ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2018年06月12日

書評904 雫井脩介「引き抜き屋 (2)鹿子小穂の帰還」

こんにちは、曹源寺です。

初の米朝首脳会談が行われて、朝鮮半島の完全非核化を含めた4項目の合意で調印にまでこぎつけたというのは、まさに歴史的な一日になったのではないかと思います。
もちろん、北の国がこれを粛々と履行すれば、の話ではありますが。
ここにくるまでの米国の圧力は過去にないほどのレベルでありましたから、やはり圧力というのは必要なんだなぁと思うわけです。トランプが有能だなあと思うのはこういうところです。つまり、「喧嘩は戦う前に決着がついている」ということです。闇雲に突っ走るのはただの蛮勇でしかなく、後さき考えずに突っ走っているだけのヤツは間抜けだということです。
かの孔子も言ってます。
勝兵は先ず勝ちてしかる後に戦いを求め、 敗兵は先ず戦いてしかる後に勝を求む。

まさにこれです。
あとは安倍首相に日朝首脳会談をぜひ実施していただき、拉致被害者の帰国を実現してほしいものです。戦う前に勝っている状態を作りましょう。これを邪魔するヤツは非国民と呼んでやりましょう。


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内容(PHP研究所HPより)
「いい加減で質の悪いヘッドハンターも跋扈(ばっこ)しておりましてね」
父がヘッドハンターの紹介で会社に招き入れた大槻(おおつき)の手によって、会社を追われた鹿子小穂(かのこ・さほ)は、再就職先でヘッドハンターとして働き始めた。各業界の経営者との交流を深め、ヘッドハンターとしての実績を積んでいく小穂の下に、父の会社が経営危機に陥っているとの報せが届く。父との確執を乗り越え、ヘッドハンターとして小穂が打った、父の会社を救う起死回生の一手とは?
ビジネスという戦場で最後に立っているのは――。
予測不能、そして感涙の人間ドラマ。ヘッドハンターは会社を救えるのか!?
仕事と人生に真正面から取り組むすべての人に勇気を与える、一気読み必至のエンターテインメント。


曹源寺評価★★★★★
引き抜き屋(1)鹿子小穂の冒険」に続いて一気に読了しました。
「引き抜き屋の苦心」「引き抜き屋の報復」「引き抜き屋の帰還」の連作短編3作が収録されています。企業小説であり、経済小説であり、そしてなによりもヒューマンドラマであるという印象を強く受けますが、この人間の部分にフォーカスした作り込みがとてもうまく機能したのではないかと思います。特に、ヘッドハンターという職業からの視点が斬新であるし、経営の難しさや経営者の資質、矜持、思い入れ、プライド、信条、といったものが織り込まれているのが良いですね。

「引き抜き屋の苦心」では、創業45年のカバンメーカーが社長の癌疾患により後継者を探すオファーに小穂が奮闘するストーリーですが、これなんて今まさに日本の中小企業が抱えている問題を浮き彫りにしたようなストーリーです。中小企業庁が後継者難の現状をレポートしたことがありますが、社長の平均年齢が60歳を超えているという衝撃的なデータもありますね。特に年商10〜30億円程度の企業だとMBAホルダーの雇われ社長、つまり「プロの経営者」などを呼んでくるのが果たして正解なのかどうか、非常に難しい問題だと改めて認識させられます。

「引き抜き屋の報復」では同じオフィスにいる左右田の案件を手伝うことになった小穂だが、飲食チェーンのオファーに対してメガネチェーンの企業から引き抜こうとする左右田の意図が分からず、、、というストーリーです。左右田の居酒屋で熱弁をふるう姿が笑えます。アイドルグループのコンサート帰りに、そのグループの戦略をポーターのファイブフォース分析を交えて是非を問うこの科白回しが個人的にはツボにはまりました。

そして最後の「引き抜き屋の帰還」です。帰還とありますからには小穂が父の企業である「フォーン」に凱旋するストーリーかと想像できますが、話はそう簡単なものではありませんでした。ただ、苦境に陥ったフォーンを救うために、小穂は奮闘します。そして、(ネタバレ注意)読者のあまり予想しないハッピーエンドを迎えますので、読了した人はそれなりに満足できるのではないかと思います。
多くの人は帰還=小穂が社長にでもなってフォーンを立て直すのでは、という予想をしがちですが、これだとお話が完結してしまいますので、

むしろこうしなかった雫井センセーの意図がどこにあるのか、

ちょっと気になりますね。もしかしたら続編あるのかな。せっかくですからシリーズ化してくれないかなとも思います。





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2018年06月08日

書評903 樋口有介「平凡な革命家の食卓」

こんにちは、曹源寺です。

こんなニュースを観たもんだから。
防衛省の研究助成継続を辞退、北海道大学が大学で初(6/8 TBSニューズ)
防衛省が大学などの研究を助成する制度について、軍事研究につながりかねないとする批判が出るなか、北海道大学がこれまで受けていた助成の継続を辞退していたことがわかりました。大学が助成を取り下げたのは初めてです。
防衛省が防衛装備品につながる研究を助成する制度は3年前に始まり、大学に対する国の交付金が減る傾向にある一方で、予算は毎年増額され、昨年度は110億円に達しています。これまでに9つの大学の研究が選ばれていますが、このうち、北海道大学が、「船が受ける水の抵抗を小さくする研究」についての今年度の助成金の継続を辞退していたことがわかりました。
制度をめぐっては、軍事研究につながりかねないとする批判が相次ぎ、去年、日本学術会議が制度への応募に否定的な声明を出していましたが、助成を受けていた大学が取り下げたのはこれが初めてです。北海道大学は理由について、「学術会議の声明を尊重した」としています。


大学が軍事研究を行わないとする動きがなんだか加速しています。今年の3月に京都大学が軍事研究を行わないと発表したのが記憶に新しいところではありますが、北海道大学でも似たような動きがみられたわけです。北海道大学の場合は、明確に軍事研究を行わないと発表したわけではありませんが。

では問いますが、学術研究と軍事研究の境界線ってどこよ?

何が学術研究で何が軍事研究なのか。こんなの明確な境界線があるわけないんです。明確な定義づけができないものを規則にすることほど怖ろしいことはありません。それはつまり、極めて属人的な判断が、主観的な意見が、思いっきり入り込む余地があるということです。
となると、行きつく先はもう見えています。
「これは軍事研究につながるからダメだ!」
「この学術研究はわかるが、この部分は軍事転用が可能だから研究してはダメだ!」
軍事にヒステリックな反応を示す一部の方々がこうしたシュプレヒコールを投げてくるのは容易に想像できますね。上記の記事にしたって、「船が受ける水の抵抗を小さくする研究」って思いっきり民間転用が見込まれる分野ですよね。これをもって「軍艦に技術転用されるから大学では研究してはいけない」とか言われたら、エンジニアは何を研究したら良いんですかね。

そもそもインターネットだってGPSや人工衛星だって、軍事技術の応用で発展してきたものであります。米国にはNASAという大きな組織が、軍事だろうが民事だろうが関係なくテクノロジーとして実現にこぎつけようとしている研究分野をたくさん持っています。だからこそ、世界の頭脳が集結するのであるし、成果を上げているのであります。
日本の大学ではそのうち、
「原爆の製造技術につながるから原子力の研究は行わない」
「大陸間弾道ミサイルの技術につながるからロケットの研究は行わない」
「部隊の統制・コントロール論につながるから企業の組織の在り方に関する研究は行わない」
「軍隊の糧食の保存技術につながるから食べ物の保存に関する研究は行わない」

とか言い出しそうですね。バカか。
日本大学の事件を持ち出すまでもなく、大学の劣化というものがものすごい勢いで進んでいるのではないかと思う今日この頃です。


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内容(祥伝社HPより)
地味な市議の死。
外傷や嘔吐(おうと)物は一切なし。
医師の診断も心不全。
なんとか殺人に格上げできないものか。
本庁への栄転を目論(もくろ)む卯月枝衣子(うづきえいこ)警部補29歳。
彼女の出来心が、“事件性なし”の孕(はら)む闇を暴く!?
軽妙に、見事に、人間の業(ごう)の深さに迫る
新感覚ミステリー!
「ねえ課長、ついでに一週間だけ、わたしに調べさせてもらえませんか」
東京・国分寺(こくぶんじ)市の閑静(かんせい)な住宅街で、初老の男が死んだ。かつては存在感の薄い中学教師で、先の選挙で急遽(きゅうきょ)担(かつ)がれただけの市会議員。キャッチフレーズは「国分寺から革命を!」。現場に不審な点はなく、しいて言えば座布団(ざぶとん)がきれいに並びすぎていたくらい。医師の診断も急性心不全だった。所轄(しょかつ)での退屈な日々に飽(あ)きていた卯月枝衣子警部補は、あわよくば本庁捜査一課へ栄転の足がかりにと、昼行灯(ひるあんどん)の刑事課長を言いくるめ、強引に単独捜査に乗り出すが……。


曹源寺評価★★★★★
久しぶりに樋口有介センセーの作品を読みました。
登場人物のなかに一人くらい、ひねくれた人がいて、その人の会話のテンポがとても新鮮だわ、という感じの作品が樋口センセーの持ち味なのではないかと思っています。伊坂幸太郎センセーのそれはかなりぶっ飛んでいますが、樋口センセーはそれをだいぶマイルドにした感じと言って良いでしょうか。
今回は、国分寺署の女刑事である卯月枝衣子警部補が、自分の出世(本庁捜査一課希望)のために市会議員の不審死を事件に仕立て上げようとしたところ、なんだかおかしなことになって、、、
という展開です。
といってもドタバタ劇ではなくて、それでいて警察小説を前面に押し出したわけでもなくて、なんだかちょっと不思議な感じがしなくもないです。おそらくそれは、

作品全体に流れるほのぼの感がそうさせている

のかもしれません。
基本的に樋口センセーの作品は会話のテンポが良くて軽いんですが、実は事件の真相はエグい、ものすごくエグくて、そこに横たわっていたのはとてつもなく深い闇だった、みたいな作品がありますね。本書もその類いでありましょうか、ラストのモヤモヤ感はそれなりに読者の心を抉っていきますね。
軽いけれど、深い。さらっと読めるけど、読み終わってから尾を引いている。そんな樋口ワールドがとても好きです。





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posted by 曹源寺 at 16:37| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月05日

書評902 大石直紀「ギロチンハウス:課長 榊江梨子の逆襲」

こんにちは、曹源寺です。

以前にとりあげた放送法改正の続き。
放送法4条撤廃見送り=規制改革会議が答申(6/4時事通信)
政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)は4日、首相官邸で会合を開き、放送制度改革を柱とする答申を安倍晋三首相に提出した。放送番組(コンテンツ)の海外展開を促進する方針を打ち出す一方、番組の政治的公平性を定めた放送法4条の撤廃は見送った。
 首相は会合で、放送制度改革に関し、「通信と放送の枠を超えたビジネスモデルの構築など多くの具体的な提言をいただいた。引き続き、総務省を中心に未来を見据えた放送のあるべき姿について、総合的に検討を進めてもらいたい」と述べた。
 放送法4条をめぐっては、政府内で3月、インターネット事業者の放送参入をしやすくすることを名目に撤廃案が浮上。しかし、メディアをけん制する政権の思惑があるとの見方が広がり、放送業界は強く反発。政府・与党内からも懸念の声が出ていたため、今回は盛り込まれなかった。
 答申には、使われなくなった周波数を割り当てて、放送事業へ他業態からの新規参入を促すことも盛り込んだ。NHKのテレビ放送とインターネットの「常時同時配信」の是非については、早期に結論を得るよう求めた。


放送法第4条の撤廃は業界や与党内からの反発があって断念したとのことです。まあ、総務相が野田聖子ですからこうなることは想定内ですね。
そのかわり、新規参入を促すことについては答申に盛り込まれました。地上波であっても新たな割り当てが期待されるのであれば歓迎する声は大きいのかもしれません。

その放送法第4条については、かつて国連の方から来た人が撤廃を求めてきたという事実があり、この法令を理由に「日本は報道の自由が阻害されている」と懸念を表明しているというのも事実であります。

今回の答申にしても、すでに政治的公平性など有名無実になっているテレビ報道に、視聴者が今さら何も求めていないというのに、「自分たちは公平公正に報道しております」と言いたいがためだけにこの条文を残してほしいと言っているに過ぎないのは明白です。

「報道の自由度ランキング」において日本の順位が下がった時、最も大きな理由づけとされなければならない放送法第4条について、マスゴミは一切これを取り上げません。そのくせ、「与党ガー、アベガー」とぬかしやがるのはそれこそ放送法第4条に違反しているはずですが 笑

新規参入について触れたのであれば、「電波オークションの導入」と「クロスオーナーシップの廃止」も盛り込んでほしかったですが、自民党政権ではできないのでしょうか。それとも自公連立政権だからできないのでしょうか。この件については真剣に取り組んでもらえる政党が必要ではないかとつくづく思います。


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内容(小学館HPより)
リストラ社員が会社の闇を暴く痛快ミステリ
精密機器会社・京都クルミ製作所の「セカンドキャリア戦略室」。その実態はリストラ小屋、通称「ギロチンハウス」。突然そこに異動となった経営企画部第二課課長・榊江梨子・42歳、営業一課課長代理・下島裕二・52歳、総務部五係係長・勝見亮・30歳の3人。納得がいかない3人がその直後に起こったある事件を調べていくと、徐々に会社の闇が明らかに。社内不倫、不正経理、派閥争い、盗聴、裏切り・・・。崖っぷち社員たちの人生をかけた闘いが始まった。第69回日本推理作家協会賞短編部門受賞後、著者が初めて書き下ろした痛快リベンジ・ミステリ小説。


曹源寺評価★★★★★
大石センセーは小説よりもドラマの方面で活躍されている御仁ですね。「深夜食堂」や「刑事ゆがみ」などは人気作品となりました。
そんな大石センセーの作品は初読であります。
本書は京都の企業を舞台に、リストラ要員として選ばれた3人が会社内の闇を暴いてリベンジを果たすという小説です。ミステリ仕立てですが、

軽妙軽快、サクサク読めるテンポの良さが光ります。

自分はわずか1時間で読了してしまいました。
リストラ部屋に異動となった3人は、いずれもなぜ自分が異動になったのか分からぬまま過ごすが、野心あふれる榊江梨子は即行動に移る。年上好みの勝見と優柔不断な下島を協力者にして、社内の内部事情を調べていくと、、、
キャラクターの書き込みは最低限、会話のテンポも軽快ですのでストーリー展開がものすごく速いです。(以下、ネタバレあり)
一応、サブストーリーらしきものはありますが、それもおまけ程度のものですし、なんだかなくても良いんじゃないかと思うレベルですね。すぐれた作品の場合、サブストーリーはメインストーリーと交錯することがあります。それも重要な場面で。しかし本書ではそれがはっきりしないし必要だったとも思えない。このへんは非常にもったいないですね。
ただ、メインストーリーは普通に面白いです。あっさり楽しく読みたい人向けと言って良いですね。





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posted by 曹源寺 at 15:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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