ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:な行の作家

2017年03月10日

書評788 中山七里「セイレーンの懺悔」

こんにちは、曹源寺です。

森友学園に関するマスゴミ報道が止まらないですね。徹底的にあら捜しして安倍首相を引きずり降ろしたいというマスゴミの願望がよく分かります。安倍がダメならせめて森友だけでもという感じも露骨に見えますね。

煽り耐性のない理事長の狼狽振りはマスゴミの格好の餌食となっています。おそらく多くの人が「理事長は胡散臭いなぁ」と思っているでしょう。自分もそう思います。

ただ、マスゴミがやらかしてしまっている一番の問題点は、学園の教育内容に関する批判であります。これはダメでしょう。たとえば教育勅語の件ですが、戦後の衆参両議院でこれを放棄する宣言がなされたから絶対に復活させてはダメ!という論調の社説が新聞各紙から勢揃いで出されたりしています。

教育勅語肯定 稲田大臣の資質を問う(2017/3/10朝日新聞社説)
稲田防衛相に閣僚としての資質があるのか。重大な疑義を抱かざるを得ない発言である。
稲田氏は8日の参院予算委員会で、戦前の教育勅語について次のように語った。
「日本が道義国家を目指すというその精神は今も取り戻すべきだと考えている」
「教育勅語の精神である道義国家を目指すべきであること、そして親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持をしているところだ」
天皇を頂点とする国家をめざし、軍国主義教育の根拠となったのが教育勅語だ。明治天皇直々の言葉として発布され、国民は「臣民」とされた。
親孝行をし、夫婦仲良く。そんな徳目が並ぶが、その核心は「万一危急の大事が起こったならば、大儀に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為(ため)につくせ」(戦前の文部省訳)という点にある。
いざという時には天皇に命を捧げよ――。それこそが教育勅語の「核」にほかならない。
稲田氏のいう「道義国家」が何なのかは分からない。ただ、教育勅語を「全体として」(稲田氏)肯定する発言は、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という憲法の理念と相いれない。
教育勅語は終戦後の1948年、衆院で排除の、参院で失効確認の決議がされた。衆院決議は勅語の理念は「明らかに基本的人権を損ない、且(か)つ国際信義に対して疑点を残す」とした。
当時から、「いいことも書いてある」などとする擁護論もあった。これに対し、決議案の趣旨説明に立った議員は「勅語という枠の中にある以上、勅語そのものがもつ根本原理を、我々は認めることができない」と言い切っている。
当時の文相も「教育勅語は明治憲法を思想的背景としており、その基調において新憲法の精神に合致しないのは明らか」と本会議で答弁した。
こうした議論を踏まえることなく、勅語を称揚する姿勢は閣僚にふさわしいとは思えない。
まして稲田氏は自衛隊を指揮監督する立場の防衛相である。軍国主義の肯定につながる発言は国内外に疑念を招く。
安倍政権では、教育勅語を擁護する発言が続く。2014年に当時の下村博文・文科相は、勅語が示す徳目について「至極まっとう。今でも十分通用する」などと語った。
こうした主張は政権全体のものなのか。安倍首相は明確な説明をすべきだ。


アサヒだけでなく、信濃毎日新聞なども動揺の論調ですし、尾木直樹のような教育学者も批判的です。
教育勅語の12の徳目を抜粋しますと
12の徳目
1. 父母ニ孝ニ 
(親に孝養を尽くしましょう)
2. 兄弟ニ友ニ 
(兄弟・姉妹は仲良くしましょう)
3. 夫婦相和シ 
(夫婦は互いに分を守り仲睦まじくしましょう)
4. 朋友相信シ 
(友だちはお互いに信じ合いましょう)
5. 恭倹己レヲ持シ 
(自分の言動を慎みましょう)
6. 博愛衆ニ及ホシ 
(広く全ての人に慈愛の手を差し伸べましょう)
7. 学ヲ修メ業ヲ習ヒ 
(勉学に励み職業を身につけましょう)
8. 以テ智能ヲ啓発シ 
(知識を養い才能を伸ばしましょう)
9. 徳器ヲ成就シ 
(人格の向上に努めましょう)
10. 進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ 
(広く世の人々や社会のためになる仕事に励みましょう)
11. 常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ 
(法令を守り国の秩序に遵いましょう)
12. 一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ 
(国に危機が迫ったなら国のため力を尽くし、それにより永遠の皇国を支えましょう)


最後の「永遠の皇国」あたりはちょっとどうかなと思いますが、それ以外は普通に良いですね。むしろ、行き過ぎた個人主義を是正したい人たちからは大いに支持されそうです。
この12の徳目を現代語にして暗誦させる程度なら全く罪はないのではないかと思います。いわゆる「道徳」として必要なくらいではなかろうかと。
周りを見渡せば、特定の宗教によって設立された学校があちこちにあります。仏教もキリスト教も国内の新興宗教もみ〜んな学校を持っています。果たして、彼らの説いている教えの一言一句が教育基本法に則っているか否かを誰か検証でもしたのでしょうか。北の国の学校は一条校ではなく各種学校ですから別にどうでもいいですけど(その代わり補助金など出さなければ良い)、学校法人として設置されているすべての学校の、すべての根本教義を法律と照らし合わせているのかと問いたい。もしそうならば話は別ですが、そうでなければ教育勅語の現代語訳くらいどうってことはないんじゃないかと思います。

マスゴミがさらにやらかしてしまっている部分としては、戦前から戦中のすべての教育が悪とする風潮を醸成している点でしょう。言葉の内容ではなくその成り立ちを問題にしているんですね。これはアウトでしょう。ヒトラーの発言はすべて悪であるとするのは言葉狩りではないのかと(逆に、毛沢東やスターリンの発言をこれっぽっちも悪とはしていないのも逆の意味で怖いですね)。
「誰」のことばなのかによって優劣をつける、これこそ差別にほかなりません。もし学校で、クラスメートのA君がいじめを受けていて、そのA君が何か発言しようものならその内容は一切吟味されずに「Aがまた何か言ってら」と馬鹿にされたりしていたらどうでしょう。これと同じことをマスゴミはやらかしているわけです。

最も性質の悪いのは、教育内容をいっせいに批判することがイコールその教育を受けている子どもたちをも批判していることに、マスゴミ自身が気付いていないことではないかと思います。チミたちに子どもを批判する権利はないよ。

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内容(小学館HPより)
少女を「本当に殺した」のは誰なのか――?
葛飾区で発生した女子高生誘拐事件。不祥事によりBPOから度重なる勧告を受け、番組存続の危機にさらされた帝都テレビ「アフタヌーンJAPAN」の里谷太一と朝倉多香美は、起死回生のスクープを狙って奔走する。警察を尾行した多香美が廃工場で目撃したのは、暴行を受け、無惨にも顔を焼かれた被害者・東良綾香の遺体だった。
クラスメートへの取材から、綾香がいじめを受けていたという証言を得た多香美。主犯格と思われる少女は、6年前の小学生連続レイプ事件の犠牲者だった。
少女を本当に殺したのは、誰なのか――?
"どんでん返しの帝王"が現代社会に突きつける、慟哭のラスト16ページ!!


曹源寺評価★★★★★
中山センセーが今度はマスコミ報道に焦点を当てたミステリを出してこられました。帝都テレビの報道部に所属する朝倉多香美とその先輩社員の里谷太一は、東京・葛飾区で発生した女子高生の誘拐事件を追う。誘拐事件だから報道協定が結ばれていて、周辺取材も限定的にならざるを得ない状況にあるが、帰宅途中の生徒から情報を得て主犯格の可能性のある同級生を探り当てる。スクープを取って不祥事の雪辱を果たしたい報道部は、重要参考人として映像を公開するが、、、
なるほど、これは一気読みですわ。ストーリーはほぼ一貫して朝倉多香美の視点から書かれているので分かりやすいし、事件の構造もそれほど複雑ではないので焦点を絞りやすいですね。テレビは映像を映してなんぼの商売ですから、誤報などしようものならそのインパクトは強烈です。だから本当は慎重に慎重を重ねなければいけないはずなのに、こんな勇み足をしたら本来なら間違いなく停波です(でも停波されたためしがないですね)。
まあ、裏取りもしないで犯人と決め付けるような映像を流すなんぞ、現実のマスコミはここまでおバカではないと思いますが、最近のマスゴミは本当に裏取りしないで記事にしたりするものですから、

さもありなん、と思ってしまいそうです。

本作はミステリと言っても、真犯人は誰なのか?と気張って読んでもいけないのですが、中山センセーらしく最後にちょっとしたどんでんもありますので、作品のほうが読者をぐいぐい引っ張ってくれます。

それにしても、最近の中山センセーの著作は面白い。何が面白いかというと、センセーの世相感というか世の中の理不尽なところや憤慨しているところなどがその作品に反映されているなあというのが良くわかるからです。
「作家刑事毒島」では、書評ブロガーども(この私を含む)を徹底的にこき下ろし、嫌味な編集者も大御所と呼ばれる威張り腐った大先生も露骨にぶった切ってくれました。
本作でもマスコミのマスゴミたる所以を具体的な事例とともにぶち上げて、反省はしても謝罪はしない古臭い権威主義にまみれたハイエナ以下の存在として徹頭徹尾、批判をしています(最後はちょっとだけ持ち上げていますが)。
なによりすごいのは、あの朝日新聞が引き起こした天下の虚報「従軍慰安婦の吉田証言」を引き合いに出して、証言自体が捏造であったにもかかわらず、依然として検証も訂正も謝罪もないと小説の中でぶち上げてしまっていることです(正確に言うと、社長が謝罪していますが記事を書いた本人がまったく開き直っているという始末)。すげえ、

完全に喧嘩売ってんじゃん

今度はぜひ南京事件を引き合いに出していただいて、「騎士団長殺し」のなかで事実認定しちゃった村上春樹と真正面から斬り合ってほしいなあと思います。





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2017年02月24日

書評784 永瀬隼介「毟り合い」

こんにちは、曹源寺です。

大阪・豊中市に建設中の小学校を巡る土地取得(払い下げ)で、周辺の地価よりも格安で売却されていたなどの疑惑が浮上しています。

ある程度のまとまった土地が、時に癒着の代償として不透明な取引がなされることは戦後のどさくさの時代から多々あったように思いますが、21世紀になってからというとあまり聞かれません。本当は掘り起こせばかなりの不透明な取引があってもおかしくはないのかもしれないですね。
本来、こうした事件(と呼べるのかは分かりませんが)は警察というよりは検察、しかも東京地検特捜部というエリート集団がその解明に着手するのが慣わしだったように思うのですが、最近はとんと聞きませんね。
検察は2010年の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件によって信用を一気に失墜させた過去がありますが、いまだにこれを引きずっている印象がありますね。また、「特捜部不要論」も槍玉に上がっているようですね。花形部署なのに不要とまで言われるなんて、凋落も甚だしいですわ。
ちょうど週刊ダイヤモンドが2月25日号で「司法エリートの没落」と題して判事、検事、弁護士の苦境を特集しているので買ってみました。面白かったです。


司法の不祥事はさまざまな本が出ています(特に新書に多いですね)ので、そちらのほうが参考になると思いますが、本誌は変わりゆく時代の流れに司法のさまざまな制度がマッチしていないという「業界動向」を丹念に追っているのが特徴的です。特に働き方やキャリアアップなどについては業界内部の人でないと分からない、細かな点にも触れられています。5大弁護士事務所の生態みたいなものもあって、非常にユニークです。これから司法試験を受けようと考えている人には永久保存版かもしれません(かなりネガティブではありますが)。

若干話がそれました。
国有地の払い下げや、不透明な賃貸借契約みたいなものはもっともっと徹底的に追及してほしいなあと思います。おそらくはさまざまな分野に飛び火するのでしょうが、こういうものこそ調査報道がしっかりしているマスコミにやってほしいものです。民進党がここぞとばかりに追及しようとしていますが、なんというか、真実を明らかにしようとかではなくて、安倍首相を引き摺り下ろしたいだけのパフォーマンスにしか見えないんですよね。ブーメランで戻ってきそうですし。
え、朝日新聞も国有地の払い下げで恩恵を受けていたの?あぁ、そうですかぁ、、、ダメだこりゃ(いかりや長介風に)

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内容(講談社HPより)
日本犯罪史上、最高被害額の強奪事件発生! その計画、実行、逃亡、逮捕、判決までを克明に描く! 実際あった事件を基にした、文庫オリジナル書き下ろしクライムノベル。ずさんな管理の警備会社に眠るカネを狙った奴らがいた。襲撃して手にしたカネは、ワルたちも予想もしない大金。六億円――日本犯罪史上最高被害額を巡り、闇世界のワルたちが分け前にありつこうと群がる!


曹源寺評価★★★★
2011年5月に発生した「立川6億円強奪事件」をベースに書き下ろしたクライムノベルであります。国内の犯罪史上最高額の被害を受けたこの事件、昭和43年の3億円事件とは貨幣価値が違いますから本当は3億円事件のほうがすごいといえばすごいのですが、そこはまあ良いでしょう。この強奪事件を克明に描き出してクライムノベルにしたのが本書です。
主人公の小嶋秀之は元極道だが現在は埼玉県のすみっこで便利屋のような仕事の手伝いをしているだけの中年のおっさんであります。すごめばシロウトはちょっとびびるくらいの大きな体躯ですが、基本的には気の良いおっちゃんです。その小嶋は友人の日高などから金を奪えそうな杜撰な警備をしている警備会社(笑)があると聞かされます。金庫に眠る金が2億円はくだらないと聞かされた小嶋は友人らと共に計画を練りますが、自らは実行役を演じることなく、いわば「下請け」に仕事を回していくのでありました。
結局、下請けの下請け(つまり孫受け)が実行犯になるわけですが、こうなると実行犯との面識はなくなりますので、誰が金を持っていて誰がこれを分け与えるのか、分からなくなってきます。

これだけでもうぐちゃぐちゃです。

実際に奪った金も2億円ではなく6億円。実行犯の二人は防犯カメラにもばっちり映るし車の処分も杜撰だし、刑事たちに泳がされた実行犯らは芋づる式にそのつながりがばれてしまい、総勢23名が逮捕されるという大掛かりな捕り物になりました。
要するに、自分で強奪を実行しないヘタレだった連中が勢揃いしたというわけですね。そんでもって、この噂がブラックな人脈に触れてしまい、さまざまな連中から金を寄越せと脅されたり追われたりすることになるのですが、これも警察はすべてお見通しだったというオチまでついて最終的には関わった全員が逮捕されるという結末です。
この最高額を奪った事件にしては

あまりにもしょぼい実態に読んでいてあきれ返ること請け合いです。

こいつら本当にバカだな〜と。
ただ、ラストはなかなかに読ませるし、考えさせられる内容です。実際に6億円のうち、2億4,000万円は行方が分かっていますが、残る3億6,000万円はどうなったのか、あちこちにばら撒いているのが確認できていますが、それでも分かっていない金額が大きすぎるので、このあたりの謎に迫ったところも本書の大きな魅力のひとつではないかと思います。
永瀬センセーは元々ノンフィクションライターから出発されていますので、こうした実話ベースのお話には他の作家センセーより一日の長があります。センセーにはこのジャンル(つまり、アウトローが起こした事件のリアルなやつ)でもガンガン攻め込んでほしいなあと思います。





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2017年02月17日

書評782 長岡弘樹「白衣の嘘」

こんにちは、曹源寺です。

我が家は都内にあるので、この夏は東京都議会議員選挙が待ち構えています。
すでに立候補予定者は戸別訪問(選挙期間中はできませんので)を行って、地道に票を取り込んでいこうとしています。先日は我が家にも民○党の候補予定者がきましたよ。

国会と違って、自治体の長を選ぶ選挙や地方議会選挙は必ずしも自民党一色ではありません。場所によっては共産党の首長もいます。やはり、自分の生活にとってより身近な話題では「子育てに手厚い」とか「老人に優しい」とか「環境に優しい」といった、さまざまな殺し文句が票につながりやすいのでしょう。
本来ならば「道路を拡張して渋滞をなくしましょう」とか「老朽化したインフラを修理するのにこれだけかかるからよろしくね」とか「少子化で学校を統廃合せざるを得ないけどガマンしてね。その代わりここに老人養護施設造るから」といったような、よりリアルで予算執行に直結するような話のほうが重要なはずなのですが、なかなか耳障りが良くないのか、都議会レベルになるとこういう話をする候補者が極めて少ないですね。
「エコキャップ推進運動を強化しましょう」みたいな何の意味もない(むしろ害悪とさえ言える)お花畑な施政方針のほうが、「こいつ馬鹿か」と思ってしまうのは自分だけでしょうか。

我が家に来た民○党候補予定者は、前回落選していたみたいなのでリベンジを果たしたいのでしょう、かなり必死なようです。都議会は自民党もぐちゃぐちゃですし、民○党は国会からしてぐちゃぐちゃですからどうなることやら。夏が楽しみです。

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内容(KADOKAWA HPより)
短編名手が放つ、珠玉のミステリ六編!
もくじ
第1話 最後の良薬
第2話 涙の成分比
第3話 小医は病を治し
第4話 ステップバイステップ
第5話 彼岸の坂道
第6話 小さな約束


曹源寺評価★★★★

相変わらずKADOKAWAはホームページでの紹介が雑すぎですね笑

長岡センセーが短編の名手は確かで、ちょっとしたキーワードが伏線になっていて、ラストに必ず回収するという作業が行われますので読んで納得感がものすごいです。最近は何ともほろ苦くて切ないラストが多いですが、絶望ではなくてそこにはわずかな希望が見えているという作品が富に目立ちます。
本書はお得意の警察小説ではなく、医療現場がテーマのミステリとして短編6作品が収録されています。連作ではありませんが、第1話から第6話と表記されているように医療従事者のちょっとした「嘘」がテーマになっています。
個人的には第1話と第5話、そして第6話あたりが好きですが、いずれも長岡センセーらしい短編と言えるのではないかと思います。





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2017年01月13日

書評773 鳴海章「悪玉」

こんにちは、曹源寺です。

サンデー毎日のコラムが胸糞悪かったので晒すことにします。
「日本スゴイ」なんて自己陶酔する「この国」はアホの限界(サンデー毎日2017年1月22日号)
牧太郎の青い空白い雲 603
 新年、柄にもなく神仏に「国家の安寧」を祈った。おのれの健康より、国家が大事!なんて思ったのは初めてのことだ。
 昨年6月、国民投票でイギリスのEU離脱が決まった。11月のアメリカ大統領選はトランプ氏が予想を覆し勝利した。グローバル経済の下で「困難な立場」に追いやられた人々が、「既存の価値観」に異議を申し立て"思わぬ結果"を招いた。
 とはいっても、グローバル化の波は避けられない。これも時代の流れだ。その結果、あちこちで保護主義(=愛国第一主義)派と市場開放派の「戦い」が始まる。「価値観分断の時代」の到来である。
 せめて日本国だけでも「限られた人間の限られた幸せ」ではなく、誰もがイライラすることなく、精神が安定する日々を過ごせるように! そう祈った。
 電通の女性社員が長時間労働などに耐えられず自殺、イライラが高じて佐川急便の社員が配達の荷物を地面に叩(たた)きつけたりするようなことがないように!神仏に頼んだ。ともかく、日本は「アホの限界」に瀕(ひん)している。
 長いことアメリカに「属国扱い」されているのに、今さら歴史的真珠湾訪問!と大々的に喧伝(けんでん)し、「仲直り」を演出する安倍さん。はっきり言わせてもらえば「アホの限界」である。大多数の国民がイライラしているのに、安倍さんはコレに気づかない。批判精神旺盛なはずのメディアは「アホの限界」に知らん顔。神仏に頼るしかない。不安な新年である。
    ×  ×  ×
 今年も「安倍晋三首相」でいいのか?
 昨年5月16日の国会審議。安倍さんは「議会の運営について、少し勉強していただいたほうがいい。議会については、私は立法府の長」と答弁した。念のため、立法府の長は(形式的ではあるが)、衆参両院議長である。安倍さんは小学生でも知っていることすら知らない。無知だ。「言い間違えだ」と彼に味方する人もいるが、翌日も「立法府の長」と言い続けた。誰かが教えてやらないと、裸の王様は「無知」に気づかない。
 安倍さんは「下品」でもある。その12日後の国会で「早く質問しろよ!」。ヤクザのようだった。
 安倍さんは「嘘(うそ)つき」だ。
 これは数え切れない。その代表格が「フクシマについてお案じの向きには、私から保証をいたします。状況は統御されています」。例の五輪招致プレゼンテーションでの発言。これは真っ赤な嘘だ!と世界は知っている。
「デフレではないという状況を作りだすことはできたが、デフレ脱却というところまではきていないのも事実」と言い続ける。何を言いたいのか、さっぱりわからない。要するに、真っ赤な嘘の連続。地獄の閻魔(えんま)様もビックリだ。
「思い上がり」でもある。「(憲法解釈の)最高責任者は内閣法制局長官ではなく私だ」と言い放つ。
 それでも「安倍首相」を権力の座から引きずり降ろそうとしないのは、悪知恵に長(た)ける「限られた人々」が、「利用価値」を知っているからだ。首相をおだてれば「利権」を独り占めすることができる。この構図は、大統領スキャンダルで瀕死の韓国と同じではないのか?
    ×  ×  ×
 年末年始、テレビ各局は「日本スゴイ」特集を流した。
 12月29日の「世界!ニッポン行きたい人応援団」(テレビ東京)は3時間も、外国人が「日本大好き!」と称賛する番組だった。1月3日は日本の良さを再確認する「和風総本家」(テレビ大阪)......日本って、伝統文化もハイテクも全部スゴイ!を連発する。年末年始、テレビは日本礼賛のオンパレードだった。書店にも「日本スゴイ」本が並ぶ。『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社)といった調子である。
 誰かが「日本スゴイ」ブームを作っているのか。 安倍さんの「アホ支配」を続けようとする向きが、カネを使って「世論操作」をしているのではあるまいか?
(少数派だ!と思いたいが)アホな日本人が「日本スゴイ」ブームに自己陶酔している。
    ×  ×  ×
 戦時下の自己陶酔に似ている。
 満州事変をキッカケに、国際社会から孤立した日本は天皇中心の国家統治を前面に打ち出し「神の国、日本はスゴイ」を喧伝した。日本民族は優秀だ!と信じた日本人はやがて破局を迎えた。
 あの時と同じではないか?
 2017年、日本は「スゴイ」どころか、「アホの限界」を迎えているのに。
 あえて言う。今年も「安倍首相」でいいのか?


日本を貶めることが仕事になっている変態毎日新聞にとっては、日本を持ち上げられることがなにより腹の立つことのようです。

テレビはほとんど観ませんが、和風総本家(テレビ東京)のような番組が伝統的な日本の産業を特集していることは知っています。伝統的な文化に学ぶべきことは多いでしょうし、子どもにもみせたいですね。そこには日本アゲのような意識はあまりなくて、それでも京都の竹細工や金沢の漆細工などが見れば「スゲエ」と唸ってしまう技がそこにありますね。職人や伝統芸を大事にする風土、こればかりは完全に土着の文化・風土であって、誰がいちゃもんをつけようが日本には根付いているわけであります。
そうです、日本にはまだまだ残すべき伝統的な産業がいっぱいあるはずです。日本酒の杜氏や箱根の寄木細工、秋田の曲げわっぱ、刀工による日本刀、などなど。文部科学省はこうした産業を承継するべく職人を養成するための人材確保に力を入れるべきでしょう。大学進学率を上げて天下り先を確保するだけが仕事ではないはずです。

話がそれましたが、日本の価値を見直す動きを「アホ支配」と言って切り捨てている牧太郎は、このコラムで和風総本家などの視聴者を馬鹿にしていることが明らかになりましたので、いずれ反発を食らうことになるのは間違いないでしょう。
視聴者だけではないな、テレ東・日経グループはこれ怒っていい案件ですね。

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内容(KADOKAWA HPより)
正義は、そこにあるか。鳴海章の圧倒的な筆致で描く長篇警察小説
お前は、警官の背中に何を見る──。
住田航は温海警察署の刑事課の組織暴力担当の刑事。署のある静岡県温海市は観光地で近年、準暴力団の特殊詐欺グループの進出が噂されている。そこに県警本部から住田の相勤者として國貞智宏が異動してきた。國貞は本部の対暴力団のエースであり、その容姿は県警の警官募集のポスターに採用されるほど。なぜ國貞の相方に住田が選ばれたのか。國貞にはなにか密命があるのか。謎の多い國貞に不審を抱きながらも、彼の情報を元に老人介護施設を隠れ蓑にして運営されているとう闇カジノの捜査に乗り出すが……。


曹源寺評価★★★★★
鳴海章センセーなんて、いったい何年ぶりだろう。もしかしたら乱歩賞受賞作の「ナイト・ダンサー」以来かもしれないほどご無沙汰してしまいました。鳴海センセーは航空サスペンス系というイメージが強くて、あまり馴染みのない感じでしたが、意外と警察小説なども書いていました。
本書は静岡県熱海市ならぬ温海市という町を舞台にした警察小説です。古くからの温泉街であるが、東京からの近さが仇となって寂れてきた街、温海市。架空の街とはいえ、もろにまんま熱海市です。温海市はカジノ導入で復活を目論むが一方で利権争いも生まれ、非合法組織が暗躍するようになり、一触即発の状況です。そこに特命を受けて捜査に乗り込んだマル暴のエース國貞と所轄の若手である住田がコンビを組み、謎の多い殺人事件に挑みます。
と、ここまでは良いですね。なんだか普通の警察小説です。
しかし、200ページを過ぎた辺りから様相は大きく変わっていきます。
悪の組織はとんでもない奴を飼っていました。ここから一気に猟奇殺人、しかも相当にグロい話になっていくのです。最初のややハードボイルドな展開は何だったのか。あの誉田哲也センセーでさえもここまで唐突にはやらかしませんわ。

予告なしのグロは身体に悪いです。

前半にグロ色が微塵もないところから中盤で急に登場、というサプライズ。心の準備ができていないところにエグイ描写。鳴海センセー勘弁してください。
本書は別にグロである必要はないのでは、と思うのですが、果たしてどうでしょうか。
このグロい部分を除けば、ラストにかけてのヒリヒリしたギャンブル場面、アクションシーン、その後のドロっとした結末まで、一気に読ませてくれます。なぜ?の部分がそれなりにありますが、余韻の残るラストと言って良いでしょう。それだけにグロ場面が不要に思えるのです。





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2016年11月25日

書評761 中山七里「作家刑事毒島」

こんにちは、曹源寺です。

米国次期大統領トランプ氏はビデオメッセージで明確にTPP不参加を表明しました。
日本としては米国抜きのTPPに用はないとして、翻意に注力するようですが、TPP反対が公約の一つであったトランプ氏がこれをひっくり返すことはないだろうと見ています。
個人的にはISD条項などがネックになるのでTPPには懐疑的なのですが、米国のいないTPPに対して政府自民党が今後どういう理屈で旗を振っていくのかが楽しみです。

そんななかで、バターの流通量をめぐるホクレン幹部のテレビ番組での発言が波紋を呼んでいました。
バター不足は仕組まれたものだった? 「ガイアの夜明け」放送内容にホクレンが反論「誤解を与える内容」(11/25ねとらぼ)
11月22日に放送されたドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」において、ホクレン関係者が「バターが『なくなるぞ』となったら消費者はとりあえず買う」と笑顔で語り、「バター不足はホクレンのせいだった!?」とネットで炎上中です。ホクレンは編集部の電話取材に対し「放送された内容は意図したものではなく、そもそもインタビューがバター特集用のものであるとも聞いていなかった」と、番組に対する不満を明らかにしました。
話題となっているのは「日経スペシャル ガイアの夜明け 巨大"規制"に挑む!〜明かされる『バター不足』の闇〜」内における、ホクレン農業協同組合連合会の酪農部部長による発言。ホクレンは酪農家と乳業メーカーの仲介を担う指定団体で、国内で流通するバターのほとんどを仲介しています。
番組ではまず、ホクレン職員が酪農家との意見交換会で「山のようにバターがあったら消費者は買わない。どんどんなくなっていくと『またバター不足が起こるのでは』と買い増し行為が出る」と発言したことを紹介。これに対しナレーションで「消費者の買い増しを誘っているかのように聞こえる」とした上で、意見交換会に出席していた同団体の酪農部部長にインタビューを行いました。
同部長は「消費者の心理としては、たくさんあったら焦って買わないですよね。ところが『なくなるぞ』となったら、いるのかいらないのかよく分からないけどとりあえず買っちゃいます」「そういう消費者心理ってありますよね。わかります?」と朗らかな笑顔で発言。品薄を演出して購買欲を煽ろうとするかのような発言に、ネット上では「バター不足はホクレンのせいだったのか」「ホクレンの自爆劇」と炎上しました。
ただし同部長はその後「バターは品薄くらいがちょうどいい?」という念押しの質問に対し、「安定供給が大事だと思うので、そういうことではないと思う」とも発言しており、視聴者からは番組構成の恣意性を指摘する声も上がっていました。また、Twitter上ではホクレン関係者と思しき人物による「当初制作会社からの取材依頼内容はバター不足ではなかった」「休憩なしで3時間に及ぶ尋問のような取材だった」とする発言も見られました(当該アカウントは現在鍵付きとなっています)。
編集部が一連の映像と発言についてホクレンの広報に問い合わせると、担当者は「放送されたものは意図した内容ではなく、誤解を与える番組と認識している。そもそも “バター特集”用のインタビューとも聞いていなかった」「ホクレンでは酪農家から預かったものを乳業メーカーと話し合うだけなので、仕組み的に生産量の調整はできない」と回答。番組に対する今後の対応を「検討中」であるとしました。なお、Twitter上の関係者のものと思しきツイートに関しては把握しておらず、対応については検討するとしています。


ホクレンがいくら言い訳しようとも、酪農部長の発言の内容は何かを切り取っただけのものではないでしょう。それに、現実問題として牛乳やチーズが豊富に流通しているのにバターだけが品薄だという事実は覆い隠せるものではありません。輸入バターには高い関税をかけているのもみんな知っています。ホクレンが生産者と組んで品薄状態に仕向けているのではないかと疑われる客観的な事実は積みあがっているわけです。安定供給が聞いてあきれます。

こういうニュースが飛び交うとTPP推進派や新自由主義者たちが息を吹き返すことになるわけですよ。特に日本人は食いもんの恨みは末代まで続きますからおそらくこのネタもあと10年くらいは言われると思います。
過去にも国内産業を守ろうとして、それが過度な規制とか既得権益の保護とかに走ると余計に外圧がかかるようになるという経緯が、かつてコメとか肉とか半導体とかの業界で見られた光景でありますが、酪農業界はもうちょっと歴史に学ぶべきだと思います。

それに、乳製品全般に言えることだと思いますが、欧米の乳製品に比べて日本のそれが品質的に劣っているとは思っていません。ただ、エシレバターのように特色ある差別化商品はあまりお見かけしないですね(カルピス社のバターは一度食べましたがおいしかったです)。
日本のバターが特色薄いのは、産業を保護しすぎると競争力が働かなくなるという典型的な事例ではないかと思います。ウイスキーは近代からの先人のたゆまぬ努力によって世界的にも認められるようになりました。乳製品だってやればできるはずです。

そういう意味では、競争力を強化するためには関税で保護しないほうが良い、という理論はごもっともなんですよね。この点に関しては認めざるを得ません。でもTPPは別です。TPPじゃなくてFTAでやれば良いと思います。

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内容(幻冬舎HPより)
この男、 前代未聞のトンデモ作家か。 はたまた推理冴え渡る名刑事か! ? 中山史上最毒・出版業界激震必至の本格ミステリ! 殺人事件解決のアドバイスを仰ごうと神保町の書斎を訪れた刑事・明日香を迎えたのは、流行作家の毒島。虫も殺さぬような温和な笑顔の持ち主は、性格の歪んだ皮肉屋だった。捜査過程で浮かび上がってきたのは、巨匠病にかかった新人作家、手段を選ばずヒット作を連発する編集者、ストーカーまがいの熱狂的な読者。ついには毒島本人が容疑者に! ? 新・爆笑小説!


曹源寺評価★★★★★
中山センセーのシリーズもののひとつに「刑事犬養隼人シリーズ」があります。「切り裂きジャックの告白」「ハーメルンの誘拐魔」などがありまして、地味ですが武骨な刑事として人気です。
本書にも犬養刑事が登場しますが、シリアスな刑事モノではありません。読み始めて「お、犬養シリーズのスピンオフかな」と思いましたが、違いますねこれは。主役はタイトルにある毒島真理。刑事にして作家、いや作家にして刑事。

久しぶりにぶっ飛んだキャラクターに出会えました。

名前の通り毒舌を吐きまくり、笑顔で相手を罵倒する。理屈で黙らせてから止めを刺し、相手を完膚なきまでに叩きのめす。。セリフの最後にいつも「うふ、うふふふふ」って書いてあるのがとても地味に刺さってきます。リアルにいたら怖いです。ましてや上司だったりしたら逃げ出したくなります。表紙絵のイメージがとても毒島です。中山センセーもこういう感じですが、本人は毒島とは違う!と名言されています(けど近いものがあるのではないかと思っています)。
連作短編の体裁で5作品が収録されています。いずれのストーリーも出版関係者が殺されていきますが、それを毒島が推理し、容疑者の中からずばり犯人を当てるという解決スタイルになっています。
死んでいくのは明日の作家を目指す新人をボロクソにけなす編集者、新人作家に容赦ないダメ出しをする大御所の重鎮作家、原作の影も形もとどめないほど改変してまったく悪びれることもないテレビプロデューサー、といった一般社会とは隔絶された「業界」の悪習に毒された面々。一方の容疑者も、自分に才能があると信じて疑わないだけでなく、自分が落選するのは自分の才能を認めない審査員側に問題があるとまで言い切る自己中心的人物だったり、新人賞を受賞したことで天狗になりあれやこれやといちゃもんをつけ増長を繰り返す(巨匠病というらしい)ヘタレ作家だったりと、業界に巣食う魑魅魍魎どもが目白押しです。業界に片足突っ込んでいる自分が言うのもなんですが、

出版業界ってなんだかとんでもない人種の集まりですなぁ。

出版業界では当たり前のことが、普通の企業だったらありえないでしょう!という慣習、常識、行動、モラルを、毒島が毒舌とともに論破していく様はなるほど目から鱗な気分にさせてくれると同時に、あぁやっぱり出版業界はクソだわ。。。と思わせてくれるわけでありまして、毒舌も度を過ぎれば毒以上に爆弾だわこれというやるせなさをも味わわせてくれます。
自分のような書評ブロガーについても毒島は毒を吐きまくります。図書館で借りた本のレビューなどで作品を批評しているやつらは「図書館ヤクザ」と言い切り、ネタバレしないと感想がかけない奴は小学生以下!と断じています。容赦ないわぁ〜
あ、でもこれはまさしく自分のことですわ。

そうか〜自分は図書館ヤクザだったのか〜笑

自分も読本の半分以上は図書館です。そもそも図書館でバンバン借りるようになったのは、毎日夜寝るためだけに自宅に帰っているのに住民税が毎月ン万円も取られているのが納得いかなかったからです。単行本を毎日1冊買って読める金額ですよ、ちょっとくらい住民サービスとして還元してもらってもいいでしょ!という気分ですので、何と言われようとこのスタイルを止めるつもりはありません笑
それにしても、同業者のみならず、編集者や別の媒体関係者、さらには読者まで巻き込んで全方位に毒舌を吐きまくった中山センセーは大丈夫なんでしょうか。まあ、自分はこれからも図書ヤクザを続けていきますが。
本書はつまるところ、犯人当てよりも業界の非常識な奴らを切り捨てる毒舌を楽しむものでありました。特に作家志望者と書評ブロガーは必読かもしれませんな。





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2016年11月11日

書評758 楡周平「ドッグファイト」

こんにちは、曹源寺です。

第45代の米国大統領にドナルド・トランプ氏が決定しました。テレビを観ない自分は良く知りませんでしたが、国内民放だけでなく、米国のテレビ局もこぞってヒラリー支持、トランプネガキャンだったそうですね。「トランプが大統領になってアメリカは大丈夫かしら」などとほざいている人が周囲にも多くいますが、それが「政治シロウトだから」という理由ならまだしも「過激な発言が多いから」という理由で言っているなら、それは間違いでしょう。米国大統領には拒否権なる巨大な権力があるのは事実ですが、過激な発言のすべてを政策にできるほど米国は甘い国ではありません。むしろシロウトだからこそ官僚の操り人形になりはしないかという方を気にすべきでしょう。日本でいうところの都知事みたいなもので、青島幸男がなんにもしない知事だったけど都政は普通に動きましたからね。ただ、外交だけは簡単ではないと思いますが。

それと、「トランプが大統領になって日本はどうなってしまうのか」とぬかしている人も多くいますが、これもまた変な話です。日本は米国の属国ではありません。まあ、その昔「年次改革要望書」なる対日要求の書面が発覚したことがありましたが、それはさておき、こうしたネガティブで対米追従のような発言をする人は大抵、外交のことを知らなさすぎですね。
たとえばTPPは締結されなくなる可能性が高まったのは事実ですが、だからといって相手のことを忖度して決議をしないなどというのは逆に対米追従以外の何者でもないのですが、民進党はその辺をきちんと理解していませんね。外交とは「相手がどういう出方をしても対処できるようにしておく」のが基本だと思います。日本は日本としての国益を追求していけば良いだけの話です。まあ、個人的にはTPP反対ですが。
とにもかくにも、相手がどうあれ日本のことは日本で決めましょう。

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内容(KADOKAWA HPより)
運輸界最大手企業と世界的通販会社。物流の覇権を巡る戦いが火花を散らす!
物流の雄、コンゴウ陸送経営企画部の郡司は、入社18年目にして営業部へ異動した。担当となったネット通販大手スイフトの合理的すぎる企業姿勢に反抗心を抱いた郡司は、新企画を立ち上げ打倒スイフトへと動き出す。


曹源寺評価★★★★
楡センセーの新作はまたしても物流業界ネタでありましたが、「再生巨流」や「ラストワンマイル」などで問題提起された業界の問題を掘り起こす姿勢が大好きで、いつも興味深く読ませてもらっています。
本書はコンゴウ陸送の経営企画部課長、郡司清隆を主人公にして、巨大な外資系ネット通販会社であるスイフト・ジャパンに立ち向かうというストーリーです。
読み始めればすぐに分かりますが、コンゴウ陸送=ヤマト運輸、スイフト・ジャパン=アマゾン・ジャパンのオマージュです。超巨大なネット通販企業に成長したスイフトは、本一冊から配送料無料などというとんでもないビジネスモデルで国内の通販市場を一気に拡大させます。
しかし、そのしわ寄せは運送会社に集中、売り上げが拡大しても損益はトントンなしは赤字という状況が続きます。それだけではなく、運送会社は取扱量が減ると倉庫やトラックなどの設備が遊ぶことになりますので、経営効率が一気に落ち込むことになります。このため、いくら収益率が低くても大手の荷主から取引が切られることを極端に恐れるようになっていくわけです。逆に荷主は成長を担保にして支払い条件を有利に進めようとするのですから運送会社にとってはたまりません。こうして国内の運送会社はどんどん疲弊してきてしまったという経緯があるわけで、運送会社とは縁のない人でも業界の





こうした問題点は認識しておく必要がある

のではないかと痛切に感じるわけです。
郡司は経営企画部から営業部へ異動となり、そこでスイフトの営業担当となります。スイフトのえげつないやり方に辟易としながら、コンゴウがスイフトの奴隷にならないための打開策を講じていきます。
スイフトの執行役員である堀江がかなりのヒールとして描かれていまして、ドメスティックな産業の代表格である陸送業界と、グローバル企業の代表格である外資系ネット通販会社という対比が際立っているのも本書の特徴でありましょう。
楡センセーの近年の作品群にはひとつの大きな特徴があります。それは「人口が減少し、対老齢人口比が上昇している日本において、企業が生き残るためには、あるいは日本社会そのものが成長を続けていくためには何が必要なのか」という命題に対して、センセーなりの答えを出しているという点です。
「再生巨流」では衰退した「町の家電屋さん」の復興プランを、「プラチナタウン」では地方の活性化と高齢化社会のあり方を、「ラストワンマイル」は本書と同じくネット通販会社と運輸会社の攻防を描いています。極めてリアルな近未来、それも5年後あるいは10年後という未来の社会のあり方を、独自のアイデアを披露しながら問うているのであります。だからこそ引き寄せられる内容です。
本書は物流業界に詳しく、かつ外資系企業の勤務経験もある楡センセーだからこそ書けた作品でしょう。少なくとも業界関係者は読むべきですね。

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2016年11月08日

書評757 日本推理作家協会編「奇想博物館」

こんにちは、曹源寺です。

いよいよ米国の大統領選挙、本チャンが近づいてまいりました。
ヒラリーとトランプ、どっちが大統領になっても今世紀最悪の大統領になるのではないかという推測がまことしやかに流れておりますが、個人的には本当にどっちも応援したくないなあ。
ヒラリーはFBIからの訴追を免れましたが、この事件の本筋は「ヒラリーはIS(イスラム国)を支援している」という容疑だったわけで、情報を日本のマスゴミはこのことを正確に伝えていません。米国のマスコミもヒラリー擁護に動いていますので、それがかえって米国の知的富裕層あたりに反感を買っているようです。
トランプはトランプでアジア情勢を理解していませんので、トンチンカンな発言も多いですし、政策が見えてこないですから彼が大統領になったときは何が起こるか分からない怖さがありますね。

米国では予備選などの投票日が火曜日に行われるという習慣があります。いわゆる「スーパーチューズデー」です。なぜ日曜日に行わないのか?と思って調べてみたら、「週末の選挙は労働者の休む権利を奪う」という感覚だそうですね。そう考えると日本の選挙のほうがクソだわ。
詳細は「平日投票」でWikiってくだされ。

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内容(光文社HPより)
ミステリーの世界は日々進化しています。
あなたの中のミステリーのイメージは?
警察捜査? ツンデレ探偵? 天才科学者? イヤミス?
もちろんミステリーはその全部であり、それ以外でもあります。
どうぞこの本を手に取って、第一線の作家が工夫を凝らした、
まだあなたが知らないミステリーの面白さを見つけてください!
日本推理作家協会理事 恩田陸

目次
編纂序文   西上心太
伊坂幸太郎 小さな兵隊
石持浅海   玩具店の英雄
乾ルカ    漆黒
大沢在昌   区立花園公園
北村薫    黒い手帳
今野敏    常習犯
坂木司    国会図書館のボルト
朱川湊人   遠い夏の記憶
長岡弘樹   親子ごっこ
深水黎一郎 シンリガクの実験
誉田哲也   初仕事はゴムの味
道尾秀介   暗がりの子供
湊かなえ   長井優介へ
宮部みゆき  野槌の墓
森村誠一   ただ一人の幻影


曹源寺評価★★★★
11月も書店には読みたい本がどんどん出てきていますが、買うか借りるか迷っているうちに手許に読む本がなくなってしまいました。
今月は飲み会が多いので書籍代をケチらないといけないのに、こういうときに限って大好きな作家センセーの新刊が出たりするんですよ。
そんなこんなでとりあえず未読の本を捜しに図書館へ。本書は大御所センセーの短編が並ぶアンソロジーです。本書の刊行は2013年12月で、本書に収録されている短編はいずれも文芸誌にて発表済みの作品であるうえに、2010年〜2012年あたりの発表作品が中心となっていますので、本書のみならず著者自身による短編集にも収録済みのものがあったりします。

なんか読んだことあるな、これ

という既視感がところどころにありましたが、短編って意外と結末を覚えていなかったりするので、もう一度楽しめたと思うことにします。
個人的にはバッドエンド的な作品に魅かれたりもしますが、ここはやはり伊坂幸太郎、大沢在昌あたりが安定していますね。
「小さな兵隊」のみならず、「親子ごっこ」「暗がりの子供」などお子さまが登場する作品が目につきますが、だからといってお子さまが読んで良い作品かというとちょっと違うような、ビミョーな作品が多いというのも特徴かと思います。
ふだんあまり手に取ることのないセンセーの作品も、こうした本を取っ掛かりにすることで嵌ったりすることはありますね。出会いが増えるというのは本当にありがたいことです。





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2016年09月13日

書評742 長岡弘樹「教場2」

こんにちは、曹源寺です。

R4の二重国籍疑惑は本人が台湾籍を認めたことで幕引きが図られそうな勢いになりましたが、過去の本人の発言を洗う限りにおいては、記憶違いとか勘違いでは済まされないレベルで発言が矛盾しておりますので、どう考えてもこいつは嘘つきだと断言できるレベルです。
・生まれた時から日本人でした。
・18歳で日本国籍を取得しました。
・19歳で帰化しました。
・私は帰化してません。
・1985年台湾籍から帰化(HP記載現在削除)
・30歳の時に台湾国籍でした。
・台湾の国籍はありません。
・台湾の国籍が確認できません。
・台湾の除籍届を今週出しました。
・17歳で台湾の除籍届を出しました。
・台湾の除籍届は父と一緒に提出しました。
・父は台湾国籍のままです。
・在日の中国国籍の者として
・二重国籍だったけど何か?←new!


酷いわー。もしかしたら本当にスパイなんじゃないかと思うレベルですわこれ。

で、ちょうど民進党の党首選というのが始まるわけですが、前ナントカさんとR4と玉木雄一郎が立候補しています。民進党のホームページには立候補演説の内容がテキストでまとめられていたりもします。

この中の玉木候補なんですが、ネット民には有名ですね。いろんな調査チームを作って疑惑を追及しようとする姿勢を見せて、結局何もしていないという御仁です。テレビ朝日が玉木候補のコメントを映像で流していたのですが、その一節に「いくら正しい政策を掲げても選挙で勝てなければ何の意味もない。何が何でも選挙で勝てるようにしていく」という決意表明があったように記憶しています。しかし、演説内容のテキストにはこのことが書かれていないんですよね。おかしいなあと思っていたら、板橋区議会の中妻じょうた議員が自身のブログでこう書き記してくれていました。

玉木雄一郎さんのお話と質疑応答は多岐にわたりましたが、私が印象に残ったのは、玉木さんが「誤解を恐れず言うならば、選挙第一主義で行く。一人でも多くの議員を当選させることに全力を尽くす」と言い切ったことです。

つまり、理念とか政策なんてそっちのけでいいから、選挙対策だけやろうぜ!と言っているみたいですね。

玉木議員はどうも何か勘違いされているようであります。民進党が支持されなくなったのは、その政策があまりにも酷くて自民党以下のばら撒きと経済無策だったことが本質にあるはずなのですが、その反省はまったくなくて、ここへきてまたイメージ戦略だけに頼ろうとしているわけです。
本当にダメだこりゃ。都議会自民党がどうしようもない利権の固まりであることが暴露されて、さあ野党の出番だねと思っていたらこれですよ。こうした言葉の端々に本音が透けて見えるので、我々は本当に気をつけなければなりません。

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内容(小学館HPより)
大ヒット警察学校小説、待望の続編!
●第一話 創傷(そうしょう)
初任科第百期短期課程の桐沢篤は、風間教場に編入された不運を呪っていた。医師から警察官に転職した桐沢は、ゴールデンウイーク明けに最初の洗礼を受ける。
●第二話 心眼
風間教場では、備品の盗難が相次いでいた。盗まれたのは、PCのマウス、ファーストミット、マレット(木琴を叩く枹)。単独では使い道のないものばかりだ。
●第三話 罰則
津木田卓は、プールでの救助訓練が嫌でたまらなかった。教官の貞方は屈強な体格のスパルタ教師で、特に潜水の練習はきつい。本気で殺されると思ってしまうほどだ。
●第四話 敬慕
菱沼羽津希は、自分のことを初任科第百期短期課程のなかでも特別な存在だと思っている。広告塔として白羽の矢が立つのは、容姿に秀でている自分なのだ。
●第五話 机上
仁志川鴻は、将来の配属先として刑事課強行犯係を強く希望している。元刑事だという教官の風間には、殺人捜査の模擬実習を提案しているところだ。
●第六話 奉職
警察学校時代の成績は、昇進や昇級、人事異動等ことあるごとに参照される。美浦亮真は、同期で親友の桐沢篤が総代候補と目されるなか、大きな試練に直面していた。


曹源寺評価★★★★
異色の警察小説として衝撃的な話題を呼んだ前作「教場」の続編です。確かに衝撃的でしたよ前作は。警察学校の内部を小説で詳らかにした作品がなかったという点、それに加えて風間教官というすべてお見通しのキャラクター、容赦なく脱落させられていく「生徒」、等々。エグイ展開が多かった割りにはなぜか納得感が残ったストーリーで、警察官になるということはこういうことなんだねぇ、警察官になるべき人間ではないとこうなっちまうんだねぇ、としみじみ感じ入ったことを思い出しました。
本書もまた、風間教官のシビアな対応とその裏に見える暖かさを感じてグッときました。新米警察官という立場を通じて語られるドロドロの人間関係と、壁を乗り越えたところに見える新たな地平がとても青春物語であるところと、他の警察小説に通じる警察官としての矜持の醸成場面が渾然一体となって読者にお巡りさんたるものの何かをぶつけてきてくれます。ですから、

世の制服警官を見る目が絶対に変わる

のではないかと思うのです。実際、自分は少し変わりました。大変な思いをしてやっとこさ交番勤務になったとしても、それはそれで本当にご苦労なことでございます。まあ、警察小説ファンは制服警官であろうと私服刑事であろうと警察に奉職されているすべての人をそれなりにリスペクトしているわけではありますが、なにかあったら労いの一言でもかけてあげようという気になりますね。





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2016年08月16日

書評735 長岡弘樹「赤い刻印」

こんにちは、曹源寺です。

五輪も活況でメダルラッシュが続いておりますが、何と言っても日本テニスで96年ぶりにメダル獲得というのはBIGなニュースでした。錦織圭選手、本当におめでとうございます!

前半戦ではやはり水泳、柔道、体操あたりは五輪ならではの白熱した戦いが観られて感動の嵐ですが、個人的には卓球がすげえ!と思ってしまいましたよ。

特に男子。
あれは人間のラリーではないですね。

テニスでは一流プロのサービスの速度が時速200キロ超で、あれをリターンするのは確かに人間の範囲を超えていると思いますが、あの卓球の打ち合いもまた人間の範囲を超えています。あのラリーは観る人を魅了しますね。そのうち、NHK特集がテニスで錦織選手の戦法の変化を科学的に分析してくれたように、卓球の反応速度とかを科学的に計測してくれるのではないかと期待しています。


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内容(双葉社HPより)
著者を短編ミステリーの名手として知らしめた大ヒット作『傍聞き』。その表題作の主人公、シングルマザー刑事と娘が再び登場! 長年、刑事の母親の元に届く差出人不明の御守りが導いた、ある真実とは?(「赤い刻印」)長岡ミステリー史上、最も巧緻な伏線と仕掛け。そして、最も深い人生の哀歓――。出色の完成度を誇る短編集。


曹源寺評価★★★★★
短編ミステリの名手とまで言われるようになりました長岡センセーの、近年の作品をまとめた短編集が2016年5月に刊行となりました。
タイトルの「赤い刻印」は出世作となった「傍聞き」で登場した羽角啓子・菜月親娘が再び登場します。と言われても、

「傍聞き」が古すぎて思い出せませんわ。

長岡センセーの短編の特徴は、しっかり伏線を絡めて最後にドキッとさせるお話が多い。そんな印象ですが、どことなく哀愁が漂いますのでハッピーエンドの作品はほとんどないですね。最後に救われることもある、くらいの明るさでして、むしろ暗い話のほうが多いです。その暗さも独特で、たとえば米澤穂信センセーのような「救われなくて暗いけど謎が解けてちょっとすっきりした」というものともちょっと違います。長岡センセーの作品は「暗くて謎が解けてもスッキリしない」「謎が解けるとその先にある結末にぞっとする」そんな内容が多い感じです。
本作は表題作の「赤い刻印」のほか、事故で記憶障害に陥った女子大生の話「秘薬」、いじめが原因で飛び降り自殺した子どもの親が教室に乗り込む「サンクスレター」、認知症の母と知的障害の弟の介護で精神をすり減らす主人公の話「手に手を」の3編を含む計4編を収録しています。表題作以外の3編はいずれもちょっと設定からして暗いお話ですが、読ませる力が半端ないのでぐいぐいと読ませてくれます。
でもやはり、長岡センセーは警察小説のほうがいいなあ。





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2016年08月10日

書評734 中山七里「どこかでベートーヴェン」

こんにちは、曹源寺です。

「オリンピック、どこでやるの?」
「リオでじゃねーの」

すみませんすみません。忘れてください。

えー、そのオリンピックですが、よく「文化の祭典でもある」的な発言を耳にしますが、あれは「スポーツの国別対抗戦」です。国家を挙げて各国と戦う代理戦争です。
だから勝ったらうれしいし、負けたら悔しいのです。「参加することに意義がある」とか「文化交流の場」とかそんなことはどうでもよろしい。
だから、選手のみなさんは頑張って欲しい。われわれもしっかりと与えよう。勝った選手には惜しみない拍手を。戦っている選手には精一杯の声援を。そして負けた選手には暖かい言葉を。

先日、MLBでイチロー選手が3000本安打を達成したときのインタビューの言葉がすごく印象的だったのでブルームバーグの記事から引用します。

イチローは試合後に「あんなに達成した瞬間にチームメートたちが喜んでくれて、僕が何かをすることで僕以外の人たちが喜んでくれることが、今の僕にとって何より大事なものだということを再認識した瞬間だった」とNHKが中継したインタビューで述べた。

これは多くのオリンピック出場選手にもグッときたのではないかと思います。代表選手というのはこうした使命感みたいなものを持ったほうが集中できるし活躍もできると思います。みんなで勝利を分かち合う。そこに生まれる連帯感、一体感。自分は好きです。

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内容(宝島社HPより)
天才ピアニスト・岬洋介、最初の事件!
豪雨によって孤立した校舎に取り残された音楽科クラスの面々。
そんな状況のなか、クラスの問題児が何者かに殺された。
17歳、岬洋介の推理と行動力の原点がここに。
“どんでん返しの帝王”が仕掛けるラスト一行の衝撃。


曹源寺評価★★★★★
中山センセーのシリーズものとしては本作の「岬洋介シリーズ」と「弁護士御子柴礼司シリーズ」が結構好きですが、この岬洋介シリーズは当たりハズレが多くて時にビミョーな感想になってしまいます。
本作は岬の高校時代の友人である鷹村亮を主人公にして、岬が遭遇した初めての事件とその解決までをエピソード的に振り返った内容になっています。
新設された県立加茂北高校は山腹を切り開いて造成した土地に建っていて、ある日の大雨で橋が流され孤立してしまった。岬は意を決して救助を求めるべく増水した川の上を越えていったが、岬に反目していた同級生の岩倉が他殺体で発見された。岬は筆頭容疑者扱いとなり、クラスから孤立していったため自ら身の潔白を証明しようとした。
ミステリとしてはそれほど複雑ではなく、犯人もなんとなく見えてきますのでもう一ひねりほしいくらいです。全体に広がっているのは、岬の別格過ぎる才能とそれを羨み嫉妬し攻撃に転じる幼い精神性の持ち主たちのクソむかつく言い訳であり、こと音楽(など芸術全般)に関しては努力だけでは決して埋めきれることはない圧倒的な才能の壁であり、その壁にぶち当たる前に否定される人格であるという、

なんともやりきれない青春残酷物語でありました。

まあ、でも芸術に限らず、スポーツだってプロ選手として活躍できるのはほんの一握りでしかないわけで、99%以上の人が(つまり100人に1人以下の割合でしか)凡人としてその一生を終えるのであります。だから、本文中でそのことを生徒たちにずばりと言い切った担任の棚橋先生はある意味すばらしい教師だと思います。
そうした残酷でエグイ音楽科のクラスを背景にして、やや単純な事件の解決という本筋が交錯しているわけですが、最後がちょっと救われたので良しとしなければいけないでしょう。ただ、このラストは別に「どんでん返し」というものとはちょっと違うと思います。このラストは(ネタバレ注意)



20年以上前ですが真保裕一センセーが「奪取」という作品で見せたような展開ですわ。あれは伏線もしっかり張っていたのでこれよりもずっと衝撃的でした。中山センセーの頭脳にこれが刻まれていたかは知りませんが、どうせなら伏線張ってくれれば良かったのに、と思うとやや残念です。


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2016年06月24日

書評723 永瀬隼介「総理に告ぐ」

こんにちは、曹源寺です。

本日、英国のEU残留を問う国民投票が開票され、10万票以上の差をつけて「残留」を「離脱」が上回りました。英国のEU離脱が現実的になったことを受けて、マーケットが大荒れの展開となっています。
株式市場爆下げ、為替市場爆上げ、中国株式死亡フラグ、ユーロもアウト、とまあとんでもない展開になっていますが、来週以降の情勢から目が離せなくなってしまいました。
FXとかやっていた人のなかには乱高下で死亡フラグ立った人もいるかもしれません。お願いですから自殺志願者は発作的に駅のホームから飛び降りることのないよう切にお願い致します。

しかし、ここでもマスゴミによる「報道しない自由」が発揮されていることにお気づきでしょうかみなさま。

英国は「なぜ、離脱の是非を問うたのか?」という疑問に対して、テレビは、あるいは大新聞は真正面から報じていましたか?自分の知る限り、この「なぜ」の部分についてはあまり報道されていないと思います。
英国の本音は「国体の護持」です。国体とは国境だけでなく、通貨発行権なども含んだ「国家としてのかたち」であり、移民問題などもここに含まれます。国家のかたちがこれ以上融解しないように歯止めをかけたいということです。そして深刻な問題になっていたのが移民問題です。EU圏内の人の移動がどんどん激しくなってしまい、ドイツや英国への流入が激化してしまったことが国民の危機感を増幅させてしまったことは疑いの余地がありません。

こうした問題を浮き彫りにしているのは外国メディアと国内ネットメディアだけです。朝日新聞は酷くて、こんな記事を出していました。
英国で何が起きているのか 社会に亀裂・支持分極化(朝日新聞6/23)
(前略)
「すっかりだまされた」。家具製造会社のマリエッタ・キング社長(69)は憤る。前回75年の国民投票の際は「自由市場への参入は英国の国益になる」と考えた。だが「実際は、EUが貿易や農業などあらゆる分野の規制で英国をがんじがらめにした」という。そして、その規制について「決められるのは、EU本部があるブリュッセルでロビー活動ができる大企業の意向だけ。中小企業や庶民は不利益を被っている」と不満を口にした。
「私たちは英国の未来のために、主権を取り戻す。今回の投票は、かつての誤った選択を改めるチャンスなのです」。隣にいた初老の男性もうなずいた。
遠藤さんは「確かに、前回の国民投票時とは比較にならないほどEUの介入は増えた。自国のことは自分たちで決めたいといういらだちは理解できる」と話す。一方で「グローバル化が急速に進行する世界で、EU全体でまとまることで各国の国益を守り、国際的な影響力を行使できるという恩恵に気づけていないのでは」と疑問を呈した。

(以上)

>>実際は、EUが貿易や農業などあらゆる分野の規制で英国をがんじがらめにした

えっ?そうなの?

>>グローバル化が急速に進行する世界で、EU全体でまとまることで各国の国益を守り、国際的な影響力を行使できるという恩恵に気づけていないのでは」と疑問を呈した。

えっ?何これ?

ちょっと空いた口がふさがらないんですが。
酷いなあ、この記事。EUの理念と現実をちっとも理解していないか、あるいは捻じ曲げているかのどちらかでしょう。
各国間の規制を取っ払って貿易をスムーズにすることが期待されて始まったのがEECとかECであって、EUはその延長線上にいるはずですが今は規制だらけですかそうですか(棒
それに、EUとしてまとまることと各国の国益が守られることは全く逆の話であって、同時に成立するものではないでしょうに。
絶対、この記者の妄想ですわこれ。リアルにこんな話を信じていたら新聞記者としてというか社会人としても失格ではないかと思うレベルで酷い記事でした。

こんな記事を書いているのは裏に移民問題などを探られたくない腹があるからではないかと本気で疑うレベルです。

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内容(KADOKAWA HPより)
元与党幹事長の回顧録のライターを引き受けた小林は、過去のスキャンダルを告白させようと試みる。しかし語られたのは、戦争のできる国家へと舵を切る現総理大臣の、知ってはいけない大スキャンダルだった――。
ノンフィクションライターの小林は、脳梗塞で療養中の元与党幹事長・佐竹の回顧録のゴーストライターを引き受ける。売れないライターからの一発逆転を狙い、小林は過去のスキャンダルを告白させようと試みるが、国の行く末を憂う佐竹が語り出したのは、戦争のできる国家へと大きく舵を切る現総理大臣のスキャンダルだった。しかし、佐竹の告解が終わった刹那、公安警察が現れて乱闘になり、脳梗塞を再発した佐竹は死亡してしまう。佐竹の告白と乱闘の一部始終が録音されたレコーダーを手に、現場から命からがら逃げ出した小林は、旧知の警察官の助けを得て、マスコミを巻き込んだ大勝負に出るが――。


曹源寺評価★★★★
永瀬センセーはごくまれにですが政治ネタを使って書き上げた作品を出してこられます。「カミカゼ」や「白い疵 英雄の死」などがそれに当たりますが、本書はかなりリアリティを追求しているのか、「自由民衆党」とか「安生内閣」とかきわどいところを狙ってきています。
現総理大臣の倉石喜一郎は安生内閣を継承して一気に政権を握ったカリスマで、高い支持率をバックにナショナリズムを煽る政策を採り続けてきた。その倉石のスキャンダルを握ってしまったフリーライターを中心に、政治と警察とジャーナリズムがにわかに動き出す、というのが話の骨子にあります。
永瀬センセーのお決まりパターンですが、主人公=弱い、相棒=強すぎ、助成=気が強い、という登場人物のプロットは本書もまた踏襲されておりまして、

もうちょっと違うプロットも考えてほしいなぁ

と思う今日この頃です。
その弱気な主人公、小林春樹は売れないジャーナリストでゴーストライターの仕事をこなすなかで元与党幹事長の佐竹一馬の回顧録を書く仕事を得る。小林はただのインタビューで終わらせることなく、過去のスキャンダルを告解させようとしたが、出てきた内容は現総理大臣のスキャンダルだった。そこに乱入してきた公安ともみ合いになり、佐竹とその秘書が死亡。音声を持ち出して逃亡に成功した小林は過去に世話になった警察官を頼る。
とまあ、国家権力からの逃亡だけなら「ゴールデンスランバー」ですが、本書はここから「国家との対決」にまで進んでいきますので米映画「大統領の陰謀」みたいな展開です。
弱っちい小林ですが、旧知の警察官に頼ったものの(ここからネタバレ)

手打ちにされそうになった(というか手打ちになった)ため、命は助かりますがここから逆襲が始まります。
最後はハッピーエンドというか、まあ納得の範囲内ですので楽しく読むことができましたが、正直言うともっと荒れた展開を期待してしまいましたので、多少の拍子抜け感はありましたが、あまり荒れすぎると収まりがつかないのも分かりますのでこれはしょうがないかと。
ただ、永瀬センセーは「カミカゼ」で愛国心丸出しの作品を上梓されたあと、「白い疵 英雄の死」で熱狂する大衆に釘を刺す場面を描き、本書では「経済的徴兵制」を敷こうとする政権を打倒する話を出す、というなんとも両極端な展開で、作家センセーにしては珍しい中道を行くお方なのかなあと思っています。左巻きが多い業界ですから中道もまた多少はやりにくいのかもしれませんが、ぜひこの路線で両極を描いて欲しいものです。





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2016年05月24日

書評714 中山七里「恩讐の鎮魂曲」

こんにちは、曹源寺です。

伊勢志摩サミットが近づいてきましたので、首都圏もあちこちで厳戒態勢なわけですが、全国22万人の警察官が本気を出せばこれだけ威嚇できるんだなあと思うくらいあっちこっちに配置されていますな。

それはさておき、日本はよく国際的な信任を得ないとうんたらという人が多くて、消費税の引き上げについても凍結すると国債の格付けが落ちるとか、サミットで一定の成果を上げなければ安倍首相のリーダーシップがうんたらとか、いちゃもんをつける輩が多くて困ります。
そんななかでこんなニュースも。

日本、25年連続で“世界一お金持ちの国”に(5/24テレビ朝日)
日本の政府や企業などが海外に持っている資産から負債を引いた海外の純資産が去年は339兆円で、日本は25年連続で世界一お金持ちの国になりました。
財務省によりますと、企業の海外投資の増加や証券投資が増えて「対外資産」は7年連続で増えました。一方、外国人が持つ日本株が増えたり年末にかけて値上がりしたことから「対外負債」も増え、資産から負債を引いた日本の「対外純資産」は339兆2630億円と5年ぶりに減少しました。それでも日本は対外純資産の保有残高が25年連続で世界一となりました。主要国ではドイツが23年ぶりに2位に、中国が10年ぶりに2位から転落して3位となっています。


なんだかんだで日本は世界一の対外純資産を持っているのでありまして、財政破綻寸前のどこかの国と一緒にしてもらっては困るのです。
もう財務省の詭弁につきあうのはやめて、日本は日本で幸せになる道を進みましょうよ。

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内容(講談社HPより)
韓国船が沈没し、251名が亡くなった。その事故で、女性から救命胴衣を奪った日本人男性が暴行罪で裁判となったが、刑法の「緊急避難」が適用され無罪となった。一方、医療少年院時代の恩師・稲見が殺人容疑で逮捕されたため、御子柴は弁護人に名乗り出る。稲見は本当に殺人を犯したのか?『贖罪の奏鳴曲』シリーズ最新作!!圧倒的迫力のリーガル・サスペンス!


曹源寺評価★★★★★
弁護士御子柴礼司シリーズの最新作です。このシリーズは中山センセーの作品群のなかでも一番好きかもしれません。
前作(「追憶の夜想曲(ノクターン)」)のラストでは、御子柴の過去(=死体配達人という少年時代に犯した殺人鬼のあだ名)が世間にばれてしまったというところで終わっていましたが、その続きとしてストーリーが成立しています。正直、前作で終わってしまうのかと思っていましたので、続編が出て本当にうれしいです。
元殺人鬼の弁護士ともなれば、その後の展開は言わずもがなでありますが、今回はそんな環境のなかで、かつての医療少年院時代の恩師である稲見の弁護を引き受けるというお話です。
その恩師は容疑を認め、自分を罰して欲しいと訴えますが、御子柴が調べを進めていくうちにさまざまな矛盾が生じてきます。御子柴は複数の証言の矛盾から見えてきた、稲見の立ち位置とその環境に目を向けます。
自分を罰して欲しいと懇願する被疑者と、事件の真実にたどり着いた御子柴。どのような法廷戦術で立ち向かっていくのか、読者としては読み進めるうちに湧き上がってくる法廷での華麗な弁舌を聞きたいという衝動が本書の最大の山場につながります。
そうなんです、本書シリーズはこの御子柴の鮮やかな法廷戦術と弁舌にシビレたいとする読者の欲求に対して、

見事にその願いをかなえてくれるから面白い

のであります。
さらに言えば、この主人公御子柴は人の気持ちを斟酌しないサイコパス(アスペルガーとも違う)なところがありますが、時折見せる人間っぽさ(本当に時折です)がまた良いのです。御子柴はあくまでもダークヒーローであり、弁護すべき人と彼の過去との対比とか心情的な対比とかを描写することによって、読者にすべてを支持させないところもまた哲学的だったりします。読んで楽しいだけではなく、ちょっと考えさせられるところもあるというのがまた素晴らしいですわ。
今回のテーマには「緊急避難」という難しい問題も秘められています。船が難破して、一人しか助からない板に他者が捕まろうとした場合、その人を排除することは許されるのか否かという有名な「カルネアデスの板」の問題が本書のキモであります。日本の法令では刑法37条にこの緊急避難が定められていますので、法的には正当と言えますが、これを殺人事件に適用されて本格的に論争されたケースは日本国内ではほとんどないそうですね。法律の勉強にもなって一粒で二度おいしい作品でした。





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2012年03月28日

書評375 楡周平「虚空の冠(上・下)

本日、松任谷由実のディナーショーチケットが発売されましたが、あっという間に完売となりました。ユーミンがはじめてディナーショーをやるというので結構話題になりましたが、チケット一枚58,000円ですよ!それがあっという間に完売。
はぁ。
金持っている人は、いるもんですねぇ。業界のルールとして、ディナーショーは五木ひろしの50,000円を超えないことが暗黙の了解事項だったなんて書き込みもありますが、ユーミンは簡単に超えてしまいました。ヤフオクに出たら100,000円くらいの値打ちが出るかもしれないですね。恐るべし、ユーミン。


内容(新潮社HPより)
限りない欲望──渇望し、謀り、嘲笑い、踏みつけ、男は、メディアの王となった。だが──。
敗戦後、新聞記者となった純粋な青年は、ある事件を境に、上昇志向にまみれた“怪物”と化した。弱肉強食の激動の世を、下剋上を信条にのし上がり、メディア王として君臨し続けるその男に、通信業界の若き旗手が「電子書籍」で勝負を仕掛ける! 時代を制するのは帝王の経験か、迸る情熱か? ありうべき未来を描く入魂の大作!





曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

曹源寺評価★★★★★
近未来ビジネス小説とでもいうのでしょうか。電子書籍市場を舞台とした通信会社と新聞社の熱き戦いを描いた作品です。
というと聞こえがいいのですが、小説とはいえ、なんだか実存する誰かさんを髣髴とさせるストーリー展開なので、パイプを加えたあの

マスコミの首領を想起

させずにはいられません。
極東新報の渋沢大将が、海難事故をきっかけに政治部のスター記者に変貌し、ラジオやテレビなど戦後黎明期の新たなメディアを次々と傘下に収めながらマスコミ界に君臨するストーリーと、現代においてベンチャー企業から通信会社に成長して業界3位にまでのし上がった携帯キャリアのストーリーがぶつかり合って、電子書籍市場をめぐって覇権争いを繰り広げるわけです。現実社会ではまだ対立の構図が生まれる前の段階ですので、近未来小説と言えなくもないでしょう。
本書のみどころを整理すると3点に集約できると思います。

1.渋沢大将の生き様が面白い
戦後の新聞社が、部数拡張とともにテレビ局など他媒体への参入を推し進める動きなどはとてもリアルでした。

2.電子書籍市場への切り込みが鋭い
電子書籍のプラットフォームを握った者が、新たなメディアの覇者となる。わかっていてもなかなかうまいビジネスモデルが出てこないのは、著作権問題が海外よりも複雑だから。著者もそのへんは分かっていて、それでもこの動きは止められないだろうと断じています。
楡周平センセーは「再生巨流」や「プラチナタウン」などの著作において、新たなビジネスモデルの提案をこれでもかっ!というくらい展開されているわけですが、本書においても実に興味深いモデルの提言がありますので、電子書籍市場に片足突っ込んでいる自分のような人間には「ためになる」小説でも在ります。
しかし、通信キャリア+中小出版社連合vs大手新聞社+大手出版社連合 の構図で、どちらに軍配が上がるのかというと、本当はどっちなんでしょうかね?
この勝ち負けこそが実社会における電子書籍市場の行く末を暗示しているのかどうか?と言う点で非常に興味深いのですが。。。

3.意外なラストと伏線
けっこうラストは意外な感じがしましたが、戦後間もない新聞社が鳩を飼っていたという事実が伏線となって、見事な仕掛けを作っていたのには驚かされました。時代の移り変わりと覇権を握るメディアの構図。

見事な作り込みに脱帽です。








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2012年01月25日

書評362 楡周平「介護退職」

ここんところ、東大の地震研究所の予測やら、尼さんの預言やら、妹の預言やら、1月から2月にかけて大地震の発生を危惧する声が高まっていますが、これまでは往々にして「騒いでいる時に地震は来ない」という過去の実績(!?)がありまして、これだけネットなどで騒がれていては地震も発生しにくいのではないかと思います。

ただ、備えだけはしておきたいですね。
我が家は電気とガス以外の熱源がないので、インフラがやられてしまうと暖を取るのに苦労しそうです。だからといって、備蓄のためだけに石油ストーブを買うのもなんだか気が引けます。直下型地震の場合、耐震性などは関係なくやられてしまうといった記事をどこかで見ましたが、そうなるとこの寒空の下で夜を過ごすのは非常に厳しそうですね。
テント、ランタン、BBQセット、寝袋、木炭、、、ってキャンプ用品大活躍ですね。さて、備蓄備蓄と。


内容(祥伝社HPより)
“その時”あなたは、生活を、家族を、絆を守れますか?
故郷で暮らす老母が雪かき中に骨折した──
突然介護を託された男の人生に、光は射すのか?
今そこにある危機を、真っ正面から見据えた問題作!
絶望のどん底を抜け出した先に見えるもの、
それが希望であることを願う──
「この苦難は、いつ誰の身に降りかかってもおかしくないことです。特に私のような年代になれば、むしろ起こりうることとして考えておかねばならなかったのです。あえてそれに目を瞑(つぶ)り、最悪の事態への備えを怠(おこた)ってきた。仕事を行う上では、あらゆるリスクを想定し、万全の方策を講じることを常に念頭に置いていたのに、最も身近な家庭内のリスクに注意を払わなかった。それは誰の責任でもありません。私の責任です──」






曹源寺評価★★★★★
大手電機メーカーに勤める主人公の唐木栄太郎は、北米事業の部長職。あと一歩でボード(経営陣、つまり役員)に手が届くポジションにいるが、故郷に一人残した母親が足を複雑骨折したことから介護のために奔走するようになります。
とはいっても、実際に介護に奔走するのは栄太郎の妻、和恵であります。主人公は根っからのビジネスマン、つまり日本のサラリーマンとして良い面も悪い面も両方が露呈されていて、悪い報告を遅らせたり、プライドが先行したりする一方で、仕事は大好きでいい部長という設定にもなっています。
しかしですね、大手電機メーカーの部長職で手取りが1,000万円、恐らくは西荻窪あたりの3LDKマンションに住み息子を私立中学に入れるだけの財力があるわけですから、介護は

全然余裕でしょ

という感想しか浮かびません。栄太郎の弟にしても休みもないほど働いていて援助ゼロをわびていますが、自営業で夫婦で600万円稼いでいればカツカツの生活でもなさそうな気がしますがいかがでしょう。恐らくはもっと厳しい生活を余儀なくされている人はゴマンといるはずです。介護だってヨメはんにさせていた(そのヨメはんも倒れてしまうわけですが)ので、主人公は大して介護していません。
いま、本当に厳しい人は「故郷に両親を置きっぱなし」で「一人っ子」で「都内近郊でフリーターないしはアルバイト」の「40〜50代」といったシチュエーションの方々ではないでしょうか。
想像するだに恐ろしいですが。
それに比べれば「故郷に片親」を置き「兄弟がいて」「大手企業の管理職」なんて全然っすよ。しかも、主人公は最後に本当に退職しますが、なんだかんだでハッピーエンドですから、身につまされることもありません。
つまり、本書から得るものは「サラリーマンよ、せいぜい親の介護ができるくらいの準備(=蓄え、あるいは同居、嫁の説得)くらいはしておけという教訓」くらいであって、それ以上でもそれ以下でもありません。








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2011年07月12日

書評323 貫井徳郎「灰色の虹」

「一将功成りて万骨枯る」ということわざがありますが、いまの菅政権はまさしくこの状態ですね。議員のどなたかが指摘しておられましたが、「手柄は自分が取りましょう、汗は他人にかかせましょう」という姿勢が露骨過ぎて、あんなんじゃ部下は誰もついてこないわ。
リーダーとしての資質がまったくない人物をトップに据えてしまったこの国の将来を本気で心配します。
梯子をはずされっぱなしの海江田大臣には多少の同情を禁じえませんが、次から次へと出てくる無能大臣に、こんなヤツばっかりでよく政権を維持しているなあと呆れ返るばかりです。早く総選挙してください。お願いします。
で、最近「脱原発」の署名運動が盛んでして、一昨日も回ってきたのですが、発起人が落合恵子だの坂本龍一だの大江健三郎だの、嫌いな人たちばっかり(坂本の音楽だけは認めるが)で署名する気になれませんでした。なんだか菅直人が利用しそうだし。
脱原発に反対はしませんが、物事には順序というものがありまして、地熱発電や水力発電の比率を如何に上げるかという命題とセットにして考えるべきかと。個人的には箱根あたりを大規模な地熱発電プラントにしてしまえばいいと思っていますが、メガソーラー計画みたいなのに乗ろうとしている自治体が多いですね。ソーラーは孫正義みたいなヤツの利権の温床になるでよ。

内容(新潮社HPより)
冤罪で人生の全てを失った男は、復讐の荒野へ踏み出した。貫井ミステリーの新たなる頂点。
身に覚えのない殺人の罪で、職場も家族も日常も失った男は、復讐を決意した。刑事、検事、弁護士――。七年前、無自覚に冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。だが男の行方は杳として知れず、宙に消えたかのように犯行現場から逃れる。彼が求めたものは何か。次の標的は誰か。あまりに悲しく予想外の結末とは。






曹源寺評価★★★★★
貫井センセーの作品に共通して流れる「やるせなさ」感というのがありまして、誰もハッピーにならない暗すぎる結末とか、どうやったら救われるのか分からない世の中の不条理とか、感情移入しすぎるとつらすぎる人生の悲壮とか、こうしたものがごちゃまぜになって読者を襲うわけであります。氏の読後感の悪さはまさしく天下一品であります。
本書もこの「やるせなさ」感が読者を圧倒します。

本当にやり切れません。

ラストのこの描写は何だよー。余計だよー。読者を打ちのめしてどうするんだよー、みたいな。もうね、あまりのやりきれなさに読後呆然ですよ。
しかし、それでも氏の作品は売れ続けるのですが、その要因はやはり、綿密な取材に裏打ちされた圧倒的な描写力だったり、スピーディで読者を飽きさせない展開であったり、予想を裏切る創造力だったりと、一流と呼ばれる作家ならではの筆力があるからこそであります。もうね、なんつうか、ある意味怖いもの見たさでついつい読んでしまう、そんな暗い魅力が貫井作品には流れています。
本書は冤罪がテーマです。朔立木氏の「死亡推定時刻」もそうでしたが、自白至上主義による冤罪の温床というテーマを扱うと、取調室の生々しいやりとりを再現せざるを得ないので、「怒鳴る刑事」と「気の弱い被疑者」という構図からは逃れられません。このへんのやり取りは「死亡推定時刻」のほうが(作者が法曹界の人なだけに余計)リアルです。本書の魅力はこれを「復讐」の糧にしてしまった犯人と、その周辺の人間模様を情感たっぷりに描いていることにあると思います。「悪徳」だけど刑事らしいといえば刑事らしい伊佐山刑事、ヤクザを弁護したらブラックマネーにどっぷり漬かってしまった綾瀬弁護士、法の番人として厳格すぎる谷沢検事、浮世離れしていながら自分の行動を正当化することに長けている石嶺判事など、いかにも実在しそうな人物が描かれているのも、また魅力であります。
悪意はなく、ほんの少しの行き過ぎた行為が一人の人物を犯罪者に仕立て上げていく。「合成の誤謬」という単語がありますが、こうやって思い出しながらブログ更新していても、本書のやるせなさが再び浮かび上がってきます。。。









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2011年03月23日

書評297 楡周平「血戦 ワンス・アポン・ア・タイム・イン東京2」

計画停電に対する不満やクレームが多いみたいですね。ここは逆に考えて、「節電しているから停電がなくて済んでいるのだ」と前向きになりましょう。
でも、パチンコ屋が大量に電力消費して営業しているのを見ると、なんだかムカつきますね。朝から並んでいるパチンカスもいっぱい見ました。
このままでは夏も停電だそうで、こうなったら夏は間違いなく東京脱出だわ。その前に放射能で脱出かもしれんが。
ヨウ素はともかく、セシウムはきついね。これにプルトニウムが加わったら間違いなく避難だわ。


内容(講談社HPより)
中国公安女性とのスキャンダルにより財務省を退官して8年、国会議員となる道を絶たれた有川崇(ありかわ たかし)は弁護士となっていた。一方、元総理・滝沢の失脚により、派閥を継いだ崇の義父・白井眞一郎は、与党・民自党最大の実力者に。だが、与党への逆風で次期総選挙は、政権交代を賭けたものとなる。野党・民政党は、有川崇に総選挙への出馬を要請。その条件は義父と同じ選挙区から「刺客」として立候補することだった。それは、父と子の、母と娘の、そして姉と妹の、壮絶な戦いへとつながっていく。連続ドラマ化(ABC・テレビ朝日系 金曜21時ドラマ『宿命 1969-2010』=2010年1月15日〜3月12日放送)され、話題を呼んだ前作=『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』 上下 各1785円、6万部突破!=をはるかに上回る迫真のリアルフィクション、早くも登場!






曹源寺評価★★★★
ドラマ化され人気となった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京」の続編です。前作は東京大学安田講堂事件に参加した革命闘士の成れの果てみたいな、団塊世代の男女が野心をむき出しにしながらも因縁めいた再会のなかで運命に翻弄されていく姿を読ませていただきましたが、本作はその息子たちが主人公になっています。長男の有川崇は財務省を辞め弁護士になっており、野党の民政党から出馬することに。次男の透は東大医学部の学生で看護師を付き合っていて、両親から猛反発を受けること必定。これだけではなく、義父と息子の対決、義姉と義妹の対決、母と息子の対決、母と娘の対決などなど、これでもかというくらいの確執が盛り込まれています。
それでも、最後はなんだか一件落着みたいな雰囲気になるのはある意味凄いっす。選挙の場面がありますが、これは先日読んだ「カウントダウン」ほどではないにせよ、その過程の描写は政治の世界をぎゅっと凝縮したような感じで凄みがあります。
前半から中盤まではややだれた印象ですが、これは後半への伏線を張る必要があるためであることが読み進めていくうちに分かります。後半からはラストへ向けて一気読みですので、我慢して進めて行きましょう。
しかし、それにしてもエピローグはなんじゃこりゃ。まさかさらに続編でも考えているんでしょうかね。








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2011年02月10日

書評290 長岡弘樹「線の波紋」

「北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起こる」という比喩があります。そうです、バタフライ効果というやつですね。いま、まさにバタフライ効果という現象が世界を襲っています。
どういうことかと言いますと、

アメリカが景気悪化で財政ピンチ

ドルばら撒く(QE2というやつですな)

余剰マネーは消費に回らず投機に

資源価格と食料価格が暴騰

新興国で食料品価格が大幅上昇

国民の不満爆発

エジプトでデモ、独裁政権崩壊へ  ←いまここ

イスラム原理主義台頭で反米国家へ転換

米国でテロ続発

なんと、「米国の財政赤字はテロを引き起こす」というロジックになりますた。もしかしたら、最後のところは「エジプトの後ろ盾を失い、アラブとイスラエルの緊張高まる→第5次中東戦争」かもしれませんな。。。なんというブーメラン。。。ミンス党も真っ青だわ。。。


内容(小学館HPより)
事件の陰にある「救い」を描いた連作長編
一人娘・真由が誘拐されて一か月、安否のわからないまま、白石千賀は役場の仕事に復帰、溜池工事の請負業者決定を控えていた。そんな千賀にかかってくる「おたくの真由ちゃんが死体で発見されました」といういたずら電話の主とは・・・・(第一話「談合」)。真由ちゃん誘拐事件から2か月後、同じ町内に住む24歳の会社員・鈴木航介が死体で発見された。同僚の久保和弘はその1週間前、経理部員である航介から不正を指摘されていた。そして、航介の携帯にいまも届くメールの中に衝撃的な一文を発見する(第二話「追悼」)。渡亜矢子は真由ちゃん事件の犯人を追っている刑事。無事に戻ってきた幼児から証言を引き出すのは容易ではなかったが、工夫を重ねて聞き出した犯人像に近い人物を探し当て、ついに逮捕にこぎ着けるが・・・・(第三話「波紋」)。そして最終話、すべてのエピソードが1つの線になり、事件の背景にさまざまな「救い」があったことを知る(「再現」)。「一つの事件が起こした波紋は、別の新しい事件を引き起こし、その新しい事件がまた波を立てる。波は当事者のみならず、周りの人々までをも飲み込み、翻弄していく






曹源寺評価★★★★
「傍聞き」で日本推理作家協会賞を受賞し注目を浴びている長岡氏の長編です。最初は連作短編かと思いきや、これって長編じゃん、という感じです。4つの章から成り立っていますが、どれも視点が異なるため、ひとつの事件から広がる周辺の変化を描写することによって浮かび上がる真相に徐々に迫って行くという構図になっています。これが「線」(=事件)の「波紋」(周辺の変化)ということですね。なんとなく宮部みゆきの「長い長い殺人」を想起させます。「長い長い」は財布が主人公という異色の作品ですが、事件周辺から真相に迫っていくという構図はなんとなくですが同じ路線を感じさせますね。
ただ、イマイチな部分も。ちょっと人物像に齟齬をきたしていませんか?というか、犯人の自宅での行動と外での行動に一貫性がなく、同じ人物としては無理がありませんか?犯人の家族も然りですね。あと、謎をほったらかしにしていないのは良いとしても、読者に考えさせる余裕=謎的な部分を誇張したり引き伸ばしたりするような書き方をしていないので、読んでいくうちに「あぁ、そういやこんな謎があったね」で終わってしまうのです。このへんはなんだか勿体無いですね。
まあいずれにしても、長岡氏の描く視点が独特なのか、よくもまあこれだけ複雑なプロットを組み立てたものだなあと素直に驚かせてくれますので、この辺の鮮やかさを素直にほめたいと思います。








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2010年12月21日

書評281 永瀬隼介「越境」

一兵卒が社長に向かってあからさまに拒否をしたら、その場でクビを覚悟しなければならないでしょう。部長級でも同じです。でも、クビにならずにのうのうと仕事を続けている人がいます。
その結果どうなるかというと、上司に逆らった人を上司に据えたら、その会社は間違いなく崩壊します。なぜなら、その上司は部下を叱れないからです。
会社に例えると、このことがどれだけ異常なことか良く分かります。そして、こういう人を担ぐ人もまたいっぱいいるのが政治の世界です。
ミンス異常すぎwww

内容(徳間書店HPより)
ヤメ刑事と中国公安が狙った警察の隠し金。ピカレスクで痛快な、いぶし銀の犯罪。限りなくリアルな永瀬隼介の最高傑作!






曹源寺評価★★★★
警察を追い出されて巣鴨の居酒屋マスターに収まっている主人公が、中国女にだまされて300万円を持ち逃げされて、中国の黒龍江省まで行って彼女の行方を追っていたら公安につかまりそうになって、何とか解放されて帰ってきたらその公安とガイドがペアを組んで日本へやってきて、みんなでチームを組んで追い出された警察の裏金を奪って、覚せい剤ビジネスをやっている公安の従弟のところに行って足を洗わせて、それから、、、
と、なんだかものすごいスピードで話が展開していきます。最初の読み始めの印象と後段の印象が随分と変わりますので、同じ本とは思えない展開です。
永瀬ファンの一人としては、これもまた永瀬らしい作品ではあるなあと感心しますし、最近のトレンドに違わず中国人がいっぱい登場してくるのもピカレスクっぽくて良いですね(大沢作品などは中国からロシアに鞍替えしていますが)。
これだけ話の展開が大きいだけに、「なぜ公安警察の彼は日本にやってきたのか」という謎が際立ちます。これはこれでうまい手法だなあと思います。ドタバタな中にミステリチックなものを織り交ぜ、なおかつ、公安の彼の行動も伏線を張ってあるので納得できます。これは今までの永瀬作品にはなかった点ではないでしょうか。こういうの好きです。どんどんやってください。








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2010年08月25日

書評259 中島京子「小さいおうち」

気象庁によると、あと2週間くらいはこの暑さが続くそうですね。マジで死ぬ〜。
昨日はPTAの行事で有給休暇取って鎌倉市まで行きましたが、湘南地方は首都よりも海風が気持ちよくて1〜2℃くらい低い感覚ですね。実家も海の近くですが、やっぱり海はええね〜。新婚の時、湘南もすみかにしようかと思ったけれど、結局横浜(しかも奥地)になったのはヨメさんの実家を考慮してのことでした。リタイアした後はやっぱり海の近くに行きたいね〜。あと20年か。。。

内容(文藝春秋HPより)
昭和初期、ある一家の忘れがたい、秘めた恋の物語
女中奉公の記憶を綴るタキの胸に去来する、昭和の家庭風景と奥様の面影、切ない秘密。そして物語は意外な形で現代に繋がり……
昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない上質の恋愛小説です。






曹源寺評価★★★★
芥川賞に興味はありませんが、直木賞は面白い作品が多いので結構読んできました。本書も「良くできている」という評判が立ちましたので、読んでみました。
面白かったです。本当に良くできています。最初はスピード感のない、「家政婦は見た!」よりもさらにのんびりとした女中タキの独白が続くので多少退屈ですが、これを我慢して読み進めていくと、ストーリーの骨格みたいなものが徐々にみえてきます。そして、最終章になると、おぉ、これは!なるほど!!という感じになります。つまり、仕掛けがうまいということですね。これはミステリにありがちな「やられたー!」ではなくて、「あーあーあー、こういうことですか」という納得感と「あぁ、これはちょっと切ないですね」という気持ちがない交ぜになるような感覚ですので、自分の中ではある意味新鮮な感情でした。
これを単純に「哀しい」とか「切ない」とか「ほのぼの」とか「やるせない」とか、こういう単語で割り切ってしまっては説明できないような、そんな感想です。
戦争、戦局に関する表現も興味深いですね。市井の人々からすれば、「ガダルカナル島の戦い」も「アッツ島玉砕」も遠い彼方の出来事であったというか、捏造された大本営発表でしか知らなかったということがよく分かりますし、中国大陸での戦局の泥沼化→ABCD包囲網→開戦といった一連の流れのなかで庶民の視線は昭和16年くらいまでは「アメリカとは戦うことはないだろう」「大陸とも早く講和に」という厭戦気分が広がっていたことも史実に近いのではないかと思います。
戦争の悲惨さはあらゆる場面で強調されて65年が経過しましたが、本書のような戦争の記述はある意味新鮮です。なぜなら、「悲惨」というレベルではないが「平和」ではないという状況、物資が手に入りにくいとか学徒動員だとか、これもまた戦争ですが直接的な戦いだけではない戦争のシーンもまた、当時の日常であったという事実。こうした体験のほうが、もしかしたらより多くの人によるリアルな体験ではなかったかということを改めて思い起こさせてくれたわけですから。
特に、現在の中年は自分の父母が戦争を体験していますが、その回想シーンは特攻隊員でもなく本土決戦でもありません。多くは学徒動員(昭和4年生まれの義父は中島飛行機の工場に行かされたと言っていました)であり、学童疎開(昭和9年生まれの母は山梨に疎開しました)であるからです。自分もその一人です。これもまた語り継がなければならない歴史のひとつなのだろうと思います。








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2010年07月23日

書評253 永瀬隼介「狙撃 潜入捜査官」

会社がクールビズを導入したから、ネクタイ地獄からは開放されましたが、それでもスーツというのは暑いですな。サラリーマンを辞めたくなります。

お酒を飲むと、より暑くなるのでできるだけ我慢していますが、でもやっぱり飲みてー!


内容(角川書店HPより)
東小金井署刑事課の上月涼子は突然署長に呼ばれ、本庁勤務という配置を告げられる。彼女の任務は警察官を内偵するという特務監察官だった。涼子は組織内の幾つもの腐敗を暴いていくが…。渾身の本格警察小説。






曹源寺評価★★★★
国内の未解決事件を扱った警察小説というのは、そこに何らかのリアリティがあると俄然迫力を増してくるものです。永瀬氏は最近映画化された「閃光」でもあの3億円事件を背景とした小説をリリースされていますが、本書も「警察庁長官狙撃事件」を題材として臨場感溢れる作品に仕上げておられます。
警察庁長官狙撃事件は、オウム真理教信者の警察官が犯人とされているようないないような、結局あれは何だったの?という印象しか残っていないのが多くの人々の感想ではないかと思います。自分もその一人です。永瀬氏はそこに焦点を当てて、狙撃の実行犯は(以下、ネタバレ)警視庁公安部によるシナリオがあったと推理してお話を組み立てています。
なるほど、その背景も事実と相違ないでしょうし、オウム信者の犯行として落としどころを狙っていけば確かにああいう展開になるのだなあ、と思ったりもします。つまり、本書は永瀬氏による警察庁長官狙撃事件の小説に見立てた独自の仮説なわけですね。前回の柴田センセーによる人工地震の仮説を小説に仕立てたのと同じ展開ということですね。
うーん、こう考えると、小説とノンフィクションの狭間って一体なんでしょうね?








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posted by 曹源寺 at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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