ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2018年01月09日

書評862 日本推理作家協会編「殺意の隘路」

もう松の内ではありませんので、本年もよろしくお願いいたします。とだけ。

えー、この年末年始は一言で言い表しますと、「前半はドタバタ、後半はグダグダ」でありました。
おまけに読む本がなくなってしまい、テレビも普段まったく観ないものですから、子供の学習に付き合っていました。最近のお子様だけの特徴ではありませんが、「興味のない分野には力が入らない」というのは不変の真理でしょう。息子は社会が全般的に苦手というか嫌いみたいです。
自分は地理がなぜか得意になりましたが、学生時代は歴史が苦手でした。しかし、社会人になってからは急激に興味が湧くようになりました。特に日本史ですね。近現代史は今=NOWとものすごくつながっていることが良くわかります。もっと勉強しておけばよかったと痛感しています。だから息子にも歴史を教えたりしているのですが、これが自分に似て歴史嫌いみたいなんですね。
さあ困った。息子の歴史嫌いをどうやって直そうか。とりあえず、現代の問題から手を付けるか、ということで母親が買ってきたのがこれ。
「SAPIX重大ニュース 2018年中学受験用」です。


かなり内容が濃いので非常に勉強になります。しかし、濃すぎる。濃すぎて父親がひとつひとつ解説していくと2ページ進むのに1時間くらいかかってしまうのです。たとえば、「もんじゅ解体」とひとくちに言っても、「もんじゅって何?」から始まり、再処理の仕組みから原発政策やら次世代エネルギーやら発電の仕組みまであちこち飛びまくって、気が付いたら一人で1時間以上しゃべっていました。はたして理解できたのであろうか。
あぁ、でもよく考えてみたら、かなり話が脱線していました。例えるなら、スマホの話をするのにWiFiとかSIMはともかくメモリとかインマルサットの話をする必要はないですね。
やはり教えるというのは難しい。

教えることができるのは、体系的に学んだ人だけである

というのが真理かもしれません。

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内容(光文社HPより)
日本のエンタテインメントのレベルは世界的に見ても極めて高く、かつまたバラエティに富んでいます。それは一読者として、私がかねがね感じていたことでもありました。ことにミステリーのジャンルにおいて、それは一層顕著であると申せましょう。
――以上の文言は、果たして真実なのか。それとも私の妄想なのか。その答えは本書にあります。一つ一つの作品を舌の上で玩味し、鑑賞し、推理してみて下さい。あなたはきっと至福の時間とともに、最高の真実に辿り着けることでしょう。
日本推理作家協会 理事 月村了衛
目次
収録作品
青崎有吾 もう一色選べる丼
赤川次郎 もういいかい
有栖川有栖 線路の国のアリス
伊坂幸太郎 ルックスライク
石持浅海 九尾の狐
乾 ルカ 黒い瞳の内
恩田 陸 柊と太陽
北村 薫 幻の追伸
今野 敏 人事
長岡弘樹 夏の終わりの時間割
初野 晴 理由ありの旧校舎 ――学園密室?――
東野圭吾 ルーキー登場
円居 挽 定跡外の誘拐
麻耶雄嵩 旧友
若竹七海 副島さんは言っている 十月


曹源寺評価★★★★★
日本推理作家協会の短編集はいつもレベルが高い作品が多く収録されていて、読む本がなくなった時には重宝します。これまでも「驚愕遊園地」「奇想博物館」「悪意の迷路」などが刊行されていますが、東野圭吾センセーや恩田陸センセー、伊坂幸太郎センセーなど第一線でご活躍中の方々の作品がずらりと並んでいるのが良いですね。
自分にとっては普段あまり読まない有名作家センセーの作品に触れるというのが目的でもあります。今回は乾ルカセンセーと円居挽センセーあたりが(恥ずかしながら)初読でしたので、とりあえず目的は果たしたのですが。それ以外のセンセー方はすでに愛読者でもありますので、あまり新鮮味がなかったのが残念です。





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posted by 曹源寺 at 17:59| Comment(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月29日

書評861 本城雅人「代理人 エージェント」

こんにちは、曹源寺です。

ある会社の話です。
執行役員で営業部長でもある花田部長にはT君という部下がいます。T君は外国人です。ある日、同じ会社の外国人会があって呼ばれたら、酔っぱらった別の部の先輩からビール瓶で頭を殴られました。
T君は花田部長に怪我の報告をしなかったのですが、2日後にばれました。花田部長は社長に報告する義務がありますが、会社はこうした内輪のもめ事を嫌う性質があるのでうやむやになってしまうのではないかと恐れました。花田部長は警察に届け出ることにしました。
社長以下、経営陣は激怒しました。なぜ、警察沙汰にしたのか、と。会社のイメージがガタ落ちではないか、いったいどうしてくれるんだ、と。
花田部長は何の言い訳もせずに沈黙を守っています。会社はしょうがないので加害者のH君を諭旨解雇し、その上司のI部長を降格処分にしました。しかし、同じように花田部長も降格処分にしました。
さて、悪いのは誰でしょうか。

黙して語らない花田部長ですが、ここでこの事件のカギを握るキーワードがひとつありました。それは
「公益通報者保護法」であります。
いわゆる、内部通報者の権利を保護するための法律です。粉飾決算やリコール隠しなどの企業の不祥事については公益の観点から告発することを奨励している(というか妨げない)というのが法の趣旨です。今回の暴力事件も被害者として、司法に解決を委ねることについては何の落ち度もありませんし、内部通報と同時に会社に告発の事実を報告するなんて馬鹿はいません。花田部長の行動は公益通報者保護法によって守られるべき事案と言えるでしょう。

上記はフィクションですが、なんだか同じような事例がどこかの興行団体でも発生しているようですね(すっとぼけー)。事件や事故、トラブルなどに関する善悪の判断はなにか別の事案と照らし合わせるのが一番ですね。人類は何千年も生きてきているわけですから、似たような事例はいくらでもあるのだと思います。

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内容(実業之日本社HPより)
敏腕代理人の裏の顔は、スキャンダル仕置人!?
選手(クライアント)の不祥事は、ヤツに任せろ。
金にこだわる姿勢から、メディアに「ゼニバ」と揶揄されるスポーツ代理人・善場圭一だが、手腕はピカイチ。
契約選手の全打席・全投球をチェックして球団との交渉に臨み、有利な条件を勝ち取っていく。
そんな彼の頭脳は、さまざまトラブルを引き寄せる。
暴行疑惑、女性問題、違法な賭け事etc
タフでクレバーな男は、いかにして問題を解決するのか!?
2017年度吉川英治文学新人賞受賞作家にして、球界の内幕を知り尽くした元新聞記者だから描ける傑作ミステリー、ここに誕生!

曹源寺評価★★★★★
「ビーンボール スポーツ代理人・善場圭一の事件簿」(改題前は「オールマイティ」)という作品がありまして、その続編という位置づけみたいです。「ビーンボール」を未読のまま本書を読んでしまいましたが、やはりビーンボールから先に読んでおいた方がよさそうな内容でした。
元プロ野球選手の善場圭一はプロ生活1年で退団し、その後司法試験に合格して弁護士の資格を得てプロ野球選手のマネジメントを中心に行う事務所を設立し、代理人(エージェント)として活躍。世間からは「ゼニバ」と呼ばれるほど金にうるさい守銭奴という評価であるが、マネジメントするのはたったの3人までと決めている。それは絶対的な信頼関係の構築なくしては代理人契約を結ぶことはできないというポリシーに基づいているからだ。
本書は連作短編の形式で、現役選手が抱えるトラブルに立ち向かう善場の活躍を描いています。現実社会においてもプロスポーツ界は覚せい剤や不倫、違法カジノへの出入りといった話題は枚挙に暇がありません。こうした数々のトラブルを解決するのが代理人ですが、日本ではメジャーリーガーほど代理人が制度として確立されていないのもまた現実であります。
ですので、この善場圭一の活躍は

ある意味近未来小説であると言っても良い

のかもしれません。団野村のように先駆者がいないわけではありませんが、国内ではまだまだ認知度が低いし、活躍の場も少ないです。
そんな代理人がトラブルシューティングのためにさまざまな手法を駆使して解決にあたるという作品は、もっともっと多くのネタがありそうですからシリーズとしてがっつりやってほしいなあとも思います。
本城センセーはサンケイスポーツにも在籍したことがある元新聞記者ですので、プロ野球や高校野球などの裏側にも詳しいはずです。マスコミ業界を書くよりも、本書のようなプロスポーツのネタのほうがいっぱいお持ちではないかと思います。作品はどれもちょっと軽めであっさりしていますので、もっとドロドロしたような内容でも良いんじゃないかくらい思いますが、それはやはり「ゼニバ」と呼ばれるくらいの守銭奴と言いながらも主人公は結構いい人だったりするわけで、キャラがもっとぶっ飛んでいればいいのにと思うのと同時に、プロスポーツというちょっとマニアな世界を描くだけにストーリーも万人向けになってしまっているのが大きいのかもしれません。
ですから、
キャラを極端にして地味なストーリーに味付けする

キャラは今まで通りだけどストーリーをコアなファン向けにする
かのどちらかにシフトすればいいんじゃないかと思います。





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2017年12月26日

書評860 貴志祐介「ミステリークロック」

こんにちは、曹源寺です。

マスゴミと呼ばれて久しいマスコミ界ですが、自分は新聞社よりもテレビ局の不誠実な対応のほうが気になっています。テレビ局は国民の財産である電波を不当に安く借り受けていて、放送法第4条に違反する事例が後を絶たないからです。
新聞社は嫌なら買わなければ良いだけだと思っていました。ただ、さすがにここまでくるともう、朝日死ねという言葉も吐きたくなるなあという感じです。↓

朝日新聞・高橋純子氏 「安倍政権の気持ち悪さ伝えたい」(日刊ゲンダイ12/25)
新聞記者は、ウラを取って書けと言われるが、時に〈エビデンス? ねーよそんなもん〉と開き直る。政治部次長だった時に書いた朝日新聞のコラム「政治断簡」をまとめた著書「仕方ない帝国」(河出書房新社)が評判だ。キチッとした優等生の文章が当然の朝日において、時に〈『レッテル貼りだ』なんてレッテル貼りにひるむ必要はない。堂々と貼りにいきましょう〉とあおり、〈安倍政権は「こわい」〉と言い切る。テンポ良く、小気味いいが、もちろん、炎上も数多い。そんな名物コラムはなぜ、生まれたのか? 朝日新聞論説委員の高橋純子氏に聞いた。(以下、読む価値はないので省略)

えー、新聞記者がエビデンス(論拠)を捨てたら終わりじゃないですかね。自分たちはフェイクニュースを垂れ流していますと宣言しているようなものですが、そうした自覚はないんですかね。ものすごいことをさらっと言っているわけですが、これある意味、ゲンダイグッジョブです。歴史に残るインタビューと言えるでしょう。そういえば、この高橋純子とかいう女史は「一発だけなら誤射かもしれない」とか「黙ってトイレを詰まらせろ」とか名言がいっぱい残っていますが、こんな人が論説委員になる会社というのもすごいですね。

こんな朝日新聞社は同じ25日に、文芸評論家の小川榮太郎氏が著した「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」について、名誉棄損で5,000万円の損害賠償訴訟を東京地裁に起こしたそうです。
書籍の内容について、法廷で決着をつけようとするその姿勢はおよそ新聞社のそれではないと思います。自分たちの媒体でしっかりと反証すれば良いだけの話なのに、なぜ訴えを起こす必要があるのでしょうか。
世間ではこういうのをSLAPP訴訟と言いますね。提訴することで被告を恫喝するという目的を果たすのがSLAPPです。なにがエグイかと言うと、小川氏の書いた内容について一切個別的な言及がなされておらず、そうした論戦なしに訴訟に持ち込んだことだと思います。ひとつひとつについて何も反論していない。していないのに全体では「事実に反した誹謗・中傷」だとしているんですね。恫喝だけでなく、印象操作としても訴訟を利用しているのではないかと思います。

このふたつの記事が同じ日に複数の媒体で取り上げられました。そして、ネットでも炎上騒ぎとなりました。朝日新聞社は追い詰められているというよりは、自滅しているのではないかと思ってしまいます。

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内容(KADOKAWA HPより)
犯人を白日のもとにさらすために――防犯探偵・榎本と犯人たちとの頭脳戦。
様々な種類の時計が時を刻む晩餐会。主催者の女流作家の怪死は、「完璧な事故」で終わるはずだった。そう、居あわせた榎本径が、異議をとなえなければ……。表題作ほか、斜め上を行くトリックに彩られた4つの事件。


曹源寺評価★★★★
貴志祐介センセー久しぶりでした。「硝子のハンマー」でミステリに挑戦した貴志センセーですが、そこから「狐火の家」「鍵のかかった部屋」と続く「防犯探偵・榎本径シリーズ」が確立されました。そういえば「鍵のかかった部屋」は嵐の大野君主演でドラマ化されましたね。本書はその流れをくむ榎本径シリーズです。連作短編4作品を収録しています。
「F&Fセキュリティショップ」の経営者で防犯コンサルタントを自称する榎本径の本職は泥棒であります。時折セリフの中に不穏な内容が混じるので、相手から見るとコンサルタントなのか泥棒の仲間なのかわからなくなるという特異なキャラクターです。
そしてそのバディとしていつも登場してくるのが、弁護士の青砥純子です。一応美人らしいのですが、事件の場面となると場違いな科白と勘違いな謎解きで周囲を白けさせる名人です。青砥は榎本の正体に感づいているようですが、確証がないのでめったなことでは口にしません。そんな二人の掛け合いは絶妙なのですが、本書ではさらにグレードアップしていて、「orz」のようなネットスラングまで飛び出す始末です。

貴志センセーとってもおちゃめです。

このシリーズ最新刊では防犯の枠を大いに飛び出していて、舞台はヤクザのマンション、美術館、山荘、そして海の上です。本来ならば榎本の活躍する場ではないのかもしれませんが、密室の謎を解くという共通項によりお出ましとなっています。
本書は「ゆるやかな自殺」「鏡の国の殺人」「ミステリークロック」「コロッサスの鉤爪」の4作が収録されています。表題作の「ミステリークロック」は北国の山荘で発生した殺人事件の謎に榎本が挑戦するストーリーですが、空間的な密室ではなくて時間的な密室が横たわるミステリです。犯人捜しは難しくないけれど、謎解きとしては複雑ですのでやむを得ず図解まで入っている始末です。それでもミステリとしての出来は秀逸と言って良いでしょう。破たんも矛盾もなく見事に解明してくれています。
個人的には「コロッサスの鉤爪」が面白かったです。南洋の海で溺死した男性の死の謎を榎本が解き明かします。誰も犯行現場に近づくことができないはずの洋上で、不審な死を遂げた男性は果たして海の化け物に海中に引きずり込まれたのか。
海の上に密室を作り上げた貴志センセーの手腕には驚かされます。「犯行不可能な状況を作り上げる」だけなら「アリバイ工作」で十分なのですが、「誰も犯行現場に立ち入ることができそうにないという状況」を作り上げればそこは「密室」となるわけですね。そう考えれば、密室の謎というのは今後もさまざまな場面が創造されることになるのかもしれません。





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posted by 曹源寺 at 16:57| Comment(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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