ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2022年12月06日

書評1280 歌野晶午「首切り島の一夜」(2022/12/6)

こんにちは、曹源寺です。

ツイッターがイーロン・マスク氏のおかげで平和な場所になったという話題を書いたことがありますが、それはあくまでもポリティカルな部分であって、人間の持つ陰湿な感情の吐露が渦巻いている場所であることには変わりがないようです。

「ブス」「調子乗りすぎ」 W杯で脚光「美人すぎるサポーター」に中傷被害...激励の声に本人感謝(2022/12/6J-CASTニュース)
サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会をめぐり「美人過ぎるサポーター」として一躍話題になった、ガールズバンドPARADOXXのドラム・SHONOさんが2022年12月5日、自身へのエールにツイッターで感謝した。
「ありがとうございます......」
W杯グループステージの日本対ドイツ戦の国際映像に映ったことで、「美人サポーター」「ワールドクラス美女」と話題になっていたSHONOさん。一躍ブレークし、テレビなどのメディアにも多く出演。日本が強豪国に次々勝利したことから、「勝利の女神」とも呼ばれていた。
一方、SHONOさんの名前があまりにも急激に広まったことが影響してか、ツイッターアカウントに直接、「ブス」などと容姿をあげつらったり、「いちいち調子乗んな」と暴言を吐いたりするなど、心無い声を送るユーザーが出る事態となっていた。
そうした中で、ある一般ユーザーがSHONOさんについて、
「こんな世界クラス美人日本におったん!?ぐらい私は衝撃受けたんだけど、ネットの反応見ると『美人でない』『調子に乗りすぎ』とかアンチばっかなの何!?!?! 人々が美人に対して敵意をむく瞬間何!?」
などとエールを送った。投稿は5万件を超えるいいねが寄せられるなど、反響を呼んだ。
この投稿にはSHONOさん本人も反応。「嬉しいです ありがとうございます......」と感謝をつづっていた。

(以上)

本人にしてみれば、W杯で勝手に話題にされて勝手に悪口を書かれてしまい、いい迷惑ですよね。これでバッシングを受けるのは完全にもらい事故です。
自分は言霊の力みたいなものを信じています。これは、「感情を言語化すると心が整理される」という心理学的な効果ではないかと同義ではないかと推察しているのですが、つまりどういうことかというと、もやもやとした感情があって、その気持ちをノートに書き連ねていくとちょっとすっきりした気分になったりすることがあります。誰かにこの気持ちをぶつけたい!というのと似ていますが、言語にしてノートにぶつけるとちょっとすっきりするんですよね。

でも、そこに書き出した感情は最終的に自分に跳ね返ってくるのではないかとも思うのです。日常的に負の感情で心が満たされている人は、湧き出してくるマイナスの気持ちを処理できなくて、最終的には誰かに吐き出すかツイッターみたいな場所で書き連ねるかして発散させている。そんな日常が続けば自分の周囲にはいつの間にかこの吐き出したマイナスの感情が自分を覆ってしまっていて、なおかつ、感情のベクトルがマイナスの方にばかり向かってしまうという悪い循環に陥ってしまうのではないかと考えるのです。

自分はそういう人間にはなりたくないです。
Twitterにはこうした落とし穴があるのではないかと思っていて、一時的な感情の吐き出し口になってしまっている人は自分の周囲に巻き散らかした毒がたまっていないか見たほうが良いと思います。

いまTwitterで最もバッシングを受けている人は杉田水脈議員ではないかと思うくらい、マスコミの記事がうなりを上げていますが、その発言の主旨は「LGBTには生産性がない」というやつです。発言したのはかなり昔のことですが、今このタイミングで集団リンチのように記事が出ているのは何かの陰謀ではないかと思うくらいの勢いです。
同じ主旨の発言を菅直人議員もしているのですが、それに対して批判している人はほとんどいません。

杉田氏を批判している人のひとりに水島広子元衆議院議員がいますが、このお方は精神科医でもあります。そんな肩書の方が「杉田水脈は発達関係の問題がある。政府からお引き取り願うしかない」とつぶやいてしまい、絶賛炎上中であります。
「杉田総務政務官( @MioSugita )は、発達関係の問題がある人」by 精神科医 水島広子( @MizushimaHiroko )

こうなると、発達関係に問題がある=発達障害と普通の人は考えますから、「発達障害は政治の世界に行ってはいけないのか」という批判が巻き起こるのは致し方ないでしょう。本人は「そうは言っていない」と否定していますが、差別的発言を差別的発言で返すという悪手になってしまったのであります。

人を呪わば穴二つ。悪口は自己紹介。


と書いておきながら、本日の書評はちょっと批判的ではあります。。。

内容(講談社HPより)
壮年の男女と元教師が四十年ぶりに修学旅行を再現した同窓会を企画する。
行き先は濤海灘に浮かぶ弥陀華島、別名星見島とも言われる離島。
宴席で久我陽一郎は、当時自分たちの高校をモデルにミステリを書いていたと告白する。
その夜、宿泊先で久我の死体が発見される。
折悪しく荒天のため、船が運航できず、天候が回復するまで捜査員は来られない。
宿にとどまった七人は、一夜それぞれの思いにふける……。
彼ら一人ひとりが隠している真実は、事件の全容をあきらかにするのか──。


曹源寺評価★★★★★
本書に関しては最初からネタバレっぽく書かせていただきます。ご了承ください。
<読む前の感想>
おぉ、久々の歌野晶午センセー、しかも長編。タイトルもいいねえ。単行本で400ページを超える大作だ。本格ミステリの匂いがするぞ。
<読み始めの感想>
首切り島の一夜、ってクローズドサークル系かな。同窓会で集まる中高年とその恩師たち。序盤から一人が死体で発見される。ワクワク感が止まりませんな。
<中盤での感想>
あれ、回想シーンが続くなぁ。この中に事件のヒントが隠されているのかもしれないぞ。仕掛けが施されているならしっかり読んでおかないと。歌野センセーのこのどうしようもなくくだらない会話の中にヒントがあるのかなぁ。
<後半の感想>
あれ、個人の回想シーンにつながりがないなぁ。オレの読解力が足りないのかな。それにしてもこの三上友花ってのはヤベえやつだな。
<読後の感想>

この本は一体なんだったのだ。。。

本作の評価にはちょっと困ってしまいました。
正直言うと、面白くないんですよ。これっぽっちも。
仕掛けはあるようでない。どんでん返しもない。最後に取ってつけたような解決編。これで面白かったと思う人はいるのか?というくらい陳腐な結末。なぜこんな終わり方をしたのか。これを世に出した理由は何なのだ?といろいろなことを考えさせてくれるのですが、これと言った結論は導かれないまま今に至ります。
唯一、前向きに考えた結論としては「本格ミステリへのアンチテーゼ」ではないか?というものですが、いかがでしょう。それっぽいタイトル、同窓会という舞台、人が死ぬ事件発生、それぞれのエピソードから何かが紐解かれる、そして、、、みたいな期待感からのあっけない裏切り。そう考えると少し納得できるのですが、逆に言うとそれ以外は答えが見つからないです。

昔読んだミステリで、語り部が犯人だったというやつがありましたが、あの時は驚きが失望に変わったのを覚えています。本書は失望から深い思索に変わったのであります。共通するのはそこに「期待を上回る何か」が存在しないことでしょうか。食べ物などは良い例ですが、口に運んだ時に期待を上回る味に出くわすと衝撃が走ります。小説でもそういう作品なら大歓迎ですが、期待させておいてがっかりさせるのは最もやってはいけないことだと思うのです。

#首切り島の一夜
#歌野晶午
#本格ミステリ

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2022年12月02日

書評1279 中山七里「越境刑事」(2022/12/2)

こんにちは、曹源寺です。

ちょっとお休みをいただきました。
もう12月ですね。月日の経つのは本当に早いものです。今年は尿管結石を患い、コロナに罹り、実父が亡くなり、BMIも25になり、いろいろとドタバタが続きました。あと一か月、平穏に新年を迎えたいものです。

さて、先日は草津温泉のある草津町での騒動を話題にしました(11/18)が、その続きで朝日新聞社系のAERAドットがこんな記事を出していたので全文引用しながらツッコミを入れたいと思います。
少々長いですが、お付き合いください。

「性被害は虚偽」として元草津町議を在宅起訴 本人の言葉で何が語られるのかを注視したい(2022/12/1Aeradot.)
10月31日、群馬県草津町の元町議・新井祥子さんが、草津町長に対する名誉毀損と性被害の虚偽告訴の罪で在宅起訴された。裁判で真実が明らかになることを願っているが、SNS上では、起訴=有罪とばかりに、新井さんを責め立てる声が大きくなりつつある。
草津町で起きたことの経緯を、改めて記しておこう。

2019年11月、新井町議(当時)が、町長から性被害を受けたと電子書籍(飯塚玲児著『草津温泉 漆黒の闇5』)で告発した。町長は新井氏と著者を名誉毀損で刑事と民事で訴え、自身の潔白を主張した。また同年12月2日の町議会は、新井氏を「議員としての品位を著しく汚した」として除名処分している。一方、新井氏は除名処分を不服とし群馬県知事に申し立て、その結果、20年8月に除名処分は取り消されるのだが、今度は議長らが率先し、新井氏のリコールを問う住民投票を求める署名運動をはじめた。草津町は有権者約5000人、その3分の1以上が署名したため住民投票が行われ、新井氏は議席を失った。その後、新井氏は21年12月に町長を強制わいせつ容疑で刑事告訴したが、こちらは不起訴になった。来年1月には、町長がおこした名誉毀損の民事裁判で、新井氏自身が法廷に立つ。その矢先の在宅起訴だった。

私が新井氏と初めて連絡を取ったのは、リコール投票を間近に控えた20年11月だ。日本を代表する温泉町の「スキャンダル」は、テレビの情報番組でも取りあげられていたので知ってはいたが、遠巻きに眺めているにすぎなかった。インタビューに答える新井氏が、「私はおばさんだし」と自虐的に語ったり、性被害を「肉体関係」と表していたり、また、新井氏の告発のきっかけとなった電子書籍は、性的スキャンダルに重点を置いた内容だったこともあり、私自身が関わることではないと考えていた。

ところがリコール運動が激しさを増すにつれ、新井氏の置かれている現状をSNSで見聞きすることが増えてきた。発信者の多くは女性政治家たちだった。性被害の声をあげた女性議員が数の力でリコールに追いやられている現実を、「これは現代の魔女狩りだ」という危機感をもって、女性政治家たちが語っていた。そこで初めてネットで公開されている草津町議会を視聴し、そこで繰り広げられていたことに衝撃を受けたのだった。

国会は傍聴したことはあっても、自分の住む地域の議会も傍聴したことは、それまで一度もなかったが、そこは国会以上に男しかいない場所であった。職員を含めて男性ばかりの議場で、激しいヤジが飛び、議員らが新井氏を責め立てる議会には衝撃を受けた。事実については誰も判断できる立場ではないはずだが、一方的に新井氏を「うそつき」と決めつけ、議員らが率先してリコール運動をするのかと驚いた。

そこで知人を通して新井氏に連絡を取り、実際に草津町議会の傍聴をすることにしたのだった。私が傍聴したのは20年の12月1日、リコール直前の議会だった。その様子はこのコラムでも記したが、傍聴席には高齢男性たちが並び、新井氏にむかって「うそつき」「(あんな女とは)犬でもしない」など激しい言葉で罵っていた。それは議会というより、新井氏が裁かれる現場のようだった。

さらにその10日後の20年12月11日、新井氏が主催者となり、草津町でフラワーデモが開催されて私も参加した。15人ほどの小さな集まりだったが、司法での決着を待たずに新井氏の訴えをうそと断定し、議員自らがリコール運動を率先していることに問題を感じるジャーナリストや性被害当事者、支援者らが集まった。草津町でデモをしたこと自体が風評被害という声もあるが、デモはこの国の人が持つ権利である。また、その際に、「#セカンドレイプの町草津」というプラカードを持っていた人たちもいたが、これは「性被害があった」ことを事実として問題にしたのではなく、性被害を訴えた女性議員に対するリコール運動や議場での激しいヤジに対する抗議であった。

今、新井氏がどのような状況にあるのかは分からない。新井氏を信じ、裁判費用の寄付などもしてきた支援者への説明はすべきだとメールはしたが、今の時点で返信はない。今はただ裁判を通して、事実が明らかになることを望んでいる。

SNSでは、支援者やこの件についての記事を書いた者への謝罪を求めるような声もあがっているが、支援者たちに謝罪を求めるのは間違いだ。支援者は被害者を選ばない。少なくとも私は、フラワーデモを通して、被害者は選ばないと決めた。たとえば伊藤詩織さんのとき、当初、私は詩織さんの闘いに関わらなかった。残酷な言い方をすれば、「詩織さんがどういう人か知らなかった」からだ。詩織さんの闘いを支えなければと思ったのは、詩織さんが声をあげた17年5月から1年以上を経た18年の秋だ。韓国の#MeToo運動などを見て「韓国ってすごいな〜」と感心する一方で、詩織さんの#MeTooを遠巻きに見ている自分に嫌気が差したのだ。「被害者と加害者を同じステージにあげて、どちらが正しいのか社会が判断する」という判断をする側に自分は立つべきではないと決めた。まずは被害者の声を聞く、というところに立つ。それが性被害を語りやすくし、性暴力を根絶し、誰も加害者にさせないための一歩だと、性被害者たちの絶望の淵に立つ声が教えてくれた。

私はそのようにして、新井さんの声を聞いてきた一人である。それは新井さんの声に寄り添おうとした多くの当事者、支援者の思いでもあるだろう。今は、裁判で事実が明らかになることを期待したい。そして新井さん自身の言葉で何が語られるのかを注視したい。

(ここまで)

この文章を書いた北原みのり氏は、性被害事件などではちょくちょく寄稿される有名人です。靖国神社でヌードを披露した人としてネトウヨからは攻撃の対象になっています。

本日は上記記事の赤い部分について突っ込んでいきたいと思います。

そこは国会以上に男しかいない場所であった。職員を含めて男性ばかりの議場で、激しいヤジが飛び、議員らが新井氏を責め立てる議会には衝撃を受けた。
→草津町議会のHPを見ても確かに男性しかいないような状況ですが、地方議会なんてこんなもんです。選挙=民意の結果ですから女性がいなくてもそれは甘受すべきでしょう。男性しかいなくて一人の女性を攻撃しているのはおかしい、と主張するのは筋が違う話ですね。

司法での決着を待たずに新井氏の訴えをうそと断定し、議員自らがリコール運動を率先している
→リコールは市民の権利ですから、司法の決着と切り離して行動することに何の制約はありません。議員だろうが市民活動家だろうがその権利は認められなければなりません。

その際に、「#セカンドレイプの町草津」というプラカードを持っていた人たちもいたが、これは「性被害があった」ことを事実として問題にしたのではなく、性被害を訴えた女性議員に対するリコール運動や議場での激しいヤジに対する抗議であった。
→先日も書きましたが「主語が大きい」人たちによる弊害がまさにこれです。いくら言い訳をしても「#セカンドレイプの町草津」は草津町の人々に対する名誉棄損である可能性は高いでしょう。支援者は抗議の仕方を完全に間違えています。取ってつけたような言い訳であり、町民の怒りが収まるわけはありません。

今、新井氏がどのような状況にあるのかは分からない。
→新井氏と連絡取り合えていないんですね。

今の時点で返信はない。
→新井氏と連絡取り合えていないんですね。

支援者たちに謝罪を求めるのは間違いだ。
→支援者たちは草津町民に対する名誉棄損を行ったわけですから、謝罪を求められるのは間違っていないと思います。この件で支援者(というか乗っかっちゃった人)がほとんど謝罪していないことの方がものすごく違和感ありますね。

少なくとも私は、フラワーデモを通して、被害者は選ばないと決めた。
→そのスタンスにケチをつけるつもりはありませんが、新井氏の場合は被害者ではなくて加害者の可能性大です。加害者の場合はどうするんですかね。

「被害者と加害者を同じステージにあげて、どちらが正しいのか社会が判断する」という判断をする側に自分は立つべきではないと決めた。
→この文面は北原氏はご自身のことをジャーナリスト(に必要な公正中立な立場)ではないと明確に宣言していますので、読む方もそのつもりで読まなければならないということですね。

それは新井さんの声に寄り添おうとした多くの当事者、支援者の思いでもあるだろう。
→新井氏に寄り添ってきた一人として記事を書いたので、そのつもりで読めよな!という宣言と受け止められます。でも、新井氏からの返事はないんですよね。

だらだらと書いてしまいましたが、つまりは北原氏が「見守りたい」としている新井氏の所業については何ら問うておらず、「見守りたい」と言いながら自身の応援の責任を回避しようとしているのが見え見えの記事である、と言わざるを得ない内容になっているのだということです。

しかも、新井氏は支援者とのコンタクトも避けている様子が伺えます。ご自身に正義があるのであれば、支援者にもっと訴えて然るべしですが、新井氏は支援者からも逃げているようです。この時点で北原氏も薄々と感じているのではないかと思います。この記事からはその薄々を感じている部分を読み取ることはできませんが、「見守りたい(涙目)」と書いた時点で突き放していると考えることもできますから、まあそうなんでしょうね。

自分もこの草津町の問題については引き続き見守りたい()と思います。

それにしても、こんな文章で媒体に載っちゃうんだね。

内容(PHP研究所HPより)
『逃亡刑事』の高頭冴子シリーズ第二弾!
“県警のアマゾネス”の異名を持つ千葉県警の高頭冴子は、留学生の不審な失踪が相次いでいるという噂を耳にする。その数日後、中国国籍で新疆ウイグル自治区出身の留学生カーリの死体が発見された。捜査に乗り出した冴子は、事件に中国公安部が絡んでいることを掴むも、カーリの雇い主のカーディルも殺害される。冴子に保護を求めていたカーリの同僚のレイハンも連れ去られてしまい、その容疑者は逃亡。レイハンを救い、事件の真相を暴くため、冴子と部下の郡山は中国への捜査を強行するが、そこで二人が目にしたのはウイグル民族が置かれた恐るべき状況だった――


曹源寺評価★★★★
逃亡刑事」で活躍した高頭冴子を主人公としたシリーズ第2弾です。
今回は県内で相次いで発生している外国人留学生の失踪事件を受けて捜査を開始しようとしているなかで、新疆ウイグル自治区出身の留学生が死体で発見されるという事件が発生。被害者であるカーリが働く店のカーディルも殺害され、カーリの友人であるレイハンも連れ去られてしまう。
中国公安部の仕業と判断した冴子は部下の郡山とともに中国に向かうという荒業に挑むのだが、、、
「千葉県警のアマゾネス」という異名を持つ高頭冴子が、中国公安部とガチのケンカに挑むというなかなかに無謀なストーリーを描いていただきました。

この点だけでも偉大なる挑戦者の称号が与えられて然るべし

だと思います。中山センセー、すごすぎです。
本書ではさらに、ウイグル自治区で行われているナチスも真っ青な民族浄化をリアルに描いてしまっているのです。若い男性は職業訓練、教育と称して連行されて強制労働を余儀なくされている。女性と子供が残る家庭には漢人が送り込まれて夫婦にさせられてしまう。宗教は禁止、言語も奪われ強制的に避妊させられる。反抗すれば収容所送り、日常的に拷問させられておよそ人間扱いされない。などなど、ウイグル人の置かれる境遇にはただただ怒りと同情しか湧きません。
この収容所における暴力の数々が強烈な描写ですので、この手の描写が嫌いな方はお気を付けください。胸糞の悪さでいえば今年ナンバーワンだと思います。
ウイグル自治区まで乗り込んで殺人犯を捕まえに行く高頭冴子。中国共産党はウイグル人を矯正し、職業訓練の場を与え、治安の回復に努めているのだと本気で思っているだけに性質が悪いのですが、この辺の話の合わなさがむなしさを際立たせてくれるというのも胸糞の悪さに拍車をかけてくれます。
どうせなら高頭冴子の倍返しまで読みたかったですが、もしかしたら中国公安部への復讐という続編まで用意されているのかな、なんて思ったりもします。

#越境刑事
#高頭冴子
#中山七里
#ウイグル自治区
#警察小説
#千葉県警

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2022年11月22日

書評1278 劇団ひとり「浅草ルンタッタ」(2022/11/22)

こんにちは、曹源寺です。

少し前の話ですが、お笑い芸人オードリーの若林さんがラジオで放ったひとことがツイッターで話題になったというやつがありました。
オードリー若林さんの「一瞬で自分が被害者になれる言葉を使うやつが嫌い」というラジオでの発言に対する反応いろいろ(Togetter)
上記はツイッターのまとめサイトですが、つまりはどういうことかというと、
オールナイトニッポンでつぶやいたのが「一瞬で自分が被害者になれる言葉を使うやつ嫌いなんだよね」と言ったのですが、みんなが得心したというか腑に落ちたというか、なるほどと思ったわけです。
具体的には
傷ついた→傷つけられた
言わなかった→言えなかった
反論しなかった→言いくるめられた
やらなかった→やれる状況じゃなかった
結果出なかった→結果を出させてくれなかった

なるほど、そういう人いますね。特に多いのはフェミ界隈かもしれません。少し前に「私たちは買われた」というよくわからない運動がありました。いやいや、お前らが自分で売ったんだろうというツッコミも許されない世界だったように記憶していますが、なるほど、あの界隈では常に被害者でなければならないのだということが、この若林氏のセリフでストンと入ってきました。

そういえば、仁藤〇乃というタレントなのかよくわからない人がいますが、彼女が運営しているNPO法人の会計に疑惑があるという話が持ち上がっていまして(具体的には、タイヤ交換費用を都に毎年申請しているらしいけど2014年のタイヤしているのおかしいね、というつぶやきから始まっています)、これに関して彼女はすぐに反応し、「誹謗中傷だ!ヘイトだ!」と騒ぎ立てています。いやいや、疑惑があるならそのことに対して真っ向から反論してくれよと思うのですが、すぐに被害者の立場に切り替えてくるんですよ。
ご自身の行っている行動は「貧困女性を救う」という大きな意味を持っているわけですから、真っ当なことをしているなら正々堂々としていれば良いのに。すぐにそうやって過激に反応するからおかしなことになるんですよ。
さすが若林氏、やはりいま売れている芸人さんは麒麟川島さんとかバカリズムさんとかカズレーザーさんとか、みんな言葉に関しては実に鋭い感性をお持ちだなあと改めて思います。

内容(幻冬舎HPより)
今は一人ぼっちでも、またみんなの前で歌うんだ──。
100万部突破のベストセラー『陰日向に咲く』を超える、さらなる大傑作!
12年ぶりに書き下ろす、圧倒的祝祭に満ちた物語。
行き場をなくした女たちが集う浅草の置屋「燕屋」の前に、一人の赤ん坊が捨てられていた。かつて自らの子を亡くした遊女の千代は、周囲の反対を押し切って育てることを決める。お雪と名付けられた少女は、燕屋の人々に囲まれながら、明治から大正へ、浅草の賑わいとともに成長する。楽しみは芝居小屋に通うこと。歌って、踊って、浅草オペラの真似をして、毎日はあんなに賑やかで幸せだったのに。あの男がすっかり台無しにした──。


曹源寺評価★★★★
劇団ひとりセンセーの作品は「陰日向に咲く」以来ということでだいぶ久しぶりでした。本作は明治大正時代の浅草を舞台にした、当時の人々の生き様を描いた作品です。
浅草の置屋「燕屋」の遊女、千代が一人の捨て子を預かり、育てることになった。そのお雪という子は個性豊かな置屋の面々に囲まれながら成長し、いつしかその才能を発揮していく。
しかし、その幸せは長くは続かなかった。ある事件のおかげで母子は離れ離れになり、、、
この人本当に芸人だけじゃなくてマルチタレントという言葉がぴったりな方ですね。当時の世相についてもかなり勉強されたのではないかという印象です。
あっという間に読み終える量ですが、これだけ疾走感とか躍動感がすごい本も珍しいのではないかと思います。事件も震災もあるので全体としては哀しいお話ですが、登場人物がみんな陽気な人たちなので読後感もなぜかそれほど暗くないというところも本作のすごさではないかと思います。

読み終えた人はみな映像化を希望するくらい、ルンタッタな

浅草オペラを感じてしまったのではないでしょうか。浅草オペラという単語はあまり耳慣れないですが、関東大震災までの7年間だけ上演された一大娯楽だったようですね。当時は浅草六区がエンターテインメントの中心地だったのは知っていましたが、オペラを興行の主役にしようとしたムーブメントがあったのは驚きです。
自分も本作の映像を見たいと思ってしまいました。

#浅草ルンタッタ
#劇団ひとり
#浅草オペラ
#映像化希望

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