ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年07月25日

書評822 中山七里「秋山善吉工務店」

こんにちは、曹源寺です。

国会の閉会中審査の動画を見ると、本当に、本当にくだらない質疑が続いていることがわかります。
なにせ、「知っていたのですか?」とか「いつ知りましたか?」とか「言ったのですか、それとも言わなかったのですか?」とか記録ではなくて記憶をたどる質問ばっかりなんです。
言った言わないの世界は証明ができません。
証明ができないことを質問して、納得ができないふりをして「これで疑惑はますます深まった」とか感想を言えば、質問する側はいかにも自分が正義の味方であるというふりをすることができますね。

ネット民はそんなことにごまかされはしませんが、テレビ、しかもワイドショーばっかり見ているような人たちは繰り返し映されている映像を見て洗脳されてしまいますわ。
これら一連の報道(いまは「報道犯罪」という単語が出来上がっています)にうんざりを通り越して腹が立っている人たちも多いと思いますが、リテラシーに乏しい人たちにはしっかりと再教育してあげてほしいですね。そうです、自分たちの親なんてそうですよ。どちらが正しいとかを指摘するのではなくて、いかにこれが茶番なのかということだったり、なにかを証明しようとするならエビデンスを持ってこいという至極当たり前のことができていないで真実を追求しようとしている愚かな姿とか、理屈で考えれば絶対におかしい手続き上の問題とかを教えてあげると良いと思います。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(光文社HPより)
この爺ちゃん、ただものではない!?
ゲーム会社を辞め、引き籠っていた史親の部屋からの出火で家と主を失った秋山家。残された妻の景子、中学生の雅彦、小学生の太一の三人は、史親の実家「秋山善吉工務店」に世話になることに。慣れない祖父母との新生活は、それぞれの身に降りかかるトラブルで災難続きの日々。
一方、警視庁捜査一課の宮藤は、秋山家の火災は放火だったのではないか、と調べ始める――
大工の善吉爺ちゃん、大立ち回り!!昭和の香り漂うホームドラマミステリー。


曹源寺評価★★★★
近年の作品でジジイが活躍するものと言えば有川浩センセーの「3匹のおっさん」あたりが有名ですね。本書はあれに負けず劣らず、齢80を過ぎた大工の棟梁である秋山善吉が暴れまわる連作短編の家族小説であります。実家の失火により一家の大黒柱を失い、残された3人の家族が祖父宅に世話になります。そこで巻き起こる兄弟と母のそれぞれのストーリーに善吉爺さんが活躍しますが、その暴れっぷりは寺内貫太郎も真っ青の恐ろしさであります。
子供のケンカ(いじめですが)には口を挟まず、しかし相手がやくざともなれば体を張って立ち向かい、警察の自白強要にもまったく怯むことなく、むしろあしらってしまう善吉爺さん。昭和の香りが漂いますが、せりふのひとつひとつにしびれてしまうのは自分だけではないと思います。こんな素晴らしいキャラクターをたったの一作で終わらせてしまった中山センセーですが、

ミステリにしないでシリーズ化して欲しかった

という声が多数ネットで上がっています。個人的には「謎解きがあるからこその疾走感」ではなかったかとも思います。この疾走感は前作「翼がなくても」に通底するものを感じました。おそらくですが、中山センセーはこうした「ミステリとヒューマンドラマの融合」みたいな視点で作品を仕上げてきている傾向にあるのではないかと思います。
ですから、本書の場合はミステリとの融合を図るべきだったのか、あるいはもっとドラマに徹してジジイの活躍っぷりをシリーズ化するべきだったのか、で意見が分かれるところであったのわけですが、個人的な感想ではやはり後者にならざるを得ないですね。善吉ジジイのスカッとする活躍をもっと読みたかったというのが本音です。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 18:26| Comment(0) | TrackBack(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月21日

書評821 馳星周「暗手」

こんにちは、曹源寺です。

河野太郎という衆議院議員がいます。神奈川15区です。ご尊父はあの「紅の傭兵」と言われて久しい河野洋平氏であります。衆議院議員を14期も務めた重鎮ですが、途中、新自由クラブを作って自民党に反旗を翻した経緯もあります(まあ、新自由クラブはクソがつくほどまじめな田川誠一氏とか犯罪者山口敏夫とかごった煮の状態でしたが)。
父親はともかく、息子の太郎氏は「ごまめの歯ぎしり」というブログを開設していまして、自分もマメに目を通していますが、これが結構面白いんですよ。
特に話題を集めたのは2016年11月から不定期に投稿された「研究者の皆様へ」というタイトルのシリーズです。基礎研究費の削減によって官公庁および国家機関で働く研究者の方々の効率的な費用の使い方などに言及されていて、それがかなり具体的で細かいということで話題になりました。河野議員の現場主義が非常にわかる内容になっています。
自分はこの議員、それほど好きではありませんが、いやむしろ嫌いな方かもしれませんが、このブログだけは読みます。そして信じます。なぜかというと、あえて敵を作ってまで正論をぶちかましているところが気に入っているからです。時には霞が関の官僚さえ敵に回しています。文章はそれほど難解ではありませんし、提起される諸問題もかなり的を射ている内容が多いです。

そんな河野議員の最新の投稿がこれです。
南スーダンの日報問題(7/20)
自衛隊の南スーダン派遣施設隊の日報に関して、私には意見を言うちょっとした権利があると思う。
ということで、一言。
一昨日からの南スーダンの日報に関する報道を見ていると、ちょっとピント外れなものが多い。
自衛隊の南スーダンの派遣施設隊の日報は、二月六日にはその存在が明らかになっており、機密部分が黒塗りになっているもののすべて公開されている。

繰り返すと、「二月六日には日報はすべて公開されている。」

だから二月十五日に、防衛省で開かれた会議で、日報を隠蔽することはできないし、公開するかどうかを決めることはできない。
このニュースの中で、NHKにしろ、民放にしろ、二月六日に日報がすべて公表されているということに触れていないのは、視聴者に誤解を与える。
二月十五日の防衛省の会議で問題になることがあるとすれば、陸自で見つかった日報は、個人のものなのか、行政文書なのかという判断だ。
もし、日報がそれまでに見つかっていなかったら、行政文書だろうが、個人のものであろうが、陸自で見つかった文書は干天の慈雨のようなものであり、日報が見つかった、よかった、ということになっただろう。
ただし、もしそれが個人の文書だったら、それが改ざんされていないかということが問題になるだろうが。
しかし、それまでに日報が見つかって公表もされているのだから、問題は陸自で見つかった文書が個人の文書なのか、(その場合、特に問題はない)、行政文書なのか、(この場合、最初に開示請求をされたときに、探し方が足りなかった)ということになる。
個人の文書ならば、それが見つかったことを公表する必要もないだろうが、行政文書ならば、当初の探し方が足らなかったことが明らかになったことを公表する必要がある。
防衛省は、見つかった日報が個人の文書だと考え、特に発表の必要がないと考えた。
しかし、日報に関してはそれまでいろいろとあったわけだから、自分たちで判断するだけではなく、内閣府の公文書課や国立公文書館に、きちんとした判断を仰ぐべきだった。それがこの騒動の本質ではないか。
こうした説明もなく、あたかも日報を隠蔽する決定が行われたかのような報道は、間違っていないか。


ストレートのド正論でありました。
河野議員はブログで正論かますだけなら超一流であることがわかります。これを援護射撃する動きが自民党内から上がれば面白いかなとは思います。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(KADOKAWA HPより)
生きるために堕ち続ける
『不夜城』『夜光虫』の衝撃から20年
究極のクライムノベル誕生!
台湾のプロ野球で八百長に手を染め、罪から逃れるために次々と殺しを重ねた加倉昭彦。居場所を失い、顔も名前も変えて過去を抹消、逃れ着いたのはサッカーの地イタリアだった――。イタリアの黒社会では、殺し以外の仕事なら何でも請け負い、いつしか「暗手」――暗闇から伸びてくる手――と呼ばれるようになっていた。そんなある日、サッカー賭博の帝王・王天から、ロッコに所属する日本人ゴールキーパー・大森怜央に八百長をさせろとの依頼が舞い込む。計画実行に向けて着実に準備を進めていく加倉だったが、大森の姉の写真を目にしてから過去の記憶がよみがえり、計画の歯車が狂い始める……。


曹源寺評価★★★★★
馳星周センセーの傑作のひとつに「夜光虫」という作品がありまして、1998年の初版ですからもうかれこれ19年も経つわけですが、その続編が本作であります。
主人公の「暗手」ことヴィト・ルーは日本人、加倉昭彦としてかつては台湾のプロ野球選手であったが、八百長に手を染め、逃亡し、逃亡のために何人も殺めてきた過去を持つ。このヴィト・ルーが今度はイタリアを舞台にして、サッカーの八百長試合を仕掛けていきます。
一度でも八百長に加担したら二度、三度と引き返せなくなり、最後は身の破滅となる泥沼行為であるが、嵌められたと思った時にはもう遅い。これまで何人もの選手を地獄に導いてきたヴィトは日本人、高中雅人として地元のクラブでゴールキーパーを務める大森怜央に近づき、親切なタニマチとして振る舞いながら裏では八百長にかかわらざるを得なくする工作を仕掛けていく。
一方、イタリアの黒社会でサッカー賭博の帝王となっていた王天は暗手のほかに殺し屋の馬兵を雇っていた。馬兵と暗手が交錯したとき、大いなる深淵が口を開けて待ち構えていたのだった。。。
賭博が絡んだ黒社会ともなれば、大きな金が動けば一触即発、血の雨が降ること間違いなしの展開です。しかも台湾マフィアです。
馳センセーの真骨頂のような作品に読む手が止まりません。
前作「夜光虫」はもうほとんど記憶の彼方に飛んで行ってしまっておりましたが、読み進めるうちになんとなく思い出しました。でも

前作を読んでいなくてもすんなり入っていける

懐の深さがありますね。450ページを超える大作ですが、あっという間に読み終えること間違いなし。スピード感あふれる展開と壮絶なラスト。主人公は生きながら死んでいる「悪霊」であります。業の深い男という自覚があり、誰かが自分を殺してくれる日を待っている。だから死の際でも平然としていられる。しかし本書では一度は愛した女に呪詛の言葉を投げられます。それは(以下ネタバレ)


「くたばれ」という言葉です。くたばれとはイコール「死ね」ではないんですね。表現としては「地獄の底でいつまでも苦しめ」、つまり簡単に死んでもらっては困るレベルということです。
多くの人の恨みを買い、簡単に死んでは自分の魂は救われないだろうという壮絶な生き様。ここまで自己否定を重ねる主人公のノワールはついぞお目にかかったことがありません。これぞ馳星周。さすがです。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif

posted by 曹源寺 at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | は行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月18日

書評820 楡周平「ぷろぼの」

こんにちは、曹源寺です。

今日は東京でもゲリラ豪雨になり、ところによっては雹が降ったみたいですね。梅雨明け前のゲリラ豪雨はもはや定番、恒例行事になってきました。逆に言えばもうすぐ梅雨明けでもあります。本格的な夏の前に、体力を蓄えておきたいところです。

さて、最近は本当にマスゴミがおかしなことをしていると思うのですが、これに同調する動きも多くなってきているようです。

確たる証拠もないのに疑惑と持ち上げて、悪魔の証明を迫るマスゴミ
疑惑などないと説明をしても説明が足りないと言って繰り返し疑惑と報じるマスゴミ
さも疑惑が真実であるかのように振る舞うマスゴミ
疑惑が真実であるという前提で話を進めるテレビのコメンテーター
記者会見で同じ質問を何度も何度も繰り返す新聞記者

見ていて本当に気持ち悪いです。
上記のような行動が目に余るので、ネットの反応がどんどん辛辣になっています。いずれ本格的なマスゴミバッシングが始まるのではないかと思います。マスゴミに対する不満や批判が頂点に達した時、どのような動きが始まるのか、非常に興味深いです。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

内容(文藝春秋HPより)
業界大手のパシフィック電器は、人事部労務担当部長の江間を中心に大規模なリストラを進めていた。実務を担う大岡の担当リストラ対象社員が、ある日首吊り自殺をしてしまう。大岡は心身ともに疲弊しきって、三国が代表を務めるNPOで「プロボノ」として社会貢献活動をすることに救いを求める。ひょんなことから三国に江間の社内での悪辣な行状を打ち明けたところ、義憤にかられた三国は、江間を「嵌める」べく罠をしかける……。
「ぷろぼの」とは、「公共の利益のために(pro bono publico プロボノ プーブリコ)」という意味のラテン語。大企業のえげつないリストラと、それに立ち向かうNPOのボランティアたちを、軽妙かつコミカルに活写する。


曹源寺評価★★★★
久々の楡センセーであります。
最近の楡センセーの作品には「シリアス一辺倒の企業小説」と「業務改善したら面白い業界小説」、それに「ちょっと軽めのビジネス小説」といったジャンルがあります。昔は「朝倉恭介シリーズ」とかのハードサスペンスがありましたが、今はそれもかなわぬことです(でも2016年に「スリーパー」という本が出ていまして、朝倉恭介が出てくるんですよね。これにはちょっと驚きでした)。
さて、本書はどうかというと「ちょっと軽めのビジネス小説」かなと思ったのですが、それほど軽くはないかなと思います。なにせ、大企業のリストラ場面が悲惨過ぎて重いんです。大手電機メーカーのパシフィック電器というのが本書の舞台ですが、モデルはパナソニックなのかソニーなのか、はたまたシャープや東芝なのか。部門ごと撤退するという大掛かりなリストラを行うわけですが、そうなると配置転換もスムーズにいくことはなく、結局は割り増し退職金を支払ってでも整理に踏み切らざるを得ないという苦渋の決断を企業は迫られることになります。ここまではしょうがないでしょう。問題は退職勧告に応じない人たちの整理をどうするか、ということになります。パシフィックの江間部長はいわゆる「追い出し部屋」以上の酷いやり方を編み出し、それを本当に実行します。
どんなエグイやり方なのかは本書を読んでいただきたいと思いますが、江間の部下である大岡さえも嫌がるエグさ、そしてこの江間を何とかしないと自分もパシフィックも持たないと思い始める大岡。そして大岡がよりどころにしたのは、NPO法人のプロボノだった。。。
まあ、リストラをここまでやるか?というところでは確かにすごい話ではありますが、その後の解決にNPOが乗り出すという展開もまた、尋常ではない話です。
楡センセーがNPOに目を付けたのはさすがです。多様な人材が集まるNPOだからこそ、江間を懲らしめるためのストーリーができたということでしょうから。
それにしても、いまこのタイミングで発刊されたのが何とも惜しいなあと思うのです。昨年からは東芝の話題で電機業界は持ち切りですが、大手電機がこぞって業績が落ち込んだのはリーマン・ショックを過ぎた2009年度あたりからです。リストラが激化したのもその頃からですので、

ちょっと旬を過ぎてしまった

感が無きにしも非ずでしょう。返す返すも惜しいなあと思います。





にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
応援よろしくお願いします。。
banner2[1].gif
posted by 曹源寺 at 19:14| Comment(0) | TrackBack(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
最近の記事
カテゴリ
過去ログ
検索
 
最近のコメント
書評802 呉勝浩「白い衝動」 by 本が好き!運営担当 (05/17)
書評785 東野圭吾「人魚の眠る家」 by 藍色 (04/05)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 曹源寺 (02/01)
書評777 垣根涼介「室町無頼」 by 本が好き!運営担当 (02/01)
書評754 佐藤弘幸「税金亡命」 by 佐藤弘幸 (11/17)
タグクラウド
<< 2017年08月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
リンク集