ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:は行の作家

2018年03月27日

書評884 ライオンは仔猫に夢中 平塚おんな探偵の事件簿3」

こんにちは、曹源寺です。

どうしても安倍首相を倒したいマスゴミ各社が今後、痛烈に猛反対してくるであろう事案は憲法改正ではなくてメディアの規制緩和ではなかろうかと思っております。

3月25日付の読売新聞社説がこちらです。

放送事業見直し 番組の劣化と信頼失墜を招く(3/25読売新聞)
テレビ番組の質の低下を招き、ひいては、国民の「知る権利」を阻害する懸念がある。安倍首相が目指す放送事業見直しは、問題が多いと言わざるを得ない。
政府の規制改革推進会議が、放送法改正による放送事業の抜本的な見直し案を検討している。
テレビ・ラジオ局の放送事業者とインターネット事業者の垣根をなくし、規制や制度を一本化することなどが柱だ。自由競争によって、多様な番組を視聴者が楽しめるとしている。
放送局は、放送法1条で「公共の福祉の健全な発達を図る」ことを求められている。民放はこうした役割を担い、無料で様々な番組を提供してきた。同様の規制がなく、市場原理で動くネット事業者を同列に扱うのは無理がある。
特に問題なのは、見直し案が、「公序良俗」「政治的公平性」「正確な報道」に基づく番組編集を求めている放送法4条の撤廃を含んでいることだ。
規制が外れれば、放送とは無縁な、金儲もうけだけが目的の業者が参入し、暴力や性表現に訴える番組を粗製乱造しかねない。家庭のテレビで、子どもを含めた幅広い人々が目にする恐れがある。
一方で、コストをかけた大規模災害報道や、目や耳の不自由な人向けの「字幕・解説放送」を継続することは難しくなろう。選挙とは関係なく、政党が都合の良い番組を放送できるようになる。
外国企業による民間放送局への20%以上の出資を禁じる規定の撤廃も検討されている。まったく看過できない。
日本の世論に不当な影響を与えるため、外国政府の関連団体が放送局を買収して宣伝活動に利用する危険が生じる。国の安全保障を脅かしかねない問題だ。
フェイクニュースが世界的に広がるなか、放送への信頼を失墜させる改革に乗り出す意味があるのか。疑問は拭えない。
米国では、放送局に政治的な公平性を求めるフェアネス・ドクトリン規制が1987年に廃止された後、偏った報道が増えた。2016年の調査では、テレビ、新聞、ラジオを「信頼する」米国人は3割と、過去最低を記録した。
野田総務相が「放送局は社会的な役割を果たしてきた。4条は重要で、多くの国民が求めている」と述べたのはもっともだ。
放送文化は競争政策では育たない。政府は、国民生活に役立つ放送局のあり方について、地に足の着いた議論をすべきである。
(以上)

ふだん、規制緩和や自由競争による健全な社会を育成しようと呼びかけている新聞社が、電波に限っては規制をしろと叫んでいます。まったくの笑止千万です。
社説というのは新聞社としての見解を述べる場所ですので、その論理立てもかっちりとしているのが一般的ですが、この社説に関してはツッコミどころが満載ですね。
現状の地上波が圧倒的に安い電波料金(電波オークションしていない先進国は日本だけ)で電波を独占していて、外国資本は規制しているけど中で働く外国人の比率には何の規制もなくて、暴力やエロは80年代や90年代よりも現在のほうがはるかに自主規制されていて、「報道しない自由」を振りかざして本当に必要なことを報道しなくて、クロスオーナーシップという手段でコングロマリットを形成し新規参入を拒んでいて、放送法第4条には何の罰則規定もないがゆえに倫理規定だなどとのたまっている(実際には174条に罰則規定がありますが適用されたことはないですね)んですが、そんな民放各社を、批判するのではなくて完璧に擁護しようとしているわけですよ。これだけで新聞社と放送局のずぶずぶの関係がうかがい知れるものです。

最近は岩盤の規制に風穴をあけて経済成長の踏み台としたい自民・政府と、既得権益に固執する野党・マスゴミという構図が鮮明になっていますね(笑 昔は逆だったと思いますが)。
加計学園の獣医学部問題もそうでしたが、ふたを開けてみれば獣医学部への入学希望者が殺到していて学部設置は正解だったことが分かりました。80年代にはヤマト運輸がガチガチの運輸行政にしびれを切らして当時の運輸省を訴えた行政裁判なんてのもありましたが、あれがなければ宅急便の市場拡大はありえなかったわけです。電波に限らず、規制緩和しても問題ないやつはとっとと踏み切っていただきたいものです。

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内容(祥伝社HPより)
〈ライオン探偵〉生野(しょうの)エルザ&美貌(自称)の助手・川島美伽(かわしまみか)。
ガールズ探偵、危機一髪!?
絶対に負けられない、プライドを懸けた“謎解き”がいま始まる!
不運続きの二人に降りかかる、難事件と災難の雨あられ。
転落死した社長令嬢の部屋から赤いハイヒールが消えたのはなぜ?
サークル一の美人女子大生が死に際にVサインを残したわけは?
独居老人の最期を見ていた鸚鵡(おうむ)が命を狙われる理由とは?
海の家で出会った女性をイケメン英会話講師が捜すわけとは?
愛と推理とガールズトークあふれる〈生野(しょうの)エルザ探偵事務所〉は、今日もなんとか(?)営業中!


曹源寺評価★★★★★
ライオンの棲む街」「ライオンの歌が聞こえる」に続く「平塚おんな探偵の事件簿」シリーズ第3弾が2017年9月に刊行されていました。
美人だが言葉使いが荒く、見た目もヤンキー丸出しのエルザと、(エルザよりは)地味で控えめな美伽のコンビが織りなす連作短編シリーズであります。本書では4つの短編(うちひとつが書下ろし)が収録されています。
まあ、東川センセーの軽めの連作ものはキャラクター造型とその会話の妙みたいなところに、ほんのちょっとだけ物語をひっくり返す展開というのが売りではありますので、今回も安定の暇つぶしでありました。
舞台が神奈川県のなかでも地味な街、湘南と呼ばれたいけど茅ヶ崎や藤沢からは「おまえは湘南ではない」と言われてしまいそうな街、そして女性がたくましくひとりで生きていける街。それが平塚です(失礼!)。そんな街で颯爽と活躍するふたりを鮮やかに描いているのがなんとも微笑ましいのであります。ただ、最近は読めば読むほど二人のキャラクターが

尼神インターの渚と誠子にモロかぶるようになってきて、

いやいやもうちょっと原作のほうが美人に書いているはずだと言い聞かせながら読まなければならないのが玉に瑕な状況です。
とは言いながらも、軽めのミステリ短編なら東川センセーに任せておけば、何の問題もないのだろうと改めて思い知りました。





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2018年03月02日

書評877 誉田哲也「ノーマンズランド」

こんにちは、曹源寺です。

個人的に気になったニュースがこちら。
日教組の組織率22・9% 過去最低を更新(3/2デイリースポーツ)
昨年10月1日現在の日教組の組織率は前年より0・7ポイント減の22・9%で、過去最低を更新したことが2日、文部科学省の調査で分かった。1977年以降、41年連続の低下。日教組以外を含めた教職員団体全体の加入率も1・1ポイント下がり34・1%となった。加入率が高い世代の定年による大量退職で、全体の加入率が下がったとみられる。
調査は大学と高専を除く公立学校の常勤教職員約102万5千人を対象に実施。教職員団体に加入しているのは約34万9千人で、このうち最も加入者が多い日教組は前年から約7千人減の約23万5千人だった。
(以上)

日教組の組織率が過去最低を更新し、現在は22.9%ですよという記事ですが、これを読んだ感想は
「まだ22.9%もあんのか?」でありました。
自分の中の日教組評は「授業中であるにもかかわらず、幟を掲げてデモ行進に参加するような人たち」という一言でくくられます。つまり、学校教育よりイデオロギーのほうを優先する組織であるということです。まあ、正確には有給休暇を使っているのでしょうから休み中にどんな活動をしようが個人の勝手であるかもしれませんので、自分がレッテル貼りをしている自覚はありますが。

自分が生まれ育った町は米軍基地や自衛隊駐屯地があったので、それなりに活動の方も活発だったのかもしれません。だから大学生くらいまで洗脳されていた部分がないわけではありません。中学校の社会科の教師は「中国語が世界で一番美しい言語である」なんて言いきっていて、それを信じていたこともありました。言語には美しさを競う意味などないし、そもそもそんな主観的な尺度で物事を断定するのもどうかと思いますが、幼い自分はそれをストレートに信じてしまっていたりしたのです。
理科の教師は「大学なんて行かないほうが生涯賃金は高いぞ」と真顔で言っていました。大嘘です。そいつは黒板にグラフまで書いていましたから、なにか定量的なデータに基づいているのかと勘違いしちゃいましたよ。思い返せばただ単に曲線を描いていただけでしたが、何が言いたかったのかは結局分かりませんでしたね。
まあそんなおかしな教師に囲まれて育ったので、真実を知った後の反動といったらそりゃすさまじいわけですよ。大学生の時に教職課程を取ろうか悩んでいたのですが、中学校時代を思い出して「あぁ、オレも教師になったらあんな感じになるんかなぁ」と思ったらきっぱりやめる気になれました。

話を戻しますが、公立学校102万5千人の教職者がいて、そのうち23万5千人が日教組に加盟しているという事実。多いとみるか少ないとみるか。たしか、都道府県別にみるとその勢力が偏在しているのではなかったかと思います。山梨県みたいに輿石東の影響で組織率が高い県もあれば、和歌山県や愛媛県はたしかほとんどいないんじゃなかったでしょうか、組織率ゼロの県もあったと思います。生まれた都道府県によって教育の差が生じるのであれば、それはそれで由々しきことでしょう。となれば、日教組はもうすでにその存在意義を問われていると言っても良いのではないかと思います。

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内容(光文社HPより)
手段は選ばない。
神も悪魔もいない。
彼女がここにいないのだから。
またしても同僚の殉職を経験し、心身に疲弊の残る姫川玲子が入ったのは、葛飾署管内で起こった若い女性の殺人事件捜査本部。心機一転、捜査に集中する玲子だったが、すぐに行き詰まってしまう。有力な被疑者がすでに別の所轄に逮捕されており、情報が流れてこないのだ。玲子は、あらゆる伝手をたどり、事件の全体像を探りはじめるが……。
「ここは、地獄か?」「ああ……地獄だ」
幾重にも隠蔽された事件の背後には、絶望的な捜索を続けている、孤独な背中があった。


曹源寺評価★★★★★
姫川玲子シリーズの最新刊です。
前作の最後で、またしても同僚を失ってしまった玲子。周囲からは死神扱いされてしまいますが、本作においてもまた死人が出てしまうのでしょうか。シリーズで読み通している方は、続編が気になっていたのではないでしょうか。自分もその一人です。
誉田センセーの得意技のひとつに、「二つのストーリーを同時進行させ、後半で合体させる」というのがあります。「歌舞伎町セブン」シリーズとかはこんな感じの作品が多いですね。本作もまたこの技法を用いています。
高校時代に行方不明になった恋人(未満)の女性を探し出すため、大学を中退してまである職業に就いた男性のストーリーがひとつ。
捜査一課で捜査中の殺人事件に関して、所轄で取り調べ中の男性の指紋が検出されたことから容疑者として引っ張りたい一課。これに対してなぜか所轄は情報を上げてこない。この所轄の事案を調べていくうちに突き当たったのは日本の闇の部分だった。というのがひとつ。
(以下、ネタバレにつき)
このふたつのストーリーが融合していくのですが、片方の事件にあのガンテツこと勝俣健作が関与していて結局は間接的にも関わっていくことになります。このガンテツの関与した事件こそが、本書のキモでありましょう。
そう、この事件とは北朝鮮のスパイによる犯行とその後始末です。もはや警察の領域なのかさえ危うい外交領域の問題でありますが、警察(公安)以上に自衛隊の領域ではないというところがまさに日本の闇であります。国民の生命と財産を守るのが軍隊でありますが、日本の自衛隊は活動に対する制限が多すぎて対北朝鮮マターともなればすべて外交問題という単語で片づけられようとしています。そういったリアルな問題を本書はシビアに分析しつつも悲観的な描写で読者に問題意識を問うてきます。
あの北朝鮮が拉致を認めることになったのは、小泉純一郎総理(当時)が2002年に北朝鮮を電撃訪問したことが発端です。それまでは認めてこなかったし、90年代の前半に家族会が結成された当初などは社会党(当時)が拉致問題を握りつぶしたり、あるいは国内の家族会の動きを北に密告していたのではないかという疑惑さえあったりしました。本書では、90年代の中盤に女子高校生が拉致されたという設定でストーリーが構築されています。
誉田センセーは、この北朝鮮拉致問題をテーマにした作品として「国境事変」を10年前に刊行されています。本書とセットで読むと、誉田センセーによる北朝鮮問題の立ち位置が良く分かります。そしてそれは我々読者に、北朝鮮による拉致問題は小泉政権以降何一つ進展がないという悲惨な現実を目の当たりに示してくれるのです。
今も対話、対話と馬鹿の一つ覚えのように繰り返すニュースコメンテーターや有識者はお花畑に逃げ込んでいないで本書を読んで現実見ようぜ、という気にさせられること請け合いです(小説ですが)。
姫川玲子シリーズはちょっとグロい系のお話が多いのですが、本書もまた暴力シーンがありまして残虐です。しかし、

本書はそれ以上に切ないというか、胸を抉られるストーリー

ですので、残虐シーンなど大したことありません。この姫川玲子シリーズは短編集と合わせて9作目だそうですが、登場人物は少しずつスタイルを変えていきます。今後も目が離せません。





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2018年02月06日

書評870 東野圭吾「マスカレード・ナイト」

こんにちは、曹源寺です。

今週から平昌オリンピックが始まります。時差のない国での開催ですからタイムリーに応援できるのが良いですね。
しかし、現地は最低気温がマイナス20℃にも達する極寒の地です。寒い割には降雪量が少ないので、本来であれば五輪会場として不向きであることは明白です。死人が出る可能性は高そうですね。
同じように、2020年の東京も五輪会場としてはNGな場所ではないかと思います。開催期間中の最高気温が35℃を超えるようならそんな場所でマラソンとかやっちゃだめでしょう。1964年の東京五輪は10月に開催したから成功したのであって、8月の東京でやるのはちょっと違うのではないかと思います。
ということで、夏季、冬季それぞれの五輪会場については一定のラインを設けて条件に満たない場所は立候補禁止といったルールを定めるべきだと思います。
まあ、商業主義に走ったIOCに何言っても無駄なのかもしれませんが。。。

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内容(講談社HPより)
若い女性が殺害された不可解な事件。警視庁に届いた一通の密告状。
犯人は、コルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現す!? あのホテルウーマンと刑事のコンビ、再び――。


曹源寺評価★★★★
マスカレード・ホテル」「マスカレード・イブ」に続くマスカレードシリーズ第3弾であります。登場人物はもうおなじみの警視庁捜査一課に所属する新田浩介と、ホテルのコンシェルジュである山岸尚美であります。
今回はこれに加えて、警視庁捜査一課に配転された能勢刑事と、横浜のホテルから引き抜かれたベテランコンシェルジュの氏原がストーリーに程よいアクセントをつけてくれています。
事件は東京都練馬区のアパートで女性が殺害され、被害者の人間関係や現場の目撃証言が少ないなかで警視庁に密告−いわゆるタレコミが届く。東京タワーに近いホテル、コルテシア東京で年末のカウントダウンイベントになっている仮面パーティー「マスカレード・ナイト」に犯人が現れるという内容であった。警視庁はホテルの潜入捜査を開始したが――
例によって本書も過去のシリーズに違わず、ホテルコンシェルジュのきめ細やかなサービスという名の裏で彼らがどれだけ死にもの狂いで知恵を絞っているのかが良く分かるエピソードをこれでもかっ!というくらい積み上げてくれています。人間の本質を見抜くという点だけにおいて刑事とホテルマンは共通している、というのが本書シリーズのテーマなのかもしれませんが、そのアプローチは180度異なる対照的なものであるので、時に反発し、時に共感するというシーンが随所にあります。新田刑事と山岸という構図だけでなく、新田と氏原というシーンも見逃せません。
事件は引っ張るだけ引っ張っておいて、真相が明らかになるまで全然真犯人が分からないようになっていて、これ

中盤くらいで真犯人(というか構図の全体)を当てられたら神

だと思います。もちろん、東野センセーですから伏線はしっかりと張っているのですが、わっかんねーなーこれ。
なぜ、密告者は犯人がホテルのパーティーに現れるのを知っているのか
という謎は密告者と犯人の関係がそれなりに密であるということの証左ですが、これだけではなかなか犯人像には結びつかないですよね。その謎を背景に、ホテルマンに扮した警察側が不審人物を徹底的にマークしたわけですが、これまたホテルには怪しい人たちがわんさといるわけでして、疑わしい人たちが次々登場するので中盤は

容疑者のわんこそば状態

です。犯人当てを楽しむには良い作品ではないかと思います。





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2018年01月19日

書評865 深町秋生「死は望むところ」

こんにちは、曹源寺です。

自由党の森ゆうこ参議院議員と東京新聞の望月衣塑子記者が「追及力」などという本を共著で刊行されたらしいです(紹介したくないのでリンクなし)。
追及力とは笑わせてくれます。案の定ネットでは「いちゃもん力とか難癖力とかのほうがしっくりくるのでは」などといった書き込みにあふれていますが、問題はそこではありません。何も読んでいないうちに批判をするのはフェアではないと言われても仕方ありませんが、自分としては次の2点において疑問があるのです。

ひとつめは、マスコミの一般的なスタンスである「権力の監視」という視点からです。大新聞さまは常日頃から国家権力を監視するのがマスコミの役割の一つであると盛んに喧伝しておられましたが、監視どころか結託しているではありませんか。相手はたとえ野党の議員とはいえ、権力者であることに変わりはありません。しかも現役ですから、森議員も監視される側の人間であることに論を待ちません。そんな人と新聞記者は共著を出すという。それは果たして許されることなのでしょうか。

ふたつめは、マスコミのいう「不偏不党」という視点からです。望月記者はフリージャーナリストではなく、東京新聞の記者です。本を出すからには会社の許可を得ているはずですから、これは新聞社と政党がある特定の思惑で結びついているということの証左でもあります。全然不偏不党ではないわけです。
いっそのこと不偏不党などという空疎なスローガンなど捨ててしまえばいいのですが、新聞社はそれをしません。なぜなのかというと、大っぴらにそれをやると読者の支持が減るのではないかと恐れているからではないかと思います。
自分は新聞社については「いやなら読むな」で済む話だろうと思っていますので、別に不偏不党でなくてもいいのではないかと考えます。特定の政党をひいきにしてもいいですよ、とみんなが認めればいいのだと思います。
ですが、それには条件があって、「テレビ局とのクロスオーナーシップを解消しろ」というのがそれです。テレビ朝日に朝日新聞の論説委員とか政治部記者が出まくって自説を垂れ流すのだけはやめてもらいたいですね。電波は国民のものですから。テレビこそ不偏不党でなければならないのですから。

結局、不偏不党というスローガンを捨てきれないならこうした現役議員との共著など問題であると考えなければならないはずですし、不偏不党をやめるのであれば何を書いてもいいけれどテレビとの癒着は許されないわけで、いずれにしても現状では矛盾極まりないと言わざるを得ないですね。

と、ここまで書いて記事を漁ったら、アゴラに自分の主張とほとんど同じ記事がリリースされていて失笑です。自分を同じことを考えている人がいたことにちょっと安堵しますが、アゴラさんの方が圧倒的に良い記事ですね。
東京新聞は、望月記者が現職議員と共著を出すのをよく認めたね(1/16アゴラ)

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内容(実業之日本社HPより)
あいつらは飢えた狼だ――
この世を地獄に変える
凶悪軍団vs復讐を期す刑事
目をそむけたくなる冷酷な連射……。
神奈川県南足柄市の山中で、敏腕女刑事らが殲滅された。
急襲したのは「最後の天才極道」率いる武装犯罪組織「栄グループ」。
既成暴力団幹部らも抹殺し、警察にも内通者を抱えていた。
警視庁特捜隊は彼らを追うが、仲間を殺戮され、復讐を期す。
死をも恐れぬ者どもの闘いの果て。
類例なき警察小説の神髄。
血まみれの暗黒警察小説!
いきなり文庫!


曹源寺評価★★★★
深町センセーの著作は最近、面白いのが増えてきたように思っています。タイトルに惹かれてさっそく読みましたが、版元の紹介文をお読みのとおり、暗黒警察小説という名に恥じぬどす黒さで埋め尽くされていました。
ヤクザも顔負けの非合法犯罪組織「栄グループ」の外道っぷりは半端じゃありませんでした。端的に言えば「自分たちの目的のためなら街中でマシンガンをぶっ放す連中」という感じでしょうか、なかなかにエグいなあと思います。しかも、その組織に対して警視庁の組織犯罪対策部が特別チームを組むというのは分かるのですが、ちょっと小規模過ぎやしませんかね。冒頭から神奈川県警の精鋭がライフルでぶっ飛ばされているのに、何を悠長なことしているのか、と。
そうしたツッコミどころは読めば読むほど湧いて出てくるのですが、それをやってしまうと本書の面白味は半減してしまいますのでこれ以上は止めておきます。
しかし、これだけは書いておきたい。(ネタバレになりますのでご注意)
自分はこれまで数多くの警察小説を読んできましたが、

これほどまでに先の読めない展開ははじめて

です。
死闘に次ぐ死闘。復讐の連鎖。死して屍拾う者なし。
いつだれが命を落とすのか、予測不能の展開に唖然茫然です。登場人物の突然の死に「えっ、えっ?」と反応してしまうシーンは数知れません。バイオレンス満載の警察小説がお好きな方はぜひお読みいただきたいですが、そうしたジャンルが苦手な方は読まない方が無難です。お好きな方はおそらく、ページをめくる手が止まらなくなると思います。冒頭からラストまで銃撃戦と乱闘のオンパレードですので、お気をつけてどうぞ。





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2017年12月29日

書評861 本城雅人「代理人 エージェント」

こんにちは、曹源寺です。

ある会社の話です。
執行役員で営業部長でもある花田部長にはT君という部下がいます。T君は外国人です。ある日、同じ会社の外国人会があって呼ばれたら、酔っぱらった別の部の先輩からビール瓶で頭を殴られました。
T君は花田部長に怪我の報告をしなかったのですが、2日後にばれました。花田部長は社長に報告する義務がありますが、会社はこうした内輪のもめ事を嫌う性質があるのでうやむやになってしまうのではないかと恐れました。花田部長は警察に届け出ることにしました。
社長以下、経営陣は激怒しました。なぜ、警察沙汰にしたのか、と。会社のイメージがガタ落ちではないか、いったいどうしてくれるんだ、と。
花田部長は何の言い訳もせずに沈黙を守っています。会社はしょうがないので加害者のH君を諭旨解雇し、その上司のI部長を降格処分にしました。しかし、同じように花田部長も降格処分にしました。
さて、悪いのは誰でしょうか。

黙して語らない花田部長ですが、ここでこの事件のカギを握るキーワードがひとつありました。それは
「公益通報者保護法」であります。
いわゆる、内部通報者の権利を保護するための法律です。粉飾決算やリコール隠しなどの企業の不祥事については公益の観点から告発することを奨励している(というか妨げない)というのが法の趣旨です。今回の暴力事件も被害者として、司法に解決を委ねることについては何の落ち度もありませんし、内部通報と同時に会社に告発の事実を報告するなんて馬鹿はいません。花田部長の行動は公益通報者保護法によって守られるべき事案と言えるでしょう。

上記はフィクションですが、なんだか同じような事例がどこかの興行団体でも発生しているようですね(すっとぼけー)。事件や事故、トラブルなどに関する善悪の判断はなにか別の事案と照らし合わせるのが一番ですね。人類は何千年も生きてきているわけですから、似たような事例はいくらでもあるのだと思います。

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内容(実業之日本社HPより)
敏腕代理人の裏の顔は、スキャンダル仕置人!?
選手(クライアント)の不祥事は、ヤツに任せろ。
金にこだわる姿勢から、メディアに「ゼニバ」と揶揄されるスポーツ代理人・善場圭一だが、手腕はピカイチ。
契約選手の全打席・全投球をチェックして球団との交渉に臨み、有利な条件を勝ち取っていく。
そんな彼の頭脳は、さまざまトラブルを引き寄せる。
暴行疑惑、女性問題、違法な賭け事etc
タフでクレバーな男は、いかにして問題を解決するのか!?
2017年度吉川英治文学新人賞受賞作家にして、球界の内幕を知り尽くした元新聞記者だから描ける傑作ミステリー、ここに誕生!

曹源寺評価★★★★★
「ビーンボール スポーツ代理人・善場圭一の事件簿」(改題前は「オールマイティ」)という作品がありまして、その続編という位置づけみたいです。「ビーンボール」を未読のまま本書を読んでしまいましたが、やはりビーンボールから先に読んでおいた方がよさそうな内容でした。
元プロ野球選手の善場圭一はプロ生活1年で退団し、その後司法試験に合格して弁護士の資格を得てプロ野球選手のマネジメントを中心に行う事務所を設立し、代理人(エージェント)として活躍。世間からは「ゼニバ」と呼ばれるほど金にうるさい守銭奴という評価であるが、マネジメントするのはたったの3人までと決めている。それは絶対的な信頼関係の構築なくしては代理人契約を結ぶことはできないというポリシーに基づいているからだ。
本書は連作短編の形式で、現役選手が抱えるトラブルに立ち向かう善場の活躍を描いています。現実社会においてもプロスポーツ界は覚せい剤や不倫、違法カジノへの出入りといった話題は枚挙に暇がありません。こうした数々のトラブルを解決するのが代理人ですが、日本ではメジャーリーガーほど代理人が制度として確立されていないのもまた現実であります。
ですので、この善場圭一の活躍は

ある意味近未来小説であると言っても良い

のかもしれません。団野村のように先駆者がいないわけではありませんが、国内ではまだまだ認知度が低いし、活躍の場も少ないです。
そんな代理人がトラブルシューティングのためにさまざまな手法を駆使して解決にあたるという作品は、もっともっと多くのネタがありそうですからシリーズとしてがっつりやってほしいなあとも思います。
本城センセーはサンケイスポーツにも在籍したことがある元新聞記者ですので、プロ野球や高校野球などの裏側にも詳しいはずです。マスコミ業界を書くよりも、本書のようなプロスポーツのネタのほうがいっぱいお持ちではないかと思います。作品はどれもちょっと軽めであっさりしていますので、もっとドロドロしたような内容でも良いんじゃないかくらい思いますが、それはやはり「ゼニバ」と呼ばれるくらいの守銭奴と言いながらも主人公は結構いい人だったりするわけで、キャラがもっとぶっ飛んでいればいいのにと思うのと同時に、プロスポーツというちょっとマニアな世界を描くだけにストーリーも万人向けになってしまっているのが大きいのかもしれません。
ですから、
キャラを極端にして地味なストーリーに味付けする

キャラは今まで通りだけどストーリーをコアなファン向けにする
かのどちらかにシフトすればいいんじゃないかと思います。





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2017年10月20日

書評845 深町秋生「ドッグ・メーカー 警視庁人事一課監察係 黒滝誠治」

こんにちは、曹源寺です。

本日の日経平均が14連騰ということで過去最長に並んだそうです。
日経平均、14日連続上昇=高度成長期以来、約57年ぶり(10/20時事通信)
20日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比9円12銭高の2万1457円64銭で終わった。高度経済成長期の1960年12月21日〜61年1月11日に記録した過去最長の14営業日連続上昇に56年9カ月ぶりに並んだ。

普通は上がったあと少し下がって、また上がるといった具合に相場は絶えず上下に動いていくものですから、14連騰はちょっと異常といえば異常です。
しかも、我々庶民には景気回復の実感があまり伴っていませんので、一部の富裕層や投資家、金融機関だけが儲かっているような印象を受けてしまいます。トリクルダウンという言葉も実際には発生しないような空疎な単語であったことも分かっています。
では、このアベノミクスの成果を広く還元するためにはどうしたらよいのか。
これはやはり、「賃金を上げて消費税率も凍結かあるいは下げる」という一択です。社会保障費と消費税の上昇で実質賃金は目減りしているわけですから、財布のひもが緩むわけがないのですから。
自民党は企業に(というか財界に)法人税下げるから賃金上げろと主張しています。その一方で消費税率を上げるぞ、とも言っています。これをどう解釈すべきか悩んでいましたが、おそらくは「財務省対策」なのではないかと勘繰っています。
つまり、権限の強い財務省には「消費税率は上げざるを得ないな」と言っておいて、実際には「景気回復の実感が伴っていないから消費税率は上げません」という戦略ではないかと。
真偽のほどは分かりませんが、かの民主党政権時代も結局は財務省にいいように踊らされて消費税率は凍結も引き下げも実行できていません。それだけ財務省は手強いのだろうと思います。

もし、自民党が財務省対策でなく本気で消費税率を上げようとしているならば、それは明確に反対のサインを投げて良いのだろうと思います。

ただ、一方では賃金を上げようと連合に働きかけているのに、その連合は(旧)民進党を応援したりしていてもう本当に訳が分かりません。
野党のほうはこうした賃金政策について、きちんとコメントを出すべきでしょう。あぁ、でも経済対策に関しては全然ダメダメなんだよなぁ。

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内容(新潮社HPより)
黒滝誠治警部補、非合法な手段を辞さず、数々の事件を解決してきた元凄腕刑事。現在は人事一課に所属している。ひと月前、赤坂署の悪徳刑事を内偵中の同僚が何者かに殺害された。黒滝は、希代の“寝業師”白幡警務部長、美しくも苛烈なキャリア相馬美貴の命を受け、捜査を開始する。その行く手は修羅道へと繋がっていた。猛毒を以て巨悪を倒す。最も危険な監察が警察小説の新たな扉を開く。


曹源寺評価★★★★
深町センセーも意外と警察小説を数多く上梓されていて、不勉強にも未読の作品が結構残っています。
本書はその中でも監察官という異色の立ち位置にいる警察官を主人公に据えた作品でしたので、ちょっと興味がわきました。
異色の警察官というジャンルは、かの横山秀夫センセーが開拓したのが始まりと言われていまして、警務部という部署を描いた「陰の季節」から広報官という役職の人物の孤軍奮闘を描いた「64(ロクヨン)」まで本当にさまざまです。
主人公の所属するポジションは警視庁の人事一課というセクションで、主な業務は監察ですから、警察のなかではそれなりに権力を持っている部署だと思います。そんな部署の人物を主人公に据えたにもかかわらず、盗聴、尾行、暴力、脅迫、果ては殺人まで出てくるというとんでもない内容の作品であります。主人公の黒滝誠治は元々組対(組織犯罪対策課、つまりマル暴ですね)にいたやり手の刑事だったが、ある事件の内偵中に子飼いのエス(スパイ)を殺された恨みで情報を漏えいさせた部下を半殺しにしてしまい、交番勤務になったところを人事一課に拾われたという経歴を持ちます。なんだかとんでもない経歴です。ちょっとイカレていますが、どんなイカレっぷりかは本書をぜひお読みください。

監察を主人公にしてここまでやるか?

というくらいド派手な立ち回りを繰り広げてくれます。
尋常ではないこの派手なアクション。警察内部の血で血を洗う抗争は警察版仁義なき戦いと言っても良いくらいディープです。
黒滝の周囲を固める人物もキャラ立ちまくっていますし、ラストは大団円でもありませんので、こうなると必然的に続編を期待してしまいます。期待しましょう。するしかない。





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2017年09月05日

書評833 古野まほろ「新任刑事」

こんにちは、曹源寺です。

東京新聞には望月衣塑子記者という名物記者がいまして、ネットではすでに有名人となっております。
彼女のツイッターを開くと、非常に香ばしい方々がリツイートしていますので、あぁ、こういうネットワークでつながっているんだぁ〜、というのがよくわかります。
内閣官房長官による記者会見の席では、菅官房長官に同じ質問を繰り返し行うことで一躍有名になりましたが、菅長官としては同じ質問をされても同じ回答しかできないので、温厚な性格の菅長官をしてもブチ切れ寸前の状態になっています。一方、望月記者としては「あの菅長官をうろたえさせた」とか「本音を引き出す鋭い質問だ」などと周囲が褒めそやすものだから、ちょっと勘違いされているようにも見受けられます。
彼女の質問の内容をみると、自分で取材して裏付けを取ってそれを突きつけるといったものではなくて、自分の意見を主張して演説をぶって同意を求めている、といった類のものに聞こえるんですね。だから相手が「ちょっと何言っているかわからない」とサンドウィッチマン富澤のようになってしまうんです。
それで、読売新聞社が「イソコは記者クラブから出て行け」と激怒したらしい、みたいな記事まで飛び出すようになりました。まあ、その辺の真偽は定かではありませんが。

そう、記者クラブです。

この得体のしれない組織(というか団体)は本当に役立たずですね。仮に記者クラブが総意で「イソコ出て行け」となったところで、あの団体には合議のシステムなんてないでしょうに。ただただ、仲間外れにするだけだと思います。まあ、それならそれで良いんですがそのことによって自浄作用が働いたなんて言うつもりはこれっぽっちもありません。
記者クラブなんて官公庁自治体に巣食っているだけの寄生虫です。
自分も昔は霞が関のプレスリリースボックスに毎月一回は記事を投げ込んでいたことがありますが、あんなのネット時代の今では過去の遺物でしかありません。官公庁にしてみれば、記者たちに場所を取られ、電気代を支払い、記者たちにつきまとわれ、場合によっては阿る。メリットよりもデメリットのほうが圧倒的に多いわけです。

望月イソコのように暴走する記者が出始めた今、記者クラブがどのような対応をしていくのかという点だけは一応注目しておこうかと思います。

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内容(新潮社HPより)
六年目、28歳、新人刑事。同期なのに先輩の女性刑事は優秀すぎるし、やらないといけないことも多すぎる――。でも、がんばります、市民のみなさまのために! と思っていたら、時効目前の犯人、目撃情報が。どうなる、僕? テレビや小説で無視されてきたディテイル満載。元キャリアの著者だから描けた超絶リアルな警察小説!


曹源寺評価★★★★★
元キャリア警察官という肩書きで異色の警察小説を出してこられた古野センセーが、今度は刑事警察の実態を余すところなく書ききったのが本書であります。前作「新任巡査」では交番の制服警官の実態をリアルすぎるほど細かに書かれていますが、今度は県警の刑事を主人公に据えてミステリチックに書き上げられました。
ハコ番勤務から6年、原田貢巡査長は愛予署の刑事一課強行犯係に配属となった。そこにいたのは同期のエースである上内アリス巡査部長。愛予署にはあと3か月で時効が成立する傷害致死事件があり、平岡署長以下、全員が容疑者の渡辺美彌子の確保に全力を注いでいた。そんななか、原田宛てにタレコミの電話があり、事件は急転直下を迎える。。。
古野センセーの作品の魅力は何といっても、普通の警察小説やテレビドラマでは描写されないリアルな現場のリアルなディテールであります。刑事が変死体の検証を行うと1,600円の手当がつく、という事実を刑事ドラマで放映してくれるはずはありません。死体遺棄現場のそれぞれの証拠品について、ひとつひとつ「捜査報告書」を作成しなければならないことを「踊る大捜査線」や「新宿鮫」で描写されることはありません。これらはまさに筆者自身が経験されてきたからこそ書ける内容でありましょう。ある意味そこはノンフィクションであるとも言えます。
同じ警察小説の「新任巡査」よりも、本書のほうが(より「事件」なだけに)臨場感を求める警察小説ファンにはたまらない内容であると思います。
しかし
しかしですね、ミステリとしての本書はどうかと言いますと、第3章まではまあ普通なんですが、ラスト80ページ、つまり解決編となる第4章に関してはだいぶぶっ飛んでいます。これはネタバレになるのでどこまで書いたら良いのか迷いますが、少なくとも以下の2点に関しては言及しておいた方が良いかと思います。
・主人公の原田貢が(それまでのドジな新人刑事から打って変わって)急に名探偵になる
・謎が残っていて回収されていない
ひとつめのやつは、原田の科白があまりにもロジカルなので冒頭のキャラクターとのアンマッチに思わず苦笑いですわ。いくら原田が成長著しい青年だからといって、ここに至るまでの描写とはあまりにも異なりすぎていて違和感満載です。これ、作者の論理思考をリアルに反映しているので、これをメインに据えるなら主人公のキャラを最初から作者に似せて作りこむべきだったと思いますわ。
ふたつめのやつは、タレコミ電話が誰かの思惑であったとしても、それが誰からのものだったのかくらいは明らかにしておいて欲しかったですね。それと、焼死体についても結局誰やねん。という疑問が頭の中を渦巻いて回ってしまいました。
逃亡犯の遺書めいた文書の謎のところが

非常に緻密で奥行きのある出来なだけに惜しいなあ

と思ってしまいます。





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2017年09月01日

書評832 東野圭吾「恋のゴンドラ」

こんにちは、曹源寺です。

北朝鮮によるミサイル発射のあと、なぜか北朝鮮を批判せずに政府の対応を批判する人が湧いて出てきました。共産党や民進党は言うに及ばず、TBSの星浩とかテレビ朝日の後藤謙次とかテリー伊藤とかいろいろいます。
主張の大半は「これ以上北朝鮮を刺激するな」とか「米韓共同軍事演習を日本が止めさせるべきだ」とか「いまこそ対話が必要なのに安倍首相はなにをやっているんだ」とか。逆に、「もう日本は我慢の限界だ」とか「そろそろ完全に黙らせる段階に来たな」とか、そういう発言はテレビでも新聞でもお目にかからないですね。まあ、冷静になるべきだという発言には同調しますが、北朝鮮に阿るような発言をしている輩にはこれ以上発言してもらいたくないですね。

内山宙とかいう弁護士が指摘している面白い発言がありました。以下、勝手に貼り付けます(Facebookより)。
【ミサイルは日本の領空を飛んだのでも領海に落ちたのでもなかった件】
ここでいくつか確認しておきましょう。
領海=12海里(約22.2キロ)
1海里=1852m
襟裳岬の東約1180キロ=領海の53.15倍
領海は、落ちた距離の1.8%にしかなりません。
領空=宇宙空間より下
宇宙空間=一般的には高度100キロより上
大陸間弾道ミサイル=高度数百キロ以上
火星14号のロフテッド軌道の高度=3724.9キロ
(追記)今回の高度は550キロ
(追記)PAC3では、高度15キロまでしか上がりません。
(追記)イージス艦に配備されているSM3という迎撃システムでも高度500キロまでしか上がりません。
つまり、今回の北朝鮮のミサイルは迎撃不能な高度を飛んでいたということです。
領空は、前回のミサイルの高度の5.8%にしかならず、今回の高度の18%にしかなりません。
PAC3の射程は、今回の高度550キロの2.7%にしかなりません。
(追記)SM3でも、あと50キロ足りません。
宇宙ステーションでも高度400キロなので、どう見ても宇宙空間を飛んでいたということですね。(追記ここまで)
というか、宇宙から落ちてきたら、普通、燃え尽きます。
襟裳岬から1180キロ先も、高度3700キロも、いずれも日本の領海領空ではありませんし、危険性もありません。
破壊措置は取っていないんじゃなくて、取れないんです。この距離では。
野球場に野球盤を持ち込んで遊んでいる人の頭の上をホームランが飛び越えていったようなイメージでしょうか。
むしろ、危険性があったら戦争になるし、米軍が北朝鮮を攻撃する口実になってしまいますので、それは避けていると見るべきではないでしょうか。
(追記)
念のため補足しておきますが、北朝鮮がミサイルを発射したこと自体は許されないことですし、国際的な非難に値しますし、周辺国を威嚇することで自国の目標を達成しようとする態度は問題があり、なんとかして抑止されなければなりません。
しかし、「上空」でも、「領海」でもないのに、しかも、「完全に把握していた」と言うのであればJアラートなんて使う必要もなかったのに、いたずらに国民の不安を煽り立てる言説はおかしいですよね、と言うことです。
この点が、この投稿のもっとも伝えたいポイントです。客観的な情報を元に正しい情報発信がされなければなりません。わざと混同させる言い方をし、不正確な言い方をすることで不安を煽り立てるのはよくありません。
ましてや、このミサイル発射は、日本への攻撃でもなんでもありませんし(領空領海を侵していない)、アメリカへの攻撃でもなく(グアムにもアラスカにも届いていない)、仮に限定的な集団的自衛権を認めるにしても(私は違憲という立場ですが)、その要件も満たさないものです。
これを日本への攻撃という安倍首相の言い方は間違っているし、日本が侮辱されたから全ての選択肢がテーブルの上にあるというトランプ大統領の言い方は危険極まりないものです。
侮辱されたから武力攻撃するって、どれだけ危険かわかりますよね。
中国を巻き込みつつ、国連の場でしっかりと制裁して、まずは外交の努力で抑止していく必要があります。
対話の段階ではないなんて言ってしまうと、あとはもう戦争ですか、ということになりかねません。

(以上)

要約すると、今回のミサイルは日本の「領土」「領空」「領海」のいずれも侵犯していないので、もうちょっと冷静になれよ、ということのようです。

ふむ、確かにその通り、距離的な観点からみれば侵犯はしていませんね。冷静になれよ、というのもわかります。

しかし、こんな解釈が国際社会で通用するわけはありません。なぜなら、この主張はあくまでも結果論でしかないという点で思いっきり間違っているからです。ミサイルが発射された時点で日本の東北地方に向かっていったことは間違いないわけで、政府がJアラートを鳴らさないわけにはいかないでしょう。完全に把握と言ったところで宇宙まで飛んでいくのか領土を狙っているかなんてわかるわけないのです。
例えて言うなら、隣に住んでいるやくざ者が朝っぱらから拳銃を空に向かって一発発射したら、弾丸はたまたま我が家の上を通過して遠くの池に落っこちた、ということでしょう。これに抗議しない家はないんじゃないですかね。場合によっては警察に頼ることもあるでしょう。我が家に猟銃があれば自ら乗り込んでいって「いい加減にしろやこら」と言うのもあるでしょう。
おそらく、これが戦争です。
つまり、猟銃を持たない日本だから戦争になっていないだけで、他国ならとっくに戦争になっているくらいのことを北朝鮮はやっちゃっているのです。

この弁護士の主張を真に受けて(つまり結果論だけを踏まえて)
「Jアラートなんて大げさだ」
「戦争戦争と騒ぎすぎるな」
などと主張するのは北朝鮮を利するだけでしかないと思います。

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内容(実業之日本社HPより)
この恋の行方は天国か地獄か
真冬に集う男女8人の運命は? あの東野圭吾が“恋愛”という永遠のミステリーに真っ向から挑む。衝撃の結末から目を逸らすな!


曹源寺評価★★★★
東野センセーが雪山関連の作品を立て続けに出しておられたことがありまして、まだ「東野圭吾雪山まつり」なるサイトも残っておりますが、本書はその中の一冊として2016年11月に登場したものです。
連絡短編形式で、男女の恋愛をコミカルかつシビアに書き上げた軽い一冊に仕上がっています。

ええ、軽いです。

90年代の東野作品にはこうした軽い作品(「黒笑小説」とかその辺)があったように思いますが、近年の作品は概して重厚かつ悲哀あふれる作品が多いのですっかり忘れておりました。
ひとつひとつの作品は完結していますが、連作なので登場人物が入れ替わりつつも全部つながっているという仕上がりが、読者に納得感を与えてくれます(劇団ひとりの「陰日向に咲く」みたいな感じですね古)。
スキー場の恋愛というのは90年代に死滅していたわけではなく、今も変わることなく連綿と続いているのでありました。
冒頭のシーンは、彼女がいて婚約までしているのに別の彼女とスキー場に来て、たまたま婚約者とばったり出会ってしまう男の話から始まります。これはまあ恋愛モノとしてはありがちですね。また、滑走する姿はめちゃくちゃカッコイイのに、東京で再会したらダサすぎてドン引きした、という話はあまりにも典型的ですが普遍的でもあります。しかし(ネタバレ)、その逆はどうなんでしょうか。彼の仕事っぷりに改めて惚れ直すといったストーリーはあまりお目にかかれないでしょう。
軽く読めて楽しい、若者の恋愛ストーリーとして納得の作品です。





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2017年07月21日

書評821 馳星周「暗手」

こんにちは、曹源寺です。

河野太郎という衆議院議員がいます。神奈川15区です。ご尊父はあの「紅の傭兵」と言われて久しい河野洋平氏であります。衆議院議員を14期も務めた重鎮ですが、途中、新自由クラブを作って自民党に反旗を翻した経緯もあります(まあ、新自由クラブはクソがつくほどまじめな田川誠一氏とか犯罪者山口敏夫とかごった煮の状態でしたが)。
父親はともかく、息子の太郎氏は「ごまめの歯ぎしり」というブログを開設していまして、自分もマメに目を通していますが、これが結構面白いんですよ。
特に話題を集めたのは2016年11月から不定期に投稿された「研究者の皆様へ」というタイトルのシリーズです。基礎研究費の削減によって官公庁および国家機関で働く研究者の方々の効率的な費用の使い方などに言及されていて、それがかなり具体的で細かいということで話題になりました。河野議員の現場主義が非常にわかる内容になっています。
自分はこの議員、それほど好きではありませんが、いやむしろ嫌いな方かもしれませんが、このブログだけは読みます。そして信じます。なぜかというと、あえて敵を作ってまで正論をぶちかましているところが気に入っているからです。時には霞が関の官僚さえ敵に回しています。文章はそれほど難解ではありませんし、提起される諸問題もかなり的を射ている内容が多いです。

そんな河野議員の最新の投稿がこれです。
南スーダンの日報問題(7/20)
自衛隊の南スーダン派遣施設隊の日報に関して、私には意見を言うちょっとした権利があると思う。
ということで、一言。
一昨日からの南スーダンの日報に関する報道を見ていると、ちょっとピント外れなものが多い。
自衛隊の南スーダンの派遣施設隊の日報は、二月六日にはその存在が明らかになっており、機密部分が黒塗りになっているもののすべて公開されている。

繰り返すと、「二月六日には日報はすべて公開されている。」

だから二月十五日に、防衛省で開かれた会議で、日報を隠蔽することはできないし、公開するかどうかを決めることはできない。
このニュースの中で、NHKにしろ、民放にしろ、二月六日に日報がすべて公表されているということに触れていないのは、視聴者に誤解を与える。
二月十五日の防衛省の会議で問題になることがあるとすれば、陸自で見つかった日報は、個人のものなのか、行政文書なのかという判断だ。
もし、日報がそれまでに見つかっていなかったら、行政文書だろうが、個人のものであろうが、陸自で見つかった文書は干天の慈雨のようなものであり、日報が見つかった、よかった、ということになっただろう。
ただし、もしそれが個人の文書だったら、それが改ざんされていないかということが問題になるだろうが。
しかし、それまでに日報が見つかって公表もされているのだから、問題は陸自で見つかった文書が個人の文書なのか、(その場合、特に問題はない)、行政文書なのか、(この場合、最初に開示請求をされたときに、探し方が足りなかった)ということになる。
個人の文書ならば、それが見つかったことを公表する必要もないだろうが、行政文書ならば、当初の探し方が足らなかったことが明らかになったことを公表する必要がある。
防衛省は、見つかった日報が個人の文書だと考え、特に発表の必要がないと考えた。
しかし、日報に関してはそれまでいろいろとあったわけだから、自分たちで判断するだけではなく、内閣府の公文書課や国立公文書館に、きちんとした判断を仰ぐべきだった。それがこの騒動の本質ではないか。
こうした説明もなく、あたかも日報を隠蔽する決定が行われたかのような報道は、間違っていないか。


ストレートのド正論でありました。
河野議員はブログで正論かますだけなら超一流であることがわかります。これを援護射撃する動きが自民党内から上がれば面白いかなとは思います。

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内容(KADOKAWA HPより)
生きるために堕ち続ける
『不夜城』『夜光虫』の衝撃から20年
究極のクライムノベル誕生!
台湾のプロ野球で八百長に手を染め、罪から逃れるために次々と殺しを重ねた加倉昭彦。居場所を失い、顔も名前も変えて過去を抹消、逃れ着いたのはサッカーの地イタリアだった――。イタリアの黒社会では、殺し以外の仕事なら何でも請け負い、いつしか「暗手」――暗闇から伸びてくる手――と呼ばれるようになっていた。そんなある日、サッカー賭博の帝王・王天から、ロッコに所属する日本人ゴールキーパー・大森怜央に八百長をさせろとの依頼が舞い込む。計画実行に向けて着実に準備を進めていく加倉だったが、大森の姉の写真を目にしてから過去の記憶がよみがえり、計画の歯車が狂い始める……。


曹源寺評価★★★★★
馳星周センセーの傑作のひとつに「夜光虫」という作品がありまして、1998年の初版ですからもうかれこれ19年も経つわけですが、その続編が本作であります。
主人公の「暗手」ことヴィト・ルーは日本人、加倉昭彦としてかつては台湾のプロ野球選手であったが、八百長に手を染め、逃亡し、逃亡のために何人も殺めてきた過去を持つ。このヴィト・ルーが今度はイタリアを舞台にして、サッカーの八百長試合を仕掛けていきます。
一度でも八百長に加担したら二度、三度と引き返せなくなり、最後は身の破滅となる泥沼行為であるが、嵌められたと思った時にはもう遅い。これまで何人もの選手を地獄に導いてきたヴィトは日本人、高中雅人として地元のクラブでゴールキーパーを務める大森怜央に近づき、親切なタニマチとして振る舞いながら裏では八百長にかかわらざるを得なくする工作を仕掛けていく。
一方、イタリアの黒社会でサッカー賭博の帝王となっていた王天は暗手のほかに殺し屋の馬兵を雇っていた。馬兵と暗手が交錯したとき、大いなる深淵が口を開けて待ち構えていたのだった。。。
賭博が絡んだ黒社会ともなれば、大きな金が動けば一触即発、血の雨が降ること間違いなしの展開です。しかも台湾マフィアです。
馳センセーの真骨頂のような作品に読む手が止まりません。
前作「夜光虫」はもうほとんど記憶の彼方に飛んで行ってしまっておりましたが、読み進めるうちになんとなく思い出しました。でも

前作を読んでいなくてもすんなり入っていける

懐の深さがありますね。450ページを超える大作ですが、あっという間に読み終えること間違いなし。スピード感あふれる展開と壮絶なラスト。主人公は生きながら死んでいる「悪霊」であります。業の深い男という自覚があり、誰かが自分を殺してくれる日を待っている。だから死の際でも平然としていられる。しかし本書では一度は愛した女に呪詛の言葉を投げられます。それは(以下ネタバレ)


「くたばれ」という言葉です。くたばれとはイコール「死ね」ではないんですね。表現としては「地獄の底でいつまでも苦しめ」、つまり簡単に死んでもらっては困るレベルということです。
多くの人の恨みを買い、簡単に死んでは自分の魂は救われないだろうという壮絶な生き様。ここまで自己否定を重ねる主人公のノワールはついぞお目にかかったことがありません。これぞ馳星周。さすがです。





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2017年04月11日

書評795 深町秋生「探偵は女手ひとつ」

こんにちは、曹源寺です。

報道では「いわゆる共謀罪について〜」といった表現を使っているテレビ朝日などが、決して「組織的犯罪処罰法の改正」と正式に言わないんですが、もうこうしたレッテル貼りはやめませんかね。

統合リゾート法→カジノ法
平和安全法制→戦争法
組織的犯罪処罰法→共謀罪
日本食認定制度→すしポリス

これ全部どこかの政党かマスゴミが言い換えたんですよ。ほかにもレッテル貼って一般大衆を誤認させているのがありそうですので、今度まとめて調べてみようと思います。
特にこの組織的犯罪処罰法については、批准していない国が先進国では日本だけ、世界でも極めて小数になっているというのに、いろいろな理屈を捻じ曲げては反対している政党、団体、マスゴミが目に付きますね。
「表現の自由が侵害される」とか言いますが、ではスパイ防止法とかテロ対策法を批准している国は表現の自由がないのでしょうか?
否、まったくそんなことはないですね。欧州各国はほとんど批准していますので、これはまったく矛盾しています。もう屁理屈をこねても一般大衆は分かっていますので、いい加減にくだらない反対運動はやめて欲しいものです。

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内容(光文社HPより)
椎名留美は娘とふたり暮らし、山形市で探偵をしている――とはいうものの、仕事のほとんどは便利屋の範疇だ。パチンコ店の並び代行、農家の手伝い、買い物難民と化した高齢者のおつかい、デリヘルの女の子の送迎などなど。シーズンを迎え、連日さくらんぼ農家の手伝いをする留美に、元の上司である警察署長から、さくらんぼ窃盗犯を突き止めて欲しいという、久し振りの探偵らしい依頼が入ったのだが……。


曹源寺評価★★★★
深町センセーの最新作は連作短編の探偵モノでしたが、これがまたすごかったです。何がすごいって、舞台が山形市でちょっと仙台市内まで足を運ぶことがあっても基本は山形。元警察官にして夫とは死別している一児の母、椎名留美が主人公です。探偵事務所を開いているものの、依頼の大半は便利屋で、農作物の収穫の手伝いとかパチンコ屋の行列の代行とかデリヘルの送迎とか雪掻きとか、田舎ならではのさまざまな仕事に従事している。そんな留美が探偵らしい仕事をすると、いろいろと事件に巻き込まれていく。。。
地方の農村地帯を舞台にした探偵モノ、というジャンルは横溝正史のようなおどろおどろしいやつは別にして、あまりお見かけしたことがありませんでした。なんだか

コッテコテの山形弁が一周廻っていい感じ

に、ほんわかしています。
ストーリーは全然ほんわかではないのですが、留美の相棒役となっているのは地元の伝説の元ヤンだし、一番最初のお話は山形名物さくらんぼの窃盗事件ですwww
ちょっと悲惨な事件もありますが、全体を覆っているなんとも長閑で素朴な雰囲気は紛れもなく山形のそれでありました。
留美の武器はGPS発信器とスタンガンです。これもまたステキ。今度はこれで長編でも書いていただければ最高です。





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2017年04月07日

書評794 東野圭吾「危険なビーナス」

こんにちは、曹源寺です。

米国がシリアにミサイル攻撃を行ったということで、本格的に世界大戦が来そうな勢いです。米国は戦争が景気対策になっていますので、定期的にどこかを敵に回さないと経済が持たないのではないかと思っていますが、当たらずとも遠からずでしょう。
このミサイル攻撃は北朝鮮にもメッセージとして伝わっていることと思います。
「次はお前の番だ」と。
その意味でこの攻撃は一石二鳥なのでしょう。
ロシアは自分の隣接する国をコントロールできる状態にしておきたい、という願望があります。実際、そうしています。その取りこぼしがチェチェンなのかもしれません。
米国は自分の国にミサイルを向ける、あるいは射程範囲に入れることを絶対に許さない国です。おそらく、北朝鮮はミサイル開発を進めて米国を大陸間弾道ミサイルの射程に入れてしまったのではないか。だから米国がブチ切れた。
米国は怒り、金正男を傀儡にして中国の管理下に置こうとしたら、それを察知した北朝鮮が金正男を暗殺。やれるものならやってみろと言わんばかりの強硬姿勢に、いよいよ米国が動きだした、というのが真相ではなかろうかと。
自衛隊が南スーダンから撤退すると決めたのも、自民党が敵基地攻撃能力を保有しようと提言したのも、横田基地に無人偵察機グローバルホークが配備されたのも、麻生財務相が「日本の新聞が書いているより事態は深刻」と発言したのも、長嶺駐韓大使が帰任したのも、思い返せばすべては一本の線となって北朝鮮に向かっているということが分かりますね。

この手のニュースは非常に断片的ではありますが、つなげてみるとこうした結論になったりするわけです。穿ちすぎかもしれませんが、逆につなげてみようともしないマスゴミ、あるいは知っているくせにきちんと報道しないマスゴミには腹が立つのを通り越しています。
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内容(講談社HPより)
弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である弟の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てば経つほど、彼女に惹かれていく。


曹源寺評価★★★★
安定の東野圭吾センセーですが、今回はタイトルとその内容が微妙にずれているところ以外は面白かった作品の紹介です。
主人公の手嶋伯朗は動物病院に勤務する獣医である。母の禎子の再婚相手である矢神とは養子縁組をせず旧姓を名乗っている。矢神には一人息子の明雄がおり、米国から妻を連れて帰国してきた。しかし明雄はその後失踪。妻の楓が夫の失踪の原因を探るため、矢神家に接近する。縁を切ったはずの伯朗は楓に振り回されながらも矢神家にまつわるさまざまな確執を探り、過去の秘密に迫っていく。。。
この義弟の妻である楓が「危険なビーナス」ということでしょうか。うーん、

そんなに危険なのかなぁ

という感想がよぎっては消え、読み進めていくうちに違和感を覚えてしまったわけです。
危険なのは矢神家のほうだよなぁこれ、って感じなので、

絶対にタイトルがおかしい

と終始違和感でした。
ストーリーはなるほど、最近の東野作品にもありがちな「脳科学」とか「未知の医学的テーマ」、それに味付けする「数学的テーマ」が盛り込まれていますので、「ガリレオ」シリーズよろしく理系人間ならではの描写にとても惹かれてしまいます。実際、「後天性サヴァン症候群」は症例として認められているようですが、これを人工的に作り出そうとする動きはさすがになさそうです。
ラストもちょっとした驚きをもって迎えてくれますので、納得の一冊といえるでしょう。





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2017年02月28日

書評785 東野圭吾「人魚の眠る家」

こんにちは、曹源寺です。

最近流行の言葉に「フェイクニュース」というのがあります。誰が発したか?米国大統領トランプ氏ですね。
ちょっと前には「ヘイトスピーチ」なる単語がネットに溢れかえりました。これを発したのはたしかNHKの人だったと思います。ちょっとしたきっかけでものすごい勢いがつくのがネットの世界です。
で、そのフェイクニュースですが、これと一対になって出回ってきている単語が「ファクトチェック」です。フェイクなのかリアルなのかを「ファクトチェック」するという作業が必要であるとしていますが、マスゴミが報道するニュースのなかにしれっとフェイクが混ざっているというのがデフォルトになってきているという背景がそこにはあります。
本来ならば、ファクトチェックがなされて初めて「報道」されるのがスジでありますが、最近の報道のなかにはフェイクが混ざっているのが当たり前だからみな気をつけましょう!という雰囲気になってしまっています。
これは本来ならばマスゴミ自身が猛省しなければならない事案であると思うのです。
しかしながら、マスゴミはフェイクを訂正しないし、謝罪もしない。垂れ流しです。だから嫌われるのに、だから部数がダダ下がりなのに、これを直そうとしない。まったくおかしな話です。

たとえば、先日の
「米大統領がCNNなどの会見不許可」というニュースが昨日(2/27)に報道されました。しかしこれはホワイトハウスの記者クラブがネットメディアなどの新規参入をさせなかったのが原因とされています。つまり、従来の会場は古くて狭いからネットメディアなどの新興勢力まで収容できないので新しい場所に代えようとしたのに、旧来のメディアが既得権益を盾にして反発したというのが真実のようです。トランプ憎しでこんなことまでゆがめて報道する米国のメディアもゴミだということが良くわかるニュースです。

「フェイクニュース」に対する「ファクトチェック」がますます重要になりつつあるなあとしみじみ思う今日この頃です。
「新聞ファクトチェック」なるブログでも開設したらPV稼げそうですかね。

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内容(幻冬舎HPより)
答えてください。
娘を殺したのは私でしょうか。
東野圭吾作家デビュー30周年記念作品
『人魚の眠る家』
娘の小学校受験が終わったら離婚する。
そう約束した仮面夫婦の二人。
彼等に悲報が届いたのは、面接試験の予行演習の直前。
娘がプールで溺れたー。
病院に駆けつけた二人を待っていたのは残酷な現実。
そして医師からは、思いもよらない選択を迫られる。
過酷な運命に苦悩する母親。その愛と狂気は成就するのか。
愛する人を持つすべての人へ。感涙の東野ミステリ。
こんな物語を自分が書いていいのか?
今も悩み続けています。 東野圭吾


曹源寺評価★★★★
東野センセーの著作のなかに、たまにですがめちゃくちゃ重いテーマを内包させたお話があります。復讐の是非を問う「さまよう刃」とか、娘を殺された親の問いかけや司法の矛盾を投げかける「虚ろな十字架」など、いずれも正解のない問いを読者に投げてくる作品です。
本書もまた、娘の死をどう受け止めるべきなのかを問いかける非常にメッセージ性の強い内容のミステリです(これをミステリと言って良いのかという疑問はありますが)。
脊椎の損傷などにより自分の身体が思い通りに動かせなくなっている人のために、磁器や電気の刺激によって運動をサポートできる医療機器を製造するハリマテクス社を経営する播磨和昌とその妻の薫子。彼ら夫婦の間には長女の瑞穂と長男の生人がいた。ある日、瑞穂がポールで溺れてしまい、植物状態になってしまった。脳死判定を受け入れれば脳死と判断されるであろうレベルにあって、これを受け入れない夫婦。ハリマテクスの技術者である星野によって、脳からの指令がなくても手足などの筋肉組織を動かせるように機械サポートを行うことで、瑞穂は3年も生きながらえる。。。
意識があるのに身体を動かせない人と、意識がないのに身体を動かして健康(!?)を維持している人、どちらも同じ人間であるなら、どちらも「生きている」ことになるのではないかという問いかけが我々に発せられるのであります。
また、
法改正により国内でも脳死患者からの臓器移植が可能になっているにもかかわらず、多くの人がそれを待ちきれずにアメリカに行くという現実があること。
さらには、
いまだ脳死からの生還は実例がないにもかかわらず、日本人の多くは心臓死をもって死と捉えていることや、また、これを改めようとする動きもないこと。
ひとつの問いかけから発展してこんなさまざまな命題を投げかけられるので、読むのをやめてしばし考えるということを繰り返しました。
だから、東野センセーの本にしては珍しく

ページが進まない

のでした。
東野センセーの「重いテーマ」というのは大抵、「答えの出ないもの」であることと同義です。だからこそ考えさせられるし、他の人がテーマにできないものでもあります。
答えの出ないものをテーマにして、なおかつ小説としての落としどころを決めておかないといけない、という常人にはできなさそうなことをしれっとやりのけてしまうところが、東野センセーのすごいところでもあります。
本書のラストはなるほど、みんなが救われて本当に良かったなあと思える落としどころでありました。

おっと、眼から汗が

出掛かってしまいましたよ。号泣ではありませんが、グッとくるラストです。印象に残るなあこれ。





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2017年01月06日

書評771 深緑野分「戦場のコックたち」

あけましておめでとうございます、曹源寺です。

今年の正月はのんびりと親戚参りしただけでしたので、こりゃヤバイ!と思って約5kmのランニングをしましたら思いっきり筋肉痛になりましたorz
たった5kmで、、、しかも首回りまで痛い、、、
鍛えなおそうと決心した正月でした。

さて、最近は統計がいろいろとおかしいというニュースがあちこちで出回るようになりました。特に、統計の表示がおかしいという声は大事です。なぜかというと、見た目で騙されないようになってきているという国民のリテラシーが高まっているのがよく分かるからです。
しかし、一次ソースそのものが誤っていたとなると話は簡単ではありません。

沖縄県の県民所得、低く計算 計算方式変更で最下位維持…「基地問題が経済的足かせになっていることを示したいのでは」(1/5 産経新聞)
都道府県ごとの経済力を示す指標である沖縄県の1人当たり県民所得が、他県の例よりも所得が低くなる方式で計算されていることが4日、分かった。沖縄県は平成21年度の1人当たり県民所得が高知県を抜き、戦後初めて最下位を脱出した翌年度に計算方式を変更し、22年度以降も最下位を維持している。政府関係者は、基地問題が経済的な足かせになっていることを県内外にアピールする狙いがあると指摘する。
(以下、省略)

県民所得は内閣府のホームページから見ることが多かったので、てっきり内閣府が計算しているのかと思っていましたが、各都道府県が算出していたみたいですね。しかもその計算式は公開されておらず、果たして全国で統一された計算方式によって推計されているのか、もしかしたらかなりのズレが生じているのではないか、そんな疑念も湧いてしまいそうです。

「自分で分析したかったら一次ソースを見に行け」とさんざん教え込まれた自分としては、そもそも一次ソースが違っていたらどうしたらよいのかさっぱり分かりません。
最近は政府統計もアラが目立つようになりました。先日も書きましたが、厚生労働省と農林水産省の統計データは公表タイミングが遅すぎてタイムリーに市場を把握することができません。国土交通省と経済産業省は比較的早いのですが、経済産業省はものによっては補正が入りまくっていて使うのにものすごく苦労します。県民経済計算は恣意的な加工が可能となるような集計方式がまかり通っているならば、内閣府がデータだけ収集して統一したやり方で集中的に推計するべきでしょう。


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内容(東京創元社HPより)
1944年、合衆国軍のコック兵となった19歳のティム。彼と仲間たちが戦場で遭遇したささやかだが不可思議な謎とは――戦いと料理と〈日常の謎〉を連作形式で描く、著者渾身の初長編!


曹源寺評価★★★★
2015年の「このミス」2位、「文春ミステリ」3位、そして直木賞候補作にもなったのが本書です。
2段組み345ページの連作短編という名の長編(笑 で、しかも舞台は第2次大戦中の合衆国軍ですから、読むのはそれなりに大変です。
主人公のティモシー(ティム)・コールは南部出身の若者。祖母の料理好きが遺伝して、コック兵に志願します。ティムは周囲からキッドというあだ名をつけられます。そのティムの周囲で(特に戦場で)起こるさまざまな謎を相棒のメガネ君とともに解き明かしていきます。
時間的な舞台としては、1944年6月のノルマンディー上陸作戦から1945年4月のドイツ軍降伏までがこれに当たります。したがいまして、戦争も末期、フランス、オランダ、ベルギー、ドイツ、オーストリアあたりは国際法も関係ないほどドロドロの地上戦が行われた場所という凄惨な舞台であります。そのなかでは気楽なコック兵というわけにもいかず、必要に応じて最前線に送り込まれて補給部隊が来るのをまだかまだかと待ち続ける地獄の戦線に置かれます。
そんなときに呑気に謎解きなどやっている場合か!と思いきや、この謎を解かなければ先へは進めないような、場合によっては戦況がひっくり返ってしまうかのような謎もあったりします(大げさかな)。
まさに殺し合いの場面でさえも筆致が淡々としている一方で、かえってその方が戦場にリアルさを見せ付けてくれるようで読者を精神的に追い込んでいきます。これは生半可なミステリとして読んではいけないのだぞ、と。

つーか、これは戦争小説だよね

と心の中で念じながら読まないといけないでしょう。
仲間が次々と死に、あるいは精神的に病んで、前線復帰できないほどの傷を負い、いつの間にか古参兵となっていく主人公。残った仲間にもある嫌疑がかけられたりします。
ここに主人公の心情を書き連ねてあったら、詠むのが本当に大変だったと思いますが、主人公はかなり淡々としていて、あぁ、これはやはりミステリなんだな、と再認識させてくれます(読後ですが)。

読むのが大変だが、なぜか惹かれる小説

という意味では、京極夏彦センセー以来の何かを感じてしまった次第。





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2016年10月07日

書評749 本城雅人「ミッドナイト・ジャーナル」

こんにちは、曹源寺です。

先日書いた日弁連の件ですが、本日本当に採択されてしまったようです。すげえ記事なので全文引用させていただきます。
日弁連「死刑廃止宣言案」採択、組織として推進へ…会場では異論も噴出(10/7弁護士ドットコムニュース)

日本弁護士連合会(日弁連)は10月7日、福井市で人権擁護大会を開き、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」の案を、参加した弁護士の賛成多数で可決した。組織として初めて、死刑制度廃止の方針を明確に打ち出した。
票数は出席786人中、賛成546、反対96、棄権144だった。
宣言は、死刑判決を受け拘束されていた袴田巌さんが、2014年に約48年ぶりに釈放されたことをあげ、「死刑判決を下すか否かを人が判断する以上、えん罪による処刑を避けることができない」「えん罪により死刑となり、執行されてしまえば、二度と取り返しがつかない」と死刑廃止を訴えた。
具体的には、「日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止」を目指すべきであるとし、死刑の代替刑として、仮釈放がない終身刑制度や、仮釈放を認める場合であっても、開始時期を現在の10年から、20年〜25年程度に伸ばす「重無期刑制度」の導入などを提案した。
宣言が採択される前に、出席した弁護士からの意見表明の時間があり、犯罪被害者の支援に関わる弁護士を中心に、宣言に反対する意見が噴出した。
被害者支援に携わる東京都の男性弁護士は「(こうした宣言を出す日弁連から)私は脱退したい。しかし、強制加入団体だから脱退したら弁護士活動を続いていくことはできない。そのような団体がこうした決議をやることはおかしい」と語気を強め訴えた。
また、大会前日の10月6日に行われたシンポジウムでは、瀬戸内寂聴さんのビデオレターが公開され、その中で、「殺したがるばかどもと戦ってください」と表現していた。このことについて、「(犯人の死刑を望む)被害者遺族の前でこうした映像を流すことが信じられない」との声も上がった。
日弁連側は、「瀬戸内さん特有の思い切りの良いメッセージだと考え、そのまま採用することにした」としつつ、「配慮がなかったとしたらお詫び申し上げる」と述べた。


いろいろ突っ込みたいですね。

まず、一弁護士が個人的に死刑反対するだけならまだしも、法律を守る側にいる職業人として政治活動に堂々と口出しするその姿勢に唖然とします。
そんで、
>>票数は出席786人中、賛成546、反対96、棄権144だった。

明確に反対した人がわずか12%という事実にさらに唖然です。

賛成票を投じた弁護士の実名を公表して欲しいですね。その弁護士には被害者支援を絶対にさせてはいけません。

さらに、瀬戸内寂聴の「殺したがるばかども」発言も許されませんわこれ。まあ、90歳過ぎたBBAの言うこととあしらってしまうこともできますが、発言に影響力をお持ちの方ですからこれはダメですわ。そして、この発言をビデオレターとしてまんま垂れ流した日弁連はもっとダメですわ。被害者をばか呼ばわりしているのは日弁連であることと同義です。
もう日弁連は完全に終了ですありがとうございました。

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内容(講談社HPより)
「被害者女児死亡」――世紀の大誤報を打ち、飛ばされた3人の記者。その七年後、児童連続誘拐事件が発生。さいたま支局の関口豪太郎はかつての事件との関連性を疑い、東京本社の藤瀬祐里は豪太郎の応援に合流し、整理部員となった松本博史は二人を静観する。間違っているのかもしれない。無意味なのかもしれない。しかし豪太郎は諦めない。タネを撒き、ネタに育て、真実を獲得するため、今日も真夜中に動き出す。
特別な結果を出すのは、いつだって、本気の人間だ。


曹源寺評価★★★★
大手全国紙の社会部記者を主人公に据えた社会派ミステリというジャンルは、そういえば最近ご無沙汰していたなあと思いました。ここ数年はとんと話題になるような作品にお目にかかれず、なぜだろうと考えましたが特に答えが出るわけでもないですね。まあ、マスコミの社会的地位の低下や新聞離れ、出版不況などなどとかく逆風の多い業界ですから、しょうがないといえばしょうがないです。
だから、逆に本書が出たときのマスコミの身内びいきというか自画自賛みたいなべた褒めがあちこちから沸いて出てきたのはちょっと笑いました。「クライマーズ・ハイ」以来の重厚な作品!とか、作者は本書を書くために新聞社を辞めた!とか、すごすぎでしょう。

こうした手前味噌的な評価は脇に置いて

冷静に本書を見つめなおしてみましょう。
「まったく、おまえはジャーナルじゃねえな」が口癖の中央新聞の記者、関口豪太郎と、中堅記者の藤瀬祐里、整理部の松本博史の3人を中心にストーリーが展開されていきます。
3人は7年前の児童誘拐事件において、警察関係者の証言から「遺体で発見」との記事をリリースしたが、後に生存が確認され誤報となる。ただ、この事件では犯人が逮捕され死刑執行されたものの、実は複数犯による犯行だったのではないかとの見方が残されていた。そんな折に新たに連れ去り未遂事件が発生、目撃証言から乗用車の助手席にも人がいたとの情報が。新聞記者の活躍を描くミステリとして、かなり濃密な現場のシーンを描いてくれています。
特に圧巻なのは、警察の管理職への夜討ち朝駆けであるいわゆる「サツ回り」のシーンです。記者としての人間を売り込むことで情報を得る、信頼関係を築くことで書いても良い情報とそうでない情報を選り分ける。こうしたやりとりは昭和の時代に終わっているものだとばかり思っていましたが、そうではないみたいですね。泥臭い仕事と言ってしまえばそれまでですが、そこに真実があるなら突き進むのが真のジャーナリストであります。
本書は徹頭徹尾、新聞記者からの目線で描かれていますので、事件の真相に迫りつつもその目線は警察のそれとは違います。そのへんはある程度割り切らないといけません。しかし、登場人物の多さにもかかわらずそれなりにキャラクターを書き分けていることから読みやすいという点、事件へのアプローチが警察小説とは異なり新鮮である点、調査報道の大切さをしっかりと説いている点、新聞社の組織としての論理と記者の論理のぶつかり合い、などなど、これはなかなかに読ませる作品でありました。ディテールの細かさや臨場感といったところが

さすがに元記者なだけあってすごいです。

一方で、その細かな描写が仇となって、新聞記者は自分こそが正義だ!と思っている輩もたくさんいるというところまでリアルに描き過ぎているのが、読者的にはドン引きとなる一面もあるかもしれません。この主人公に共感できる人がどれだけいるのか分かりませんが、少なくとも自分は付き合いたくないですね笑





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2016年09月27日

書評746 誉田哲也「硝子の太陽Rouge」

こんにちは、曹源寺です。

25年もサラリーマンやっているといろいろと思うところはありますが、特に感じるのは「東京で働くことの意味」でしょうか。
いま東京一極集中が激しすぎて、通勤電車がハンパなく混んでいたり、地方都市の衰退が進んでいたり、と世の中が少しずつですが変化してきた結果、かなり歪な感じになってしまったようです。
自分の出身地は一応都心への通勤がギリで可能な場所ですが、人口流出が止まらず衰退傾向が強まっています。でも、地元産品は一応のブランドがあり、土地も安いので住むには良い街だと思っています。老後は地元に戻っても良いとさえ思っていますが、もしかしたら20年後くらいはもっと衰退した街になっているかもしれないと想像すると、ちょっと怖いですが。

その地元はいくつかの大きな製造業が撤退した影響を受けたこともありますが、都心までどうしても1時間以上はかかる立地という点もマイナスとなって、いま人口減少が続いています。地方活性化は政府の看板政策のひとつであるにもかかわらず、なかなか進んでいないどころか東京一極集中が加速している有様です。もういっそのこと、遷都でもしたら良いのではないかと思います。米国に倣って、政府機能を埼玉県の川越市あたりに移してはいかがでしょう。川越には「霞ヶ関駅」がありますのでちょうど良いと思います。

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内容(光文社HPより)
祖師谷で起きた一家惨殺事件。深い闇の中に、血の色の悪意が仄見えた。
捜査一課殺人班十一係姫川班。警部補に昇任した菊田が同じ班に入り、姫川を高く評価する林が統括主任として見守る。個性豊かな新班員たちとも、少しずつ打ち解けてきた。謎の多い凄惨な事件を前に、捜査は難航するが、闘志はみなぎっている。──そのはずだった。
日本で一番有名な女性刑事、姫川玲子。凶悪犯にも臆せず立ち向かう彼女は、やはり死に神なのか?


曹源寺評価★★★★★
光文社と中央公論新社でコラボ出版された硝子の太陽「N」と「R」。どちらを先に読んだほうが良いのか非常に悩むところですが、自分は「N」から読み始めました。結果的に良かったのかどうかは何とも言えません。
この「R」は姫川玲子シリーズですので、あのグロさ満点の「ストロベリーナイト」から続く

「グロ誉田」の真骨頂を行く描写が

所々にありますから注意が必要です。
「N」が沖縄の基地返還問題に絡めた殺人事件なら、本書は日米地位協定に絡めた猟奇殺人事件がテーマになっています。コラボ作品なだけに「N」とはあちこちで交錯しますが、ストーリー自体はそれほど複雑に絡んでいるわけではないです。新宿署の東警部補や小川巡査、「欠伸のリュウ」こと陣内陽一などは本書でも登場しますが、絡むのが姫川メインではなく「ガンテツ」こと勝俣警部補のほうというところもまた良い味付けになっています。東と勝俣の心理戦とかは大沢在昌センセーや佐々木譲センセーなど警察小説の大御所にまったく引けを取らない面白さである、と言っても良いと思います。
世田谷区の祖師谷で発生した一家連続殺人を追う姫川は、捜査途中で代々木のフリーライター殺人事件の捜査班に組み入れられる。この死んだフリーライターが「歌舞伎町セブン」の上岡慎介であり、祖師谷の事件発生現場で目撃されている人物であった。姫川はガンテツの仕込んだ罠によって代々木事件の本筋からは離れてしまうが、、、
「N」と「R」は事件が同時進行していくのですが、お互いが干渉することはあまり多くないです。ただ、どちらもシリーズものであり、強烈なキャラクターを持った登場人物が交差するわけですから、ワクワクしないわけがありません。本書は東警部補と勝俣警部補の駆け引きが秀逸です。しかし、それ以上に警察小説としての面白さが「R」にはあります。事件解決までのプロセスは秀逸です。特に後半、姫川が手繰り寄せた細い一本の糸からつながる過去の事件との関連、

昭島署の刑事達のアツい情熱にはグッとくるものがあります

また、犯人の正体もその確保も一筋縄ではいかないし、何より姫川玲子のメンタルが相当にヤバいラストですから、続きがどうしても気になります。
「N」も「R」もシリーズの続きを意識したラストで締めるなんて、誉田センセーったら本当に思わせぶりな方ですわ。





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2016年09月23日

書評745 誉田哲也「硝子の太陽Noir」

こんにちは、曹源寺です。

最近はヨーロッパ各国において移民問題(治安の悪化、失業率の増加、文化的衝突、など)が顕在化してきて、移民受け入れから真逆の動き(=移民拒絶)になりつつあります。
しかし、日本は逆にこれから移民を受け入れようとしているようで、本当に止めて欲しいです。
自分が移民受け入れ反対なのは、文化的衝突もさることながら、テロの危険増大が最大の理由です。人種差別とかではありません。いつも書いていますが、戦争よりもテロのほうがはるかに危険なのです。戦争にはルールがありますが、テロにルールはありません。テロはいつ発生するか分からないのです。日本をテロリストの温床にしてはいけないと思います。ただでさえ、スパイの温床なわけですから。

移民受け入れの背景には経済成長の鈍化と少子化がありますが、経済成長は人口が多少減少しても何とかなります。フランスやドイツが実際にそうですから。しかし、少子化は問題ですね。自分の職場には男女40名ほど在籍していますが、なんと、お子さんがいる家庭はこのうち8名だけです(!)非正規が7割ほどいるのでしょうがないといえばしょうがないのですが、アラフォー、アラフィフの未婚男性が7名、女性が6名もいます。結婚していなくても肩身の狭い思いをすることはありません。20年くらい前だと「お前、まだ結婚していないのか」と毎日のように責められました。それがパワハラとかセクハラではなくて当たり前の時代でした。今、そんなこと言おうものなら逆にパワハラだ!セクハラだ!訴えてやる!と言われること請け合いです。
それにしても、この非正規雇用の問題だけでなく、教育費の高騰、子育て環境の悪化、核家族の増加、東京一極集中、などなど、少子化につながる要因はかなり複雑に絡み合っているのでその解消は一筋縄ではいきそうにありません。どうしてこんな国になってしまったのでしょう。
やはり、「独身税」の導入と子育て環境の整備、最低賃金のアップあたりから手をつけていくしか方法がないのかもしれません。
少しずつでも前に進んでほしいものです。

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内容(中央公論新社HPより)
誰が、歌舞伎町セブンを売ったのか――? 特捜・姫川の訪問を受けた東警部補は、この国に仕掛けられた黒い罠を嗅ぎつける。〈ジウ〉サーガ×姫川玲子、二大人気シリーズが衝撃のコラボレーション!


曹源寺評価★★★★★
2016年5月に本書ともう一冊、「硝子の太陽Rouge」が同時発刊されました。本書は「ジウ」シリーズの系譜を継ぐもの、そしてもう一冊のほうが「姫川玲子」シリーズの系譜でありまして、同じような装丁になっています。本書の発行元が中央公論新社、「Rouge」のほうが光文社ですので、おなじような装丁で発刊されるというのはある意味奇蹟に近いですね。もちろん、読者としては大歓迎です。
ただ、この「ジウ」も「姫川玲子」も知らない御仁には本書の登場人物の半分も理解できないでしょうから、まずは「ストロベリーナイト」と「歌舞伎町セブン」の両方から読み直さないといけないでしょう。
この「N」の方は新宿署の東弘樹警部補と歌舞伎町セブンの「欠伸のリュウ」こと陣内陽一を中心に語られていきます。沖縄の基地移転問題と反対運動のなかに秘められた謎の取引や祖師谷一家殺害事件がうごめく中、セブンの一人であるフリーライター上岡が何者かにより殺害される。東警部補と陣内は共闘するのか。お互いが腹の探りあいをする緊張感溢れる間柄にしびれます。そしてセブン(一人欠けたけど)の必殺仕事人のような「仕事」っぷり。誉田センセーならではのグロ満載のシーン。どこまでもハードボイルドに突き進んでいく展開と、まだまだ続くぜジウシリーズ!と思わせるラスト。いくつかの謎を残していくあたりは

読者のことをよく考えているわ〜

と思います。
でも、こうした仕掛けをするからには、あまり間を空けないで欲しいものです。
5年くらい平気で待たせておいて、はい続編です!とばかりに出してくるセンセーもたまにいらっしゃいますので、お願いだからそういうのだけはご勘弁くださいまし。





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2016年07月05日

書評725 古野まほろ「新任巡査」

こんにちは、曹源寺です。

参院選真っ盛りですね。連日、8時になると選挙カーからやかましい連呼が鳴り響いてホントにウザイです。

でも公職選挙法で選挙カーでの連呼は禁じられていませんし、逆に選挙カーでの演説は禁止ですから、公職選挙法って何なのよという話になります。

先日の更新でも書きましたが、選挙公報とか本人のブログ、Facebookといったツールだけを眺めていては候補者の本質を測ることはできません。
自分は
・とにかくキーワードを入れて検索をかます(「候補者名 スペース 発言」とか「候補者 スペース 事件」とか)
・理念は無視する(障害者に優しい日本を、とか、立憲主義をうんたら、とか)
・政策の実現可能性を考える(実現に至るプロセスが明示されているか、とか)


ということをやっています。
わが東京選挙区はヤバイ人が多いので、候補者をきちんと見分けるには情報が不可欠なだけでなく、その情報を受け取った側もそれをきちんと分析することが求められます。大事な一票を無駄にしないよう、情報を取得・分析して理解するというプロセスをしっかりやっておきましょう。


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内容(新潮社HPより)
あなたは交番のことを、警察官というお仕事のことを、何も知らない――。
凡庸にして心優しい頼音(ライト)。ある能力を備えた男勝りの希(アキラ)。ふたりの新任巡査の配属先は駅の東と西にある交番だった。毎秒成長し続けなければ、警察官としてやっていけない――。元キャリアの著者にしか描きえない圧倒的ディテイル。深淵を知る者だからこそつける嘘。最前線をぶっちぎりでかけぬける、まったく新しい警察小説、誕生!


曹源寺評価★★★★
東大卒、国家公務員試験T種合格のキャリア警察官出身というとんでもないご経歴をお持ちのセンセーがこの古野センセーでいらっしゃいます。その古野センセーの著作は恥ずかしながら未読でありましたので、新刊を読むことにしました。
本書は653ページの大作です!普通なら上下巻にしてもおかしくはないボリュームです。タイトルのとおり、新入社員ならぬ新任警察官、しかも交番勤務からのノンキャリア巡査をリアリティたっぷりに書き上げておられます。
警察官ホヤホヤの新人を題材にした小説といえば長岡弘樹センセーの「教場」シリーズなどが有名ですが、本書はこのリアルっぷりが比類なき仕上がりになっています。交番勤務のイロハが本書にはぎっしりと詰まっていまして、職務質問のやり方とか巡回カードの書かせ方(!)とか、あるいは交番勤務における日常のノウハウとか、本当に細かなことまでびっしりと書かれていて、

これはまるでマニュアルではないか

とさえ思わせてくれるレベルです。
作りこみは、前半が教科書で後半が警察小説です。
後半のライトとアキラ二人による捜査はなかなかにいいコンビネーションを発揮していますので、やや固めの文体はやむなしとしても読み応えがあります。
最後もちょっとだけどんでんあり、お涙あり、で読後感すごく良いです。リアル警察官体験をしながら事件を解決に導くことができる小説なんて、本書のほかにあるでしょうか。職業小説であり青春小説であり、はたまた成長物語でもある、そんな作品でした。





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2016年05月31日

書評716 長谷川煕「崩壊 朝日新聞」

こんにちは、曹源寺です。

個人的な話になりますが、我が父母は数十年前、朝日新聞を購読しておりました。また、自分が小学生の時には「朝日小学生新聞」なるものを読まされておりました。「ジャンケンポン」という4コマ漫画が楽しみだった記憶があります。
おまけに、自分の育った街には米軍基地と海上自衛隊がありました。そんな環境で育てば、否が応にもリベラル思想にならざるを得ません。反動保守になったのは社会人になってからであります。
反動保守という人種がいますが、まさしく自分がそうです。ある日、突然180度変わるのです。なぜ変わるのかというと、自分の中にリベラルでは納得できない矛盾のようなものが蓄積されてきて、それがある日、保守の思想に触れてすべてに納得してしまうからです。「腑に落ちる」という言葉がありますが、まさにそれです。
まあ、父母も朝日読者でありながら中身は全然洗脳されていませんでしたので、それが良かったのかもしれませんが。
父「お前もようやく選挙権を持ったな」
俺「まあな」
父「公明党と共産党にだけは投票するなよ」
俺「ファ?」
父「問答無用な」
俺「(よく分からんけど)ラジャ」
みたいな会話があったのを思い出しましたわ。

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内容(WAC出版HPより)
(帯の文章)
慰安婦問題、なぜ開き直り続けたのか。
朝日新聞はこの時、崩壊した。
この本を書くために、私は「朝日」の記者を辞めました。
(著者)
長谷川煕(はせがわ・ひろし)
ジャーナリスト。1933年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学専攻卒。1961年に朝日新聞社入社。88年初めまで経済部など新聞の部門で取材、執筆し、次いで、創刊の週刊誌『AERA』に異動。93年に定年退社したが、その後もフリーの社外筆者などとして『AERA』で取材、執筆を2014年8月まで続ける。
1990年前後に、歴史的な転換をしつつあった東西ドイツなど中東欧諸国、旧ソ連内の各地、また北朝鮮に接する中国の延辺朝鮮族自治州などを取材した。
著書に『コメ国家黒書』『松岡利勝と「美しい日本」』『アメリカに問う大東亜戦争の責任』(以上、朝日新聞社)、『新幹線に乗れない』(築地書館)などがある。
※「ひろし」の本来の表記は「臣」+「己」+「灬」ですが、文字が使用できないので代替で「煕」を使用させて戴いております。


曹源寺評価★★★★★
朝日新聞といえば、最近は部数の落ち込みが最も激しく一部のネット民からは「捏造」「売国」のレッテルを貼られて蛇蝎のごとく忌み嫌われている新聞社であります。なにより決定的だったのは、従軍慰安婦問題で過去の報道が捏造であったことを認めた2014年8月の記事がリリースされたことで、植村隆のような元記者の主張が文字通り「崩壊」したにもかかわらず、依然としてその検証や訂正が積極的になされずに放置され、そればかりか「戦時中の人権侵害」とかいうわけの分からん問題にすり替えられていることでありましょう。
本書はこうした朝日新聞社の体質の根本に迫っていくノンフィクションであります。朝日新聞社に根強く残っている「マルクス主義」はまだしも、「感覚的に正しいと思ったら裏付けを取らない」とか「いち記者が書いた妄想的な記事を上司がスルーしまくって紙面に載る」とか、おいおい本当にお前ら新聞社なのか?と疑ってしまうレベルの悪しき体質が赤裸々に綴られています。
筆者は慶応大学から朝日新聞社に入社し、経済部やAERA編集部などを経て93年に定年、2014年に退職というご経歴です。つまり、朝日がこれまで捏造を続けてきた「靖国戦犯問題」や「従軍慰安婦問題」などが紙面を賑わせていた時代の真っ只中で社内にいた関係者でもあります。御年83歳、単行本を執筆される体力と筆力には頭が下がります。
筆者が本書で主張されていることの要点は、だいたいこんな感じです。

朝日新聞社はマルクス主義にまみれていて、それは今も昔も変わっていない
朝日新聞社は戦前から戦中にかけて、中国共産党やソ連を支援するために中国国民党との戦争継続をけしかけた
朝日新聞社は尾崎秀実のようなスパイを身内に抱えてソ連を支援していた
植村隆や松井やよりのような売国奴を生んだのもこうした社風の表れ

広岡知男や田中慎次郎、緒方竹虎といった歴代の経営陣についても触れていますが、筆者自身の回想もそれほど多くはなく、文献も断片的ですのであまり参考にはならないですね。むしろ、箱島信一とか渡辺誠毅とか一柳東一郎とかあるいは若宮啓文などもう少し現代に近い経営層の功罪について触れていただいたほうがよっぽどためになったのかもしれません。現在の朝日の社風がいかにして形成されたか、という点では欠かせない部分なのかもしれませんが、如何せん、古すぎです。
そう、本書の読後の一番大きな感想は

なんだか全部古いね

というものでした。書くのが遅すぎたのではないかと思うくらい古いですわ。90歳になる老人をつかまえてインタビューしようとしたり、故人のあら捜しをしたり、なんだかなー。本書の執筆のきっかけにしても、吉田清治の嘘に限らず慰安婦報道のおかしな点はいくつも語られてきましたし、慰安婦だけでなく南京事件の捏造に加担した本多勝一にしてもさまざまな媒体で嘘が暴かれてきた経緯があります。こうした他社報道に関して、朝日に籍を置いてきた人たちは何を思うのか。告発するならもっと早くやるべきではなかったか。冥土の土産にするだけなのであれば、それはあまりにも身勝手であるといわざるを得ません。
まあ、もちろん筆者に何らかの責任があるわけではありません。悪いのは植村隆であり、松井やよりであり、本多勝一であり、それ以上に歴代の経営陣が(作為の有無は別にしても)責任を負うべき話であります。一兵卒に責任を負わせるつもりはもとよりありません。

ところで、朝日新聞社の経営とか内実とかを糾弾した本はいくつも世に出回っていますが、元身内という人からの内部告発は少ないです。「朝日新聞 日本型組織の崩壊」(文春新書)は現役の記者が中心となって匿名で著していますが、内容は一般企業にはびこる大企業病のようなイメージで原因分析していますので、朝日特有の病巣に手を突っ込んでいるわけではありません。その他、
「『朝日新聞』問題」(集英社新書)
「虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造」(日新報道)
「朝日新聞と私の40年戦争」(PHP研究所)
「朝日新聞「大崩壊」の真相 なぜ「クオリティペーパー」は虚報に奔ったのか」(イースト・プレス)

などなど、分析本はたっくさん出ているのですが、これらは外部からの客観的な分析が中心です。

それにしてもすごいな。。。

ですから、本書は長年朝日新聞社に勤務したお人ならではの視点が盛り込まれていて、それはそれで貴重なものではないかと思うのです。
しかし、筆者の取材は読者をうならせるレベルであったかと問われると、必ずしもYes!とは言えないのではないかとも思うのです。社内にはびこるマルクス主義者をあぶりだした点は評価できますが、なぜ朝日は「正義を建前にして妄想記事、捏造記事を垂れ流しているのか」という、個人的な疑問については答えていないなあという印象です。それに、前述の「日本型組織の崩壊」では、朝日社内のイデオロギー病はそれほどでもなく、むしろマルキストなど少数派であると論じていましたので、果たしてどちらが本当なのでしょうか。





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posted by 曹源寺 at 14:29| Comment(0) | TrackBack(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月10日

書評383 誉田哲也「レイジ」

5月は花粉症が終わって暑くもなく寒くもない、最高の月かもしれないな〜なんて思っていましたが、今度は竜巻ですか。台風のほうがなんぼかマシなくらい、おっかない存在ですね。これは気をつけましょうと言ってみても、じゃあどうやって気をつけるんかいな?というくらい唐突で、破壊力もハンパないですから、アメリカみたいに地下室でも作って逃げ込むしかないのかもしれないですね。
でも地下室ってどうなんですかね?ガレキが上に残ってしまったら地上に出られないですよね。津波に備えて地下室を作ろうとしている自治体があるそうですが、もし船でも上に乗っかろうものなら2ヵ月くらい出られないんじゃないですかね。

内容(文藝春秋HPより)
剣道女子2人から、今度は音楽男子2人の青春小説だ!
孤高の礼二と世渡り上手な航(わたる)。2人が初めて組んだバンドは成功を収めるが、それ以降互いに意識しつつも歩み寄れず、やがて……
音楽の才能は普通だが世渡り上手なワタルと、才能に恵まれるも、孤独に苦しみ続ける礼二。2人は中学最後の文化祭でバンドを組み、大成功を収めるが、礼二の突然の脱退宣言によりバンドは空中分解する。その後2人はお互いを意識しつつも相容れないまま別々の道へ。紆余曲折を経て、礼二がようやく巡り合った理想のバンドがある事件に巻き込まれてしまい……。武士道シリーズで女子を描いた著者が、今度はロックする2人の男を時代の変遷とともに描いた音楽青春小説です。






曹源寺評価★★★★
誉田センセーはスカッとするくらい清冽な青春小説を描く一方で、ドロドロした猟奇的な殺人事件も描く方でいらっしゃいます(前者を「白誉田」後者を「黒誉田」というらしいですwww)。本書は白誉田に属する青春小説でありますが、ジャンルは音楽なのでとっつきにくい人も多いかもしれません。かく言う自分は小中学生時代の音楽こそ優秀(!?)でしたが、別に絶対音感があるわけではなく、楽器を演奏できるわけでもないので、専門的な用語の羅列にはちょっとついていけないところもあります。
しかし、全体のトーンは非常に何というか熱を帯びているというか、読んでいてだんだん何かが漲ってくるような感じを受けました。これぞ誉田青春小説!みたいな感じでしょうか。まあ、青春といっても最後の方はアラサーですから、

いい年こいたおっさん達がなにしてるん?

という感想もありそうです。
舞台が80年代から2000年代の設定で、ちょうど音楽業界がニューミュージック→ロック→イカ天ブーム→小室サウンド→ラップという変遷を経て、凋落への道を進んでいった時代でもありますので、こうした時代背景も的確に捉えつつ、登場人物の音楽性やポリシー、音楽への情熱みたいなものが混ざり合ってドラマが生まれているというのが非常に良く分かる展開になっています。このへんは本当にうまいな〜と思います。
軽く読めるし、音楽に造詣の深い人なら間違いなく嵌るし、音楽に詳しくなくてもドラマに引き込まれるしで、これ相当よくできてませんか?






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posted by 曹源寺 at 12:40| Comment(0) | TrackBack(1) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月21日

書評367 誉田哲也「ドルチェ」

例年、2月も3週目くらいになると思いっきり花粉症の症状がでているんですが、今年はまだそれほどでもないですね。だいたいいつも眼から攻撃されるので、けっこう敏感なんですが。
でも、少しずつ暖かくなってくるのが分かります。春はもうすぐそこまで〜 恋はいま終わった〜♪ってチューリップだっけか?あぁ、歌詞なんか書いたらJASRACから請求書が届いちゃうかしら?

内容(新潮社HPより)
まだ生きている誰かのために。それが、不器用な女刑事の決めたルール。
彼女が捜査一課に戻らぬ理由。それは人が殺されて始まる捜査より、誰かが死ぬ前の事件に係わりたいから。誰かが生きていることが喜びだから――。練馬署強行犯係・魚住久江。本部復帰を断り続け、所轄を渡って四十二歳。子なし、バツなし、いまどき肩身の狭い喫煙者……。タフだけれど生き方下手な女刑事が駆ける新シリーズ!






曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

曹源寺評価★★★★
誉田氏の作品はなにげに高い評価だったりしますな。「ストロベリーナイト」もそうだし、「武士道シックスティーン」もそうだし。映像化しやすいのかもしれないですね。
本書は42歳の独身女刑事という設定の短編集です。結婚しそうになった同僚刑事も登場しつつ、仕事と人生観の狭間で揺れ動く女心を織り交ぜて、いわゆる所轄署の刑事の取り組みとか矜持とか活躍とか悩みとか、いろんなものが混ざっていて、それでいてストーリーもよくできていて、なかなかに興味深い作品であります。所轄のアラフォーの女性刑事という設定自体、乃南アサか柴田よしきくらいしか採用しないような設定ではないでしょうか?
誉田氏の警察小説といえば、「ストロベリーナイト」をはじめとした姫川玲子シリーズですが、あんなにドロドロしていません。本書はどちらかというと猟奇殺人もなければ緊迫したタイムリミットもないので、軽いテイストで読めるのがいいですね。まあ、軽すぎて物足りないという人はいると思いますが。
そして、主人公魚住が考える刑事像がいいんですよ。警視庁捜査一課にもいた経験がありながら、所轄にとどまる彼女は「誰かの死の謎を解き明かすことより、誰かが生きていてくれることに、喜びを感じるようになった」という彼女なりの刑事観によります。花形部署で神経をすり減らすよりも、別の形で世の中に貢献しようとするその矜持にちょっと惹かれました。
ただ、名前が魚住久江だから

ちょっと古めかしいわい

外見に対する描写もないので、

美人なのかブスなのか

分からないんです。心の中で映像化しようとしても、ピッタリはまる女優さんがいないんですね。誰が演じたら似合うでしょうか。42歳独身。うーん、難しいわ。








曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

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