ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2022年07月01日

書評1243 塩田武士「朱色の化身」(2022/7/1)

こんにちは、曹源寺です。

Yahoo!が支持政党を診断してくれるサービスを展開中です。
https://news.yahoo.co.jp/senkyo/match/party

こういうのはなかなか便利で面白いですが、やってみて痛感するのはやはり、自分のポリティカルコレクトに100%合致する政党などほとんどなくて、どこかで妥協しなければ前に進めない、ということだと思います。

政治には妥協が必要です。理想を追い求めるのは良いのですが、現実とのはざまで苦悩しなければならないのですよ。議員も有権者もそれは同じです。再エネなんてのはその最たるものでして、理想を言えばきりがないのですが、現在の技術では再エネだけで国内のエネルギー需要をすべて賄うことなどできはしません。今日も暑かったですが、電力需給のバランスが崩れる15時〜18時あたりは太陽光発電の効率が落ちるからひっ迫するのですから、太陽光発電など本当はないほうが安定するのですよ。太陽光発電が活躍するためには蓄電の技術の向上が欠かせないのです。
外交・安全保障に関しても同じことが言えます。
戦争など誰だってしたくはないのですが、軍拡を続ける隣国があるから軍事バランスを崩さないような配慮が必要なのであって、すべての国が武器を捨ててみんなでおててつないで理想の星になりましょう、なんてどう考えても現時点では実現不可能なわけですよ。

それらの理想のために一票を投じましょうと意見するのは自由ですが、現実を完全に無視した投票行動というのも果たしてどうなのか、という側面は無視できないんじゃないかと思います。

個人の感想ですが、政治活動には理想を追い求めすぎるのはやめたほうが良いと思います。むしろ、現実を見据えて一歩一歩少しずつで良いので変わっていくこと、対応していくことのほうが重要ではないかと思います。

ですから、耳聞こえの良い甘言や、言葉だけで活動実績のない政治家の扇動的発言などには耳を傾ける必要なしと割り切っています。

内容(講談社HPより)
「知りたい」――それは罪なのか。
昭和・平成・令和を駆け抜ける。80万部突破『罪の声』を超える圧巻のリアリズム小説。
「聞きたい、彼女の声を」 「知られてはいけない、あの罪を」
ライターの大路亨は、ガンを患う元新聞記者の父から辻珠緒という女性に会えないかと依頼を受ける。一世を風靡したゲームの開発者として知られた珠緒だったが、突如姿を消していた。珠緒の元夫や大学の学友、銀行時代の同僚等を通じて取材を重ねる亨は、彼女の人生に昭和三十一年に起きた福井の大火が大きな影響を及ぼしていることに気づく。作家デビュー十年を経た著者が、「実在」する情報をもとに丹念に紡いだ社会派ミステリーの到達点。


曹源寺評価★★★★
新聞記者だった父を持つライターの大路亨が、その父の依頼で一人の女性を探すことになる。その女性、辻珠緒はヒットを飛ばしたゲームの制作者であったが、消息を絶っていたのだ。大路は珠緒の知人、友人を捜し歩き、取材を重ねる。大路が「アホのように」取材に駆けずり回った先に見たものは、珠緒だけではない、辻家親子3代にわたる悲劇の歴史と、時代と男にほんろうされ続けた哀しい物語であった。。。
本書の語り部的役割の大路があちこちを駆けずり回ります。
関係者へのインタビューが延々と続く序盤は少し退屈ですが、読み進めるうちに珠緒という人間の輪郭が見えてくるようになるとぐいぐいと惹き寄せられていきます。
登場人物が多すぎてちょっと混乱しますので、冒頭の登場人物一覧を見返しながら読み進めることになりますが、それ以上に登場してくる人たちの交通整理に忙殺されてしまいます。なんでこんなにいっぱい出てくるんや?というくらい出てきます。
冒頭は昭和31年の福井県で、「芦原の大火」と呼ばれる大火事に遭遇する珠緒の祖母と母の物語から始まります。福井県は戦争による空襲、戦後すぐに発生した福井地震、そして芦原大火という不幸の連続だった土地であります。そんな時代を生きた人たちとその子孫、女性が生きにくかった時代をひきずりながら生きている人を探すため、現在と過去を行き来する大路。読みごたえは十分すぎるレベルです。
ただ、読み進めると「なぜ」があちこちに浮かび上がってくるのも事実です。何かを置き忘れていませんか?それとも自分が拾っていないだけなのか?よくわかりませんでした。
それにしても、
人探しをしてあちこち聞き込みを続けていったら、ものすごい真実にたどり着いてしまった、というお話にはなんとなくデジャヴュを感じるのですが、あぁ、分かった。宮部みゆきセンセーの「火車」だ。
あれはたしか逃亡した多重債務者の女性を追いかける探偵の話だったと思いますが、丹念にその足取りを追っていくとその女性の生い立ちとか生き様とかが浮かび上がってくる、そんなお話でした。

本書は令和の時代の「火車」である

と言ったら言い過ぎでしょうか。たぶん言い過ぎでしょう笑。個人的に「火車」はいままで読了したミステリのなかでもベスト10にずっと入っている作品ですので、本書はそこまでではないですね。

#朱色の化身
#塩田武士
#ミステリ
#芦原大火

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2022年06月24日

書評1242 城山真一「看守の信念」(2022/6/24)

こんにちは、曹源寺です。

先日、参議院議員選挙の話を少し書きましたが、笑えるネタをひとつ。

れいわ新選組は山本太郎代表が衆議院議員を辞職して、新たに参議院議員として東京選挙区から立候補しました。山本氏は議員辞職の理由を「参議院議員選挙が終わるとその後3年間選挙が行われない可能性があり、政治的空白が生じる、その間の政治の暴走を止める必要があるから」という趣旨の発言をしています。

しかし、こんな話を誰が信じているのでしょうか。政治の暴走を止めたいならなおのこと衆議院に留まるべきだと思いますけどね。
本当のところはこういうことでしょう。
「衆議院は東京ブロックの比例で当選しているから辞職してもれいわの候補者が繰り上げ当選する。山本本人は参議院でも当選すれば実質的に山本一人で2議席を獲得できる」

選挙制度の盲点を突いた実に強かな戦略であります。個人的には強かなどという言葉を使いたくはありませんが。

そうしたらですね、今度は立花党首率いるN国党がもっとすごいことをしてしまったのですね。

N国党は全国の比例区に山本太郎さんという同姓同名の別人を候補者に擁立したのです。
したがって、比例代表の候補者名に「山本太郎」と記入するとすべてN国党に票が流れることになります笑
れいわ新選組には一票も入りません。

山本太郎氏は東京選挙区ですので、東京選挙区の候補者名に山本太郎と書けば普通に得票されますが、間違って比例区に書かれた票はN国党が持っていくという構図になりました。

これもまた選挙制度の盲点でありましょう。

狐とタヌキの化かし合い。五十歩百歩。策士策に溺れる。因果は巡る。いろいろな諺が頭をよぎります。しかし、一番しっくりくるのは
カレー味のウ〇コとウ〇コ味のカレー
でしょうか。汚くてすみません。

内容(宝島社HPより)
模範囚の失踪、集団食中毒事件、火の気のないところで起きた火災……刑務官たちの信念が問われる事件。
その時、敏腕刑務官・火石に不穏な噂が――傑作『看守の流儀』に続く待望の刑務所ミステリー。
「悩み抜いてたどりついたのは、乗り越えるのでも、逃げるのでもなく、結局、ただ抱えて生きていくしかないという思いでした」
第一話「しゃくぜん」
釈放前の更生プログラムに参加した模範囚が、外出先で姿を消した。発見されるまでの「空白の30分」で何が起きたのか?
第二話「甘シャリ」
刑務所内で行われた運動会の翌日、集団食中毒事件が発生。果たして故意の犯行なのか。炊事係の受刑者が容疑者に浮上するが……。
第三話「赤犬」
古い備品保管庫で原因不明の火災が起きた。火の気もなく、人の出入りもなかったはずの密室でいったいどうして?
第四話「がて」
窃盗の常習犯である受刑者の心の拠り所は、あるジャズシンガーとの文通。しかし、その女性は実在していなかった――。
第五話「チンコロ」
「また殺される」と書かれた匿名の投書が刑務所に届く。差出人は元受刑者か。そして、投書に隠された意味とは?


曹源寺評価★★★★★
看守の流儀」の続編です。
石川県にある(という設定)の加賀刑務所を舞台にした刑務官のお話を詰め込んだ連作短編5話で構成されています。
前作もそうでしたが、タイトルがすべて刑務所(というだけではないですが)の隠語です。まあ、赤犬=放火、チンコロ=タレコミなんてのは陳腐ですが、「お、なんだなんだ」と気にさせる効果はありますね。
前作はラストのほうで読者を驚かす仕掛けがありましたので、さすがに今回はないだろうと思っていたら、

なんと、またしてもやられてしまいました。

しかも最後のほうの一行の描写で世界をひっくり返しています。乾くるみセンセーも真っ青ですわ。
この仕掛けにもやられましたが、本書はひとつひとつの短編にもしっかりとしたストーリーがあって、特に第4話の「がて」では泣かされましたし、第5話の「チンコロ」ではここでもどんでん返しのように返されたので参りました。
本書と前作を合わせると、刑務官を登場人物に据えた作品のなかではトップクラスの作品ではないかと思います。ちなみに個人的トップは「13階段」ですが、あれは刑務所を舞台にしていませんので、微妙な立ち位置ですね。
長岡弘樹センセーの「教場」というシリーズがありますが(キムタクが主人公でドラマ化されたので有名ですね)、本書は似たようなテイストを感じます。ひとつひとつのお話が最後につながったりすると完璧ですが、そこまでいかなくても警察学校と刑務所、共通する何かを感じてしまうのです。なんだろうなぁ、「性根を叩き直す」みたいなところかなぁ笑
そうではなくて、おそらくは小さな事件から関係者の人間性が問われていくという過程が似ているのではないかと思うのです。伏線も回収していますしね。
本書で勉強になったのは、刑務所は更生プログラムを積極的に導入し、出所後の就職の世話までしているところでしょうか。そのため、民間企業とも連携し、勤務態度や技能などがマッチすれば積極的に雇用を受け入れるという企業もあるとのことです。
刑務所の所管は法務省矯正局ですから、矯正局の仕事のアウトソーシングとかすれば面白そうですね(利権になりそうですけどね)。
刑務所にはドラマが多そうです。何と言っても人生の再出発を応援するという仕事がありますから、人間ドラマには事欠かないでしょう。本書シリーズはこれで完結にしてほしくはないですね。

#看守の信念
#城山真一
#連作短編
#ミステリ

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2022年06月21日

書評1241 下村敦史「情熱の砂を踏む女」(2022/6/21)

こんにちは、曹源寺です。

参議院議員選挙は6月22日(火)公示、7月10日(日)投票となりました。つまり、明日から選挙戦が開始されます。

参議院は昔の貴族院ですので、ある意味知名人のための名誉職のような色合いがあるのは事実です。しかし、3年ごとに半分が改選されるシステムで解散もありませんので、6年間はその人に議席を与え続ける覚悟がないといけません。

東京選挙区を見ればわかりますが、組織票が強い政党の議員はほぼ自動的に当選確実なラインまで得票できるので公〇党や〇産党は一議席を獲得できます。自〇党も一議席は確実で、二議席取れる可能性もあります。議席数は6ですので、残りの3議席を戦う構図になっているのです。

「なんでこんなヤツが議員なんだ?」と言われてもしょうがないのです。民主主義は数で決まりますので。
納得がいかない人も多いでしょうが、自分もあまり納得していません。特に比例区はもっと納得がいかないですね。比例代表制というのは民主主義のようでそうではないような気がします。政党の意図と民意がマッチしないのであればなおさらでしょう。

もしも、比例区の並びが気に入らない場合や、政党としては好きじゃないといった場合は、比例区の投票にも候補者の個人名を書いて出すという手がありますので、「やっぱり投票にいくのはやめよう」と思う人はなんとか頑張って投票所に行っていただきたいと思います。

先日は東京都杉並区で区長選挙がありまして、無所属新人の女性が2位に187票の差で当選しました。たったの187票ですよ。杉並区民の有権者数はおよそ45万人程度だと思いますが、投票数17万票で187票差ですから、やはりこういう接戦になると一票の重みが実感できますね。
さすが杉並区。新人女性は共産党とれいわ新選組の支援を受けての当選となりました。中核派の女性も議員になったガチガチの左派が集う街であります。となりの武蔵野市も外国人参政権導入で話題を呼んだ左派市長です(否決されましたが、もう一回議案を出すらしいです)ので、中央線界隈はそのうちクーデターでも起きるんじゃないですかね。

内容(徳間書店HPより)
日本人闘牛士の死亡は、演技中の事故のはずだった。ミステリーの旗手・下村敦史が描く、スペインの風感じる闘牛ミステリー。


曹源寺評価★★★★★
下村センセーの最新刊はなんと、スペインを舞台にした闘牛の世界のミステリでありました。
タイトルと挿絵がまさにそれなんですが、いや、ホントに驚きです。
スペイン、行ったことありません。スペイン語、知りません。闘牛、興味ありません。こんな自分は果たしてこの作品に向き合えることができるのでしょうか。
新藤怜奈は挫折を経験した元バレエダンサー。幼い頃に母がいなくなり、裕福な伯母に育てられる。兄の大輔は単身スペインに渡り、闘牛士を目指していたが、ある日、闘牛中に牡牛に刺されて死亡した。死の知らせを受けて怜奈はスペインに飛ぶ。大輔は名前を売るために危険な技に挑戦して死亡したのだったが、闘牛士をやめようとしていた大輔がなぜそんな技に挑んだのか。兄の死を受け止めきれない怜奈は現地で本場の闘牛を目の当たりにし、血がたぎるのを感じた。自分も闘牛をやってみたい。
怜奈は労働ビザを取得し再入国。本物の闘牛士になろうと決意する。そして明かされる真実。下村センセーお得意のどんでん返し。
いやあ、ストーリーとしては多少のご都合主義を交えているとしても破綻なくまとまっていて面白いですね。最後の最後で納得するような展開も下村センセーならではのものでしょう。
それに、スペインのことわざが多数ちりばめられていたり、闘牛の世界の奥深さ、ある意味伝統芸能だが死と隣り合わせの危険な世界、そして神聖な儀式。興味深く読ませていただきました。
本作はセンセー15年の構想を経てようやく書き上げたということですが、なるほど綿密な取材に裏打ちされた筆致はお見事ですし、日本人にはなじみの薄いスペインの風土もしっかりと描かれています。
しかし、では本作が下村センセーの作品群の中にしっかりと溶け込んでいるあというと、そうでもないんですよね。このテーマや展開は果たして下村作品であるべきか、というか、

下村センセーじゃなければ書けなかった話なのか、という疑問を想起させてしまうのであります。

何というか、こじんまりとまとまっているような印象になってしまっているような気がするのです。
あとは、読後に考えてしまったことですが、本書のように異国の伝統文化というものはなかなか馴染みが深くないので、本書を読み終えた後でも「じゃあ闘牛でも観るか」とはならないんですよね。遠いラテンの風習であって、それ以上でもそれ以下でもないのです。逆に考えれば、歌舞伎とか能とか雅楽とか、あるいは相撲とか居合い抜きとかそういう日本の伝統芸能(相撲は神事)は異国の人の目にどのように映るのかを考えれば、答えはおのずと明らかですね。
作品の出来は良いと思いますが、最後まで馴染めなかったような、そんな作品でありました。

#情熱の砂を踏む女
#下村敦史
#闘牛
#ミステリ

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posted by 曹源寺 at 18:18| Comment(0) | TrackBack(0) | さ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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