ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年12月22日

書評859 相場英雄「トップリーグ」

こんにちは、曹源寺です。

BPOという組織がありまして、「放送倫理・番組向上機構」というのが正式名称だそうです。
ホームページにはこんな記載があります。
放送における言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理の問題に対応する、第三者の機関です。
主に、視聴者などから問題があると指摘された番組・放送を検証して、放送界全体、あるいは特定の局に意見や見解を伝え、一般にも公表し、放送界の自律と放送の質の向上を促します。
※BPOはNHKと民放連によって設置された第三者機関です。


パッと見るとまともな組織のような気がしますが、しかしてその実態はどうなんでしょう。評議員会や各種委員会の顔ぶれを見ると、あからさまに放送業界の人が居座っているわけではありませんが、少なくともマスゴミにお世話になっている人がちらほらいますね。そういう人はメンバーにふさわしいとは思えません。ジャーナリストはもちろんのこと、大学教授や弁護士でも番組コメンテーターになっている人は利害関係者でしょうし、作家も然りです。その人の思想はともかくとして、少なくとも「テレビ局にお世話になっている人」はダメじゃないかと思いますね。

ネットでいろいろ叩かれているのをまとめると、こんな感じになります。
・BPOは任意団体であり、設立に法的な裏付けはない
・BPOには放送内容に介入する法的根拠がない
・BPOは第三者機関と銘打っているが、中の人はマスコミ関係者だらけである
・BPOは表現の自由を守るために活動している、というが、実際には表現を規制している
・毎年1万件以上の意見が寄せられているが、委員会の審議案件はたったの9件しかない

BPOは放送内容などについて国家や政府の介入を抑えるために形だけ整えたカモフラージュ団体である、という指摘がネットには多いんですね。仕事をしていればそんな批判は出ないでしょうが、誤報の垂れ流しになっているNHK民放に対しては何するわけでもなく、MXテレビ「ニュース女子」の批判ばかりしているから叩かれる。
「視聴者の基本的人権を擁護する」のが目的ならば、先日、大宮駅前で風俗店が火事になって3人が死亡した事故で被害者を唯一実名報道したNHKの姿勢はどうなんでしょうか。風俗店で客として(あるいは従業員として)死んでしまった人には基本的人権はありませんかそうですか。こんなの遺族が異議申し立てを行わなくても審議するべき事案じゃないんですかね。犯罪被害者や事故被害者の実名報道に対する是非を問うとか、報道の在り方についてきちんと議論をするとか、一定のガイドラインを設けるとか、そういうことをするのがBPOの役割だと思っていましたが、そうではないようですね。
だったらいらないですわ、こんな組織。

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内容(角川春樹事務所HPより)
トップリーグとは……。総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだごく一部の記者を指す。命を賭した記者、永田町激震の特大スクープ!「命の保証はないぞ」政界の深い闇に斬り込んだ記者の運命は……。大和新聞の松岡直樹は、入社15年目にして政治部へ異動になり、官房長官番となった。そしてまたたく間にトップリーグへ。一方、松岡と同期入社だった酒井祐治は、現在大手出版社で週刊誌のエース記者として活躍している。そんな酒井が「都内の埋立地で発見された一億五千万円」の真相を追ううちに、昭和史に残る一大疑獄事件が浮かび上ってきて……。小説でしか描けない官邸の最大のタブー。『震える牛』『不発弾』に続く今年一番の衝撃作。


曹源寺評価★★★★★
通信社記者出身の相場センセーは社会派ミステリの実力者でもあります。「震える牛」「ガラパゴス」「不発弾」といった作品群では業界の闇の部分に焦点を合わせていて、読者としてはそれぞれの深い穴倉を覗き込んだ気分にさせられました。
そして今度は政治の闇に手を突っ込んでこられました。
発行部数400万部の大和新聞に所属する経済部記者の松岡はある日、人員不足のあおりで政治部に異動となった。瞬く間に官房長官番となり、政治記者のなかでも「トップリーグ」と呼ばれる、総理や官房長官に親い立場に駆け上がった松岡だが、、、
一方、新聞社から雑誌社に転職した松岡の元同僚の酒井は、東京湾岸地区で発見された古い金庫とその中に入っていた1億5,000万円の札束、しかも札束が聖徳太子という事件を追っていたが、取材を進めていくうちに過去の疑獄事件への関連を疑うようになり、、、
前作「不発弾」もそうでしたが、

ノンフィクションでは書けないようなことを小説にして書いているのではないか

というくらいリアリティが半端ないんですが、もしそうなら本書は(ネタバレかも)「ロッキード事件の後も解明されていなかった第3のルートがあり、それは某大勲位が構築したものである。そして、今も連綿と裏金作りの工作として受け継がれている」という事実があるということになりますわ。なんだかとてもロマンチックですわ。
ロッキード事件は元総理大臣の逮捕というショッキングすぎる一大汚職事件でしたが、自分も小学生の時代でしたから、今の30代以下の人にはピンとこない事件かもしれません。事件の詳細をセンセーは書いておられませんので、ロッキード事件を知らない人は先にお勉強しておく必要がありそうです。
この古い事件の掘り起しと、政治部記者の非日常ともいえる日常が交錯するなかで、主人公の松岡にはある決断を迫る場面に遭遇します。ラストは官邸との直接対決ですが、そこで松岡のとるべき道は、、、
政治部の世界を垣間見るのは良いのですが、読んでもやっぱり「伏魔殿」だなあという感想しか持ちませんでした。政策記者というのが別にいるというのも驚きですよ。政治部は政策と政局が別々の扱いということなんですね。それで政局のほうを扱う記者は自分たちが情報をコントロールしていて日本の行くべき道を指し示してやっているのだと思い込んでしまっているというのが、実態としてヒジョーによくわかります。
だからリアリティは半端ないですね。
これをちょっとシニカルに読めば「政治部の記者たちは権力に接しているだけに自分も偉くなったような気になるんだなぁ」とか「記者から政治家に転身するヤツが多いのもうなずける」とか「人はこうやって傲慢になっていくんだなぁ」とかネガティブな感想が嫌と言うほど出てきます。そしてそれはおそらくあまり間違ってはいないのだろうと。
ラストはちょっともやもやしますが、これは「ガラパゴス」の時もそうでしたね。このビミョーなラストは相場センセーの手法として確立されてきたようにも思います。しかし読者としてはちょっと納得できないところもあるんじゃないでしょうか。「どっちやねん」という思いが読後感を台無しにしてはいないかと、ちょっと心配です。
本書の読みどころとしては、権力に近い者たちの高度な政治判断は果たして正しいものなのであろうかという疑問だったり、マスコミ内部(特にエリートが集まると言われる政治部)のドロドロとした暗闘だったりしますが、個人的にグッときたのは政治の闇というよりも「政治とマスコミの癒着」とか「情報をコントロールする政治家と新聞」というところではないかと思います。あと、余談ですが前作「不発弾」に登場した三田電機もちらっとだけ登場しますので、同じ世界観の中で動いているお話であることが分かります。「不発弾」と同時に読んだら面白そうですね。





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2017年12月15日

書評858 大沢在昌「ジャングルの儀式」

こんにちは、曹源寺です。

沖縄で米軍のヘリから窓枠が小学校の敷地内に落下した事故がありましたが、報道の嘘と真実がごちゃまぜになっているみたいですので整理したいと思います。
・その前に保育園の屋根に部品が落下したぞどうしてくれる
 →プラスチックが数百メートル上空から落下したら粉々ですがな
  しかも現在は使われていない部品だったってどういうこと?
  
・ヘリコプターを飛ばすのをやめろ
 →確かに古いヘリはやめたほうが良いですね
  ということでオスプレイを飛ばしましょう

・普天間基地は早く移設しろ
 →そうですね、とっとと辺野古に移設しましょう

・小学校の上空を飛ぶのをやめろ
 →その通りだが、小学校を移設させようとして反対していたのはプロ市民の連中

そもそも、この普天間第二小学校は普天間基地より後に設立されました。あんな隣接地に小学校を設置すること自体、おかしなことですね。
結論としては、辺野古移設がもっとも現実的ではないかと思います。もういい加減沖縄をかき乱すのはやめてほしいものです。

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内容(KADOKAWA HPより)
父のため、己のため、青年は戦いの中へ――ノンストップ・アクション!
ハワイから日本へ来た青年・桐生傀の目的は一つ、父を殺した花木達治への復讐。赤いジャガーを操る美女に導かれ花木を見つけた傀は、権力に守られた真の敵を知り、戦いという名のジャングルへ身を投じる!


曹源寺評価★★★★★
本書は1986年に刊行された作品の新装版ということで、2017年5月に文庫で新装されたものです。
1986年といえば昭和61年、大沢センセーの根城である六本木にはアークヒルズが誕生した年でもあります。
このころはすでに「佐久間公シリーズ」が開始されていますので、すでに大沢センセーのなかではハードボイルド路線がしっかりと根付いているようです。
ハワイから日本にやってきた桐生傀(かい)は、父の元パートナーであった花木達治に復讐の銃弾を撃ち込もうと企みます。花木の所在を追ううちに、復讐の矛先は奇妙な方向に向かうことに、、、
「新宿鮫」から大沢作品に入り込んだ自分としましては、この「昭和の大沢作品」が逆に新鮮に感じられます。ハードボイルドが輝いている時代でもあったのかもしれません。
一方で、

文章には粗っぽさが残っているのをひしひしと

感じることもできます。取ってつけたような説明書きとか、無駄な描写とか、ハードアクションに偏りすぎた展開といった内容は「若いな」という印象が先行してしまいます。こればっかりはしょうがないですね。逆に、いまの大沢センセーの作品がいかに洗練されているか、というのも感じられるのかもしれないですね。





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posted by 曹源寺 at 18:25| Comment(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月12日

書評857 歌野晶午「ディレクターズ・カット」

こんにちは、曹源寺です。

本日発表された「今年の漢字」は「北」だそうです。なんやねん北って。北朝鮮のほかに何があるんや?と思ったら、キタサンブラックだってwwwなんだかな〜
どうせなら「禿」にしてほしかったwww
年末の風物詩である流行語大賞と今年の漢字はもう、完全にオワコンですね。

それと、年末は「このミステリーがすごい」と「文春ミステリ」が発表されますね。こちらはまだまだ熱いかと思います。
自分はこのブログが「ミステリ読みまくり」と言っておいてなんですが、本格ミステリの分野がそれほど好きではありません。なぜかと聞かれると答えに窮するのですが、おそらくは現実離れしすぎた設定とか凝りすぎたトリックとかが好きではないのだろうと思います。
ですから、エンタメ的な作品ならまだ読むのですが、特定の作家センセーには見向きもしないことがあります。上記のランキングにも常連のように上がってくるセンセーがいらっしゃいますが、自分はまったく読んでいない方も少なからずいらっしゃいますのでそこはご容赦ください。
ただ、今年の顔ぶれを見ますと、月村了衛センセーとか柚月裕子センセー、それに太田愛センセーといったエンタメ指向の方々がランクインされていてうれしかったです。
特に太田愛センセーは小説デビューからかなり意欲的な作品が多いので、応援したいなあと思っています。

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内容(幻冬舎HPより)
大ベストセラー『葉桜の季節に君を想うということ』で読者の度肝を抜いた、本格ミステリの名手が仕掛ける驚愕の傑作クライムサスペンス! テレビのワイド情報番組の人気コーナー「明日なき暴走」で紹介された、若者たちが繰り返す無軌道、無分別な言動・行動が、じつは下請け番組制作会社の有能な突撃ディレクター仕込みのやらせだとわかったとき、無口で不器用かつネクラな若い美容師が殺人鬼へと変貌する。さらに視聴率アップを狙うディレクター自身が加速度的暴走を開始。静かなる殺人鬼は凶行を重ねる。警察の裏をかいて事件を収拾し、しかもそれを映像に収めようとするディレクターの思惑どおり生中継の現場に連続殺人鬼は現れるのか!? ラスト大大大どんでん返しの真実と、人間の業に、読者は慄然とし衝撃に言葉を失う!


曹源寺評価★★★★
歌野センセーの作品久しぶりでした。最近はどんでん返しがあちこちの作品で披露されていて、歌野センセーの出番が少ないなぁと思っていたところでした。
あれ、でも本書の紹介には「クライムサスペンス」とありますね。ミステリではないのですかね。
などと思いながら読みました。
なるほど、ミステリ色はそれほど強くありませんが、やはりラストにかけてはどんでん返しだらけで読み返す場面があちこちにありました。読者の裏をかくというセンセーのテクニックは相変わらずでありました。
番組制作を請け負うテレビ局の下請け会社に勤務する長谷見潤也が主人公です。長谷見は自分の「手下」にやらせを仕込ませて、バラエティや報道などでさもあったかのような事実に仕立て上げて視聴者の歓心を買うという、ある意味「やり手」のディレクター。ある日、手下の一人である楠木虎太郎がファミレス帰りに鋏で襲われる。落としていった名刺から川嶋輪生という名前が浮上し、長谷見は犯人捜しを行うようになる。
その川嶋は川崎・溝の口の美容室で働く無口で不器用な、まだ鋏を持たせてもらえない立場。父母は離婚し、友人もおらず、ツイッターのフォロワーも事実上のゼロという孤独な青年であった。この川嶋が殺人鬼に変貌したのはなぜなのか。そして、長谷見は映像の力で川嶋を探し出すことができるのか。
長谷見の歪んだ倫理観とテレビ業界の闇、楠木の若者らしい非常識さ、川嶋の抑圧される日常、などなど、

登場人物がクソだらけのなかに救われるものが何もない

という展開はある意味、読むほうも鬱な気分にさせられること請け合いではありますが、それでも話の先を読みたくてページをめくる手が止まらないのは歌野センセーの筆力のなせる技であろうかと思います。
歌野センセー、50台も半ばにして若者同士の会話とかツイッター上のやり取りなどの表現がリアルすぎです。
ラストまで気の抜けない展開とそれなりのどんでん返しはさすがですが、最後に思うのはやはり、テレビ業界の、小説なのにリアルな業界事情を垣間見ることができてやっぱりテレビ業界は人として終わっているんだなあという感想でありました。





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