ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2018年03月23日

書評883 青木知己「Y駅発深夜バス」

こんにちは、曹源寺です。

作家のなかにはたまに、百田尚樹センセー(思いっきり右)や森村誠一センセー(思いっきり左)のようにイデオロギーを鮮明にされる御仁もいらっしゃいますが、それはそれで良いとして、単なる政権批判に終始しているようなセンセーも中にはいらっしゃるようで。

「自らの責任逃れ、聞くに堪えない」 作家・高村薫さん(3/19朝日新聞)
財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書を改ざんした問題で、19日の参院予算委員会で論戦があった。識者はこの問題をどうみるのか。
作家・高村薫さんの話
財務省の責任だとする安倍首相や麻生財務相の国会答弁は、自らの責任逃れとしか聞こえず、聞くに堪えない。異様な取引と文書の改ざんは、政治の関与なしには説明できないと感じる。支持率が下落しているのは、説明責任を果たさない政府の姿勢が原因だろう。財務省の一部に責任を押しつける答弁を繰り返せば、有権者の政治不信は広がる一方だ。佐川氏と、当事者ともいえる安倍昭恵氏が国会で説明を尽くし、少なくとも麻生財務相が責任をとらなければ、有権者の理解は到底得られないだろう。


えーっと、いろんなツッコミができるのですが、
異様な取引→籠池という詐欺師に引っ掛かったからだし、そもそもあの土地はヤベエ土地
文書の改ざん→政治の関与は今のところ何にも見つかっていない
財務省の一部に責任を押し付ける→押し付けるも何も財務省の責任だよね
当事者ともいえる安倍昭恵氏が→当事者じゃなくて詐欺師の売名行為に付き合わされただけ
麻生財務相が責任を→大臣を辞めさせたかったら官僚がミスをすれば良いのか?

この記事が出た3月19日時点では政治の関与は何一つ見つけられていませんし、文書改ざん問題と学園誘致問題がごっちゃになっていて主張がめちゃくちゃです。
感情論だけで書くとこうなるという典型のような記事と言って良いでしょう。とても大御所作家センセーの発言とは思えません。
別にどんな発言や主張をしても構わないのですが、「エビデンス、ねーよそんなもん」を地で行く発言にはちょっと引いてしまいますね。「状況証拠もろくにないけどお前が犯人だよな。とっとと自供しろ」と迫る特高警察のような発言であると高村センセー自身が認識していないとするならば、それはそれで困ったことだと思います。

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内容(東京創元社HPより)
運行しているはずのない深夜バスに乗って、男は摩訶不思議な光景に遭遇した──高い評価を受けた表題作ほか、あの手この手で謎解きの面白さを描く著者再デビューの作品集。


曹源寺評価★★★★
この青木知己センセーというお方は恥ずかしながらまったく存じ上げませんでした。1969年生まれの上智大卒ということですから世代的には誉田哲也、麻耶雄嵩、長岡弘樹、薬丸岳といった大物センセー方が肩を並べるお年であります。今年50歳前後を迎える世代のセンセーには売れっ子も多く、個人的には年齢も近いので興味深く見守っている次第です。
さて、本書は青木センセーの再デビューということで2003年に発表された表題作をはじめとした短編5作で構成されたものです。
「Y駅発深夜バス」「猫矢来」「ミッシング・リング」「九人病」「特急富士」の5作品ですが、いずれも趣が異なっていてとても興味深いですね。
「Y駅発深夜バス」は運行しているはずのない深夜バスに乗り込んだ男の話で、ちょっとSFチックなところから一気に本格推理に持っていく技が読者をグッと惹きつけてくれるという見事な作品であります。
「猫矢来」は青春もの、「ミッシング・リング」は読者に答えを要求するもの、「九人病」は怪奇もの、そして「特急富士」は倒叙もの、とそれぞれまったく異なる味付けをしているのには驚かされます。

よくもまあ、これだけ味付けの異なる作品を書き分けられるなぁ

と感心します。個人的には表題作「Y駅発深夜バス」と「九人病」が良かったです。
あえて再デビューということで単行本を出したということは、今後もいろいろと作品が出てくると思って良いんですよね。これだけさまざまなジャンルに挑戦されているということで、ちょっと期待してしまいますね。センセーのご活躍を祈念しましょう。





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2018年03月20日

書評882 下村敦史「サハラの薔薇」

こんにちは、曹源寺です。

自分はその昔、といっても中学生くらいの時ですが、正義感が強くて曲がったことが大嫌いでした。それが単なる正義感からくるものなら良かったのですが、そこは中二病ですから、自分が正しい=お前は間違っている→だから矯正してやる!という、いわゆる「こじらせた」状態になっていたわけでして、自分が正しいと思ったことは絶対に曲げないし、それどころか相手を徹底的に論破しないと気が済まないような痛いヤツになっていたように思います。
こういうのを正義の押し売りとでも言うのでしょうか。当時は気持ちだけではなく態度にも現れていたように思います。こんな精神構造では仲間が増えるわけもなく、気のしれた友達はいたものの大勢で徒党を組むよりは単独で行動することの方が多かったように思います。
それが治まったのは高校生でしょうか。いっぱしの進学校に通ったおかげで自分よりも頭の良い奴らがいっぱいいたのでそれまでのプライドは一気に萎み、自己主張も影を潜めたのだと思います。

えー、つまり何が言いたいのかというと、
自分の言っていることは正しい、だから正義だ、という主張ほど当てにならないものはないということ。そして、正義とは非常に抽象的で脆いものだということ。さらに、正義の反対は悪ではなくて別の正義だということ。
こうした概念を自分のものにしないと、中二病の延長線上にしか立てていないということに気が付かなくてはなりません。30歳くらいになっても、いや、たまに50歳くらいでもこうした精神構造の人はお目にかかりますので困ったものです。特に政治家、それも野党に所属する方に多いと思うのは自分だけではないはずです。
どう論理立てしても無理筋な事案に対して、傍から見れば正当性のない理屈を捏ね回して平気な顔をしている。真正面から論破されても恥ずかしいとも思っていない。それどころか顔を真っ赤にして怒る。そして別の理屈を持ち出して自分の正当性を担保しようとするが、これもまた土台のないところに屋根を持ってくる始末であっという間に崩れ去る。この繰り返しです。見ている方が恥ずかしいのですが、自分は正しいと思っているわけで、こういう人に対する接し方というか対処の仕方を自分はついぞ知りません。どうしたら良いのでしょうかねぇ。選挙で落っこちても反省しそうにないですよこれ。

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内容(KADOKAWA HPより)
生き残るのか正義か――究極の葛藤。
エジプトで発掘調査を行う考古学者の峰の乗るフランス行きの飛行機が墜落。機内から脱出するとそこはサハラ砂漠だった。生き残った6名はオアシスを目指して沙漠を進み始めるが、食料や進路をめぐる争いが生じ……。


曹源寺評価★★★★
下村センセーの最新刊はミステリですが冒険小説的でもありました。
考古学者の峰隆介はエジプトで発掘作業を行っていた。新たな石棺の発見で沸き立つ現場だが、中に入っていたのは死後数十年しか経過していないだろうと思われる若いミイラだった。
その後なぜか発掘作業は中断され、峰はフランスの博物館から招へいされる。フランスに向かう途中で飛行機は墜落し、サハラ砂漠に取り残されることに。灼熱の地獄から脱出する決死の冒険が始まった。
主人公のほか、飛行機に同乗していた日本人やアラブ人など6名が脱出行に挑みますが、人間関係とか背景とか思惑とかいろいろなものが交錯しています。でも読みづらさはこれっぽっちもありませんので、下村センセーのリーダビリティはさすがとしか言いようがありません。
それにしても、サハラ砂漠をわずかな食料で脱出しようとすることがこれほどまでに過酷なのかということ、それに謎が次々と現れてきますので、冒険活劇とミステリがこれでもかというくらい読者に襲い掛かってくるのでちょっと重く感じる人もいるかもしれません。正直、読んでいくとのどが渇きます笑
主人公の峰はちょっと小心者であり、おまけに後ろ暗いところがあります。なんだろう、この既視感は。どこかで読んだような書き味です。あぁそうだ。とてもシニカルな主人公ばかり書きまくっていた

90年代の真保裕一センセーを思い出す

んですねこれは。「ホワイトアウト」とか「ボーダーライン」あたりは冒険小説的でもありますので、あのテイストに近いのかもしれません。水路を使って脱出するところなどホワイトアウトと同じですね。
ただ、本書は単なる逃避行ではなくて、その先に待ち構えていたのはもっともっと大きな問題でありました。よく取材されていることが随所で理解できますし、確かにこんな問題が起こってもおかしくはないだろうなあと思うと、本書の掲げるテーマの大きさにしばし思いを寄せること間違いなしです。
いろいろなものをいっぺんに詰め込み過ぎたんじゃないかという気がしないでもないですが、ストーリーは破たんしていませんし、飛躍してもいないのです。
ただ、サハラに限らず砂漠を横断しようとする時は、気温の低い夜中に行動するのではなかったか?というツッコミはしない方が良いですか?(漫画「マスターキートン」第1巻を読んだ人なら分かりますね)。





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2018年03月16日

書評881 中山七里「逃亡刑事」

こんにちは、曹源寺です。

共同通信が昨日(3/15)に配信した記事が非常に興味深い内容になっています。

政治的公平の放送法条文撤廃 党派色強い局可能に(3/15共同通信)
安倍政権が検討している放送制度改革の方針案が15日、明らかになった。テレビ、ラジオ番組の政治的公平を求めた放送法の条文を撤廃するなど、規制を緩和し自由な放送を可能にすることで、新規参入を促す構え。放送局が増えて、より多様な番組が流通することが期待される一方、党派色の強い局が登場する恐れもあり、論議を呼ぶのは必至だ。
共同通信が入手した政府の内部文書によると、規制の少ないインターネット通信と放送で異なる現行規制を一本化し、放送局に政治的公平などを義務付けた放送法4条を撤廃するとともに、放送に認められた簡便な著作権処理を通信にも適用する。
(以上)

具体的には「放送法第4条を撤廃して、みんな自由に報道していいよ、規制も取っ払うから新規参入を促すね」という趣旨です。
放送法第4条は以下の通りです。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。


第二項なんてNHKも民放もみんな守っていませんが、民放側はこれについて「倫理規定である」などと訳の分からないことを言っています。
自民党はこれを逆手にとって「なんだ、倫理規定とかいうなら取っ払っちゃってもいいよね」ということで撤廃の方向に持っていこうとしているようです。
マスゴミが安倍政権の倒閣運動さながらに森友のやつを過熱報道しているのは、この法改正を阻止しようとしているのが目的なのではないかと勘繰ってしまいます。

個人的には法改正に全面賛成ではありません。やはり「電波オークション導入」と「クロスオーナーシップの廃止」さらには「総務省天下りの廃止」くらいやらないと適正な競争環境は整備されないのではないかと思うのです。まあ、取っ掛かりとして4条撤廃から入るのはアリだと思います。
何度も書きますが、電波オークションを導入していない先進国は日本だけです。一時期あれだけ「規制緩和で市場を活性化させろ」と騒いだマスゴミ、特にテレビ局こそがまったく規制緩和されていないまんまだったというオチは、もっと広く知らしめなければならない事柄だと改めて思い直しました。

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内容(PHP研究所HPより)
刑事殺しの容疑をかけられた千葉県警の高頭冴子は、彼女の無実を証明できる目撃者の少年を守りつつ逃げる羽目に。緊迫のミステリー。
(解説)
県警内部、全員敵!? 千葉県警の警察官が殺された。捜査にあたるのは、県警捜査一課で検挙率トップの班を率いる警部・高頭冴子。陰で〈アマゾネス〉と呼ばれる彼女は、事件の目撃者である八歳の少年・御堂猛から話を聞くことに。そこで猛が犯人だと示したのは、意外な人物だった……。
思わぬことから殺人事件の濡れ衣を着せられた冴子。自分の無実を証明できる猛を連れて逃げ続ける彼女に、逆転の目はあるのか!? 冴子は真犯人にどう立ち向かうのか? どんでん返しの帝王と呼ばれる著者が贈る、息をもつかせぬノンストップ・ミステリー。


曹源寺評価★★★★
中山センセーが新たな警察小説を出してきました。今度は女刑事ですよ。
32歳、独身、身長180センチ、検挙率トップ。県警内でのあだ名は「アマゾネス」、ってすげえキャラですね。その千葉県警捜査一課の班長である女刑事、高頭冴子が主人公です。
県警の組織犯罪対策部薬物銃器対策課の生田巡査部長が何者かに射殺された。目撃者は児童保護施設の御堂猛。猛は犯人の顔を覚えていたが、その人物は。。。濡れ衣を着せられて猛とともに逃亡を余儀なくされた冴子は思いもつかない手段で身を隠し、そして反撃に出る。
確かにこれはノンストップアクション。犯人は第一章で明らかになりますが、そこからの展開は最後まで予想がつかないものでありました。濡れ衣を着せられるということはすなわち、(ネタバレというかなんというか)
そうですね、濡れ衣を着せることができるやつが犯人ということです。具体的に言うと、証拠をねつ造したり、口封じをしようとしたりすることができるということですね。
逃亡してからの展開はなかなかに奇抜ですので、新鮮といえば新鮮でしょう。ラストも黒幕相手に大見得を切るところなど最高です。
あと、中山作品に最近欠かせないシリーズものの登場人物が名前だけ出てくるのはちょっと楽しいですね。
しかし、それにしても

女刑事の「冴子」率は異常

です。なんでみんな冴子なんですかね。あの「Gメン75」では津村冴子警部補というのを江波杏子さんが演じておられましたね。漫画「シティーハンター」では野上冴子、テレビドラマでは「緋色冴子シリーズ」、、、おなかいっぱいですわ。





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posted by 曹源寺 at 16:43| Comment(0) | な行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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