ミステリ読みまくり日記 〜書評(ネタバレあり)

通勤時間に読む、日本のミステリとその他小説をとりあえず書き留める
 

2020年08月25日

書評1092 山本巧次「留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白」

こんにちは、曹源寺です。

まだまだ暑い日が続きますね。太平洋高気圧が強いと本当に暑いのですが、かといって弱いと大気の状態が不安定になってゲリラ豪雨などにつながりやすくなっていますので、どっちもどっちですね。
昨年も一昨年も水害があちこちで発生しています。熊本県は今年の7月に球磨川が氾濫して大きな被害をもたらしました。この水害は川辺川ダムの建設中止に端を発した人災との説があります。以下の3つの記事を読み比べていただきたいと思います。

熊本豪雨災害は「人災」だった…12年前、なぜダム建設は中止に追いやられたのか(8/24文春オンライン)
〈(川辺川)ダム工事の着工直前になって、知事が代わってダムをやめた。(熊本豪雨災害は)一種人災の面がある〉
今年7月の熊本豪雨災害に関して、こう発言したのは、経団連の山内隆司副会長だ。熊本県の蒲島郁夫知事が2008年に川辺川ダム建設を取りやめたことを「一種の人災」と断じたのだ。
この発言に「私もまったく同感です」と述べるのは、京都大学大学院教授で土木工学が専門の藤井聡氏だ。

(以下はリンク先で)

「川辺川ダムでも被害防げず」 建設反対団体が熊本市で集会(8/24熊本日日新聞)
7月の豪雨で氾濫し、甚大な被害をもたらした球磨川の治水を考える集会が23日、熊本市中央区の県民交流館パレアであり、主催した川辺川ダム建設に反対する市民団体などが「ダムがあったとしても被害は防げなかった」と訴えた。
(以下はリンク先で)→熊本日日新聞のサイトは会員限定

【速報】球磨川ピーク流量7500トン「ダムあれば豪雨被害軽減」九地整(8/25西日本新聞)
国土交通省九州地方整備局は25日、熊本県南部を中心とした7月の豪雨災害の際、大規模浸水が発生した同県人吉市付近の球磨川のピーク流量について、河道の流下能力の2倍を超える「毎秒7500トン程度」(速報値)とする検証結果を公表した。建設が中止された「川辺川ダム」が存在した場合、ピーク流量は流下能力の1・3倍程度に抑えられ、洪水を軽減できた可能性があったとしている。
(以下はリンク先で)

熊本県は2008年に蒲島郁夫知事が川辺川ダムの建設中止を発表しました。そこから12年、ダムに頼らない治水を模索してきたとのことですが、実際には何にも対策を打てずにズルズルときてしまったが故に今回の洪水を防げなかったということになります。こればっかりはいくら市民団体が「ダムがあったとしても被害を防ぐことはできなかった」(に違いない)と主張してもダメでしょう。国土交通省も数字で反論していますからね。

百歩譲って、ダムに依存しない道を模索していたとしても、結局は12年間何にもしていないのと同じだったわけですから、無為無策のそしりは免れません。蒲島知事は腹を切らなければならないはずですね。

誰のせいか。
最終的にはこのバカな知事を選んだ県民に責任があるのは自明ですが、「コンクリートから人へ」や「脱ダム宣言」などイメージ先行でダムによる治水をやめさせようと活動してきた一部のマスゴミと市民団体は大いに非難されて然るべしだと思います。

上記の熊本日日新聞のような「オレたちは悪くないもーん」と言い訳している連中の、なんとみっともないことか。論点ずらしも甚だしいですね。おそらく、本記事中に登場している「元毎日新聞記者の福岡賢正さん(59)」あたりは川辺川ダムの建設反対を声高に訴え、記事にしてきたのでしょう。こういう連中に騙されないようにしないと、我々は同じ轍を踏むことになりかねませんょ。


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内容(早川書房HPより)

鉄道を愛する著者が 留萌本線に捧げる郷愁のミステリ
北海道ののどかな大地を走る留萌本線でハイジャックが発生。犯人はなぜか道議員を交渉役に指名し、半端な身代金を要求するが……


曹源寺評価★★★★★
現役鉄道マン作家の山本巧次センセーの作品は、鉄道オタクを納得させる精緻な筆致でありながら、知識をこれ見よがしに引け散らかしてこないから素人にも受けが良いですね。なんというか奥ゆかしい感じを受けます。
本書は廃線が決定的になった北海道の留萌本線を舞台に、「ハイジャック」(と書かれていますがトレインジャックですね)が行われたローカル線の事件をミステリチックに書いておられます。
爆弾を持った犯人が数名の乗客を道連れに深川から留萌を目指します。そして、途中の峠下トンネルで停まり、身代金を要求します。その額がなぜか1億7,550万円という半端な額で、しかも交渉役に北海道議員の河出を指名する。犯人の思惑は何か。
うーん、事件の構図は面白いしなるほどと思うところもありますが、これを明らかにしていくプロセスはちょっと微妙な感じですね。誰の目線で書くのが一番良いのかがセンセー自身も分からぬまま書き連ねているような印象です。警察なのか人質になった乗客なのか、あるいは犯人なのか。これがバラバラ過ぎるので読み手からすると一貫性がなくなってしまうように思えるのです。個人的には、警察署長の阿方目線で良かったのではないかと。最初に登場する乗り鉄の浦本なんか中途半端な役割でしかないのでいらなかったのではないかと。気動車(電車でもないし列車でもないので気動車と書きます)の中の描写のために必要だったというのは分かりますが、犯人の要求→身代金の支払い→SATの出番?→気動車動き出す→あれれ、SATは?→留萌に着きました

なんだかこの辺の展開が緊迫感ゼロで臨場感もゼロ

なのがちょっと残念です。

(以下、モロにネタバレ注意)

気動車が動き出してトンネルを抜けた時点でスマホ使えるだろ、警察に連絡しろよ。。。警察も警察でトンネルの出口でちゃんと張っていろよ。。。犯人逃がすなよ。。。こうやって考えると結構グダグダです。。。

先日は西岡研介氏の「トラジャ」を読んでしまったので、JR北海道のダメっぷりをまざまざと見せつけられました。なんだか乗務員のみんなが革マルに見えてしまいます。。。
そういえば、TBS系ドラマ「半沢直樹」では帝国航空の再建に乗り出す半沢がいますが、もし東京中央銀行がJR北海道の債権放棄を要求されたらさすがの半沢もお手上げではなかろうかと思いました。帝国航空はJRと同じく労働組合が強い法人ではありますが、空の安全を守るべく個々人の教育がきちんとなされていて、問題の根っこは縦割りの組織や政府に押し付けられた不採算路線だったりするのですが、JR北海道の問題は(不採算路線が多いのは同じですが)労使の癒着だったりビジョンのなさだったりするわけでして、今や死に体同然です。
山本センセーにも池井戸潤センセーのように、JR再建をテーマにした熱い物語を書いてほしいなあと思いますが、まあ、これはちょっと無理か。。。闇の部分が暗すぎるなぁ。。。

#山本巧次
#留萌本線、最後の事件
#JR北海道
#鉄道ミステリ

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posted by 曹源寺 at 17:26| Comment(0) | や行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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