ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年08月18日

書評828 今野敏「アンカー」

こんにちは、曹源寺です。

北朝鮮がグアムへのICBM発射を一旦取りやめました。米トランプ大統領は「賢い選択をした」などと褒め称えて(皮肉って)いますが、戦争の危機が去ったわけではなく、かの国が危険な国であることも依然として変わらないのです。
一番怖いのは、腰抜けになった首領など要らぬ!といって北朝鮮の軍部がクーデターを起こすことではないかと思います。もしクーデター発生→金正恩暗殺→軍事政権発足、になったら今度は中国が乗り込んでくるだろうと思います。
北「これからは軍部が政権を運営する。まずは米国にICBM撃っちゃるで」
中「待てやコラ聞いてねえぞ」
米「やれるもんならやってみろ」
北「撃ったで〜」
米「てめえやりやがったな、戦争だ!」
中「待て待て、いま傀儡政権作るから」
米「いや待てぬ、侵攻開始」
中「そういえば正男いないんだった。どうしよう」
米「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
中「あああああああああああああああああ」
北「グエー死んだンゴ。でもその前に核ボタンポチー」

金正恩がパフォーマンス的に威圧しているのはわかりますし、経済的にも武力的にも米国とは比べ物にならないほど弱いのも知っていますが、北が威圧行動をとればとるほど各国からの制裁は厳しくなってくるでしょう。そうなれば、北朝鮮人民の不満が爆発するとか、軍部が腰抜け将軍に辟易して暴走するとか、そういうリスクのほうがどんどん顕在化していくわけで、むしろ危機は深まっているのではないかと危惧してしまいます。
「戦争になんかなるわけない」「戦争戦争と国民をあおるな」「もっと対話しろ」などと脳内お花畑な方々がテレビで発言したりネットで書き込んだりしていますが、我々はさまざまな可能性を考慮して行動すること、つまりリスクヘッジの考え方を持つことを忘れないようにしなければなりません。

戦争とは、こっちから仕掛けなくても向こう側から仕掛けてくることがある、という当たり前の考え方さえ否定するような人の意見には耳を貸す必要はないと考えるべきです。

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内容(集英社HPより)
『ニュースイレブン』名物記者・布施と警視庁の刑事・黒田は、10年前に大学生が刺殺された未解決殺人事件を追う。関西の系列局から来た栃本も加わり、捜査は意外な展開へ! 「スクープ」シリーズ第4弾!


曹源寺評価★★★★
いつの間にか「スクープ」シリーズも第4弾に突入です。「スクープ」「ヘッドライン」「クローズアップ」と続いてきたこのシリーズは、今野センセーの作品群からはちょっとだけ異彩を放っているように思います。それはなんといっても警視庁刑事の黒田とテレビ局報道記者の布施がコンビ(!?)を組むという、なんとも奇妙な取り合わせであり、普段は飄々としながら数々のスクープをぶち上げてきた布施の人間味であり、現場百篇ならぬ「資料百篇」を地で行く粘りが信条の黒田刑事であります。警察と報道という両極端にいる二人が相乗効果を発揮して事件を解決に導くというスタイルは読ませる要素が盛りだくさんです。
今回は10年前に町田市で発生した未解決の殺人事件を、警視庁特命捜査対策室に勤務することになった黒田、谷口の両刑事が担当、そこに布施も独自の嗅覚で迫ろうとするが、東都報道ネットワーク(TBN)の深夜枠報道番組「ニュース11」のデスクである鳩村はそこにニュース性を感じず、番組として取り上げようとはしなかった。ニュース11にはちょうど関西から視聴率回復のために送り込まれた栃本がサブデスクとして就任、鳩村と栃本はそりが合わず、そこにメインキャスターの鳥飼も異を唱えるようになり、、、
スクープを連発する布施が独自の嗅覚でとらえたのは、町田市で10年前に発生した殺人事件。この未解決事件で奔走する黒田・谷口の両刑事の活躍と、ニュース11内でこのニュース(大ごとになる前の話として)を取り上げるべきか否かという報道の在り方についての問題、この2つのストーリーを連動させながら展開していくので、中だるみなし、一気に読ませる勢いで進んでいきます。
未解決事件のほうは最近のトレンドでしょうか、ふとしたきっかけで解決まで到達することがありますが、現実はそう甘くはありません。まあ、こういう解決もあるんだろうなあという程度で流せば良いのかなあと思います。
もうひとつの「報道の在り方」のほうは、いろいろと考えさせてくれますね。前作「クローズアップ」でもそうでしたが、報道と視聴率、報道とバラエティ、客観性と主観性、これらの境界線をどこに引くべきなのかという命題について、鳩村は考えさせられます。

読者も考えさせられます

が、本書で言及されているのは「アメリカでは報道番組とバラエティが区別されている」ものの「報道番組のアンカー(本書のタイトルでもありますが、)が自由に意見を述べている」という現実についてです。
日本もこれをまねて、テレビ朝日では1985年10月に、久米宏がアンカー的な役割で番組を構成した「ニュースステーション」を作りました。TBSでは筑紫哲也がこれに倣って1989年10月、「NEWS23」を開始しました。よく思い返せば、報道番組が独自色を強めていったのはこのあたりからではないでしょうか。アンカーマンの存在が番組の「色」を作り出しているという流れが今は固定されています。しかしそれは同時に、過激な一方通行の報道を生み出したとも言えるのかもしれません。
本書では言及されていませんが、電波は公共のものであって、それはバラエティだろうが報道だろうが関係ないんですね。テレビ局は公共の電波を借りて(しかも極端に安価で)番組を流しているわけで、そこに公正中立が求められるのは当たり前の話なんですよ。
ですから、個人的な感想になりますが、電波オークションが実施されるとか、放送法に厳格な罰則規定が盛り込まれるとか、クロスオーナーシップの禁止とか、放送関連の法整備をもう少し突き詰めていかないと、アメリカのようなアンカーマンによる独自の報道番組構成などは認めるべきではないと思っています。
こんな話は本書のストーリーとは全く関係ないことではありますが、「報道の在り方」に言及する以上は現在ネットなどでも議論されている上記のようなテーマを見過ごされては困るので、とりあえず書いておきました。





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2017年08月15日

書評827 河合莞爾「スノウ・エンジェル」

こんにちは、曹源寺です。

今日8月15日は終戦の日です。なぜか「終戦記念日」と呼ぶ勢力がいますが、記念という単語には「思い出となるように残しておくこと。また、そのもの。」(大辞泉)という意味がありまして、別に思い出として残しておきたくもないんですが、なぜか記念日にしている奴らがいます。さらに言うと、「終戦」ではなくて「敗戦」ですから正確には「敗戦の日」というのが正しい使い方ではないかと思います。

似たような話には、広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれている文章がありますね。
「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」
というやつです。過ちってなんでしょうか。広島市のホームページにはいろいろと説明書きがありますが、こんな文章があります。
戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉である
うーん、本来は原子爆弾という人類が抱えた大きな宿業のことを指していたのではないかと思いますが、いつの間にか戦争そのものにすり替わっていますね。まあ、原爆とした場合、過ったのは米国ということになりますから、どこかの誰かさんにとっては都合の悪い意味合いになってしまうのかもしれません。

ちょっとした言葉遣いの違いで、本来持っているはずの意味が微妙にずれていく

ということが、ここ最近は多いなあと思ってしまうのですが、みなさんもそんな経験ありませんか?
小賢しい。うん、小賢しいという単語がしっくりくるなあ。
悪意を持って大衆を騙そうとしているヤツがいるということを、我々はしっかりと認識しておくべきだと強く思います。

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内容(祥伝社HPより)

やがて世界は白い天使に覆(おお)われる――
蔓延(まんえん)する違法薬物の陰で進む“完全な麻薬(スノウ・エンジェル)”の開発。
犯人5名を“射殺”した元刑事と非合法捜査を厭(いと)わぬ女麻薬取締官が潜入捜査で炙(あぶ)り出す、“依存”の闇と驚愕(きょうがく)のW計画とは?
起こりうる近未来の薬物犯罪を描く、黙示録的警察小説!
我に依存せよ、我に服従せよ。
服従しないものには死を――
「天使様、お助け下さい」――歩行者天国に暴走車を突っ込ませた後、通行人を殺害した男が、謎の呟(つぶや)きを残して百貨店の屋上から飛び降りた。新種の合成ドラッグ〈スノウ・エンジェル〉が原因と睨(にら)む厚生労働省の麻薬取締官・水月笙子(みづきしょうこ)は、その根絶を狙い、ある男に捜査協力を求めた。神西明(じんざいあきら)、元刑事。9年前に相棒を殺され、犯人5人を“射殺”、そのまま逃亡して首謀者・マシューを追い続ける男だった……。


曹源寺評価★★★★
河合センセーの最新刊は元刑事と麻薬取締官のお話でした。
神西明は相棒を殺されて犯人5人を射殺後逃走、偽名を使って日雇い労働者として事件の首謀者を追う日々だった。その神西をスカウトしたのが水月笙子で、新種の合成ドラッグ「スノウ・エンジェル」を突き止めようとしていたのだ。
過去を捨てた神西は囮捜査として最適な人物だった。売人の伊佐と仲良くなり、伊佐の手助けをすることで卸元の白竜に近づけることができると考えた神西は、大きな取引を持ち掛けることで白竜と面会できるようセッティングした。神西はスノウ・エンジェルを根絶することができるか。
河合センセーといえば、島田荘司センセーばりのトリックものや鏑木刑事を主人公とした警察小説が耳目を集めましたが、本書はなんとなく大沢在昌センセーのようなちょっとハードボイルド系の作風に仕上がっています。
でも、なんだかちょっと既視感があるなあと思ったら、「デビル・イン・ヘブン」の前日譚ですってよ。どおりで、「聖洲」という湾岸地域の名称とか、カジノ法案の話とか、首謀者「マシュー」のことだとか、デビル〜の世界観が出ているわけだわ。でも、マシューってなんだっけ?忘れちったわ。
もしかしたら、本書を先に読んで、その後に「デビル・イン・ヘブン」を読んだら面白いのかもしれないですね。
元刑事・神西の活躍はそれこそ大沢作品の

鮫島警部ばりにカッコイイ

のですが、その造形描写はもう少し特徴的なものがあっても良いのかなあと思います。
ラストはちょっと思わせぶりなところもありますが、続編に期待してしまって良いのでしょうか。





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2017年08月08日

書評826 曽根圭介「黒い波紋」

こんにちは、曹源寺です。

昨日は河野太郎外務大臣が、周囲の期待を裏切って仕事をしていると話題になりました。
「お父さんの意見大切に」王外相、河野氏に皮肉(8/7読売新聞)
【マニラ=比嘉清太】河野外相と中国の王毅ワンイー外相が7日、初会談でいきなり火花を散らす一幕があった。
王氏は会談冒頭から「発言を聞いて率直に言って失望した」と河野氏を批判した。会談に先立つ東アジア首脳会議(EAS)外相会議で、河野氏が南シナ海問題への懸念を表明したことに不満を示したかったようだ。「ハト派」として知られた河野氏の父の河野洋平・元衆院議長を「正直な政治家」と持ち上げ、「お父さんの意見を大切にすることを望む」とも皮肉った。
これに対し、河野氏は「中国には大国としての振る舞い方を身に付けていただく必要がある」と反論した。


河野氏のブログを読めばわかりますが、河野氏は実にマメです。自分の仕事には責任を持ち、きちんと正論を吐いてそれを曲げない精神性もお持ちのようです。先日も書きましたが、父親の売国っぷりとは違って、情に流されたりトラップに引っかかったりはしないような感じがします。法律がこうなっているから、とか、条約で締結したのだから、とか、彼の行動規範はこうした法律第一主義的な色合いが強いのだろうと思います。
こういう人は行政のトップに据えるとなかなかぶれませんので、意外と適任なのかもしれません。
ちょうど外務副大臣には「ヒゲの隊長」こと佐藤正久センセーが就任されました。こと外務に関してはこのコンビが活躍するのではないかと期待しています。
あ、一応補足しておきますが、好きではありません。嫌いだけど仕事はきちんとするんだろうなあということです。

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内容(朝日新聞出版HPより)
元刑事の加瀬将造は、孤独死した父親宛てに何者かから毎月30万円の現金が届いていることを知る。さらにアパートを片付けると天井裏から古いVHSのビデオテープが。中身を確かめると、そこに映っていたのは・・・。江戸川乱歩賞・日本ホラー小説大賞受賞作家、渾身作!


曹源寺評価★★★★
後味の悪いホラーチックな作品で個人的には大好きな曽根センセーの最新刊です。本作はホラーではなくてクライムサスペンスのジャンルだと思います。
冒頭は元刑事にして便利屋家業の加瀬将造が、実父・真木盛夫の死去を知らされ現地に赴くところから始まります。両親の離婚後30年も音信不通であった実父なので、哀しみもわかない加瀬。部屋に金目のものがないか探すと、偽名で借りた私書箱の契約書があり、何者かが毎月30万円を父に送金していることを知る。さらに天井裏には古いVHSのビデオテープが隠されていた。離婚して養育費の支払いに追われていた加瀬は、千載一遇のチャンスに賭けようとする。。。
曽根センセーの作品の特徴のひとつに、「登場人物がみんなクソ」というのがあります。クソ野郎ばかりですので感情移入できません。だから嫌い、という人が多いのかもしれませんが、自分は違います。

クソにはクソの末路がちゃんと待ち構えている

のが曽根作品の特徴でもあります。
本書は主人公と思しき加瀬も、その実父の真木盛夫も、そのあとに登場する政治家とその取り巻きも、みーんなクソで悪党です。しかも加瀬はバカでもあります。(以下、ネタバレあり)


加瀬は脅迫の仕方がめちゃめちゃ下手です。現金の受け取りも下手くそ極まりありません。オレだったらもうちょっとうまいことやれそうな気がするなあ、なんて思ったりもしますが、これは読者が思った時点で曽根センセー的には勝ちなのかもしれません。そう、なんだかんだでこの悪党に感情移入しているわけですからね。
登場人物がクソなので、たいていの作品はラストも後味悪いです。本書もまた、微妙なしこりを残す終わり方をしますので、何とも言えぬ気分にさせられます。
でも、それこそが曽根センセーの持ち味だと思っています。本作は伏線をきちんと回収しているし、悪党にふさわしい末路も描かれているし、政治の世界はやはり闇が深いなあと思わせているし、で納得の一冊であるかと思います。





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posted by 曹源寺 at 16:39| Comment(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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