ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年08月04日

書評825 大倉崇裕「クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係」

こんにちは、曹源寺です。

積水ハウスが8月2日にプレスリリースした「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」という文書が、久々の大型経済事件として話題を集めました。
どんな事件か、すごく簡単に言うと「わが社は不動産取引で詐欺師にまんまと67億円をだまし取られました」という内容です。
本当に久々の大型事件ですが、なぜかあまり続報がないですね。事件の背景とか犯人像とか取引内容の実態とか、いろいろ知りたいことは多いんですが、簡単に追える内容でもなさそうです。
さて、大型経済事件といえば「コスモポリタン事件」「イトマン事件」「石橋産業事件」「雅叙園観光事件」など、90年代の巨額詐欺事件が思いつきますが、2000年以降はあまり目立ったものがない(のか自分が知らないだけなのか)ですね。パナマ文書なんて、本当はめちゃくちゃすごい事件のはずですが、マスゴミが忖度して大手企業の名前を出さなかったものだからあっという間に下火になりました。
この事件をいち早く報じたのはWebニュースを配信する「東京アウトローズWEB速報版」でした。複数の地面師が暗躍しているという内容で、早くからアングラで蠢いている怪しい人脈を追求していたわけです。
たしか、昨年、新橋で大地主の女性が行方不明となった事件(その後、遺体発見)もWebニュースをメインにしている媒体がすっぱ抜いたんじゃなかったかしら。いずれにせよ、大手マスゴミでは絶対にスクープもできないような事件は、なんだか血が騒ぎます。裏社会の実態をすき間から覗き込んだような、見てはいけないものを見てしまったかのような、そんな気にさせられます。
しかし、Webを中心に活動されているジャーナリストの方々も、それこそピンからキリまでありまして、個人的な感想ですがだいたい半分以上は単なる売文屋でしかなく、調査報道をしっかり行っておられるのはほんの一握りでしょう。思想的にヤバイ人もいますが、事件を追求するという姿勢だけ見れば素晴らしいお方もいらっしゃいますので、そんな人は応援したいですね。

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内容(講談社HPより)
2017年7月から連続テレビドラマ化!
大人気「警視庁いきもの係」シリーズ待望の第4弾!
ピラニア、クジャク、ハリネズミが登場する傑作中編3作を収録!
学同院大学で起きた殺人事件の容疑者は、クジャク愛好会の奇人大学生! だが無実を信じる警視庁いきもの係の名(迷)コンビ、窓際警部補・須藤友三と動物オタクの女性巡査・薄圭子はアニマル推理を繰り広げ、事件の裏側に潜むもうひとつの犯罪を探り当てる!? 犯人確定のカギはクジャクの「アレ」!?
警視庁の「いきもの係」というべき、総務部動植物管理係の名コンビ、窓際警部補・須藤友三(すどう・ともぞう)と動物オタクの女性巡査・薄圭子(うすき・けいこ)のアニマル推理が楽しめます!


曹源寺評価★★★★
今タームでテレビドラマ化された「警視庁いきもの係」シリーズの最新刊です。須藤友三警部補が渡部篤郎、薄圭子巡査が橋本環奈という、まったく原作を無視したキャラクター設定には少々頭にくるものがありますが、まあドラマなんてこんなもんでしょう。
さて、本作では「ピラニア」「クジャク」「ハリネズミ」の中編3作を収録してあります。このシリーズは短編よりも、そして長編よりも、中編くらいの作品のほうが読みやすくて面白いなあと思います。短編だとあっさりしすぎていて、長編だと冗長に思えるのかもしれません。
「ピラニア」では、マンションの一室で発見された他殺体、その部屋にはピラニアの飼育施設があり、水槽の中にはある会社の社章があったというストーリー。
「クジャク」では、大学生が他殺体で発見される。手にはクジャクの羽根が。目白にある学同院大学の敷地内にはクジャクとその卵が孵化中であった。
「ハリネズミ」では、ある女性が襲われて大けがを負う。彼女はなぜ襲われたのか。飼っているハリネズミの生態をつぶさに追っていくと、その裏にある陰謀が隠されていた。
最後のハリネズミの章は薄圭子でなければ絶対に解くことができなかった事件として、記憶に残りそうな内容です。我が家もハリネズミを飼っていますので、楽しく読むことができました。
「クジャク」では、作者大倉センセーの母校である学習院大学が学同院大学として描かれています。また、学同院大学はセンセーの「オチケン!」シリーズの舞台でもありますので非常になつかしく、素晴らしい描写になっています。さらに、本書に登場するクジャクの名前「サカタニ」と「スカイレインボーハリケーンゴッドフェニックス」は京都大学クジャク同好会に実在するらしいですね。まんま使っているところに、大倉センセーのクジャクに対する愛情とリスペクトがうかがえます。
これだけでも十分に笑えますが、本書シリーズの楽しさはやはり薄圭子と須藤友三のボケツッコミでありましょう。日本人なのに日本語に不自由している薄圭子の天然ボケに、須藤友三が冷静にツッコミを入れるというこの会話。

回を追うごとにこのシリーズは面白さを増してきました。

ドラマなど関係なく長期で続けていただきたいシリーズです。





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posted by 曹源寺 at 18:20| Comment(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月01日

書評824 黒井卓司「フェイスレス」

こんにちは、曹源寺です。

トランプ米大統領がCNNをはじめとした一部メディアに対して使った「フェイクニュース」という単語がありますが、これは「メディアのねつ造」という意味でつかわれ始めたものであります。

これに対して日本では、メディアのほうが「ネットにおけるデマ、作り話」という意味で使うようになっています。

朝日新聞の記者が先日こんな新書を出したことで、ネットでは笑いものになっています。

平和博「信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体 (朝日新書)」 [新書]


「今年一番のギャグ」「自伝乙」「鏡見ろよ」「正に朝日新聞そのもの」などの書き込みが半端ないです。
本来の意味を勝手に書き換えようとする気マンマンですね。
まあ、ネットに嘘があふれかえっているのはみんな知っています。だからこそ「嘘を嘘と見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という有名な格言ができたわけです。ですから、みんな知っているんですよ。わかっているんですよ。わかってて使っているんですよ。
問題はネットではなくて、既存のメディアがネットを使えない人を対象に意図的にフェイクを混ぜてニュースを流し始めていることなんですよね。こうなるともう自分が直接目にしたものだけを信じるしかないという、末期的な状況になってくるんですね。ネットに限らずテレビも新聞も、信じられない情報ばかりが垂れ流される世界というこの世紀末な状態。こんな状態が長く続くはずはありませんので、いずれ何らかのしっぺ返しがくるのは間違いないでしょう。

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内容(KADOKAWA HPより)
世界が枝分かれし、人類滅亡のカウントダウンが始まる。超弩級サスペンス!
設定の見事さとそれを上回る大興奮の展開。物語も才能も凄まじい。──山田宗樹(『百年法』『代体』)
枝分かれした「もう一つの世界」が生み出した恐るべき生体兵器。人類滅亡までのカウントダウンがはじまる。
「もう一人の自分」に出会ったとき、世界は音をたてて崩壊する……一気読み必至の予測不能サスペンス!
 製薬会社の研究員・透は、同じ研究チームの北岡の婚約者・可奈恵に秘かに想いを寄せていた。だが北岡の車で帰宅中にタイヤがバースト。可奈恵と透は一命を取りとめるが、北岡だけが亡くなってしまう。
 それから9年後。アメリカである実験が行われていた。アリの殺虫剤のテストという名目だったが、そのアリは被験者15名をあっという間に噛み殺してしまう。──実はこの世界は、誰にも気づかれないまま二つに枝分かれしていた。しかしネバダ核実験場にある“チューブ”を通じて、アメリカと「もう一つのアメリカ」は秘密裏に交流していたのだ。そしてチューブを通過したアルゼンチンアリが「向こうの世界」で交配し誕生したのが、この恐るべき殺人アリだった。
 一見、何の関係もない2つの出来事。だがそれが1つの線で結ばれたとき──世界を揺るがす陰謀が透を呑み込み、彼の運命は大きく変わっていく。


曹源寺評価★★★★★
書店で気になったので読んでみました。黒井卓司センセー、初読です。
黒井卓司センセーは1960年生まれ。2011年の日本ホラー小説大賞最終候補作「さよならが君を二度殺す」でデビュー、だそうです。
本作はホラーというよりはSFサスペンス、いやSFファンタジーですね。
「平行世界が完全に分岐しなかったため、こちらの世界とあちらの世界が一か所でつながっている状態」という設定だけで、最近の異世界ブームに乗っているファンにはたまらないお話の予感がプンプンしそうです。そこに、「両方の世界の生物をかけ合わせると瞬間進化する」という、さらに恐ろしい設定がおまけでついてきます。
そんな世界を舞台にして、日本とアメリカで巻き起こる事件がテンポよく進んでいきます。主人公の早川透とその友人である北岡直樹、直樹の婚約者である可奈恵、そしてもう一つの世界から来た「F」。壮大な設定ですが、その割にストーリーは(ネタバレ注意)


ただの三角関係のもつれ

だったりするので、ちょっと拍子抜けです。
うーん、個人的にはアメリカ映画のような大きな展開を期待したのですが、彼らの行動のモチベーションがあまりたいしたことなくてがっかりです。
それと、ラストもイマイチ締まらないなあという印象です。なんだか、少年漫画の最終回みたいなラストです。
もし自分が作者だったらどうするか、なんて妄想がいっぱいできそうな作品です。自分だったらおそらく、絶望感たっぷりのラストにするかもしれません。
だれも救われないような、、、人類が殺人蟻に滅ぼされるような、、、





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2017年07月28日

書評823 笹本稜平「危険領域 所轄魂」

こんにちは、曹源寺です。

R4こと村田民進党代表が辞任を表明しました。自民党では稲田防衛相が辞任しました。個別にみればいろいろな背景がありますが、最近は物議をかもす女性議員が多いのが印象的です。

嫌われる議員が多いのでしょうか。嫌われるとしたら、何がいけないのか。このあたり、女性蔑視にならないレベルで実証したら面白そうな気がします。

議員、それも大臣や党の幹部となれば人望がなければいけません。でも人望って何でしょうね。人望イコール人を惹きつけるもの、ということだと思いますが、じゃあその正体は何よ、という話になります。逆に、人が離れていく要素って何でしょうね。R4議員が記者会見で放った「遠心力」という単語には、なんだかすごく深いものを感じてしまいます。
個人的な感想ですが、遠心力のある人ってこんな感じでしょうか。
・責任を取らない
・言い訳ばかりして謝らない
・人のせいにする
・自分で汗をかかない
・常に上から目線
・攻撃的すぎて何にでも噛みつく
・落としどころを知らない
うーん、ほかにもいっぱいありそうだ。いずれちゃんとまとめたいですね。

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内容(徳間書店HPより)
マンションで転落死と思われる男性の死体が発見された。死亡した男は、大物政治家が絡む贈収賄事件の重要参考人であるという。さらには政治家の公設第一秘書、私設秘書も変死。自殺として処理するように圧力がかかる中、葛木が極秘裏に捜査を開始すると、とある黒幕が浮かび上がってきて……。政治が真実を闇に葬ろうとするとき、葛木父子は警察の矜持を保つことができるのか!大人気警察小説シリーズ第四弾。


曹源寺評価★★★★★
「所轄魂」シリーズも4作目に突入です。根っからの刑事である葛木邦彦と、その父を見ながらキャリア警察官として一気に父を追い抜いた息子の葛木俊史親子が奮闘する警察小説として、笹本作品のなかでは「越境捜査」シリーズとともに定着したシリーズです。父親よりも出世した息子だが、実力(=捜査能力)では父親のほうが一歩も二歩も上であり、それを息子も十分に承知しているから軋轢も生じない。逆に見事な連係プレーを見せてくれるという、いつもながらなんともうらやましい展開になるのが常ですが、まあそこは微笑ましい父子愛ということで我々読者は暖かく見守ってやりましょう。
今回はとある政治家の公設第一秘書と私設秘書が相次いで死体で見つかるというところからスタートします。捜査第二課の理事官として就任している息子の俊史は、贈収賄事件として立件したいところに重要参考人が死んでしまった格好だ。一方の父・邦彦は変死体を前に殺人事件として捜査したいが、事を荒立てるのは良くないと判断した上層部と軋轢が生じ始めます。
国家を揺るがす大規模な贈収賄事件と殺人事件、どちらを優先的に扱うのかで揉めるのですが、そうこうしているうちに捜査は後手後手に回ってしまいます。捜査一課と捜査二課の領分で揉めると同時に、警視庁と福井県警でも軋轢が生じたり、地元の有力者に気を遣う県警のなかにも気骨ある刑事がいて上層部と現場でも意見の相違が表面化したりして、なんだかいろんなところで齟齬をきたしている警察組織というところに最後はやっぱり「所轄魂」で締め括るというお決まりの展開でありました。
それにしても、笹本警察小説というのはいっつも同じ感想しか思い浮かびません。本シリーズのみならず、「越境捜査」シリーズにも共通して言えることですが、思いつくだけでこんなにありました(以下、だいたひかる風にお読みください)。
序盤から中盤にかけて事件がまったく進展しないというダラダラ感。
刑事同士の会話だけで事件が進んでいくという臨場感ゼロの荒技。
しかもその会話がものすごく堅苦しいので読んでも頭に入らないという哲学の授業状態。
事件の詳細が分からないまま進んでいくから読後しばらくするとどんな内容だったのか思い出せなくなるという記憶喪失。


どーでもいーですよ

と歌いたくなってしまいそうになるレベルです。
これに、ラストの事件解決した感がまったくないというモヤモヤ感。というのもありますが、本書はまだ事件解決している方かなあと思いますので、まあここは割愛で良いでしょう。
あと、笹本センセーの意識の根底にあるだろうと思われるのが、反権力思想でしょう。越境捜査にしても所轄魂にしても、犯人像が大抵与党の大物政治家だったり警察上層部だったりしてちょいと食傷気味です。笹本センセーの世代(1951年生まれ)はほぼ団塊の世代です。おそらく最も反権力思想の持ち主が多い世代ではないかと思いますので、これはしょうがないかなあとも思います。55年体制による弊害が多かったというのもありますし、疑獄事件もいっぱいありましたからね。
しかし、それより後の世代は団塊の世代のことを見下していますよ。共産党なんてテロリストだと思っていますし、中核派だの革マル派だのといった単語にはまったくピンときていません。本書に出てくるロッキード事件も解説がなければ理解できないでしょう。
いまはマスゴミが政権与党に対する攻撃を強めていますから、政治家の汚職なんて簡単にできません。やっていることは不倫とか政治活動費のポッケナイナイとか本当にせせこましいことばっかりです。政治家よりも官僚のほうがドス黒いでしょうから、中央官庁の腐った役人あたりにターゲットを絞ってみてはいかがでしょう。財務省、外務省、文部科学省あたりはネタの宝庫かもしれませんね。





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posted by 曹源寺 at 18:15| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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