ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

カテゴリー:や行の作家

2017年07月04日

書評816 横関大「ピエロがいる街」

こんにちは、曹源寺です。

今回の東京都議会議員選挙では自民党が大敗、都民ファーストの会が大躍進、と言われています。確かにそうですね。自民党は国政の影響というより、都議会自民党がクソであったことのほうが影響としては大きかったと個人的には思うのですが、なにせ公示が迫ったころからフェイクニュースが混ざった与党攻撃が半端なかったわけで、マスゴミが勝手に疑惑と持ち上げてはネガティブキャンペーンを張りまくったことが拍車をかけたのではないかと思います。
その反自民の受け皿が都民ファーストだったというのが皮肉でもありますが。
稲田防衛相の発言→OUT
豊田真由子の録音→OUT
この2つはまあダメですね。批判されてもしょうがないレベルです。
しかし、
金子恵美議員の公用車→SAFE
下村文科相の献金→グレーだけど法的にはSAFE
ですね。特に金子議員の件は働くママをサポートしようなどと常日頃言っているマスゴミ自身が批判してどうすんのよ。反自民だけで突っ走るから二重基準に陥ってしまうのですが、その自覚がないままに批判している輩のなんと多いことか。まともに正論吐いているリベラル層は駒崎弘樹氏だけしかいないという有様ですわ。
こういう倒閣運動みたいなことをするから二重基準になってしまうわけで、この動きに乗っかってきた民進党は結局、議席数を伸ばすことができなかったんです。有権者が反自民の受け皿として民進党を選ばなかったのは、あちこちでブレにブレまくってきた二重基準のツケではなかろうかと思います。

最近では、文部科学省の天下り問題でさんざん批判されてきた前川前事務次官が、加計学園で話題になったら急に持ち上げるようになりました。同じくこの話題(問題とは言わない)で省内の文書がリークされたら「勇気ある告発」と持ち上げておいて、かつて尖閣諸島問題沖で発生した中国漁船衝突事件で映像をリークした人には国民の反応とは別にマスゴミの反応は酷いものでした。「安倍首相のお友達が恣意的に選ばれているのはおかしい」と言っているのに、そのお友達は民進党の江田五月前議員のほうがもっとお友達なのにそれは一切報道しなかったりします。やっていることは同じでも、自らの主義主張に相通じるかどうかでその反応を変えるから二重基準と言われるのに、最近はこうした記事が富に目立ちますね。

おそらく、都民ファーストの会に関する記事もこれから手のひらを返すかのように批判や醜聞がどんどん出てくると思います。

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内容(講談社HPより)
兜市役所の秘書課に勤務する比南子は困っていた。スローガンに「開かれた市政、会いに行ける市長」を掲げる宍戸市長は、時間さえ空いていればどんな来客でも応対する。兜市は製薬会社が工場を国外移転することが決まり、かつてない財政難に陥っていた。市議会では大荒れが予想される中、今日も市民は市長に会いにくる。
ところ代わって兜市の駅前。就職活動がうまくいかない立花稜がベンチに座って悩んでいると、顔に白粉を塗り、真っ赤な口紅を塗ったピエロに話しかけられた。「願いごとを一つ、言ってみろ」立ち去らないピエロに仕方なく就職したいと話すと、稜はピエロに雇われることになる。ピエロは毎晩困った市民を助けるために活動しており、稜はそれを手伝うが……。
兜市が抱える難題に次々と直面する市長とピエロ。ピエロの正体が判明したとき、物語は鮮やかに反転する!


曹源寺評価★★★★★
軽〜く読めてハッピーエンドな結末が多い横関センセーの作品は楽しいので、乱歩賞受賞以降すべて読了しています。「スマイルメイカー」のようにちょっとしたどんでん返しがあったりするのも良いですね。
さて、本書は静岡県兜市(もちろん架空です)を舞台にしたミステリっぽい作品です。主人公は大学4年生にして就職活動中の立花稜で、彼を語り部としてストーリーが展開していきます。
市長の宍戸は就任から2年が経過し、その間、地場の有力製薬会社工場が閉鎖されて職と人口が奪われてしまった。立て直しに奔走する市長だが、そこに後援会会長が殺されるという事件が発生する。
一方、立花稜は町中でピエロの格好をした中年男性に声をかけられ、ピエロの手伝いをすることになった。ピエロの活動は市民が陳情する内容を実現するための活動に見えるが、、、
読者は謎のピエロの登場と、殺人事件の発生によって一気にドキドキわくわくが募ります。さらに、ピエロの正体はいったい誰なんだろうと思いながらその整合性をストーリー展開に求めていくことになるわけですが、これは

なんというミスリード

でしょうか。「ピエロの正体が判明したとき、物語は鮮やかに反転する!」というキャッチは伊達じゃありません。正確にいうと、「市長の正体が判明したとき、」でもありますが、完全にやられてしまいました。このラスト、自分はまったく見破れませんでした。あぁ、またしてもやられた!読み直し必至のラストに、ちょっとほっこりするエピローグがくっついて、読後感がなんともさわやかなのがこの横関作品だなあと改めて感じた次第。





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2017年06月06日

書評808 薬丸岳「ガーディアン」

こんにちは、曹源寺です。

お隣の国、韓国ではまたしても鶏インフルエンザが猛威を振るっているようです。
世界的に見ても、この20年くらいは動物の感染症が人に転移して新たな病原菌となる、あるいはなる危険性が高まっているといった事例が後を絶ちません。動物と人間の距離は縮まっているようには思えませんが、免疫学や獣医学のような分野の研究は引き続き高い需要が見込まれるのではないかと思います。

国会では加計学園の問題(何が問題なのか分かりませんが)が尾を引いていますが、少なくとも獣医学部の新設に関する疑義(なぜ加計学園なのか)は完全にでっちあげです。いまだに大手マスゴミが騒いでいるのが信じられません。
大手が報じていないことを列挙してみましょう。
・(菅官房長官がコメントしていますが)特区による誘致はそもそも民主党政権時代に決まっていること
・それを文科省が怠慢で何にもやっていなかったから「早くしろ」と自民党政権が急かしていたこと
・加計学園は15年も誘致活動を行ってきたこと
・愛媛新聞は長年の努力によって誘致に成功したことを成果として報道していること
・愛媛県の前知事も実績として胸を張っていること(前川喜平前事務次官を批判していること)
・メールを追及している民進党玉木雄一郎議員本人が日本獣医師会から100万円の献金を受けていること
・四国の高校生が獣医師になろうとしたら、どんなに近くても鳥取大学か山口大学、大阪府立大学を目指さなければならないこと

特に最後の件は、教育機会の平等をうたう民進党においては自民党以上に進めるべき案件であるはずだと思うのですが、なぜか四国の学生のことはどうでもいいですかそうですか。
地方の学生が実家を離れ、大学のある都市で一人暮らしをしようとすれば、下宿代、光熱費、食費、その他雑費等々で毎月いくらかかると思っているのか。まあ、医学系の場合はその投資に見合うリターンが期待できますけれども、それでも結構な費用です。
大学の無償化を法整備しようとしている野党は、言っていることとやっていることがだいぶ違うのではないかと思います。また、それを報じないマスゴミもふだんは「弱者に寄り添う」とか言いながら、こういうときは寄り添わないですね。

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内容(講談社HPより)
匿名生徒による自警団「ガーディアン」が治安を守る中学校に赴任した秋葉は、問題が少なく安堵する。ガーディアンのメンバーは、問題のある生徒らに「制裁」を行っていた。相次ぐ長期欠席を怪しんだ秋葉が生徒の身を案じるが、同僚は激務に疲弊し事なかれ主義だ。秋葉が学校の秘密に気づくと、少年少女は一変し、天国から地獄に叩き落とされる。大人と子供の思惑が幾重にも交差し――薬丸岳史上最大級の衝撃があなたの胸を打つ!


曹源寺評価★★★★★
少年犯罪をテーマにすることの多い薬丸センセーが、実は初めて学校を舞台にして書き上げたのが本書であります。
そういえば、石持浅海センセーが同名の小説を出しておられますが、その内容はもっとホラーというか非現実的だったような気がします。
本書は都内の石原中学校に赴任した教師、秋葉悟郎を主人公として、学校内に組織されている謎の自警団「ガーディアン」と対峙するお話です。
秋葉は赴任して半年、平和で問題の少ない学校であることにかえって違和感を覚えていた。ある生徒が学校を休み、それが数日も続いていたことからその奇妙な違和感の正体に気がついた。長期で休んでいる生徒が18人もいるというのだ。そう、彼らはガーディアンによって制裁を加えられていたのであるが、秋葉はその存在に気付くのは自分が顧問を務める演劇部の部員が欠席となったからであった。
秋葉はガーディアンの正体を突き止めようとするが、そこには教師と生徒、それぞれに思惑と深謀があった。。。
教師が信用できないから自警団を結成した――とあれば、教師の取るべき態度は次の2通りになるのでしょうか。
「ならば信用されるようにがんばろう」

「ならばこっちも自警団を利用してやろう」
か。
こうした思いが交錯するなかで、学校全体を巻き込んで教師たちが苦悩と煩悶を打ち明けていきます。
でもなぜか、最後はちょっといい話でするっと終わっていきます。

ん、あれ、なんか予想していたのと違うなあ

という印象でした。なんというか、違和感みたいなものを覚えたんですが、これなんだろう。
おそらくですが、作者の本当に言いたいことと読者が読みたかったことがずれているのではないか。
(以下、ややネタバレ)薬丸センセー的には、ガーディアンによる統治によって起こるリスクは学校の平和と引き換えになるものではないだろう、というものなのかもしれませんが、この前半から中盤にかけてのストーリー展開では読者として「ガーディアンの自滅」か「夏目刑事による事件解決」なのではないかと思うのであります。
せっかく(ファンにはおなじみの)夏目刑事まで登場させておいて、ほんのチョイ役でしかなかったこの扱いに、ちょっと落胆してしまうのです。
それにしても、ラストの4行は何を意味するのだろうか?最後の最後にひっくり返したのか?いい話だと思ったら実は違っていたのか。なんとも言えない気持ちにさせられてしまいました。





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2017年05月09日

書評800 柚月裕子「慈雨」

こんにちは、曹源寺です。

GW中はすっかり更新をさぼってしまいました。ほとんど家にいたのですが、プチリフォームみたいなことばかりしていて、毎日ヘロヘロになっていました。
5月最初の投稿は祈念すべき800回目の更新ということになります。888888888888

えー、このところ森友学園問題やら北朝鮮問題やら、世間をにぎわせてきた話題は着地点が見当たらないまま浮遊しているようなものが多くて、マスゴミさんはさぞ悩んでいらっしゃると思いますが、そんななかで今度は安倍首相が(というか政府が)改憲を期限付きで実行すると明言し始めました。
ただ、その手法は「憲法第9条の1項と2項を維持して、新たに自衛隊を合憲とするべく3項を追加する」といった手法だったり、あるいは「高等教育無償化を明記する」といった野党も反対しないだろうという改憲案だったりするわけです。
ちょっと姑息な気がしないでもないですが、まずは改憲の実績を作ろうとする試みはダメとは言いにくいですね。なにせ、70年間も放置されてきたわけですから。
衆参両議院でいずれも改憲に必要な3分の2以上の議席を確保している現在、「改憲するか否か」の議論ではなくて、「どこをどうやって改憲するか」の議論になるのは当然といえば当然です。この背景を無視して「議論が深まっていない」とかいろいろ抜かして改憲そのものを阻止しようとする勢力が妨害工作を仕掛けようとするのは目に見えていますが、少なくとも「議論を深めよう」とする動きだけは止めないでいただきたいものです。
マスゴミにお願いしておきたいことは、議論を深めるということは一方的な意見のみを紹介するのではなく、両論をきちんと併記して、その判断は読者あるいは視聴者にゆだねて欲しいということです。
まあ、新聞社は自分たちの意見を載せるのは良いですが、テレビはダメでしょう。電波は国民の財産であるということを忘れずに。

個人的には、自衛隊の存在が違憲であるとする判断も憲法学者らに根強くあるという現状において、せめて自衛隊の存在を認め、自衛権を明記する、ということくらいはやってほしいと思っています(だから3項の追加などという手段はちょっとどうかと思うのです)。


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内容(集英社HPより)
16年前の幼女殺害と酷似した事件が発生。かつて刑事として捜査にあたった神場は、退職した身で現在の事件を追い始める。消せない罪悪感を抱えながら──。元警察官の魂の彷徨を描く傑作ミステリー。


曹源寺評価★★★★★
孤狼の血」で「第69回日本推理作家協会賞」「本の雑誌が選ぶ2015年度ベスト10」第2位、「2016年度このミステリーがすごい!」第3位にランクインした柚月センセーですが、自分もこの作品で一気にファンになってしまいました。「孤狼の血」は映画化もされるそうですね。
こういう時流に乗ってしまった作家というのは、だいたい次もはずさないものですね。本書はやはりミステリ色満載の作品ですが、異色なのは定年退職した元警察官が四国八十八箇所の巡礼を行いながら、現在進行中の犯罪を通して自分を見つめなおしつつも事件を解決に導いていくという、なんとも珍しい設定となっているところでしょうか。
事件は主人公の地元・群馬で発生していますが、主人公の神場はお遍路真っ最中であります。そして、お遍路の最中に出会った人たちや、妻との会話を通して過去の事件、過去の自分と向き合います。そこには駐在所に半ば島流し的に送り込まれても耐え忍び、県警の捜査一課に抜擢されて定年を迎えた神場の姿が見えます。その一方で、16年前の女児誘拐事件ではまだ信憑性の薄いDNA鑑定に頼りすぎて誤認逮捕=冤罪を生み出してしまったのではないかという疑念を抱えながら生きてきた葛藤も浮かび上がってきます。
そして現在、16年前と同じような女児誘拐殺人事件が発生してしまい、過去の苦悩と戦いながら巡礼を続ける神場、そして神場の娘と交際している優秀な元部下の緒方刑事。神場に事件解決を託された緒方もまた、自分の父親になろうとする男の犯した過去を糾弾せざる得ない立場に苦悩します。
事件をひとつの大きな柱とするならば、こうしたサイドストーリーは単なる味付けに過ぎない場合が多いのですが、本書はこれらこそが重厚なテーマを持った問いかけであり、単なる味付けに終わらない骨太なヒューマンドラマとして描かれています。
食べ物に例えるなら、ローストビーフですね。ソースのないローストビーフは大してうまくないですが、たまねぎ系のさっぱりしたソースが加わると至高の味になるのと同じです。本書も事件そのものは大して珍しくもないのですが、そこに数十年間熟成を重ねた太いエピソードが混ざることによってストーリー全体をものすごい深いものにしているわけです。

過去のエピソードがあまりにもドラマチックでグッとくるストーリー

ですので、お遍路さんの動きそのものがあまり面白くもないのに、全体としてはカッチリとまとまっているのは、構成もさることながら、柚月センセーの筆力もまた素晴らしいからにほかならないのでしょう。泣けるとか、そういうのではないけれども、グッとくるものがある。そんな作品でした。





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2017年03月31日

書評792 吉川英梨「烈渦 新東京水上警察」

こんにちは、曹源寺です。

まだまだ続く森友学園問題。国会議員の関与はほぼほぼゼロの状況であることが見えてきたので、ここからは大阪府議会で続きをやってほしいのですが、政争の具にしかなっていないので国会の貴重な時間が浪費されています。
明確な証拠が見つかっていないのに疑惑があるとして「潔白というならそれを証明せよ」という民進党は、いわゆる「悪魔の証明」を迫っているわけです。ないものを証明せよ!というのは到底無理な話で、このできもしないことを迫っている野党に追随して矛盾を一切追及しないマスゴミにもあきれ返ります。

そうこうしているうちに、またしてもいつものブーメランが炸裂して、辻元清美議員に対する数々の疑惑が浮上してきました。
マスゴミはいつものように「報道しない自由」を振りかざしていますが、ネットは大荒れです。このギャップの激しさが今の報道の現状を如実に表していると言っていいと思います。

そもそもですが、新聞やテレビの「政治部」といわれるセクションは、政策の是非やその詳細に関する調査報道よりも、「政局」といわれる報道のほうに重きを置く悪弊があります。だから、政府がぐらつくようなネタにはタイムリーに食いつき、倒閣運動には積極的に関与するわけです。まあ、そのほうが販売部数が伸びるのは自明でしょう。あわよくば解散総選挙にまで至ってくれれば万々歳なわけです。
スキャンダルの収集には力を入れるわりに、その政策や法改正の内容、是非についてはきちんと報じないし、野党も政策論争をしない。それを否定的に論じているのはネットだけという状況。これでは健全な世論形成などできるわけありません。
まあ、今回の件ではだいぶ森友の報道にはネット民だけではなく多くの国民が辟易としてきているのは事実でしょう。ネットによる世論形成のほうが一般的になってきているような、そんな時代になりつつあるのを感じますね。

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内容(講談社HPより)
東京湾に係留されている「宗谷」の 船室で腐乱死体が発見された。東京水上警察は現場に急行するが、湾岸署との捜査権争いに負け、熱血刑事・碇拓真はいきり立つ。最大級の台風が迫る中、都政に絡む陰謀の存在を掴む碇。暴風荒れくるう東京湾で、命がけの闘いが始まる!


曹源寺評価★★★★
「波動」に続く東京水上警察シリーズの第2弾です。「波動」はキャラクター設定以上に、海の上での逮捕劇の激しさに「ダイハードかよ」と突っ込みを入れたくなるほどのアクション大盛りで、楽しいといえば楽しい、でもちょっと現実感乏しいなあ、という感想でした。
本書もまた五港臨時署、略して五臨署の個性溢れるメンバーが勢揃いです。
マッチョなソース顔の碇拓真刑事は幼い頃のトラウマで海が苦手というキャラクターですが、例によって海上での戦いを迫られます。台風が荒れ狂うなかでのアクションシーンは映像化も苦しいほどです。
若手でクールな日下部峻刑事は東京を直撃した台風により江東区が水没するなかで犯人確保だけでなく、多くの被災者救出にあたります。
そして美人でマジメな海技職員の有馬礼子は前回ほどの活躍ではありませんが、恋愛話も盛り込んでこの男子二名の間で揺れ動いてくれます。
しかし何だね、東京が一部とはいえ水没ですよ。マンションの4階まで水に沈みましたよ。

こっちのほうがインパクト大きすぎで、

犯人との対決・格闘が小さく見えますよ。
巷ではこれまでも荒川の堤防が決壊したら江東区や台東区の一部は水没するのではないかといわれてきましたが、捕物帳としてこの水没を利用した作品は個人的に初めてでしたので面白かったです(臨場かとしては微妙ですが)。
それにしても、東京が水没したときの水上警察って、犯人逮捕がやっぱり優先されるんですかね。海上保安庁と連携して被災者救出を優先しないとやばそうですが。
話は飛びましたが、つまり、今回もアクションから恋愛まで盛りだくさんの内容でおなかいっぱいというやつでした。読者をとにかく楽しませようとする吉川センセーの意気込みが、本当にひしひしと感じられます。





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2017年01月17日

書評774 矢月秀作「サイドキック」

こんにちは、曹源寺です。

今年最大級の寒波が日本を襲っていて、寒い日が続いています。我が家のハリネズミは24℃以下になるとよろしくないので、リビングはこのところ床暖房をつけっぱなしです。たぶん、今月のガス代は半端ないだろうなぁと思うと気が滅入ります。

さて、今週末はトランプ氏が米国新大統領に正式就任となります。どのような演説を刷るのか非常に楽しみですが、CNNやニューヨーク・タイムズなどが選挙前も今も攻撃の手を緩めていませんので、米政府vs米マスゴミという構図がとても気になるところです。
個人的には日本も米国も新聞という媒体においては、主義主張を明確にして意見を戦わせることにあまり異議はありません(もちろん報道しない自由というやつはNGですが)。そのうえで読者が離れようと、会社が潰れようとそれは自由です。
しかし、電波はいけません。電波は国民のものですから、ラジオやテレビはあくまでも公正中立であるべきだと思います。
米国はテレビと新聞の資本が切り分けられていますから、CNNは独自の政治的意図を持ってトランプ氏を攻撃しているのだと思います。
日本の場合はテレビと新聞の資本がコングロマリット化されていて非常によろしくない状況なわけで、まずはここが切り離されなければならないと思います。そのうえで、新聞媒体は社説で何を書こうが好きにすれば良いのです。


(2017/1/17)
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内容(角川春樹事務所HPより)
警視庁青山中央署の刑事課には、二人の名物刑事がいる。一人はチョビ髭で、頭部も薄い中年刑事・三木本鶴麿。もう一人は長身でスレンダーだが、キレたら恐ろしい最強美人刑事・御前静香。鶴麿はどこからどう見ても冴えないただのおっさんだが、いつもミラクルを起こし事件を解決に導く。そんな鶴麿に静香はぞっこんで、二人の関係は、青山中央署の七不思議のひとつだ。そんな中、青山の宝石店で強盗殺人事件が発生し、名物凸凹コンビが捜査に乗り出した――。傑作エンタテインメント警察小説。


曹源寺評価★★★★★
矢月秀作センセーは初読です。文庫の警察小説を中心に結構な数を発刊されていらっしゃいますが、文庫のコーナーにあまり顔を出さない主義のため、チェックが行き届いておりません。同じような対応になってしまっている作家センセーに、濱嘉之センセーや末浦広海センセーなどがいらっしゃいます。いきなり文庫は本当にいやです。
さて、本書ですが、だいぶコメディタッチな警察小説でありまして、チビデブハゲの三拍子揃ったちょび髭の中年刑事、三本木鶴麿が主人公です。重要な脇役には美人で格闘技の達人、御前静香を配置して事件を解決に導きます。しかし、鶴麿の性格はやや意地悪く、手柄を欲して止まないただのオッサンであります。そんな鶴麿に静香は心底惚れてしまっています。なぜかは書かれていません笑
そんな鶴麿はいつもミラクルな運で重要な手がかりを見つけたり犯人を捕まえたりしています。
鶴麿が勉強不足だったり記憶違いだったりしたことに起因したミスも、周りの勘違いで手柄になったりします。そんな鶴麿の性格がひどく悪いところに本書のキモがあるのかもしれませんが、

たぶん読者は共感できていません

どうせなら、性格がよくてひ弱で人情派なキャラにミラクルなラッキーをかぶせたら共感を得られたのではないかと邪推してみます。
そうしたら

土曜9時の日テレでドラマ化していたのではないかと思います。

タイトルは「ラッキー刑事」、主人公はムロツヨシか小日向文世、あるいは竹中直人あたりで。
本書はそんなドタバタ系のお話ですが、ラスト周辺はあまり盛り上がりません。いや、盛り上がるのですがいろいろ回収不足なところが気になって読者として盛り上がれませんでした。
コメディであっても警察小説としての骨格みたいなところがしっかりしていないと、中途半端なイメージになってしまうということが本書を読むとよく分かります。





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2016年12月02日

書評763 薬丸岳「ラストナイト」

こんにちは、曹源寺です。

昨日発表された「2016年新語・流行語大賞」は「神ってる」が選ばれました。今年はカープの年だったからまあよろしいのではないかと思います。だいぶ形骸化はしていますが。
それにしてもトップテンのなかに「保育園落ちた日本死ね」が入るとは。そしてそれを国会議員が受賞するとは。
「日本死ね」と叫ぶ国会議員がいるこの日本という国。相当根が深い問題です。

国会議員だけではありません。先日はこんな記事もありました。
不法残留の強制退去処分取り消し 反人道的と名古屋高裁(11/30東京新聞)
在留期間を過ぎて不法残留となった三重県に住むブラジル国籍の男性(37)が、強制退去を命じた国の処分を取り消すよう求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁(藤山雅行裁判長)は30日、「一家離散を招きかねず、人道に著しく反する」として処分を取り消した。
裁判長は判決で「処分は社会通念に照らして妥当性を欠き、裁量権逸脱で違法」と認定。ひき逃げ事故を起こし警察への出頭をためらっている間に在留期間が過ぎたとし「意図的に不法残留したわけではなかった」と指摘。
2013年9月12日に無免許でひき逃げ事故を起こした。逮捕されたが、その間に在留期間を過ぎ、不法残留となった。(共同)


え・・・
なにこの判決。。。

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『無免許、不法滞在、ひき逃げのトリプルコンボ
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ         だと思っていたらいつのまにか無罪になっていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人      な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ       おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \     催眠術だとか超スピードだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ  そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...     イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

この記事を読んでサンドイッチマンの富沢(「ちょっと何言ってるか分からない」ってやつ)かジョジョのポルナレフにならない人がいたらお目にかかりたいです。
よりによって高等裁判所の判事がこんな判決を出すかぁ?地裁ならまだ分かる(というのも変な話です)が、高裁判決ですから二重に驚きました。日本はいつから人治主義の国になったのでしょうか。こんなおかしな裁判官がいるのが今の日本の法曹界ですよ。
この名古屋高裁の藤山雅行裁判長というお方は、お名前で検索かけるとなんともまあ香ばしい実績をお持ちでいらっしゃいます。気になる方はぜひお調べください。国を相手に訴訟を起こしてこの人が裁判長なら間違いなく勝てる。そんなお人です。

裁判官が法に拠らない判決を連発する。そしてこういう裁判官を誰も罷免できない。地裁や高裁は野放しです(最高裁だけ国民審査の対象になります)。そして自浄作用もない。こういう組織はだいたいにして腐りかけています。藤山判事が最高裁の判事になるのを待って国民審査で落とすというのもひとつの手ではありましょうが、それを待っていたら異様な判決のオンパレードになってしまうこと必然です。

司法も立法もちょっとヤバイレベルになってきたようです。
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内容(実業之日本社HPより)
顔には刺青、左手は義手。
菊池正弘が営む居酒屋「菊屋」に、古い友人で刑務所を出所したばかりの片桐達夫が現れた。
かつてこの店で傷害事件を起こしてから、自身の妻とも離婚し、32年もの間に何度も犯罪に手を染めてきた男だ。
獣のような雰囲気は人を怯えさせ、刺青に隠された表情からは本心が全くつかめない――。
何故、彼は罪を重ねるのか?
吉川英治文学新人賞受賞後第一作! 著者新境地、魂を震わせる衝撃のミステリー。


曹源寺評価★★★★
薬丸センセーの良いところは、テーマが一貫してぶれないというところにありましょうか。デビュー作の「天使のナイフ」から少年犯罪、少年法、贖罪、寛如、許容、といった題材を取り上げて、読者に訴えかける作品がラインナップされるようになりました。時には凶悪な少年犯罪をテーマにして「お前らこれでも少年法でこいつらをかばうつもりか?あぁん?」というくらい読者を焚きつけてくることもありますが、センセー自身は明確に少年法改正を叫んでいるわけでもなさそうなのでこのへんの立ち回りのうまさもすごいなあと素直に感心したりします。
そんなセンセーの最新作はなかなかに凝った作りこみをされていました。
顔一面に豹柄模様の刺青を入れた、左手が義手の59歳。前科五犯。主人公、片桐達夫はものすごい風貌と経歴であります。この片桐が仙台刑務所から出所してきたが、彼を取り巻く複数の人間を語り部として(章立てのタイトルにもなっています)彼の出所後の行動を追う内容となっています。
片桐の兄貴分だった赤羽の飲食店「菊屋」の主人である菊池正弘、片桐の弁護人を務めたことのある中村尚、実の娘である松田あかり、転落の人生を歩む娼婦の森口絢子、そして彼の行動を監視する荒木誠二の5人が、それぞれの視点でストーリーを展開させていきます。この5人はすべてクロスオーバーしているため、ストーリーの4分の1くらいはレビュー的な内容になっていますが、これもまた違う視点からの内容なので

「あぁ、これってこういうことなのね」と後で理解できる

ようになっています。
読み進めるうちに見えてくるのは、片桐が見た目どおりの凶悪な犯罪者なのか、そうでなければ何なのか、という問いかけです。
なぜ彼は犯罪を繰り返しす前科者になったのか。
なぜ彼は左手を事故で失ったのか。
なぜ彼は顔中に刺青を彫ったのか。
なぜ彼は出所後に弁護士にお礼を言いに行ったのか。


すべてがつながったときに、片桐達夫という人間が見えてきます。それはそれは壮大なストーリーなわけですが、壮大(というかあまりにもスゴイ執念)すぎて読者としては声も出ませんわ。
多くの読者が「なぜここまでやるのか」「献身を通り越して自己犠牲」「ここまでいくと理解不能」という感想を持つのではないかと思うレベルですが、これと同じような感想を持った作品といえば東野圭吾センセーの直木賞受賞作品「容疑者Xの献身」あたりが思い浮かびます。
まあ、ここまでやらないとインパクトがないというのであればそうなのかもしれません。でも、この路線がエスカレートすることは小説界にとって良いことではないと思うのです。奇をてらうとか、派手なインパクトを狙うとか、そういう方向だけが話題をさらうのはいかがなものかと思います。
ストーリーやリーダビリティは素晴らしいので、このインパクトを穿って見なければ普通に面白いです。





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2016年11月15日

書評759 吉川英梨「波動 新東京水上警察」

こんにちは、曹源寺です。

ちょっと前の記事ですが、タイトルがヤバイというお話で拡散されました。
[FT]トランプ、プーチン、安倍…強権指導者の危うさ (2016/11/7日経新聞)
モスクワからマニラ、北京からブダペスト、アンカラからデリーに至るまで、国家主義の「ストロングマン(強権的な指導者)」が再び流行している。もし米国が共和党候補のドナルド・トランプ氏を大統領に選んだら、国際的な流行を追いかけているのであって、先頭で引っ張っているわけではない。
ストロングマンに魅了される流れは、独裁的な国と民主主義国の双方に広がっている。中国は10月末、習近平国家主席が今や共産党指導部の「核心」だと発表したとき、個人独裁に向かう危険な道をさらに一歩踏み出した。「核心」というのは、毛沢東主義のニュアンスを帯びた肩書だ。
その習氏は先日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領をもてなした。ドゥテルテ氏は選挙を経て権力を握ったが、威張り散らすスタイルと法を軽んじる態度は、新しいタイプの独裁者に典型的な特徴だ。世界の強権的指導者たちの「守護聖人」は、そのワンマン支配がまだ民主主義の外見的特徴を多少備えている、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領である。
民主主義の形式と独裁の現実を織り交ぜた同じ体制は、ほかの強権的指導者も披露している。その一人はトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領であり、程度はましだが、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相だ。このほか、まだ正真正銘の民主主義体制の枠内で活動しているものの、その政治的アピールは、国家主義をはっきり帯びた毅然としたリーダーシップというイメージを基盤としている強権的指導者がいる。インドのナレンドラ・モディ首相や日本の安倍晋三首相などだ。
憂慮すべきことに、トランプ氏の政治スタイルは、プーチン、エルドアン両大統領といった最も独裁的なストロングマンと一番共通点が多い。
(以下、略)

元ネタは日経が買収したフィナンシャル・タイムズの10月31日の記事だそうでして、そのタイトルは
「Trump, Putin, Xi and the cult of the strongman leader 」
となっています。

Xiとは習近平氏の習のことだということで、タイトルには安倍が入っていないのに習を安倍にしてしまったというタイトル捏造疑惑(疑惑というより真っ黒ですが)が騒ぎになりました。

まあ、本文中に安倍首相のことも書かれていますけど、こういうの勝手にやっていいんですかね。元記事を勝手に書き換える日経、というレッテルを貼られてもしょうがない事案だと思います。
つまり、
・元記事をまったくリスペクトしていない日経
・自分の主張のためならタイトルを勝手にいじることを辞さない日経
・タイトル捏造がばれても記事を修正せず放置し続ける日経
・ネットで捏造だと騒がれることを認識していてもそれをやめようとしない日経
という認識でいくしかないみたいですね日経は。
うーん、紙の新聞は読み捨てられて終わりですが、ネットは検索すればいつでも出てきますし、拡散も早いですよね。未来永劫語り継がれ、レッテルを貼られる行為をいつまでも続けるというのが自分にはどうにも理解できないのですが。

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内容(講談社HPより)
東京オリンピックを控え東京湾警備拡充のため水上警察署が新設された。配属された現場一筋の熱血刑事・碇拓真は無人島の第六台場で白骨死体を発見、事件に絡み暗躍する半グレ集団の尻尾を掴む。一触即発の不安の中で迎えた、都知事臨席の水上観閲式での迫真の警備艇追跡劇! 防犯課強行犯係警部補・碇拓真を先頭に巡査部長・日下部峻、舟艇課・有馬礼子たちが、東京湾岸に勃発する凶悪事件に立ち向かう。水飛沫散らせ真相を追う東京湾岸水上警察サスペンス!


曹源寺評価★★★★
吉川英梨センセーは初読です。「女性秘匿捜査官」シリーズなどがあるそうですがいずれも未読です。
本書は文庫書き下ろしなので、書店に行くとそれなりに陳列されていますから手に取りやすいかもしれません。
珍しい水上警察が舞台の作品です。水上警察が舞台って、

あれ、水上警察はなくなったんじゃなかったっけ?

と思わせておいて、小説の世界ですから何でもありということで、東京五輪を控えて臨時署が立ち上がったという設定で復活させてしまいました。
警視庁のホームページで採用欄とかを見ますと、船舶を取り扱う海技職員は普通に募集していますね。しかも倍率8倍という難関です。採用された場合、湾岸署以外に配属されることがあるのでしょうか。
この新たに設置された五港臨時署、略して五臨署に赴任した碇拓真警部補が一応の主人公ということになりましょうか。語り部的役割を本庁から異動してきた日下部峻巡査部長が演じ、難事件に挑みます。
事件の発端は漂流する発泡スチロール箱のなかに入っていた人間の指。生体反応がなかったため事件となるが、これと並行して第六台場に身元不明の遺体も発見される。事件の解明を進める五臨署には臨時署としての悩みもあるが、水上警察の復活を願う刑事と職員の奮闘により少しずつ詳細が明らかになっていく。事件の背後にいたのは台場を根城としていた暴走グループの影が、、、
水上アクションあり、暗号解読あり、恋愛あり、人間模様あり、とまあ盛りだくさんですよ。さらには、続編を想起させるようなラストあり、ですから次回作にも期待できそうです。
読者を楽しませようとする意気込みをものすごく感じてしまう作品です。だから見せ場というのがいくつかありまして、それらは非常に読み応えのある場面として印象深いです。

ただ、文中から滲み出てくる気負いも読者に伝わってきます

ので、読み手としてはちょっと引いてしまうような感じがなくもないですね。もうちょっとコンパクトにまとめてもよかったのかもしれません。
でも、次回作が出たらたぶん読むと思います。





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2016年09月16日

書評743 横関大「マシュマロ・ナイン」

こんにちは、曹源寺です。

東京では豊洲市場の移転問題でいろいろな記事が出回っておりますが、自分が一番腹立つのは税金を食い物にする輩の存在であります。情報を隠蔽するのもむかつきますが、落札率が99.4%とかありえないわけで、談合の疑いが濃厚です。捜査二課よ、ボヤボヤすんな〜

是非追及していただきたいのは
・東京ガスが撤去すべき汚染物質をなぜ東京都が肩代わりするのか、についての情報公開
・異常な落札率の原因(鹿島、清水、大成の3JV)の究明
・あれやこれやで高騰した移転費用の詳細の公開
これはいずれも役人と業者の癒着が疑われる話です。たとえば、東京ガスが負担すべき撤去費用を都がやるから天下りをさせろ、みたいな話があればそれは税金の無駄遣いと場合によっては贈収賄になる話ですね。
東京五輪でも見られる現象ですが、開催日程が決まっている工事入札案件はもし応札がなかったりすれば官庁側が困ってしまうことになるので、ゼネコン側が強気だったりします。特にインフラ系の大規模工事となれば5大ゼネコン(鹿島、大林、清水、大成、竹中)のどこかが入らねば技術的にも成り立たないことが多いですから、「そんな予定価格でできっかいな」と思われたら終わりです。談合が入る余地がそこにあるわけですね。
まあ、予定価格があまりにも低すぎて赤字受注となってしまうこともありますから、ゼネコンが適正な利潤を得ることには反対しませんが、だからといって談合しても良いという理屈にはなりません。都民の貴重な血税を食い物にして私腹を肥やす奴はどうぞ吊るして欲しいですわ。

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内容(KADOKAWA HPより)
ぽっちゃりでも勝てます。マシュマロ系男子が甲子園を目指す!
元プロ野球選手、今は高校で臨時教員として働く小尾は、校長の命令で相撲部員を転籍させて創った野球部の監督に就任する。人並み外れたパワーと食欲を持つが野球は素人のマシュマロ系男子たちが、甲子園を目指す!


曹源寺評価★★★★
江戸川乱歩とは対極にありそうなほのぼのとしたミステリを得意とする横関センセーは乱歩賞出身なんですが、ここ最近の著作はどれもこれも面白い!です。謎解きとほんわかしたストーリーを組み合わせたり、暗く深刻そうなテーマを軽妙なタッチで明るく描いたり、最後の最後でちょっとしたどんでん返しをしてみたり、とまあいずれもちょっとしたヒネりなんですが、それらのほとんどはさわやかな読後感を醸成することにうまくつなげていると思います。
どんでんを考えると前々作の「スマイルメイカー」などは映像化しにくい作品ではありますが、本書もまた違う意味で映像化しにくい作品ですね。
暴力事件によって活動禁止中の相撲部を、校長自ら野球部に転籍させる荒技を発揮させ、臨時教員だった元プロ野球投手の小尾が監督に就任することに。小尾は東京オリオンズの中堅投手だったが、ドーピング疑惑で球界を追われることになったという過去をもつ。キャッチボールも碌にできない集団をどうやって鍛え上げたらよいのか。小尾は苦悩しながらも発想の転換でチームを常勝軍団に育て上げていく。そんな折、東京オリオンズの選手が死体で発見され、その横には元妻の姿も、、、
おデブな集団が素晴らしい野球チームに変貌していく姿が面白くないわけないですね。センターオーバーのシングルヒット、ライトフェンス直撃のシングルヒット、一所懸命走らないとレフトゴロ。その代わり、芯を捉えた当たりはホームラン間違いなし。

超重量級打線の活躍は一読の価値ありです。

相撲部が野球部になるというだけでもうお笑い路線なんですが、そこにプロ野球のドーピング疑惑を絡めてしっかりとミステリ仕立てにしているところが、横関センセーの真骨頂だと思います。
是非映画化してほしい作品ですが、おそらくは俳優が集まらないだろうと思います笑





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2016年07月22日

書評729 山田宗樹「代体」

こんにちは、曹源寺です。

東京都知事選挙は政策論争なきまま終盤を迎えようとしていますが、そんなところにあの「文春砲」が炸裂してしまったものですから大変です。文春だけでなく、新潮や週刊朝日、スポーツ紙などが同時多発テロのごとく一斉射撃を始めたのでびっくりですわ。

文春にしてみれば第一弾ですから「ジャブ」を一発放っただけですがこの有様。ネット民からすれば今回の選挙はもうズタボロですね。小池候補だって無傷じゃないし、増田候補は人気上がらないし、それ以外の候補者は全然メディアに取り上げてもらえないし(このへんはちょっとどうなのかなあと思いますが)。
こうなりゃネトウヨ代表桜井誠の演説とカウンターの漫才、鳥越俊太郎の断末魔の叫び、鳥越を候補者に押し上げた杉田秀哉と民進党幹部の嘆き、応援弁士に入っていた民進党と共産党の女性議員達の怒り、これらを酒の肴にして楽しむしかないですね。
あ、忘れていた。元船橋市議会議員の立花孝志氏による痛烈なNHK批判演説も楽しめますね。彼は絶対都知事になる気なくて、政見放送という格好の場でNHK批判を堂々と繰り広げることこそが主目的です。単に電波ジャックをしたかっただけですね。
この新手の電波ジャックは究極の自己表現といって差し支えないでしょう。供託金300万円没収を覚悟しても、自分の主張を公共の電波に乗せて東京中に流すことができるわけですから。
たとえば、ある会社の不祥事を告発したい人がいて、不祥事の証拠を持って政見放送の場ですべてをぶちまける、なんてことをしたらどうなるんですかね。想像するだけで楽しそうです。

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内容(KADOKAWA HPより)
近未来、日本。
そこでは人びとの意識を取り出し、移転させる技術が普及。大病や大けがをした人間の意識を、一時的に「代体」と呼ばれる「器」に移し、日常生活に支障をきたさないようにすることがビジネスとなっていた。
大手代体メーカー、タカサキメディカルに勤める八田は、最新鋭の代体を医療機関に売り込む営業マン。
今日も病院をまわっていた。
そんな中、自身が担当した患者(代体を使用中)の消息が不明となり、山中で無残な姿で発見される。残されたのは大きな謎と汚れた「代体」。
そこから警察、法務省、内務省、医療メーカー、研究者……そして患者や医師の利権や悪意が絡む、巨大な陰謀が動き出す。意識はどこに宿るのか、肉体は本当に自分のものなのか、そもそも意識とは何なのか……。
科学と欲が倫理を駆逐する世界で、人間として生きる意味を問う戦いが始まる!


曹源寺評価★★★★
山田宗樹センセーの近未来小説は秀逸な作品が多くていつもいつも本当に楽しみです。『百年法』は最高に面白かったですが、あの雰囲気をもう一度味わいたい!という御仁には本書がうってつけでしょう。
今回は「代わりの身体」=代体がテーマです。つまり、意識と身体の分離に成功している近未来という設定で、ある天才科学者の巻き起こす騒動がストーリーの主軸となっています。
意識と身体が分離したら、意識のない身体は一体何なのか。あるいは、ひとつの身体に二つの意識が入り込んだらどうなるのか。意識と記憶の関係とはどのようなものなのか。などなど、いろいろと考えさせられるシチュエーションが多くて興味深い内容に仕上がっています。

何というか、極めて哲学的です

『百年法』のときもそうでしたが、山田センセーは「もし未来でこんなことが起きたら世間はどうなっていくのだろう」というシミュレーションを徹底的に行って、それを物語のレベルに昇華してくれるから面白いのですが、今回もまたその期待を裏切らない面白さでありました(ちょっと難解な部分はありましたが)。
ただ、ストーリーはおそらく多くの読者を裏切る展開になったのではないかと思います。自分があらすじからイメージしていたのは
・意識と一体化できない代体が暴走する
・分離した意識が代体以外のものに乗り移る

・永遠の命を求めて意識がさまよう、あるいは代体の集団が反乱する
といった展開ですが、いずれも不正解でありました。
しかし、逆に言えば、素人に先を読まれるようではSF作家として面目が立ちません。こんな展開は予想できませんよ。山田センセーすごいわ。いい意味で裏切ってくれたセンセーに拍手です。





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2016年06月28日

書評724 米澤穂信「真実の10メートル手前」

こんにちは、曹源寺です。

英国のEU離脱はとりあえず決まりましたが、実際に離脱するための手続きがあと2か月くらいかかるそうですので、次のショックは8月か9月くらいに来るのかもしれません。
あるいはそれまでにじわじわと市況が変わっていくのかもしれませんので、資産の移動などは今のうちにやっておくべきかもしれないですね。

さて、来月は参議院議員選挙が行われます。自分の住む東京都の選挙区はこんな顔ぶれです(選管のページはこちら)。
1 たかぎさや 女 52歳 新党改革 新
2 鈴木まりこ 女 31歳 日本のこころを大切にする党 新
3 田中康夫 男 60歳 おおさか維新の会 元
4 よこぼり喜久 男 80歳 無所属 新
5 増山れな 女 39歳 社会民主党 新
6 いわさかゆきお 男 69歳 無所属 新
7 トクマ 男 49歳 幸福実現党 新
8 三宅洋平 男 37歳 無所属 新
9 マタヨシ光雄 男 72歳 世界経済共同体党 新
10 山添拓 男 31歳 日本共産党 新
11 竹谷とし子 女 46歳 公明党 現
12 鈴木たつお 男 75歳 無所属 新
13 佐藤かおり 女 48歳 無所属 新
14 中川まさはる 男 69歳 自由民主党 現
15 鈴木信行 男 50歳 維新政党・新風 新
16 小川敏夫 男 68歳 民進党 現
17 朝日けんたろう 男 40歳 自由民主党 新
18 柳沢秀敏 男 67歳 無所属 新
19 小林こうき 男 72歳 国民怒りの声 新
20 原田きみあき 男 39歳 無所属 新
21 蓮舫 女 48歳 民進党 現
22 よこくめ勝仁 男 34歳 無所属 新
23 おおつき文彦 男 49歳 支持政党なし 新
24 佐藤ひとし 男 45歳 支持政党なし 新
25 さめじま良司 男 61歳 支持政党なし 新
26 深江孝 男 54歳 支持政党なし 新
27 浜田かずゆき 男 63歳 無所属 現
28 ふじしろ洋行 男 42歳 チャレンジド日本 新
29 ひめじけんじ 男 64歳 地球平和党 新
30 川上晃司 男 31歳 無所属 新
31 犬丸勝子 女 61歳 犬丸勝子と共和党 新

定数が12人、今回改選6人のところに31人が立候補しています。上位5人くらいはなんとなく予想がつきそうですが、最下位当選枠に入りそうなあたりで何だかドラマがありそうな気もしますね。
選管のページから本人のSNSやホームページリンクが貼られるようになったのは大きいですね。本人の経歴や主張がすぐに分かるようになりました。逆に、リンクのない人はイコールやる気もないと見て良いでしょう。このネット時代に自分の媒体を作って意見を述べないなんてありえませんよ。まあ、作ったは良いけれどめちゃくちゃ見づらいサイトもありますね。項目が全く整理されていないのはある意味すごいわww

ただ、我々はその本人のページだけで満足してはいけません。裏の顔や過去の事件などは本人のページからは決して見ることはできませんからね。
DV野郎がいるかと思えば、旧国鉄動労とつながっている奴もいます(これがどういう意味か分かりますね)。人前で母乳を飛ばすパフォーマンスをしていた奴とか、一緒に映っている奴が碌でもないジジイだったりする(なんでこんな奴と組んでいるだよ〜って)奴とかね、もうネタのワンダーランドですよこれ。
それと、議員報酬ゼロで頑張るとか言っている候補者がいます。あの舛添も最後は報酬カットでいいからやらせてくれと懇願していました。あのデフレが酷かった時代(といっても6〜7年前ですが)は人件費を切り詰めればなんとかなるという時代でした。今はもう違います。それに、こんな画像もネットでは出回っています。
sigotonosekinin.jpg

これはぐう正論ですわ。議員報酬はいらないってことはイコール、議員としての責任は負いません、ってことになりますね。時代の流れを読めない奴は国民からの支持も得られないと心得よ。

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内容(東京創元社HPより)
滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執──痛みを引き受けながらそれらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。『王とサーカス』後の六編を収録する垂涎の作品集。


曹源寺評価★★★★★
すみません、「王とサーカス」が未読ですが、本作のほうから読んでしまいました。フリージャーナリスト太刀洗万智を主人公とする短編6作品を収録している本作は、米澤センセーらしくいずれ劣らぬ後味の悪さを存分に発揮してくれています。
ベンチャー企業の広報担当者が失踪した事件を追ったタイトル作「真実の10メートル手前」、JR中央線吉祥寺駅で発生した人身事故を事件と喝破する太刀洗の眼力に迫る「正義漢」、高校生の男女が心中自殺したが残されたノートに「たすけて」の文字が。心中の裏にある事実を探る「恋累心中」、老人の孤独死を追うと周辺取材で明らかになった死の真相に驚愕する「名を刻む死」、旧ユーゴスラビアの外国人が太刀洗と同行して取材記者の存在意義を問う「ナイフを失われた思い出の中に」、土石流で3日間孤立した夫婦が奇跡的に救助された『良い話』に覚えた違和感を追及した太刀洗の行動の是非を考えさせられる「「綱渡りの成功例」、以上6作品ですが、個人的には表題作と恋累心中の2作品にグッと来ました。本当に誰も救われないし、後味悪いしでハッピーエンドがこれっぽっちもない。こんな本なのに、なぜか面白いんですよね。
米澤センセーの後味の悪さというのは、

真実が分かっても、それ以上に救われない

むしろ、状況はより悪化するのではないかと考えさせられる、という点にあると思います。本作ではそれがよく理解できます。決してハッピーエンドではない、しかし、知らずにはいられない。そんなお話がずらりと並んでいるのが本書です。
本編6作はいずれも太刀洗が登場しますが、視点はすべて別の人です。つまり、他人から見た太刀洗。ここから太刀洗の人物像が透けて見えてくるというのもなかなかに良いですね。
米澤作品は中毒性があることが立証されてしまいました。やばいなこれ。





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2016年05月27日

書評715 横関大「炎上チャンピオン」

こんにちは、曹源寺です。

伊勢志摩サミット真っ只中で、安倍首相が消費税引き上げの延期を示唆されました。グッジョブ!
G7の席上で「世界はリーマン・ショック前に似てきている」と発言して合意を得るという裏技を駆使して、財務省を黙らせるというなんとも賢いやり方でした。

一部の識者などからは「リーマン・ショック前って何だよ。似てねえよ。何血迷ってんだ安倍は」と言われてましたが、これは完全にギミックですわ。

「あー、増税したいけど世界経済が不安定だわ〜。G7のみなさんもそう言っているから止めておいたほうがいいなあ」

と見事にG7をダシにして延期を決めたと。
まあ、実際にはこうでもしないとデフレ脱却などできやしないでしょう。これで憂いをなくした政府はとっとと財政政策も加速させてやってくださいな。

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内容(講談社HPより)
「もう一度、夢を見させてやる」エンタメが禁止された世界で、一人の男が立ち上がった。流小次郎。伝説のチャンピオン・ファイヤー武蔵のライバルレスラーが、立てこもり事件の犯人として捕まった。世間のバッシングを受けてファイヤーが下した決断は『プロレスの自粛』だった。数年後、元プロレスラーたちが何者かに襲われ、瀕死の重傷に。プロレスはいよいよ窮地に追いやられるが――


曹源寺評価★★★★
プロレスのなくなった日本。あまり想像できませんが、実際にリアル社会でもプロレスはかつての勢いを完全に失っていて、我々40〜50代の記憶の中にだけ美しい思い出として残っているような世界になってしまっています。そんな世界で巻き起こる騒動が本書のテーマであります。

コンビニに立て篭もったとして懲役10年の実刑判決を受けた元プロレスラーの流小次郎が、刑期満了で出所する。元プロレス雑誌編集者の前園は偶然、小次郎に接近する。一方で、小次郎のライバルであるファイヤー武蔵は米国で成功していたが帰国する。話の軸はこの流小次郎とファイヤー武蔵の2人を中心に展開していきますが、コンビニ立て篭もり事件の真相を探る動きとは別に、児童の誘拐事件が発生したり元プロレスラーが次々と襲われるという事件も発生したりして、慌しいです。それぞれの事件は何の脈絡もありませんが、後半になるにしたがってそれぞれが有機的に結合していきますので、すっきりします。
そしてラスト。横関センセーの前々作「スマイルメーカー」ではラストにちょっとやられた感が強かったですが、本書もまた違う意味で

やられた!感がありました。

リアル社会を重ね合わせてみれば、プロレスの復権はあるのか?という問いかけが聴こえてくる作品です。
横関大センセーは乱歩賞作家には珍しい軽めの筆致でスピーディに展開する作品が多いですが、本書もまたところどころにギャグを散りばめながらぐいぐいと読ませてくれる作品に仕上げていただきました。
「プロレス」という単語がいまや「シナリオ」に近い意味で使われているように、プロレスは肉体を駆使したドラマであります。しかし、どこからどこまでがシナリオなのか、観客には分かりにくいところが面白いわけでして、本書もまたギミックなのかリアルなのか分からない!

分からせないという筆致がまた巧みなわけですよ。

この「やられた感」はそういう意味ではどんでん返しとは微妙に違うニュアンスがあります。なるほど、またしても横関センセーにやられてしまいました。
それにしても、米国に逃げっぱなしの真犯人は放りっぱなしですか?まあそれも良しとすべきか。
そういえば、プロレスをテーマにしたミステリといえば、不知火京介センセーの「マッチメイク」や永瀬隼介センセーの「ポリスマン」などがありましたが、本書はマッチメイクほどミステリではなく、ポリスマンほどグッとくる格闘シーンがあるわけではありません。しかし、本書はまた違う味わいがあります。帯にある「涙を拭く準備はいいか?」は大げさですが、もう一度プロレスを観たくなる気持ちにさせてくれることは間違いないですね。







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2012年03月06日

書評370 由良秀之「司法記者」

橋下徹大阪市長の「維新の会」が、『船中八策』なるアジェンダを練っているそうですね。まだ公式発表ではないものの、
・TPP交渉に参加
・資産課税の強化
・年金掛け捨て制の導入
・教育決定権
・首相公選制の導入
・参議院の廃止
・首長と国会議員の兼職容認
・地方交付税制度の廃止
・大阪都構想の実現
・道州制の実現
ん?ずいぶんいっぱいあるね。観測気球にしてはかなり大きいものです。賛成できるものもあれば、大いに反対するものもあって、なんだか全面的に賛成できないなぁ。どこかの国会議員が言ってましたが「彼には国家観がない」というセリフ、これを見ると妙にしっくりきますね。
あと、別のブログで書いていた人がいましたが、「革命、革命と簡単に言うが、革命というのは歴史的に多くの人が血を流し、そして死んでいったのであって、この重い単語を安直に使っている人はどこか危うい人だと思う」という言葉にもグッとくるものがありました。確かにその通りです。別に革命でなくていいんですね。「変化」でいいです。


内容(講談社HPより)
佐々木譲氏絶賛!
「地検特捜部のありようを、現実に生きる検察官の姿を、ここまで生々しく描き切った小説はこれまであったろうか。わたしたちはいま『検察小説』という新しいジャンルの誕生を見たのかもしれない」
密室の女性記者死体・大物政治家「政治とカネ」疑惑――二つの事件が交差するとき、驚愕の真実が明らかに。検察を知り尽くす謎の作家、鮮烈なデビュー作!
「騙されるな。気合を入れて叩き割れ!」「……そんな供述のどこが真実なんだ」
美貌の女性記者はなぜ殺されたのか? 口を閉ざし続ける容疑者の守り通す秘密とは……。特捜検事が、巨大組織の壁の中で、孤独な闘いに挑む!






曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

曹源寺評価★★★★
本書がデビュー作という由良秀之氏ですが、経歴を見ると「東大卒」の「検事」出身の「弁護士」だそうで。どんな人かな〜と思ってググってみたら、あらまあ、なんと郷原信郎先生ではおまへんか。そうです、由良秀之とはペンネームで、その正体は弁護士郷原信郎氏その人でありました。
郷原氏の新書を誉めそやしたこともありますが、最近はいろいろなところに顔を利かせていてちょっと胡散臭い雰囲気がプンプンしていますね。
まあ、それはさておき本書ですが、事件は司法担当の新聞記者が、別の新聞社に勤務する司法担当記者の自宅で死体になって発見されるところから始まります。
参考人聴取から容疑者として逮捕に至るまで、一貫して容疑を否認する記者の動きが所轄の刑事の視点で描かれる一方、地方の検察から東京の特捜部に転勤してきた若き検事が、昨今でも話題になったいわゆる「絵を描く」という特捜検事のやり方に疑問を抱きつつ、政治家の汚職ルートの解明に注力する姿が描かれます。
このふたつの事件が中盤から大きくクロスしていくことになり、最後にはひとつの「解」となって読者に真実を示すという展開です。これはなかなか素人っぽくないですね。ベテラン作家風味なやり方です。
まあ、当然のことながら、セリフが少々堅めだったりしますが、検察の内情などはかなりリアルであり、なおかつ難解ではないところがこれまた驚きであります。普通、元弁護士や元医者みたいな肩書きの人が小説など描こうものなら、専門領域だけはどうにも詳しく描こうとし過ぎてかえって分かりにくくなったりするのですが、本書に関してはそれはないですね。
読みやすいし、展開もなかなかイケてるしで、読んで損はしないかな。でも、『検察小説』という新しいジャンル!などと

気取っています

が、その昔、中嶋博行氏が乱歩賞で「検察捜査」なんてタイトルで受賞していますから、

残念!








曹源寺評価★★★★★
読書ジャンルが偏っている自分は皆川博子さんという作家先生を寡聞にして知りませんでしたが、作家歴40年を超える大ベテランでいらっしゃいます。自分の不勉強を恥じるばかりです。

しかも御年81歳!

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2012年01月31日

書評363 横関大「チェインギャングは忘れない」

今日の日経新聞にはちょっと気になるニュースが2本、入っていました。
「JFEとIHI、造船事業を10月に統合」
「ドコモ、らでぃっしゅぼーや買収 成長へ異業種連携」

造船業界は21世紀に入ってから再編を繰り返してきましたが、ここ数年は中国や韓国勢に押され、厳しい環境が続いていました。この合併も一昨年ごろから噂されていたのであまり驚きませんが、市場を荒らしまくった中国・韓国のメーカーには脅威になる可能性もありますので日本勢の巻き返しに注目したいですね。
と、もっともらしいことを書きましたが、日本企業が本当に抱え込まなければならないのは部品メーカーではないかと思うのですがいかがでしょう。中国韓国のメーカーは日本の企業からプロペラを買ったりしているところもあるみたいですから、日本の部品メーカーが日本の完成船メーカーを脅かしているという構図になったりしているわけでしょう。完成船メーカーが自動車メーカーみたいにケイレツ化を進めたほうが競争力強化(というよりライバル排除)につながるのではないかと思ったりもします。

もうひとつの方ですが、こんな異業種間の買収も珍しいですね。前向きに考えれば、農業をITで進化させようとする試みとして注目されるでしょう。しかし、後ろ向きに考えれば、農業がITを進化させるわけではないでしょうと見ることもできますね。
どんな相乗効果が生まれるのかは、ひとつ様子見といこうじゃありませんか。


内容(講談社HPより)
護送車が襲撃され、五人の男が脱走した。脱走した男の一人である大貫修二は、記憶を失い停車中のトラックの前で眠っているところをドライバーの早苗に蹴り起こされた。
その頃、数日後に迫った連続殺人鬼「サンタクロース」対策配備の準備をしていた池袋署の神埼と黒木は、大貫が脱走したという知らせを聞き、秘密裏に捜査をはじめる。
忘れた者、乗せた者、恋する者、探す者――。無関係に見えたさまざまな事実がつながり、最後に待つのは意外な、されど爽快な真相!






曹源寺評価★★★★
早くも3作目に突入した横関氏ですが、氏の作品に共通するものは「読後の爽快感」ではないかと密かに思っています。前作「グッバイ・ヒーロー」も良かったですが、本書も負けないくらい爽やかに読める作品です。
読みやすいし、テンポもいいですね。護送車を襲撃するシーンから、記憶喪失の脱走犯との遭遇、彼を匿いつつ事件の真相に迫る行動、一見関係なさそうな連続殺人犯とのつながり、などなど、肝心のところを隠したまま小気味よく読ませるというテクニックは大したものです。フツーは「なんで高校生の頃会っているはずの大貫修二が分からないんだ主人公は?」とか、「ほかの脱走犯を密告しているのは誰なん?」とか、最後のほうまで引っ張るネタも多いのですが、それでも不満に思えないのはそれだけ筆力がある証ではないかと思います。
大貫修二のキャラクター造型もいいですし、彼を取り巻く絆も良いですね。意外なところにオチがあったりするのも横関作品ならではかもしれません。
この

「明るいキャラで爽やかに読ませるミステリ」

みたいなジャンルを確立していただけないかと切に願う今日この頃です。本当にありがとうございました。








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2012年01月16日

書評360 薬丸岳「ハードラック」

クレジットカードの入った定期入れを落としてしまいましたよorz

と思ったら拾い主が現れましたよ!世の中まだまだ捨てたもんじゃないね。

しかし、落としてはいけないものを落とした時のショックといったら、ハンパないっすね。絶望感がひどくて何も手につかない感じです。もう二度と落としてはいけないと心に誓いますわ。

内容(徳間書店HPより)
人生をやり直したい、と願ったネットカフェ難民相沢仁(26)は、闇の掲示板で仲間を募り、応じてきた四人の男女と話すうち金満家襲撃話が持ち上がった。が、決行中に相沢は頭を殴られて昏倒。結局一人逃げるはめになった彼は、報道で邸から三人の他殺体が発見されたと知る。家人には危害を加えないはずが、俺は仲間にはめられた。三人殺しでは死刑は確実。得体の知れない仲間を彼は自力で見つけねばならなくなった……。






曹源寺評価★★★★★
派遣切りに遭いネットカフェ難民となった主人公が、ネットで仲間を募り強盗を計画したものの、いつの間にか現場が殺人事件の場と化していて、濡れ衣を着せられ逃亡しながらも真犯人を見つけるというストーリーです(紹介文のとおりでしたね)。まずはこの

基本設定からしてすばらしい

と思います。なぜかって?それはもう現代社会の暗部を抉り出す、誰もが一歩間違えれば嵌りかける地獄への落とし穴みたいな社会問題をテーマにしているからでしょう。高卒→就職→クビ→派遣→派遣切り→ネットカフェ難民という構図は現実に存在していて、ギリッギリの生活を余儀なくされている人が数多くいらっしゃるという事実が背景となって、ストーリーにリアリティが生まれています。
恐らくこの主人公の相沢仁は短気で切れやすく、空気の読めないうえにお人よしという性格ではないかと想像されますが、その辺の描写はちょっとあいまいなうえ、母親が再婚で義理の兄弟が優秀でその兄弟が結婚して嫁さん同居して家に居場所がなくなってなんて、ちょっと可哀想な展開ですから、読み進めるといつの間にか主人公に感情移入してしまいます。だから、同居を持ちかけられてなけなしの貯金を持ち逃げされたり、所持金が数千円になって怪しいバイトに精を出すようになったりと、不幸にどっぷり浸かるようになると読み進めるのがつらくなります。
そして、濡れ衣を着せられて逃亡、自力で真犯人を探すくだりはなかなか読み応えがあります。伏線を張っていて、なるほどこういう展開だったのねとラスト30ページくらいで結末が読めるようになりますが、この手の作品としては誰が真犯人なのか分かりづらい構成になっているほうだと思います。勘の良い人は分かるかもしれませんが。








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2011年11月14日

書評349 結城充考「衛星を使い、私に」

あーあ、TPP交渉参加をホントに表明してしまいましたよ野田総理。そろそろ日本を脱出する準備をしておいたほうがいいかもしれないですね。ISD条項を知らなかったとか、すでに大枠合意が形成されていて交渉テーブルに着けなかったとか、日本が参加表明したらカナダやメヒコが手を挙げ出したとか、なんだかやること為すことすべて裏目に出てしまっていないですかね。
心配です。本当に心配です。

内容(光文社HPより)
解決に導くためなら、何者も恐れるつもりはありません。
自動車警邏隊に所属する若き女性警察官クロハ。
ライフル競技で国体優勝の経験を持ち、鋭い直感と素早い行動力、強い精神力で手がかりの少ない事件に挑む。
恐れるべきものが、己の内側にあると気づいたとき、彼女はどう捜査に臨むのか。






曹源寺評価★★★★
「プラ・バロック」「エコイック・メモリ」に続く『クロハ』シリーズの第3弾です。
主人公クロハが自動車警邏隊に所属しているという設定です。すなわち、「プラ・バロック」以前のクロハを描いているということになります。連作短編(このスタイル好きなんです)で構成されていて、最初の話が最後につながっています。
交通事故の現場で加害者と被害者の区別が付きにくい状況のなかから、冷静な判断力で加害者を特定、さらにはその裏に隠された犯罪までも暴きだすなんてちょっと凄すぎですが、まあ主人公ageで良いのかもしれません。
結城センセーの文体は少し特徴的でして、どう特徴的かというと

説明が難しい

のですが、かんたんに言うと「普通の人には必要と思われる表現をあえて書かない」で「変に体言止めする」といった具合でしょうか。あと、登場人物がみんなカタカナというのもありますね。だからリズム感がないという人もいれば独特のリズムだから慣れるという人もいます。自分も最初はちょっと違和感があったんですが、読み進めていくうちに慣れてしまった自分がいてワロタwww
結城センセーってもともとラノベ作家なんですね。このクロハシリーズは独特の世界観みたいなのがあって嫌いではないのですが、前作や前々作はちょっとSFっぽい警察小説みたいなイメージもあって違和感のある人も多かったのではないかと思います(著者自身も近未来だと言っているようです)。しかし、本作品は近未来ではないということでその分、独特の世界観はスポイルされていますので読みやすいかもしれません。







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2011年10月18日

書評344 薬丸岳「刑事のまなざし」

この一週間でTPPに関するニュースがかなり出回るようになりましたね。私個人としてはTPPに反対の立場を表明しますが、新聞各紙は賛成が多いみたいですね。
特に日経は早くしないとバスに乗り遅れるぞー!みたいな記事のオンパレードで、タイの洪水の記事やギリシャの経済破綻の記事などにもさりげなく「〜だから日本も早くTPPに加盟して第3の開国を進めるべきだ!」といった論調を繰り広げるものですから堪りません。洗脳もいい加減に汁!と言いたくなります。
以下はコピペですが、拡散希望。

ニュージーランドのオークランド大学 ジェーン・ケルシー教授によるTPPの問題点
・TPPの協定内容は全てアメリカの議会によって承認されなければならない
・交渉参加国はASEANと自由貿易協定を締結している。つまり障壁があるのはアメリカ
・マイクロソフトはTPPによって知的財産権保護のためDLファイルの有料化を提言している。グーグルはそれに反対している
・外資投資による土地・資源などの資産購入について制約を緩和する内容も盛り込まれている
・漁業権などを外資に購入された場合、漁業で成り立っているような地方の地域への悪影響は計り知れない
・日本の国営貿易会社(主に農産物)に対し、すでにアメリカは反競争主義だとクレームをつけている
・公共工事において外国企業の入札参加の権利を要求している。日本では復興事業に多大な影響が考えられる
・アメリカは遺伝子組換作物について特に強い要求を提案している
・TPPの基本的考えは発行後10年以内に例外なく関税をゼロにするものであるが、アメリカは農業について譲歩していない
・ニュージーランドの乳業、オーストラリアの砂糖についてアメリカは一切譲歩しないと名言している
・パブリックコメントや意見募集において、外国企業も発言可能になるように求めている
・TPPの交渉内容は署名されるまでは非公開である
・TPP加盟国の義務は他の加盟国にも強制される
・投資家にはその国への政策的助言に参加する権利が与えられる
・規則や義務の変更はアメリカ議会の承認が必要となるため、極めて困難である


こんな不平等条約を締結しようとする輩は、文字通り売国奴のそしりを免れないのでは?と本気で思います。

内容(講談社HPより)
笑顔の娘を奪われた男は、刑事の道を選んだ。その視線の先にあるのは過去か未来か――。
●「オムライス」……内縁の夫が焼け死んだ台所の流しの「オムライスの皿」
●「黒い履歴」……クレーンゲームのぬいぐるみ「ももちゃん」
●「ハートレス」……ホームレスに夏目が振舞った手料理「ひっつみ」
●「傷痕」……自傷行為を重ねる女子高生が遭っていた「痴漢被害」
●「プライド」……ボクシングジムでの「スパーリング」真剣勝負
●「休日」……尾行した中学生がコンビニ前でかけた「公衆電話」
●「刑事のまなざし」……夏目の愛娘を十年前に襲った「通り魔事件」
過去と闘う男だから見抜ける真実がある。薬丸岳だからこそ書けるミステリーがある。






曹源寺評価★★★★★
犯罪被害者の心情などをテーマにした作品が多い薬丸センセーですが、本書もこれまた初志貫徹と言いましょうか、娘を何者かにハンマーで殴られ、それ以来植物状態が続いている元法務技官の刑事・夏目信人が主人公です。7作の連作ですが、一貫して夏目が登場し、最後の表題作でからまっていた糸がきれいにほどけるような内容に仕上がっています。この連作はどれもシンプルですが、なぜかハートにグッと迫るものがありました。
この夏目のキャラクター造型が実にいいですね。法務技官として鑑別所や少年院に入所した少年少女の更生に携わってきた男が、通り魔事件をきっかけに警察官に転じたという設定。およそ警察官らしくない立ち振る舞いは新鮮に映ります。また。被疑者や目撃者などに対する接し方や、醸し出す雰囲気までもがリアルに感じられる描写はさすがです。
この手の作品、つまり、憎むことと赦すことの対比だとか、更生とは何かとか、人が人であるためには何が必要なのかとか、こうした重苦しいテーマをかっちりと受け止めながらも決してドロドロしたものにせず読者に投げかける姿勢、というのが多くのファンに受け止められているのではないかと思います。

だいぶ注目される作家になってきたのでは?

と思いますが世間の評価は果たしてどうでしょうか。








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2011年07月28日

書評327 柳広司「ロマンス」

ワンルームマンションの投資勧誘電話がものすごいんですが。しつこい!いい加減にしい!仕事の邪魔!
まあ、彼らも上司命令で受話器をガムテープでグルグル巻きにされて電話かくまくっているんだとは思いますが、こっちはいまそんなリスクを負うことはできないんですよ。日本全体の空家率は18.8%だそうですから、単純計算で家賃収入は想定の8割しか取れないと思ったほうが良いですね。それに、地震に対するリスクや金利変動に対するリスク、補修や建て替えに対するリスクなどを考えると、家賃収入が補填するとはいえ、月々の負担はバカになりませんし、資産形成になるのかどうか全く分かりません。
まあ、こういう指摘にはそれぞれ反論もあるでしょうが(空家率は都心だけでみればもっと小さいとか、株よりもリスクは小さいとか、ね)不確実性の高いものについて「安心です」と言われることの、なんという虚しさかと感じてしまうわけです。
これだったら自分でアパート経営したほうがマシですね。あ、でもレ○パ○スとか大○建○とかはやめたほうがいいなあ。


内容(文藝春秋HPより)
『ジョーカー・ゲーム』の著者が描く華族に生まれた男の苦悩
昭和8年。子爵家に生まれた麻倉清彬は、友人の伯爵家長男の殺人容疑を晴らした。それは新しい謎の始まりだった。渾身の長篇ミステリ
舞台は昭和8年の日本。子爵家に生まれた麻倉清彬は、職につくこともなく暇を持て余していた。そんなとき友人の伯爵家の長男・多岐川に殺人の疑いがかけられる。殺人現場に呼ばれた麻倉は、機転をきかせて多岐川を解放させるが、それをきっかけに麻倉は大きな事件に巻き込まれていく。退廃的な世相の中で生きていく日本の貴族階級たち。その心の闇に踏み込んだ意欲的長篇ミステリーです。






曹源寺評価★★★★★
柳広司センセーはあの「ジョーカー・ゲーム」以来のファンですが、本書に関してはまあそれほどでもないかと。読みやすいし結末の伏線にも意外性がないわけではないのですが、昭和8年の世相や華族という俗世を離れた世界の深い洞察みたいなものについては、もっと突っ込んでも良いのかなあと思います。
自分が知らなさ過ぎるからかもしれませんが、日本の華族制度というのは1947年に廃止になっていて、「公・侯・伯・子・男の五爵制」や「公家」「武家」「新華」の別くらいは知っていても、じゃあ当時の生活っぷりはどうだったのよ、とか、解体された今はどうなっているん?というのは全く耳にしないものでして。まあ、いまでも「徳川家」や「島津家」それに「九条家」みたいなメジャーどころであればやはり「スゲー」となるのかもしれませんし、「東久邇宮」なんて苗字の人に出くわしたら額を地面にこすり付けてしまいそうですわ。
それはさておき、本書のストーリーですが、子爵にしてロシア人とのクオーターという設定の主人公・麻倉清彬、それに伯爵家にして軍人の多岐川嘉人とその妹・万里子が中心となって、ひとつの殺人事件とアカ狩り、クーデター未遂、華族のスキャンダルなどがてんこ盛りとなって主人公を襲います。ミステリの王道を行く「誰が殺したか」がメインですが、その周辺に現れる数々の時代背景がとても良いですね。ただ、あの「ジョーカー・ゲーム」に見られた、オセロをひっくり返したらもう一回ひっくり返されたようなあの鮮やかな頭脳戦は微塵もなく、後出しじゃんけんのように

「実は○○だった」という弁解

じみた理由付けがなされた箇所があり、まったく柳氏らしくないくだりだったので少しがっかりでした。








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2011年06月28日

書評319 横関大「グッバイ・ヒーロー」

大学時代の友人たちと急に盛り上がったのがFacebookです。さっそく登録しましたが、懐かしい顔ぶれだけでなく、先輩や後輩も大勢登録してなんだか大学時代に戻ったような印象です。そんなにコミュニケーションに参加しているわけではないのですが、FBをきっかけに「じゃあ久々に飲みにでも行くか」みたいなノリになったりするのが楽しいわけです。
そんななか、ビーチテニスのお誘いも来まして、新しいスポーツにも挑戦してみたくなりました。ビーチテニスは砂浜の上で、専用のパドルラケットを使って2vs2で戦うのですが、見るからにハードです。でも、ノーバウンドで処理しなければならないのでどちらかというとグラウンドストロークが苦手な自分はボレー勝負できるビーチテニスのほうが向いているかも。現在の日本チャンプは同い年の旧友です。湘南で練習しているとのことでしたので、時間を見つけて行ってみようと思います。


内容(講談社HPより)
江戸川乱歩賞受賞から9ヵ月――。
「困っている人がいたら助けなければいけない。それが俺のルールなんだ」
ピザと音楽を愛する人気配達人“亮太”と、立てこもり事件の人質“おっさん”が運び届ける、謎と絆の物語。
反響御礼!
●何が一番大事かなんて、誰にもわからないけれど、性別も歳も関係なく、手をつなぐことはできる。最後の亮太の叫びで、こらえていた涙があふれ出しました。(紀伊國屋書店横浜みなとみらい店 安田有希さん)
●ポップな文章に見え隠れする、切ないほどの思いやひたむきさが伝わってきました。(文教堂書店浜松町店 大浪由華子さん)
●J-ROCKが好きだった元若者たちよ! こんな話なんてありえない! と思いながらも絶対に涙するはずだ!! 伊庭亮太が好きだ!! (ジュンク堂書店吉祥寺店 松川智枝さん)
●「困っている人がいれば必ず助ける」亮太とおっさんのこのルールが、ずんっと胸にひびきます。チキン・ランナウェイ、そして亮太に胸キュンです。(MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店 三瓶ひとみさん)
横関エンターテインメントがいまここに幕を開ける――。






曹源寺評価★★★★
先般も書きましたが、受賞作の次に出す作品というのは本人にとっても相当なプレッシャーであることが容易に想像できますが、読者としても著者のワールドに食いついていけるかという試金石になるわけでして、いつも乱歩賞作家の第2作目というのは早めにチェックしております。
本書は2010年の受賞作家である横関大氏による第2作であります。宅配ピザの人気配達人である主人公の伊庭亮太が、ピザ店のホームページで紹介されていたことから立て篭もり犯の指名を受けて現場に行くハメになり、そこから「運び屋」の“おっさん”鈴木ジローと知り合い、事件に巻き込まれていくというストーリーです。
ミステリではありませんが、話のテンポがものすごくいいですね。ほとんど一気読みでした。主人公のキャラクターもよし、事件は起こるけれど殺人はなし、脇を固めるサブキャラもよし、ちょっと泣けるシーンありでジーンとくるところもよし、で、

全体としてはかなり「いいね!」(FB調で)。

難点があるとしたら、それは(2部構成となっていますが)第2部のストーリーが途中でだいぶ読めてしまうことくらいでしょうか。少しひねっていることは分かりますので、作者も考えてはいるんでしょうが、全体の構図としてはちょっと陳腐な感じがしないでもありません。
それでも十分満足できたのは、リーダビリティのよさとキャラ立ちのよさが高水準にあることだからかなあと思います。








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2011年03月29日

書評298 山本弘「去年はいい年になるだろう」

原発、まだまだヤバイね。

我々ができることは、的確な情報をすばやく抑えて迅速に行動することだけですので、ニュースに一喜一憂するのはヤメにしました。

新宿区の水や大気に関する情報
http://atmc.jp/?n=13
日野市のガイガーカウンター
http://park30.wakwak.com/~weather/geiger_index.html
文京区のガイガーカウンター(屋内)
http://muraoka.a.la9.jp/
神奈川県川崎市と横須賀市の放射線量
http://www.atom.pref.kanagawa.jp/cgi-bin2/telemeter_map.cgi?Area=all&Type=WL

なぜ川崎と横須賀なのか?というと、川崎には東芝の工場があり、沿岸部には小型の原子炉があるからで、横須賀にはグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンという原子燃料を製造する企業があるからです。

そういえば横須賀には立教大学が原子炉持っていませんでしたっけ?廃炉になっているなら良いですが。
東大の原子炉は今年度で廃炉になるそうですが、もう大学でも原子力研究が進まなくなる可能性はありますね。学生が行かないでしょ。


内容(PHP研究所HPより)
米国同時多発テロも、あの大地震も、犠牲者はゼロ!?
2001年9月11日、24世紀から「ガーディアン」と名乗るアンドロイドたちがやってきた。圧倒的な技術力を備えた彼らは、世界中の軍事基地を瞬く間に制圧し、歴史を変えていく。しかし彼らの目的は、人類の征服ではなく、「人を不幸から守ること」だった――。
ガーディアンのもたらした情報によって、本来の歴史で起こった自然災害、テロ、戦争、大事故などが防げるようになった一方、未来の自分からのメッセージに翻弄され、人生が大きく変わってしまう人も多くいた……。
主人公は、45歳のSF作家。10歳年下の妻と5歳の娘とともに幸せに暮らしていたが、事件翌日、美少女アンドロイド「カイラ211」の訪問を受け、AQ(知り合い)に選ばれたことを知る。未来の自分からのメッセージと作品データを、カイラから受け取る主人公。それは、彼の人生に大きな波紋を起こしていく。
衝撃と感動の歴史改変小説。






曹源寺評価★★★★
SFです。山本弘氏といえば「トンデモ本の世界」で名を馳せた「と学会」会長としての肩書きのほうが有名ではないかと思います。実際、氏の小説を読んだのは初めてでしたが、結構、いや、かなり面白いじゃないですか。SFはあまり興味なかったんですが、それはあまりにもファンタジックな世界だとドン引きしてしまうからでして、本書のようにリアリティを追求するSFは大好きだということも分かりました。
なにせ、本書の主人公は作者である山本弘氏その人であり、と学会の面々やSF作家先生などが実名でわんさか登場するもんですから、現実と小説がごちゃ混ぜになります。
本書では9.11テロを未然に防いだガーディアンなるアンドロイドが未来からやってくるという設定です。つまり、過去を干渉しに現代にやってくる存在の話です。過去を干渉すると未来はどうなるのかという、SFにとっては定番ものの内容ですが、少なくとも現代科学における実現可能なものとそうでないものをしっかり書き分けることができるのか、そして、複雑な理論をど素人にも分かりやすく解説しながら話を進めることができるのか、といった点が物語の成否を分けそうな気がします。
その意味においては、本書は本当に良くできていると思います。特に、未来から過去へ干渉することによって捻じ曲げられた歴史の枝が、さらに別の干渉によって枝分かれし、結果として人類を救うことにならなくなるという展開には大いにうなづきます。
そして、一度進んだ時計は元に戻すことができないということも。
いまのこの世界では、未来からアンドロイドがやってきても東北関東大震災前に戻ることはできないということになります(戻せるのは発生前の時間であり、その時点でパラレルワールドが発生するので、今のわれわれとは別の世界になるということですね)。嗚呼、震災直後に読んだのでなんだか気が滅入ったわ。








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2010年11月29日

書評276 柳広司「キング&クイーン」

最近、うつ病になる人が自分の周りにも増えてきています。世間一般で言われている通り、クソがつく真面目人間ほどうつ病になりやすいようですね。この前、会社で発生したパターンは
合理化とやらで担当者が減る→仕事が山のようにたまる→すべて完璧にしないと気が済まない→さらに仕事がたまる→根は真面目だから人に頼られる→益々仕事がたまる→あせる→簡単な仕事でミスをするようになる→先輩や同僚から怒られる→自分はダメな人間だぁ→引きこもる

この連鎖をどこで断ち切るべきか?難しいすね。いくつかパターンを考えてみました。
・仕事がたまったときに周りがフォローする(特に楽天家が)
・仕事がたまったときに優先順位をつけてあげる(下位の仕事を別の人に振る)
・簡単な仕事でミスをしたときには、上司がフォローする(このときに無能呼ばわりすると一巻の終わり)

でも、最も効果的なのは
・人を増やす

これでしょう。
一度発症すると半年や一年は復帰できなくなるわけですから、その損失を考えれば人を増やしたほうが効率的です。

それと、もうひとつ効果的な対策があります。
・真面目な人間を採用しない

ウチの会社も最近はクソ真面目な人間が増えてきました。自分の同期なぞは60人くらいいましたが、そのうち早慶上理なんてたったの1人か2人だったわけです。それがいまや新入社員の半分くらいが早慶上理+国公立になっていまいかと。GMARCHでさえ少数派になっているんじゃないかと。ウチの会社は勉強だけできてもダメだということが最近証明されてきていますが、こうなると人事部にも、勉強ができるだけではなく、大学時代に遊びまくっていた奴を採用するくらいの度量が欲しいものです。


内容(講談社BOOK倶楽部HPより)
天才の領域に張り巡らされた罠
究極の頭脳戦を決するのは違和感
元SP冬木安奈は、元チェス世界王者を護り抜けるのか。
『ジョーカー・ゲーム』シリーズでブレイクの柳広司が満を持して放つ、絶品書き下ろし
講談社創業100周年記念出版
わたしはもう見捨てない――。
ある事件をきっかけに警察官を辞めた元SPの冬木安奈。六本木のバー「ダズン」で働いていた彼女に、行方をくらましていた元チェス世界王者の“天才”アンディ・ウォーカーの警護依頼が舞い込む。依頼者の宋蓮花は、「アメリカ合衆国大統領に狙われている」というが……。






曹源寺評価★★★★
囲碁や将棋をテーマにしたミステリというのは、「黒と白の殺意」(水原秀策)や「「不要」の刻印」(本岡類)なんてのがありますが、地味過ぎてあまり話題になってはいないですね。チェスについては昔むかしにやったきりなので、ナントカ作戦とか書かれても今やさっぱりわかりませんが、チェスの知識が全くない人でも楽しく読める仕上がりになっています。柳氏がブレイクしたきっかけの「ジョーカー・ゲーム」も然りですが、彼の平易な文章は万人向けですね。難しいことをやさしく分かりやすい表現で書くというのは意外に大変ですが、これを難なくやってのけているのが氏の真骨頂ではないかと思われます。
そして、本書には意外な仕掛けがあったりするので、読者的にはちょっとした「やられた感」を与えてくれます。これがまたニクイです。このやられた感、ちょっとしたドンデンは東野作品「容疑者Xの〜」や歌野作品「葉桜の季節に〜」を彷彿とさせるような内容ですので、ミステリ好きにはたまりません。作者のこうしたトリックは(ネタバレになりますが)映像化できないところがまた、「葉桜の季節に〜」と重なるところでもあります。








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