せば良いのか?と思いますが、ムリですね。軽すぎる。舘ひろしにはなれんわね。じゃあ、高田純次でも目指すか。

内容(角川書店HPより)
自分が正しいと思えば、彼らは何でもやる。たとえ殺人でさえも―。
広島で起きた殺人事件。被告人は無罪を勝ち取った。だが何人かは知っていた。彼が真犯人であると。14年後、この事件を担当した裁判長が殺されたことから事態は動く。裁判員制度などの司法改革の是非を問う社会派推理。






曹源寺評価★★★★
「雪冤」「罪火」に続く大門氏の新作です。前2作品から連綿として続く、司法のあり方を問う内容とミステリがマッチした、大門氏ならではの作品に仕上がっています。司法ミステリといえば中島博行や小杉健治などが有名ですが、大門氏も3作目にしてかなりこなれてきたというか、設定にムダがなくなってきました。ストーリー展開にはまだムリとムダが見受けられますが、これは本筋とは若干関連しながらも氏の意見が随所に盛り込まれるという「書かずにはいられない」主張があるためと推察されます。たとえば、裁判員制度ばっかりマスコミに採り上げられるけれども、司法改革としては公判前整理手続とか新司法試験だとかその他もっといろいろ進んでいるのだけれども、マスコミは採り上げてくれないし一般国民も関心は薄いしで、みんなもっと真面目に聞け〜みたいな感じなのでしょうかねえ。
自分はこういう「堅いミステリ」=歴代乱歩賞受賞作のような、どこか専門的な分野を盛り込んでいるミステリは嫌いではありません。ですが、こうした個人的主張ばかりが目につくようになると、読者をいつの間にか置いてけぼりにする恐れがありますので注意が必要です。司法ミステリの作家先生には、べつに米国の法廷ミステリのようなものを期待しているわけではありませんが、サスペンスタッチの鋭い作品を期待することはあります。頑張って欲しいですね。








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2010年02月11日

書評223 大門剛明「罪火」

ようやく風邪も治り、日常生活に戻りました。ですが、そろそろ花粉症の季節が到来します。首都圏でも花粉が飛び始めたとの情報でしたので、ユーウツな気分ですな。
最近はアウトドアに目覚めつつあると以前書きましたが、さっそく、燻製作りにチャレンジしようかと思い、いま豚のばら肉を塩漬けにしている最中です。これを水で洗い流した後に、乾燥させて燻すわけですが、さて、どこでやろうかと。家の庭でやったら隣近所に迷惑でしょうか。かといって公園は火気が使えないし。BBQできる大きな公園まで行ってやろうかなあ。うーん、悩むねえ。


内容(角川書店HPより)
元派遣社員の男はなぜ、恩師の娘を殺めてしまったのか。人間の大罪と葛藤、そして戦慄の結末!社会派推理の超新星がその才能を遺憾なく発揮した空前の問題作!!







曹源寺評価★★★★★
「雪冤」で第29回横溝正史ミステリ大賞を受賞した大門氏の第2作目ということで、さっそく読んでみました。「雪冤」は結構評価が高かったので期待しましたが、ちょっと空回りだったかなあ?という印象です。本書はミステリではなく、完全にヒューマンドラマです。なぜなら、最初から犯人が分かっているからです。犯人・若宮忍の心の葛藤を描いた作品と言ったほうが良いでしょう。ただ、その若宮の心の動きもすごく上手く描けているかというとそうでもないです。その若宮に娘を殺された母親、町村理恵も描写が中途半端な感じがします。ですから、だれにも感情移入できないのです。
こういう内容の作品は、読者をいかに引き連れていくかということに腐心しないと絶対に途中でダレてきますね。謎解きがない分だけ、仕掛けが沢山必要になるということだと思います。
しかし、本書がつまらないかというと、全然そんなことはなくて、結構楽しめたのは事実であります。










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