ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年10月24日

書評846 吉川英梨「朽海の城 新東京水上警察」

こんにちは、曹源寺です。

10/22に実施された衆議院議員選挙は与党の圧勝に終わりました。
議席が10減となるなかで自民党は横ばいを維持したのですから、悪く言っても勝ちは勝ちですね。
では野党はどうなのかというと、
希望の党→惨敗
立憲民主党→躍進
共産党→惨敗
社民党→維持
日本のこころ→消滅

というのが一般的な見方ですね。選挙戦を振り返ると、テレビマスゴミの立憲民主党押しが半端なかったように思います。あの東京18区では菅直人が当選していますからね。
「筋を通した」ことが高評価につながったという報道も多かったですね。逆に希望の党は小池党首が「排除」という単語を口にしたことが影響したとも言われています。

しかし、よく考えると本当にそうだったのか。

そもそも前ナントカさんが民進党解体に動き出し、希望の党はそのなかから保守に近い議員を受け入れようとしたところ、民進党全員が抱きつきにかかってきたわけで、さすがに全員はおかしいだろうということで「(理念の異なる人は)排除」という流れになったのでしょう。実際にはそれでも理念の異なる議員が大勢希望の党に移籍したことで、希望の党こそが選挙互助会になってしまい、有権者に愛想を尽かされたというのが大まかな流れです。小池氏にしてみれば、かつての日本新党結成の時のようなイメージで動いたのだろうと思いますが、今はネットの時代。外国人参政権や夫婦別姓の導入、戸籍制度廃止、憲法改正反対、靖国神社参拝反対などまるっきり正反対の理念を持っている人がたくさん入り込んだらぐちゃぐちゃになるのが目に見えているわけで、もう有権者は騙されません。

一方、立憲民主党はというと、この抱きつきに行ったけど断られた連中が仕方なく結党したのが始まりですがな。そもそも全然筋を通していないんですが、なぜか崇高な理念を持った人たちみたいな扱いになっていますね。印象操作って本当に恐ろしいです。

つまり、いま報道されているような、「希望の党は排除の論理を振りかざしたから反感を買った」というのは間違いで、「一部を排除したけど理念の異なるエセ保守がたくさん入り込んだから反感を買った」が正しいでしょう。そして、「立憲民主党は筋を通したから共感を得た」のではなくて、「立憲民主党は筋を通したように見せかけ、マスゴミもそれに乗っかったたから共感を得た」が正しいのだろうと思います。

ただ、逆に言えば、マスゴミの印象操作はまだ神通力を持っていて、それに踊らされる人々もたくさんいるということでもあるのだと思います。

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内容(講談社HPより)
東京湾を暴走する豪華客船、危機は目前。
重厚でスリリング―面白さ、ハリウッド級の警察小説!
「そこに、死体が沈んでいる」衝撃的な匿名通報が東京水上警察に届く。ガイシャの頭部には、進水式で使う斧が突き刺さっていた。通報発信元は、焼死体を乗せたまま航行する豪華客船セレナ・オリンピア号船内。絡み合う疑惑を乗せて母港に帰還する豪華客船に、熱血刑事・碇拓真が急行する!


曹源寺評価★★★★
この新東京水上警察シリーズは「波動」「烈渦」そして本書ということで第3弾まで重ねてきました。水上警察というレアなジャンルで、しかもなかなかに濃いキャラクターが揃い、さらに水上アクションが映像不可能なレベルで繰り広げられるというのは、かなりユニークなのでしょう、いずれも安定の面白さとなっています。
本書は横浜港に入港してきた日本船籍の豪華客船「セレナ・オリンピア」号を舞台にしています。
警視庁唯一の水上警察がある通称「五臨署」に、匿名の通報が入ります。被害者は東京湾のブイにくくられ、頭には進水式で使用される斧が刺さっていた。一方、豪華客船セレナ・オリンピア号では火災報知機が鳴り響き、駆けつけるとそこには焼死体が。そしてセレナ・オリンピア号は前触れもなく横浜港から不意に動き出す。これはシージャックなのか。
一見するとバラバラに見える多くの事件が一気に吹き上がり、のっけから目が離せないスピーディな展開になりますので、頭の中を整理しながら読み進めないといけないでしょう。
しかし、そこを乗り切るとそれぞれのピースが次々にはまっていくのがわかります。事件は複雑ですが、それ以上に事件の背景のほうが複雑です。でも読みにくくはないのでノンストップで進んでいけます。
例によって水上アクションはどんどんエスカレートしていきますので、

ハリウッド顔負けのアクションは本当

でした。今年上映した「スパイダーマン ホームカミング」ほどではありませんが(あれはフェリーが真っ二つですから)。
そして事件の真相にあったものは、本書のタイトルに隠されていました。ラストはいろいろと考えさせられる内容ですが、たしかに6年前のアレもなんだか忘れ去られているなあと思わせてくれるのはありですね。最後の最後もちょっとした驚きで幕を閉じますので、なんだかんだ本書はよくできている作品なのかもしれません。





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2017年10月20日

書評845 深町秋生「ドッグ・メーカー 警視庁人事一課監察係 黒滝誠治」

こんにちは、曹源寺です。

本日の日経平均が14連騰ということで過去最長に並んだそうです。
日経平均、14日連続上昇=高度成長期以来、約57年ぶり(10/20時事通信)
20日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比9円12銭高の2万1457円64銭で終わった。高度経済成長期の1960年12月21日〜61年1月11日に記録した過去最長の14営業日連続上昇に56年9カ月ぶりに並んだ。

普通は上がったあと少し下がって、また上がるといった具合に相場は絶えず上下に動いていくものですから、14連騰はちょっと異常といえば異常です。
しかも、我々庶民には景気回復の実感があまり伴っていませんので、一部の富裕層や投資家、金融機関だけが儲かっているような印象を受けてしまいます。トリクルダウンという言葉も実際には発生しないような空疎な単語であったことも分かっています。
では、このアベノミクスの成果を広く還元するためにはどうしたらよいのか。
これはやはり、「賃金を上げて消費税率も凍結かあるいは下げる」という一択です。社会保障費と消費税の上昇で実質賃金は目減りしているわけですから、財布のひもが緩むわけがないのですから。
自民党は企業に(というか財界に)法人税下げるから賃金上げろと主張しています。その一方で消費税率を上げるぞ、とも言っています。これをどう解釈すべきか悩んでいましたが、おそらくは「財務省対策」なのではないかと勘繰っています。
つまり、権限の強い財務省には「消費税率は上げざるを得ないな」と言っておいて、実際には「景気回復の実感が伴っていないから消費税率は上げません」という戦略ではないかと。
真偽のほどは分かりませんが、かの民主党政権時代も結局は財務省にいいように踊らされて消費税率は凍結も引き下げも実行できていません。それだけ財務省は手強いのだろうと思います。

もし、自民党が財務省対策でなく本気で消費税率を上げようとしているならば、それは明確に反対のサインを投げて良いのだろうと思います。

ただ、一方では賃金を上げようと連合に働きかけているのに、その連合は(旧)民進党を応援したりしていてもう本当に訳が分かりません。
野党のほうはこうした賃金政策について、きちんとコメントを出すべきでしょう。あぁ、でも経済対策に関しては全然ダメダメなんだよなぁ。

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内容(新潮社HPより)
黒滝誠治警部補、非合法な手段を辞さず、数々の事件を解決してきた元凄腕刑事。現在は人事一課に所属している。ひと月前、赤坂署の悪徳刑事を内偵中の同僚が何者かに殺害された。黒滝は、希代の“寝業師”白幡警務部長、美しくも苛烈なキャリア相馬美貴の命を受け、捜査を開始する。その行く手は修羅道へと繋がっていた。猛毒を以て巨悪を倒す。最も危険な監察が警察小説の新たな扉を開く。


曹源寺評価★★★★
深町センセーも意外と警察小説を数多く上梓されていて、不勉強にも未読の作品が結構残っています。
本書はその中でも監察官という異色の立ち位置にいる警察官を主人公に据えた作品でしたので、ちょっと興味がわきました。
異色の警察官というジャンルは、かの横山秀夫センセーが開拓したのが始まりと言われていまして、警務部という部署を描いた「陰の季節」から広報官という役職の人物の孤軍奮闘を描いた「64(ロクヨン)」まで本当にさまざまです。
主人公の所属するポジションは警視庁の人事一課というセクションで、主な業務は監察ですから、警察のなかではそれなりに権力を持っている部署だと思います。そんな部署の人物を主人公に据えたにもかかわらず、盗聴、尾行、暴力、脅迫、果ては殺人まで出てくるというとんでもない内容の作品であります。主人公の黒滝誠治は元々組対(組織犯罪対策課、つまりマル暴ですね)にいたやり手の刑事だったが、ある事件の内偵中に子飼いのエス(スパイ)を殺された恨みで情報を漏えいさせた部下を半殺しにしてしまい、交番勤務になったところを人事一課に拾われたという経歴を持ちます。なんだかとんでもない経歴です。ちょっとイカレていますが、どんなイカレっぷりかは本書をぜひお読みください。

監察を主人公にしてここまでやるか?

というくらいド派手な立ち回りを繰り広げてくれます。
尋常ではないこの派手なアクション。警察内部の血で血を洗う抗争は警察版仁義なき戦いと言っても良いくらいディープです。
黒滝の周囲を固める人物もキャラ立ちまくっていますし、ラストは大団円でもありませんので、こうなると必然的に続編を期待してしまいます。期待しましょう。するしかない。





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posted by 曹源寺 at 17:29| Comment(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月17日

書評844 京極夏彦「書楼弔堂 炎昼」

こんにちは、曹源寺です。

選挙も終盤に差し掛かり、様々なニュースが飛び交っていますね。
石原慎太郎が立憲民主党の枝野党首を褒め称え、日本のこころから希望の党に鞍替えした中山成彬が安倍首相をこき下ろす。民主党から希望の党に移籍した小川淳也や階猛は踏み絵を踏んだはずなのに憲法改正は行わないと発言し、民進党の参院議員小川敏夫は選挙後の合流を示唆する。

すげえなあ。もう訳わからんですわ。
でも、いくらなんでもグチャグチャすぎやしませんか。

当選するためにはなりふり構っていられない、という態度が露骨に出ると有権者はかえってその態度を嫌うのではないかと思いますが、本人にはその自覚はないのかもしれません。

選挙が終わった後、どのような構図になるのか、そして選挙後の再々編はあるのか。実に興味深いですね。

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内容(集英社HPより)
時は明治三十年代。移ろいゆく時代の只中で、迷える人々を導く書店「書楼弔堂」。田山花袋、福来友吉、平塚らいてう、乃木希典……彼らは手に取った本の中に何を見出すのか?待望のシリーズ第二弾。


曹源寺評価★★★★★
弔堂シリーズの第2弾はこれまた驚異的な面白さでありました。このシリーズの特徴をおさらいしておきますと、
明治三十年代、東京の四谷(?)界隈にそびえる大型書店「弔堂」が舞台
その大きさは日本橋丸善をも凌ぐが、道行く人にはなぜか素通りされてしまう
弔堂の主人・龍典は元僧侶で年齢不詳、そこに働く丁稚の「しほる」も年齢不詳
弔堂は書物の墓場であり、主人はこれを供養している
弔堂を訪れる迷える有名人が毎回登場し、龍典が彼らに最適な一冊を薦める
有名人が誰なのか、最後に明かされる

これまで、月岡芳年や岡田以蔵、勝海舟などなどびっくりするほどの著名人が登場してきました。本書もまた、驚きの方々が迷いながら登場してきます。
この、迷える人の正体を読みながらあれこれ想像していくのが楽しいんですよ。
本書の場合、最後に明かされる

松岡って誰や?→ファッ!

という驚きがたまらなく癖になり、病みつきになってしまうのです。
一作目と異なるのは、全編を通じて語り部となっているのが元旗本の高遠から元薩摩藩士を祖父に持つ天馬塔子に変わったところでしょうか。彼女自身もまた、時代の移り変わりに翻弄される一人ではありますが、その苦悩を吐露するシーンはやはり明治中期ならではのものでありました。
個人的な話になりますが、自分の祖母は明治33年生まれですのでちょうど本書の時代に生を受けたということになります。とっくに鬼籍に入っているので伝聞でしかないのですが、あの四天王の渡邊綱の血を引いている逓信省の役人の家に生まれた人で、琴と裁縫の先生をやっていた女傑という人だったそうです。
祖父が軍人でしたので奥に引っ込んでいたのだろうと思いますが、時代が時代ならどこかの議員にでもなっていたかもしれないくらいチビシー人だったそうなので、そんな明治中期ってどんな世相だったのだろうかと想像することがあります。本書のとおりなのかはわかりませんが、この時代の空気感みたいなものも結構好きだったりします。平成も30年を迎えようとしていることを考えると、明治30年なんて瓦解からたったの30年です。昭和と平成なんて比べ物にならないくらい、時代の変革は凄まじかったはずですので、そんな時代の荒波を駆け抜けた偉人たちの(創作とはいえ)思想(っぽいもの)に触れるのはなんだかとても楽しかったりするのであります。





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