ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2017年06月13日

書評810 黒川博行「果鋭」

こんにちは、曹源寺です。

そういえば、今月の5日にサウジアラビアとエジプト、バーレーン、UAE、イエメンの5カ国がカタールとの国交を断絶しました(その後、モルディブも加わって6カ国に)。これって国際的にはすげえニュースなはずですが、国内ではあまり大きな扱いになっていません。中東の危機は日本の危機に直結する大きな問題ですので、引き続きウォッチしていきたいですね。
国交が途絶えると、陸路、空路、海路のすべてが封鎖され、国境も封鎖されます。そして外交官は国外に追放されます。上空を飛ぶ飛行機も迂回しなければいけません。
断交とはそういうものです。
話し合っても分かり合えないということは往々にして起こりうるという、ごく当たり前のことが分からない人たちというのも存在します。現にこうやって国交を断絶させている国々に対して「話し合いが足りないのだ!もっともっと話し合え!」というのは愚かなことです。話し合ったから決裂したのであって、結論が出たから断交したのであります。
逆に言えば、決裂するまで話し合っていないほうがおかしい、ということも言えるのではないでしょうか。ビジネスの世界では普通に決裂しますよね。価格が折り合わなかったり、納期が間に合わなかったりで。それと同じことが外交にも言えるのですが、脳みそがお花畑な人たちは「話し合えばなんでも分かり合える」と思っているのかもしれません。分かり合う必要はなくて、結論が出せればそれでよいのではないかと思います。
戦争反対を口にする人のなかには「戦争が何の前触れもなくいきなり起こる」と思っている人がたまにいるようですが、断交は戦争の一歩か二歩手前の場合が多いのであります。
こうした動きのほうが北朝鮮の話題とか共謀罪などといって騒いでいるよりよっぽど「戦争の危機」であると思うのですが。


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内容(幻冬舎HPより)
右も左も腐れか狸や! 元刑事の名コンビがマトにかけたのはパチンコ業界。 出玉の遠隔操作、極道顔負けの集金力、警察との癒着……。 我欲にまみれた20兆円産業の闇を突く。 堀内信也、40歳。元々は大阪府警の刑事だが、恐喝が監察にばれて依願退職。不動産業界に拾われるも、暴力団と揉めて腹と尻を刺され、生死の境をさまよった。左下肢の障害が残り、歩行に杖が欠かせなくなる。シノギはなくなり、女にも逃げられる……。救ったのは府警時代の相棒、伊達誠一。伊達は脅迫を受けたパチンコホールのオーナーを助けるため、堀内に協力を求めてきた。パチンコ業界――。そこには暴力団、警察も入り乱れ、私腹を肥やそうとする輩がうごめいていた。堀内は己の再生も賭け、伊達とともに危険に身をさらしながら切り込んでいく。


曹源寺評価★★★★
悪果」「繚乱」に続く大阪の元悪徳警察官、堀内&伊達のコンビが活躍するシリーズ第3弾です。この「堀内&伊達」シリーズと「疫病神」シリーズが黒川センセーの本領発揮ではないかと思うのですが、この2つのシリーズに共通するのは「悪には悪で」というガチンコの駆け引きであり、裏社会のルールに則りながらもしつこいくらいに金に群がる構図であり、身体(時には命)を張って勝負に出るという男の世界であります。
前作のラストでチンピラに撃たれ、杖をつくはめになった堀内と、競売物件でサバキを精力的に行っている伊達。半ば引きこもりのようになってしまった堀内に対して、伊達は何かと世話を焼いてくれます。
伊達のあいさつは「堀やん、メシ食いに行こ」であります。
その伊達がいわゆる「シノギ」の案件を堀内とともに譲り受け、人の弱みに付け込んで金を脅し取ろうとしている奴らと対峙するといういつものパターンであります。
今回はパチンコ業界を舞台に、裏で悪徳の限りを尽くしている輩どもを成敗(!という名のゆすり、たかり、脅し)していく痛快なストーリーとなっています。
まあ、パチンコ業界が警察とずぶずぶの関係であるとか、北朝鮮への送金ルートになっているとか、出玉の調整がコンピュータ化されていて「遠隔操作」も日常的になっているとか、もう自分のなかでは旧知の事実でありましたが、それでも黒川センセーは綿密な取材に裏打ちされた膨大な「業界の闇」をさくっと切り取っていただきました。非常に分かりやすいです。

それにしてもこの二人のフットワークの軽さといったら、、、、、

警察の看板がなくても怖いもの知らず、悪い奴には容赦しない、この二人も十分に「悪」なのですが、そこはラストにきちんと帳尻が合うようにできております。
決してハッピーエンドになることはありませんが、かといってムナクソ悪いバッドエンドでもない。登場人物のほとんどが悪人なので、マイナス×マイナス=プラスのような図式で、それはそれで納得できる結末でありました。





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2017年06月09日

書評809 石持浅海「鎮憎師」

こんにちは、曹源寺です。

ゼロ戦里帰りプロジェクト」というのがありまして、先日は現代の空にゼロ戦を飛ばしている姿が話題になっていました。
そこに噛み付いたのが「AERA」の記者、竹下郁子氏であります。氏はツイッターで「TLに零戦を讃える人がたくさんいて、考え込んでしまう。「平和を考える機会」にはなってないようだけど」と書き込んで炎上してしまいました。
詳細はTogetterなどにまとめられていますのでそちらをご覧いただくとして、ここで自分が考えさせられたのは次の1点に集約されます。それは
・「兵器」と「文化遺産」の境界線と、文化遺産に精神性を求めることの是非
です。
竹下氏とその他の方々のツイートで中心となったのは「熊本城だって兵器ですよ」「ゼロ戦の復活を否定するなら熊本城の復興も否定しないのはおかしい」といったツイートに対して、竹下氏は「熊本城ゼロ戦を同一視するのは理解できない」「戦争への反省と「零戦カッコイイ〜」が両立する精神状態というのがマジで分からん」「頭が痛い...。これはきちんと記事にした方がいいな」といったやりとりです。
おそらくですが、竹下氏にとってはゼロ戦も戦艦大和も単なる殺人兵器でしかなくて、その一方で熊本城や姫路城は貴重な文化遺産という「刷り込み」がなされているのでしょう。その刷り込みは兵器に精神性を持たせていることの証左でもあると思います。
自分は日本刀であれ戦車であれ、ましてや戦闘機であれ、それらは武器・兵器であって殺人の道具であることを否定しませんが、そこに「だからこれを見て戦争を反省しろ」とか言うのはおかしいのではないかと思うのです。戦争を仕掛けるのは人間であって、兵器は道具でしかないわけです。道具=モノに精神性を持たせるのは単なるレッテル貼りであって、「象徴」を作り出したいだけの行為でしかないと思います。最近では「戦犯旗」などといっていちゃもんをつけてくる輩などがそうですね。
ツイートのなかには「ゼロ戦の技術陣は、戦後のYS11の設計にも関わり、爆撃機「銀河」の技術は、新幹線の車体の設計に応用、地対空誘導弾「奮龍」のVHFによる誘導技術は、テレビジョン放送に生かされた。」といった技術論からの反駁もありましたが、この辺はあまり論点になっていません。中心になっていたのは「熊本城とゼロ戦は同じ兵器なのだからゼロ戦復活を否定するのは熊本城復興を否定するのと同じ」「ゼロ戦と熊本城では歴史的経緯が違うのでそこを見逃していてはいけない」というように、兵器なのか文化遺産なのか、あるいは精神的な価値の違いを認めるべきなのか、といった点に集約されそうです。
深読みしていくと、「兵器が文化遺産になるためには歴史を積み重ねなければいけない」といった論調が見え隠れしていました。本当にそうなのかなあ。もしそうだとするなら、その転換点はどこにあるのかなあ。東京湾に浮かぶ猿島の砲台跡は兵器としての価値はありませんが、横須賀市は文化遺産的な扱いをしていますね。逆に兵器としての有用性を失っているから文化遺産になりうるのか。ゼロ戦はF35と戦ったらあっという間に負けるでしょうから、すでに兵器としての価値はないと思いますが。

まあ、個人的な結論としては、ゼロ戦が飛行する姿を見て元気をもらった人も大勢いらっしゃるわけで、なんでもかんでもアレルギー反応のように「戦争を賛美するな」「過去の戦争への反省が足りない!」などと目くじらを立てる人は「文化遺産」と「兵器」の境界線に関する考察が足りていないということと、技術的な意味をはじめとした多様な見方があることさえも否定して、レッテルを貼ることで思考停止しているということが言えるのではないかと思います。

※ツイッターから複数の引用をさせていただきましたこと、お許しください。

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内容(光文社HPより)
赤垣真穂は学生時代のサークル仲間の結婚式の二次会に招かれた。その翌日、仲間の一人が死体となって発見される。これは、三年前にあった“事件”の復讐なのか!?
真穂は叔父から「鎮憎師」なる人物を紹介される……。
「ちんぞうし?」
わたしは訊き返した。知らない言葉だ。
「そう」順司叔父は、前方を見ながらうなずいた。「『憎しみを鎮める人』ってくらいの意味だよ(中略)鎮魂という意味じゃない。事件の話を聞いて、上手に終わらせる方法を考えてくれる人だ」(本文より)


曹源寺評価★★★★★
石持センセー久々の長編であります。
横浜理科大学のテニスサークルOBOGが久しぶりに仲間の結婚式二次会に集結した。そこには3年前に彼氏に殺されかけた女性、熊木夏蓮がサプライズで登場した。熊木は事件後に地元の広島に帰っていたため、誰もその行方を知らなかったが、二次会幹事の桶川ひろみが探し当てたのだ。久々の邂逅に喜ぶ7人の仲間だったが、翌日、熊木は渋谷の路上で変死体となって発見された。
3年前の事件と今回の事件、人間模様がさまざまに交錯したなかで浮かび上がるのは「復讐」であった。次の殺人を止めるために真穂は弁護士の伯父に相談する。そこで紹介されたのは吉祥寺に住む「鎮憎師」なる人物だった。
うーん、久々の長編でしたが、正直イマイチかなぁ。
主人公の真穂を含め、7人のサークル仲間が容疑者になる設定ですので、本格ミステリなどにありそうな展開を期待してしまいました。容疑者の絞り込みの過程や、推理を働かせていく展開はそれなりに読めます。
しかし、タイトルの「鎮憎師」なる沖田という男(とその妹)がですね、(ネタバレ注意)

全然仕事してねえ

んですよ。
中盤とラストにちょこっと出てきただけで、ちょっと一言告げてみた、というくらいしか登場してこないんですね。なんじゃこりゃ。
中盤は非常に退屈で、中だるみという単語が浮かびます。ちっとも進まない展開にイライラです。ラストもなんだかショボーンな感じで、犯人がどうやって殺害したのかとか、紐はどうやって調達したのか、とか言及もありません。
そもそも、この事件は警察が1日で解決できる程度の謎でしかないので、何週間も引っ張るはずがないのです(容疑者全員の○○を調べれば一発というレベル)。こうしたリアリティに欠けるレベルのミステリはどうしても途中で冷めてしまいます。
オープニングはかなりショッキングな始まり方をしますので、期待してしまいましたが、

本筋とは何にも関係なかったりして

それも落胆の原因だったりします。いろいろな意味で残念な一冊でした。





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posted by 曹源寺 at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | あ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月06日

書評808 薬丸岳「ガーディアン」

こんにちは、曹源寺です。

お隣の国、韓国ではまたしても鶏インフルエンザが猛威を振るっているようです。
世界的に見ても、この20年くらいは動物の感染症が人に転移して新たな病原菌となる、あるいはなる危険性が高まっているといった事例が後を絶ちません。動物と人間の距離は縮まっているようには思えませんが、免疫学や獣医学のような分野の研究は引き続き高い需要が見込まれるのではないかと思います。

国会では加計学園の問題(何が問題なのか分かりませんが)が尾を引いていますが、少なくとも獣医学部の新設に関する疑義(なぜ加計学園なのか)は完全にでっちあげです。いまだに大手マスゴミが騒いでいるのが信じられません。
大手が報じていないことを列挙してみましょう。
・(菅官房長官がコメントしていますが)特区による誘致はそもそも民主党政権時代に決まっていること
・それを文科省が怠慢で何にもやっていなかったから「早くしろ」と自民党政権が急かしていたこと
・加計学園は15年も誘致活動を行ってきたこと
・愛媛新聞は長年の努力によって誘致に成功したことを成果として報道していること
・愛媛県の前知事も実績として胸を張っていること(前川喜平前事務次官を批判していること)
・メールを追及している民進党玉木雄一郎議員本人が日本獣医師会から100万円の献金を受けていること
・四国の高校生が獣医師になろうとしたら、どんなに近くても鳥取大学か山口大学、大阪府立大学を目指さなければならないこと

特に最後の件は、教育機会の平等をうたう民進党においては自民党以上に進めるべき案件であるはずだと思うのですが、なぜか四国の学生のことはどうでもいいですかそうですか。
地方の学生が実家を離れ、大学のある都市で一人暮らしをしようとすれば、下宿代、光熱費、食費、その他雑費等々で毎月いくらかかると思っているのか。まあ、医学系の場合はその投資に見合うリターンが期待できますけれども、それでも結構な費用です。
大学の無償化を法整備しようとしている野党は、言っていることとやっていることがだいぶ違うのではないかと思います。また、それを報じないマスゴミもふだんは「弱者に寄り添う」とか言いながら、こういうときは寄り添わないですね。

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内容(講談社HPより)
匿名生徒による自警団「ガーディアン」が治安を守る中学校に赴任した秋葉は、問題が少なく安堵する。ガーディアンのメンバーは、問題のある生徒らに「制裁」を行っていた。相次ぐ長期欠席を怪しんだ秋葉が生徒の身を案じるが、同僚は激務に疲弊し事なかれ主義だ。秋葉が学校の秘密に気づくと、少年少女は一変し、天国から地獄に叩き落とされる。大人と子供の思惑が幾重にも交差し――薬丸岳史上最大級の衝撃があなたの胸を打つ!


曹源寺評価★★★★★
少年犯罪をテーマにすることの多い薬丸センセーが、実は初めて学校を舞台にして書き上げたのが本書であります。
そういえば、石持浅海センセーが同名の小説を出しておられますが、その内容はもっとホラーというか非現実的だったような気がします。
本書は都内の石原中学校に赴任した教師、秋葉悟郎を主人公として、学校内に組織されている謎の自警団「ガーディアン」と対峙するお話です。
秋葉は赴任して半年、平和で問題の少ない学校であることにかえって違和感を覚えていた。ある生徒が学校を休み、それが数日も続いていたことからその奇妙な違和感の正体に気がついた。長期で休んでいる生徒が18人もいるというのだ。そう、彼らはガーディアンによって制裁を加えられていたのであるが、秋葉はその存在に気付くのは自分が顧問を務める演劇部の部員が欠席となったからであった。
秋葉はガーディアンの正体を突き止めようとするが、そこには教師と生徒、それぞれに思惑と深謀があった。。。
教師が信用できないから自警団を結成した――とあれば、教師の取るべき態度は次の2通りになるのでしょうか。
「ならば信用されるようにがんばろう」

「ならばこっちも自警団を利用してやろう」
か。
こうした思いが交錯するなかで、学校全体を巻き込んで教師たちが苦悩と煩悶を打ち明けていきます。
でもなぜか、最後はちょっといい話でするっと終わっていきます。

ん、あれ、なんか予想していたのと違うなあ

という印象でした。なんというか、違和感みたいなものを覚えたんですが、これなんだろう。
おそらくですが、作者の本当に言いたいことと読者が読みたかったことがずれているのではないか。
(以下、ややネタバレ)薬丸センセー的には、ガーディアンによる統治によって起こるリスクは学校の平和と引き換えになるものではないだろう、というものなのかもしれませんが、この前半から中盤にかけてのストーリー展開では読者として「ガーディアンの自滅」か「夏目刑事による事件解決」なのではないかと思うのであります。
せっかく(ファンにはおなじみの)夏目刑事まで登場させておいて、ほんのチョイ役でしかなかったこの扱いに、ちょっと落胆してしまうのです。
それにしても、ラストの4行は何を意味するのだろうか?最後の最後にひっくり返したのか?いい話だと思ったら実は違っていたのか。なんとも言えない気持ちにさせられてしまいました。





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posted by 曹源寺 at 14:49| Comment(0) | TrackBack(0) | や行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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