ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年10月03日

書評841 佐藤究「Ank: a mirroring ape」

こんにちは、曹源寺です。

先週末から今週にかけて、政治が大きく動いています。政治ではなく政局ですね。
結局のところ、民進党が解党状態になり、希望の党、立憲民主党、無所属に分割されるようになるわけですが、現在のところまでわかっている有力議員(有名なだけの議員も含めて)の行く先だけでもまとめておこうと思います。

民進党→希望の党
細野豪志
後藤祐一
松原仁
笠浩史
玉木雄一郎
櫛渕万里
柚木道義(?)
馬淵澄夫(?)
柿沢未途(?)
階猛(?)
長島昭久(希望の党結成前に民進党脱退済み)

民進党→立憲民主党
枝野幸男
菅直人
長妻昭
初鹿明博
海江田万里
赤松広隆
辻元清美
阿部知子
川内博史

民進党→無所属
前原誠司
岡田克也
野田佳彦
安住淳
江田憲司

参議院は知らねえということで。間違っていたらごめんなさい。
希望の党は200人擁立を目指すとかスゲエこと言っていますが、玉木雄一郎や櫛渕万里を公認した時点で政策集団ではないことが露呈されてしまいましたね。後藤祐一や階猛も含めて、このあたりの人たちとは政策、特に外交や安全保障関連の立ち位置が絶対に合致していないはずなんですが。
個人的にはこの小池氏が本当に胡散臭く思えてしょうがないので、こうした節操のない動きが本当に気になります。胡散臭いというのは、小池氏の最近の動きがどう見てもポピュリストであり、(国内初の女性)総理をやりたいという野望のためだけに動いているのではないかという心証しかないからです。
こうやって眺めると、民進党→希望の党の面々はなんだか節操のない人たちという印象になりますね。
民進党→無所属の人たちはそれなりに知名度もありますが、小選挙区で落ちたらアウト!比例復活なし!の背水の陣で臨むわけですからある意味潔いですね。
あと、民進党→立憲民主党の人たちは党首が中核派なだけに、リベラルを通り越してだいぶ赤く染まってきましたので、立ち位置としてはわかりやすいのかもしれません。でも「立憲」という単語は「憲法を制定する」という意味ですので、護憲派の方々が使用するのはちょっと筋が違うような気がします。

あと(閣僚経験者で、かつ引退表明した人以外で)は
玄葉光一郎
原口一博
あたりがニュースになっていません。まだ態度を決めかねているのですかね。
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内容(講談社HPより)
2026年、多数の死者を出した京都暴動(キョート・ライオット)。
ウィルス、病原菌、化学物質が原因ではない。そしてテロ攻撃の可能性もない。
人類が初めてまみえる災厄は、なぜ起こったのか。
発端はたった一頭の類人猿(エイプ)、東アフリカからきた「アンク(鏡)」という名のチンパンジーだった。
AI研究から転身した世界的天才ダニエル・キュイが創設した霊長類研究施設「京都ムーンウォッチャーズ・プロジェクト」、通称KMWP。
センター長を務める鈴木望にとって、霊長類研究とは、なぜ唯一人間だけが言語や意識を獲得できたのか、ひいては、どうやって我々が生まれたのかを知るためのものだった。
災厄を引き起こした「アンク」にその鍵をみた望は、最悪の状況下、たった一人渦中に身を投じる――。
江戸川乱歩賞『QJKJQ』で衝撃の”デビュー”を果たした著者による、戦慄の受賞第一作!
我々はどこから来て、どこへ行くのか――。人類史の驚異の旅(オデッセイ)へと誘う、世界レベルの超絶エンターテインメント!!


曹源寺評価★★★★★
2016年の乱歩賞受賞作家である佐藤究センセーが受賞後の第1作として書き上げたのが本書です。
四六版474ページの大作には驚かされましたが、その内容にはもっと驚かされました。
舞台は2026年の京都。霊長類研究の先端施設であるKMWPセンターに勤務する(というか創設した)鈴木望は、AI関連の事業で富豪となったダニエル・キュイのスポンサードの下で、ある研究に携わっていた。
2026年10月、突然、京都市内のあちこちで暴動が発生する。人々が急に暴れ出し、殺しあったのだ。
人々を殺りくに導いたのは何か。未知のウイルスか、あるいは生物兵器か、それともゾンビが現実化したのか。人々は老若男女を問わず殴り合い、爪を立て、噛みつく。相手が死ぬまで攻撃を止めない。未曽有の暴動となった京都の町に何が起こったのか。KMWPは関係があるのか。

久々に壮大なテーマの作品に当たりました。

欠点を挙げようと思えばいくつかは挙がりますが、そんな欠点を無視しなくても十分に楽しめる内容に仕上がっています。
テーマが人類史なだけにスケールが超絶的に大きいのですが、だからといって読みにくいわけではありません。謎が出て来てもそれほど引っ張らずに解決し、次の謎に迫っていくスタイルですので、ストーリーがこんがらがるようなことはありません。時系列をしっかりと押さえていけばあちこちに飛んでいる場面もそれほど苦にはならないと思います。

以下、多少ネタバレになりますが、
ゴリラ、オランウータン、ボノボ、チンパンジーの4種の類人猿が現在まで生き残り、アウストラロピテクスに始まる猿人がことごとく絶滅しているのはなぜなのか(正確にはサヘラントロプス・チャデンシスが始祖らしいですねw知りませんわw)。
こんな疑問についてしっかりと考えたことなどありませんでした。そういわれればそうですよね。類人猿が生き残り、猿人が絶滅している。このことだけでも十分にミステリです。この謎に佐藤センセーは独自の解釈を試みます。それが表題としても現れている「mirroring ape」というやつです。
進化論の分野は昔から興味があったのでいくつかの本は読みましたが、ミステリでここまでのアプローチをしてきた作家センセーはなかなかいないのではないかと思います。ちょっと前には高野和明センセーが「ジェノサイド」のなかで新しい人類の方向性を示唆されていましたが、高野センセーが近未来の人類の在り方と現代の「虐殺」を対比させるというアプローチに対して、本書は将来のAIのかたちを求めるのに700万年前の類人猿を研究するというアプローチをしていて、そこに京都暴動という「事件」を持ってきました。
設定自体に多少の無理があるという指摘も多いですが、それ以上に本書は人類の謎という大きなテーマに対して

知的好奇心をめちゃ刺激してくるような

作品に仕上げてきたところが、本当に素晴らしいのだと思います。
個人的には今年のナンバーワンです。





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2017年09月29日

書評840 柚月裕子「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」

こんにちは、曹源寺です。

小池百合子氏が希望の党を立ち上げたことで、次の衆議院議員選挙がとんでもない方向に進みつつあるようです。
民進党の前ナントカさんが合流を決めたそうですが、小池党首との会談は今日(9/29)になってから行われたので、合意があって発表されたものではなかったみたいですね。
民進党に関しては、政策の違いがものすごく顕著な政治団体に合流しようとするその心情がまったく理解できないので、これっぽっちも論評できないのですが、もし希望の党が民進党のリベラル派を根こそぎ合流させたら相当支持を失うことは目に見えていると思います。
おそらく、水面下ではものすごい駆け引きが展開されているのでしょう。民進党にしてみれば「トロイの木馬」よろしく、当選してから乗っ取ってしまえば良いと考えているのかもしれませんし、小池氏は小池氏でもしかしたら大掛かりな踏み絵を用意するのかもしれません。ここ数日は政治のニュースから目が離せそうにありません。

ひとつ言えるのは、政党とは選挙互助会ではないはずであり、当選したいがためのアウフヘーベン(言ってみたかっただけです)であれば選挙民は見限るべきであるということでしょう。
同じように、「安倍政権を倒す」ことが目的になっている政党は手段と目的が逆転していますので、相手にしてはいけないのだと思います。「安倍政権を打倒して、○○をやるのだ」といった明確な目標なり目的を主張している野党がいないのは、日本国民にとって不幸なことだと思います。

解散してからたった数日でここまで政局が混乱したのは相当珍しいのではないでしょうか。解散に大義はないとか言われていましたが、安倍首相にしてみれば野党がこんなに混乱するとは思ってもいなかったでしょうに。あるいは狙っていたのだとすれば、安倍首相は相当な策士であると言わざるを得ません。

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内容(講談社HPより)
「殺し」と「傷害」以外、引き受けます。
美貌の元弁護士が、あり得ない依頼に知略をめぐらす鮮烈ミステリー!
『孤狼の血』(日本推理作家協会賞受賞)、『慈雨』(本の雑誌が選ぶ2016年度ベスト10・第1位)の著者、最新作!!
将棋ソフト、野球賭博etc.タイムリーな話題が満載!
不祥事で弁護士資格を剥奪された上水流涼子は、IQ140 の貴山をアシスタントに、探偵エージェンシーを運営。
「未来が見える」という人物に経営判断を委ねる二代目社長、賭け将棋で必勝を期すヤクザ……。
明晰な頭脳と美貌を武器に、怪人物がらみの「あり得ない」依頼を解決に導くのだが――。


曹源寺評価★★★★
いつもは重厚な長編ミステリでならしている柚月裕子センセーが、軽めの連作短編という真逆なジャンルで出してこられたのでちょっと驚きでした。
弁護士資格をはく奪され、個人で「なんでも屋」を立ち上げた上水流涼子と、東大卒にしてIQ140のちょっと世間からはみ出してしまった貴山伸彦のコンビが、依頼人の要望に応える軽いミステリです。
涼子のキャラクターが30ちょっと過ぎのイケイケ美人系、貴山のキャラが頭良すぎるうえにガタイも良いというチートな設定ですので、

現実的にあり得ない

ような造型になっているのはご愛嬌でしょうか。映像作品なら北川景子と鈴木亮平あたりが演じたら面白いかもしれません。
それはさておき、5つのストーリーはそれぞれが復讐だったり対決だったりコンゲームだったりするので、なかなかに楽しめる内容となっています。さらに、涼子の過去とかしがらみとか、読み進めるうちに明らかになってくるものも多いので、これは続編不可避ですね。
個人的にはヤクザの親分が依頼してきた将棋のガチンコ賭け勝負で相手の不正を見破れ、という無茶な依頼を引き受ける「戦術的にあり得ない」が良かったです。これに似た話がマンガ「ハロー張りネズミ」にあったのを思い出しました。たしか賭けゴルフで、相手のパットがガンガン決まるのを不思議に思った張りネズミこと七瀬五郎がそのからくりを見破り、それを逆手にとって逆転勝ちするというやつでした。策を弄する者は策に溺れる、を地で行くストーリーは痛快です。こういうコンゲームなショートストーリーは大好きですのでどんどん出してほしいなあと思います。





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2017年09月26日

書評839 下村敦史「緑の窓口 〜樹木トラブル解決します〜」

こんにちは、曹源寺です。

自民党は平沼赳夫議員や谷垣禎一議員、高村正彦議員らが政界引退を表明しました。民進党では川端達夫議員が引退です。ご老体はお疲れ様と言いたいです。人間、誰しも引き際が肝心ですね。
この、引き際を間違えてしまった人ほど悲惨なものはありません。プロ野球ではソフトバンクの松中信彦選手などが悪例ですね。せっかくの三冠王が台無しです。同じソフトバンクの松坂大輔投手は現役にしがみついていますが、このまま復活が実現できなければ男を下げること間違いなしでしょう。
逆に広島カープの黒田博樹投手はラストの1年をカープで過ごすという大英断によって男を上げました。「男気」の代名詞にまでなった黒田さんは今後、広島県知事に出馬してもトップ当選するんじゃないかと思います。
つまり、大衆はそれほどまでに「意気」に感じる姿に共感してしまうのだと思います。

政治や芸能の世界だけでなく、ビジネスの世界も然りですね。社長にまで上り詰めていい歳になって引退したかと思えば、会長になってその影響力を残そうと目論み、さらには相談役とかいう謎の役職に就いて院政を敷くような老害が後を絶ちません。次の世代を信用していないということを態度で示しているのだということに気が付かないのでしょうか。
会長に就任して傀儡を社長に据えたはいいけれど、業績がみるみる悪化してしまい、自分は辞めずに社長の首だけを挿げ替えるという暴挙に出た人もいますね。業績悪化の真の原因は会長の院政にあるのに、自分が時代についていけなくなっているのに、自分の周辺を甘言ばかり言う取り巻きで固めているから真の情報が伝わっていないのに。

これから就職活動を始めようとしている大学3年生のみなさんには、こうした会社の組織、特にトップの状況などもしっかりと研究してほしいなあと思います。

そういえば、マスゴミにはこんな会社が結構目につくような気がするなあ。新聞社とかテレビ局とか。政治家も引退するは良いけど結局自分の息子に地盤を継がせることが多いですからあまり変わらないのかもしれませんが、マスゴミも政治家も共通するのは「巨大な権力」であります。一旦手にした権力というのは、簡単には手放すことができないのでしょう。それが人間の性でもあるのでしょう。そう考えると、上西小百合議員のようにすっぱりと不出馬宣言するのもまた面白いなあと思います。政治家としての力量は別にして。
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内容(講談社HPより)
「全ては樹木が語ってくれました」
『闇に香る嘘』『生還者』で注目の乱歩賞作家が挑む新境地。
樹木トラブルの裏には、人の“想い”が隠れている!
笑って泣ける、人の心と樹木をつなぐ6つの連作ミステリー
新設された「緑の窓口」への異動を言い渡された区役所職員の天野優樹。
えっ…、それって切符を買うところじゃ……。
疑問を抱いたのも束の間、「庭にあるスギの伐採をめぐって家族仲がギスギスしています。なんとかしてください」との依頼が届く。
そう、ここは市民の樹木トラブルを解決する部署だった!
花粉症で樹木嫌いの先輩・岩浪とともに依頼先に向かった天野。
しかし、そこにはスギを愛でる先客が。
「柊紅葉といいます。樹木医です。」
清楚な美人の登場に胸をときめかせる天野だったが、事態は意外な展開を見せ……。


曹源寺評価★★★★
下村センセーはそれなりにいいペースで執筆されていますので、とりあえず今のところ全作品を読了しています。
これまではいかにも乱歩賞作家という感じの作品が多かったのですが、本書はこれまでのカラーを一切出さずに、「これがあの下村センセーの本??」と思わせるくらい毛色の違う作品となっています。
まず、軽い。誰かが死ぬわけでもなく、トラブルと言ってもご近所トラブルくらいの軽さでミステリとしてもかなりマイルドです。
そして、ちょっとほっこり。連作短編6話を収録していますが、いずれの話もハッピーエンドです。読み進めるうちに登場人物のキャラクター造型が詳しくなってきますので、感情移入しやすくなっています。最初は「なんか軽くてつまんねえなあ」と思っていたのですが、読み進めるうちにだんだんこの作品の世界にのめり込むようになり、最後は

続編出ても読むわこれ

というくらいはまりました。
樹木(というか植物)の持つパワーもそうですが、複雑に絡み合う人間模様を植物の世界になぞらえて、そこから教訓めいた話に仕上げていくというのはそれなりに大変な作業ではないかと思いますが、それを見事にさっくりと調理してしまった下村センセーの力量に感服です。
巻末には「デビュー直後から長く温めていたアイデア」と書かれていますので、本来の下村センセーはこうしたヒューマンドラマというかちょっと心温まるお話という路線のほうを指向されているのかもしれません。ここまで守備範囲が広かったらなんでも来いという感じです。





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posted by 曹源寺 at 16:16| Comment(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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