ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年07月14日

書評819 前川裕「アンタッチャブル:不可触領域」

こんにちは、曹源寺です。

先日はマスゴミの政治部というセクションについて、政局ばかり記事にして政策を書かない自称エリート集団とこき下ろしましたが、本当に今の報道姿勢はヤバ過ぎて怖いレベルにあります。
日本は戦後、離合集散を経て自由民主党政権で安定してきた経緯がありましたが、それは自民党の内部で右派と左派に分かれてお互いをけん制しあってきたため、野党の付け入る隙がなかったという経緯があるのです。それが、80年台後半から90年台前半にかけて発生したリクルート事件や佐川急便事件などで求心力を失い、自民党が分裂しだしたことで野党勢力が息を吹き返したのであります。自社さ連立政権はその象徴的な出来事でありました。
その後、自公連立→民主党→自公連立と政権は代わっていくのですが、こうした変遷により、かつての大所帯である自民党はすでになくなってしまいました。これはつまり、逆説的に言うと「自民党はすでに一枚岩になっている」のです。かつての派閥もそれほど党内勢力の争いのようになっていません。もちろん、たまに石破茂のように後ろから撃つタイプの政治家がいるにはいるのですが。
こうなると、マスゴミとしては自民党の対抗勢力が欲しいんですね。いま「安倍一強をなんとかしたい」とか言っているのは安倍=自民党であるのが許せない(=かつての大所帯自民党のように内部の敵対勢力がいないのが許せない)人たちなんでしょう。
しかし、安倍を引きずり下ろそうとして、ありもしない疑惑を連日持ち上げては世論調査を繰り返すといった技を展開すると、確かに政権支持率も自民党の支持率も下落しました。が、他の政党支持率もまったく上がらないというお粗末な結果になっています。

安倍内閣支持29.9%に急落=2次以降最低、不支持48.6%−時事世論調査(7/14)
時事通信が7〜10日に実施した7月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比15.2ポイント減の29.9%となった。2012年12月の第2次安倍政権発足以降、最大の下げ幅で、初めて3割を切った。不支持率も同14.7ポイント増の48.6%で最高となった。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題が響いた。東京都議選で稲田朋美防衛相が、自衛隊を政治利用したと受け取られかねない失言をしたことなども影響したとみられる。(以下、略)

安倍を引きずり下ろそうとして、小池を持ち上げるマスゴミ。小池のほうが安倍よりかなり右に寄っているんですが、それはいいんですかね。印象操作で安倍を下すんじゃなくて、安倍のやっている施策に代わる代案を提示するとか、そういうまじめな議論をしてこなかったからこうなるんだと思うのですが、マスゴミ、特に政治部の連中はそういった自覚がないのでしょうか。民主党政権に移行する前、マスゴミは失われた年金をはじめとしたネガティブキャンペーンをガンガン進めました。国民の多くが「一度、政権交代するのもいいかもしれない」と思い、そして実際に政権は交代しました。
民主党の3年9か月は暗黒時代になりました。
自公連立政権に戻りましたが、国民の多くは「もう民主党はこりごり」と思っています。だから支持率は一向に伸びません。自民がダメなら民進だーとはいかないんですね。つまり、対抗勢力は印象操作ではもうできなくなっているのかもしれません。国民もそれほどバカではないということですね。
マスゴミも、我々も、このへんをよーく考えておく必要がありそうです。

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内容(新潮社HPより)
「凡戦の帝王」と呼ばれた元プロボクサー。落魄した往年の人気俳優のマネージャー。二人が邂逅した時、その足元で暗黒の底が抜けた。ラーメン屋主人夫婦の不自然な失踪、八王子で福生で床下から次々に見つかる死体、美少女を取り巻く得体の知れない男たち。世界は二転三転、酷薄な様相を顕にする。衝撃のノワール・ミステリー。


曹源寺評価★★★★
ここんところ、猟奇的な殺人事件を扱わせたらこのセンセーの右に出る人はいないのではないかと思うくらい、エグイ作品を出しまくっておられます前川センセーですが、本書もまたある意味猟奇的でどこかホラーチックな印象を残す作品に仕上げてこられました。
デビュー当時と比較するとやはり大学教授らしい堅い文章からだいぶこなれてきたような気がしますので、読みやすいです。内容はともかくとして。
人気ヒーローもので時の人となったものの、その後落ちぶれた俳優、北森重三は認知症も患っていた。北森のマネージャーだった保住忠文は、何の血縁関係もないのに北森の世話を続けていたが、ある日、ついに一線を超えることになる。徘徊癖のある北森を失踪に見せかけて置き去りにしようとするのである。
同じ頃、元プロボクサーの瀬尾健一は中華料理店でアルバイトをしながら世話になったボクシングジムでトレーナーをしていた。瀬尾は妻の里穂と別居中で、離婚を持ち掛けられていたが瀬尾はこれを拒否していた。ある日、ジムの会長である戸田が里穂と密会していることを知り、現場に乗り込んだ。そこで瀬尾は一線を超えることになる。
二人の男が正常と狂気の境目で揺らぎ、狂気の淵に足をかけてしまうことから世界が暗転していくという様子を、とても重苦しく描写してくれています。この辺りの重さに耐えられない人は読み進めるのがつらいかもしれません。
しかし、その淵の先にあったものはさらなる狂気であり、人間の本質なのかあるいは別の何かなのかわからない、非常に昏く底知れない悪意の渦でありました。
保住と瀬尾が中盤から交錯してきますが、この二人はどちらかというと普通の人間でありました。共通する人脈に長崎という男が登場しますが、この男が前川作品によく登場してくるような異常犯罪者の類でありました。
この長崎のような、人を支配して操って殺しをさせて騙していざとなったら逃げる、人間のクズのような男が登場してくると、いつもあの事件を思い出します。胸糞の悪さでは堂々の1位に輝く

北九州監禁殺人事件です。

ワイドショーも事件の詳細を語るのに躊躇し、結局自粛したというくらい凄まじい事件でありますが、首謀者の松永太死刑囚を想起させるような猟奇的な人間を登場させるのが本当にうまいんですよ前川センセーは。
本書は最後の最後まで目が離せない、というか結末がどうなるのか気になってしょうがない、そんな展開になるのですが、ラストは果たしてこれで良かったのか。ほかの選択肢はなかったのか。なんともやるせない結末ですが、余韻を引きずりますので結局は前川センセーに問題を突きつけられたような、そんな気がしています。

最後に、ひとつだけ。
本書では保住のシーンから始まり、瀬尾はその次にくるのですが、なぜか瀬尾のほうの描写が一人称なんですよ。これ逆のほうが良かったのではないかと思うのですが、なぜだったのか。





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2017年07月11日

書評818 佐々木譲「沈黙法廷」

こんにちは、曹源寺です。

加計学園の話題(問題とは言わない)で、地上波がすべて前ナントカさんの応援団になっているらしく、昨日の閉会中審査では7時間もかけて審査が行われたにもかかわらず、報道された内容が各局とも似たり寄ったりという異常な状態がネットで話題になっています。

議事録をしっかりと読み、加戸前愛媛県知事の話を聞き、時系列で事象を追っていけばこの話題は問題ではないことが理解できるはずなのに、事件化したくてしょうがない連中がいるということがよくわかります。

どんな連中かというと、それは「新聞社の政治部」連中です。

ほとんどの新聞社が、政治部をエリート集団と位置づけており、経済部や文化部などを見下している構図になっています(社会部はまた違う毛色ですね)。その政治部連中というのは「政治」ではなく「政局」を語るのが好きなんですね。だから選挙になると色めくし、与党の支持率が下がるとすぐに政局にしたがるわけです。かつての自民党では右派も左派もごちゃまぜで、古くは「角福戦争」だったり「金竹小(こんちくしょう)」だったりと派閥争いを中心に取材していけば面白かったし、国民の関心事でもあったのですが、今は派閥もあまり機能していないのでどうしても「安倍一強」になってしまうわけで、それを快く思っていない連中(記事にならないからつまらない連中)が政局を作り出したくていろいろと仕掛けているのではないかと勘繰ってしまうんですが。でもそのいろいろというのが、「○○大臣が失言したンゴー」とか「支持率が下がったンゴー」とか「国会前でデモガー」とかそういうのしかなくて、最近の報道に不信感を抱いているネット民からすると「また印象操作してるわねー」という感想しか持つことができなくなっています。

政治部は政局ばかり記事にしないで、政治の中身の記事を書いてくれないですかね。

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内容(新潮社HPより)
絞殺死体で発見されたひとり暮らしの初老男性。捜査線上に家事代行業の女性が浮上した。彼女の周辺では他にも複数の男性の不審死が報じられ、ワイドショーは「またも婚活殺人か?」と騒ぐ。公判で無実を訴える彼女は、しかし証言台で突如、黙秘に転じた。彼女は何を守ろうとしたのか。警察小説の雄が挑む新機軸の長編ミステリー。


曹源寺評価★★★★
久しぶりの佐々木譲センセーでしたが、四六判550ページを超える大作でありました。長い長い作品ではありますが、ストーリーは意外にシンプルです。
東京・赤羽で一人暮らしの男性が絞殺死体で発見される。赤羽署の伊室刑事はこの家に出入りしていた人物の洗い出しを行っていたが、そこに浮上したのがフリーの家事代行業、山本美紀であった。事情を聴こうと彼女に自宅に赴くと、そこには埼玉県警の刑事がいた。大宮でも一人暮らしの男性が不審死していたらしく、彼女に事情聴取を試みていたのだ。これは連続殺人なのか、それとも偶然か?功を焦った埼玉県警と警視庁は逮捕、起訴に持ち込もうとするのだが、、、
地方警察が連携できずに犯罪者を追及できないといった事例は現実にも多いそうですが、本書はその辺の難しい事情を見事に描写しています。
警視庁はこの殺人事件について直接的な証拠の確保ができず、状況証拠の積み重ねだけで公判に臨みます。一方で、マスコミは彼女の周辺を徹底リサーチして類似事案を探すとともに、彼女の人物像を固定化しようとします。こうなると、検察も無視できなくなるわけで、公判を維持しようとすれば被告人の自白か直接的な証拠の確保が必須になるのにそれができていない。
この難しい事件を、

前半は警察小説として、後半は法廷小説として

書き上げているところが、佐々木センセーのうまさでしょう。これだけ厚い本になってしまったのは、法廷シーンのリアリティ追求が半端ないレベルにあることはもちろんのこと、事件の謎とそれを解く鍵をしっかり描写しておく必要があったのだろうと思います。
法廷シーンからラストにかけてはある程度納得の展開ではありますが、正直、期待していたほどではなかったかもしれません。なんとなくもやっとしたところが残ります。最後の最後はおそらく、佐々木センセーがもっとも言いたかったことではないかと思いますが、「社会派の法廷サスペンス」を全面に押し出されないと読者としてはちょっと不満です。なんとなく消化不良な読後感なんですが、それは山本美紀あるいは中川綾子に対する疑惑(特に金銭的疑惑)に関する払拭が完全になされていないからなのかもしれませんが、そういうのはすっ飛ばしておいたほうが良いんですかそうですか。






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2017年07月07日

書評817 呉勝浩「ライオン・ブルー」

こんにちは、曹源寺です。

Yahoo!ニュースが刺激的なタイトルをつけてニュースにした記事がありました。

メディアは主観的であれ−−オランダから世界をめざす、ジャーナリズムの新たなかたち(7/6Yahoo!ニュース)
オランダに、世界のメディア関係者が注目するネットメディアがある。2013年に創設された「デ・コレスポンデント」だ。広告を一切入れず、読者からの購読料のみで運営。人口1700万の小国オランダで、月額6ユーロ(約770円)の有料購読者数は5万人を超えた。なぜ、彼らはこれほどの支持を集めることができたのか。創設期からのメンバーで、デ・コレスポンデントの記事を初めて書籍化し、20カ国でベストセラーとなっている『隷属なき道』(文藝春秋)の著者、ルトガー・ブレグマン氏に聞いた。

以下はリンク先で読んでいただければと思いますが、この記事の主旨は、客観的な報道を捨てろと言っているわけではなくて、そこに問題があればきちんと調査報道するべきである、という極めて正しいことを言っているにすぎません。

近い将来問題になる可能性がある事象や、すでに起こっている小さな問題などをしっかりと記事にしているメディアは経済誌が先行しているように思いますがこれは自分だけでしょうか。ヒアリのように、記事化されることで全国に問題意識が波及することは良くありますし、それこそが報道の使命だと思いますが、そうした記事はおまけのようになってしまっているのが現代のメディアではないかと思います。

いつもこのブログで主張していることですが、別に会員制とか有料配信とかで記事を書く分には「主観的」であっても全く問題はないと思います。要するに、読みたい人がそれを買って読めば良いだけの話です。
しかし、テレビ=電波だけはダメです。電波に乗せるということは国民の財産を利用するということにほかなりません。国民の財産である以上は、一方的な垂れ流しをすることは特定の個人や団体に利する場合があるため、その取り扱いに十分な配慮がなされるべきであると考えます。

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内容(KADOKAWA HPより)
乱歩賞作家が放つ、衝撃の交番警察ミステリ!
関西某県の田舎町・獅子追の交番に異動した澤登耀司、30歳。過疎化が進む人口わずか4万人の町から、耀司の同期で交番勤務していた長原信介が姿を消した。県警本部が捜査に乗り出すも、長原の行方は見つからなかった。突然の失踪。長原は事件に巻き込まれたのか。耀司は先輩警官・晃光に振り回されながら長原失踪の真相を探っていく。やがて、町のゴミ屋敷の住人だった毛利宅が放火され、家主・淳一郎の遺体が見つかった。耀司は、長原が失踪直前に毛利淳一郎に会いに行っていたことを掴むが……。

曹源寺評価★★★★★
地方の過疎の町にある交番を舞台にしたミステリであります。交番のお巡りさんを主人公にした作品は数あれど、ここまで全体的に重苦しい作品は希少ではないかと思います。だいたい交番の巡査となれば地域課所属ですから、殺人事件とか謀略とかは無縁というのが前提で、町のちょっとしたトラブルとか人と人のふれあいとか人情とか、そういったものがテーマになることが多いわけですが、本作は田舎の闇みたいなものがテーマになっております。
冒頭もいきなり業火に焼き尽くされる住宅火災のシーンから始まり、さらに、一人の巡査が行方不明になり、小さな町のしがらみとか人間模様とかがいびつなかたちで揺れ動いていたり、町の有力者とか田舎やくざとかもいっぱい出てきたりして

過疎の町の悪いところを凝縮したような

ストーリー展開に、なんとも重苦しい気分になります。
田舎町で警察が力を持っている理由というのが本書を読むとよく分かったりもします。事件そのものをもみ消すことができる警察はやはり、人の口に戸は立てられない田舎とはいえ、味方にしておけば心強いわけです。地元の有力者とやくざと警察が組めば、おそらく最強の取り合わせになること請け合いでしょう。そんな田舎の町で発生した殺人事件など、あっという間にお宮入りですね(笑えない
ミステリというよりは犯罪小説であり、それ以上に暗黒小説のようでもあります。ラストもエグイです。読後感も重いです。
さわやかさゼロの警察小説として(読みたい人は)読んでほしいです。
ちなみに、ライオン・ブルーとは警察官の制服の色だそうです。そして、ブルー・ライオンはフランスの自転車自動車メーカー、プジョーのことであります。





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posted by 曹源寺 at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | か行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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