ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年09月29日

書評840 柚月裕子「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」

こんにちは、曹源寺です。

小池百合子氏が希望の党を立ち上げたことで、次の衆議院議員選挙がとんでもない方向に進みつつあるようです。
民進党の前ナントカさんが合流を決めたそうですが、小池党首との会談は今日(9/29)になってから行われたので、合意があって発表されたものではなかったみたいですね。
民進党に関しては、政策の違いがものすごく顕著な政治団体に合流しようとするその心情がまったく理解できないので、これっぽっちも論評できないのですが、もし希望の党が民進党のリベラル派を根こそぎ合流させたら相当支持を失うことは目に見えていると思います。
おそらく、水面下ではものすごい駆け引きが展開されているのでしょう。民進党にしてみれば「トロイの木馬」よろしく、当選してから乗っ取ってしまえば良いと考えているのかもしれませんし、小池氏は小池氏でもしかしたら大掛かりな踏み絵を用意するのかもしれません。ここ数日は政治のニュースから目が離せそうにありません。

ひとつ言えるのは、政党とは選挙互助会ではないはずであり、当選したいがためのアウフヘーベン(言ってみたかっただけです)であれば選挙民は見限るべきであるということでしょう。
同じように、「安倍政権を倒す」ことが目的になっている政党は手段と目的が逆転していますので、相手にしてはいけないのだと思います。「安倍政権を打倒して、○○をやるのだ」といった明確な目標なり目的を主張している野党がいないのは、日本国民にとって不幸なことだと思います。

解散してからたった数日でここまで政局が混乱したのは相当珍しいのではないでしょうか。解散に大義はないとか言われていましたが、安倍首相にしてみれば野党がこんなに混乱するとは思ってもいなかったでしょうに。あるいは狙っていたのだとすれば、安倍首相は相当な策士であると言わざるを得ません。

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内容(講談社HPより)
「殺し」と「傷害」以外、引き受けます。
美貌の元弁護士が、あり得ない依頼に知略をめぐらす鮮烈ミステリー!
『孤狼の血』(日本推理作家協会賞受賞)、『慈雨』(本の雑誌が選ぶ2016年度ベスト10・第1位)の著者、最新作!!
将棋ソフト、野球賭博etc.タイムリーな話題が満載!
不祥事で弁護士資格を剥奪された上水流涼子は、IQ140 の貴山をアシスタントに、探偵エージェンシーを運営。
「未来が見える」という人物に経営判断を委ねる二代目社長、賭け将棋で必勝を期すヤクザ……。
明晰な頭脳と美貌を武器に、怪人物がらみの「あり得ない」依頼を解決に導くのだが――。


曹源寺評価★★★★
いつもは重厚な長編ミステリでならしている柚月裕子センセーが、軽めの連作短編という真逆なジャンルで出してこられたのでちょっと驚きでした。
弁護士資格をはく奪され、個人で「なんでも屋」を立ち上げた上水流涼子と、東大卒にしてIQ140のちょっと世間からはみ出してしまった貴山伸彦のコンビが、依頼人の要望に応える軽いミステリです。
涼子のキャラクターが30ちょっと過ぎのイケイケ美人系、貴山のキャラが頭良すぎるうえにガタイも良いというチートな設定ですので、

現実的にあり得ない

ような造型になっているのはご愛嬌でしょうか。映像作品なら北川景子と鈴木亮平あたりが演じたら面白いかもしれません。
それはさておき、5つのストーリーはそれぞれが復讐だったり対決だったりコンゲームだったりするので、なかなかに楽しめる内容となっています。さらに、涼子の過去とかしがらみとか、読み進めるうちに明らかになってくるものも多いので、これは続編不可避ですね。
個人的にはヤクザの親分が依頼してきた将棋のガチンコ賭け勝負で相手の不正を見破れ、という無茶な依頼を引き受ける「戦術的にあり得ない」が良かったです。これに似た話がマンガ「ハロー張りネズミ」にあったのを思い出しました。たしか賭けゴルフで、相手のパットがガンガン決まるのを不思議に思った張りネズミこと七瀬五郎がそのからくりを見破り、それを逆手にとって逆転勝ちするというやつでした。策を弄する者は策に溺れる、を地で行くストーリーは痛快です。こういうコンゲームなショートストーリーは大好きですのでどんどん出してほしいなあと思います。





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2017年09月26日

書評839 下村敦史「緑の窓口 〜樹木トラブル解決します〜」

こんにちは、曹源寺です。

自民党は平沼赳夫議員や谷垣禎一議員、高村正彦議員らが政界引退を表明しました。民進党では川端達夫議員が引退です。ご老体はお疲れ様と言いたいです。人間、誰しも引き際が肝心ですね。
この、引き際を間違えてしまった人ほど悲惨なものはありません。プロ野球ではソフトバンクの松中信彦選手などが悪例ですね。せっかくの三冠王が台無しです。同じソフトバンクの松坂大輔投手は現役にしがみついていますが、このまま復活が実現できなければ男を下げること間違いなしでしょう。
逆に広島カープの黒田博樹投手はラストの1年をカープで過ごすという大英断によって男を上げました。「男気」の代名詞にまでなった黒田さんは今後、広島県知事に出馬してもトップ当選するんじゃないかと思います。
つまり、大衆はそれほどまでに「意気」に感じる姿に共感してしまうのだと思います。

政治や芸能の世界だけでなく、ビジネスの世界も然りですね。社長にまで上り詰めていい歳になって引退したかと思えば、会長になってその影響力を残そうと目論み、さらには相談役とかいう謎の役職に就いて院政を敷くような老害が後を絶ちません。次の世代を信用していないということを態度で示しているのだということに気が付かないのでしょうか。
会長に就任して傀儡を社長に据えたはいいけれど、業績がみるみる悪化してしまい、自分は辞めずに社長の首だけを挿げ替えるという暴挙に出た人もいますね。業績悪化の真の原因は会長の院政にあるのに、自分が時代についていけなくなっているのに、自分の周辺を甘言ばかり言う取り巻きで固めているから真の情報が伝わっていないのに。

これから就職活動を始めようとしている大学3年生のみなさんには、こうした会社の組織、特にトップの状況などもしっかりと研究してほしいなあと思います。

そういえば、マスゴミにはこんな会社が結構目につくような気がするなあ。新聞社とかテレビ局とか。政治家も引退するは良いけど結局自分の息子に地盤を継がせることが多いですからあまり変わらないのかもしれませんが、マスゴミも政治家も共通するのは「巨大な権力」であります。一旦手にした権力というのは、簡単には手放すことができないのでしょう。それが人間の性でもあるのでしょう。そう考えると、上西小百合議員のようにすっぱりと不出馬宣言するのもまた面白いなあと思います。政治家としての力量は別にして。
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内容(講談社HPより)
「全ては樹木が語ってくれました」
『闇に香る嘘』『生還者』で注目の乱歩賞作家が挑む新境地。
樹木トラブルの裏には、人の“想い”が隠れている!
笑って泣ける、人の心と樹木をつなぐ6つの連作ミステリー
新設された「緑の窓口」への異動を言い渡された区役所職員の天野優樹。
えっ…、それって切符を買うところじゃ……。
疑問を抱いたのも束の間、「庭にあるスギの伐採をめぐって家族仲がギスギスしています。なんとかしてください」との依頼が届く。
そう、ここは市民の樹木トラブルを解決する部署だった!
花粉症で樹木嫌いの先輩・岩浪とともに依頼先に向かった天野。
しかし、そこにはスギを愛でる先客が。
「柊紅葉といいます。樹木医です。」
清楚な美人の登場に胸をときめかせる天野だったが、事態は意外な展開を見せ……。


曹源寺評価★★★★
下村センセーはそれなりにいいペースで執筆されていますので、とりあえず今のところ全作品を読了しています。
これまではいかにも乱歩賞作家という感じの作品が多かったのですが、本書はこれまでのカラーを一切出さずに、「これがあの下村センセーの本??」と思わせるくらい毛色の違う作品となっています。
まず、軽い。誰かが死ぬわけでもなく、トラブルと言ってもご近所トラブルくらいの軽さでミステリとしてもかなりマイルドです。
そして、ちょっとほっこり。連作短編6話を収録していますが、いずれの話もハッピーエンドです。読み進めるうちに登場人物のキャラクター造型が詳しくなってきますので、感情移入しやすくなっています。最初は「なんか軽くてつまんねえなあ」と思っていたのですが、読み進めるうちにだんだんこの作品の世界にのめり込むようになり、最後は

続編出ても読むわこれ

というくらいはまりました。
樹木(というか植物)の持つパワーもそうですが、複雑に絡み合う人間模様を植物の世界になぞらえて、そこから教訓めいた話に仕上げていくというのはそれなりに大変な作業ではないかと思いますが、それを見事にさっくりと調理してしまった下村センセーの力量に感服です。
巻末には「デビュー直後から長く温めていたアイデア」と書かれていますので、本来の下村センセーはこうしたヒューマンドラマというかちょっと心温まるお話という路線のほうを指向されているのかもしれません。ここまで守備範囲が広かったらなんでも来いという感じです。





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2017年09月22日

書評838 中山七里「ドクター・デスの遺産」

こんにちは、曹源寺です。

衆議院が解散となりますと、総選挙に約600億円もの金が動くと言われています。ある意味、景気対策みたいなものでその恩恵は製紙、印刷、DMサービス、レンタカー、貸事務所、市場調査、コールセンター、コンサルティング、等々、様々な業界にわたります。
地方統一選挙や参議院銀選挙はスケジュールが確定している予定調和案件ですが、衆議院議員選挙は不意打ちのある突発的な案件ですので、業界にしてみればうれしい誤算でしょう。

さて、その選挙ですが、やはり若年層の投票率が依然として低いわけで、ここを何とかしないと政策のほうも若い人向けのそれにならないと思います。日本の未来のためにも、若年層へのはたらきかけを強化して欲しいなあと思います。
いや、特にアイデアがあるわけではないんですが。やはり、人は追い詰められないと動かない生き物ではないかと思っていますので、切羽詰まったところまで追い詰められないとダメかもしれません。

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内容(KADOKAWA HPより)
“どんでん返しの帝王”が放つ、社会派医療ミステリ!
「死ぬ権利を与えてくれ」・・・・・・
命の尊厳とは何か。安楽死の是非とは。
警視庁にひとりの少年から「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」との通報が入る。当初はいたずら電話かと思われたが、捜査一課の高千穂明日香は少年の声からその真剣さを感じ取り、犬養隼人刑事とともに少年の自宅を訪ねる。すると、少年の父親の通夜が行われていた。少年に事情を聞くと、見知らぬ医者と思われる男がやってきて父親に注射を打ったという。日本では認められていない安楽死を請け負う医師の存在が浮上するが、少年の母親はそれを断固否定した。次第に少年と母親の発言の食い違いが明らかになる。そんななか、同じような第二の事件が起こる――。


曹源寺評価★★★★
刑事・犬養隼人シリーズも4作目に突入となりました。相変わらずすごい勢いですね。
ただ、このところの作品は社会問題のほうをクローズアップさせていて、犬養刑事はダシに使われているだけのような気もします。
さて、本書の社会問題は「安楽死」であります。欧米諸国のいくつかではすでに認められつつある「死ぬ権利」について、日本は議論さえも忌避しようとしているところが見受けられますので、テーブルにつくことさえできない状態のようです。

だからこそ、中山センセーは題材として選んだのでしょう。

あちこちで起こるドクター・デスの犯罪を、犬養刑事はどうやって阻止しようとするのか。ドクター・デスと犬養のコンゲームの様相をスピード感持って読ませてくれます。さらに、どんでん返しというほどではないにせよ、ある種の驚きを禁じ得ない展開にもさすがっ!と思わせるところは本当にすごいです。ラストもちょっと意外な結末でした。これは現状の問題点をずばり抉っていて、考えらせられるようになっているのでしょう。
個人的な見解ですが、安楽死の是非を政治決着させようとするとなんだかとんでもないことになりそうな気がします。だからといって、宗教的な解決を迫るのもこの日本では難しいのかもしれません。
ただ、ひとつ言えるのは、医療が高度先進的に発達したおかげで日本人の平均寿命は明らかに伸びていて、そのなかには「生きてはいるけれど死んでいないだけの状態」の人や、「苦しみながら生かされている人」もいるのは間違いないでしょう。そうした人をどうやって救っていくのかについての議論は確かになされていません。少なくとも、民主主義国家である以上は様々な意見を戦わせなければいけないのだと思います。議論をするところから始めなければ、何も進まないのだろうということを、本書は教えてくれたように思います。





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